(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101312
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005223
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】下平 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】松田 勇
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 誠
(72)【発明者】
【氏名】児玉 究
(72)【発明者】
【氏名】瀬町 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】小森 裕也
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CD04
2G058EA02
2G058EA04
2G058GA11
2G058GE08
(57)【要約】
【課題】電極ユニットの異常判定の精度を向上すること。
【解決手段】実施形態に係る自動分析装置は、電極ユニットと、設定部と、測定部と、抽出部と、判定部とを備える。電極ユニットは、電位を測定する。設定部は、測定環境を含む測定条件を設定する。測定部は、測定条件において、電極ユニットで用いられる校正液を連続して複数回の測定をすることによって第1の測定データを生成する。抽出部は、抽出条件に基づいて第1の測定データから基準データを抽出する。判定部は、基準データと、測定条件および抽出条件に基づく比較対象データとに基づいて、電極ユニットの異常を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位を測定する電極ユニットと、
測定環境を含む測定条件を設定する設定部と、
前記測定条件において、前記電極ユニットで用いられる校正液を連続して複数回の測定をすることによって第1の測定データを生成する測定部と、
抽出条件に基づいて前記第1の測定データから基準データを抽出する抽出部と、
前記基準データと、前記測定条件および前記抽出条件に基づく比較対象データとに基づいて、前記電極ユニットの異常を判定する判定部と
を具備する、自動分析装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記電極ユニットによる測定結果が変動しうる第1のタイミングで前記第1の測定データを生成する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記第1のタイミングは、前記校正液のロットが切り替わったタイミング、ハードウェアのメンテナンス後のタイミング、および前記電極ユニットの日常的なメンテナンス時のタイミングの少なくともいずれかである、
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記測定条件において、前記第1の測定データと測定タイミングの異なる第2の測定データを生成し、
前記抽出部は、前記抽出条件に基づいて前記第2の測定データから前記比較対象データを抽出する、
請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記第1のタイミングと測定タイミングの異なる第2のタイミングで前記第2の測定データを生成する、
請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記第2のタイミングは、前記第1のタイミングを基準とした予め設定されたスケジュールに基づくタイミングである、
請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記基準データの波形と前記比較対象データの波形との差分に基づいて前記電極ユニットの異常を判定する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記基準データの波形および前記比較対象データの波形は、どちらも電極電位と時間とを対応付けたものである、
請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記差分は、波形の立ち上がり時間、波形の電位ピーク値、波形の電位平均値、および波形の傾きの少なくともいずれかに関する、
請求項8に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記基準データと前記測定条件とを対応付けてメモリに記憶させる制御部
を更に具備し、
前記設定部は、前記メモリから読み出した前記測定条件を設定し、
前記測定部は、前記測定条件において、前記第1の測定データと測定タイミングの異なる第2の測定データを生成し、
前記抽出部は、前記抽出条件に基づいて前記第2の測定データから前記比較対象データを抽出する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記比較対象データと前記測定条件とを対応付けて前記メモリに記憶させる、
請求項10に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記測定環境は、前記電極ユニット以外の他のユニットの動作状況である、
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項13】
前記測定条件は、前記他のユニットの動作の停止を含む、
請求項12に記載の自動分析装置。
【請求項14】
前記測定条件は、前記電極ユニットが有する電極の温度を含む、
請求項13に記載の自動分析装置。
【請求項15】
前記第1の測定データは、前記複数回の測定に対応する複数の測定期間を有し、
前記抽出条件は、前記複数の測定期間のうちの2番目以降の任意の測定期間を抽出することである、
請求項12に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的に溶液中の特定の電解質濃度を測定するイオン選択性電極は、現在広く自動分析装置に組み込まれ、主に生体由来の試料中のナトリウムイオン、カリウムイオン、およびクロルイオンの測定に用いられている。イオン選択性電極の測定系(ユニット)の異常判定に関する技術として、ハードウェアの動作タイミングと電極センサ出力の変動とを関連付けて監視することで、測定系の異常を判定する技術がある。また、反応過程を継続的にモニタすることで経年劣化による影響を判定する技術がある。また、複数の検体の測定結果から測定系の異常を検知する技術がある。また、複数の校正液の測定結果から測定系の異常を検知する技術がある。
【0003】
しかし、これまでのイオン選択性電極のユニットの異常検知方法は、試料濃度、校正液のロット、および溶液の温度などの条件が異なると、検知結果に大きな影響を与える可能性がある。これにより、反応過程もこれらの条件の変動により大きく変化する可能性がある。この変動をユニットの異常による変動と識別することは困難であり、異常判定の精度低下につながっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-233771号公報
【特許文献2】特開2009-121817号公報
【特許文献3】特開2008-102131号公報
【特許文献4】特開2012-42359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、電極ユニットの異常判定の精度を向上することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る自動分析装置は、電極ユニットと、設定部と、測定部と、抽出部と、判定部とを備える。電極ユニットは、電位を測定する。設定部は、測定環境を含む測定条件を設定する。測定部は、測定条件において、電極ユニットで用いられる校正液を連続して複数回の測定をすることによって第1の測定データを生成する。抽出部は、抽出条件に基づいて第1の測定データから基準データを抽出する。判定部は、基準データと、測定条件および抽出条件に基づく比較対象データとに基づいて、電極ユニットの異常を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における基準データ作成処理の動作を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態における各イオンの電極電位と時間とを対応付けてグラフで示した測定データを示す図である。
【
図6】
図6は、
図5の測定データから抽出された基準データを示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態における電極ユニット異常検知処理の動作を例示するフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7のデータ判定処理の動作を例示するフローチャートである。
【
図9】
図9は、本実施形態における基準データと比較対象データとの種々の差分についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成例を示すブロック図である。例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8および制御回路9を備える。尚、制御回路は、処理回路に言い換えられてもよい。
【0010】
分析機構2は、標準試料または被検試料などの試料と、当該試料に設定される各種検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、試料と試薬との混合液を測定し、例えば、吸光度に関連付けられた標準データおよび被検データを生成する。また、分析機構2は、試料と試薬との混合液を測定し、例えば、電極電位に関連付けられた標準データおよび被検データを生成する。
【0011】
解析回路3は、生成された標準データおよび被検データを解析することで、検量データおよび分析データなどを生成するプロセッサである。解析回路3は、記憶回路8から動作プログラムを読み出し、読み出した動作プログラムに従って検量データおよび分析データなどを生成する。例えば、解析回路3は、標準データに基づき、標準データと、標準試料について予め設定された標準値との関係を示す検量データを生成する。また、解析回路3は、被検データと、当該被検データに対応する検査項目の検量データとに基づき、分析データを生成する。分析データには、濃度値と酵素の活性値とを対応づけたデータおよび試料中の所望のイオンの濃度を時系列に記録したデータなどがある。解析回路3は、生成した検量データおよび分析データなどを制御回路9へ出力する。
【0012】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベアおよびリードスクリューなどにより実現される。例えば、駆動機構4は、後述する反応ディスク201を所定の回動角度で回動させる。所定の回動角度とは、例えば、1サイクルにおいて回動する角度である。
【0013】
入力インタフェース5は、例えば、操作者の操作によって、病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータなどの設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、および、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッドなどにより実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。
【0014】
なお、本明細書において、入力インタフェース5は、マウスおよびキーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、入力インタフェース5は、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、当該電気信号を制御回路9へ出力する処理回路でもよい。
【0015】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路および音声デバイスなどにより実現される。
【0016】
表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイおよびプラズマディスプレイなどを含む。また、表示回路は、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、当該ビデオ信号を外部へ出力する処理回路でもよい。印刷回路は、例えば、プリンタなどを含む。また、印刷回路は。印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路でもよい。音声デバイスは、例えば、スピーカなどを含む。また、音声デバイスは、音声信号を外部へ出力する出力回路でもよい。
【0017】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システムを介してHISとデータ通信を行ってもよい。
【0018】
記憶回路8は、磁気的記録媒体、光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体などを含む。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現されない。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0019】
また、記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、または、通信インタフェース7によって病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダなどを記憶する。オーダ情報には、試料ID、測定対象となる試料について必要とされる検査項目、および、検査に関する測定順序が含まれる。記憶回路8は、自動分析装置1の各部の一連の動作を1サイクルで実行させるための各種設定値を記憶する。記憶回路8は、制御回路9で読み出される動作プログラムを記憶する。
【0020】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。例えば、制御回路9は、分析機構2の各部を駆動させるための制御信号を駆動機構4へと出力する。制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。尚、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶するメモリを備えても構わない。本実施形態に係る制御回路9の機能については後述される。
【0021】
図2は、
図1の分析機構の構成例を示す図である。例えば、
図2に示すように、分析機構2は、反応ディスク201、恒温部202、ラックサンプラ203、第1試薬庫204および第2試薬庫205を備える。また、分析機構2は、試料分注アーム206、試料分注プローブ207、洗浄槽207a、洗剤貯留容器207b、第1試薬分注アーム208、第1試薬分注プローブ209、洗浄槽209a、第2試薬分注アーム210、第2試薬分注プローブ211、洗浄槽211a、電極ユニット212、測光ユニット213、洗浄ユニット214および攪拌ユニット216を備える。
【0022】
以下では、まず、反応ディスク201、恒温部202、ラックサンプラ203、第1試薬庫204および第2試薬庫205について説明する。
【0023】
反応ディスク201は、複数の反応管2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、駆動機構4により、既定の時間間隔(以下、1サイクルと称する)、例えば4.5秒で回動と停止とが交互に繰り返される。反応管2011は、例えば、ガラス、ポリプロピレン(polypropylene:PP)、またはアクリルにより形成されている。尚、反応管2011は、反応容器またはセルと呼ばれてもよい。また、検査中の反応ディスク201の動作は、サイクル動作と呼ばれてもよい。
【0024】
恒温部202は、所定の温度(通常37℃)に保たれた水(恒温水)を貯留する容器である。恒温水には、例えば、抗菌目的のために添加剤が含まれている。恒温部202は、貯留している恒温水に反応管2011を浸漬させることで、反応管2011に収容される液体(例えば、混合液)を加温して一定の温度に保つ。
【0025】
ラックサンプラ203は、測定を依頼された試料を収容する複数の試料容器100を保持可能な試料ラック2031を、移動可能に支持する。
図2に示す例では、5本の試料容器100を並列して保持可能な試料ラック2031が示されている。
【0026】
ラックサンプラ203は、リーダ300を有する。リーダ300は、例えば試料容器100に付された光学式マークを読取り可能な位置に設けられている。光学式マークは、試料容器100に収容される試料の識別情報などを符号化したマーク、例えば、バーコード、1次元画素コードおよび2次元画素コードなどである。リーダ300は、制御回路9からのID読取開始の指示を契機として、光学式マークの読取りを開始する。リーダ300は、光学式マークを読取り可能な位置に試料容器100が到着すると、当該光学式マークから試料の識別情報を読み取る。リーダ300は、読取った識別情報を制御回路9に供給する。なお、リーダ300は、RFID(Radio Frequency IDentification)などを利用した他のセンサで代替してもよい。
【0027】
ラックサンプラ203には、試料ラック2031が投入される投入位置から、測定が完了した試料ラック2031を回収する回収位置まで、試料ラック2031を搬送する搬送領域が設けられている。搬送領域では、短手方向に整列された複数の試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D1へ移動される。
【0028】
また、ラックサンプラ203には、試料ラック2031で保持される試料容器100を所定のサンプル吸引位置へ移動させるため、試料ラック2031を搬送領域から引き込む引き込み領域が設けられている。サンプル吸引位置は、例えば、後述される試料分注プローブ207の回動軌道と、ラックサンプラ203で支持されて試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。引き込み領域では、搬送されてきた試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D2へ移動される。また、引き込み領域の光学式マークを読取り可能な位置では、方向D2に移動された試料ラック2031に保持された試料容器に記されている光学式マークがリーダ300により読み取られる。
【0029】
また、ラックサンプラ203には、試料が吸引された試料容器を保持する試料ラック2031を搬送領域へ戻すための戻し領域が設けられている。戻し領域では、試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D3へ移動される。
【0030】
第1試薬庫204は、標準試料に含まれる所定の成分または被検試料に含まれる所定の成分に反応する第1試薬を収容する試薬容器101を複数保冷する。
図2では図示していないが、第1試薬庫204は、着脱自在な試薬カバーで覆われている。第1試薬庫204内には、試薬ラックが回転自在に設けられている。試薬ラックは、複数の試薬容器101を円環状に配列して保持する。試薬ラックは、駆動機構4により回動される。
【0031】
第1試薬庫204上の所定の位置には、第1試薬吸引位置が設定されている。第1試薬吸引位置は、例えば、後述される第1試薬分注プローブ209の回動軌道と、試薬ラックに円環状に配列される試薬容器101の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。
【0032】
第2試薬庫205は、例えば、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器101を複数保冷する。
図2では図示していないが、第2試薬庫205は、着脱自在な試薬カバーで覆われている。第2試薬庫205内には、試薬ラックが回転自在に設けられている。試薬ラックは、複数の試薬容器101を円環状に配列して保持する。なお、第2試薬庫205で保冷される第2試薬は、第1試薬庫204で保冷される第1試薬と同一成分、かつ、同一濃度の試薬でもよい。
【0033】
第2試薬庫205上の所定の位置には、第2試薬吸引位置が設定されている。第2試薬吸引位置は、例えば、第2試薬分注プローブ211の回動軌道と、試薬ラックに円環状に配列される試薬容器101の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。
【0034】
次に、試料分注アーム206、試料分注プローブ207、洗浄槽207a、洗剤貯留容器207b、第1試薬分注アーム208、第1試薬分注プローブ209、洗浄槽209a、第2試薬分注アーム210、第2試薬分注プローブ211、洗浄槽211a、電極ユニット212、測光ユニット213、洗浄ユニット214および攪拌ユニット216について説明する。
【0035】
試料分注アーム206は、反応ディスク201とラックサンプラ203との間に設けられている。試料分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。試料分注アーム206は、一端に試料分注プローブ207を保持する。
【0036】
試料分注プローブ207は、試料分注アーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器の開口部が位置するようになっている。
【0037】
また、試料分注プローブ207の回動軌道上には、試料分注プローブ207が吸引した試料を反応管2011へ吐出するためのサンプル吐出位置が設けられている。サンプル吐出位置は、試料分注プローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応管2011の移動軌道との交点に相当する。
【0038】
また、試料分注プローブ207の回動軌道上のサンプル吸引位置およびサンプル吐出位置とは異なった位置には、試料分注プローブ207が洗浄される洗浄位置が設けられている。洗浄位置には、試料分注プローブ207を洗浄する洗浄槽207aが設けられている。
【0039】
また、試料分注プローブ207の回動軌道上のサンプル吸引位置、サンプル吐出位置および洗浄位置とは異なった位置には、試料分注プローブ207が洗剤を吸引するための洗剤吸引位置が設けられてもよい。洗剤吸引位置には、後述する電極ユニットの洗浄に用いる洗剤を貯留する洗剤貯留容器207bが設けられてもよい。
【0040】
試料分注プローブ207は、駆動機構4によって駆動され、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の直上、サンプル吐出位置、洗浄位置または洗剤吸引位置において上下方向に移動する。
【0041】
また、試料分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、試料容器の開口部から試料を吸引する。また、試料分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル吐出位置の直下に位置する反応管2011へ吐出する。試料分注プローブ207は、この一連の分注動作を、例えば、1サイクルの間に1回実施する。
【0042】
また、試料分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、試料分注プローブ207の回動軌道上の洗浄位置の直下に位置する洗浄槽207aから洗浄液を吸引する。洗浄液は、例えば、純水、プローブ洗浄用のアルカリ性洗剤またはプローブ洗浄用の酸性洗剤などである。試料分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した洗浄液を、サンプル吐出位置の直下に位置する反応管2011へ吐出する。これにより、試料分注プローブ207およびサンプル吐出位置の直下に位置する反応管2011が洗浄される。試料分注プローブ207は、この一連の洗浄動作を、例えば、1サイクルの間に1回実施する。
【0043】
また、自動分析装置1において洗剤貯留容器207bが備えられている場合、試料分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、試料分注プローブ207の回動軌道上の洗剤吸引位置の直下に位置する洗剤貯留容器207bから洗剤を吸引する。また、試料分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した洗剤をサンプル吐出位置の直下に位置する反応管2011へ吐出する。試料分注プローブ207は、この一連の分注動作を、例えば、1サイクルの間に1回実施する。
【0044】
第1試薬分注アーム208は、反応ディスク201と第1試薬庫204との間に設けられている。第1試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。第1試薬分注アーム208は、一端に第1試薬分注プローブ209を保持する。
【0045】
第1試薬分注プローブ209は、第1試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、第1試薬吸引位置が設けられている。また、第1試薬分注プローブ209の回動軌道上には、第1試薬分注プローブ209が吸引した試薬を反応管2011へ吐出するための第1試薬吐出位置が設定されている。第1試薬吐出位置は、第1試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応管2011の移動軌道との交点に相当する。さらに、第1試薬分注プローブ209の回動軌道上の第1試薬吸引位置および第1試薬吐出位置とは異なった位置には、第1試薬分注プローブ209が洗浄される洗浄位置が設けられている。洗浄位置には、第1試薬分注プローブ209を洗浄する洗浄槽209aが設けられている。
【0046】
第1試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の第1試薬吸引位置、第1試薬吐出位置または洗浄位置において上下方向に移動する。
【0047】
第1試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、第1試薬吸引位置の直下に位置する試薬容器から第1試薬を吸引する。すなわち、第1試薬分注プローブ209は、本実施形態に係る試薬分注プローブの一例である。また、第1試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した第1試薬を、第1試薬吐出位置の直下に位置する反応管2011へ吐出する。第1試薬分注プローブ209は、この一連の分注動作を、例えば、1サイクルの間に1回実施する。
【0048】
第1試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、第1試薬分注プローブ209の回動軌道上の洗浄位置の直下に位置する洗浄槽209aから洗浄液を吸引する。第1試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した洗浄液を、第1試薬吐出位置の直下に位置する反応管2011へ吐出する。これにより、第1試薬分注プローブ209および第1試薬吐出位置の直下に位置する反応管2011が洗浄される。第1試薬分注プローブ209は、この一連の洗浄動作を、例えば、1サイクルの間に1回実施する。
【0049】
第2試薬分注アーム210は、反応ディスク201と第2試薬庫205との間に設けられている。第2試薬分注アーム210は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。第2試薬分注アーム210は、一端に第2試薬分注プローブ211を保持する。
【0050】
第2試薬分注プローブ211は、第2試薬分注アーム210の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、第2試薬吸引位置が設けられている。
【0051】
また、第2試薬分注プローブ211の回動軌道上には、第2試薬分注プローブ211が吸引した試薬を反応管2011へ吐出するための第2試薬吐出位置が設定されている。第2試薬吐出位置は、第2試薬分注プローブ211の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応管2011の移動軌道との交点に相当する。
【0052】
また、第2試薬分注プローブ211の回動軌道上には、第2試薬分注プローブ211が吸引した洗剤を反応管へ吐出するための洗剤吐出位置が設定されている。洗剤吐出位置は、第2試薬分注プローブ211の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応管2011の移動軌道との交点に相当し、第2試薬吐出位置とは異なる位置である。
【0053】
また、第2試薬分注プローブ211の回動軌道上の第2試薬吸引位置、第2試薬吐出位置および洗剤吐出位置とは異なった位置には、第2試薬分注プローブ211が洗浄される洗浄位置が設けられている。洗浄位置には、第2試薬分注プローブ211を洗浄する洗浄槽211aが設けられている。
【0054】
第2試薬分注プローブ211は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の第2試薬吸引位置、第2試薬吐出位置、洗剤吐出位置または洗浄位置において上下方向に移動する。
【0055】
第2試薬分注プローブ211は、制御回路9の制御に従い、第2試薬吸引位置の直下に位置する試薬容器から第2試薬を吸引する。すなわち、第2試薬分注プローブ211は、本実施形態に係る試薬分注プローブの一例である。また、第2試薬分注プローブ211は、制御回路9の制御に従い、吸引した第2試薬を、第2試薬吐出位置の直下に位置する反応管2011へ吐出する。第2試薬分注プローブ211は、この一連の分注動作を、例えば、1サイクルの間に1回実施する。
【0056】
第2試薬分注プローブ211は、制御回路9の制御に従い、第2試薬分注プローブ211の回動軌道上の洗浄位置の直下に位置する洗浄槽211aから洗浄液を吸引する。第2試薬分注プローブ211は、制御回路9の制御に従い、吸引した洗浄液を、第2試薬吐出位置の直下に位置する反応管2011へ吐出する。これにより、第2試薬分注プローブ211および第2試薬吐出位置の直下に位置する反応管2011が洗浄される。第2試薬分注プローブ211は、この一連の洗浄動作を、例えば、1サイクルの間に1回実施する。
【0057】
電極ユニット212は、反応管2011内に吐出された試料と試薬との混合液の電解質濃度を測定する。電極ユニット212は、イオン選択性電極(Ion Selective Electrode:ISE)および参照電極を有する。電極ユニット212は、制御回路9の制御に従い、測定対象の混合液について、ISEと参照電極との間の電位を測定することによって、検査項目であるイオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、およびクロルイオン(塩素イオン))の電解質を検出する。電極ユニット212は、電位を測定したデータを標準データまたは被検データとして解析回路3へと出力する。以下、
図3を参照して、電極ユニット212の構成について詳細に説明する。
【0058】
図3は、
図2の電極ユニットの構成例を示す図である。例えば、
図3に示すように、電極ユニット212は、検出部410と、校正液貯留容器420(校正液ポット)と、校正液供給ポンプ430と、校正液タンク440と、校正液廃棄ポンプ450と、廃液タンク460と、吸引ポンプ470とを備える。
【0059】
また、校正液供給ポンプ430と校正液貯留容器420との間には、例えばチューブで接続された流路FP1が設けられている。同様に、校正液供給ポンプ430と校正液タンク440との間には、流路FP2が設けられている。校正液廃棄ポンプ450と校正液貯留容器420との間には、流路FP3が設けられている。校正液廃棄ポンプ450と廃液タンク460との間には、流路FP4が設けられている。吸引ポンプ470と検出部410との間には、流路FP5が設けられている。吸引ポンプ470と廃液タンク460との間には、流路FP6が設けられている。
【0060】
検出部410は、駆動機構4によって駆動され、校正液吸引位置P1と混合液吸引位置P2とを移動する。校正液吸引位置P1は、校正液貯留容器420上に設定される。混合液吸引位置P2は、反応ディスク201における反応管2011上に設定される。また、検出部410は、吸引ノズルを有し、吸引ポンプ470により、校正液吸引位置P1で校正液を吸引し、混合液吸引位置P2で混合液を吸引する。
【0061】
また、検出部410は、前述のISEおよび参照電極を有し、校正液または混合液の電位を測定する。検出部410は、校正液または混合液に関する測定データを解析回路3へと出力する。
【0062】
校正液貯留容器420は、所定量の校正液を貯留する。貯留される校正液は、校正液供給ポンプ430により供給される。また、校正液を入れ換える際には、校正液廃棄ポンプ450により吸引される。
【0063】
校正液供給ポンプ430は、例えば、プランジャ、シリンジおよび三方バルブによって構成される。三方バルブは、シリンジ、流路FP1、および流路FP2に接続される。校正液タンク440から校正液を吸引する場合、校正液供給ポンプ430は、三方バルブにおける流路FP1の接続を閉じてプランジャを動作させる。吸引した校正液を校正液貯留容器420に供給する場合、校正液供給ポンプ430は、三方バルブにおける流路FP2の接続を閉じてプランジャを動作させる。
【0064】
校正液タンク440には、校正液が収容されている。収容されている校正液は、校正液供給ポンプ430を介して、校正液貯留容器420に供給される。
【0065】
校正液廃棄ポンプ450は、例えば、プランジャ、シリンジおよび三方バルブによって構成される。三方バルブは、シリンジ、流路FP3、および流路FP4に接続される。校正液貯留容器420の校正液を吸引する場合、三方バルブにおける流路FP4の接続を閉じてプランジャを動作させる。吸引した校正液を廃液タンク460に廃棄する場合、校正液廃棄ポンプ450は、三方バルブにおける流路FP3の接続を閉じてプランジャを動作させる。
【0066】
廃液タンク460は、廃液を貯留する。貯留される廃液は、例えば、校正液貯留容器420に貯留された校正液、検出部410で吸引した混合液、および検出部410で吸引した校正液である。
【0067】
吸引ポンプ470は、例えば、プランジャ、シリンジおよび三方バルブによって構成される。三方バルブは、シリンジ、流路FP5、および流路FP6に接続される。反応管2011の混合液または校正液貯留容器420の校正液を吸引する場合、三方バルブにおける流路FP6の接続を閉じてプランジャを動作させる。吸引した混合液または校正液を廃棄する場合、三方バルブにおけるFP5の接続を閉じてプランジャを動作させる。
【0068】
標準試料には、各電解質の濃度が異なる2種類の第1の標準試料および第2の標準試料がある。第1の標準試料に含まれる各電解質の濃度を示す第1の標準値と、第2の標準試料に含まれる各電解質の濃度を示す第2の標準値とが入力インタフェース5からの入力により記憶回路8に保存されている。尚、第1の標準値および第2の標準値は、上述の標準データに含まれる。
【0069】
キャリブレーションが実行されると、試料分注プローブ207は第1の標準試料を反応管2011に分注し、第1試薬分注プローブ209は第1の標準試料が分注された反応管2011に第1試薬を分注する。第1の標準試料および第1試薬の分注により、反応管2011内では第1の標準試料が第1試薬で希釈され、校正液よりも低濃度の各電解質を含有する第1の標準混合液となる。
【0070】
また同様に、キャリブレーションが実行されると、試料分注プローブ207は第2の標準試料を反応管2011に分注し、第1試薬分注プローブ209は第2の標準試料が分注された反応管2011に第1試薬を分注する。第2の標準試料および第1試薬の分注により、反応管2011内では第2の標準試料が第1試薬で希釈され、校正液よりも高濃度の各電解質を含有する第2の標準混合液となる。
【0071】
検査が実行されると、試料分注プローブ207は各電解質の濃度が未知の被検試料を反応管2011に分注し、第1試薬分注プローブ209は被検試料が分注された反応管2011に第1試薬を分注する。被検試料および第1試薬の分注により、反応管2011内では被検試料が第1試薬で希釈された被検混合液となる。
【0072】
測光ユニット213は、反応管2011内に吐出された試料と試薬との混合液における所定の成分を光学的に測定する。測光ユニット213は、光源および光検出器を有する。測光ユニット213は、制御回路9の制御に従い、光源から光を照射する。照射された光は、反応管2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。測光ユニット213は、反応管2011から出射された光を、光検出器により検出する。
【0073】
具体的には、例えば、光検出器は、反応管2011内の標準試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度などにより表される標準データを生成する。また、光検出器は、反応管2011内の被検試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度などにより表される被検データを生成する。測光ユニット213は、生成した標準データおよび被検データを解析回路3へ出力する。
【0074】
洗浄ユニット214は、電極ユニット212または測光ユニット213において混合液の測定が終了した反応管2011の内部を洗浄する。この洗浄ユニット214は、反応管2011を洗浄するための洗浄液を供給する不図示の洗浄液供給ポンプを備えている。また、洗浄ユニット214は、洗浄液供給ポンプから供給された洗浄液の反応管2011内への吐出や、反応管2011内の混合液、及び洗浄液の各液体の吸引を行う不図示の洗浄ノズルを備えている。
【0075】
攪拌ユニット216は、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。攪拌ユニット216は、攪拌子を有し、攪拌子により、反応ディスク201上の攪拌位置に位置する反応管2011内に収容されている試料及び第1試薬、又は、反応管2011内に収容されている試料、第1試薬、及び第2試薬を攪拌する。
【0076】
次に、本実施形態に係る制御回路9の機能について述べる。
図1に示される制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、動作プログラムを実行することで、システム制御機能91(制御部)、設定機能92(設定部)、測定機能93(測定部)、抽出機能94(抽出部)、判定機能95(判定部)、および報告機能96(報告部)を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91、設定機能92、測定機能93、抽出機能94、判定機能95、および報告機能96が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することにより各機能を実現しても構わない。
【0077】
制御回路9は、システム制御機能91により、例えば、入力インタフェース5から入力される入力情報などに基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する。具体的には、制御回路9は、電極ユニット212の動作などを制御する。
【0078】
また、制御回路9は、読み出した動作プログラムに従って、基準データ作成処理および電極ユニット異常検知処理に係る各機能を実行する。上記各機能には、例えば、設定機能92、測定機能93、抽出機能94、判定機能95、および報告機能96などがある。尚、上記各機能には、システム制御機能91の一部の機能が含まれてもよい。
【0079】
制御回路9は、設定機能92により、測定環境を含む測定条件を設定する。測定環境は、例えば、電極ユニット212以外の他のユニットの動作状況である。他のユニットの動作状況を考慮する理由として、他のユニットの動作時のノイズが電極ユニット212の測定に影響を与える可能性があるためである。よって、測定条件として、他のユニットの動作の停止を含むことが望ましい。尚、測定条件は、電極ユニット212が有する電極の温度を含んでもよい。この場合、電極が規定温度で安定していることを測定条件とする。
【0080】
制御回路9は、測定機能93により、測定条件において、電極ユニット212で用いられる校正液を連続して複数回の測定をすることによって第1の測定データを生成する。この時、制御回路9は、電極ユニット212による測定結果が変動しうるタイミング(以降、第1のタイミングと称する)で第1の測定データを生成する。第1の測定データは、例えば、各イオンの電極電位と時間とを対応付けたデータである。第1の測定データは、例えば、波形のグラフで表されてもよい。尚、第1のタイミングの具体例は、後述される。
【0081】
更に、制御回路9は、測定機能93により、第1の測定データの作成と同一の測定条件において、第1の測定データと測定タイミングの異なる第2の測定データを生成する。この時、制御回路9は、第1のタイミングと測定タイミングの異なる第2のタイミングで第2の測定データを生成する。第2の測定データは、第1の測定データと同様に、各イオンの電極電位と時間とを対応付けたデータであり、波形のグラフで表されてもよい。尚、第2のタイミングの具体例は、後述される。
【0082】
制御回路9は、抽出機能94により、抽出条件に基づいて第1の測定データから基準データを抽出する。基準データは、電極ユニット212の異常判定の基準となるデータである。制御回路9は、抽出条件に基づいて第2の測定データから比較対象データを抽出する。比較対象データは、基準データと同一の測定環境を条件として抽出されたデータである。典型的には、新たな基準データが抽出された場合、新たな基準データの抽出以降に抽出された比較対象データは、新たな基準データと比較される。尚、新たな基準データの抽出以降に抽出された比較対象データであっても、以前の古い基準データと比較されてもよい。
【0083】
抽出条件は、測定データが複数回の測定に対応する複数の測定期間を有している場合、例えば、複数の測定期間のうちの2番目以降の任意の測定期間を抽出することである。具体的には、制御回路9は、校正液を連続してN(N≧2)回測定した時系列の測定データの場合、測定開始からM(N≧M≧2)番目のデータを抽出する。尚、抽出条件は、基準データの抽出と比較対象データの抽出とで共通している。
【0084】
制御回路9は、判定機能95により、基準データと、比較対象データとに基づいて、電極ユニット212の異常を判定する。具体的には、制御回路9は、基準データの波形とヒッ句対象データの波形との差分に基づいて電極ユニット212の異常を判定する。差分は、例えば、波形の立ち上がり時間、波形の電位ピーク値、波形の電位平均値、および波形の傾きの少なくともいずれかに関する。
【0085】
制御回路9は、報告機能96により、判定結果を報告する。判定結果は、例えば、電極ユニット212の正常または異常である。具体的には、制御回路9は、正常または異常の判定結果を出力インタフェース6へ報告する。
【0086】
なお、システム制御機能91により、制御回路9は、上記各機能で生成されたデータを記憶回路8(メモリ)に記憶させてもよい。具体的には、制御回路9は、基準データと測定条件とを対応付けてメモリに記憶させ、比較対象データと測定条件とを対応付けてメモリに記憶させる。例えば、比較対象データを作成する場合、制御回路9は、基準データに対応付けられた測定条件をメモリから読み出し、メモリから読み出した測定条件を設定する。
【0087】
次に、以上のように構成された本実施形態に係る自動分析装置1の動作について制御回路9の処理手順に従って説明する。初めに、電極ユニット異常検知処理で用いられる基準データを作成するための基準データ作成処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0088】
基準データ作成処理は、第1のタイミングで行われる。第1のタイミングは、例えば、(1)校正液のロットが切り替わったタイミング、(2)ハードウェアのメンテナンス後のタイミング、(3)電極ユニット212の日常的なメンテナンス時のタイミングである。
【0089】
上記(1)のタイミングによる実施は、校正液のロットが切り替わることにより、測定結果に影響を与える可能性があるために有効である。また、上記(2)のタイミングによる実施は、メンテナンス時の消耗品の交換などによりノイズの発生量が変化する可能性があるために有効である。これは、自動分析装置が一般的に動作時の振動や電気的ノイズを発する様々なユニットから構成されており、ユニット動作時のノイズが測定結果に影響を与えることに起因する。上記消耗品は、例えば、駆動機構4を構成するモータなどである。
【0090】
また、上記(3)のタイミングによる実施は、電極ユニット212のメンテナンス時に測定をすることによって測定動作の時間を別途設ける必要がないために有効である。具体的には、電極ユニット212のメンテナンスでは、電極ユニット212の検出部410の洗浄を目的として後述する基準データ作成処理と同様の動作を行う。そのため、一日に複数回のメンテナンス動作が行われる場合、任意のタイミングのメンテナンス時(例えば、その日最後のメンテナンス時)に測定動作も行うことで、自動分析装置1を効率的に運用することができる。尚、基準データ作成処理は、前回の測定の実施から所定時間が経過した後に都度実施してもよい。
【0091】
図4は、本実施形態における基準データ作成処理の動作を例示するフローチャートである。
図4のフローチャートは、上記第1のタイミングで、制御回路9が基準データ作成処理を行うプログラムを実行することにより開始される。
【0092】
(ステップST110)
基準データ作成処理を開始すると、制御回路9は、設定機能92を実行する。設定機能92を実行すると、制御回路9は、測定条件を設定する。具体的には、制御回路9は、測定環境を含む測定条件を設定する。測定条件は、例えば、他のユニットの動作の停止および電極ユニット212の電極が規定温度で安定していることである。
【0093】
(ステップST120)
測定環境を設定した後、制御回路9は、測定機能93を実行する。測定機能93を実行すると、制御回路9は、測定条件を満たしたことを契機として校正液測定を実施する。以下、校正液測定を実施した際に生成される測定データについて、
図5を用いて説明する。
【0094】
図5は、本実施形態における各イオンの電極電位と時間とを対応付けてグラフで示した測定データを示す図である。
図5の測定データ500には、グラフ510、グラフ520、およびグラフ530が含まれている。グラフ510は、カリウムイオンの電極電位を示す。グラフ520は、ナトリウムイオンの電極電位を示す。グラフ530はクロルイオンの電極電位を示す。
【0095】
測定データ500は、校正液を連続して4回測定した時系列データに相当する。1回目の測定期間p1は、時刻t1から時刻t2までの期間である。時刻t1および時刻t2は、校正液の吸引を開始する時刻である。同じように、2回目の測定期間p2は時刻t2から時刻t3までの期間であり、3回目の測定期間p3は時刻t3から時刻t4までの期間であり、4回目の測定期間p4は時刻t4から時刻t5までの期間である。即ち、測定データ500は、複数の測定期間として4つの測定期間を有しているといえる。
【0096】
(ステップST130)
校正液測定を実施した後、制御回路9は、抽出機能94を実行する。抽出機能94を実行すると、制御回路9は、抽出条件に基づいて測定データ(第1の測定データ)から基準データを抽出する。抽出条件は、例えば、複数の測定期間のうちの2番目以降の任意の測定期間を抽出することである。以下、基準データについて、
図6を用いて説明する。
【0097】
図6は、
図5の測定データから抽出された基準データを示す図である。
図6の基準データ600は、
図5の測定データ500における3番目の測定期間を抽出したものである。即ち、基準データ600は、測定データ500の3回目の測定期間p3に対応するデータである。よって、
図6の期間ps、開始時刻ts、および終了時刻teは、それぞれ3回目の測定期間p3、時刻t3、および時刻t4に対応する。
【0098】
図6の基準データ600には、グラフ610、グラフ620、およびグラフ630が含まれている。グラフ610、グラフ620、およびグラフ630は、それぞれグラフ510、グラフ520、およびグラフ530の一部である。よって、グラフ610はカリウムイオンの電極電位を示し、グラフ620はナトリウムイオンの電極電位を示し、グラフ630はクロルイオンの電極電位を示す。
【0099】
(ステップST140)
基準データを抽出した後、制御回路9は、システム制御機能91により、基準データと測定時の条件とを対応付けて記憶する。ステップST140の後、基準データ作成処理は終了する。
【0100】
次に、電極ユニット異常検知処理について、
図7および
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0101】
電極ユニット異常検知処理は、第1の測定タイミングと異なる第2のタイミングで行われる。第2のタイミングは、例えば、第1のタイミングを基準とした予め設定されたスケジュールに基づくタイミングである。予め設定されたスケジュールは、例えば、基準データが作成された第1のタイミングから所定期間経過毎である。尚、第2のタイミングは、検査を実施していない任意の期間でもよいし、ユーザが指定したタイミングでもよい。
【0102】
図7は、本実施形態における電極ユニット異常検知処理の動作を例示するフローチャートである。
図7のフローチャートは、上記第2のタイミングで、制御回路9が電極ユニット異常検知処理を行うプログラムを実行することにより開始される。
【0103】
(ステップST210)
電極ユニット異常検知処理を開始すると、制御回路9は、設定機能92を実行する。設定機能92を実行すると、制御回路9は、基準データの作成時と同一環境の測定条件を設定する。具体的には、制御回路9は、基準データの作成時と同じ測定条件を設定する。
【0104】
(ステップST220)
測定環境を設定した後、制御回路9は、測定機能93を実行する。測定機能93を実行すると、制御回路9は、測定条件を満たしたことを契機として校正液測定を実施する。
【0105】
(ステップST230)
校正液測定を実施した後、制御回路9は、抽出機能94を実行する。抽出機能94を実行すると、制御回路9は、抽出条件に基づいて測定データ(第2の測定データ)から比較対象データを抽出する。抽出条件は、基準データの抽出時と同じ条件である。
【0106】
(ステップST240)
比較対象データを抽出した後、制御回路9は、判定機能95を実行する。判定機能95を実行すると、制御回路9は、データ判定処理を開始する。以下、データ判定処理について、
図8を用いて説明する。
【0107】
図8は、
図7のデータ判定処理の動作を例示するフローチャートである。
図8のフローチャートでは、異常を判定する手段として、波形の立ち上がり時間、波形の電位ピーク値、および波形の傾きをそれぞれ閾値と比較する例を示す。
【0108】
(ステップST241)
データ判定処理を開始すると、制御回路9は、基準データの波形および比較対象データの波形に基づいて種々の差分を算出する。ここで算出される種々の差分は、波形の立ち上がり時間、波形の電位ピーク値、および波形の傾きである。以下、種々の差分について、
図9を用いて説明する。
【0109】
図9は、本実施形態における基準データと比較対象データとの種々の差分についての説明図である。
図9では、ナトリウムイオンの電極電位のデータのみを抜き出している。
図9には、基準データとしてのグラフ620と、比較対象データとしてのグラフ900とが含まれている。
【0110】
グラフ620の立ち上がり時間は時刻tsであり、グラフ900の立ち上がり時間は時刻tsよりも前の時刻ts’である。立ち上がり時間に関する差分D1は、時刻tsと時刻ts’との差である。例えば、差分D1によって、流路の詰まりを推定することができる。
【0111】
グラフ620の電位ピーク値は電位e1であり、グラフ900の電位ピーク値は電位e1よりも大きい電位e2である。電位ピーク値に関する差分D2は、電位e1と電位e2との差である。例えば、差分D2によって、流路内の圧力および流路内の液体の流速の異常を推定することができる。
【0112】
グラフ620の傾きは傾きm1であり、グラフ900の傾きは傾きm2である。波形の傾きに関する差分D3は、傾きm1と傾きm2との差である。例えば、差分D3によって、流路内の液体の流速の異常を推定することができる。
【0113】
(ステップST242)
種々の差分を算出した後、制御回路9は、判定機能95により、立ち上がり時間の差分が閾値以上であるか否かを判定する。閾値以上であると判定された場合、処理はステップST246へと進む。閾値以上でないと判定された場合、処理はステップST243へと進む。
【0114】
(ステップST243)
立ち上がり時間の差分が閾値以上でないと判定した後、制御回路9は、判定機能95により、電位ピーク値の差分が閾値以上であるか否かを判定する。閾値以上であると判定された場合、処理はステップST246へと進む。閾値以上でないと判定された場合、処理はステップST244へと進む。
【0115】
(ステップST244)
電位ピーク値の差分が閾値以上でないと判定した後、制御回路9は、判定機能95により、傾きの差分が閾値以上であるか否かを判定する。閾値以上であると判定された場合、処理はステップST246へと進む。閾値以上でないと判定された場合、処理はステップST245へと進む。
【0116】
(ステップST245)
傾きの差分が閾値以上でないと判定した後、制御回路9は、比較対象データに異常が無い、即ち比較対象データが正常であると判定する。ステップST245の後、処理はステップST250へと進む。
【0117】
(ステップST246)
ステップST242、ステップST243、およびステップST244において、いずれも閾値以上であると判定した後、制御回路9は、比較対象データに異常があると判定する。ステップST246の後、処理はステップST250へと進む。
【0118】
(ステップST250)
データ判定処理が行われた後、制御回路9は、報告機能96により、判定結果を報告する。ステップST245から遷移した場合、制御回路9は、判定結果として比較対象データが正常であると報告する。ステップST246から遷移した場合、制御回路9は、判定結果として比較対象データが異常であると報告する。
【0119】
なお、
図8のフローチャートにおいて、ステップST242、ステップST243、およびステップST244の処理を全て行った後に比較対象データの異常判定を行ってもよい。これにより、異常判定の原因を詳細に分析することができる。
【0120】
また、ステップST242、ステップST243、およびステップST244の処理順は任意に入れ換えられてもよいし、少なくともいずれか一つでもよい。
【0121】
以上説明したように、本実施形態に係る自動分析装置は、電位を測定する電極ユニットを有し、測定環境を含む測定条件を設定し、測定条件において、電極ユニットで用いられる校正液を連続して複数回の測定をすることによって第1の測定データを生成し、抽出条件に基づいて第1の測定データから基準データを抽出し、基準データと、測定条件および抽出条件に基づく比較対象データとに基づいて、電極ユニットの異常を判定する。
【0122】
従って、本実施形態に係る自動分析装置は、基準データを作成した条件と、比較対象データを作成する条件とを揃えることにより、電極ユニット以外の他のユニットの動作による影響などを低減することができる。また、本実施形態に係る自動分析装置は、連続して複数回の校正液測定を行うことでデータドリフトによるばらつきの少ない測定期間を抽出可能である。よって、本実施形態に係る自動分析装置は、電極ユニットの異常判定の精度を向上することができる。
【0123】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、電極ユニットの異常判定の精度を向上することができる。
【0124】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0125】
1 自動分析装置
2 分析機構
3 解析回路
4 駆動機構
5 入力インタフェース
6 出力インタフェース
7 通信インタフェース
8 記憶回路
9 制御回路
91 システム制御機能
92 設定機能
93 測定機能
94 抽出機能
95 判定機能
96 報告機能
100 試料容器
101 試薬容器
201 反応ディスク
2011 反応管
202 恒温部
203 ラックサンプラ
2031 試料ラック
204 第1試薬庫
205 第2試薬庫
206 試料分注アーム
207 試料分注プローブ
207a 洗浄槽
207b 洗剤貯留容器
208 第1試薬分注アーム
209 第1試薬分注プローブ
209a 洗浄槽
210 第2試薬分注アーム
211 第2試薬分注プローブ
211a 洗浄槽
212 電極ユニット
213 測光ユニット
214 洗浄ユニット
216 攪拌ユニット
300 リーダ
410 検出部
420 校正液貯留容器
430 校正液供給ポンプ
440 校正液タンク
450 校正液廃棄ポンプ
460 廃液タンク
470 吸引ポンプ
500 測定データ
510,520,530,610,620,630,900 グラフ
600 基準データ
FP1,FP2,FP3,FP4,FP5,FP6 流路
NW 病院内ネットワーク
p1,p2,p3,p4 測定期間
P1 校正液吸引位置
P2 混合液吸引位置