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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101328
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20240722BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240722BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240722BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240722BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240722BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B60C13/00 E
B60C1/00 B
B60C13/00 D
B60C19/00 L
C08K3/36
C08K3/04
C08L21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005258
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松澤 佑樹
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA06
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC09
3D131BC35
3D131GA03
3D131GA19
3D131LA26
3D131LA28
4J002AC01X
4J002AC03W
4J002AC08Y
4J002DA036
4J002DJ017
4J002FB016
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】サイドウォールの耐クラック性を向上させたタイヤを提供すること。
【解決手段】一対のサイドウォールを備えるタイヤであって、前記サイドウォールを構成するゴム組成物の70℃における損失正接(tanδ)を70℃tanδとし、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(MPa)を70℃E*とし、前記タイヤの最大負荷能力(kg)をWLとするとき、70℃tanδ、70℃E*およびWLが以下の関係を満たすタイヤ。
(1) 70℃tanδ/(0.000250×WL-0.192)<1.00
(2) 70℃E*≦10.0
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のサイドウォールを備えるタイヤであって、
前記サイドウォールを構成するゴム組成物の70℃における損失正接(tanδ)を70℃tanδとし、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(MPa)を70℃E*とし、前記タイヤの最大負荷能力(kg)をWLとするとき、70℃tanδ、70℃E*およびWLが、以下の関係を満たすタイヤ。
(1) 70℃tanδ/(0.000250×WL-0.192)<1.00
(2) 70℃E*≦10.0
【請求項2】
前記タイヤの最大幅位置におけるサイドウォールの厚みをT(mm)とするとき、70℃E*およびTが、以下の関係を満たす、請求項1記載のタイヤ。
(3) 70℃E*×T≦31.5
【請求項3】
式(1)の右辺が0.90である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
式(1)の右辺が0.81である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項5】
式(2)の右辺が6.0である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項6】
式(3)の右辺が16.0である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム組成物がカーボンブラックを含む、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物がシリカを含む、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物がカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックがリカバードカーボンブラックを含む、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ゴム組成物がシリカおよびカーボンブラックを含み、
ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの量(質量部)をSとし、前記カーボンブラックの量(質量部)をCとするとき、SおよびCが以下の関係を満たす、請求項1または2記載のタイヤ。
(4) S/C<0.5
【請求項11】
前記ゴム組成物がシリカおよびカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックがリカバードカーボンブラックを含み、
ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの量(質量部)をSとし、前記リカバードカーボンブラックの量(質量部)をrCとするとき、SおよびrCが以下の関係を満たす、請求項1または2記載のタイヤ。
(5) S/rC≦1
【請求項12】
前記一対のサイドウォールの少なくとも一方が、外表面に微小隆起が複数個形成された微小隆起形成部を有する、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項13】
前記微小隆起の形状が、柱状、錐台状またはリブ状である、請求項12記載のタイヤ。
【請求項14】
前記微小隆起が、高さが0.03mm以上0.50mm以下であり、少なくとも一方向において0.50mm以下の間隔で20個以上形成されており、前記微小隆起形成部が、10mm2以上の面積を有する、請求項12記載のタイヤ。
【請求項15】
前記微小隆起の最大幅が0.03mm以上5.0mm以下である、請求項12記載のタイヤ。
【請求項16】
前記微小隆起の高さが、タイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向外側に向かって漸増し、かつ、タイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向内側に向かって漸増している、請求項12記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの燃費性能に対する要求が高まる中、タイヤの燃費性能の向上のため、タイヤのトレッド部だけでなく、サイドウォールなどの他の部材による低燃費化も検討されている。例えば、特許文献1では、所定の樹脂を含むゴム組成物をタイヤのサイドウォールに用いることで燃費性能を向上させることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-14506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、環境負荷低減の観点などから、タイヤの更なる長寿命化も求められており、サイドウォールの耐クラック性を向上させ、さらに、長寿命化を図る点には改善の余地がある。
【0005】
本発明は、サイドウォールの耐クラック性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のタイヤ用ゴム組成物に関する。
一対のサイドウォールを備えるタイヤであって、
前記サイドウォールを構成するゴム組成物の70℃における損失正接(tanδ)を70℃tanδとし、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(MPa)を70℃E*とし、前記タイヤの最大負荷能力(kg)をWLとするとき、70℃tanδ、70℃E*およびWLが、以下の関係を満たすタイヤ。
(1) 70℃tanδ/(0.000250×WL-0.192)<1.00
(2) 70℃E*≦10.0
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、サイドウォールの耐クラック性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】タイヤの断面における、タイヤ断面幅Wt、タイヤ断面高さHt、およびタイヤ外径Dtを示す図である。
図2】柱状の微小隆起が複数個形成されたサイドウォールの外表面の略図である。
図3】四角錐台状の微小隆起が複数個形成されたサイドウォールの外表面の略図である。
図4図3のX-X断面図である。
図5】リブ状の微小隆起が複数個形成されたサイドウォールの外表面の略図である。
図6図5のY-Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、以下のタイヤに関する。
一対のサイドウォールを備えるタイヤであって、
前記サイドウォールを構成するゴム組成物の70℃における損失正接(tanδ)を70℃tanδとし、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(MPa)を70℃E*とし、前記タイヤの最大負荷能力(kg)をWLとするとき、70℃tanδ、70℃E*およびWLが、以下の関係を満たすタイヤ。
(1) 70℃tanδ/(0.000250×WL-0.192)<1.00
(2) 70℃E*≦10.0
【0010】
理論に拘束されることは意図しないが、本発明において、サイドウォールの耐クラック性を向上させることができるメカニズムとしては以下が考えられる。すなわち、式(1)について、70℃tanδは小さいほうがサイドウォールの発熱が抑えられクラックの抑制に対して有利なものとすることができる。また、最大負荷能力WLは、タイヤの体積に比例し、この値が大きいほどタイヤの体積が大きくなることを意味する。そのため、最大負荷能力WLが大きくなることでタイヤ全体を見たときに局所的な歪みが減ることとなる。そのため、サイドウォールの70℃tanδを低下させ、かつ最大負荷能力WLを大きくするようにすることで、サイドウォール部での発熱を抑制し、かつ局所的な変形を抑制し、クラックの発生を抑制しやすくすることができると考えられる。さらに、式(1)の関係を満たしながら、式(2)で規定するように70℃E*を小さくすることで、ゴムの柔軟性が増加し、サイドウォールが変形する時に柔軟に変形できるようになり、クラックの発生を抑制しやすくなると考えられる。したがって、式(1)と式(2)の関係が同時に満たされることで、発熱の低減、歪みの抑制、変形時の柔軟性の増加が協働して、サイドウォールの耐クラック性が向上しているものと考えられる。
【0011】
前記タイヤの最大幅位置におけるサイドウォールの厚みをT(mm)とするとき、70℃E*およびTは、以下の関係を満たすことが好ましい。
(3) 70℃E*×T≦31.5
【0012】
70℃E*は低いほうがゴムの柔軟性が増加し、変形時に柔軟に変形できるため、クラックの発生を抑制しやすくなる。さらに、サイドウォールの厚みを薄くすることで、ゴムの体積が減り発熱量の低減、及びサイドウォールの温度上昇が抑えられ、クラックの発生を抑制しやすくなる。したがって、式(3)の関係を満たすことで、変形時の柔軟さと発熱の低減が関わり合うことにより、サイドウォールの耐クラック性が向上するものと考えられる。
【0013】
前記ゴム組成物はカーボンブラックを含むことが好ましい。
【0014】
カーボンブラックを含むことで、紫外線などを吸収しやすくすることができ、劣化を抑制し、クラックの発生を抑制しやすくすることができると考えられる。
【0015】
前記ゴム組成物はシリカを含むことが好ましい。
【0016】
少量のシリカを、シランカップリング剤と組合せずに配合することで、ゴムが程よく補強されてシリカ表面が互いに滑りやすくなり、破断時伸び(EB)が向上すると考えられる。そして、EBが向上することで、大変形時の亀裂発生を抑制し、サイドウォールの耐クラック性が向上するものと考えられる。
【0017】
前記ゴム組成物はカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックはリカバードカーボンブラック(rCB)を含むことが好ましい。
【0018】
rCBは表面が焼却処理されているので、周りのゴム分子との結合が少し弱くなる傾向にある。このため、変形した際に周囲のゴム分子鎖が力を逃がしやすくなり、サイドウォールの耐クラック性が向上するものと考えられる。
【0019】
前記ゴム組成物はシリカおよびカーボンブラックを含み、ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの量(質量部)をSとし、前記カーボンブラックの量(質量部)をCとするとき、SおよびCは以下の関係を満たすことが好ましい。
(4) S/C<0.5
【0020】
シリカの配合量がカーボンブラックの配合量の半分未満の量となることで、シリカによる破断伸びの向上効果を得つつ、ゴム組成物を補強しやすくなり、耐クラック性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0021】
前記ゴム組成物はシリカおよびカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックはリカバードカーボンブラックを含み、ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの量(質量部)をSとし、前記リカバードカーボンブラックの量(質量部)をrCとするとき、SおよびrCは以下の関係を満たすことが好ましい。
(5) S/rC≦1
【0022】
シリカの配合量がリカバードカーボンブラックの配合量よりも少量となることで、シリカによる破断伸びの向上効果、及びrCBによる力の分散効果が得られやすくなると考えられる。
【0023】
前記一対のサイドウォールの少なくとも一方は、外表面に微小隆起が複数個形成された微小隆起形成部を有することが好ましい。
【0024】
微小隆起形成部を有することで、サイドウォール外表面における応力集中を抑制できるので、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与するものと考えられる。
【0025】
前記微小隆起の形状は、柱状、錐台状またはリブ状であることが好ましい。
【0026】
微小隆起の形状がこれら所定の形状であることで、サイドウォール外表面における応力集中を抑制できるので、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与するものと考えられる。
【0027】
前記微小隆起は、高さが0.03mm以上0.50mm以下であり、少なくとも一方向において0.50mm以下の間隔で20個以上形成されており、前記微小隆起形成部は、10mm2以上の面積を有することが好ましい。
【0028】
微小隆起の大きさがこれら所定の範囲内にあることで、サイドウォール外表面における応力集中を抑制できるので、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与するものと考えられる。
【0029】
前記微小隆起は、最大幅が0.03mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
【0030】
微小隆起の最大幅が所定の範囲内にあることで、サイドウォール外表面における応力集中を抑制できるので、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与するものと考えられる。
【0031】
前記微小隆起の高さは、タイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向外側に向かって漸増し、かつ、タイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向内側に向かって漸増していることが好ましい。
【0032】
サイドウォールのタイヤ最大幅位置付近では相対的に大きな歪を生じるが、微小隆起の高さをタイヤ最大幅位置に近い側ほど低くすることにより、大きな歪を生じる位置でのタイヤ周方向におけるゴム容量の不均一性を低減し、微小隆起近傍での応力集中を回避し、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与するものと考えられる。
【0033】
<定義>
「正規状態」とは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。「タイヤの各部の寸法等」は、特に断りがない限り、正規状態で特定される値とする。
【0034】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている「Measuring Rim」、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている「Design Rim」を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0035】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値とし、正規リムと同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250KPa以上)を指す。なお、250KPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0036】
「最大負荷能力(WL)(kg)」は、正規状態で測定されたタイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ断面高さをHt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、下記式(A)および式(B)により算出される値である。Vはタイヤが占める空間の仮想体積である。前記のタイヤ断面幅Wtは、正規状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。前記のタイヤ断面高さHtは、ビード部底面からトレッド最表面までの距離であり、タイヤの外径Dtとリム径R(mm)との差の1/2である。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt ・・・(A)
WL=0.000011×V+100 ・・・(B)
【0037】
「サイドウォールの厚み(T)(mm)」とは、サイドウォールのタイヤ最大幅位置PWの法線Lに沿って計測される、サイドウォールを構成するゴムの厚み(mm)である。「タイヤ最大幅位置PW」とは、前記タイヤ断面幅Wtが計測されるサイドウォール表面上の位置である。
【0038】
「微小隆起」とは、サイドウォール外表面上に形成された、高さが0.03mm以上5.0mm以下の凸状の盛り上りである。微小隆起は、その最大幅が0.03mm以上5.0mm以下であるものが好ましい。
【0039】
「微小隆起形成部」とは、前記微小隆起が形成されたサイドウォール外表面上の部分である。
【0040】
「リカバードカーボンブラック」とは、カーボンブラックを含む使用済みのタイヤ等の製品の熱分解プロセスから得られるカーボンブラックであって、JIS K 6226-2:2003に準拠した熱重量測定法で、空気中の加熱で酸化燃焼させたとき、燃焼しない成分である灰分の質量(灰分量)の割合が13質量%以上であるカーボンブラックをいう。すなわち、前記酸化燃焼による減量分の質量(カーボン量)が87質量%未満である。リカバードカーボンブラックは、リカバードカーボンともいい、rCBで表すこともある。
【0041】
「可塑剤の含有量」は、可塑剤によって伸展されたゴム成分中の可塑剤量も含む。同様に、「オイルの含有量」は、油展ゴムに含まれるオイル量も含む。
【0042】
<測定方法>
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される。
【0043】
「ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0044】
「シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)」は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0045】
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0046】
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2:2017によって求められる値である。
【0047】
「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0048】
「平均一次粒子径」は、粒子を透過型または走査型電子顕微鏡で写真撮影し、粒子の形状がほぼ球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には短径と直径の平均を粒子径としたときの、粒子400個の算術平均により求められる値である。シリカやカーボンブラック等に適用される。
【0049】
「樹脂等の軟化点」は、特に断りのない限り、JIS K 6220-1:2015に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。他の方法で測定された軟化点は、その旨、記載される。
【0050】
「70℃tanδ」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定する。サンプルをタイヤから採取する場合は、各試験用タイヤのサイドウォールのゴム層内部から、タイヤ周方向を長辺となるように、かつ、タイヤ半径方向を厚みとなるようにして、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmのサンプルを採取する。
【0051】
「70℃E*」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定する複素弾性率(MPa)である。サンプルをタイヤから採取する場合は、70℃tanδの場合と同様にする。
【0052】
<タイヤ>
以下、本発明のタイヤについて、適宜、図面も参照しながら説明する。但し、図面はあくまで説明のための例示である。
【0053】
本発明のタイヤは、サイドウォールを構成するゴム組成物の70℃tanδと、前記ゴム組成物の70℃E*と、タイヤの最大負荷能力(kg)WLとが、式(1)と式(2)とで表される所定の関係を満たすタイヤである。
【0054】
(式(1))
式(1)が満たす関係とは、以下のとおりである。
(1) 70℃tanδ/(0.000250×WL-0.192)<1.00
【0055】
式(1)の右辺の値は、0.90が好ましく、より好ましくは0.88、さらに好ましくは0.83、さらに好ましくは0.81、さらに好ましくは0.79、さらに好ましくは0.77、さらに好ましくは0.73、さらに好ましくは0.70、さらに好ましくは0.67である。式(1)の左辺の値の下限について、本発明の効果の観点から特に制限はないが、例えば、0.50、あるいは、0.60であってもよい。
【0056】
WLは前記のとおり、タイヤ断面幅Wt(mm)、タイヤ断面高さHt(mm)、タイヤ外径Dt(mm)に応じて定まる値である。図1は、タイヤのWt、HtおよびDtを図示している。
【0057】
70℃tanδは、0.120未満が好ましく、より好ましくは0.110未満、さらに好ましくは0.100未満、さらに好ましくは0.090以下である。70℃tanδの下限について発明の効果の観点から特に制限はないが、例えば、0.020以上が好ましく、0.030以上がより好ましく、0.050以上がさらに好ましい。
【0058】
ゴム組成物の70℃tanδは、後記ゴム組成物を構成する成分の種類や配合量により適宜調整することができる。例えば、充填剤の量を多くすること、粒子径を小さくすること、加硫剤および加硫促進剤の量を減らすことなどにより、70℃tanδを大きくすることができる傾向がある。よって、逆の操作によって、70℃tanδを小さくすることができる傾向がある。
【0059】
(式(2))
式(2)が満たす関係とは、以下のとおりである。
(2) 70℃E*≦10.0
【0060】
式(2)の右辺の値は、9.0が好ましく、より好ましくは8.0、さらに好ましくは7.0、さらに好ましくは6.0、さらに好ましくは5.5、さらに好ましくは4.5、さらに好ましくは4.0、さらに好ましくは3.8、さらに好ましくは3.5、さらに好ましくは3.0である。式(2)の左辺の値の下限について、本発明の効果の観点から特に制限はないが、例えば、2.0、あるいは、3.0であってもよい。
【0061】
ゴム組成物の70℃E*は、後記ゴム組成物を構成する成分の種類や配合量により適宜調整することができる。例えば、充填剤の量を多くすること、粒子径を小さくすること、可塑剤の総量を減らすこと、加硫剤および加硫促進剤の量を増やすことにより、70℃E*を高めることができる傾向がある。よって、逆の操作によって、70℃E*を小さくすることができる傾向がある。
【0062】
(式(3))
本発明のタイヤは、前記70℃E*とタイヤの最大幅位置におけるサイドウォールの厚みT(mm)とが、以下の関係を満たすことが好ましい。
(3) 70℃E*×T≦31.5
【0063】
式(3)の右辺の値は、25.0が好ましく、より好ましくは20.0、さらに好ましくは16.0、さらに好ましくは15.0、さらに好ましくは14.0、さらに好ましくは13.0、さらに好ましくは12.0である。式(3)の左辺の値の下限について、本発明の効果の観点から特に制限はないが、例えば、10.0、あるいは、11.0であってもよい。
【0064】
サイドウォールの厚みTは、図1に示すとおり、サイドウォールのタイヤ最大幅位置PWの法線Lに沿って計測される、サイドウォールを構成するゴムの厚みである。ここで、タイヤ最大幅位置PWとは、前記タイヤ断面幅Wtが計測されるサイドウォール外表面上の位置である。
【0065】
サイドウォールの厚みT(mm)は、通常採用され得る厚みの範囲であれば、特に限定されない。例えば、乗用車用タイヤの場合には、Tは、好ましくは1.0mm超、より好ましくは1.5mm超、さらに好ましくは2.0mm超、さらに好ましくは3.0mm以上である。一方、Tは、好ましくは10.0mm未満、より好ましくは9.5mm未満、さらに好ましくは9.0mm未満、さらに好ましくは8.5mm未満、さらに好ましくは8.0mm以下である。
【0066】
(微小隆起形成部)
本発明のタイヤは、一対のサイドウォールの少なくとも一方の外表面に、微小隆起が複数個形成された微小隆起形成部を有することが好ましい。
【0067】
微小隆起形成部において、微小隆起はタイヤの径方向で一列であってもよいし、複数列であってもよい。ここで、タイヤ径方向で一列であるとは、微小隆起がタイヤの径方向に二つ以上並んでいないことをいう。また、微小隆起はタイヤの周方向で一列であってもよいし、複数列であってもよい。ここで、タイヤ周方向で一列であるとは、微小隆起がタイヤの周方向に二つ以上並んでいないことをいう。微小隆起はタイヤの径方向で複数列、タイヤの周方向で複数列設けられていることが好ましい。
【0068】
微小隆起形成部において、その面積とは、タイヤの表面に垂直な方向から見た際に、0.50mm以下の間隔で配置された複数の微小隆起のうち最も外側の部分を囲む線によって画定される面積をいう。微小隆起形成部の面積は、10mm2以上であることが好ましい。サイドウォール外表面における応力集中を抑制し、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与し得るからである。また、微小隆起形成部において、微小隆起によるまとまりは連続していてもよいし、分断されていてもよい。ここで、分断されているとは、微小隆起の間隔が1.0mmよりも大きいことをいう。したがって、微小隆起形成部は、一対のサイドウォールの少なくとも一方の外表面に、少なくとも一つあればよく、複数あってもよい。
【0069】
(微小隆起)
微小隆起の形状は、サイドウォール外表面における応力集中を抑制し、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与するものである限り特に限定されず、具体的には、柱状、錐台状、リブ状(筋状)等が挙げられる。柱状としては、円柱状の他、三角柱状、四角柱状、五角柱状などの多角柱状のものが含まれる。錐台状としては、円錐台状の他、三角錐台状、四角錐台状、五角錐台状などの多角錐台状のものが含まれる。リブ状としては、リブ状の微小隆起の長手方向に垂直な断面の形状は特に限定されず、いずれのものも含み得る。当該断面の形状としては、例えば、矩形または台形が挙げられる。
【0070】
図2は、サイドウォール外表面上1に円柱状の微小隆起2が形成された微小隆起形成部の一部を示している。図3は、サイドウォール外表面上1に四角錐台状の微小隆起3が形成された微小隆起形成部の一部を示している。図4は、図3のX-X断面図であり、微小隆起をサイドウォール外表面に立てた法線を含む平面に垂直な方向から見た図である。図4は、微小隆起3の高さh、微小隆起3の最大幅w、および微小隆起3の間隔dを示している。図5は、サイドウォール外表面上1にリブ状の微小隆起4が形成された微小隆起形成部の一部を示している。図6は、図5のY-Y断面図であり、微小隆起をサイドウォール外表面に立てた法線を含む平面に垂直な方向から見た図である。図6は、微小隆起4の高さh、微小隆起4の最大幅w、および微小隆起4の間隔dを示している。
【0071】
ここで、微小隆起について、「高さ」とはサイドウォール外表面上に立てた法線に沿って計測される、当該微小隆起の高さのうち最大の高さであり、「最大幅」とは微小隆起が並ぶ一の方向において計測される、サイドウォール外表面上における当該微小隆起の幅のうち最大の幅であり、「間隔」とは、微小隆起が並ぶ一の方向において計測される、サイドウォール外表面上における当該微小隆起の間隔のうち最小の間隔をいう。なお、微小隆起の高さ、最大幅、および間隔は、いずれも、サイドウォール外表面を平面上に展開した状態で計測される。
【0072】
微小隆起は、高さが0.03mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であってもよく、0.10mm以上であってもよく、一方、該高さは0.50mm以下であることが好ましく、0.45mm以下であってもよく、0.40mm以下であってもよい。また、微小隆起は、最大幅が0.03mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であってもよく、0.10mm以上であってもよく、一方、該最大幅は5.00mm以下が好ましく、3.00mm以下であってもよく、1.00mm以下であってもよく、0.50mm以下であってもよい。さらに、微小隆起は、間隔が1.00mm以下であることが好ましく、0.50mm以下であってもよく、0.10mm以下であってもよく、0.05mm以下であってもよい。なお、微小隆起の間隔は、少なくとも最大幅の半分程度あればよく、最大幅と同程度であってもよい。なお、微小隆起の密度(個/cm2)は、上記微小隆起の最大幅および間隔から、その概算値を算出することができる。例えば、後記実施例の場合には、約700個/cm2である。
【0073】
微小隆起は、少なくとも一方向において、20個以上形成されていることが好ましい。サイドウォール外表面における応力集中を抑制し、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与し得るからである。
【0074】
微小隆起の高さは、タイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向外側に向かって漸増し、かつ、タイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向内側に向かって漸増していることが好ましい。サイドウォールのタイヤ最大幅位置付近では相対的に大きな歪を生じるが、微小隆起の高さをタイヤ最大幅位置に近い側ほど低くすることにより、大きな歪を生じる位置でのタイヤ周方向におけるゴム容量の不均一性を低減し、微小隆起近傍での応力集中を回避し、サイドウォールの耐クラック性の向上に寄与するものと考えられるからである。
【0075】
微小隆起は、図5に示す微小隆起4のように、微小隆起の最外部の表面に円弧上の凹み部を有することが好ましい。このような構成とすることで、円弧状の凹み部にエアーが溜まることを抑制できるので、微小隆起の外観不良の発生を抑制できるからである。
【0076】
<ゴム組成物>
本発明のタイヤのサイドウォールを構成するゴム組成物について説明する。当該ゴム組成物は、ゴム成分および充填剤を含み、さらに、その他の配合剤を含み得るものである。
【0077】
(ゴム成分)
ゴム成分は、イソプレン系ゴム(IR系ゴム)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)からなる群から選択される少なくとも一つのゴム成分を含むことが好ましい。また、ゴム成分は、IR系ゴム、SBRおよびBRからなる群から選択される少なくとも二つのゴム成分を含むものであってもよく、あるいは、IR系ゴム、SBRおよびBRを含むものであってもよい。このうち、ゴム成分は、IR系ゴムおよびBRを含むことが好ましい。また、これらのゴム成分は後述の可塑剤により伸展された伸展ゴムであっても良く、変性処理や二重結合に水素が付加された水素添加処理が施されたものであっても良い。
【0078】
≪イソプレン系ゴム≫
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、ゴム組成物の破断伸びを向上させ、耐クラック性を向上させる観点からから、好ましくは20質量%超、より好ましくは30質量%超、さらに好ましくは40質量%超、さらに好ましくは45質量%以上であると良い。一方、熱などによる劣化を抑制する観点からは、好ましくは75質量%未満、より好ましくは65質量%未満、さらに好ましくは55質量%未満であると良い。
【0080】
≪SBR≫
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。また、SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。また、SBRとして、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)も使用可能である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5.0質量%超、より好ましくは7.5質量%超、さらに好ましくは10.0質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは40.0質量%未満、より好ましくは35.0質量%未満、さらに好ましくは30.0質量%未満である。上記範囲内にすることで、ゴム成分内にミクロなスチレンドメインを形成させ、ゴム組成物内で変形による歪を吸収しやすくすることができると考えられる。なお、本明細書において、スチレン含有量は、1H-NMR測定によって測定できる。
【0082】
SBRのビニル結合量は、好ましくは5モル%超、より好ましくは10モル%超、さらに好ましくは15モル%超である。該ビニル結合量は、好ましくは65モル%未満、より好ましくは60モル%未満、さらに好ましくは50モル%未満である。なお、ビニル結合量は、前記方法によって測定できる。
【0083】
SBRとして可塑剤で伸展されたSBR(伸展SBR)を用いることもできるし、非伸展SBRを用いることもできる。伸展SBRを用いる場合、SBRの伸展量、すなわち、SBRに含まれる伸展可塑剤の含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。伸展に用いる可塑剤としては、後述の樹脂、オイル、液状ポリマー、エステル系可塑剤などが挙げられる。
【0084】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0085】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、0質量%であってもよいが、例えば、1質量%超であってもよく、5質量%超であってもよく、10質量%超であってもよい。SBRの含有量の上限は、好ましくは40質量%未満、より好ましくは35質量%未満、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0086】
≪BR≫
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
なかでも、BRは、シス含量が90質量%超のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%超がより好ましく、98質量%以上がより好ましくい。なお、シス含量は、前記方法によって測定できる。
【0088】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。また、BRは、水素添加ブタジエン重合体(水添BR)も使用可能である。
【0089】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0090】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、低燃費性および耐亀裂成長性の観点から、好ましくは20質量%超、25質量%以上、30質量%超、より好ましくは35質量%超、さらに好ましくは40質量%超、さらに好ましくは45質量%超、さらに好ましくは50質量%超、さらに好ましくは55質量%以上である。一方上限としては好ましくは75質量%未満、より好ましくは70質量%未満、さらに好ましくは65質量%未満である。
【0091】
≪その他のゴム成分≫
ゴム成分としては、上記以外のゴムを使用できる。上記以外のゴムとしては、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、80質量%超が好ましく、より好ましくは90質量%超であり、100質量%が最も好ましい。
【0093】
(充填剤)
本発明のゴム組成物はシリカおよびカーボンブラック(CB)の少なくとも一つを含むことが好ましい。また、前記カーボンブラックは、リカバードカーボンブラック(rCB)を含むことが好ましい。
【0094】
≪シリカ≫
シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などを使用することができる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、エボニックデグサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのシリカの他、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカも用いることができる。
【0095】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g超、より好ましくは100m2/g超、さらに好ましくは150m2/g以上、さらに好ましくは175m2/g以上である。シリカのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは600m2/g未満、より好ましくは350m2/g未満、さらに好ましくは260m2/g未満である。上記範囲内にすることで、耐亀裂進展性能が向上する傾向がある。なお、シリカのN2SAは、前記方法で測定される値である。
【0096】
シリカの平均一次粒子径は、補強性、低燃費性等の観点から、好ましくは25nm未満、より好ましくは22nm未満、さらに好ましくは20nm未満、さらに好ましくは18nm未満である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm超、より好ましくは5nm超、さらに好ましくは10nm超である。なお、シリカの平均一次粒子径は、前記方法により求めることができる。
【0097】
シリカの含有量(シリカの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、30質量部未満であることが好ましいく、より好ましくは25質量部未満、さらに好ましくは20質量部未満、さらに好ましくは15質量部以下である。一方、該含有量は、好ましくは1質量部超、より好ましくは3質量部超、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。上記範囲内にあることで、ゴムが程よく補強されてシリカ表面が互いに滑りやすくなり、破断時伸び(EB)が向上し、耐クラック性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0098】
≪シランカップリング剤≫
シリカを用いる場合、シランカップリング剤を併用し得るが、本発明においては、シリカを用いる場合であってもシランカップリング剤を実質的に併用しないことが好ましい。ここで、実質的に併用しないとは、シランカップリング剤のカップリング効果が実質的に問題とならない範囲の量でしか使用しないことをいう。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT-Z100、NXT-Z45、NXT(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)等のメルカプト系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤等が挙げられ、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤が好ましく、とりわけ、メルカプト系シランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量(複数のシランカップリング剤を併用する場合は全ての合計量)は、シリカの分散性を高める観点から、1質量部超が好ましく、より好ましくは3質量部超、さらに好ましくは5質量部超である。また、該含有量は、20質量部未満が好ましく、15質量部未満がより好ましく、12質量部未満がさらに好ましく、9質量部未満がさらに好ましく、7質量部未満がさらに好ましい。
【0100】
≪カーボンブラック(CB)≫
カーボンブラックとしては、特に限定されず、タイヤ工業で使用可能なものをいずれも使用できる。そのようなカーボンブラックとしては、例えば、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N660、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。また、環境負荷の観点、および、カーボンブラック表面とゴム分子鎖との摩擦を減らし、発熱性を抑制する観点から、使用済みタイヤの熱分解から得られるリカバードカーボンブラック(rCB)を用いてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
リカバードカーボンブラックは、使用済み空気入りタイヤの熱分解プロセスから得ることができる。例えば、欧州特許出願公開第3427975号明細書では、「ゴム化学と技術」、Vol.85、No.3、408~449頁(2012)、特に、438、440、442頁に言及し、酸素を排除した550~800℃での有機材料の熱分解、または、比較的低い温度での真空熱分解により得られることが記載されている([0027])。このような熱分解プロセスから得られるカーボンブラックは、特許第6856781号の[0004]で言及されているように、通常、その表面に官能基を欠くものである(熱分解カーボンブラックと市販のカーボンブラックとの表面形態および化学の比較、Powder Technology 160(2005)190~193)。
【0102】
リカバードカーボンブラックは、その表面に官能基を欠くものであることが好ましいが、本発明の効果に影響を与えない限り、その表面に官能基を含んでいてもよく、また、その表面に官能基を含むように処理されたものであってもよい。リカバードカーボンブラックの表面に官能基を含むように行う処理は、常法により実施することができる。例えば、欧州特許出願公開第3173251号明細書では、熱分解プロセスから得られたカーボンブラックを、酸性条件下で、過マンガン酸カリウムで処理することにより、その表面にヒドロキシルおよび/またはカルボキシル基を含むカーボンブラクを得ている。また、特許第6856781号では、熱分解プロセスから得られたカーボンブラックを、少なくとも1つのチオール基またはジスルフィド基を含むアミノ酸化合物で処理して、その表面を活性化したカーボンブラックを得ている。本実施形態に係るリカバードカーボンブラックは、これらの表面に官能基を含むように処理されたカーボンブラックをも含むものである。
【0103】
リカバードカーボンブラックは、Strable Green Carbon社、LDCarbon社等より市販されているものを使用することができる。
【0104】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、20nm超が好ましく、25nm超がより好ましく、30nm超がさらに好ましく、35nm超が特に好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径を前記の範囲することにより、カーボンブラックにより束縛されるゴム分子が最小限に抑えられ、柔軟に動きやすくなるため、入力に対してポリマー分子鎖でも応力を緩和させ、クラックの発生を抑制させることができると考えられる。一方、該平均一次粒子径は、補強性を得る観点から、90nm未満が好ましく、75nm未満がより好ましく、65nm未満がさらに好ましい。なお、カーボンブラックの平均一次粒子径は、前記測定方法により測定される。
【0105】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、本発明の効果の観点から、90m2/g未満が好ましく、80m2/g未満がより好ましく、70m2/g未満がさらに好ましく、60m2/g未満が特に好ましい。また、該N2SAは、10m2/g超が好ましく、20m2/g超がより好ましく、30m2/g超がさらに好ましく、35m2/g超がさらに好ましく、40m2/g超がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0106】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、補強性を得る観点および紫外線による劣化を防ぐ観点から、1質量部超が好ましく、5質量部超がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、柔軟性を得て応力を緩和させる観点からは、90質量部未満が好ましく、70質量部未満がより好ましく、60質量部未満がさらに好ましく、50質量部未満がさらに好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0107】
≪式(4)≫
本発明のゴム組成物がシリカおよびカーボンブラックを含む場合には、ゴム成分100質量部に対するシリカの量(質量部)をSとし、カーボンブラックの量(質量部)をCとするとき、SおよびCが以下の関係を満たすことが好ましい。
(4) S/C<0.5
【0108】
式(4)の右辺の値は、好ましくは0.45、より好ましくは0.40、さらに好ましくは0.35、さらに好ましくは0.30である。一方、式(4)の左辺の値は、0.00であってもよく、0.50であってもよく、0.10であってもよい。
【0109】
≪式(5)≫
本発明のゴム組成物がシリカおよびカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックがリカバードカーボンブラックを含む場合には、ゴム成分100質量部に対するシリカの量(質量部)をSとし、リカバードカーボンブラックの量(質量部)をrCとするとき、SおよびrCが以下の関係を満たすことが好ましい。
(5) S/rC≦1
【0110】
式(5)の右辺の値は、好ましくは0.90、より好ましくは0.80、さらに好ましくは0.70、さらに好ましくは0.60、さらに好ましくは0.50である。一方、式(5)の左辺の値は、0.00であってもよく、0.20であってもよく、0.40であってもよい。
【0111】
≪他の充填材≫
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカとカーボンブラック以外の他の充填材を含んでいてもよい。そのような他の充填剤としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー等が挙げられる。
【0112】
≪充填剤の含有量≫
充填材の含有量(充填材の合計含有量)は、本発明の効果の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部超、さらに好ましくは30質量部超、さらに好ましくは40質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは200質量部未満、より好ましくは150質量部未満、さらに好ましくは100質量部未満、さらに好ましくは50質量部未満である。
【0113】
(その他の配合剤)
本発明のゴム組成物は、その他の配合剤として、可塑剤、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤等を使用することができる。
【0114】
(可塑剤)
可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、常温(25℃)で液体(液状)の可塑剤および常温(25℃)で固体の可塑剤の両方を含む概念である。可塑剤の例としては、樹脂の他、オイル、液状ポリマー、エステル系可塑剤等が挙げられる。可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
≪樹脂≫
本発明のタイヤ用ゴム組成物は樹脂を含むことができる。樹脂としては、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
[石油樹脂]
石油樹脂としては、C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。
【0117】
C5系石油樹脂とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0118】
芳香族系石油樹脂とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0119】
C5C9系石油樹脂とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0120】
[テルペン系樹脂]
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0121】
[ロジン系樹脂]
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。
【0122】
[フェノール系樹脂]
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0123】
[樹脂の含有量]
樹脂成分のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部超が好ましく、3質量部超がより好ましく、4質量部超がさらに好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、樹脂成分の含有量は、30質量部未満が好ましく、25質量部未満がより好ましく、20質量部未満がさらに好ましい。
【0124】
≪オイル≫
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンに用いられた後の廃油や、飲食店で使用された廃食用油を精製したものを用いてもよい。オイルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
≪液状ポリマー≫
液状ポリマーは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられる。液状ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
≪エステル系可塑剤≫
エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等が挙げられる。エステル系可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
≪樹脂以外の可塑剤の含有量≫
樹脂以外の可塑剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量(複数を併用する場合は全ての合計量)は、1質量部超が好ましく、2質量部超がより好ましく、3質量部超がさらに好ましい。また、該可塑剤の含有量は、50質量部未満が好ましく、40質量部未満がより好ましく、30質量部未満がさらに好ましい。
【0128】
≪ワックス≫
ワックスとしては、特に限定されず、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、石油系ワックス、鉱物系ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。なかでも、石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、これらの精選特殊ワックス等が挙げられ、なかでも、パラフィンワックスが好ましい。ワックスは、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、パラメルト社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。ワックスは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0129】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.3質量部超が好ましく、0.5質量部超がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。一方、該含有量は、4.0質量部未満が好ましく、3.0質量部未満がより好ましく、2.0質量部未満がさらに好ましい。
【0130】
≪老化防止剤≫
老化防止剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができる。老化防止剤としては、例えば、キノリン系老化防止剤、キノン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤や、カルバミン酸金属塩等が挙げられる。なかでも、耐オゾン性能の向上効果をより良好に発揮できるという理由から、フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましい。
【0131】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、2.0質量部超がさらに好ましい。一方、該含有量は、7.0質量部未満が好ましく、6.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。
【0132】
≪ステアリン酸≫
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、0.7質量部超がより好ましく、1.0質量部超がさらに好ましい。一方、該含有量は、加硫速度の観点から、10質量部未満が好ましく、5質量部未満がより好ましく、3質量部未満がさらに好ましい。
【0133】
≪酸化亜鉛≫
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、0.7質量部超がより好ましく、1質量部以超がさらに好ましい。一方、該含有量は、耐摩耗性の観点から、10質量部未満が好ましく、7質量部未満がより好ましく、5質量部未満がさらに好ましい。
【0134】
≪加硫剤≫
加硫剤としては、特に限定されず、公知の加硫剤を用いることができ、例えば、有機過酸化物、硫黄系加硫剤、樹脂加硫剤、酸化マグネシウム等の金属酸化物などが挙げられる。なかでも、硫黄系加硫剤が好ましい。硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド等の硫黄供与体等を用いることができる。これらのなかでも、硫黄を用いることが好ましい。加硫剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0135】
硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄(オイル処理硫黄、分散剤で処理された特殊硫黄、マスターバッチタイプの硫黄など)、不溶性硫黄(オイル処理不溶性硫黄など)などがあげられ、いずれも好適に用いられる。なかでも、粉末硫黄、不溶性硫黄が好ましい。硫黄は、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。
【0136】
加硫剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.4質量部超が好ましく、0.7質量部超がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましく、1.3質量部超がさらに好ましい。一方、該含有量は、6.0質量未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましく、3.0質量部未満がさらに好ましい。加硫剤の含有量が上記範囲内であると、適切な補強効果が得られる傾向があり、本発明の効果をより良好に発揮できる傾向がある。なお、加硫剤がオイル処理硫黄などのように硫黄以外の成分を含む場合、加硫剤の含有量は、硫黄成分自体の含有量を意味する。
【0137】
≪加硫促進剤≫
加硫促進剤としては、特に限定されず、公知の加硫促進剤を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系、チウラム系、グアニジン系が好ましく、スルフェンアミド系がより好ましい。加硫促進剤は、例えば、大内新興化学工業(株)、三新化学工業(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。これらの加硫促進剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0138】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)などが挙げられる。チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等が挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどが挙げられる。
【0139】
加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.3質量部超が好ましく、0.5質量部超がより好ましく、0.6質量部超がさらに好ましい。一方、該含有量は、8.0質量部未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましく、4.0質量部未満がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量が上記範囲内であると、破壊強度および伸びが確保できる傾向があり、本発明の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0140】
<製造>
本発明のゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0141】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0142】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。
【0143】
本発明のタイヤは、前記のゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でサイドウォールの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0144】
<用途>
タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。ここで、乗用車用タイヤとは、四輪走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、最大負荷能力WLが1400kg以下のものをいう。
【実施例0145】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。以下に示す各種薬品を用いて、各表に従って得られるタイヤを検討して下記評価方法に基づいて算出した結果を、各表の下部に示す。
【0146】
<各種薬品>
以下に実施例および比較例で用いた薬品をまとめて説明する。
【0147】
IR系ゴム:天然ゴム(TSR20)
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含量98質量%、ビニル結合量1質量%)
SBR:JSR(株)製のHPR840(スチレン含有量10.0質量%、ビニル結合量42.0モル%)
CB(カーボンブラック)1:ショウブラックN550(キャボットジャパン(株)製、N2SA:42m2/g、平均一次粒子径48nm)
CB(カーボンブラック)2:ショウブラックN660(キャボットジャパン(株)製、N2SA:35m2/g、平均一次粒子径80nm)
rCB(リカバードカーボンブラック):タイヤの熱分解プロセスから得られたカーボンブラック(灰分量:17質量%)
シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA175m2/g、平均一次粒子径:17nm)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエースワックス
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(アロマ系プロセスオイル)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミOT(10%オイル含有不溶性硫黄)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS))
【0148】
<未加硫ゴム組成物の製造>
表2および表3に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度170℃になるまで5分間混練りし、混練物を得る。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。
【0149】
<試験用タイヤの製造>
表2および表3に従い、得られた未加硫ゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でサイドウォールの形状に押し出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、各試験用タイヤ(265/70R18および255/70R18)を製造する。
【0150】
なお、サイドウォールの外表面上の微小隆起は、プレス加硫の際に、微小隆起形成部の対向面に微小隆起形成用の刻印が彫り込まれたサイドプレートを備える金型を用いて形成する。微小隆起Aと微小隆起Bの形状は以下のとおりである。なお、高さh(mm)はタイヤ最大幅位置における微小隆起の高さ、高さh1(mm)はタイヤ半径方向最外側の位置における微小隆起の高さ、高さh2(mm)はタイヤ半径方向最内側の位置における微小隆起の高さである。hよりもh1の値が大きい場合、微小隆起の高さはタイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向外側に向かって漸増し、hよりもh2の値が大きい場合、微小隆起の高さはタイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向内側に向かって漸増している。
【0151】
【表1】
【0152】
<70℃tanδ、70℃E*>
各試験用タイヤのサイドウォールの内側からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの粘弾性測定用ゴム試験片を切り出し、各ゴム試験片について、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、測定温度:70℃、初期歪み:10%、動歪:±1%、周波数:10Hzの条件下、伸長の変形モードで、損失正接(70℃tanδ)および複素弾性率(70℃E*)(MPa)を測定する。
【0153】
<耐クラック性能>
265/70R18の試験用タイヤを18×8.5Jのリムに装着し、255/70R18の試験用タイヤを18×8.0Jのリムに装着した。各試験用タイヤを、ドラム(外径:1.7m)を使用し、以下の条件下で荷重をかけて5000km連続走行させ、走行後に発生したサイドウォール部の亀裂の長さの合計求める。
荷重:4.74kN
内圧:290kPa
速度:100km/h
【0154】
上記亀裂の長さの合計をもとに、基準配合の耐クラック性能指数を100とし、以下の計算式により、各配合の耐クラック性能をそれぞれ指数表示する。指数が大きいほど、耐クラック性能に優れることを示す。
(耐クラック性能指数)=(基準配合の亀裂長さ)/(各配合の亀裂長さ)×100
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
<実施形態>
以下に、好ましい実施形態を示す。
【0158】
[1]一対のサイドウォールを備えるタイヤであって、
前記サイドウォールを構成するゴム組成物の70℃における損失正接(tanδ)を70℃tanδとし、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(MPa)を70℃E*とし、前記タイヤの最大負荷能力(kg)をWLとするとき、70℃tanδ、70℃E*およびWLが、以下の関係を満たすタイヤ。
(1) 70℃tanδ/(0.000250×WL-0.192)<1.00
(2) 70℃E*≦10.0
[2]前記タイヤの最大幅位置におけるサイドウォールの厚みをT(mm)とするとき、70℃E*およびTが、以下の関係を満たす、上記[1]記載のタイヤ。
(3) 70℃E*×T≦31.5
[3]式(1)の右辺が0.90、より好ましくは0.88、さらに好ましくは0.83である、上記[1]または[2]記載のタイヤ。
[4]式(1)の右辺が0.81、より好ましくは0.79、さらに好ましくは0.77、さらに好ましくは0.73、さらに好ましくは0.70、さらに好ましくは0.67であるである、上記[1]または[2]記載のタイヤ。
[5]式(2)の右辺が9.0、より好ましくは8.0、さらに好ましくは7.0、さらに好ましくは6.0、さらに好ましくは5.5、さらに好ましくは4.5、さらに好ましくは4.0、さらに好ましくは3.8、さらに好ましくは3.5、さらに好ましくは3.0である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[6]式(3)の右辺が25.0、好ましくは20.0、より好ましくは16.0、さらに好ましくは15.0、さらに好ましくは14.0、さらに好ましくは13.0、さらに好ましくは12.0である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[7]前記ゴム組成物がカーボンブラックを含む、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[8]前記ゴム組成物がシリカを含む、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[9]前記ゴム組成物がカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックがリカバードカーボンブラックを含む、上記[1]~[6]および[8]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[10]前記ゴム組成物がシリカおよびカーボンブラックを含み、
ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの量(質量部)をSとし、前記カーボンブラックの量(質量部)をCとするとき、SおよびCが以下の関係を満たす、または、式(4)の右辺は好ましくは0.45、より好ましくは0.40、さらに好ましくは0.35、さらに好ましくは0.30である上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のタイヤ。
(4) S/C<0.5
[11]前記ゴム組成物がシリカおよびカーボンブラックを含み、前記カーボンブラックがリカバードカーボンブラックを含み、
ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの量(質量部)をSとし、前記リカバードカーボンブラックの量(質量部)をrCとするとき、SおよびrCが以下の関係を満たす、または、式(5)の右辺は好ましくは0.90、より好ましくは0.80、さらに好ましくは0.70、さらに好ましくは0.60、さらに好ましくは0.50である上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のタイヤ。
(5) S/rC≦1
[12]前記一対のサイドウォールの少なくとも一方が、外表面に微小隆起が複数個形成された微小隆起形成部を有する、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[13]前記微小隆起の形状が、柱状、錐台状またはリブ状である、上記[12]記載のタイヤ。
[14]記微小隆起が、高さが0.03mm以上0.50mm以下、好ましくは0.10mm以上0.45mm以下、より好ましくは0.10mm以上0.40mm以下であり、少なくとも一方向において0.50mm以下、好ましくは0.10mm以下、より好ましくは0.05mm以下の間隔で20個以上形成されており、前記微小隆起形成部が、10mm2以上の面積を有する、上記[12]または[13]記載のタイヤ。
[15]前記微小隆起の最大幅が0.03mm以上5.00mm以下、好ましくは0.05mm以上3.00mm以下、より好ましくは0.10mm以上1.00mm以下、より好ましくは0.10mm以上0.50mm以下である、上記[12]~[14]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[16]前記微小隆起の高さが、タイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向外側に向かって漸増し、かつ、タイヤ最大幅位置からタイヤ半径方向内側に向かって漸増している、上記[12]~[15]のいずれか1項に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0159】
Wt タイヤ断面幅
Ht タイヤ断面高さ
Dt タイヤ外径
1 サイドウォール外表面
2 微小隆起
3 微小隆起
4 微小隆起
w 微小隆起の最大幅
d 微小隆起の間隔
h 微小隆起の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6