(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101333
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240722BHJP
H02M 7/487 20070101ALI20240722BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/487
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005268
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】荒木 清道
(72)【発明者】
【氏名】日南 圭二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋祐
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA04
5H770AA05
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA33
5H770DA34
5H770DA41
5H770JA11W
5H770JA18W
5H770PA11
5H770PA42
5H770PA43
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA12
5H770QA14
5H770QA16
5H770QA22
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】コンデンサの体格が小型化された電力変換装置を提供すること。
【解決手段】インバータ回路100は、バッテリ200の高電位側端子Pに接続されたPバスバと、低電位側端子Nに接続されたNバスバと、PバスバとNバスバの間の中点MであるMバスバとを備えている。さらに、インバータ回路100は、PバスバとMバスバに接続されたPMコンデンサ30と、MバスバとNバスバに接続されたMNコンデンサ40と、PバスバとNバスバに接続されたPNコンデンサ50と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力の直流電圧を複数の値に分割し、複数レベルの電圧が出力可能な電力変換装置であって、
電源の正極に接続された高電位配線(71)と、
前記電源の負極に接続された低電位配線(72)と、
前記高電位配線と前記低電位配線の間の電位となる少なくとも一つの中点配線(73)と、
前記高電位配線と前記中点配線に接続された第1コンデンサ(30)と、
前記中点配線と前記低電位配線に接続された第2コンデンサ(40)と、
前記高電位配線と前記低電位配線に接続された少なくとも一つの第3コンデンサ(50)と、を備えている電力変換装置。
【請求項2】
前記高電位配線、前記低電位配線、前記中点配線のそれぞれに接続されたスイッチング素子を含む複数の半導体装置(10,20)と、
前記半導体装置を冷却する冷却器(90)と、をさらに備え、
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサは、前記第3コンデンサよりも前記冷却器の近くに配置された、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記高電位配線と前記低電位配線は、前記第3コンデンサに接続された部位の断面積よりも、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサに接続された部位の断面積の方が大きい、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記高電位配線と前記低電位配線は、前記第3コンデンサに接続された部位の熱伝導率よりも、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサに接続された部位の熱伝導率の方が高い、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサ、前記第3コンデンサは、一体的に保持されたコンデンサ装置をなしており、
前記コンデンサ装置は、前記冷却器と並んで配置されている、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサは積層配置されている、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第3コンデンサは、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとともに積層配置されている、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサは並列配置されている、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第3コンデンサは、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとともに並列配置されている、請求項8に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチレベルインバータの一例として、特許文献1に開示された電力変換装置がある。電力変換装置は、直列に接続された二つの平滑コンデンサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置は、二つの平滑コンデンサ間の中点における許容電圧変動を抑える目的と、電力変換装置の外部に流出する電流リプルを減らす目的で二つの平滑コンデンサが設けられている。しかしながら、電力変換装置は、電流リプルを低減するためには大きなコンデンサ容量が必要になる。このため、電力変換装置は、平滑コンデンサの体格が大きくなるという問題がある。また、上記観点において、または言及されていない他の観点において、電力変換装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示される一つの目的は、コンデンサの体格が小型化された電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された電力変換装置は、
入力の直流電圧を複数の値に分割し、複数レベルの電圧が出力可能な電力変換装置であって、
電源の正極に接続された高電位配線(71)と、
電源の負極に接続された低電位配線(72)と、
高電位配線と低電位配線の間の電位となる少なくとも一つの中点配線(73)と、
高電位配線と中点配線に接続された第1コンデンサ(30)と、
中点配線と低電位配線に接続された第2コンデンサ(40)と、
高電位配線と低電位配線に接続された少なくとも一つの第3コンデンサ(50)と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
ここに開示された電力変換装置は、高電位配線と低電位配線に接続された少なくとも一つの第3コンデンサが設けられている。このため、電力変換装置は、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサの総容量を低減できる。よって、電力変換装置は、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサの体格を小型化できる。
【0008】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態におけるインバータ回路の概略構成を示す回路図である。
【
図2】インバータ回路の概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図2のIII‐III線に沿う断面図である。
【
図6】第2実施形態におけるコンデンサ装置の配置を示す斜視図である。
【
図7】第3実施形態におけるインバータ回路の概略構成を示す断面図である。
【
図8】第4実施形態におけるインバータ回路の概略構成を示す断面図である。
【
図9】第5実施形態におけるインバータ回路の概略構成を示す断面図である。
【
図10】第6実施形態におけるインバータ回路の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
【0011】
(第1実施形態)
図1~
図5を用いて、第1実施形態のインバータ回路100に関して説明する。インバータ回路100は、入力の直流電圧を複数の値に分割し、複数レベルの電圧が出力可能に構成されている。インバータ回路100は、所謂マルチレベルインバータである。マルチレベルインバータは、2レベルのインバータがバッテリ200の電圧をEとすると+E、-E、0と0以外に2レベルの電圧出力ができるのに対して、3レベル以上の電圧出力ができる。本実施形態では、一例として、3レベルのインバータ回路100を採用している。
【0012】
インバータ回路100は、たとえば、車両や飛行体などの移動体に搭載可能である。
図1に示すように、インバータ回路100は、バッテリ200とモータ300と電気的に接続されている。モータ300は、U相コイル301、V相コイル302、W相コイル303を備えた三相モータである。モータ300は、たとえば、モータジェネレータなどを採用できる。インバータ回路100は、バッテリ200が出力する直流電力を三相交流電力に変換し、三相交流電力をモータ300に供給する。インバータ回路100は、電力変換装置に相当する。
【0013】
<インバータ回路100の回路構成>
図1を用いて、インバータ回路100の回路構成に関して説明する。インバータ回路100は、スイッチング素子11~16、U相ミドル部21、V相ミドル部22、W相ミドル部23、コンデンサ装置60などを備えている。なお、
図1では、コンデンサ装置60に含まれているPMコンデンサ30、MNコンデンサ40、PNコンデンサ50を図示している。
【0014】
スイッチング素子11~16は、MOSFETやIGBTなどを採用できる。また、スイッチング素子11~16は、Siや、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体を主成分として構成されたものを採用できる。スイッチング素子11~16は、図示を省略している電子制御装置に各ゲート電極が接続されている。そして、スイッチング素子11~16は、電子制御装置によって駆動制御される。
【0015】
スイッチング素子11~16は、U相上アーム素子11、U相下アーム素子12、V相上アーム素子13、V相下アーム素子14、W相上アーム素子15、W相下アーム素子16を含んでいる。
【0016】
U相上アーム素子11、U相下アーム素子12は、バッテリ200の高電位側端子(P)と、低電位側端子(N)との間で直列に接続されている。U相上アーム素子11のソース端子とU相下アーム素子12のドレイン端子は、U相コイル301に接続されている。U相上アーム素子11とU相下アーム素子12をまとめてU相アームともいえる。
【0017】
V相上アーム素子13、V相下アーム素子14は、バッテリ200の高電位側端子と、低電位側端子との間で直列に接続されている。V相上アーム素子13のソース端子とV相下アーム素子14のドレイン端子は、V相コイル302に接続されている。V相上アーム素子13とV相下アーム素子14をまとめてV相アームともいえる。
【0018】
W相上アーム素子15、W相下アーム素子16は、バッテリ200の高電位側端子と、低電位側端子との間で直列に接続されている。W相上アーム素子15のソース端子とW相下アーム素子16のドレイン端子は、W相コイル303に接続されている。W相上アーム素子15とW相下アーム素子16をまとめてV相アームともいえる。
【0019】
このように、各アームは、後ほど説明するPバスバ71とNバスバ72との間で直列に接続されている。なお、スイッチング素子11~16の構造に関しては、後ほど説明するバッテリ200は、電源に相当する。高電位側端子は、正極に相当する。低電位側端子は、負極に相当する。
【0020】
U相ミドル部21、V相ミドル部22、W相ミドル部23は、高電位と低電位との間の中点(中性点)Mと各アームとに接続されている。各ミドル部21~23は、二つのスイッチング素子を含んでいる。スイッチング素子は、上記スイッチング素子11~16と同様のものを採用できる。スイッチング素子は、電子制御装置に各ゲート電極が接続されている。そして、スイッチング素子は、電子制御装置によって駆動制御される。なお、中点Mは、高電位と低電位との中間電位の部位といえる。また、中点Mは、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40との間の部位である。
【0021】
U相ミドル部21は、スイッチング素子として第1U相ミドル素子21aと第2U相ミドル素子21bとを含んでいる。第1U相ミドル素子21aは、ドレイン端子が中点Mに接続され、ソース端子が第2U相ミドル素子21bのソース端子に接続されている。第2U相ミドル素子21bのドレイン端子は、U相上アーム素子11のソース端子とU相下アーム素子12のドレイン端子に接続されている。
【0022】
V相ミドル部22は、スイッチング素子として第1V相ミドル素子22aと第2V相ミドル素子22bとを含んでいる。第1V相ミドル素子22aは、ドレイン端子が中点Mに接続され、ソース端子が第2V相ミドル素子22bのソース端子に接続されている。第2V相ミドル素子22bのドレイン端子は、V相上アーム素子13のソース端子とV相下アーム素子14のドレイン端子に接続されている。
【0023】
W相ミドル部23は、スイッチング素子として第1W相ミドル素子23aと第2W相ミドル素子23bとを含んでいる。第1W相ミドル素子23aは、ドレイン端子が中点Mに接続され、ソース端子が第2W相ミドル素子23bのソース端子に接続されている。第2W相ミドル素子23bのドレイン端子は、W相上アーム素子15のソース端子とW相下アーム素子16のドレイン端子に接続されている。なお、U相ミドル部21、V相ミドル部22、W相ミドル部23の構造に関しては、後ほど説明する。
【0024】
コンデンサ装置60は、平滑コンデンサとして、PMコンデンサ30、MNコンデンサ40、PNコンデンサ50を含んでいる。PMコンデンサ30は、高電位側端子と中点Mとに接続されている。MNコンデンサ40は、中点Mと低電位側端子とに接続されている。よって、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、直列に接続されている。
【0025】
PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、主に、電圧安定化と電流リプル吸収のために設けられている。言い換えると、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、中点Mの許容電圧変動を抑えるため、およびインバータ回路100の外部に流出する電流リプルを減らすために設けられている。PMコンデンサ30は第1コンデンサに相当する。MNコンデンサ40は第2コンデンサに相当する。
【0026】
PNコンデンサ50は、高電位側端子と低電位側端子とに接続されている。よって、PNコンデンサ50は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40に対して並列に接続されている。PNコンデンサ50は、電流リプル吸収のために設けられている。言い換えると、PNコンデンサ50は、インバータ回路100の外部に流出する電流リプルを減らすために設けられている。PNコンデンサ50は、第3コンデンサに相当する。
【0027】
インバータ回路100では、中点Mの許容電圧変動を抑えるために必要なコンデンサ容量が低いのに対し、外部に流出する電流リプルを減らすために必要なコンデンサ容量が大きい。そこで、インバータ回路100は、PNコンデンサ50が設けられている。このPNコンデンサ50は、上記のようにPMコンデンサ30とMNコンデンサ40と並列に接続されている。このため、インバータ回路100は、PMコンデンサ30、MNコンデンサ40、PNコンデンサ50の総容量を低減できる。よって、インバータ回路100は、PMコンデンサ30、MNコンデンサ40、PNコンデンサ50の体格を小型化できる。
【0028】
なお、本開示は、ダイオードクランプ型(T形)のインバータ回路100であっても適用できる。本開示、Nレベル(N=4)以上のインバータ回路100であっても採用できる。この場合、中間電位は、N-2となる。PNコンデンサ50は、N-1個となる。
【0029】
<インバータ回路100の構造>
図2~
図5を用いて、インバータ回路100の構造に関して説明する。インバータ回路100は、コンデンサ装置60と、半導体装置10,20と冷却器90とが一体的に組付けられた構造体とが並んで配置されている。図面では、コンデンサ装置60と構造体の並び方向を矢印ADで示している。なお、
図5では、バスバ71~73、絶縁部材80などの図示を省略している。後ほど説明する
図6に関しても同様である。
【0030】
また、
図2、
図3などに示すように、インバータ回路100は、各コンデンサ30~50と各半導体装置10,20とを接続するバスバ71~74を備えている。バスバ71~74は、銅などを主成分とする導電性の部材である。バスバ71~74は、平板形状の部材である。
【0031】
Pバスバ71は、高電位側端子に接続されている。高電位側端子に接続されている端子は、Pバスバ71に接続されていることになる。Pバスバ71は、高電位配線に相当する。
【0032】
Nバスバ72は、低電位側端子に接続されている。Nバスバ72は、低電位配線に相当する。低電位側端子に接続されている端子は、Nバスバ72に接続されていることになる。
【0033】
Mバスバ73は、中点Mを構成している。Mバスバ73は、Pバスバ71とNバスバ72の間の電位となる。Mバスバ73は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40とに接続されている。中点Mに接続されている端子は、Mバスバ73に接続されていることになる。Mバスバ73は、中点配線に相当する。
【0034】
Oバスバ74は、出力端子である。インバータ回路100は、U相コイル301、V相コイル302、W相コイル303のそれぞれと接続されたOバスバ74を備えている。
【0035】
なお、本実施形態では、一例として、構成要素間を電気的に絶縁するために、絶縁部材80が設けられた例を採用している。絶縁部材80は、Pバスバ71とMバスバ73との間、および各バスバ71,73とPMコンデンサ30との間に設けられている。また、絶縁部材80は、Mバスバ73とNバスバ72との間、および各バスバ72,73とMNコンデンサ40との間に設けられている。しかしながら、電気的に絶縁可能であれば絶縁部材80を設ける必要はない。
【0036】
半導体装置10,20は、たとえば、ベアチップ状の二つのスイッチング素子が接続された状態で、電気絶縁性の封止樹脂で覆われている。また、
図2、
図4などに示すように、半導体装置10,20は、各端子1~5の先端が封止樹脂から突出して設けられている。インバータ回路100は、複数の半導体装置10と、複数の半導体装置20とを備えている。各半導体装置10,20は、並んで配置され、冷却器90に組付けられている。なお、
図4では、図面を簡略化するために、冷却器90を省略している。
【0037】
インバータ回路100は、各アームを構成する三つの半導体装置10を備えている。U相アームの半導体装置10は、U相上アーム素子11とU相下アーム素子12とを備えている。V相アームの半導体装置10は、V相上アーム素子13とV相下アーム素子14とを備えている。W相アームの半導体装置10は、W相上アーム素子15とW相下アーム素子16とを備えている。また、半導体装置10は、P端子1、N端子2、O端子3、信号端子5を備えている。なお、半導体装置10は、アーム装置ともいえる。
【0038】
インバータ回路100は、各ミドル部21~23を構成する三つの半導体装置20を備えている。U相ミドル部21の半導体装置20は、第1U相ミドル素子21aと第2U相ミドル素子21bとを備えている。V相ミドル部22の半導体装置20は、第1V相ミドル素子22aと第2V相ミドル素子22bとを備えている。W相ミドル部23の半導体装置20は、第1W相ミドル素子23aと第2W相ミドル素子23bとを備えている。また、半導体装置20は、O端子3、M端子4、信号端子5を備えている。なお、半導体装置20は、ミドル装置ともいえる。
【0039】
図4に示すように、P端子1は、Pバスバ71に接続されている。N端子2は、Nバスバ72に接続されている。O端子3は、Oバスバ74に接続されている。M端子4は、Mバスバ73に接続されている。
図2に示すように、信号端子5は、配線基板110に接続されている。なお、配線基板110は、樹脂などの絶縁基材に導電性の配線が設けられた基板である。配線基板110は、電子制御装置と接続されている。
【0040】
冷却器90は、各半導体装置10,20を冷却するために、水などの冷媒が循環するように構成されている。冷却器90は、冷媒が流れる部位によって各半導体装置10,20を挟み込んでいる。
【0041】
このため、バスバ71~74は、各端子1~4との接続部位が冷却器90の近くに配置されることになる。また、バスバ71~74は、上記のように、冷却器90で冷却されている半導体装置10,20の各端子1~4と接続されている。そのため、バスバ71~74は、半導体装置10,20とともに、冷却器90によって冷却される。なお、バスバ71~73は、一端が構造体に接続され、他端がコンデンサ装置60に接続されているともいえる。
【0042】
図2、
図3に示すように、コンデンサ装置60は、各コンデンサ30~50とコンデンサケース61と封止樹脂部63とを備えている。コンデンサケース61は、各コンデンサ30~50を収容するものであり、一部に開口部62が設けられたケースである。コンデンサケース61は、各コンデンサ30~50を収容した状態で封止樹脂部63が設けられている。つまり、コンデンサケース61は、収容空間に、各コンデンサ30~50と封止樹脂部63とが設けられている。各コンデンサ30~50は、封止樹脂部63で封止されている。
【0043】
また、コンデンサケース61内には、各コンデンサ30~50と接続するために、Pバスバ71、Nバスバ72、Mバスバ73の一部が配置されている。Pバスバ71、Nバスバ72、Mバスバ73は、コンデンサケース61内に配置された部位が封止樹脂部63で封止されている。また、
図3に示すように、Pバスバ71、Nバスバ72、Mバスバ73は、開口部62から突出している。
【0044】
このように、コンデンサ装置60は、三つのコンデンサ30~50が一体的に保持されている。コンデンサ装置60は、コンデンサ構造体ともいえる。また、各コンデンサ30~50は、一つのコンデンサ素子で構成されていてもよいし、複数のコンデンサ素子で構成されていてもよい。
【0045】
図2に示すように、PMコンデンサ30は、第1PM端子31、第2PM端子32を備えている。第1PM端子31は、Pバスバ71に接続されている。第2PM端子32は、Mバスバ73に接続されている。
【0046】
MNコンデンサ40は、第1MN端子41、第2MN端子42を備えている。第1MN端子41は、Mバスバ73に接続されている。第2MN端子42は、Nバスバ72に接続されている。
【0047】
PNコンデンサ50は、第1PN端子51、第2PN端子52を備えている。第1PN端子51は、Pバスバ71に接続されている。第2PN端子52は、Nバスバ72に接続されている。
【0048】
図2に示すように、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、PNコンデンサ50よりも冷却器90の近くに配置されている。本実施形態では、一例として、並び方向ADに沿って、冷却器90、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40、PNコンデンサ50の順で配列されている。このため、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、PNコンデンサ50よりも、冷却器90によって冷却されやすい。なお、インバータ回路100は、PNコンデンサ50よりも、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の方が、冷却力が強化されているといえる。
【0049】
また、Pバスバ71は、構造体との接続部位からPMコンデンサ30との接続部位までの長さが、構造体との接続部位からPNコンデンサ50との接続部位までの長さよりも短い。よって、PMコンデンサ30は、冷却器90で冷却されたPバスバ71によって、PNコンデンサ50よりも冷却されやすい。
【0050】
一方、Nバスバ72は、構造体との接続部位からMNコンデンサ40との接続部位までの長さが、構造体との接続部位からPNコンデンサ50との接続部位までの長さよりも短い。よって、MNコンデンサ40は、冷却器90で冷却されたNバスバ72によって、PNコンデンサ50よりも冷却されやすい。
【0051】
ところで、発熱に起因するリプル電流は、PNコンデンサ50よりも、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の方が大きい。そこで、本開示では、PNコンデンサ50よりもPMコンデンサ30とMNコンデンサ40を冷却器90の近くに配置している。このため、インバータ回路100は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の熱を抑えることができる。よって、インバータ回路100は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の許容電流を増加できる。つまり、インバータ回路100は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40よりもPNコンデンサ50の方が冷却器90に近い構成よりも許容電流を増加できる。なお、ここまでに説明した、冷却器90と各コンデンサ30~50との位置関係は、他の実施形態にも適用できる。
【0052】
Pバスバ71とNバスバ72は、PNコンデンサ50に接続された部位の熱伝導率よりも、PMコンデンサ30およびMNコンデンサ40に接続された部位の熱伝導率の方が高いものであってもよい。たとえば、PNコンデンサ50に接続された部位は、銅を主成分として構成される。一方、PMコンデンサ30およびMNコンデンサ40に接続された部位は、銀を主成分として構成される。これによっても、インバータ回路100は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の許容電流を増加できる。
【0053】
さらに、
図2、
図5に示すように、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、並び方向ADに交差する方向に積層配置されている。本実施形態では、一例として、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、並び方向ADに直交する方向に積層配置されている。
【0054】
詳述すると、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、PMコンデンサ30の第2PM端子32と、MNコンデンサ40の第1MN端子41とが対向するように積層配置されている。PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の間には、Mバスバ73の一部が配置されている。よって、第2PM端子32と第1MN端子41は、同一のMバスバ73に接続されている。
【0055】
このため、インバータ回路100は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40が並び方向ADに沿って配置された構成よりも、並び方向ADに沿う体格を小型化できる。また、インバータ回路100は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の積層方向に直交する方向の体格を小型化できるともいえる。PNコンデンサ50は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40に対して、並び方向ADに配置されている。なお、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、両コンデンサ30,40の厚み方向に積層されているともいえる。さらに、単に、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、積層配置されているともいえる。
【0056】
本実施形態では、一例として、上記のように配置されたコンデンサ30~50を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。
【0057】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態に何ら制限されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。以下に、本開示のその他の形態として、第2実施形態~第6実施形態に関して説明する。
【0058】
(第2実施形態)
図6を用いて、第2実施形態のインバータ回路100に関して説明する。本実施形態では、主に、第1実施形態と異なる箇所に関して説明する。本実施形態は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の位置関係が第1実施形態と異なる。
【0059】
PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、並列配置されている。PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、第1PM端子31と第1MN端子41とが同一仮想平面上に配置されている。PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、第2PM端子32と第2MN端子42とが別の同一仮想平面上に配置されている。
【0060】
よって、インバータ回路100は、両コンデンサ30,40が積層配置された構成よりも、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40のコンデンサ配置方向に直交する方向の体格を小型化できる。また、インバータ回路100は、第1実施形態と同様、各コンデンサ30~50の体格を小型化できる。なお、PNコンデンサ50は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の両方と並列配置されている。第1PN端子51は、第1PM端子31と第1MN端子41と同一仮想平面上に配置されている。第2PN端子52は、第2PM端子32と第2MN端子42と同一仮想平面上に配置されている。
【0061】
(第3実施形態)
図7を用いて、第3実施形態のインバータ回路100に関して説明する。本実施形態では、主に、第1実施形態と異なる箇所に関して説明する。本実施形態は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の位置関係が第1実施形態と異なる。PMコンデンサ30とMNコンデンサ40は、並び方向ADにおいてずらして配置されている。インバータ回路100は、第1実施形態と同様、各コンデンサ30~50の体格を小型化できる。
【0062】
(第4実施形態)
図8を用いて、第4実施形態のインバータ回路100に関して説明する。本実施形態では、主に、第2実施形態と異なる箇所に関して説明する。本実施形態は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40に対するPNコンデンサ50の位置関係が第2実施形態と異なる。
【0063】
PNコンデンサ50は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40とともに並列配置されている。つまり、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40とPNコンデンサ50は、直線状に配置されている。
【0064】
よって、インバータ回路100は、コンデンサ30~50が積層配置された構成よりも、コンデンサ30~50のコンデンサ配置方向に直交する方向の体格を小型化できる。また、インバータ回路100は、第1実施形態と同様、各コンデンサ30~50の体格を小型化できる。
【0065】
(第5実施形態)
図9を用いて、第5実施形態のインバータ回路100に関して説明する。本実施形態では、主に、第1実施形態と異なる箇所に関して説明する。本実施形態は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40に対するPNコンデンサ50の位置関係が第1実施形態と異なる。
【0066】
PNコンデンサ50は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40とともに積層配置されている。また、各コンデンサ30~50は、互いの端子が対向しないように配置されている。第1PN端子51は、第1PM端子31と第1MN端子41と同一仮想平面に対して平行に配置されている。第2PN端子52は、第2PM端子32と第2MN端子42と同一仮想平面に対して平行に配置されている。インバータ回路100は、コンデンサ30~50が並列配置された構成よりも、コンデンサ30~50のコンデンサ配置方向に直交する方向の体格を小型化できる。また、インバータ回路100は、第1実施形態と同様、各コンデンサ30~50の体格を小型化できる。
【0067】
(第6実施形態)
図10を用いて、第6実施形態のインバータ回路100に関して説明する。本実施形態では、主に、第1実施形態と異なる箇所に関して説明する。本実施形態は、Pバスバ71とNバスバ72の構成が第1実施形態と異なる。
【0068】
Pバスバ71は、PMコンデンサ30に接続されたPMバスバ部71mと、PNコンデンサ50に接続されたPNバスバ部71pとを含んでいる。Nバスバ72は、MNコンデンサ40に接続されたMNバスバ部72mと、PNコンデンサ50に接続されたPNバスバ部72pとを含んでいる。PMバスバ部71mは、PNバスバ部71pよりも断面積が大きい。MNバスバ部72mは、PNバスバ部72pよりも断面積が大きい。
【0069】
これによっても、インバータ回路100は、PMコンデンサ30とMNコンデンサ40の許容電流を増加できる。また、インバータ回路100は、第1実施形態と同様、各コンデンサ30~50の体格を小型化できる。
【0070】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0071】
100…インバータ回路、1…P端子、2…N端子、3…O端子、4…M端子、5…信号端子、10,20…半導体装置、11~16…スイッチング素子、11…U相上アーム素子、12…U相下アーム素子、13…V相上アーム素子、14…V相下アーム素子、15…W相上アーム素子、16…W相下アーム素子、21…U相ミドル部、22…V相ミドル部、23…W相ミドル部、21a…第1U相ミドル素子、21b…第2U相ミドル素子、22a…第1V相ミドル素子、22b…第2V相ミドル素子、23a…第1W相ミドル素子、23b…第2W相ミドル素子、30…PMコンデンサ、31…第1PM端子、32…第2PM端子、40…MNコンデンサ、41…第1MN端子、42…第2MN端子、50…PNコンデンサ、51…第1PN端子、52…第2PN端子、60…コンデンサ装置、61…コンデンサケース、62…開口部、63…封止樹脂部、71…Pバスバ、71m…PMバスバ部、71p…PNバスバ部、72…Nバスバ、72m…MNバスバ部、72p…PNバスバ部、73…Mバスバ、74…Oバスバ、80…絶縁部材、90…冷却器、110…配線基板、200…バッテリ、300…モータ、301…U相コイル、302…V相コイル、303…W相コイル