(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101310
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01N35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005218
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
(72)【発明者】
【氏名】杉村 友弘
(72)【発明者】
【氏名】増渕 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】秋澤 康雄
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA08
2G058GD02
(57)【要約】
【課題】ユーザの負担を軽減すること。
【解決手段】実施形態に係る自動分析装置は、測定部と、判定部と、特定部と、演算部とを備える。測定部は、検査項目に関する検量線を作成するためのキャリブレーション測定を実行した後、作成した検量線の精度を算出するための精度管理測定を実行する。判定部は、算出した精度が許容範囲内か否かを判定する。特定部は、算出した精度が許容範囲内である場合、検査項目について再演算が必要な検体を特定する。演算部は、作成した検量線を用いて、特定した検体の検査項目を再演算する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査項目に関する検量線を作成するためのキャリブレーション測定を実行した後、作成した検量線の精度を算出するための精度管理測定を実行する測定部と、
算出した精度が許容範囲内か否かを判定する判定部と、
前記算出した精度が許容範囲内である場合、前記検査項目について再演算が必要な検体を特定する特定部と、
前記作成した検量線を用いて、特定した検体の前記検査項目を再演算する演算部と
を具備する、自動分析装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記特定した検体の前記検査項目を再演算した再演算結果と、再演算前の演算結果と、許容誤差とに基づいて、前記再演算結果を採用するか否かの判定を行う、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記再演算結果と前記演算結果との誤差が前記許容誤差の範囲内である場合、前記再演算結果を採用する判定を行う、
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記誤差が前記許容誤差の範囲内であるか否かの情報をユーザに通知する通知部、
を更に具備する、
請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記通知部は、前記再演算結果を採用しない判定を行った場合、ユーザに前記再演算結果を採用するか否かを問い合わせる、
請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記算出した精度が許容範囲内でない場合、前記検査項目に関する試薬に相当する予備の試薬があるか否かを判定し、
前記特定部は、前記予備の試薬がある場合、前記検査項目について再検査が必要な検体を特定する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記予備の試薬があるか否かの情報をユーザに通知する通知部
を更に具備する、
請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記算出した精度が許容範囲内でない場合、前記検査項目に関する標準試料に相当する予備の標準試料があるか否かを判定し、
前記特定部は、前記予備の標準試料が有る場合、前記検査項目について再検査が必要な検体を特定する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記予備の標準試料があるか否かをユーザに通知する通知部
を更に具備する、
請求項8に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記キャリブレーション測定および前記精度管理測定は、検体の測定と並行して行われる、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記測定部は、試薬および標準試料の少なくともいずれかのロット変更を契機として、前記キャリブレーション測定を実行する、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記測定部は、前記作成した検量線の直前まで用いられていた検量線の有効期限切れを契機として、前記キャリブレーション測定を実行する、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項13】
前記許容範囲は、ユーザによって設定可能である、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項14】
前記特定した検体は、前記作成した検量線よりも以前の検量線で前記検査項目が演算された検体である、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置において、精度管理測定の結果(例えば、検量線の精度)に異状がある場合、新たな検量線を作成するためのキャリブレーション測定を自動で実行する機能が知られている。また、自動キャリブレーションの実行後、新たな検量線について二度目の精度管理測定を行い、新たな検量線が有効であるか否かを確認する機能も知られている。
【0003】
しかし、従来の自動分析装置は、最初の精度管理測定からキャリブレーション測定の結果(新たな検量線の精度)を確認するまで、患者測定(検体の測定)を待機させる必要があった。また、従来の自動分析装置は、もしキャリブレーション測定前に検体の測定が行われていた場合、ユーザが手動で検体を選択して再検査などを行う必要があった。これらにより、従来の自動分析装置は、すぐに検体の測定を行えないことなどからユーザにとって負担となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ユーザの負担を軽減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る自動分析装置は、測定部と、判定部と、特定部と、演算部とを備える。測定部は、検査項目に関する検量線を作成するためのキャリブレーション測定を実行した後、作成した検量線の精度を算出するための精度管理測定を実行する。判定部は、算出した精度が許容範囲内か否かを判定する。特定部は、算出した精度が許容範囲内である場合、検査項目について再演算が必要な検体を特定する。演算部は、作成した検量線を用いて、特定した検体の検査項目を再演算する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る自動分析装置の機能構成を例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の分析機構の各部の構成を例示する斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る自動分析装置による自動チェック処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3のフローチャートのキャリブレーション処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図3のフローチャートの精度管理処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図3のフローチャートの再演算処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図3のフローチャートの試薬渡り処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置1の機能構成を例示するブロック図である。
図1の自動分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、および制御回路9を備える。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介して病院情報システム(Hospital Information System:HIS)と接続される。
【0010】
分析機構2は、標準試料(これはキャリブレータとも呼ばれる)または被検試料(これは検体とも呼ばれる)などの試料と、この試料に設定される各検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、試料と試薬との混合液を測定し、例えば吸光度で表される標準データ(キャリブレーション信号)および被検データ(分析信号)を生成する。尚、分析機構2の詳細な説明は後述される。
【0011】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データおよび被検データを解析することで、検量データおよび分析データを生成するプロセッサである。解析回路3は、例えば、記憶回路8から解析プログラムを読み出し、読み出した解析プログラムに従って標準データおよび被検データを解析する。具体的には、解析回路3は、例えば、検査項目毎に記憶された検量線を用いて、標準データおよび被検データの濃度を演算する。また例えば、解析回路3は、新しい検量線(更新された検量線)を用いて、標準データおよび被検データの濃度を演算(再演算)する。尚、解析回路3は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えてもよい。また、解析回路3は、演算部の一例である。
【0012】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベアおよびリードスクリューなどにより実現される。
【0013】
入力インタフェース5は、例えば、操作者が測定を指示した試料または病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータなどの設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド、およびタッチパネルなどにより実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。入力インタフェース5は、入力部の一例である。
【0014】
なお、入力インタフェース5は、本明細書において、マウスおよびキーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、入力インタフェース5には、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路が含まれてもよい。
【0015】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力するインタフェースである。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路および音声デバイスなどにより実現される。出力インタフェース6は、出力部の一例である。
【0016】
表示回路は、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、およびプラズマディスプレイなどのディスプレイを含む。また、表示回路には、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路が含まれてもよい。印刷回路は、例えば、プリンタなどを含む。また、印刷回路には、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路が含まれてもよい。音声デバイスは、例えば、スピーカなどを含む。また、音声デバイスには、音声信号を外部へ出力する出力回路が含まれてもよい。尚、出力インタフェース6は、入力インタフェース5と共にタッチパネル、或いはタッチスクリーンとして実現されてもよい。
【0017】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHISとデータ通信を行う。尚、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行ってもよい。
【0018】
記憶回路8は、解析回路3で実行される解析プログラム、および制御回路9に備わる機能を実現するための制御プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを試料毎に記憶する。記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、または通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。
【0019】
記憶回路8は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路等の記憶装置である。また、記憶回路8は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。なお、記憶回路8は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。記憶回路8は、メモリと呼ばれてもよい。
【0020】
記憶回路8は、制御回路9によって実行されるプログラム、制御回路9の処理に用いられる各種データ等を記憶する。プログラムとしては、例えば、予めネットワーク又は非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からコンピュータにインストールされ、制御回路9の各機能を当該コンピュータに実現させるプログラムが用いられる。なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。記憶回路8は、記憶部の一例である。
【0021】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されているプログラムを実行することで、実行したプログラムに対応する機能を実現する。制御回路9が実行する各機能については、後述する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えてもよい。制御回路9は、制御部または処理回路と呼ばれてもよい。
【0022】
以上、第1の実施形態に係る自動分析装置1の機能構成について説明した。次に、分析機構2の構成について詳しく説明する。
【0023】
図2は、
図1の分析機構2の各部の構成を例示する斜視図である。
図2に示す分析機構2は、反応ディスク201、恒温槽202、サンプルディスク203、第1試薬庫204、および第2試薬庫205を備える。更に、分析機構2は、サンプル分注アーム206、サンプル分注プローブ207、第1試薬分注アーム208、第1試薬分注プローブ209、第2試薬分注アーム210、および第2試薬分注プローブ211を備える。更に、分析機構2は、第1攪拌ユニット212、第2攪拌ユニット213、電極ユニット214、測光ユニット215、および洗浄ユニット216を備える。
【0024】
以下では、はじめに、反応ディスク201、恒温槽202、サンプルディスク203、第1試薬庫204、および第2試薬庫205について説明する。
【0025】
反応ディスク201は、複数の反応容器2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、複数の反応容器2011を所定の経路に沿って搬送する。具体的には、反応ディスク201は、検査中において、既定の時間間隔(以降、1サイクルと称する)で回動と停止とを交互に繰り返す。反応容器2011は、例えば、ガラス、ポリプロピレン(polypropylene:PP)、またはアクリルにより形成されている。尚、反応容器2011は、反応管またはセルと呼ばれてもよい。また、検査中の反応ディスク201の動作は、サイクル動作と呼ばれてもよい。
【0026】
恒温槽202は、所定の温度(通常37℃)に保たれた水(恒温水)を貯留する。恒温水には、例えば、抗菌目的のために添加剤が含まれている。恒温槽202は、貯留している恒温水に反応容器2011を浸漬させることで、反応容器2011に収容されている液体(混合液)を加温して一定の温度に保つ。尚、恒温槽202の外周には、分注プローブなどを用いて恒温水に直接アクセス可能な突起部202aが形成されていてもよい。
【0027】
サンプルディスク203は、反応ディスク201の近傍に設けられている。サンプルディスク203は、血液等の試料が収容された複数の試料容器2031を、環状に配列させて保持する。サンプルディスク203は、回動することにより、分注対象の試料が収容された試料容器2031を試料吸引位置に移動させる。
【0028】
第1試薬庫204は、標準試料および被検試料の各試料に含まれる所定の成分と反応する第1試薬を収容する試薬容器100を複数保冷する。
図2では図示していないが、第1試薬庫204は、着脱自在な試薬カバーにより覆われている。第1試薬庫204内には、試薬ラック204aが回転自在に設けられている。試薬ラック204aは、複数の試薬容器100を円環状に配列して保持する。試薬ラック204aは、駆動機構4により回動される。
【0029】
第2試薬庫205は、例えば、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器100を複数保冷する。
図2では図示していないが、第2試薬庫205は、着脱自在な試薬カバーにより覆われている。第2試薬庫205内には、試薬ラック205aが回転自在に設けられている。試薬ラック205aは、複数の試薬容器100を円環状に配列して保持する。試薬ラック205aは、駆動機構4により回動される。なお、第2試薬庫205で保冷される第2試薬は、第1試薬庫204で保冷される第1試薬と同一成分、且つ同一濃度の試薬であってもよい。
【0030】
次に、サンプル分注アーム206、サンプル分注プローブ207、第1試薬分注アーム208、第1試薬分注プローブ209、第2試薬分注アーム210、第2試薬分注プローブ211について説明する。
【0031】
サンプル分注アーム206は、例えば、反応ディスク201とサンプルディスク203との間に設けられている。サンプル分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、且つ水平方向に回動自在に駆動する。サンプル分注アーム206は、一端にサンプル分注プローブ207を保持する。
【0032】
サンプル分注プローブ207は、駆動機構4により、例えば、サンプルディスク203に保持されている試料容器2031から試料を吸引する。また、サンプル分注プローブ207は、駆動機構4により、例えば、吸引した試料を反応ディスク201に保持されている反応容器2011へ吐出する。この時、試料が吐出される反応容器2011の位置は、試料吐出位置と呼ばれてもよい。試料吐出位置は、サンプル分注プローブ207の回動軌道上に設定される。
【0033】
第1試薬分注アーム208は、例えば、反応ディスク201と第1試薬庫204との間に設けられている。第1試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、且つ水平方向に回動自在に駆動する。第1試薬分注アーム208は、一端に第1試薬分注プローブ209を保持する。
【0034】
第1試薬分注プローブ209は、駆動機構4により、例えば、第1試薬庫204に保持されている試薬容器100から第1試薬を吸引する。また、第1試薬分注プローブ209は、駆動機構4により、例えば、吸引した第1試薬を反応ディスク201に保持されている反応容器2011へ吐出する。この時、第1試薬が吐出される反応容器2011の位置は、第1試薬吐出位置と呼ばれてもよい。第1試薬吐出位置は、第1試薬分注プローブ209の回動軌道上に設定される。
【0035】
第2試薬分注アーム210は、例えば、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。第2試薬分注アーム210は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、且つ水平方向に回動自在に駆動する。第2試薬分注アーム210は、一端に第2試薬分注プローブ211を保持する。
【0036】
第2試薬分注プローブ211は、駆動機構4により、例えば、第2試薬庫205に保持されている試薬容器100から第2試薬を吸引する。また、第2試薬分注プローブ211は、駆動機構4により、吸引した第2試薬を反応ディスク201に保持されている反応容器2011へ吐出する。この時、第2試薬が吐出される反応容器2011の位置は、第2試薬吐出位置と呼ばれてもよい。第2試薬吐出位置は、第2試薬分注プローブ211の回動軌道上に設定される。
【0037】
次に、第1攪拌ユニット212、第2攪拌ユニット213、電極ユニット214、測光ユニット215、および洗浄ユニット216について説明する。
【0038】
第1攪拌ユニット212は、例えば、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。第1攪拌ユニット212は、第1攪拌アームおよび第1攪拌子を有する。第1攪拌アームは、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、且つ水平方向に回動自在に駆動する。第1攪拌子は、第1攪拌アームの一端に設けられる。第1攪拌子は、駆動機構4により、例えば、反応ディスク201上に配置された反応容器2011内の試料と第1試薬との混合液を攪拌する。
【0039】
第2攪拌ユニット213は、例えば、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。第2攪拌ユニット213は、第2攪拌アームおよび第2攪拌子を有する。第2攪拌アームは、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、且つ水平方向に回動自在に駆動する。第2攪拌子は、第2攪拌アームの一端に設けられる。第2攪拌子は、駆動機構4により、例えば、反応ディスク201上に配置された反応容器2011内の試料と第1試薬と第2試薬との混合液を攪拌する。
【0040】
電極ユニット214は、例えば、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。電極ユニット214は、反応容器2011内に吐出された混合液の電解質濃度を測定する。電極ユニット214は、イオン選択性電極(Ion Selective Electrode:ISE)および参照電極を有する。電極ユニット214は、制御回路9の制御に従い、測定対象のイオンを含む混合液について、ISEと参照電極との間の電位を測定する。電極ユニット214は、電位を測定したデータを標準データまたは被検データとして解析回路3へと出力する。
【0041】
測光ユニット215は、例えば、反応ディスク201の内周と外周とを挟む任意の位置に設けられている。測光ユニット215は、反応容器2011内に吐出された混合液における所定の成分を光学的に測定する。測光ユニット215は、光源および光検出器を有する。例えば、光源は反応ディスク201の内周側に設けられ、光検出器は反応ディスク201の外周側に設けられる。光源は、制御回路9の制御に従い、光を照射する。照射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。光検出器は、反応容器2011から出射された光を検出する。
【0042】
具体的には、例えば、光検出器は、反応容器2011内の標準試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度などにより表される標準データを生成する。また、光検出器は、反応容器2011内の被検試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度などにより表される被検データを生成する。測光ユニット215は、生成した標準データおよび被検データを解析回路3へ出力する。
【0043】
洗浄ユニット216は、例えば、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。洗浄ユニット216は、電極ユニット214または測光ユニット215において混合液の測定が終了した反応容器2011の内部を洗浄する。洗浄ユニット216は、例えば、反応容器2011を洗浄するための洗剤を収容する不図示の洗剤ボトルと、電磁弁などを介して洗剤の供給量を調整することによって所定の濃度の洗浄液を生成する洗浄液生成機構と、生成した洗浄液を供給する不図示の洗浄液供給ポンプとを備える。また、洗浄ユニット216は、洗浄液供給ポンプにより供給された洗浄液の反応容器2011内への吐出や、反応容器2011内の混合液および洗浄液の吸引をそれぞれ行う不図示の洗浄ノズルを備えている。
【0044】
洗浄ユニット216から供給される洗浄液は、例えば、高濃度の洗剤を所定の濃度となるように希釈することによって生成される。洗剤の種類は、例えば、酸性洗剤およびアルカリ性洗剤がある。
以上、実施形態に係る自動分析装置1の分析機構2の構成について説明した。次に、実施形態に係る自動分析装置1の制御回路9が実行する各機能について詳細に説明する。
【0045】
制御回路9は、記憶回路8から読み出したプログラムを実行することにより、システム制御機能91、測定機能92、判定機能93、特定機能94、および通知機能95を実行する。すなわち、制御回路9は、システム制御機能91、測定機能92、判定機能93、特定機能94、および通知機能95を備える。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって各機能が実現されるものとして説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、システム制御機能91、測定機能92、判定機能93、特定機能94、および通知機能95は、それぞれシステム制御回路、測定回路、判定回路、特定回路、および通知回路と呼んでもよく、個別のハードウェア回路として実装してもよい。制御回路9が実行する各機能についての上記説明は、以降の実施形態でも同様である。
【0046】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いはASIC、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路8に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0047】
なお、記憶回路8にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。上記「プロセッサ」の説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0048】
制御回路9は、システム制御機能91により、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する。例えば、システム制御機能91により、制御回路9は、検査項目に応じた測定を実施するように駆動機構4を駆動し、分析機構2で生成される標準データおよび被検データを解析するように解析回路3を制御する。具体的には、制御回路9は、反応ディスク201の回動動作、サンプル分注プローブ207の回動動作および分注動作、第1試薬分注プローブ209の回動動作および分注動作、並びに第2試薬分注プローブ211の回動動作および分注動作を制御する。また、制御回路9は、第1攪拌ユニット212、第2攪拌ユニット213、電極ユニット214、測光ユニット215、および洗浄ユニット216の動作を制御する。システム制御機能91を実現する制御回路9は、システム制御部の一例である。
【0049】
測定機能92は、キャリブレーション測定および精度管理測定などを実行する機能である。キャリブレーション測定は、例えば、検査項目に関する検量線を新しく作成するために行われる。測定機能92により、制御回路9は、検量線の精度低下、検量線の有効期限切れ、或いは試薬および標準試料などのロット変更を契機としてキャリブレーション測定を実行する。精度管理測定は、例えば、検量線の精度を算出するために行われる。測定機能92により、制御回路9は、既知の検量線(例えば、記憶回路8に記憶された検量線)、或いはキャリブレーション測定で作成した検量線の精度を算出する。測定機能92を実現する制御回路9は、測定部の一例である。
【0050】
判定機能93は、種々の判定をする機能である。具体的には、判定機能93により、制御回路9は、検量線の精度が許容範囲内か否かを判定する。また、制御回路9は、ユーザが設定した自動測定(例えば、自動キャリブレーション、自動精度管理、自動再演算、および自動試薬渡り)に関する設定が有効であるか否かを判定する。また、制御回路9は、ユーザから各測定などの実行指示があるか否かを判定する。また、制御回路9は、各測定が実行可能であるか否かを判定する。判定機能93を実現する制御回路9は、判定部の一例である。
【0051】
特定機能94は、再演算が必要な検体、或いは再検査が必要な検体を特定する機能である。ここで特定される検体は、例えば、検査開始からキャリブレーション測定で作成した検量線を作成するまでの間の検体である。換言すると、特定される検体は、キャリブレーション測定で作成した検量線よりも以前の検量線で検査項目が演算された検体である。具体的には、特定機能94により、制御回路9は、再演算が必要な検体、或いは再検査が必要な検体を特定する。特定機能94を実現する制御回路9は、特定部の一例である。
【0052】
通知機能95は、判定結果および装置状態などをユーザに通知する機能である。具体的には、通知機能95により、制御回路9は、判定結果および装置状態などを、ディスプレイに表示することによってユーザに通知する。また、制御回路9は、再演算結果を採用するか否かを問い合わせる通知を行ってもよい。通知機能95を実現する制御回路9は、通知部の一例である。
【0053】
以上、第1の実施形態に係る自動分析装置1の制御回路9の構成について説明した。次に、第1の実施形態に係る自動分析装置1の動作について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
図3は、実施形態に係る自動分析装置1による自動チェック処理の処理手順を例示するフローチャートである。自動チェック処理は、例えば、日常的な保守点検としての精度管理測定と、測定結果に応じた各種処理とを自動で行う処理である。この各種処理には、例えば、キャリブレーション処理、精度管理処理、再演算処理、および試薬渡り処理などがある。
【0055】
図3の自動チェック処理は、例えば、検体の測定開始時に行われる。従来であれば、検体の測定開始は、精度管理測定の測定結果が出るまで待機する必要があった。しかし、実施形態における自動チェック処理では、精度管理測定の測定結果を待たずに、例えば、精度管理測定と並行して検体の測定を行うことができる。尚、以降のフローチャートは、一つの検査項目に関して説明するものとする。
【0056】
(ステップST110)
自動チェック処理を開始すると、制御回路9は、測定機能92により、記憶されている検量線について、精度管理測定を実行する。この時、自動分析装置1は、並行して検体の測定を行ってもよい。精度管理測定を実行した後、制御回路9は、記憶されている検量線に関する測定結果を出力する。以下では、自動チェック処理の開始と共に、検体の測定も並行して行われているものとする。
【0057】
(ステップST120)
測定結果を出力した後、制御回路9は、判定機能93により、測定結果が許容範囲内であるか否かを判定する。測定結果は、例えば、記憶されている検量線の精度をパーセンテージで表したものである。許容範囲は、例えば、パーセンテージの値の範囲である。尚、許容範囲は、予めユーザによって設定可能である。測定結果が許容範囲内であると判定された場合、フローチャートの処理は終了する。測定結果が許容範囲内でないと判定された場合、フローチャートの処理はステップST130へと進む。
【0058】
測定結果が許容範囲内でない場合、試薬の状態が変化していることが疑われる。試薬の状態の変化は、例えば、試薬の蒸発、結露水の流入、およびコンタミネーションが原因である。
【0059】
(ステップST130)
測定結果が許容範囲内でないと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として測定結果に関する情報をユーザに通知する。具体的には、制御回路9は、測定結果の異常をユーザに報告する。
【0060】
(ステップST140)
測定結果の異常をユーザに報告した後、制御回路9は、キャリブレーション処理を実行する。キャリブレーション処理は、キャリブレーション測定に関する処理である。以下、キャリブレーション処理の具体例について
図4を用いて説明する。
【0061】
図4は、
図3のフローチャートのキャリブレーション処理の処理手順を例示するフローチャートである。
図4のフローチャートは、
図3のフローチャートのステップST130から遷移した後に開始する。
【0062】
(ステップST1401)
キャリブレーション処理を実行すると、制御回路9は、判定機能93により、自動キャリブレーションが有効か否かを判定する。自動キャリブレーションに関する設定は、ユーザにより予め行われているものとする。自動キャリブレーションが有効であると判定された場合、処理はステップST1404へと進む。自動キャリブレーションが有効でないと判定された場合、処理はステップST1402へと進む。
【0063】
(ステップST1402)
自動キャリブレーションが有効でないと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知としてキャリブレーション測定を実行するか否かをユーザに問い合わせる。この時、ユーザは、例えば、入力インタフェース5を介して実行の可否を指示する。
【0064】
(ステップST1403)
ユーザ通知後、制御回路9は、判定機能93により、キャリブレーション測定の実行指示が有ったか否かを判定する。キャリブレーション測定の実行指示が有ったと判定された場合、処理はステップST1404へと進む。キャリブレーション測定の実行指示が無かったと判定された場合、処理はステップST1405へと進む。
【0065】
(ステップST1404)
ステップST1401において自動キャリブレーションが有効であると判定した後、或いはステップST1403においてキャリブレーション測定の実行指示が有ったと判定した後、制御回路9は、判定機能93により、キャリブレーション測定が実行可能か否かを判定する。この判定では、例えば、キャリブレーション測定に必要な試薬および標準試料(キャリブレータ)が揃っているか否かをチェックする。キャリブレーション測定が実行可能であると判定された場合、処理はステップST1406へと進む。キャリブレーション測定が実行可能でないと判定された場合、処理はステップST1405へと進む。
【0066】
(ステップST1405)
ステップST1403においてキャリブレーション測定の実行指示が無かったと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知としてキャリブレーション測定を実行しない旨の通知を行う。この時、制御回路9は、現在の検量線では精度を保証しない旨の通知をしてもよいし、現在の検量線のままで検査を続行するか否かをユーザに問い合わせてもよい。
【0067】
また、ステップST1404においてキャリブレーション測定が実行可能でないと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知としてキャリブレーション測定が実行できない旨の通知を行う。この時、制御回路9は、キャリブレーション測定に必要な試薬および試料が不足している旨の通知をしてもよいし、現在の検量線では精度が保証できない旨の通知をしてもよいし、現在の検量線のままで検査を続行するか否かをユーザに問い合わせてもよい。ステップST1405の後、自動チェック処理は終了する。
【0068】
(ステップST1406)
ステップST1404においてキャリブレーション測定が実行可能であると判定した後、制御回路9は、測定機能92により、キャリブレーション測定を実行する。キャリブレーション測定を実行した後、制御回路9は、新たな検量線を生成する。ステップST1406の後、処理はステップST150へと進む。
【0069】
(ステップST150)
ステップST1406においてキャリブレーション測定を実行した後、制御回路9は、精度管理処理を実行する。精度管理処理は、精度管理測定に関する処理である。以下、精度管理処理の具体例について
図5を用いて説明する。
【0070】
図5は、
図3のフローチャートの精度管理処理の処理手順を例示するフローチャートである。
図5のフローチャートは、
図3のフローチャートのステップST140(
図4のフローチャートのステップST1406)から遷移した後に開始する。
【0071】
(ステップST1501)
精度管理処理を実行すると、制御回路9は、判定機能93により、自動精度管理が有効か否かを判定する。自動精度管理に関する設定は、ユーザにより予め行われているものとする。自動精度管理が有効であると判定された場合、処理はステップST1504へと進む。自動精度管理が有効でないと判定された場合、処理はステップST1502へと進む。
【0072】
(ステップST1502)
自動精度管理が有効でないと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として精度管理測定を実行するか否かをユーザに問い合わせる。この時、ユーザは、例えば、入力インタフェース5を介して実行の可否を指示する。
【0073】
(ステップST1503)
ユーザ通知後、制御回路9は、判定機能93により、精度管理測定の実行指示が有ったか否かを判定する。精度管理測定の実行指示が有ったと判定された場合、処理はステップST1504へと進む。精度管理測定の実行指示が無かったと判定された場合、処理はステップST1505へと進む。
【0074】
なお、ステップST1503の処理は、ステップST1403の処理と統合されてもよい。例えば、ステップST1403におけるキャリブレーション測定の実行指示により、ステップST1503における精度管理測定の実行指示も行われたものとしてよい。このことは、例えば、ステップST1501からステップST1503までの処理を省略することと同義である。
【0075】
(ステップST1504)
ステップST1501において自動精度管理が有効であると判定した後、或いはステップST1503において精度管理測定の実行指示が有ったと判定した後、制御回路9は、判定機能93により、精度管理測定が実行可能か否かを判定する。この判定では、例えば、精度管理測定に必要な試薬および標準試料(コントロール試料)が揃っているか否かをチェックする。精度管理測定が実行可能であると判定された場合、処理はステップST1506へと進む。精度管理測定が実行可能でないと判定された場合、処理はステップST1505へと進む。
【0076】
(ステップST1505)
ステップST1503において精度管理測定の実行指示が無かったと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として精度管理測定を実行しない旨の通知を行う。この時、制御回路9は、現在の検量線では精度を保証しない旨の通知をしてもよいし、現在の検量線のままで検査を続行するか否かをユーザに問い合わせてもよい。
【0077】
また、ステップST1504において精度管理測定が実行可能でないと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として精度管理測定が実行できない旨の通知を行う。この時、制御回路9は、精度管理測定に必要な試薬および試料が不足している旨の通知をしてもよいし、現在の検量線では精度が保証できない旨の通知をしてもよいし、現在の検量線のままで検査を続行するか否かをユーザに問い合わせてもよい。ステップST1505の後、自動チェック処理は終了する。
【0078】
(ステップST1506)
ステップST1504において精度管理測定が実行可能であると判定した後、制御回路9は、測定機能92により、ステップST1406において作成された新たな検量線について、精度管理測定を実行する。精度管理測定を実行した後、制御回路9は、新たな検量線の精度に関する測定結果を出力する。ステップST1506の後、処理はステップST160へと進む。
【0079】
(ステップST160)
ステップST1506において測定結果を出力した後、制御回路9は、判定機能93により、測定結果が許容範囲内であるか否かを判定する。測定結果は、例えば、新たな検量線の精度をパーセンテージで表したものである。許容範囲は、例えば、パーセンテージの値の範囲であり、上記のステップST120の設定と同じでもよい。測定結果が許容範囲内であると判定された場合、処理はステップST170へと進む。測定結果が許容範囲内でないと判定された場合、処理はステップST180へと進む。
【0080】
(ステップST170)
測定結果が許容範囲内であると判定した後、制御回路9は、再演算処理を実行する。再演算処理は、新しい検量線を用いた再演算に関する処理である。以下、再演算処理の具体例について
図6を用いて説明する。
【0081】
図6は、
図3のフローチャートの再演算処理の処理手順を例示するフローチャートである。
図6のフローチャートは、
図3のフローチャートのステップST160において、測定結果が許容範囲内であると判定された後に開始する。
【0082】
(ステップST1701)
再演算処理を実行すると、制御回路9は、判定機能93により、自動再演算が有効か否かを判定する。自動再演算に関する設定は、ユーザにより予め行われているものとする。自動再演算が有効であると判定された場合、処理はステップST1705へと進む。自動再演算が有効でないと判定された場合、処理はステップST1702へと進む。
【0083】
(ステップST1702)
自動再演算が有効でないと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として再演算処理を実行するか否かをユーザに問い合わせる。この時、ユーザは、例えば、入力インタフェース5を介して実行の可否を指示する。
【0084】
(ステップST1703)
ユーザ通知後、制御回路9は、判定機能93により、再演算処理の実行指示が有ったか否かを判定する。再演算処理の実行指示が有ったと判定された場合、処理はステップST1705へと進む。再演算処理の実行指示が無かったと判定された場合、処理はステップST1704へと進む。
【0085】
(ステップST1704)
再演算処理の実行指示が無かったと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として再演算処理をしない旨の通知を行う。この時、制御回路9は、現在の検量線では精度が保証できない旨の通知をしてもよいし、現在の検量線のままで検査を続行するか否かをユーザに問い合わせてもよい。ステップST1704の後、自動チェック処理は終了する。
【0086】
(ステップST1705)
ステップST1701において自動再演算が有効であると判定した後、或いはステップST1703において再演算処理の実行指示が有ったと判定した後、制御回路9は、特定機能94により、再演算が必要な検体を特定する。換言すると、制御回路9は、測定結果(作成した検量線の精度)が許容範囲内である場合、検査項目について再演算が必要な検体を特定する。具体的には、制御回路9は、自動チェック処理を開始してから今までの期間において、キャリブレーション処理によって更新される前の検量線(即ち、キャリブレーション処理以前に記憶されていた検量線)で演算が行われた検体を特定する。
【0087】
(ステップST1706)
検体を特定した後、制御回路9は、特定した検体についての被検データを解析回路3へと出力する。解析回路3は、新しい検量線を用いて特定した検体を再演算する。解析回路3は、再演算結果を制御回路9へと出力する。
【0088】
(ステップST1707)
特定した検体が再演算された後、制御回路9は、判定機能93により、再演算結果が許容範囲内か否かを判定する。この判定では、例えば、再演算前の演算結果と、再演算結果と、許容誤差とに基づいて、再演算結果が許容範囲内か否か、換言すると、再演算結果を採用するか否かをチェックする。具体的には、制御回路9は、再演算結果と演算結果との誤差が許容誤差の範囲内である場合、再演算結果を採用する判定を行う。また、制御回路9は、通知機能95により、誤差が許容範囲内であるか否かの情報をユーザに通知してもよい。
【0089】
再演算結果が許容範囲内であると判定された場合、即ち、再演算結果を採用すると判定された場合、処理はステップST1710へと進む。再演算結果が許容範囲内でないと判定された場合、即ち、再演算結果を採用しないと判定された場合、処理はステップST1708へと進む。
【0090】
(ステップST1708)
再演算結果が許容範囲内でないと判定された場合(再演算結果を採用しないと判定された場合)、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として再演算結果を採用するか否かをユーザに問い合わせる。この時、ユーザは、例えば、入力インタフェース5を介して採用の可否を指示する。
【0091】
(ステップST1709)
ユーザ通知後、制御回路9は、判定機能93により、再演算結果の採用指示が有ったか否かを判定する。再演算結果の採用指示が有ったと判定された場合、処理はステップST1710へと進む。再演算結果の採用指示が無かったと判定された場合、処理はステップST1711へと進む。
【0092】
(ステップST1710)
ステップST1707において再演算結果が許容範囲内であると判定された場合、即ち、再演算結果を採用すると判定した後、或いはステップST1709において再演算結果の採用指示が有ったと判定した後、制御回路9は、再演算結果を採用する。ステップST1710の後、自動チェック処理は終了する。
【0093】
(ステップST1711)
ステップST1709において再演算結果の採用指示が無かったと判定した後、制御回路9は、特定した検体について再検査を依頼する。ステップST1711の後、自動チェック処理は終了する。
【0094】
(ステップST180)
ステップST160において測定結果が許容範囲内でないと判定した後、制御回路9は、試薬渡り処理を実行する。試薬渡り処理は、渡り試薬の有無を判定し、新しい試薬を用いて再検査依頼をする処理である。試薬渡り処理を行う理由としては、ステップST140において新たな検量線を作成したにもかかわらず、新たな検量線の精度が許容範囲内では無かったため、試薬に何らかの問題が発生している可能性があるためである。以下、試薬渡り処理の具体例について
図7を用いて説明する。
【0095】
図7は、
図3のフローチャートの試薬渡り処理の処理手順を例示するフローチャートである。
図7のフローチャートは、
図3のフローチャートのステップST160において、測定結果が許容範囲内でないと判定された後に開始する。
【0096】
(ステップST1801)
試薬渡り処理を実行すると、制御回路9は、判定機能93により、自動試薬渡りが有効か否かを判定する。自動試薬渡りに関する設定は、ユーザにより予め行われているものとする。自動試薬渡りが有効であると判定された場合、処理はステップST1804へと進む。自動試薬渡りが有効でないと判定された場合、処理はステップST1802へと進む。
【0097】
(ステップST1802)
自動試薬渡りが有効でないと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として試薬渡り処理を実行するか否かをユーザに問い合わせる。この時、ユーザは、例えば、入力インタフェース5を介して実行の可否を指示する。
【0098】
(ステップST1803)
ユーザ通知後、制御回路9は、判定機能93により、試薬渡り処理の実行指示が有ったか否かを判定する。試薬渡り処理の実行指示が有ったと判定された場合、処理はステップST1804へと進む。試薬渡り処理の実行指示が無かったと判定された場合、処理はステップST1805へと進む。
【0099】
(ステップST1804)
ステップST1801において自動試薬渡りが有効であると判定した後、或いはステップST1803において試薬渡り処理の実行指示が有ったと判定した後、制御回路9は、判定機能93により、渡り試薬があるか否かを判定する。この判定では、例えば、現在の検査項目の検査に関する試薬に相当する予備の試薬が有るか否かをチェックする。渡り試薬が有ると判定された場合、処理はステップST1806へと進む。渡り試薬が無いと判定された場合、処理はステップST1805へと進む。
【0100】
(ステップST1805)
ステップST1803において試薬渡り処理の実行指示が無かったと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として試薬渡り動作を実行しない旨の通知を行う。この時、制御回路9は、現在の検量線では精度を保証しない旨の通知をしてもよいし、現在の検量線のままで検査を続行するか否かをユーザに問い合わせてもよい。
【0101】
また、ステップST1804において渡り試薬が無いと判定した後、制御回路9は、通知機能95により、ユーザ通知として試薬渡り動作が実行できない旨の通知を行う。この時、制御回路9は、渡り試薬としての予備の試薬が不足している旨の通知をしてもよいし、現在の検量線では精度を保証しない旨の通知をしてもよいし、現在の検量線のままで検査を続行するか否かをユーザに問い合わせてもよい。ステップST1805の後、自動チェック処理は終了する。
【0102】
(ステップST1806)
ステップST1804において渡り試薬が有ると判定した後、制御回路9は、特定機能94により、再検査が必要な検体を特定する。具体的には、制御回路9は、自動チェック処理を開始してから今までの期間において、キャリブレーション測定によって更新される前の検量線(即ち、キャリブレーション測定前に記憶されていた検量線)で演算が行われた検体を特定する。尚、このステップST1806において、制御回路9は、通知機能95により、試薬渡りが発生していることをユーザに通知してもよい。
【0103】
(ステップST1807)
検体を特定した後、制御回路9は、新しい試薬を用いて特定した検体について再検査を依頼する。ステップST1807の後、自動チェック処理は終了する。尚、ステップST1807の後、ステップST1406へと戻り、新しい試薬を用いたキャリブレーション測定が行われてもよい。
【0104】
なお、ステップST180では、試薬渡り処理について説明したがこれに限らない。例えば、予備の標準試料がある場合、ステップST180において、標準試料渡り処理が行われてもよい。また、ステップST180において、試薬渡り処理および標準試料渡り処理の両方が行われてもよい。
【0105】
以上説明したように、実施形態に係る自動分析装置は、検査項目に関する検量線を作成するためのキャリブレーション測定を実行した後、作成した検量線の精度を算出するための精度管理測定を実行し、算出した精度が許容範囲内か否かを判定し、算出した精度が許容範囲内である場合、検査項目について再演算が必要な検体を特定し、作成した検量線を用いて、特定した検体の検査項目を再演算する。
【0106】
従って、実施形態に係る自動分析装置は、キャリブレーション測定の結果に応じて検体の再演算または再検査を自動で行えるため、ユーザの負担を軽減することができる。
【0107】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、ユーザの負担を軽減することができる。
【0108】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
1 自動分析装置
2 分析機構
100 試薬容器
201 反応ディスク
2011 反応容器
202 恒温槽
202a 突起部
203 サンプルディスク
2031 試料容器
204 第1試薬庫
204a 試薬ラック
205 第2試薬庫
205a 試薬ラック
206 サンプル分注アーム
207 サンプル分注プローブ
208 第1試薬分注アーム
209 第1試薬分注プローブ
210 第2試薬分注アーム
211 第2試薬分注プローブ
212 第1攪拌ユニット
213 第2攪拌ユニット
214 電極ユニット
215 測光ユニット
216 洗浄ユニット
3 解析回路
4 駆動機構
5 入力インタフェース
6 出力インタフェース
7 通信インタフェース
8 記憶回路
9 制御回路
91 システム制御機能
92 測定機能
93 判定機能
94 特定機能
95 通知機能