(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101329
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】巻回シート付きチューブ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20240722BHJP
B32B 1/00 20240101ALI20240722BHJP
B65D 35/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
B32B1/02
B65D35/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005259
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】富岡 恭史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】関本 純輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 みどり
【テーマコード(参考)】
3E062
3E065
4F100
【Fターム(参考)】
3E062AA20
3E062AB14
3E062AB20
3E062AC02
3E062DA01
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3E062JC09
3E062JD01
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3E065GA01
3E065GA03
3E065GA10
3E065HA02
3E065HA03
4F100AB01C
4F100AB33C
4F100AK01C
4F100AK02B
4F100AK06B
4F100AK42C
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4F100BA03
4F100BA07
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4F100DA02A
4F100DG10C
4F100DG10D
4F100GB17
4F100JL14B
(57)【要約】
【課題】使用感が良好であり、シートを簡単に剥離でき、さらに意匠性が良好である巻回シート付きチューブ容器を提供する。
【解決手段】チューブ容器本体50及び巻回シート10を有する、巻回シート付きチューブ容器100であって、巻回シート10は、基材層と易剥離シーラント層とが積層された積層体を含み、巻回シート10は、易剥離シーラント層を介して、チューブ容器本体50の胴部20に巻回状に接合されており、かつ巻回シート10は、チューブ容器本体50の胴部20のうちの尻シール部又は尻シール予定部20aには配置されていない、巻回シート付きチューブ容器100を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ容器本体及び巻回シートを有する、巻回シート付きチューブ容器であって、
前記巻回シートは、基材層と易剥離シーラント層とが積層された積層体を含み、
前記巻回シートは、前記易剥離シーラント層を介して、前記チューブ容器本体の胴部に巻回状に接合されており、かつ
前記巻回シートは、前記チューブ容器本体の前記胴部のうちの尻シール部又は尻シール予定部には配置されていない、
巻回シート付きチューブ容器。
【請求項2】
前記巻回シートが、前記尻シール部又は尻シール予定部から30.0mm以下の間隔を開けて配置されている、請求項1に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【請求項3】
前記基材層が、ポリマーフィルム層、紙層、金属薄層、又はそれらの組み合わせを有する、請求項1又は2に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【請求項4】
前記易剥離シーラント層が、層内凝集破壊型である、請求項1又は2に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【請求項5】
前記易剥離シーラント層が、界面剥離型である、請求項1又は2に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【請求項6】
前記巻回シートが、剥離きっかけを有している、請求項1又は2に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【請求項7】
前記剥離きっかけの少なくとも一部が、前記巻回シートのつなぎ目に存在している、請求項6に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【請求項8】
前記巻回シートに、前記チューブ容器を軸とするらせん状のミシン目が設けられている、請求項1又は2に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【請求項9】
前記巻回シートは、前記巻回シートが剥離可能である旨の表示を有する、請求項1又は2に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回シート付きチューブ容器に関し、特に、チューブ容器本体及び容器に巻き付けられている巻回シートを有する巻回シート付きチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ容器は、医薬品をはじめ、歯磨き、食品、化粧品、接着剤等多くのものの容器として、従来から使用されている。チューブ容器は、一般的に、筒状にブロー成形又は押出成形した合成樹製のチューブから形成したチューブ体、あるいはアルミラミネートシートを巻回して筒状にしたチューブ体であり、筒状の胴部の上端に、笠状の肩部の上端開口部から口筒部を立設したヘッド部を熱溶着固定し、更に内容物を充填した後に胴部の下端(尻部)開口部をヒートシールするようにして使用されることが多い。
【0003】
また、このようなチューブ容器に関して、模様や文字等の情報のための媒体及び/又は美観のための装飾としてのシートをその胴部に巻回した巻回シート付きチューブ容器が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ベースとなるチューブ容器の本体を押出成形しつつ、その余熱で表面に装飾フィルムをラベリングする方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、予め形成されたチューブ容器本体の胴部の外周面の所定の高さ範囲に、印刷層により加飾した感熱ラベルを熱融着により巻回状に接着固定したチューブ容器が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3では、装飾(加飾)用フィルムが、装飾層に隣接する接着層を介し、かつ巻き付け開始部と巻き付け終了部が重複してポリエチレンチューブ容器本体の胴部に巻き付けられていることを特徴とする加飾ポリエチレンチューブ容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2019-531928号公報
【特許文献2】特開2010-105692号公報
【特許文献3】特開平07-040515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1~3に開示された巻回シート付きチューブ容器は、いずれも装飾としてのシート(フィルム又はラベル)がチューブ容器本体から剥離や脱落しないように工夫されているものであると考えられる。
【0009】
これに対して、以下のような事情の場合には、必要に応じて、チューブ容器本体から巻回シートを剥離させることが好ましいことを、本件発明者等は見いだした:例えば、製品のキャンペーンや懸賞等のためのポイントやマーク等が巻回シートに記載されており、キャンペーンや懸賞等への応募のためにポイントやマーク等を切り取る必要がある場合、チューブ容器を柔らかくして、チューブ内の内容物を出し切ろうとする場合、又はシートとチューブ容器本体とを分別して廃棄又はリサイクルしようとする場合等。
【0010】
したがって、チューブ容器本体から巻回シートを簡単に剥離できるような巻回シート付きチューブ容器が必要とされている。
【0011】
なお、ペットボトル等に用いられるシュリンクラベルは、ペットボトルから簡単に剥離させることができる。しかしながら、このようなシュリンクラベルをチューブ容器に適用させると、チューブ容器の胴部をスクイズして内容物を押し出す際に、シュリンクラベルが浮いてしまうので、使用感に問題がある。
【0012】
これに対して、本発明では、使用感が良好であり、巻回シートを簡単に剥離でき、巻回シートによる機能性及び/又は意匠性を提供できる、巻回シート付きチューブ容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである。
【0014】
〈態様1〉
チューブ容器本体及び巻回シートを有する、巻回シート付きチューブ容器であって、
前記巻回シートは、基材層と易剥離シーラント層とが積層された積層体を含み、
前記巻回シートは、前記易剥離シーラント層を介して、前記チューブ容器本体の胴部に巻回状に接合されており、かつ
前記巻回シートは、前記チューブ容器本体の前記胴部のうちの尻シール部又は尻シール予定部には配置されていない、
巻回シート付きチューブ容器。
〈態様2〉
前記巻回シートが、前記尻シール部又は尻シール予定部から30.0mm以下の間隔を開けて配置されている、態様1に記載の巻回シート付きチューブ容器。
〈態様3〉
前記基材層が、ポリマーフィルム層、紙層、金属薄層、又はそれらの組み合わせを有する、態様1又は2に記載の巻回シート付きチューブ容器。
〈態様4〉
前記易剥離シーラント層が、層内凝集破壊型である、態様1~3のいずれか一項に記載の巻回シート付きチューブ容器。
〈態様5〉
前記易剥離シーラント層が、界面剥離型である、態様1~3のいずれか一項に記載の巻回シート付きチューブ容器。
〈態様6〉
前記巻回シートが、剥離きっかけを有している、態様1~4のいずれか一項に記載の巻回シート付きチューブ容器。
〈態様7〉
前記剥離きっかけの少なくとも一部が、前記巻回シートのつなぎ目に存在している、態様6に記載の巻回シート付きチューブ容器。
〈態様8〉
前記巻回シートに、前記チューブ容器を軸とするらせん状のミシン目が設けられている、態様1~7のいずれか一項に記載の巻回シート付きチューブ容器。
〈態様9〉
前記巻回シートは、前記巻回シートが剥離可能である旨の表示を有する、態様1~8のいずれか一項に記載の巻回シート付きチューブ容器。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用感が良好であり、巻回シートを簡単に剥離でき、巻回シートによる機能性及び/又は意匠性を提供できる、巻回シート付きチューブ容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の巻回シート付きチューブ容器の一態様を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の巻回シート付きチューブ容器の一態様における、チューブ容器本体の胴部及びヒートシールされている巻回シートの概略断面図である。
【
図3】
図3は、参考例1~6の巻回シート付きチューブ容器のそれぞれの剥離きっかけの態様を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《巻回シート付きチューブ容器》
本発明の巻回シート付きチューブ容器は、
チューブ容器本体及び巻回シートを有する、巻回シート付きチューブ容器であって、
巻回シートは、基材層と易剥離シーラント層とが積層された積層体を含み、
巻回シートは、易剥離シーラント層を介して、チューブ容器本体の胴部に巻回状に接合されており、かつ
前記巻回シートは、前記チューブ容器本体の胴部のうちの尻シール部又は尻シール予定部には配置されていない、
巻回シート付きチューブ容器
である。
【0018】
なお、本発明において、巻回シートがチューブ容器本体の胴部に巻回状に接合されている状態とは、巻回シートをチューブ容器本体の胴部への巻き付ける方式に関わらず、結果的に巻きつけるように接合されている状態のことを指す。そのため、接合部分は、全面接合であってもよく、ストライプ状に接合されていてもよい。
【0019】
本発明の巻回シート付きチューブ容器(以下、単に「本発明のチューブ容器」とも称する)は、巻回シートがチューブ容器本体に巻回状に接合されていることによって、巻回シートによる機能性及び/又は意匠性を提供できる。
【0020】
具体的には例えば、巻回シートの基材層が加飾層である場合には、チューブ容器本体の外側に加飾層による意匠性を提供することができる。特に、基材層がホログラム蒸着膜付きフィルム層である場合には、巻回シートによってチューブ容器本体の外側にホログラム効果を与えることができる。また、基材層がエンボス加工フィルム層である場合には、巻回シートによってチューブ容器本体の外側にエンボス効果を与えることができる。
【0021】
また、例えば、巻回シートの基材層がバリア層である場合には、チューブ内容物の成分、酸素、水蒸気等に対して、チューブ容器本体よりも高いバリア性を提供することができる。
【0022】
本発明のチューブ容器は、巻回シートが、基材層と易剥離シーラント層とが積層された積層体を含み、かつ易剥離シーラント層を介して、前記チューブ容器本体の胴部に巻回状に接合されていることによって、以下のような利点(1)~(9)の1又は複数を有することができる。
【0023】
(1)バリア性の底上げ
本発明のチューブ容器では、巻回シート側にバリア性の高い基材層を用いれば、チューブ容器全体のバリア性の底上げができる。このようなバリア性の高い基材層としては、例えばアルミニウム箔又は蒸着膜付きPETフィルム等を用いることができる。
【0024】
(2)様々な基材層の利用
本発明のチューブ容器では、巻回シートの基材層として、従来のラミネートチューブでは使用が難しかった基材層、例えばエンボス加工PETフィルム、ホログラム蒸着膜付きPETフィルム等を用いることができる。
【0025】
また、本発明のチューブ容器では、巻回シートの基材層として、紙を使用することもできる。この場合には、巻回シートをチューブ容器本体から剥離することによって、巻回シート側を紙ごみとして分別廃棄し、かつ/又は容器本体側をプラスチックごみとして分別廃棄することができる。更に、本発明のチューブ容器では、巻回シートの基材層として紙を使用する場合、チューブ容器本体を必要最低限の厚みにすれば、分別せずとも紙区分として取扱い可能な紙チューブも構成できる。
【0026】
(3)生産効率の改善/小ロット対応
従来のブローチューブ及びラミネートチューブは、直接印刷で印刷層を提供している。したがって、例えば絵柄変更等の場合には、都度、版替えが必要である。これに対して、本発明のチューブ容器では、巻回シートを用いることで、印刷を施した巻回シートを切り替えるだけで、絵柄変更をすることができる。
【0027】
また、印刷に関しても、本発明のチューブ容器では、これまでのラミネートチューブのように積層体でサイドシームを形成するわけではないので、例えばデジタル印刷等、従来のサイドシームを考慮すると機能的に不十分(この場合、ラミネート強度やインキ密着性が不十分)な印刷方式も利用することができる。
【0028】
したがって、本発明のチューブ容器では、デジタル印刷により、小ロット多品種対応や短納期対応が可能になるだけではなく、印刷不良品の低減にもつながる。
【0029】
(4)チューブ容器本体の薄肉化及び樹脂使用量の削減
本発明のチューブ容器では、剛性の高い巻回シートをチューブ容器本体の胴部に巻き付けることによって、チューブ容器本体を薄肉化していても、チューブ容器の自立性を付与することができる。
【0030】
また、本発明のチューブ容器では、チューブ容器本体を薄肉化することによって、チューブ容器本体を形成するための樹脂の使用量を削減することができる。
【0031】
(5)チューブ容器の分別廃棄性の向上
従来、巻回シートとチューブ容器本体とが分離できない巻回シート付きチューブ容器は、一般に、可燃物として処理されていた。これに対して、本発明のチューブ容器は、巻回シートとチューブ容器本体とを分別して廃棄することができる。この分別廃棄によれば、可燃ごみの廃棄量を減らすこともできる。
【0032】
(6)易廃棄性
本発明のチューブ容器では、チューブ容器本体の薄肉化によって、チューブ容器をコンパクトに廃棄することができる。
【0033】
(7)使い切りに貢献
本発明のチューブ容器では、巻回シートを剥離して、相対的に柔らかくなったチューブ容器本体から、内容物を絞り出しやすくなる(最後は薄く絞りやすい状態にできる)。
【0034】
(8)広告や能書等の付加情報の提供
本発明のチューブ容器では、巻回シートが重複している部分を長く(大きく)することによって、この部分に広告や能書等の付加情報を提供することができる。
【0035】
(9)巻回シートへの製品のキャンペーン情報や「くじ」等の記載
本発明のチューブ容器では、巻回シートに製品のキャンペーン情報や「くじ」等を記載することによって、巻回シートを剥離して、応募等をしやすくすることができる。
【0036】
一般的に、チューブ容器は、円筒形状の胴部の一端部に注出口部が設けられた状態で充填装置に供給され、胴部の他端部(尻部)の開口部から内容物を充填した後に、この他端部の尻シール予定部(エンドシール予定部)を熱プレスによってヒートシールすることによって、尻シール部(エンドシール部)を形成して封止されている。
【0037】
これに関して、本発明のチューブ容器では、巻回シートは、チューブ容器本体の胴部のうちの尻シール部又は尻シール予定部には配置されていない。したがって、本発明のチューブ容器では、更に、下記の(a)~(d)のうちの少なくとも1つの効果を有することができる。
【0038】
(a)本発明のチューブ容器では、尻シール予定部のヒートシールの際に、巻回シートが熱プレスを受けない。したがって、チューブ容器本体からの巻回シートの剥離性が尻シールのための熱プレスによって変化することを抑制できる。
【0039】
(b)本発明のチューブ容器では、尻シールの前又は後で、尻シール部又はその外部側を切断する必要がある場合にも、チューブ容器本体と共に巻回シートを切断する必要が無く、したがって作業性が改善される。この改善効果は、巻回シートが切断しにくい層、例えば紙層を有する場合に顕著になる。
【0040】
(c)チューブ容器において尻シール部を形成する場合、その近傍では、複雑に変形していたり、曲率半径が小さかったりする部分が生じ、その部分では、巻回シートが意図せずに剥がれる可能性がある。これに対して、本発明のチューブ容器では、このような問題を抑制できる。
【0041】
(d)本発明のチューブ容器では、尻シールを行い際に、巻回シートを介在させずに、ヒートシールを行うことができる。これによれば、本発明のチューブ容器では、ヒートシールの条件を、巻回シートの特性を考慮せずに決定することができる。本発明のチューブ容器では、巻回シートを変更した際にも、尻シールのためのヒートシール条件を変更せずに、ヒートシールを行うことが可能になる。
【0042】
なお、本発明に関して、「尻シール部」(「エンドシール部」として言及されることもある)は、チューブ容器の注出口側とは反対側の端部において、チューブ容器本体の胴部がヒートシールされて封止されている部分を意味している。また、本発明に関して、「尻シール予定部」(「エンドシール予定部」として言及されることもある)は、ヒートシールされて封止されることによって、「尻シール部」を形成するための部分を意味している。
【0043】
本発明のチューブ容器では、巻回シートが、尻シール部又は尻シール予定部から30.0mm以下の間隔を開けて配置されていてよい。ここで、この間隔は、0.1mm以上、0.3mm以上、0.5mm以上、0.7mm以上、1.0mm以上、2.0mm以上、3.0mm以上、4.0mm以上、又は5.0mm以上であってよく、また、30.0mm以下、25.0mm以下、20.0mm以下、15.0mm以下、10.0mm以下、9.0mm以下、8.0mm以下、7.0mm以下、6.0mm以下、5.0mm以下、3.0mm以下、2.0mm以下、又は1.0mm以下であってよい。なお、本発明に関して、巻回シートと尻シール部又は尻シール予定部との「間隔」は、それらの間の最小距離として定義される。
【0044】
以下では、
図1及び
図2を参照して、本発明の巻回シート付きチューブ容器の一態様を説明する。
【0045】
図1は、本発明の巻回シート付きチューブ容器の一態様を示す正面図である。
図1に示されているように、本発明の巻回シート付きチューブ容器100は、チューブ容器本体50及び巻回シート10を有する。なお、巻回シート10の詳細は、
図2に示す巻回シートの概略断面図を用いて下記で説明する。
【0046】
図2に示されているように、巻回シート10は、基材層1、及び易剥離シーラント層2が、この順に積層された積層体を含み、かつ易剥離シーラント層2を介して、チューブ容器本体の胴部20に巻回状に接合されている。
【0047】
このように、本発明の巻回シート付きチューブ容器100は、巻回シート10がチューブ容器本体の胴部20に巻回状に接合されているため、胴部20をスクイズしていても、巻回シート10が浮いてしまうようなことはなく、すなわち、使用感が良好である。また、巻回シート10を剥離させる際には、易剥離シーラント層2の凝集破壊等により、チューブ容器から巻回シート10を簡単に剥離することができる。
【0048】
また、本発明のチューブ容器100では、巻回シート10は、チューブ容器本体の胴部20のうちの尻シール部又は尻シール予定部50aには配置されておらず、巻回シート10が、尻シール部又は尻シール予定部50aから間隔dを開けて配置されている。
【0049】
以下では、本発明の巻回シート付きチューブ容器にかかる各構成要素について、説明する。
【0050】
〈巻回シート〉
本発明にかかる巻回シートは、基材層、及び易剥離シーラント層が積層された積層体を含む。本発明にかかる巻回シートの基材層は、易剥離シーラント層以外の任意の層を意味しており、したがって基材層は、単一の層から構成されていても、複数の層から構成される積層体であってもよい。したがって、基材層は、ポリマーフィルム層、紙層、金属薄層、又はそれらの組み合わせを有することができる。
【0051】
基材層の厚さは、意図するチューブ容器の用途、製造の容易さ等に応じて、1μm以上、2μm以上、3μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよく、また500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、90μm以下、又は80μm以下であってよい。
【0052】
基材層で用いられるフィルム及び紙は、特に限定されないが、例えば、チューブ容器のスクイズ変形に違和感なく十分追従できる柔軟性を有するような材料から選択されてもよい。また、基材層で用いられるフィルム及び紙は、例えば、易剥離シーラント層による巻回シートの接合をヒートシールによって行うために、ヒートシールする際の熱に耐えうる材料から選択されてもよい。
【0053】
より具体的には、基材層で用いられるフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、特に二軸延伸ポリプロピレンフィルムのようなポリプロピレンフィルム、又は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのようなポリエステルフィルムを挙げることができる。
【0054】
また、基材層で用いられる紙としては、パルプ等の植物性繊維を原料にしている一般的な紙に限られず、羊毛や絹等の動物性繊維を原料にして製造される紙、ポリマー繊維を原料にして製造される紙、ガラス繊維等の無機繊維を原料にして製造される紙等を挙げることができる。
【0055】
本発明において、基材層は、例えば加飾層、補強層、及び/又はバリア層を有することができる。巻回シートの厚さは、特に限定されず、耐久性、柔軟性、触感、又は用途等に合わせて適宜設定してよい。
【0056】
(加飾層)
本発明において、「加飾層」は、本発明の巻回シートをチューブ容器本体に巻回したときにチューブ容器の外部から観察でき、それによってチューブ容器の外観を加飾できる層、特に模様、色、光沢等の外観を加飾(装飾)できる層である。したがって、本発明に関して、文字情報、記号、マーク等のみが印刷された層であって、模様、色、光沢等の外観を加飾しない層は、「加飾層」に該当しない。
【0057】
加飾層は、下記のいずれか又はそれらの組み合わせであってよい:
・印刷付きフィルム層又は紙層
・塗装付きフィルム層又は紙層
・薄膜付きフィルム層又は紙層(例えば蒸着膜付フィルム層又は紙層、メッキ付フィルム層又は紙層、スパッタ膜付フィルム層又は紙層、金属箔付フィルム層又は紙層、銀鏡塗装付フィルム層又は紙層)
・加飾フィルム層又は紙層(例えばマット加工フィルム層、偏光フィルム層、エンボス加工フィルム層、着色フィルム層又は紙層)
【0058】
薄膜付きフィルム層又は紙層における蒸着膜としては、アルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ・アルミナ二元蒸着膜を挙げることができる。また、薄膜付きフィルム層又は紙層における金属箔としては、金箔、銀箔、銅箔、アルミニウム箔を挙げることができる。
【0059】
本発明において、加飾層の厚さは、特に限定されず、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってよく、また、シートに柔軟性を付与する観点からは、100μm以下、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であってよい
【0060】
(補強層)
本発明において、「補強層」は本発明の巻回シートに適切な取り扱い性、強度、耐久性等を与える層であってよい。この補強層が加飾層よりも外側に配置される場合、十分な透明性を有し、それによって補強層を通して加飾層が観察されることを可能にことが好ましい。
【0061】
補強層を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、チューブ容器のスクイズ変形に違和感なく十分追従できる柔軟性を有する材料から選択することができる。また、補強層を構成する材料は、例えば、易剥離シーラント層による巻回シートの接合をヒートシールによって行うために、ヒートシールする際の熱に耐えうる材料から選択されてもよい。
【0062】
より具体的には、補強層としては、上記のフィルム及び紙を用いることができる。
【0063】
本発明において、基材層の厚さは、特に限定されず、例えば巻回シートに耐久性等を付与する観点からは、1μm以上、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってよく、また、シートに柔軟性を付与する観点からは、100μm以下、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0064】
(バリア層)
なお、本発明に関して、「バリア層」は、チューブ内容物の成分、酸素、水蒸気等に対して、チューブ容器本体よりも高いバリア性を有する任意の層である。
【0065】
ここで、バリア層は例えば、金属箔、金属若しくは金属化合物蒸着膜、ビニルアルコールポリマー系コーティング若しくはフィルム、ポリ塩化ポリビニリデン(PVDC)系コーティング若しくはフィルム、又はそれらの組み合わせであってよい。ここで、金属箔は、アルミニウム箔であってよい。金属又は金属化合物蒸着膜は、アルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、又はそれらの組み合わせであってよい。ビニルアルコールポリマー系コーティング又はフィルムは、ポリビニルアルコール(PVOH)コーティング又はフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)コーティング又はフィルム、又はそれらの組み合わせであってよい。なお、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)においては、ビニルアルコールモノマーの割合が、50mol%以上であってよい。また、ポリ塩化ポリビニリデン系コーティング若しくはフィルムは、塩化ビニリデン含有共重合体、特に塩化ビニリデンと、塩化ビニル、アクリル酸エステル、又はアクロニトリルとの共重合体であってよい。なお、塩化ビニリデン含有共重合体においては、塩化ビニリデンモノマーの割合が、50mol%以上であってよい。金属又は金属化合物蒸着膜、及びビニルアルコールポリマー系コーティング、及びポリ塩化ポリビニリデン系コーティングは、基材として用いられるポリマーフィルム上に積層体した状態で用いることができる。
【0066】
本発明において、バリア層の厚さは、特に限定されない。例えばバリア層が金属箔である場合、バリア層の厚さは、1μm以上、3μm以上、又は5μm以上であってよく、また100μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であってよい。バリア層が金属又は金属化合物蒸着膜である場合、バリア層の厚さは、1nm以上、10nm以上、30nm以上、又は50nm以上であってよく、また1μm以下、500nm以下、又は300μm以下であってよい。バリア層がビニルアルコールポリマー系コーティング又はポリ塩化ポリビニリデン(PVDC)系コーティングである場合、バリア層の厚さは、100nm以上、300nm以上、又は500nm以上であって、10μm以下、5μm以下、又は1μm以下であってよい。バリア層がビニルアルコールポリマー系フィルム又はポリ塩化ポリビニリデン(PVDC)系フィルムである場合、バリア層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよく、また100μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であってよい。
【0067】
(易剥離シーラント層)
本発明において易剥離シーラント層は、それを介して巻回シートをチューブ容器の胴部に巻回状に接合するための層である。
【0068】
ここで、「易剥離シーラント層」とは、巻回シートがチューブ容器本体の胴部にヒートシールされている状態から、人の手作業によって容易に巻回シートを剥離することを可能にする層を指す。本発明において、巻回シートを剥離する際の剥離強度としては、例えば、12N/15mm以下、8.0N/15mm以下、又は5.0N/15mm以下であってよく、また0.10N/15mm以上、0.20N/15mm以上、0.30N/15mm以上、0.50N/15mm以上、1.0N/15mm以上であってよい。なお、「剥離強度」は、例えばJIS-Z-0238に規定する方法に従い、180°剥離させた場合の剥離強度を指す。
【0069】
本発明において、易剥離シーラント層の厚さは、特に限定されず、チューブ容器を使用する際の使用性(スクイズ耐久性)、巻回シートを剥離する際の易剥離性等を考慮して選択することができる。例えば易剥離シーラント層の厚さは、1μm以上、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってよく、また100μm以下、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0070】
本発明において、易剥離シーラント層は、単層であっても複数の層(例えば、2層以上、3層以上、又は4層以上であって、10層以下、8層以下、6層以下、又は5層以下)の積層体であってもよい。
【0071】
また、本発明において、易剥離シーラント層は、層内凝集破壊型の易剥離シーラント層であっても、界面剥離型の易剥離シーラント層であってもよい。
【0072】
本発明において「層内凝集破壊型の易剥離シーラント層」とは、巻回シートを、チューブ容器本体の胴部から剥離する際に、単層である易剥離シーラント層の内部が破断して、又は複数の層の積層体である易剥離シーラント層を構成する複数の層のうちの1つの層の内部が破断して、破断した易剥離シーラント層の一部がチューブ容器本体側に残留し、かつ破断した易剥離シーラント層の他の一部が巻回シート側に残留する易剥離シーラント層を指す。
【0073】
本発明において、易剥離シーラント層が層内凝集破壊型である場合、巻回シートを除去した後のチューブ容器本体の胴部は、人間の指に対して滑り性が良くなり、それによって巻回シートを除去した後のチューブ容器本体をしごいてチューブ容器本体中に残留する内容物を絞り出すことが容易になる。ここで、このように滑り性が良くなるのは、チューブ容器本体の表面に残存している破断した易剥離シーラント層によって、チューブ容器本体を指でしごく際の摩擦による引っかかりが低減することによると考えられる。
【0074】
また、本発明において「界面剥離型の易剥離シーラント層」とは、巻回シートを、チューブ容器本体の胴部から剥離する際に、易剥離シーラント層とそれに隣接する層の界面、易剥離シーラント層とチューブ容器本体との界面、又は複数の層の積層体である易剥離シーラント層を構成する複数の層の間の界面で、剥離する層を指す。したがって、「界面剥離型の易剥離シーラント層」では、チューブ容器本体から巻回シートを剥離したときに、易剥離シーラント層がチューブ容器側に残留する場合、易剥離シーラント層が巻回シート側に残留する場合、及び易剥離シーラント層の一部がチューブ容器側に残留し、かつ易剥離シーラント層の残部が巻回シート側に残留する場合がある。
【0075】
本発明において、易剥離シーラント層が、界面剥離型の易剥離シーラント層である場合は、剥離後のチューブ容器本体の胴部の透明性を維持することができ、したがって透明ブローチューブ容器と併用することが好ましい。特に、チューブ容器本体側に易剥離シーラント層が残留する場合であっても、易剥離シーラント層の表面が平滑であることによって、剥離後のチューブ容器本体の胴部の透明性を維持することができる。
【0076】
本発明において、易剥離シーラント層を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、「層内凝集破壊型の易剥離シーラント層」又は「界面剥離型の易剥離シーラント層」の類型に基づいて、適宜決めてよい。
【0077】
より具体的には、層内凝集破壊型の易剥離シーラント層を構成する材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂から選択されてよい。
【0078】
ポリオレフィン系樹脂としては、より具体的には、例えば低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、エチレン・αオレフィン共重合体等のエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらを単独又は主原料としたブレンド材料で構成しても良い。これらの材料から、チューブ容器本体にヒートシール可能な材料を適宜に用いることが好ましい。
【0079】
また、界面剥離型の易剥離シーラント層を構成する材料としては、ポリオレフィン系樹脂と環状オレフィンコポリマーとの任意の比率による混合物から選択されてよい。また、ポリオレフィン系樹脂と環状オレフィンコポリマーの合計に対する環状オレフィンコポリマーの割合は、例えば、1.0~50質量%、特に、1.0~20質量%、1.0~10質量%、又は3.0~10質量%であってよい。
【0080】
ここで、環状オレフィンコポリマーとは、環状オレフィンがモノマーとして用いられた重合体であり、重合体の主鎖又は側鎖に飽和炭化水素環構造を有するものを指す。環状オレフィンコポリマーとしては、少なくとも1種の環状オレフィンと、環状オレフィン以外の少なくとも1種のビニル化合物とをモノマーとする、共重合体であることが好ましい。環状オレフィンコポリマーは、環状オレフィンの少なくとも1種と、環状オレフィン以外のビニル化合物の少なくとも1種とをモノマーとして用いた、付加重合による環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)であっても、縮合環骨格に二重結合を有する化合物の少なくとも1種と、該化合物以外の不飽和化合物の少なくとも1種とをモノマーとして用いた、開環重合による環状オレフィン開環重合体又はその水素添加物(COP)であってもよい。
【0081】
環状オレフィンコポリマーが、付加重合による環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)である場合には、モノマーとなる環状オレフィンとしては特に限定されるものではないが、例えば、シクロブテン、3-メチルシクロブテン、3,4-ジイソプロペニルシクロブテン、シクロペンテン、1-メチルシクロペンテン、3-メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、1-メチルシクロオクテン、5-メチルシクロオクテン、シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィンや、テトラシクロドデセンやノルボルネン等の多環シクロオレフィン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0082】
また、環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)のコモノマーとなる、環状オレフィン以外のビニル化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセン等のα-オレフィン、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン等の単環ジエンや、不飽和結合を2個有するノルボルネン環等を有する多環ジエン、ブタジエンやイソプレン等の直鎖又は分岐のジエン等を挙げることができる。
【0083】
界面剥離型の易剥離シーラント層を構成する材料として環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)を用いる場合には、環状オレフィンに由来する構造単位の割合が、15~60モル%であることが好ましく、25~50モル%の範囲であることが更に好ましい。
【0084】
また、環状オレフィンコポリマーが、開環重合による環状オレフィン開環重合体又はその水素添加物(COP)である場合には、モノマーとなる縮合環骨格に二重結合を有する化合物としては、メタセンス重合触媒によって重合し得るものであれば特に限定されるものではない。例えば、テトラシクロドデセン、ノルボルネン、もしくはこれらの誘導体等のノルボルネン系骨格を有する化合物が挙げられる。
【0085】
また、環状オレフィン開環重合体のコモノマーとなる、縮合環骨格に二重結合を有する化合物以外の不飽和化合物としては、メタセンス重合触媒によって重合し得るものであれば特に限定されるものではない。例えば、上記した環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)のモノマーとなる環状オレフィンや、環状ジエン、主鎖に炭素-炭素二重結合を有する単量体、並びにこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0086】
なお、環状オレフィン開環重合体は、主鎖に炭素-炭素の二重結合(C=C)を有している。そして、水素添加を実施すると、主鎖の二重結合が炭素-炭素の単結合(C-C)となった水素添加物(COP)を得ることができる。耐熱性、耐候性等の観点からは、少なくとも主鎖の炭素-炭素二重結合が水素添加された重合体であってもよい。
【0087】
環状オレフィン開環重合体又はその水素添加物(COP)を用いる場合には、水素化反応に供することを考慮すると、縮合環骨格に二重結合を有する化合物に由来する構造単位の割合が、80質量%以上であることが好ましい。
【0088】
(その他の層)
本発明にかかる巻回シートにおいては、上記の層の積層体の間又は表面に、更なる機能を付与する目的でその他の層を更に含んでいてもよい。
【0089】
その他の層としては、例えば、接着剤層等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
(巻回シートの製造方法)
本発明にかかる巻回シートにおいて、基材層と易剥離シーラント層とが積層された積層体の成形方法は、特に限定されず、例えば、ドライラミネート法、サンドラミネート法、又は共押フィルム成形法を用いてよい。なお、各層又は積層体として、市販のシート成形品をそのまま用いてもよい。
【0091】
(剥離きっかけ)
本発明において、巻回シートの剥離の容易性を向上させる観点から、巻回シートは、剥離きっかけを有していてもよく、巻回シートにチューブ容器本体を軸とするらせん状のミシン目が設けられていてもよく、又は両者を兼備してよい。
【0092】
巻回シートは、剥離きっかけを有していることによって、チューブ容器本体からより簡単に剥離することができる。特に、表面が金属の材料を含むチューブ容器本体の場合には、巻回シートは剥離きっかけを有していることが好ましい。
【0093】
本発明において、剥離きっかけとしては、特に限定されず、例えば、以下のようなものであってよい:(i)チューブ容器本体の胴部に巻回シートをヒートシールする際に、巻回シートの易剥離シーラント層において、ヒートシールされていない領域若しくは他の領域よりも弱くヒートシールされている領域を剥離きっかけとすることができる;(ii)巻回シートの易剥離シーラント層の一部に、剥離ニス等の溶着阻害層を設けて、これを剥離きっかけとすることもできる。
【0094】
また、巻回シートの剥離の容易性を向上させる観点から、剥離きっかけの少なくとも一部は、巻回シートのつなぎ目に存在していることが好ましい。ここで、巻回シートのつなぎ目とは、巻回シートをチューブ容器本体の胴部に巻回状にヒートシールする際に、巻回方向におけるシートの両端部の対向している部分又は重複している部分を指す。すなわち、この巻回シートの両端部は互いに、(i)一定の間隔を空けて配置されていてもよく、(ii)ぴったりとつながっていてもよく、又は(iii)重ね合わされていてもよい。例えば、易剥離シーラント層が剥離する際に層内で凝集破壊される易剥離シーラント層を有する場合には、つなぎ目は、上記(i)~(iii)のいずれの類型であってもよい。また、易剥離シーラント層が剥離する際に界面剥離する易剥離シーラント層を有する場合には、つなぎ目は、上記(i)又は(ii)の類型であることが好ましい。
【0095】
(表示)
本発明において、巻回シートは、巻回シートが剥離可能である旨の表示を有してよい。より具体的には、巻回シートに、剥離可能であること、剥離方法、剥離して分別廃棄できること、又は剥離して特定の部分を用いて応募等ができること等の表示を表示してよい。このような表示によって、使用者等に便宜をもたらすことができる。
【0096】
このような表示は巻回シートを構成する1又は複数の層への印刷によって行うことができ、表示の形態は、文字のみによる表示であっても、記号、マーク等のみによる表示であっても、それらの組み合わせによる表示であってもよい。
【0097】
〈チューブ容器本体〉
本発明において、チューブ容器は、医薬品、歯磨き、食品、化粧品、又は接着剤等の内容物を充填する容器として用いられる。
【0098】
よって、チューブ容器本体は、胴部及び注出口部を有する。また、デザインや実用性等に応じて、例えば、胴部と注出口部との間に肩部を更に有してもよい。例えば、
図1に示されているように、チューブ容器本体50は、胴部20、肩部30、及び注出口部40を有する。
【0099】
本発明において、チューブ容器本体は、ラミネートチューブであっても、単層又は多層の押出チューブであっても、単層又は多層のブローチューブであってもよい。また、チューブ容器本体を形成するための積層体又は単一層は、樹脂材料からなる層及び金属材料からなる層を含んでよい。なお、チューブ容器本体を形成するための層が複数である場合、各層は、同じ材料を含んでいてもよく、異なる材料を含んでいてもよい。
【0100】
《巻回シート付きチューブ容器の製造方法》
本発明の巻回シート付きチューブ容器の製造方法は、特に限定されない。
【0101】
したがって、例えば本発明の巻回シート付きチューブ容器は、チューブ容器本体及び巻回シート用積層体をそれぞれ用意し、そして、回転式熱ロールを用いて、巻回シートの易剥離シーラント層をチューブ容器本体の胴部に向き合わせて、熱圧着することによって、巻回シートをチューブ容器本体の胴部に巻回状にヒートシールすることによって、製造できる。
【0102】
熱圧着の際の温度は、特に限定されず、例えば100~300℃であってもよい。また、熱圧着の際の力は、特に限定されず、例えば5~20kgfであってよい。
【実施例0103】
以下では、実施例及び比較例を用いて本発明を説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0104】
《実施例及び比較例》
〈実施例〉
(巻回シート)
巻回シートとして、以下の層構成を有する積層体を準備した(なお、「//」は、ドライラミネート接着剤による接着を示す。)。
紙(65μm)//基材層(ポリエチレンテレフタレート(PET))(12μm)/易剥離シーラント層(50μm)
【0105】
ここで、易剥離シーラント層は、界面剥離型の易剥離樹脂層であり、具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)と環状オレフィンコポリマー(COC)との混合樹脂(LDPE:COC(混合質量比)=95:5)からなる層であった。LDPE(低密度ポリエチレン)としては、ペトロセン226(東ソー株式会社製)を用いた。また、環状オレフィンコポリマー(COC)として、アペル6013B(三井化学株式会社製)を用いた。易剥離シーラント層は、最内層、チューブ容器本体の胴部と接触することになる面に、ポリエチレンのシーラント層を有していてもよい。
【0106】
(チューブ容器本体)
ラミネートシートの端部を重ね合わせ、ヒートシールして、サイドシーム部を形成することによって、チューブ容器本体を構成した。
【0107】
(巻回シート付チューブ容器の製造方法)
上述したチューブ容器本体の胴部に、易剥離シーラント層を介して、巻回シートを熱融着させた。ここでは、回転式熱ロール(200℃)を用いて、巻回シートをチューブ容器に10kgfの力で押し付け熱圧着して、実施例の巻回シート付きチューブ容器を作製した。なお、ここでは、巻回シートが、尻シール部又は尻シール予定部から約1.0mmの間隔を開けて配置されるようにした。
【0108】
〈比較例〉
巻回シートが、尻シール予定部を含む胴部の全体を覆うようにして配置したことを除いて実施例と同様にして、比較例の巻回シート付きチューブ容器作成した。
【0109】
《評価》
〈巻回シートの強度剥離の安定性〉
尻シール部又はその近傍での巻回シートの強度剥離の安定性について、下記の基準で評価した。
A:巻回シートの剥離強度が尻シール部において変化しない(尻シール部に巻回シートが存在しない)。
B:巻回シートの剥離強度が尻シール部において強くなっている。
【0110】
〈尻シール部のカット性〉
尻シール部のカット性について、下記の基準で評価した。
A:尻シール部のカット性が巻回シートの存在によって悪化しない(尻シール部に巻回シートが存在しない)。
B:尻シール部のカット性が巻回シートの存在によって悪化する(紙層の毛羽立ちが生じる)。
【0111】
〈尻シール部の付近での巻回シートの意図しない剥離に対する耐性〉
尻シール部付近での巻回シートの意図しない剥離に対する耐性について、下記の基準で評価した。
A:尻シール部の付近において巻回シートの意図しない剥離(浮き)が生じない。
B:尻シール部の付近において巻回シートの意図しない剥離(浮き)が生じることがある。
【0112】
〈尻シールを良好に行うための熱プレス条件の安定性〉
尻シールを良好に行うための熱プレス条件の安定性について、下記の基準で評価した。
A:巻回シートの有無によっても、尻シールを良好に行うための熱プレス条件が変化しない(尻シール部に巻回シートが存在しない)。
B:巻回シートの有無によって、尻シールを良好に行うための熱プレス条件が変化する。
【0113】
〈評価結果〉
実施例及び比較例の巻回シート付きチューブ容器の評価結果は、表1に示す。
【0114】
【0115】
表1から明らかであるように、実施例のチューブ容器では、巻回シートがチューブ容器本体の胴部のうちの尻シール部に配置されていないことによって、巻回シートの剥離強度の安定性、尻シール部のカット性、尻シール部の付近での巻回シートの意図しない剥離(浮き)に対する耐性、及び尻シールを良好に行うための熱プレス条件の安定性が良好であった。それに対して、比較例のチューブ容器では、巻回シートがチューブ容器本体の胴部のうちの尻シール部にまで配置されていることによって、これらの評価結果が良好ではなかった。
【0116】
《参考例1~6》
参考実施例及び参考比較例では、巻回シートを、易剥離シーラント層を介してチューブ容器本体の胴部に巻回状に接合することの効果について確認する。
【0117】
参考例1~6の巻回シート用積層体として、以下の層構成を有する積層体を準備した(なお、「//」は、ドライラミネート接着剤による接着を示す。):
PETsiox(12μm)//inkPET(12μm)/ac剤/EMAA(20μm)/易剥離シーラント層(層内凝集破壊型の易剥離シーラント層)(20μm)
【0118】
なお、この参考例1~6の易剥離シーラント層、すなわち巻回シートを剥離する際に層内で凝集破壊される層内凝集破壊型の易剥離シーラント層は、ポリエチレン用イージーピールシーラント(東レフィルム加工社製の7601EB)である。
【0119】
参考例1~5のチューブ容器本体(ラミネートチューブ)の層構成は、以下のとおりである:
(表側)LLDPE(50μm)/LDPEf(100μm)/PET(12μm)/EMAA(30μm)/Al(9μm)/EMAA(30μm)/LLDPE(100μm)(内容物側)
【0120】
参考例6のチューブ容器本体(ブローチューブ)の層構成は、以下のとおりである:
(表側)LDPE(100μm)/酸変性樹脂(10μm)/EVOH(20μm)/酸変性樹脂(10μm)/LDPE(100μm)(内容物側)
【0121】
なお、上述した各層構成の略語の詳細は、以下のとおりである:
PETsiox:ケイ素酸化物が蒸着されたPET層
inkPET:印刷層付きPET層
ac剤:アンカーコート接着剤
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層
LDPEf:低密度ポリエチレン樹脂フィルム
PET:ポリエチレンテレフタレート層
EMAA:エチレン-メタクリル酸コポリマー
Al:アルミニウム箔層
LDPE:低密度ポリエチレン樹脂層
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体層
【0122】
〈製造方法〉
参考例1~6において、上述したチューブ容器本体の胴部と約同寸の巻回シート用積層体を用いて、易剥離シーラント層を介して、回転式熱ロール(200℃)にチューブ容器を10kgfの力で押し付け熱圧着して、参考例1~6の巻回シート付きチューブ容器を作製した。
【0123】
なお、参考例1~4及び6において、巻回シートに剥離きっかけ(未溶着部)を設けた。それぞれの剥離きっかけの場所は、
図3の(a)~(d)に示されている。また、参考例5の態様は、
図3の(e)に示されている。
【0124】
《参考比較例1》
PET製シュリンクラベルを、参考例6のチューブ容器と同じブローチューブに巻き付けて、参考比較例1の巻回シート付きチューブ容器を作製した。
【0125】
《評価》
上記の実施例及び比較例でのようにして、シートの剥離性及び使用感を評価した。
【0126】
なお、各参考例及び参考比較例の巻回シート付きチューブ容器の構成及び評価結果は、表2に示す。
【0127】
【0128】
表2から明らかであるように、参考例1~6の巻回シート付きチューブ容器いずれも巻回シートを剥離することができて、しかも使用感(スクイズ追従性)においても良好であることが分かった。特に、参考例1~4及び6では、剥離きっかけを有している巻回シートを用いることによって、簡単に巻回シートを剥離することができることが分かった。
【0129】
《参考例7》
参考例7の巻回シート用積層体として、以下の層構成を有する積層体を準備した(なお、「//」は、ドライラミネート接着剤による接着を示す。):
紙(80g/m2)//PET(12μm)/界面剥離型の易剥離シーラント層(20μm)/PE層(シーラント層)(30μm)
【0130】
なお、参考例7の易剥離シーラント層は、界面剥離型の易剥離シーラント層及びポリエチレン層(シーラント層)を含む。この参考例7の易剥離シーラント層は、ブローチューブに熱溶着後、剥離させると、「界面剥離型の易剥離シーラント層/ポリエチレン層(シーラント層)」がチューブ容器本体の胴部に残し、「紙//PET」が剥がされることになる。
【0131】
また、界面剥離型の易剥離シーラント層は、LDPEとCOCとの混合樹脂(LDPE:COC(混合質量比)=95:5)からなる層であり、LDPE(低密度ポリエチレン)として、ペトロセン226(東ソー株式会社製)を用いて、COC(付加重合による環状オレフィン系ランダム共重合体)として、アペル6013B(三井化学株式会社製)を用いた。
【0132】
参考例7のチューブ容器本体(ブローチューブ)としては、参考例6と同じものを用いた。
【0133】
参考例6の巻回シート付きチューブ容器と同様にして、参考例7の巻回シート付きチューブ容器を作製した。
【0134】
《参考例6及び7の比較評価》
上述したように、参考例6では、易剥離シーラント層が層内凝集破壊型の易剥離シーラント層であり、また、参考例7では、易剥離シーラント層が界面剥離型の易剥離シーラント層を有する。以下では、参考例6及び7を用いて、剥離の類型が異なる場合の付加的な効果を比較した。
【0135】
より具体的には、参考例6及び7の巻回シート付きチューブ容器のそれぞれに対して、剥離きっかけを介して巻回シートを剥離した。次に、それぞれのチューブ容器の「内容物の視認性」及び「絞り出しやすさ」を評価した。
【0136】
〈内容物の視認性〉
巻回シートを剥離したチューブ容器の胴部の内容物の視認性は、JIS K 7361-1997に基づいて、ヘイズ値を求めて評価した。なお、ヘイズ値が小さいほど、透明性が高いことを意味し、すなわち、チューブ容器の胴部の内容物の視認性が高いことを意味する。評価の基準は下記のとおりであった。それぞれの結果は、表3に示す。
A:ヘイズ値が80%以上;
B:ヘイズ値が70%未満。
【0137】
〈絞り出しやすさ〉
巻回シートを剥離したチューブ容器の胴部の絞り出しやすさは、人の手作業で、各チューブ容器内に充填された内容物(おろししょうが)を絞り出して、以下の基準に従い比較した。それぞれの結果は、表3に示す。
A:絞り出す際の手に対する滑りが良く、内容物をスムーズに絞り出すことができた;
B:絞り出す際の手に対する滑りが「A」に比べてやや劣り、内容物を絞り出す際に引っかかり感があった。
【0138】
【0139】
表3から明らかであるように、内容物の視認性の観点からは、界面剥離型の易剥離樹脂を用いた参考例7は、層内凝集破壊型の易剥離樹脂を用いた参考例6の場合よりも優れており、すなわち、チューブ容器内に充填された内容物を確認しながら絞り出せるという追加的な効果が得られることが分かった。
【0140】
また、絞り出しやすさの観点からは、層内凝集破壊型の易剥離樹脂を用いた参考例6は、界面剥離型の易剥離樹脂を用いた参考例7の場合よりも優れており、チューブ容器内に充填された内容物をより絞り出しやすいという追加的な効果が得られることが分かった。