(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101311
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】電源検査装置、電源装置の調節方法及び疑似加熱物
(51)【国際特許分類】
H05B 6/02 20060101AFI20240722BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240722BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20240722BHJP
H05B 6/42 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H05B6/02 Z
H05B6/10 331
H05B6/36 Z
H05B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005219
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】390026088
【氏名又は名称】富士電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘子
(72)【発明者】
【氏名】井上 昌大
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】島 浩平
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA12
3K059AB08
3K059AB09
3K059AB25
3K059AD13
3K059AD15
3K059CD48
3K059CD53
3K059CD75
3K059CD76
(57)【要約】
【課題】電源装置に望ましい発振を生じさせることが可能な電源検査装置を開発することを課題とする。
【解決手段】誘導加熱装置の電源装置の出力を確認する電源検査装置であって、誘導加熱コイル2と、疑似加熱物5と、移動手段6を有し、前記疑似加熱物5は、外径が連続的に又は段階的に変化する外郭部材20と、外郭部材20の内側にあって冷却液が通過する冷却流路23を有し、誘導加熱コイル2は外郭部材20を取り巻く位置に配され、移動手段6によって、誘導加熱コイル2と疑似加熱物5の少なくともいずれかを移動させて、誘導加熱コイル2が取り巻く位置を変化させることができることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱装置の電源装置の出力を確認する電源検査装置であって、
誘導加熱コイルと、疑似加熱物と、移動手段を有し、
前記疑似加熱物は、外径が連続的に又は段階的に変化する外郭部材と、外郭部材の内側にあって冷却液が通過する冷却流路を有し、
前記誘導加熱コイルは前記外郭部材を取り巻く位置に配され、
前記移動手段によって、前記誘導加熱コイルと前記疑似加熱物の少なくともいずれかを移動させて、前記誘導加熱コイルが取り巻く位置を変化させることができることを特徴とする電源検査装置。
【請求項2】
前記外郭部材が錐形であることを特徴とする請求項1に記載の電源検査装置。
【請求項3】
前記外郭部材の内部に内郭部材があり、前記外郭部材の内面と内郭部材の外面との間で前記冷却流路が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電源検査装置。
【請求項4】
前記外郭部材の内部に前記冷却流路を構成する空間があり、前記空間の下部側に通水口があり、前記空間の上部側に排水口があり、冷却液が前記通水口から導入されて前記冷却流路に入り、前記排水口を経由して外部に排出されることを特徴とする請求項1に記載の電源検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電源検査装置を使用する電源装置の調節方法であって、
前記誘導加熱コイルを前記外郭部材の特定の径の位置に停止させた状態で、前記冷却流路に冷却液を供給し、且つ電源装置から前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しつつ、電源装置を調節することを特徴とする電源装置の調節方法。
【請求項6】
誘導加熱装置の電源装置の出力を確認する際に使用される疑似加熱物であって、
外径が連続的に又は段階的に変化する外郭部材と、外郭部材の内側にあって冷却液が通過する冷却流路を有し、
前記外郭部材は、錐形であり、
前記外郭部材を取り巻く位置に前記誘導加熱コイルを配して、当該誘導加熱コイルで前記外郭体を加熱しつつ電源装置を調整することが可能であることを特徴とする疑似加熱物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置の構成部材たる電源装置の出力を確認する電源検査装置に関するものである。また本発明は、電源装置の出力を確認する際に使用される疑似加熱物に関するものである。さらに本発明は、電源装置の調節方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波焼き入れは、誘導加熱装置を使用して行われる。高周波焼き入れに使用される誘導加熱装置は、特許文献1に開示された様に、電源装置と、カレントトランス及び誘導加熱コイルによって構成されている。
電源装置は、高周波電流を誘導加熱コイルに供給するものであり、高周波発振器とも称される。
【0003】
電源装置は、出荷前に要求通りの出力を得られるか否かの確認が行われる。またその際に各種のパラメータが調節される。
従来技術においては、電源装置にカレントトランスを介して誘導加熱コイルを接続し、誘導加熱コイルを試験用の疑似加熱物に近接して疑似加熱物を誘導加熱しつつ出力の確認と、パラメータの調節が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波発振器とも称される電源装置は、誘導加熱コイルを含んだ共振回路を構成するものであり、当該共振回路を共振させて高周波電流を生成するものである。また誘導加熱コイルによって加熱される疑似加熱物と誘導加熱コイルとの距離も共振に影響を与える。
これに対して従来技術で使用されていた試験用の疑似加熱物は、鉄塊に過ぎず、疑似加熱物と誘導加熱コイルとの距離を変更することができない。そのため出力試験を行うに際しては、複数の誘導加熱コイルと複数の疑似加熱物を用意し、これらの組合せを適宜変更して、適切な発振が生じる組合せを探る必要があった。
【0006】
本発明は、従来技術の上記した問題に注目し、電源装置に望ましい発振を生じさせることが可能な電源検査装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための態様は、誘導加熱装置の電源装置の出力を確認する電源検査装置であって、誘導加熱コイルと、疑似加熱物と、移動手段を有し、前記疑似加熱物は、外径が連続的に又は段階的に変化する外郭部材と、外郭部材の内側にあって冷却液が通過する冷却流路を有し、前記誘導加熱コイルは前記外郭部材を取り巻く位置に配され、前記移動手段によって、前記誘導加熱コイルと前記疑似加熱物の少なくともいずれかを移動させて、前記誘導加熱コイルが取り巻く位置を変化させることができることを特徴とする電源検査装置である。
【0008】
本態様の電源検査装置は、誘導加熱コイルと、疑似加熱物と、移動手段を有している。そして誘導加熱コイルは外郭部材を取り巻く位置に配され、移動手段によって、誘導加熱コイルが取り巻く位置を変化させることができる。
本態様で採用する疑似加熱物は、外郭部材の外径が連続的に又は段階的に変化する。そのため、移動手段によって、誘導加熱コイルが取り巻く位置を変化させると、誘導加熱コイルが対向する位置の疑似加熱物の外径が変わる。従って、誘導加熱コイルと疑似加熱物の間の隙間が変化し、誘導加熱コイルと疑似加熱物の距離が変わる。
また本態様の疑似加熱物は、外郭部材の内側に冷却液が通過する冷却流路が設けられている。そのため本態様の電源検査装置では、冷却流路に冷却液を通過させつつ誘導加熱コイルに通電して疑似加熱物を誘導加熱することができる。
本態様の電源検査装置では、疑似加熱物に誘導加熱コイルによって誘導電流が励起され疑似加熱物が発熱することとなるが、同時に冷却液によって疑似加熱物から熱が奪われる。そのため疑似加熱物の温度が一定以下に保たれ、疑似加熱物が溶融したり変形することが防がれる。そのため本態様の電源検査装置では、比較的長時間に渡って誘導加熱コイルに通電し続けることができ、誘導加熱コイルに通電しながら移動手段によって誘導加熱コイルが取り巻く位置を変化させ、適切な発振が起こる誘導加熱コイルと疑似加熱物の距離を探り当てることができる。
また比較的長時間に渡って誘導加熱コイルに通電し続けることができるので、その間に、各種パラメータ等の調節を行うことができる。
【0009】
上記した態様において、前記外郭部材が錐形であることが望ましい。
【0010】
本態様で採用する外郭部材は、円錐形や角錐形、或いは円錐台形等の錐形であり、外径が連続的に変化する。
【0011】
上記した態様において、前記外郭部材の内部に内郭部材があり、前記外郭部材の内面と内郭部材の外面との間で前記冷却流路が構成されていることが望ましい。
【0012】
本態様によると、外郭部材の裏面側にまんべんなく冷却液を通過させることができる。
【0013】
上記した態様において、前記外郭部材の内部に前記冷却流路を構成する空間があり、前記空間の下部側に通水口があり、前記空間の上部側に排水口があり、冷却液が前記通水口から導入されて前記冷却流路に入り、前記排水口を経由して外部に排出されることが望ましい。
【0014】
本態様で採用する疑似加熱物では、外郭部材の内部に冷却流路を構成する空間があり、外郭部材の内部に冷却液が流れる。
本態様の疑似加熱物では、冷却流路たる空間の下部側に通水口があり、当該空間の上部側に排水口がある。そして冷却液は空間の下方側から供給され、上部側から排出される。
そのため、仮に加熱中に冷却液の供給が停止しても、前記空間内に冷却液が残る。そのため仮に加熱中に冷却液の供給が停止しても、疑似加熱物の温度が過度に上昇することが防がれる。
【0015】
電源装置の調節方法に関する態様は、上記した電源検査装置を使用する電源装置の調節方法であって、前記誘導加熱コイルを前記外郭部材の特定の径の位置に停止させた状態で、前記冷却流路に冷却液を供給し、且つ電源装置から前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しつつ、電源装置を調節することを特徴とする。
【0016】
本態様の電源装置の調節方法によると、誘導加熱コイルと疑似加熱物の距離を適切な距離に保ち、誘導加熱コイルに高周波電流を供給して疑似加熱物を発熱させつつ、冷却流路に冷却液を供給して疑似加熱物から熱を奪うので、疑似加熱物の温度が過度に上昇せず、疑似加熱物の溶融や焼損が起きにくい。そのため、比較的長時間に渡って誘導加熱コイルに通電し続けることができ、その間に、各種パラメータ等の調整を行うことができる。
【0017】
また同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、誘導加熱装置の電源装置の出力を確認する際に使用される疑似加熱物であって、外径が連続的に又は段階的に変化する外郭部材と、外郭部材の内側にあって冷却液が通過する冷却流路を有し、前記外郭部材は、錐形であり、前記外郭部材を取り巻く位置に前記誘導加熱コイルを配して、当該誘導加熱コイルで前記外郭体を加熱しつつ電源装置を調整することが可能であることを特徴とする疑似加熱物である。
【0018】
本態様の疑似加熱物は、外郭部材の外径が連続的に変化するので、誘導加熱コイルと疑似加熱物の距離を変えることができる。
また本態様の疑似加熱物は、外郭部材の内側に冷却液が通過する冷却流路が設けられているので、疑似加熱物を誘導加熱することによって発生した熱を冷却液によって奪うことができる。そのため試験中、疑似加熱物の温度が一定以下に保たれ、疑似加熱物が溶融したり変形することが防がれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電源検査装置によると、電源装置に望ましい発振を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態の電源検査装置の斜視図である。
【
図2】
図1の電源検査装置の疑似加熱物と誘導加熱コイルの断面図であり、(a)は、誘導加熱コイルが疑似加熱物の上部側と対向している状態を示し、(b)は、誘導加熱コイルが疑似加熱物の下部寄りの位置と対向している状態を示し、(c)は、誘導加熱コイルの拡大断面図である。
【
図5】(a)乃至(d)は、本発明の他の実施形態の電源検査装置の疑似加熱物の正面図又は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の電源検査装置1は、
図4に示す様な高周波焼き入れ装置100の高周波発振器(電源装置)101を検査対象とし、これの出力確認と、各種の調節を行うものである。
本実施形態の電源検査装置1は、
図1、
図3の様に、誘導加熱コイル2と、疑似加熱物5と、移動手段6によって構成されている。
【0022】
誘導加熱コイル2は、図の様なワンターンコイルであり、内部に
図2の様な冷却流路7を有している。冷却流路7には冷却液が流される。誘導加熱コイル2のコイル線は、
図2の拡大図の様に、外周壁15と、内周壁11を有し、両者が上面壁12と、下面壁13で結ばれたものである。
本実施形態の誘導加熱コイル2は、断面形状が台形であり、内周壁11が傾斜している。内周壁11の傾斜角度は、後記する外郭部材20の側面26の角度と略等しい。
誘導加熱コイル2の他の構成は、高周波焼き入れに使用される公知のワンターンコイルと同じであるから、詳細な説明を省略する。
【0023】
疑似加熱物5は、
図2、
図3の様に、外郭部材20と、内郭部材21及び底板部材22を有し、両者の間に冷却流路23が形成されたものである。
外郭部材20は、外形形状が円錐台形状である。外郭部材20は、天面25と、側面26で覆われており、内部は空洞である。外郭部材20の下端にはフランジ27が設けられている。
外郭部材20の頂角Aは、10度から30度であり、好ましくは15度から25度である。
外郭部材20は、前記した様に円錐台形状であるから、軸方向(Y-Y)の位置によって、外径が異なっている。本実施形態では、図の下に向かうにつれて直径が連続的に大きくなっている。
外郭部材20は、鉄材(正確には鋼板)で作られている。即ち外郭部材20は、誘導加熱される素材で作られている。
【0024】
内郭部材21は、外郭部材20と略相似形であって外郭部材20よりも小さい部材である。即ち内郭部材21は円錐台形状である。内郭部材21は、天面30と、側面31及び底面32が壁で覆われている。内郭部材21には、円錐台形の軸方向にのびる排水管33が内蔵されている。排水管33の上端は、内郭部材21の天面30に開いている。排水管33の下方側は、内郭部材21の底面32を貫通している。
内郭部材21の素材は限定されるものではないが、本実施形態では鋼材で作られている。
【0025】
底板部材22は、平面視が円形の板であり、
図2、
図3の様に、複数の開口40、41、42が設けられている。両側の開口40、42は、通水口として機能するものであり、給水管43、45が接続されている。中央の開口41は、排水口として機能するものであり、内郭部材21の排水管33が貫通している。なお排水管33は、中央の開口41に溶接されており、開口41の周囲から冷却液が漏れることはない。
【0026】
疑似加熱物5は、
図2、
図3の様の様に、外郭部材20の底面に底板部材22が取り付けられ、外郭部材20と底板部材22によって囲まれた閉塞空間に、内郭部材21が内蔵されたものである。
即ち、
図2、
図3の様の様に、外郭部材20の底面に底板部材22が取り付けられている。具体的には、外郭部材20のフランジ27が底板部材22にあわせられ、両者の間にネジ28を挿通すことによって外郭部材20が底板部材22に固定されている。なお、外郭部材20のフランジ27と底板部材22の間には図示しないパッキンが介在されている。
外郭部材20と底板部材22によって囲まれた閉塞空間に、内郭部材21が内蔵されている。内郭部材21は、図示しない支持部材によって、底板部材22の少し上に固定されている。
内郭部材21の天面30及び側面31と、外郭部材20の天面25及び側面26の間には隙間があり、当該隙間が冷却流路23として機能する。
通水口として機能する底板部材22の開口40、42は、冷却流路23に開いている。
【0027】
移動手段6は、固定板50と移動板51を有し、両者の間にパンタグラフ機構の昇降機構58が設けられたものである。移動手段6にはハンドル52があり当該ハンドル52を回すことによって移動板51が昇降する。
【0028】
疑似加熱物5は、
図1の様に、移動手段6の移動板51に脚部材53を介して取り付けられている。
そして脚部材53の部分で、給水管43、45と排水管33に、給水ホース55、56と、排水ホース57が接続されている。
【0029】
誘導加熱コイル2は、
図1、
図2の様に、疑似加熱物5の外郭部材20を取り巻く位置に配されている。誘導加熱コイル2の中心は、外郭部材20の中心軸Y-Yが通過する位置にある。
誘導加熱コイル2は、図示しない支持部材で一定の高さに固定されている。
【0030】
次に、電源検査装置1の使用方法について説明する。本実施形態の電源検査装置1は、前記した様に、高周波焼き入れ装置100の高周波発振器(電源装置)101を検査対象とし、これの出力確認と、各種の調整を行うものである。
図4の様に、高周波発振器(電源装置)101は、商用電源205に接続されて給電され、高周波電流を出力するものである。
高周波発振器101の出力側は、カレントトランス106を介して本実施形態の電源検査装置1の誘導加熱コイル2に接続される。なおカレントトランス106の一次側にはコンデンサー107が並列に接続されている。
【0031】
また給水ホース55、56を介して、疑似加熱物5の冷却流路23に冷却液が供給される。冷却液は、通水口たる開口40、42から冷却流路23を流れる。ここで本実施形態の冷却流路23は、外郭部材20の側面26を構成する壁の直近の領域にあるから、冷却液は、外郭部材20の側面26の近傍を集中的に流れる。また外郭部材20の内面と内郭部材21の外面によって冷却流路23が形成されており、外郭部材20と内郭部材21は相似形に近い形であるから、冷却流路23は外郭部材20の内周に広がっており、冷却液は外郭部材20の内壁にくまなく行きわたる。
冷却液は、外郭部材20の側面26の内側を通過して外郭部材20の天面25と内郭部材21の天面30の間の領域に至り、排水管33に入って疑似加熱物5の外部に排出される。
【0032】
高周波発振器101を起動することによって、電源検査装置1の誘導加熱コイル2に高周波電流が流れる。電源検査装置1の外郭部材20は鉄材で作られているので、外郭部材20には誘導電流が励起され、疑似加熱物5の外郭部材20が発熱する。しかしながら、外郭部材20の裏面側に集中的に冷却液が通過するので、外郭部材20の昇温はさほどではなく、溶融温度には至らない。
本実施形態では、冷却液は下部側から供給されて頂上部から排出されるので、仮に作業中に冷却液の供給が停止しても、冷却液は冷却流路23に残るから、外郭部材20の焼損を防ぐことができる。
【0033】
本実施形態では、疑似加熱物5の冷却流路23に冷却液を通水しつつ、高周波発振器(電源装置)101から誘導加熱コイル2に通電し、その間の高周波発振器101の出力を図示しない計測手段でモニターする。多くの場合、高周波発振器101自体に出力計があり、作業者は、高周波発振器101の出力計を監視することとなる。
そしてこの状態で、移動手段6のハンドル52を回動して、疑似加熱物5の高さを変えてゆく。
【0034】
本実施形態では、誘導加熱コイル2が一定の高さに固定されているので、疑似加熱物5の高さを変えることにより、誘導加熱コイル2と対向する位置が変化する。ここで本実施形態で採用する外郭部材20は、円錐台形状であり、高さによって外径が異なる。そのため疑似加熱物5の高さを変えて誘導加熱コイル2が対向する位置を変化させることにより、誘導加熱コイル2と疑似加熱物5との間の隙間が変化し、誘導加熱コイル2と疑似加熱物5との距離が変わる。
その結果、高周波発振器101の出力が変化する。
作業者は、目標の出力が得られることを確認すると、その出力が得られた状態で、各種のパラメータ等を調節する。
【0035】
本実施形態の電源検査装置1では、比較的長時間に渡って誘導加熱コイルに通電し続けることができるので、発振に適切な誘導加熱コイルと疑似加熱物の距離を探り当て易い。またパラメータ等の調節についても時間的に余裕を持って行うことができる。
【0036】
本実施形態の電源検査装置1では、疑似加熱物5の外形が円錐台状であり、直径の変化が連続的であるから、移動手段6で疑似加熱物5を上下して誘導加熱コイル2が対向する位置を変化させることにより、高周波発振器101の出力が概ね連続的に変化する。特に本実施形態では、誘導加熱コイル2の内面の傾斜が疑似加熱物5の外形の傾斜と近似しているので、誘導加熱コイル2と疑似加熱物5との間の隙間が連続的に変化する。そのため適切な発振に適切な誘導加熱コイルと疑似加熱物の距離を探り当て易い。
【0037】
しかしながら本発明はこれらの構成に限定されるものではなく、例えば
図5(a)に示す外郭部材60の様な、外径が段階的に変化する形状のものであってもよい。
また
図5(b)に示す外郭部材61の様な多角推台であってもよく、
図5(c)に示す外郭部材62の様な先端が尖った形状であってもよい。
また
図5(d)に示す外郭部材63の様に、側面のシルエットが曲線状であってもよい。
【0038】
以上説明した実施形態では、疑似加熱物5を上下方向に移動することによって誘導加熱コイル2が対向する位置の外径を変化させたが、誘導加熱コイル2を移動させて誘導加熱コイル2が対向する位置の外径を変化させてもよい。
【0039】
以上説明した実施形態では、疑似加熱物5を縦置きにしたが、疑似加熱物5の姿勢は任意であり、疑似加熱物5を横置きにして、疑似加熱物5又は誘導加熱コイル2を水平移動してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 電源検査装置
2 誘導加熱コイル
5 疑似加熱物
6 移動手段
7 冷却流路
20 外郭部材
40、42 開口(通水口)
41 開口(排水口)
43、45 給水管
60、61、62、63 外郭部材
100 高周波焼き入れ装置
101 高周波発振器(電源装置)
106 カレントトランス