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  • 特開-電動車両用ファンの制御システム 図1
  • 特開-電動車両用ファンの制御システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101335
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】電動車両用ファンの制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/00 20060101AFI20240722BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20240722BHJP
   B60L 58/26 20190101ALN20240722BHJP
【FI】
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005271
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】田野井 晃
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA09
5H125BC19
5H125CD07
5H125DD01
5H125EE61
5H125EE66
(57)【要約】
【課題】電動車両に対象物体が近づいた際に、ファンの作動音を小さくする又は無くすことができる電動車両用ファンの制御システムを提供する。
【解決手段】電動車両用ファンの制御システムは、ファンの制御部と、電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知する近接感知部を備える。近接感知部が電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知した場合であって、ファンの制御部が、ファンが作動中である場合に、ファンの回転数を低減すること、及びファンが作動中でない場合に、ファンの起動を禁止することのうちの少なくとも一方を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンの制御部と、電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知する近接感知部を備えた電動車両用ファンの制御システムであって、
前記近接感知部が電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知した場合であって、前記制御部が、前記ファンが作動中である場合に、前記ファンの回転数を低減すること、及び前記ファンが作動中でない場合に、前記ファンの起動を禁止することのうちの少なくとも一方を実行する
ことを特徴とする電動車両用ファンの制御システム。
【請求項2】
前記近接感知部が、電動車両と対象物体との経時的な距離の変化を検知する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の電動車両用ファンの制御システム。
【請求項3】
前記近接感知部が、超音波センサー又はレーダーセンサーを有することを特徴とする請求項2に記載の電動車両用ファンの制御システム。
【請求項4】
前記近接感知部が、画像認識カメラを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の電動車両用ファンの制御システム。
【請求項5】
前記電動車両の周囲環境に応じて、前記制御部が、前記ファンの回転数の低減及び前記ファンの起動の禁止のうちの少なくとも一方の実行を停止することを特徴とする請求項1に記載の電動車両用ファンの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用ファンの制御システムに係り、さらに詳細には、電動車両のバッテリ温度制御システムや車室用空調システムに適用されるファンの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両減速中にアイドル停止が有ることを予測することにより、ファン消費電流の削減及びファン騒音の低減を実現し得るハイブリッド車両のファン制御装置を開示している。このハイブリッド車両のファン制御装置は、車両の推進力を出力するエンジンと、エンジンの出力を補助するモータと、モータに電力を供給するバッテリと、バッテリを冷却するファンと、車両停止に伴うアイドル停止機能とを備えている。このハイブリッド車両のファン制御装置は、車両減速中にアイドル停止を事前に予測するアイドル停止予測手段と、アイドル停止が予測された場合に、ファンをアイドル停止前に停止させる風量切替手段とを更に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-103612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が、特許文献1に開示されたようなハイブリッド車両のファン制御装置を電動車両に適用しようとしたところ、エンジンの停止に連携させてファンを停止していたため、電動車両に適用できないという問題点があった。また、電動車両の場合、電動車両が充電中や駐車中、停車中であっても、自動でバッテリ温度制御システムを作動させるためやスマートフォンやリモートコントローラによる遠隔操作で車室用空調システムを作動させるためにファンを作動させる場合がある。本発明者が、このような場合について更に検討したところ、ファンが作動しているとき又は作動し始めたときに電動車両の近くを人が通ると、ファンの作動音により人がうるさく感じることや驚いてしまうことがあるという新たな技術的課題を見出した。
【0005】
本発明は、このような新たな技術的課題に基づいてなされたものであって、電動車両に対象物体が近づいた際に、ファンの作動音を小さくする又は無くすことができる電動車両用ファンの制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、近接感知部が電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知した場合であって、ファンの制御部が、ファンが作動中である場合に、ファンの回転数を低減すること、及びファンが作動中でない場合に、ファンの起動を禁止することのうちの少なくとも一方を実行することにより、前記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の電動車両用ファンの制御システムは、ファンの制御部と、電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知する近接感知部を備える。
近接感知部が電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知した場合であって、ファンの制御部が、ファンが作動中である場合に、ファンの回転数を低減すること、及びファンが作動中でない場合に、ファンの起動を禁止することのうちの少なくとも一方を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、近接感知部が電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知した場合であって、ファンの制御部が、ファンが作動中である場合に、ファンの回転数を低減すること、及びファンが作動中でない場合に、ファンの起動を禁止することのうちの少なくとも一方を実行することとしたため、電動車両に対象物体が近づいた際に、ファンの作動音を小さくする又は無くすことができる電動車両用ファンの制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の電動車両用ファンの制御システムの一実施形態を示す構成概略図である。
図2】電動車両と対象物体(人)との距離dの経時的な変化を示すグラフ図である。
図3】電動車両と対象物体(人)との距離dとファンの回転数Nとの関係の若干例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電動車両用ファンの制御システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明における電動車両は、車両の駆動源の一部又は全部としてモータを備え、モータの駆動力のみにより走行可能な自動車であればよく、電気自動車だけでなく、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車も含まれる。また、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の電動車両用ファンの制御システム1は、電子制御ユニット(ECU)10を備えている。この電子制御ユニット10は、ファンの制御部20と近接感知部30を備えている。電子制御ユニット10においては、近接感知部30及びファンの制御部20が協働して、後述するセンサーやカメラからの信号の入力に応じて、ファン21に信号を出力し、ファン21の制御をする。
【0012】
この電子制御ユニット10は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を備えている。
【0013】
CPUは、ROMからプログラムやデータをRAM上に読み出し、処理を実行することによって、電子制御ユニット10全体の制御や機能を実現する演算装置である。CPUやROM、RAM等は、同一パッケージ内に集積され得る。また、電子制御ユニット10は、CPUに替えて、DSP(Digital Signal Processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。
【0014】
ROMは、電源を切ってもプログラム(例えば、対象物体判断用プログラム、近接距離判断用プログラム)やデータ(例えば、対象物体の移動パターンデータ、距離-ファン回転数データ、バッテリ温度-ファン回転数データ、車室温度-ファン回転数データ)を保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。格納されるプログラムやデータには、例えば、コンピュータ全体を制御する基本ソフトウェアであるOS(Operating System)、OS上において各種機能を提供するアプリケーションソフトウェア等がある。電子制御ユニット10は、SSD(Solid State Drive)等を備えていてもよい。
【0015】
RAMは、上述したプログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。
【0016】
また、ファンの制御部20は、バッテリBの温度を制御するバッテリ温度制御システム40や車室Cの温度を制御する車室用空調システム50からの要求に基づいて、ファン21に信号を出力し、ファン21の回転数を制御している。なお、ファン21は、例えば、その前方に配置されるバッテリ温度制御システム40や車室用空調システム50のラジエター(図示せず)やコンデンサー(図示せず)を冷却している。
【0017】
また、近接感知部30は、充電中又は駐車中又は停車中の電動車両Vに対象物体(人)Hが近づいてきたことを感知するものであって、例えば、電動車両Vと対象物体(人)Hとの経時的な距離dの変化を検知する機能を有するものである。より具体的には、近接感知部30には、超音波センサー(又はレーダーセンサー)31や画像認識カメラ32から信号が入力され、その信号の経時的な変化により、電動車両Vと対象物体(人)Hとの経時的な距離dの変化を感知する。これにより、近接感知部30は、充電中又は駐車中又は停車中の電動車両Vに対象物体(人)Hが近づいてきたことを感知する。
【0018】
なお、近接感知部30は、図2に示すように、対象物体(人)Hと他の障害物(フェンス等)との区別を、超音波センサー(又はレーダーセンサー)によりセンシングしている距離dの経時的な変化の有無や、画像認識カメラ32の人認識機能の利用によって行うことができる。また、このようなセンサーを用いる場合に赤外線センサーを更に組み合わせて用いてもよい。このようなセンサーやカメラは、従来公知のパーキングセンサーや自動運転化技術に用いられるものを活用することができる。
【0019】
そして、本実施形態の電動車両用ファンの制御システム1においては、近接感知部30が電動車両Vに対象物体(人)Hが近づいてきたことを感知した場合であって、ファンの制御部20が、ファン21が作動中である場合に、ファン21の回転数を低減すること、及びファン21が作動中でない場合に、ファン21の起動を禁止することのうちの少なくとも一方を実行する。
【0020】
また、ファンの制御部20は、ファン21の回転数を低減する際に、図3に示すように、電動車両Vと対象物体(人)Hとの距離dに応じてファンの回転数Nを段階的に又はリニアに変化させることができる。
【0021】
また、本実施形態の電動車両用ファンの制御システム1においては、電動車両Vの周囲環境に応じて、ファンの制御部20が、ファン21の回転数の低減及びファン21の起動の禁止のうちの少なくとも一方の実行を停止するようにしてもよい。
【0022】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、近接感知部30が電動車両Vに対象物体(人)Hが近づいてきたことを感知した場合であって、ファンの制御部20が、ファン21が作動中である場合に、ファン21の回転数を低減すること、及びファン21が作動中でない場合に、ファン21の起動を禁止することのうちの少なくとも一方を実行するので、電動車両に人が近づいた際に、ファンの作動音を小さくする又は無くすことができる。これにより、充電中又は駐車中又は停車中の電動車両に人が近づいてきた場合には、ファンの作動音が人に殆ど聞こえず、それ以外の場合にはファンが作動するので、バッテリ温度や車室温度の制御を維持しつつ、人がうるさく感じたり、驚いたりしてしまうことを抑制ないし防止することができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、近接感知部30が、電動車両Vと対象物体(人)Hとの経時的な距離の変化を検知する機能を有するので、より的確に、電動車両に人が近づいた際に、ファンの作動音を小さくする又は無くすことができる。
【0024】
さらに、本実施形態によれば、近接感知部30が、超音波センサー(又はレーダーセンサー)31を有するので、近接感知部30が画像認識カメラ32を有する場合よりも簡素な構成で、電動車両に人が近づいた際に、ファンの作動音を小さくする又は無くすことができる。
【0025】
さらに、本実施形態によれば、近接感知部30が、画像認識カメラ32を有するので、より的確に、電動車両に人が近づいた際に、ファンの作動音を小さくする又は無くすことができる。
【0026】
さらに、本実施形態によれば、電動車両Vの周囲環境に応じて、ファンの制御部20が、ファン21の回転数の低減及びファン21の起動の禁止のうちの少なくとも一方の実行を停止するので、例えば、運転者が電動車両Vの周囲環境が騒がしいと判断した場合に、その判断に基づいて、各種制御を停止することができる。
【0027】
以上、本発明を一実施形態によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0028】
本発明においては、電動車両に対象物体が近づいた際に、ファンの作動音を小さくする又は無くすべく、近接感知部が電動車両に対象物体が近づいてきたことを感知した場合であって、ファンの制御部が、ファンが作動中である場合に、ファンの回転数を低減すること、及びファンが作動中でない場合に、ファンの起動を禁止することのうちの少なくとも一方を実行することを骨子とする。
【0029】
例えば、上述の実施形態においては各種センサー及び画像認識カメラの双方を備える場合を例示して説明したが、本発明においてはそれらのうちのいずれか一方だけを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 電動車両用ファンの制御システム
10 電子制御ユニット(ECU)
20 ファンの制御部
21 ファン
30 近接感知部
31 超音波センサー(レーダーセンサー)
32 画像認識カメラ
40 バッテリ温度制御システム
50 車室用空調システム
B バッテリ
C 車室
H 人
V 電動車両
図1
図2
図3