(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101330
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ほうき及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47L 13/38 20060101AFI20240722BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A47L13/38 A
A46B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005262
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】510210966
【氏名又は名称】株式会社コーゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大輔
【テーマコード(参考)】
3B074
3B202
【Fターム(参考)】
3B074FF02
3B074FF04
3B074FF05
3B074FF06
3B202AA22
3B202AB19
3B202BB06
3B202DB02
(57)【要約】
【課題】 品質および美観がともに優れ、且つ、製造が容易化された、ほうき及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本開示のほうきは、植物繊維束を含む玉2を複数含み、複数の前記玉2が柄3と一体化されたほうきであり、前記玉2は、各々、前記植物繊維束40の内部に埋設され、略柱状体からなる芯材6を含み、前記複数の玉2のうちの1つの玉を構成する芯材は、前記柄3の下側部分3bによって構成されており、前記芯材6、3bには、各々、前記柄3の長手方向と直交する方向に貫通する貫通孔6a、3aが予め形成されており、各芯材6、3bの前記貫通孔6a、3aに横軸体7が挿入されることにより前記複数の玉2および前記柄3が一体化されている、ほうきに関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維束を含む玉を複数含み、複数の前記玉が柄と一体化されたほうきであり、
前記玉は、各々、前記植物繊維束の内部に埋設され、略柱状体からなる芯材を含み、
前記複数の玉のうちの1つの玉を構成する芯材は、前記柄の下側部分によって構成されており、
前記芯材には、各々、前記柄の長手方向と直交する方向に貫通する貫通孔が予め形成されており、
各芯材の前記貫通孔に横軸体が挿入されることにより前記複数の玉および前記柄が一体化されている、ほうき。
【請求項2】
前記芯材は、円柱体の円柱面に前記貫通孔が形成された、略円柱体である、請求項1に記載のほうき。
【請求項3】
前記芯材は木製である、請求項1または2に記載のほうき。
【請求項4】
植物繊維束を含む玉を複数含み、複数の前記玉が柄と一体化されたほうきの製造方法であり、
貫通孔が形成された芯材の前記貫通孔に仮埋棒が挿入され、前記貫通孔の両端から各々前記仮埋棒の一部が突出した玉作製用芯構造体を複数個用意すること、
複数の前記玉作製用芯構造体のうちの1つの玉作製用芯構造体を構成する芯材が、前記柄の下側部分であること、
前記植物繊維束の内部に前記玉作製用芯構造体のうちの前記芯材を埋入し、前記芯材のうちの前記貫通孔の上下に、前記植物繊維束の外側から各々線材を巻き付けて、前記植物繊維束内に前記芯材を固定すること、
前記貫通孔から前記仮埋棒を抜去した後、または、前記貫通孔から前記仮埋棒を押し出しながら、複数の前記玉の前記貫通孔に対して、1本の横軸体を挿入すること、を含む、ほうきの製造方法。
【請求項5】
前記芯材は、円柱体の円柱面に前記貫通孔が形成された、略円柱体である、請求項4に記載のほうきの製造方法。
【請求項6】
前記芯材は木製である、請求項4または5に記載のほうきの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほうき及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほうきは、掃除機のように電気を使うことがないため経済的である上に、音がしないので深夜でも気兼ねなく使用できるため、見直されている。ほうきには、掃きムラがない快適な使い心地等の機能性や、耐久性等が求められる。そして、穂先がいたまないように、且つ、気軽にいつでも使えるように、例えば、見えるところに吊されて保管されることから、その見た目が美しいことも非常に重要である。
【0003】
ほうきの掃き部の材料としては、たとえば、棕櫚(シュロ)繊維等の植物繊維が知られている(特許文献1)。棕櫚繊維は、細くしなりがあって丈夫であり、棕櫚繊維からでる出る天然の油によってフローリングや畳みにツヤが出ることから、掃き部の材料として最適である。また、棕櫚ほうきは、お手入れ次第では20~30年も使用できる。
【0004】
棕櫚ほうきは、多数の棕櫚繊維が束ねられた玉を複数含み、複数の玉は柄(持ち手)に結束されている。玉の数は通常3~11個である。玉は、例えば、適量の棕櫚繊維が束ねられ、当該束の中に芯材として棕櫚繊維やもちわら等からなる詰め物が埋設されたものであり、当該芯材が存在する部分には、通常間隔をあけて2箇所、銅線等の金属線又は麻糸等の線材によって固くまきしめられている。さらに、「足巻き」と呼ばれる部分にも、互いに間隔をあけて複数個所、前記線材が巻き付けられている。これらの巻き付けられた線材は、ほうきのデザイン性および美観の向上にも寄与している。
【0005】
棕櫚ほうきの一製造工程では、必要個数の玉の作製後、複数の玉と柄とを、ほうきの形に組みつける。具体的には、コウガイと呼ばれる竹串状の横軸体を、玉と柄に対して横から突き刺した後、玉のうちの「足巻き」部分より上側部分を、柄と共に1本に束ね、これらを上記線材で固く巻き締める。掃き部の左端、右端から両外方向に突出したコウガイの両端部を各々切り落とし、その切断面に鋲を留める。そして、必要に応じて穂先がそろうように切りおとす。
【0006】
前記コウガイを玉に対して横から突き刺す際、コウガイは各玉の植物繊維および芯材の繊維をかき分けながら押し込まれる。柄に対しては予め柄に形成された貫通孔内にコウガイを挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記棕櫚ほうきのように天然素材を使用したほうきは、職人の手作業により作製される。棕櫚繊維のような天然素材はプラスチック製の繊維ほどには均質ではなく若干癖がある上に、玉の中に埋め込まれ芯材は棕櫚繊維やもちわら等の詰め物であることから、その形状は一定ではない。そのため、ベテランの職人でなければ、品質が安定し、且つ、見た目も美しいほうきを量産することは難しい。また、近年、上質なほうきを製造できる職人も高齢となり減ってしまっている。
【0009】
そこで、本開示は、品質および美観がともに優れ、且つ、製造が容易化された、ほうきを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、一態様において、
植物繊維束を含む玉を複数含み、複数の前記玉が柄と一体化されたほうきであり、
前記玉は、各々、前記植物繊維束の内部に埋設され、略柱状体からなる芯材を含み、
前記複数の玉のうちの1つの玉を構成する芯材は、前記柄の下側部分によって構成されており、
前記芯材には、各々、前記柄の長手方向と直交する方向に貫通する貫通孔が予め形成されており、
各芯材の前記貫通孔に横軸体が挿入されることにより前記複数の玉および前記柄が一体化されている、ほうきに関する。
【0011】
本開示は、一態様において、
植物繊維束を含む玉を複数含み、複数の前記玉が柄と一体化されたほうきの製造方法であり、
貫通孔が形成された芯材の前記貫通孔に仮埋棒が挿入され、前記貫通孔の両端から各々前記仮埋棒の一部が突出した玉作製用芯構造体を複数個用意すること、
複数の前記玉作製用芯構造体のうちの1つの玉作製用芯構造体を構成する芯材が、前記柄の下側部分であること、
前記植物繊維束の内部に前記玉作製用芯構造体のうちの前記芯材を埋入し、前記芯材のうちの前記貫通孔の上下に、前記植物繊維束の外側から各々線材を巻き付けて、前記植物繊維束内に前記芯材を固定すること、
前記貫通孔から前記仮埋棒を抜去した後、または、前記貫通孔から前記仮埋棒を押し出しながら、複数の前記玉の前記貫通孔に対して、1本の横軸体を挿入すること、を含む、ほうきの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、品質および美観がともに優れ、且つ、製造が容易化された、ほうき及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示のほうきの一例の正面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示したほうきの内部構造を説明する模式的正面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示したほうきの玉を構成する芯材の斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示のほうきの製造方法の一例に使用する、玉作製用芯構造体の斜視図である
【
図7】
図7は、本開示のほうきの製造方法の一例に使用され、芯材が柄の下側部分である、玉作製用芯構造体の斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示のほうきの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図9】
図9は、本開示のほうきの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図10】
図10は、本開示のほうきの製造方法の一工程で作製される玉の一例を説明する模式的正面図である。
【
図11】
図11は、本開示のほうきの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【
図12】
図12は、本開示のほうきの製造方法の一工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本開示のほうきの一態様について、図面を参照しながら説明する。尚、説明の便宜のため、ほうきを使用する際に、相対的に下に位置する側を「下」又は「下側」、相対的に上に位置する側を「上」又は「上側」と呼ぶ。
【0015】
図1~
図3に示されるように、本開示のほうき1は、一態様において、植物繊維4からなる掃き部5と、植物繊維4が柄3に結束されたほうきである。この種のほうき1の掃き部5は、植物繊維4を含む小さな束を、ほうき1の用途に応じた数ほど並べることで形成されており、この小さな束は「玉」と呼ばれている。ゆえに、ほうきのサイズ(横幅)は玉2の数で決まっている。玉2の数は、通常3~11個である。
図1に示した例では、玉2の数は、柄3の左側に3個(2a、2b、2c)、右側に3個(2a、2b、2c)、柄3の下側部分3bの1個(2d)で、合計7個である。
【0016】
図2及び
図3からよく分かるように、本開示のほうき1は、上記複数の玉2を、柄3の長手方向と直交する方向から串刺しするよう配置された横軸体7を含む。これにより、各玉2を構成する植物繊維束40が一体化されて掃き部5が構成され、柄3と玉2とが一体化されてほうき1が構成されている。横軸体7は「コウガイ」とも呼ばれる。また、横軸体7は、旧来、竹製であったことから「竹串」とも呼ばれる。横軸体7の両端は鋲留めされている(
図2参照)。鋲9は、ほうき1の使用に伴う玉2または横軸体7のズレを抑制して、ほうき1の耐久性を高めるが、装飾も兼ねている。鋲9の素材としては、真鍮または銅等が挙げられる。
【0017】
柄3の素材について、特に制限はないが、好ましくは、竹や木材であり、好ましくは、成形の自由度が高い、ひのき等の木材である。柄3の上側部分3cは持ち手として機能し、柄3の上側先端の近傍には、ほうき1を壁等に吊るすための環状部材(リング)10(
図1)が設けられていてもよい。柄3の下側部分3bは、後述する玉2の芯材(略柱状体)として機能している。
【0018】
本開示のほうき1は、玉2が、その芯材6として略柱状体を含むことを特徴とする。
図3からよくわかるように、各玉2において、略柱状体6は、多数の植物繊維4の束(以下「植物繊維束」とも言う。)の内部に埋設されている。この略柱状体6は、
図4示されるように、柱状体にその軸方向と直交する方向に貫通孔6aが形成されたものであり、好ましくは、円柱体の円柱面に貫通孔が形成された略円柱状体である。
【0019】
図3および
図5からよくわかるように、複数の玉2のうち1つは、柄3の下側部分3bを芯材(以下、説明の便宜のため及び芯材6との区別のため「芯材3b」とも言う。)としている。芯材3bは、他の玉2の芯材6よりは、その長手方向の長さが長いが、柄3の下側部分3bのうちの、隣に位置する玉の芯材6の貫通孔6aと上下方向同位置に貫通孔3aが形成された略柱状体である。複数の玉2の芯材6、3bの貫通孔6a、3aには、共通する1本の横軸体7が圧入され、玉2の左右、前後、および上下の移動が制限されている。貫通孔6a、3aの断面形状は、貫通孔6a、3aを形成する芯材の内面と横軸体7の外周面との接触面積を十分に確保して、玉2の移動を制限し、且つ、掃き部5の強度を向上させる観点から、円径が好ましい。
【0020】
芯材6の材料について特に制限はないが、線材8が強く巻き付けられても変形せず、且つ、軽量であることが好ましい。例えば、成形加工の自由度が高い、樹脂成形体または木材等が好ましい。より好ましくは、例えばひのき等の木材である。
【0021】
線材8の素材について特に制限はないが、例えば、糸または金属線が挙げられる。糸としては例えば耐久性が高い麻糸が好ましく、皮革用の丈夫なポリエステル糸であってもよい。金属線としては、銅線やステレンス線等が挙げられる。
【0022】
線材8は、植物繊維束40のうちの芯材6、3bが埋設された箇所のうち、少なくとも、貫通孔6a、3aの上下の2箇所において、植物繊維束40の外側から芯材6、3bにきつく巻き付けられている。これにより植物繊維40束内に芯材6、3bが固定されている。
図2からよくわかるように、植物繊維束40のうちの芯材6、3bが埋設された箇所よりも上側部分40aには、好ましくは、美観向上のために、例えば、所定の間隔をあけて、線材8が巻きつけられている。線材8が巻きつけられた植物繊維束40の上側部分40aは、「足巻き」20ともよばれる。足巻き20の長さは、柄3からより離れた玉2の方が、より近くに配置された玉2のそれより長い。
【0023】
玉2を構成する植物繊維4としては、棕櫚繊維、麻繊維、パーム繊維、サイザル繊維、バナナ繊維、ヤシ繊維、竹繊維等が挙げられるが、なかでも棕櫚繊維が好ましい。棕櫚繊維の原料は、棕櫚の木の皮(棕櫚皮)であるが、本開示のほうき1において、植物繊維束4は、棕櫚繊維を含む棕櫚皮をそのまままるめたものであってよいし、棕櫚皮から採取された棕櫚繊維を束ねたものであってもよい。
【0024】
横軸体7は、従来、植物繊維束40の繊維をかき分け、更に芯材として植物繊維束40内に埋入された植物繊維やもちわら等がからなる詰め物を突き刺すことにより、玉を貫通していた。そのため、横軸体7には、竹製の先のとがった竹串等がよく使用されてきた。一方、本開示のほうき1では、横軸体7を、植物繊維束40内に埋設され、予め貫通孔6a、3aが形成された芯材6、3bの当該貫通孔6a、3aに挿入(圧入)することにより玉2と柄3とを一体化している。加えて、横軸体7は、貫通孔6a、3aを構成する芯材6、3bの内面と、好ましくは、その周方向全周に渡って接することで玉2がずれ難くし、ほうき1の強度向上に寄与している。したがって、横軸体7の材料は、例えば、成形加工の自由度が高い、樹脂成形体または木材等が好ましく、例えばひのき等の木材が好ましい。
【0025】
図1に示したほうき1は、立ち姿勢で柄3を両手で持つ「長柄ほうき」であるが、本開示のほうきは、柄を片手で持ち腰を屈めて使用する「片手ほうき」、片手ほうきよりもさらに小さい「卓上ほうき」等であってもよい。
【0026】
次に、本開示のほうき1の製造方法の一例について説明する。
【0027】
本開示のほうき1の製造方法の一例は、植物繊維束を含む玉を複数含み、複数の前記玉が柄と一体化されたほうきの製造方法であり、少なくとも下記工程(A)~(C)を含む。
【0028】
(A)貫通孔6aが形成された芯材6の貫通孔6aに仮埋棒61が挿入され、貫通孔6aの両端から各々仮埋棒61の一部が突出した玉作製用芯構造体60(
図6参照)を複数個用意する。
複数の玉作製用芯構造体のうちの1つの玉作製用芯構造体を構成する芯材は、柄3の下側部分である。
図7に示されるように、柄3の下側部分3bに形成された貫通孔3aに仮埋棒31が挿入され、当該貫通孔3aの両端から各々仮埋棒31の一部が突出した玉作製用芯構造体30を用意する。
【0029】
(B)植物繊維束40の内部に玉作製用芯構造体60のうちの芯材6を埋入する。植物繊維束40のうちの芯材6が埋入された箇所のうち、貫通孔6a上近傍および下近傍の各々、即ち、仮埋棒61の上近傍および下近傍の各々に、線材8を巻き付けて、植物繊維束40内に芯材6を固定する(
図8参照)。
同様に、植物繊維束40の内部に玉作製用芯構造体30のうちの芯材3b(柄3の下側部分)を埋入し、植物繊維束40のうちの芯材3bが埋入された箇所のうち、貫通孔3aの上近傍および下近傍の各々、即ち、仮埋棒31の上近傍および下近傍の各々に、線材8を巻き付けて、植物繊維束40内に芯材3bを固定する(
図9参照)。
【0030】
上記工程(B)において、貫通孔6aの上近傍および下近傍の各々に線材8を巻き付けた後、植物繊維束40のうちの芯材6が埋入された箇所よりもより上側部分40aにおいて、必要に応じて、線材8を1か所以上の所望の箇所に巻き付け、足巻き20を形成してもよい(
図10参照)。上記上側部分40aにおける線材8の巻き付け箇所の数は、玉2がほうき1に組み立てられたときの位置に応じて決めればよい。尚、
図10に示した玉2は、柄3から最も離れた箇所に配置される玉2a(
図1参照)である。
【0031】
上記工程(B)において、柄3の下側部分3bを芯材として作製される玉2d(
図1、
図3参照)についても、必要に応じて、貫通孔3aの上近傍に巻き付けられた線材8よりもより上側の所望の箇所において、植物繊維束40の外側から線材8を1か所以上巻き付けてもよい。
【0032】
(C)複数の玉2の貫通孔6a、3aに1本の横軸体7を挿入することにより(
図11)参照)、複数の玉2と柄3とを一体化させる(
図12)。貫通孔6a、3aへの横軸体7の挿入は、貫通孔6a、3aから仮埋棒61、31を完全に抜去してから行ってもよいし、貫通孔6a、3aから仮埋棒61、31を押し出しながらおこなってもよい。例えば、仮埋棒61、31を貫通孔6a、3aから少し押し出して、貫通孔6a、3aの一方の開口から横軸体7を挿入し、木づちなどによる打ち込みにより横軸体7を貫通孔6a、3aへより深く挿入して、仮埋棒61、31を徐々に押し出す等してもよい。
尚、
図11は、理解の容易化のため、植物繊維束40、線材8、仮埋棒61、31は省略している。
これにより、複数の玉2が並列配置され、各玉2を構成する植物繊維束40が一体化されて掃き部5が形成されるとともに、柄3と複数の玉2が一体化される。
並列配置された植物繊維束40(玉2)のうちの芯材6、3bが埋設された部分よりも上側部分40aについて、内側(柄3の近く)に配置された玉2から、順次、柄3への線材8による固定を行う。
【0033】
本開示のほうき1の製造方法の一例は、さらに下記の工程(D)(E)を含んでいてもよい。
(D)貫通孔6a、3a挿入された横軸体7うちの、掃き部5の左右に突出した部分7a,7b(
図12)を切断する。
(E)工程(D)で切断された横軸体7の切断面に鋲9を固定する(
図2参照)
【0034】
上記仮埋棒61、31は、主として、玉2の製造過程において植物繊維束40によって貫通孔6a、3aの入り口および出口が塞がれることを防止るためのものであるが、線材8を巻き付けるべき位置(貫通孔の上近傍および下近傍)の目印となることから、ほうき1の美観向上にも寄与する。
【0035】
植物繊維束40は、例えば、棕櫚の木の皮から剥いだ棕櫚皮をそのまま丸めて束ね、ほうき1の穂先となるところだけをほぐしたものであってもよいし、棕櫚皮をほぐして得た未選別の棕櫚繊維を束ねたものであってもよいが、なかでも、未選別の棕櫚繊維から、太く美しい棕櫚繊維を選別し、それを束にしたものが好ましい。より具体的には、植物繊維束40は、未選別の棕櫚繊維を水に濡らした後、毛捌き機にかけられて短い繊維や棕櫚粉等が取り除かれ、所定寸法に切断され、自然乾燥して得た棕櫚繊維を束ねたものであると好ましい。
【0036】
上記の通り、工程(B)では、玉2の芯材6、3bとして、木材等から形成された略柱状体が使用されるので、芯材として棕櫚繊維やもちわら等の詰め物を使用する場合よりも、芯材6、3bへ植物繊維束40を固定するための線材8の巻締が行い易い。また、芯材6、3bには、横軸体7を挿入するための貫通孔6a、3aが予め形成されているので、工程(C)において、複数の玉2を並列配置させる際に、玉2のうちの芯材が埋入された部分が変形することもない。そのため、美観の優れた玉の量産が行い易い。
【0037】
また、芯材6、3bの貫通孔6a、3aに仮埋棒61、30が挿入された状態で、植物繊維束40の芯材6、3bへの線材8による固定が行なわれるので、工程(B)中、各貫通孔6a、3aの入口および出口が植物繊維によって覆われることがない。したがって、工程(C)で横軸体7を貫通孔6a、3aに挿入するための、入り口、通路、および出口がきれいに確保され、1本の横軸体7の、貫通孔6a、3aへの挿入、即ち、玉2と柄3との組み付けが行い易い。このように、本開示のほうきの製造方法によれば、手作りで作製されるほうき1の品質や外観について、バラツキが生じることを抑制できる。
【0038】
上記工程(C)の後、金属製の熊手等を用いて植物繊維を梳かして整え、穂先を切りそろえる等してもよい。
【0039】
以上の通り、本開示のほうきの製造方法によれば、玉作製用芯構造体を用いることで、同品質の玉2の量産が行い易く、横軸体7の玉への挿入(玉2の並列配置)が行いやすい。ゆえに、品質および美観がともに優れ、且つ、製造が容易化された、ほうきを提供できる。
【0040】
また、本開示のほうきは、玉の芯材として前記略柱状体を用いているので、玉の横軸体7からの取り外し、横軸体7の玉2への再挿入が容易に行える。したがって、穂先が傷んだ玉2の交換も用意に行える。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示のほうきは、全て天然素材を用いて作製することもでき修理も行い易いので、環境にやさしい掃除道具として有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 ほうき
2、2a、2b、2c、2d 玉
20 足巻き部
3 柄(持ち手)
3a 柄の貫通孔
3b 柄の下側部分(芯材)
3c 柄の上側部分
30 玉作製用芯構造体
31 仮埋棒
4 植物繊維
40 植物繊維束
40a 植物繊維束の上側部分
5 掃き部
6 芯材(略柱状体)
6a 芯材の貫通孔
60 玉作製用芯構造体
61 仮埋棒
7 横軸体(コウガイ)
8 線材
9 鋲
10 環状部材(リング)