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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101331
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20240722BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20240722BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20240722BHJP
   D03D 5/00 20060101ALI20240722BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20240722BHJP
   A41F 9/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A62B35/00 A
D03D1/00 D
D03D15/56
D03D5/00 Z
D03D15/283
A41F9/00 D
A41F9/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005265
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】森本 崇介
(72)【発明者】
【氏名】森本 真吾
【テーマコード(参考)】
2E184
4L048
【Fターム(参考)】
2E184LA23
2E184LA32
4L048AA15
4L048AA20
4L048AA21
4L048AA34
4L048AA48
4L048AA51
4L048AB07
4L048AB10
4L048AB11
4L048AC09
4L048AC12
4L048BA01
4L048BD00
4L048BD05
4L048BD07
4L048CA01
4L048CA04
4L048DA24
4L048DA38
(57)【要約】
【課題】ベルト幅方向にベルトが曲がっても、ベルト長手方向に延びるシワがベルトにできることを抑制できるようにする。
【解決手段】ベルト1は、タテ糸11と、ヨコ糸12と、を備える。タテ糸11は、ベルト長手方向Lに延びるように配置され、複数本設けられる。ヨコ糸12は、ベルト幅方向Wに延びるように配置され、タテ糸11に織り込まれ、ベルト長手方向Lに並ぶように配置される。ヨコ糸12は、モノフィラメント12aを含む。モノフィラメント12aは、ベルト幅方向Wの曲げに対して弾性変形するように構成されたモノフィラメント弾性糸である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト長手方向に延びるように配置され、複数本設けられるタテ糸と、
ベルト幅方向に延びるように配置され、前記タテ糸に織り込まれ、前記ベルト長手方向に並ぶように配置されるヨコ糸と、
を備え、
前記ヨコ糸は、モノフィラメントを含み、
前記モノフィラメントは、前記ベルト幅方向の曲げに対して弾性変形するように構成されたモノフィラメント弾性糸である、
ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載のベルトであって、
前記ヨコ糸は、前記モノフィラメントとマルチフィラメント糸との引き揃え、前記モノフィラメントと前記マルチフィラメント糸との合撚、および、前記モノフィラメントへの前記マルチフィラメント糸のカバーリング、の少なくともいずれかを含む、
ベルト。
【請求項3】
請求項1に記載のベルトであって、
前記モノフィラメントは、熱可塑性エラストマーを含む、
ベルト。
【請求項4】
請求項1に記載のベルトであって、
前記モノフィラメントの直径は、0.19mm~0.60mmであり、
前記モノフィラメントの10%伸長時の応力は、0.24cN/dtex~0.50cN/dtexである、
ベルト。
【請求項5】
請求項1に記載のベルトであって、
前記タテ糸は、引張強度が1GPa以上の高強度繊維を含む、
ベルト。
【請求項6】
請求項5に記載のベルトであって、
前記高強度繊維は、超高分子量ポリエチレンを含む、
ベルト。
【請求項7】
請求項1に記載のベルトであって、
織られた状態の前記タテ糸および前記ヨコ糸の前記ベルト幅方向における外側の端である耳部端部において、前記ヨコ糸どうしを締め付けるカラミ糸を備える、
ベルト。
【請求項8】
請求項1に記載のベルトであって、
前記タテ糸および前記ヨコ糸は、前記ベルト幅方向における外側の端部である耳部において、平織以外の織り組織により構成される、
ベルト。
【請求項9】
請求項8に記載のベルトであって、
前記タテ糸および前記ヨコ糸は、前記耳部よりも前記ベルト幅方向における内側の部分である地部において、平織により構成される、
ベルト。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のベルトであって、
フルハーネス用である、
ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タテ糸とヨコ糸とを備えるベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、従来のベルト(同文献では「ストラップ部」)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001-500769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルトの材質によっては、ベルト幅方向にベルトが曲がると、ベルト長手方向に延びるシワが、ベルトにできる。一旦ベルトにシワができると、シワが回復しにくい。このようなシワを抑制することができるベルトが望まれている。
【0005】
そこで、本発明では、ベルト幅方向にベルトが曲がっても、ベルト長手方向に延びるシワができることを抑制できるベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ベルトは、タテ糸と、ヨコ糸と、を備える。前記タテ糸は、ベルト長手方向に延びるように配置され、複数本設けられる。前記ヨコ糸は、ベルト幅方向に延びるように配置され、前記タテ糸に織り込まれ、前記ベルト長手方向に並ぶように配置される。前記ヨコ糸は、モノフィラメントを含む。前記モノフィラメントは、前記ベルト幅方向の曲げに対して弾性変形するように構成されたモノフィラメント弾性糸である。
【発明の効果】
【0007】
上記のベルトは、ベルト幅方向にベルトが曲がっても、ベルト長手方向に延びるシワができることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ベルト1をベルト厚さ方向Tから見た図である。
図2図1に示すベルト1の織り組織を示す図である。
図3図1に示すベルト1の一例である試料Dの写真である。
図4図1に示すベルト1を含む試料の折り曲げ試験の結果などを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図4を参照して、ベルト1について説明する。
【0010】
ベルト1は、帯状の部材である。ベルト1は、図1に示すように、長手方向を有する形状を有する。ベルト1は、厚みを有し、平らな形状を有する。ベルト1は、1本で使用されてもよい。複数本のベルト1が、組み合わされて使用されてもよい。
【0011】
このベルト1は、例えば、墜落制止用器具に用いられる。この墜落制止用器具は、建設、建築、電気工事などを行う作業者などが身に着けるものである。この墜落制止用器具は、フルハーネスでもよい。この場合、ベルト1は、作業者の胴(さらに詳しくは、肩、胸、腰)および腿に沿うように配置される。また、この墜落制止用器具は、胴ベルトでもよい。この場合、ベルト1は、作業者の腰に巻かれる。ベルト1は、墜落制止用器具とは異なるものに用いられてもよい。ベルト1は、産業用でもよく、民生用でもよい。
【0012】
このベルト1には、バックル(図示なし)が取り付けられてもよい。このバックルは、ベルト1を通すことが可能な貫通孔(通し孔)を有する部材である。この貫通孔は、ベルト長手方向L(後述)から見たベルト1の断面と同様の形状を有し、ベルト1の断面よりも大きい。
【0013】
このベルト1に関する方向を次のように定義する。ベルト1の長手方向を、ベルト長手方向Lとする。ベルト1の平らな面に交差(例えば直交)する方向を、ベルト厚さ方向Tとする。ベルト長手方向Lおよびベルト厚さ方向Tのそれぞれに交差(例えば直交)する方向を、ベルト幅方向Wとする。
【0014】
このベルト1は、布状であり、さらに詳しくは、糸が織られた織物を含む(図3を参照)。ベルト1を構成する糸は、タテ糸11と、ヨコ糸12と、カラミ糸13と、を備える。また、ベルト1の領域には、地部20と、耳部30と、がある。
【0015】
タテ糸11は、ベルト長手方向Lに延びるように配置される糸(経糸)である。タテ糸11は、複数本設けられる。複数のタテ糸11は、ベルト幅方向Wに並ぶように配置され、互いに平行に配置される。
【0016】
このタテ糸11は、高強度繊維11aを備える。複数のタテ糸11の半分以上が、高強度繊維11aであることが好ましい。複数のタテ糸11の大部分(例えば8割以上)が、高強度繊維11aであることがより好ましい。複数のタテ糸11の全てが、高強度繊維11aでもよい。なお、複数のタテ糸11の半分未満のみが高強度繊維11aでもよい。
【0017】
高強度繊維11aは、引張強度が1GPa以上の繊維である。高強度繊維11aの引張強度は、1.5GPa以上であることが好ましく、2GPa以上であることがさらに好ましい。高強度繊維11aのヤング率は、35GPa以上であることが好ましく、50GPa以上であることがより好ましく、100GPa以上であることがさらに好ましい。複数のタテ糸11に含まれる高強度繊維11aの種類は、1種類のみでもよく、複数種類でもよい。高強度繊維11aは、有機繊維を含んでもよく、無機繊維を含んでもよい。
【0018】
この高強度繊維11aの例である有機繊維の具体例は、次の通りである。高強度繊維11aは、超高分子量ポリエチレン(HMPE;High Molecular Polyethylene)繊維を含んでもよい。HMPEの分子量は、100万以上である。HMPE繊維の引張強度は、2GPa以上である。HMPE繊維の弾性率(ヤング率)は、100GPa以上である。HMPE繊維は、HMPE繊維以外の多くの種類の高強度繊維11aに比べ軽量である。HMPE繊維は、水に浮く。具体的には、HMPE繊維の比重は、0.97などである。上記「比重」は、4℃かつ標準気圧における純水の密度に対する、物質(ここではHMPE繊維)の密度の比である。具体的には例えば、HMPE繊維は、DSM社のダイニーマ(登録商標)などである。
【0019】
この高強度繊維11aは、アラミド繊維(例えばパラ系アラミド繊維)を含んでもよく、ポリアリレート繊維を含んでもよい。高強度繊維11aは、超高強力ポリビニルアルコール(PVA;polyvinyl alcohol)繊維を含んでもよい。超高強力PVAは、引張強度が2.0GPa~2.6GPa、弾性率が39GPa~41GPaのPVAである。高強度繊維11aは、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維を含んでもよく、ポリイミド繊維を含んでもよい。
【0020】
この高強度繊維11aの例である無機繊維の具体例は、次の通りである。高強度繊維11aは、炭素繊維(例えばポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維など)、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、および、金属繊維の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0021】
なお、上記の高強度繊維11aの種類の例に含まれなくても、引張強度が1GPa以上の繊維は、高強度繊維11aに含まれる。また、上記の高強度繊維11aの種類の例に含まれていても、引張強度が1GPa未満の繊維は、高強度繊維11aに含まれない。具体的には例えば、アラミド繊維でも、引張強度が1GPa未満のメタ系アラミド繊維は、高強度繊維11aに含まれない。
【0022】
(タテ糸11の変形例)
タテ糸11の構成は、様々に変形可能である。タテ糸11は、高強度繊維11aと、高強度繊維11a以外の繊維と、を含んでもよい。タテ糸11は、高強度繊維11a以外の繊維のみを含んでもよい(高強度繊維11aを含まなくてもよい)。上記「高強度繊維11a以外の繊維」は、高分子材料を含む繊維(すなわち合成繊維)でもよい。この高分子材料は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリプロピレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリウレタン系、および、ポリスチレン系の少なくともいずれかを含んでもよい。例えば、上記「ポリエステル系」には、ポリエチレンテレフタレート(PET;polyethylene terephthalate)などが含まれる。また、タテ糸11は、天然繊維を含んでもよい。
【0023】
ヨコ糸12は、ベルト幅方向Wに延びるように配置される糸(緯糸)である。ヨコ糸12は、タテ糸11に織り込まれる。ヨコ糸12は、1本のみ設けられてもよく、複数本設けられてもよい。
【0024】
例えば、ヨコ糸12は、ベルト長手方向Lに並ぶように配置される。さらに詳しくは、ヨコ糸12は、耳部端部31(後述)で折り返されながら、ベルト長手方向Lに並ぶように配置される。さらに詳しくは、ベルト幅方向Wの左側(一方側)から右側(他方側)に延びるヨコ糸12が、右側の耳部端部31で折り返され、所定距離(例えばヨコ糸12の太さと同じ(または略同じ)距離)だけベルト長手方向Lにずれた位置で、右側から左側に延びる。そして、右側から左側に延びるヨコ糸12が、左側の耳部端部31で折り返され、所定距離だけベルト長手方向Lにずれた位置で、左側から右側に延びる。このヨコ糸12の配置が、ベルト長手方向Lに繰り返される。
【0025】
このヨコ糸12は、モノフィラメント12aを備える。ベルト1を構成するヨコ糸12の半分以上が、モノフィラメント12aであることが好ましい。ベルト1を構成するヨコ糸12の大部分(例えば8割以上)が、モノフィラメント12aであることがより好ましい。ベルト1を構成するヨコ糸12の全てが、モノフィラメント12aであることがさらに好ましい。なお、ベルト1を構成するヨコ糸12の半分未満のみがモノフィラメント12aでもよい。
【0026】
モノフィラメント12aは、1本の繊維により構成される単繊維の一種である。モノフィラメント12aは、弾性変形するように構成された糸(モノフィラメント弾性糸)である。モノフィラメント12aは、ベルト幅方向Wの(モノフィラメント12aが延びる方向の)曲げに対して弾性変形するように構成される。上記「ベルト幅方向Wの曲げ」は、ベルト幅方向W両側の耳部端部31・31(後述)が互いに近づく向きへの曲げである。モノフィラメント12aは、ベルト幅方向Wの曲げに対して弾性回復するように(反発弾性、復元性、回復性、形状保持性を示すように)構成される。具体的には、モノフィラメント12aは、ベルト幅方向Wに直線的に延びた状態から曲げられたときに、ベルト幅方向Wに直線的に延びた状態に戻るように構成される。ただし、モノフィラメント12aは、ベルト幅方向Wに曲げられたときに、元の形状(ベルト幅方向Wに曲げられる前の形状)と完全に一致する形状に戻るように構成される必要はなく、元の形状に近い形状に戻るように構成されてもよい。ベルト1がベルト幅方向Wに曲げられたときに、モノフィラメント12aは、ベルト1の大部分で弾性変形することが好ましい。ベルト1がベルト幅方向Wに曲げられたときに、モノフィラメント12aは、ベルト1の全体で弾性変形を行う(塑性変形しない)ことが好ましいが、ベルト1の一部で塑性変形してもよい。なお、モノフィラメント12aは、耳部端部31では、弾性変形する必要はなく、折れ曲がってもよい。
【0027】
このモノフィラメント12aの弾性回復性(変形させたときの元の形状への戻りやすさ)(例えば、伸長回復性、反発回復性)は、例えば次のように設定される。モノフィラメント12aの弾性回復性は、ポリエステルモノフィラメント糸の弾性回復性よりも大きい(すなわち回復しやすい)ことが好ましい。モノフィラメント12aの弾性回復性は、ポリプロピレンモノフィラメント糸の弾性回復性よりも大きいことが好ましい。モノフィラメント12aの弾性回復性は、ナイロンモノフィラメント糸の弾性回復性よりも大きいことが好ましい。なお、モノフィラメント12aの弾性回復率は、ポリウレタンモノフィラメント糸の弾性回復性よりも小さくても(すなわち回復しにくくても)よい。
【0028】
このモノフィラメント12aは、硬すぎると、塑性変形しやすく、具体的には折れやすい。モノフィラメント12aは、柔らかすぎると、弾性回復しにくい。モノフィラメント12aの硬さ(例えばヤング率)は、例えば次のように設定される。モノフィラメント12aは、プラスチックよりも柔らかいことが好ましい。モノフィラメント12aは、ゴムよりも硬いことが好ましい。
【0029】
このモノフィラメント12aは、熱可塑性エラストマーを含む。この熱可塑性エラストマーは、ゴムとプラスチックとの中間的な特性を有する。具体的には、この熱可塑性エラストマーのヤング率は、12MPa~1.3×103MPaである。この熱可塑性エラストマーの引張強さは、15MPa~33MPaである。この熱可塑性エラストマーは、例えば、特定の樹脂に添加剤を添加したり、この特定の樹脂の重合度を設定したりすることで、上記のヤング率および引張強さが得られるように製造されたものである。上記「特定の樹脂」は、高分子材料である(高分子材料の具体例は上記の「高強度繊維11a以外の繊維」の説明を参照)。上記「特定の樹脂」は、具体的には例えば、ポリエステルを含み、さらに詳しくは、ポリエチレンテレフタレートなどを含む。
【0030】
このモノフィラメント12aのヤング率は、モノフィラメント12aを構成する熱可塑性エラストマーのヤング率と同様であり、12MPa~1.3×103MPaである。モノフィラメント12aの引張強さは、モノフィラメント12aを構成する熱可塑性エラストマーの引張強さと同様であり、15MPa~33MPaである。モノフィラメント12aの繊度は、例えば、300dtex~2600dtexである。モノフィラメント12aの直径は、例えば、0.19mm~0.60mmである。モノフィラメント12aの10%伸長時の応力は、例えば、0.24N/dtex~0.50cN/dtexである。
【0031】
(ヨコ糸12の変形例)
ヨコ糸12の構成は、様々に変形可能である。ヨコ糸12は、モノフィラメント12aと、モノフィラメント12a以外の繊維と、を含んでもよい。上記「モノフィラメント12a以外の繊維」は、合成繊維(具体例は上記「高強度繊維11a以外の繊維」の具体例と同じ)でもよく、天然繊維でもよい。上記「モノフィラメント12a以外の繊維」は、マルチフィラメント糸(複数本の長繊維により構成される糸)を含んでもよい。ここで、モノフィラメント12aは、マルチフィラメント糸と比べると硬い。そのため、ベルト1の表面(耳部端部31(後述)を含む)にモノフィラメント12aの凹凸があると、ベルト1の触り心地および見た目が好ましくなく、ベルト1の風合いが好ましくない場合が想定される。一方で、ヨコ糸12がマルチフィラメント糸を含む場合、ベルト1を構成するヨコ糸12のすべてがモノフィラメント12aである場合に比べ、ベルト1の表面の凹凸が減り、ベルト1の表面が滑らかになる。その結果、ベルト1の触り心地および見た目が滑らかになり、ベルト1の風合いが向上する。
【0032】
ヨコ糸12がマルチフィラメント糸を含む場合、モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸とが隣接することが好ましい。この場合、ベルト1の表面にモノフィラメント12aが露出することが抑制される。よって、ベルト1の表面の凹凸がより減り、ベルト1の表面がより滑らかになる。モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸とが隣接する場合の配置の具体例は、次の通りである。
【0033】
[配置例1]モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸とは、引き揃えられてもよい。この場合、モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸とが、互いに同じ経路で、並列的に(互いに平行または略平行に)配置された状態で、タテ糸11に織り込まれる。[配置例2]モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸とは、合撚されてもよい。この場合、モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸とは、撚り合わされて一体になった状態で、タテ糸11に織り込まれる。[配置例3]モノフィラメント12aは、マルチフィラメント糸にカバーリングされてもよい。この場合、モノフィラメント12aにマルチフィラメント糸が巻き付けられ、モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸とが一体となった状態で、タテ糸11に織り込まれる。この場合は、上記の配置例1や配置例2に比べ、ベルト1の表面にモノフィラメント12aが露出することがより確実に抑制される。
【0034】
(タテ糸11およびヨコ糸12の変形例)
タテ糸11およびヨコ糸12の構成は様々に変形可能である。ベルト1では、ヨコ糸12の少なくとも一部がモノフィラメント12aであればよい。例えば、ベルト1において、モノフィラメント12aと他の糸とが併用されることで、ベルト1に様々な機能を持たせることができる。例えば、モノフィラメント12aと、モノフィラメント12aよりも強い糸と、が併用されてもよい。この併用により、縫製されたベルト1の縫製部の組み立て強力を向上させることができる。また、モノフィラメント12aと、モノフィラメント12aよりも耐候性の高い糸と、が併用されてもよい。この併用により、ベルト1の耐久性を向上させることができる。上記「モノフィラメント12aよりも強い糸」および「モノフィラメント12aよりも耐候性の高い糸」は、タテ糸11に含まれてもよく、ヨコ糸12に含まれてもよい。
【0035】
カラミ糸13は、耳部端部31のヨコ糸12どうしを締め付ける糸である(詳細は耳部端部31の説明を参照)。カラミ糸13は、合成繊維(具体例は上記「高強度繊維11a以外の繊維」の具体例と同じ)でもよく、天然繊維でもよい。具体的には例えば、カラミ糸13は、ポリエステル系の糸などである。カラミ糸13は、例えば、マルチフィラメント糸である。
【0036】
地部20は、ベルト1の大部分の領域である。地部20は、耳部30よりも、ベルト幅方向Wにおける内側の部分である。地部20におけるタテ糸11とヨコ糸12との織り方(織り組織)(地部20の織り方)は、平織であることが好ましい。平織は、タテ糸11とヨコ糸12とが1本ずつ交互にベルト厚さ方向Tに交差する(出入りする、浮くおよび沈む)織り方である。平織は、平織以外の織り方(例えば綾織など)に比べ、地部20表面の凹凸を多くすることができる織り方である。よって、例えば、バックルとベルト1との摩擦力を確保することができ、ベルト1がバックルに対して滑りにくくなる。例えば、バックルとベルト1との摩擦力が、所定の基準値を超えるように設定することができる。なお、地部20の織り方は、平織以外の織り方(例えば綾織など)でもよい。
【0037】
耳部30は、ベルト1の(織られた状態のタテ糸11およびヨコ糸12の)、ベルト幅方向Wにおける外側端部である。「端部」は、端および端の周辺部である。耳部30は、ベルト1のベルト幅方向Wにおける外側端部から、この外側端部よりもベルト幅方向Wにおける内側の所定位置までの範囲である。耳部30のベルト幅方向Wにおける幅は、例えば1cm以内などであり、例えば5mm以内などである。耳部30のベルト幅方向Wにおける幅は、図2に示す例では略4本分のタテ糸11の太さの幅であり、3本以下分のタテ糸11の太さの幅でもよく、5本以上分のタテ糸11の太さの幅でもよい。
【0038】
この耳部30におけるタテ糸11とヨコ糸12との織り方(耳部30の織り方)は、図1に示すモノフィラメント12a(マルチフィラメント糸よりも硬い糸)の凹凸ができるだけ少なくなる織り方であることが好ましい。さらに詳しくは、耳部端部31(折り返し部分)、および、耳部30のうち耳部端部31以外の部分、の少なくともいずれかにおける、タテ糸11とヨコ糸12との織り方は、モノフィラメント12aの凹凸ができるだけ少なくなる織り方であることが好ましい。モノフィラメント12aの凹凸が少なくなると、耳部30の凹凸が少なくなり、耳部30が滑らかになる。すると、耳部30の(さらにはベルト1の)触り心地および見た目が滑らかになり、耳部30の風合いが向上する。
【0039】
具体的には、耳部30の織り方は、平織以外の織り方であることが好ましい。さらに詳しくは、1本のタテ糸11が、ベルト長手方向Lに並ぶヨコ糸12複数本分、ヨコ糸12に対して浮く(または沈む)織り方であることが好ましい。具体的には例えば、耳部30の織り方は、綾織でもよく、朱子織でもよく、その他の平織以外の織り方でもよい。
【0040】
この耳部30の織り方を綾織りとした場合は、耳部30(耳部端部31(折り返し部分)、および、耳部30のうち耳部端部31以外の部分、の少なくともいずれか)でのモノフィラメント12aの凹凸が、平織に比べて確実に少なくなり、耳部30が滑らかになる。綾織は、タテ糸11とヨコ糸12とが交差する部分が、ベルト長手方向Lおよびベルト幅方向Wのそれぞれに対して傾斜する方向に延びるように配置される織り方である。図2に示す例では、耳部30の織り方は、2/2の綾織である。すなわち、図2に示す例では、ベルト長手方向Lの順に、タテ糸11が、2本分のヨコ糸12に対して浮き、2本分のヨコ糸12に対して沈む、という配置が繰り返される。綾織の織り方は、2/2でなくてもよく、例えば、3/1でもよく、1/3でもよく、その他の綾織りでもよい。上記「3/1」では、ベルト長手方向Lの順に、タテ糸11が、3本分のヨコ糸12に対して浮き、1本分のヨコ糸12に対して沈む、という配置が繰り返される。上記「1/3」では、ベルト長手方向Lの順に、タテ糸11が、1本分のヨコ糸12に対して浮き、3本分のヨコ糸12に対して沈む、という配置が繰り返される。なお、耳部30の織り方は、平織でもよい。平織は、他の織り方に比べてモノフィラメント12aの凹凸は多くなるが、タテ糸11とヨコ糸12との締まり(ほどけにくさ)は向上する。耳部30は、耳部端部31を備える。
【0041】
耳部端部31は、図1に示すように、ベルト1の(タテ糸11およびヨコ糸12の)ベルト幅方向Wにおける外側の端である。耳部端部31は、耳部30のベルト幅方向Wにおける外側の端である。耳部端部31は、カラミ糸13によりヨコ糸12が締め付けられる部分である。カラミ糸13は、ヨコ糸12どうしを締め付ける。さらに詳しくは、カラミ糸13は、ヨコ糸12のベルト幅方向W外側端部の折り返し部分どうしを、締め付け、固定する。カラミ糸13は、ヨコ糸12と共に編まれ、ヨコ糸12の折り返し部分に絡み付けられる。カラミ糸13は、ベルト幅方向Wにおける片側の耳部端部31に、複数本設けられることが好ましい。この場合、耳部端部31のモノフィラメント12a(いわば硬い糸)が、カラミ糸13に覆われやすい(表面に出にくい)。よって、耳部端部31が滑らかになり、耳部端部31の触り心地および見た目が滑らかになり、耳部端部31の風合いが向上する。カラミ糸13は、ベルト幅方向Wにおける片側の耳部端部31に、例えば2本設けられる(耳部端部31は、ダブルロックまたはダブルバインダーにより構成される)。カラミ糸13は、ベルト幅方向Wにおける片側の耳部端部31に、3本以上設けられてもよい。
【0042】
(ベルト1の曲げ、およびシワについて)
ベルト1の材質によっては、ベルト1がベルト幅方向Wに曲がると(図4参照)、すなわちベルト幅方向Wにおける両外側の(左右の)耳部端部31・31同士が近づく向きにベルト1が曲がると、ベルト長手方向Lに延びるシワがベルト1にできる。このようなシワは、ベルト1の外観を悪化させる。また、ベルト1がバックル(さらに詳しくはバックルの貫通孔)に通される必要がある場合に、ベルト1にシワがあると、ベルト1のバックルへの挿通性が悪い。例えば、ベルト1がバックルに入らない、または、入りにくい場合がある。一方、本実施形態のベルト1では、ヨコ糸12に含まれるモノフィラメント12aは、ベルト幅方向Wへの曲げに対して弾性変形するように構成される。よって、ベルト1がベルト幅方向Wに曲がったときに、ベルト1が元の形状(曲げられる前の形状)に回復しやすい(反発回復性が高い)。よって、ベルト1にシワができることが抑制される。その結果、ベルト1のバックルへの挿通性が確保される。
【0043】
(熱セットについて)
一般的に、ベルト1のような布状の織物のシワを抑制する方法として、熱セット(熱処理)がある。例えば、熱セットでは、織物がローラに通されながら、織物を構成する繊維の軟化点よりも高い温度(具体的には例えば180℃以上)に織物が加熱される。熱セットされた織物は、熱セットされない織物(例えば生機)に比べ、反発回復性が高くなる。しかし、織物を構成する繊維には、熱セットが不可能または困難な繊維(熱セット不可能繊維)がある。熱セットが不可能または困難な繊維では、熱セットによるシワを抑制する効果が得られない。例えば、熱セットが不可能または困難な繊維には、熱セットが不可能または困難な高強力繊維(高強度繊維11aを含む)がある。例えば、熱セットが不可能または困難な高強力繊維には、軟化点が非常に高温(例えば250℃超)のもの、熱処理されても明確には軟化を示さないもの、または、熱処理により熱分解するものなどがある。熱セットが不可能または困難な高強力繊維の一例として、HMPEがある。HMPEは、軟化点が約148℃と低く、融点が約150℃である。そのため、HMPEでは、軟化点よりも高い温度で熱処理するとHMPEが融けてしまい、また、軟化点よりも低い温度で熱処理しても熱セットによるシワを抑制する効果が得られない。一方で、本実施形態のベルト1では、ヨコ糸12は、ベルト幅方向Wへの曲げに対して弾性変形するように構成されたモノフィラメント12aを含む。よって、ベルト1では、熱セットが行われなくても、ベルト幅方向Wへのベルト1の曲げによるベルト1のシワを抑制することができる。
【0044】
(折り曲げ試験)
本実施形態のベルト1の実施例、および、参考例のベルトを含む、4種類の試料のそれぞれについて、試料をベルト幅方向Wに折り曲げたときの反発回復性を評価した。試験方法の詳細は、次の通りである。ベルト幅方向Wに折り曲げられた状態の試料に、ベルト厚さ方向Tに100Nの荷重を60秒かけた。試料に荷重をかけ始めた時から60秒後に、荷重を除いた。試料から荷重を除いた時から10秒後に、試料の折れ曲がりの角度を観察し、試料の反発回復性を評価した(図4参照)。表1に、各試料の詳細を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1中の試料A、試料B、および試料Cは、参考例のベルトである。表1中の試料D(図3参照)は、本実施形態のベルト1の実施例である。以下、各試料の詳細、および、反発回復性の評価について説明する。なお、試料A、試料B、および試料Cを構成する糸(「タテ糸」および「ヨコ糸」)については、この糸に対応する本実施形態の糸の符号を付して説明する(「タテ糸11」および「ヨコ糸12」)。また、表1に記載の各試料の厚さ(ベルト厚さ方向Tの寸法)の相違が反発回復性の優劣に影響しないように、各試料の厚さを設定した。各試料の厚さは、各試料でほぼ同じであり、具体的には、1.0mm以上、1.3mm以下である。
【0047】
試料Aの詳細は、次の通りである。表1に示すように、試料Aのタテ糸11およびヨコ糸12のそれぞれは、ポリエステル糸(さらに詳しくはPET糸)である(試料Bのヨコ糸12も同様)。試料Aのタテ糸11およびヨコ糸12は、マルチフィラメント糸である。
【0048】
試料Aは、熱セット(熱処理)が行われたものである。試料Aの熱セットでは、試料Aがローラに通されながら、180℃以上(この例では220℃)に試料Aが加熱される。熱セットされていない試料(例えば生機)に比べ、熱セットされた試料Aは、ベルト幅方向Wの反発回復性が高くなる。試料Aでは、タテ糸11およびヨコ糸12(それぞれPET)の融点が、熱セットの温度よりも高いため、熱セットが可能である。
【0049】
試料Aがベルト幅方向Wに折り曲げられたときの反発回復性は、良好(図4中「〇」)であった。さらに詳しくは、試料Aが折り曲げられ、試料Aから荷重が除かれると、試料Aは、元の形状(曲げられる前の形状)と略同じ形状に回復した(図4参照)。
【0050】
試料Aは、このように反発回復性は良好であるが、質量が大きい問題がある。さらに詳しくは、試料Aのタテ糸11はポリエステル糸(さらに詳しくは、PET糸)である。ポリエステルの密度は、HMPEの密度よりも大きい。その結果、試料の体積が同じでも、タテ糸11にHMPEを含む試料(試料B、試料C、および試料D)の質量に比べ、試料Aの質量は大きい。
【0051】
試料Bの、試料Aとの相違点は、次の通りである。なお、試料Bと試料Aとの共通点の説明は省略する。表1に示すように、試料Bのタテ糸11は、HMPE糸である。試料Bは、熱セットされない。HMPEの融点は約150℃であるため、試料Bでは、180℃以上での熱セットは不可能である。なお、150℃未満(具体的には80℃、100℃など)で試料Bに対して熱セットと同様の加熱処理を行ったが、ベルト幅方向Wの反発回復性が向上する効果は得られなかった。
【0052】
試料Bがベルト幅方向Wに折り曲げられたときの反発回復性は、不十分(図4中「△」)であった。
【0053】
試料Cの、試料Bとの相違点は、次の通りである。表1に示すように、試料Cのヨコ糸12は、ポリエチレン(PE;Polyethylene)の非弾性モノフィラメントである。この非弾性モノフィラメントは、ベルト幅方向Wの曲げに対して弾性変形するように構成された「モノフィラメント12a」には含まれない。
【0054】
試料Cがベルト幅方向Wに折り曲げられたときの反発回復性は、ほぼなかった(図4中「×」)。さらに詳しくは、試料Cがベルト幅方向Wに折り曲げられると、ヨコ糸12(ポリエチレンの非弾性モノフィラメント)が塑性変形した。そのため、試料Cのシワは、ほとんど回復しなかった。
【0055】
試料Dの、試料Cとの相違点は、次の通りである。表1に示すように、ヨコ糸12は、熱可塑性PETエラストマーを含むモノフィラメント弾性糸であるモノフィラメント12aである。
【0056】
試料Dがベルト幅方向Wに折り曲げられたときの反発回復性は、良好であった(図4中「〇」)。試料Dがベルト幅方向Wに折り曲げられても、モノフィラメント12aが弾性変形しやすく、塑性変形が起こりにくかった。よって、試料Dが、元の形状(曲げられる前の形状)と同じまたは略同じ形状に戻った(図4参照)。試料Dの反発回復性は、試料Cよりも良好であり、試料Bよりも良好であった。なお、試料Dの反発回復性は、試料Aよりも低くてもよい。上記のように、試料Aは、反発回復性は良好であるが、質量が大きい問題がある。
【0057】
試料Dのさらなる詳細は、以下の通りである。試料Dの織り方(織り組織)は、次の通りである。試料Dの地部20は、平織である。試料Dの耳部30は、綾織(さらに詳しくは2/2の綾織)である。
【0058】
試料Dのタテ糸11は、HMPE糸である。
【0059】
試料Dのヨコ糸12は、モノフィラメント12aのみを含む。試料Dのモノフィラメント12aの材質は、ポリエステル系エラストマー(熱可塑性エラストマーの一例)である。
【0060】
試料Dのカラミ糸13は、ベルト幅方向Wにおける片側の耳部端部31に2本設けられる。この2本のカラミ糸13のそれぞれは、PET糸である。
【0061】
試料Dの、ベルト幅方向Wの寸法(幅)は41mm、ベルト厚さ方向Tの寸法(厚さ)は1.2mm、質量(ベルト長手方向Lでの1m当たりの質量)は35.0g/m、ベルト長手方向Lへの引張強さは28.6kNである。
【0062】
なお、試料Dは、本実施形態のベルト1の一例にすぎず、ベルト1の各種パラメータは様々に設定可能である。
【0063】
(第1の発明の効果)
図1に示すベルト1による効果は、次の通りである。ベルト1は、タテ糸11と、ヨコ糸12と、を備える。タテ糸11は、ベルト長手方向Lに延びるように配置され、複数本設けられる。ヨコ糸12は、ベルト幅方向Wに延びるように配置され、タテ糸11に織り込まれ、ベルト長手方向Lに並ぶように配置される。
【0064】
[構成1]ヨコ糸12は、モノフィラメント12aを含む。モノフィラメント12aは、ベルト幅方向Wの曲げに対して弾性変形するように構成されたモノフィラメント弾性糸である。
【0065】
上記[構成1]により、ベルト幅方向Wにベルト1が曲がっても(耳部端部31が互いに近づく向きにベルト1が曲がっても)、ベルト1が、曲がる前の形状に回復しやすい。よって、ベルト1は、ベルト幅方向Wにベルト1が曲がっても、ベルト長手方向Lに延びるシワがベルト1にできることを抑制できる(この効果をシワ抑制効果という)。
【0066】
(第2の発明の効果)
[構成2]ヨコ糸12は、引き揃え、合撚、および、カバーリング、の少なくともいずれかを含む。上記「引き揃え」は、モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸との引き揃えである。上記「合撚」は、モノフィラメント12aとマルチフィラメント糸との合撚である。上記「カバーリング」は、モノフィラメント12aへのマルチフィラメント糸のカバーリングである。
【0067】
上記[構成2]では、ヨコ糸12は、マルチフィラメント糸を備える。よって、ベルト1を構成するヨコ糸12のすべてがモノフィラメント12aである場合に比べ、ベルト1の表面の凹凸が減り、ベルト1の表面が滑らかになる。その結果、ベルト1の触り心地および見た目が滑らかになり、ベルト1の風合いが向上する。また、上記[構成2]では、モノフィラメント12aにマルチフィラメント糸が隣接する。よって、モノフィラメント12aにマルチフィラメント糸が隣接しない場合に比べ、ベルト1の表面にモノフィラメント12aが露出することが抑制される。よって、ベルト1の表面の凹凸がより減り、ベルト1の表面がより滑らかになる。その結果、ベルト1の触り心地および見た目がより滑らかになり、ベルト1の風合いが、より向上する。
【0068】
(第3の発明の効果)
[構成3]モノフィラメント12aは、熱可塑性エラストマーを含む。
【0069】
上記[構成3]では、モノフィラメント12aが、ベルト幅方向Wの曲げに対して弾性変形するのに適した材質である熱可塑性エラストマーを含む。よって、ベルト1のシワ抑制効果をより確実に得ることができる。
【0070】
(第4の発明の効果)
[構成4]モノフィラメント12aの直径は、0.19mm~0.60mmである。モノフィラメント12aの10%伸長時の応力は、0.24cN/dtex~0.50cN/dtexである。
【0071】
上記[構成4]では、モノフィラメント12aが、ベルト幅方向Wの曲げに対して弾性変形するのに適したパラメータ(直径、および、10%伸長時の応力)を有する。よって、ベルト1のシワ抑制効果をより確実に得ることができる。
【0072】
(第5の発明の効果)
[構成5]タテ糸11は、引張強度が1GPa以上の高強度繊維11aを含む。
【0073】
上記[構成5]により、ベルト長手方向Lにおけるベルト1の強度を確保することができる。
【0074】
(第6の発明の効果)
[構成6]高強度繊維11a(上記[構成4])は、超高分子量ポリエチレン(HMPE)を含む。
【0075】
上記[構成6]により、タテ糸11が(高強度繊維11aが)HMPEを含まない場合に比べ、タテ糸11を軽量にすることができる。その結果、ベルト1を軽量にすることができる。
【0076】
ここで、HMPEの融点は、約150℃である。そのため、HMPEを含むベルト1に対して熱セット(ベルト1のシワ抑制効果を得るための加熱処理)を行うことは不可能または困難である(詳細は上記)。そのため、熱セットによるシワ抑制効果を得ることは不可能または困難である。一方、ベルト1のヨコ糸12は、モノフィラメント12aを含む(上記[構成1])。よって、上記[構成5]のようにタテ糸11がHMPEを含み、熱セットが不可能または困難であっても、ベルト1では、モノフィラメント12aによるシワ抑制効果を得ることができる。
【0077】
(第7の発明の効果)
[構成7]ベルト1は、カラミ糸13を備える。カラミ糸13は、耳部端部31においてヨコ糸12どうしを締め付ける。耳部端部31は、織られた状態のタテ糸11およびヨコ糸12の(ベルト1の)ベルト幅方向Wにおける外側の端である。
【0078】
上記[構成7]により、次の効果が得られる。ベルト1のヨコ糸12は、モノフィラメント12aを含む(上記[構成1])。通常、モノフィラメント12aは、マルチフィラメント糸に比べて硬く太い。そのため、モノフィラメント12aが耳部端部31の表面に露出すると、触った感触および外観が滑らかでない(風合いが好ましくない)場合がある。そこで、上記[構成7]では、カラミ糸13が、耳部端部31に設けられる。よって、モノフィラメント12aが耳部端部31の表面に露出することが抑制される。よって、耳部端部31の触った感触および外観を滑らかにすることができる(風合いを向上させることができる)。
【0079】
(第8の発明の効果)
[構成8]タテ糸11およびヨコ糸12は、耳部30において、平織以外の織り方により構成される。耳部30は、ベルト幅方向Wにおける外側の端部である。
【0080】
上記[構成8]により、次の効果が得られる。ヨコ糸12は、モノフィラメント12aを含む(上記[構成1])。そのため、モノフィラメント12aが耳部30の表面に露出すると、耳部30の触った感触および外観が滑らかでない(風合いが好ましくない)場合がある。そこで、上記[構成8]では、耳部30の織り方は、平織以外の織り方である。よって、耳部30の織り方が平織である場合に比べ、耳部30でのモノフィラメント12aの凹凸を減らすことができる。よって、耳部30の触った感触および外観を滑らかにすることができる(風合いを向上させることができる)。
【0081】
(第9の発明の効果)
[構成9]タテ糸11およびヨコ糸12は、地部20において、平織により構成される。地部20は、耳部30よりも、ベルト幅方向Wにおける内側の部分である。
【0082】
上記[構成9]により、次の効果が得られる。ベルト1は、バックルなどに通される場合がある。この場合に、バックルとベルト1との摩擦力を規定値以上とする必要がある場合がある。ここで、平織は、平織以外の織り方に比べ、タテ糸11とヨコ糸12との交差が多い織り方である。よって、上記[構成9]により、地部20が平織以外の織り方により構成される場合に比べ、タテ糸11に対するモノフィラメント12aの出入り(浮き沈み)を多くすることができ、地部20の(ベルト1の)表面の凹凸を多くすることができる。よって、ベルト1と、ベルト1が通される部材(具体的にはバックル)と、の摩擦力を確保することができる。
【0083】
(第10の発明の効果)
[構成10]ベルト1は、フルハーネス用である。
【0084】
上記[構成10]により、フルハーネス用のベルト1において、シワ抑制効果が得られる。フルハーネス用のベルト1は、通常、バックルに通される。ベルト1のシワが抑制されるので、ベルト1のバックルへの挿通性を確保することができる。
【0085】
(変形例)
上記実施形態は、様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要素(変形例を含む)の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。具体的には例えば、カラミ糸13は設けられなくてもよい。例えば、上記実施形態の変形例どうしが様々に組み合わされてもよい。例えば、構成要素の包含関係は様々に変更されてもよい。例えば、ある上位の構成要素に含まれる下位の構成要素として説明したものが、この上位の構成要素に含まれなくてもよく、他の構成要素に含まれてもよい。具体的には例えば、耳部端部31は、耳部30の一部でなくてもよい。例えば、各構成要素は、各特徴(作用機能、配置、形状、製法など)の一部のみを有してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 ベルト
11 タテ糸
11a 高強度繊維
12 ヨコ糸
12a モノフィラメント
13 カラミ糸
20 地部
30 耳部
31 耳部端部
L ベルト長手方向
W ベルト幅方向
図1
図2
図3
図4