(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101342
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】室外機冷却システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/70 20180101AFI20240722BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240722BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20240722BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240722BHJP
F24F 130/20 20180101ALN20240722BHJP
【FI】
F24F11/70
F24F11/63
F25B39/04 N
F24F110:12
F24F130:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005281
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 豊
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅之
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA04
3L260CA32
3L260CA34
3L260CB78
3L260FB17
3L260FB53
(57)【要約】
【課題】散水量の最適化を図ることが可能な室外機冷却システムを提供する。
【解決手段】空調装置の室外機に散水する散水装置と、前記散水装置の動作を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、太陽電池の出力、又は、日射量の少なくとも一方に基づいて、前記散水装置による散水量を決定する第一散水量決定処理(ステップS103、ステップS105、ステップS106)を実行可能なものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置の室外機に散水する散水装置と、
前記散水装置の動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
太陽光発電部の出力、又は、日射量の少なくとも一方に基づいて、前記散水装置による散水量を決定する第一散水量決定処理を実行可能である、
室外機冷却システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第一散水量決定処理において、
前記太陽光発電部の出力、又は、日射量の少なくとも一方に基づいて、前記空調装置の消費電力を算定し、算定された前記消費電力に基づいて前記散水量を決定する、
請求項1に記載の室外機冷却システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第一散水量決定処理において、
算定された前記消費電力に基づいて、前記消費電力を削減するために必要な気化熱量を算定し、算定された前記気化熱量に基づいて前記散水量を決定する、
請求項2に記載の室外機冷却システム。
【請求項4】
前記制御部は、
外気温に基づいて、前記散水装置による散水量を決定する第二散水量決定処理を実行可能である、
請求項1に記載の室外機冷却システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記太陽光発電部の出力が有る場合に、前記第一散水量決定処理を実行し、
前記太陽光発電部の出力が無い場合に、前記第二散水量決定処理を実行する、
請求項4に記載の室外機冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置の室外機に散水する散水システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調装置の室外機に散水する散水システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の冷却システムは、室外機に設けられた熱交換器に対して散水可能な散水機構を具備している。特許文献1に記載の冷却システムは、熱交換器に対して散水を行うことで、熱交換器中を流通する冷媒の冷却を促進することができ、ひいては空調装置の運転コスト(消費電力)の削減を図ることができる。
【0004】
ここで、特許文献1に記載のように散水を行う冷却システムにおいては、散水量が多くなると水道代の負担が大きくなるため、できるだけ散水量に無駄が生じないように、散水量の最適化が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、散水量の最適化を図ることが可能な室外機冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、空調装置の室外機に散水する散水装置と、前記散水装置の動作を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、太陽光発電部の出力、又は、日射量の少なくとも一方に基づいて、前記散水装置による散水量を決定する第一散水量決定処理を実行可能であるものである。
【0009】
請求項2においては、前記制御部は、前記第一散水量決定処理において、前記太陽光発電部の出力、又は、日射量の少なくとも一方に基づいて、前記空調装置の消費電力を算定し、算定された前記消費電力に基づいて前記散水量を決定するものである。
【0010】
請求項3においては、前記制御部は、前記第一散水量決定処理において、算定された前記消費電力に基づいて、前記消費電力を削減するために必要な気化熱量を算定し、算定された前記気化熱量に基づいて前記散水量を決定するものである。
【0011】
請求項4においては、前記制御部は、外気温に基づいて、前記散水装置による散水量を決定する第二散水量決定処理を実行可能であるものである。
【0012】
請求項5においては、前記制御部は、前記太陽光発電部の出力が有る場合に、前記第一散水量決定処理を実行し、前記太陽光発電部の出力が無い場合に、前記第二散水量決定処理を実行するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明においては、散水量の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】(a)室外機及び室外機冷却システムの構成を示した正面図。(b)室外機及び室外機冷却システムの構成を示した側面図。
【
図3】室外機冷却システム及び室外機冷却システムへの給電に関する構成を示したブロック図。
【
図4】(a)削減可能な消費電力と散水量との関係の一例を示した図。(b)日射量と消費電力との関係の一例を示した図。
【
図5】制御部による処理の内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る室外機冷却システム1が適用される室外機130を備える空調装置100の概略について説明する。
【0017】
空調装置100は、電力により作動し、室内の空調を行うことができる。空調装置100は、主として室内機110、圧縮機120、室外機130及び膨張弁140を具備する。空調装置100は、例えば住宅等に設けられ、室内機110は当該住宅等の室内に、室外機130は室外に、それぞれ配置される。室内の冷房を行う場合、室内機110から送られる冷媒は、コンプレッサー等の圧縮機120によって圧縮されて高温・高圧となる。高温・高圧となった冷媒の熱は、室外機130において放熱される。室外機130を通過した冷媒は、膨張弁140によって膨張させられることで低温となり、室内機110へと供給される。低温となった冷媒は、室内機110において蒸発(気化)し、この際、周囲の熱を奪うことで、室内を冷やすことができる。気化した冷媒は、再び圧縮機120へと供給される。
【0018】
このように空調装置100、室内機110と室外機130との間で冷媒を循環させることで、室内の冷房を行うことができる。この際、空調装置100(特に圧縮機120)では、電力が消費される。なお、
図1の空調装置100の構成は一例であり、例えば室外機130の内部に圧縮機120を配置することも可能である。
【0019】
次に、本発明の一実施形態に係る室外機冷却システム1の構成について説明する。
【0020】
図2及び
図3に示す室外機冷却システム1は、住宅等に設けられる空調装置100の室外機130に対して散水を行って室外機130を冷却することで、空調装置100の省エネ化を図るものである。室外機冷却システム1は、主として散水装置10及び制御装置20を具備する。
【0021】
図2に示す散水装置10は、水を室外機130に散水するものである。散水装置10は、主として電磁弁11、ノズル12及びステー13を具備する。
【0022】
電磁弁11は、水道等から供給される水の流通の可否を切り替える開閉弁である。電磁弁11は、後述する制御装置20からの電気信号により動作することができる。なお、電磁弁11へと供給される水として、不純物を取り除かれた処理水を使用してもよい。これによって、室外機130にスケールが付着するのを抑制することができる。
【0023】
ノズル12は、水を噴出する噴出口である。ノズル12としては、各種のノズル(一流体ノズル、二流体ノズル等)を用いることができる。ノズル12は、電磁弁11に接続される。ノズル12は、電磁弁11を介して供給される水を噴出することができる。
【0024】
ステー13は、電磁弁11及びノズル12を支持するものである。電磁弁11及びノズル12は、ステー13を介して室外機130の上部に取り付けられる。ノズル12は、室外機130の広範囲に水を散水できるような位置に配置される。なお、図例のステー13は一例であり、電磁弁11及びノズル12を適切な位置に配置できるように、ステー13を任意の形状に形成し、任意の位置に配置することが可能である。例えば、ノズル12からの水を直接室外機130へと散水するのではなく、間接的に散水する(例えば、室外機130の吸気口近傍に配置された別の部材に向かって散水する)ように配置することも可能である。
【0025】
図2及び
図3に示す制御装置20は、散水装置10の動作を制御するものである。制御装置20は、主として筐体21、温度センサ23及び制御部24を具備する。
【0026】
図2に示す筐体21は、後述する温度センサ23及び制御部24を収容するものである。筐体21は、中空の箱状に形成される。筐体21は、例えば直方体状に形成される。筐体21の底面は、両面テープ等によって室外機130の上面に固定される。
【0027】
図3に示す温度センサ23は、温度を検出するものである。温度センサ23は、筐体21の内部に収容される。温度センサ23は、外気温を検出することができる。
【0028】
制御部24は、散水装置10の動作を制御するものである。制御部24は、主としてCPU等の演算処理装置、RAMやROM等の記憶装置等により構成される。制御部24の記憶装置には、散水装置10の動作を制御するために必要な情報や各種プログラムが記憶されている。
【0029】
制御部24は、温度センサ23及び後述する太陽電池51と電気的に接続される。制御部24は、温度センサ23からの電気信号に基づいて、温度センサ23が検出した温度(すなわち、外気温)を取得することができる。また制御部24は、後述する太陽電池51からの電気信号に基づいて、太陽電池51の出力に関する情報を取得することができる。
【0030】
制御部24は、電磁弁11と電気的に接続される。制御部24は、電磁弁11の動作(開閉)を制御することにより、散水装置10を作動させて散水を行うことができる。
【0031】
図3に示すように、本実施形態では、太陽電池51により発電された電力を、制御部24や電磁弁11の動作に用いることができる。太陽電池51は、例えば空調装置100が設けられる住宅等に設置されている。太陽電池51で発電された電力は、一旦蓄電池52に蓄えられる。蓄電池52から出力された電力は、インバータ53によって直流から交流に変換され、制御部24へと供給される。制御部24は供給された電力により作動し、また、電磁弁11の動作を制御することができる。このように太陽電池51からの電力を用いることで、制御部24や電磁弁11を作動させるための電源や回路を別途容易する必要がない。
【0032】
上述の如く構成された室外機冷却システム1において、制御部24が電磁弁11の動作を制御することで、ノズル12から水を噴出させることができる。これによって室外機130に対して散水を行うことができ、室外機130を冷却することができる。室外機130を冷却することによって、室外機130の熱効率を向上させることができ、ひいては空調装置100の消費電力(特に、冷房を行う際の消費電力)の低減を図ることができる。
【0033】
ここで、室外機冷却システム1によって散水を行う場合、散水量が多くなると水道代の負担が大きくなるため、できるだけ散水量に無駄が生じないように、散水量の最適化が求められる。そこで本実施形態に係る室外機冷却システム1は、太陽電池51の出力に基づいて電磁弁11の動作を制御することで、室外機130への散水量の最適化を図っている。以下、具体的に説明する。
【0034】
まず、室外機130への散水量の算出方法について説明する。
【0035】
上述のように、室外機130に対して散水を行うと、室外機130での放熱量の一部を散水された水の気化熱によって代替することができ、空調装置100の消費電力を削減することができる。散水によって削減可能な消費電力は、空調装置100の仕様等に応じて概ね定まる。このため、例えば散水によって、空調装置100の消費電力のうち、20%を削減可能など、削減可能な消費電力を予め仮定することができる。
【0036】
この際、上記削減可能な消費電力だけ空調装置100の消費電力を削減するために必要な放熱量(気化熱量)は、下記の数1で算定される。
【0037】
(数1)
必要な気化熱量=削減可能な消費電力×(COP-1)
【0038】
また、上記数1の必要な気化熱量を得るために必要な散水量は、水の潜熱を用いて、下記の数2で算定される。
【0039】
(数2)
必要な散水量=必要な気化熱量÷潜熱
【0040】
例えば、削減可能な消費電力が200W、COP=4の場合、必要な気化熱量は200W×(4-1)=600W=600J/secであり、必要な散水量=600J/sec÷2.258kJ/L=0.000265L/sec=15.9mL/minとなる。
【0041】
図4(a)には、削減可能な消費電力と、そのために必要な散水量の関係を示している。
図4(a)に示されているように、削減可能な消費電力が大きいほど、散水量を多くする必要がある。
【0042】
一方、空調装置100の消費電力と日射量にも相関関係がある。
図4(b)には、日射量と、空調装置100の消費電力(定格消費電力に対する消費電力の割合)の関係を示している。具体的には、
図4(b)の各プロットは、日射量に対する消費電力の実測値(実験値等)を示している。また
図4(b)の直線は、上記各プロットから算出された日射量と消費電力の関係を示す近似式(y=Ks×x)を示している。
図4(b)は、日射量が多い場合(例えば、晴れの日)には、気温が高く、また、日射負荷が大きいため、室内温度が高くなり易く、空調装置100による空調対象室の冷房負荷が大きくなり、空調装置100の消費電力が大きくなることを示している。
【0043】
ここで、太陽電池51の出力(発電量)は日射量に依存して大きくなるため、上述の関係を利用することで、太陽電池51の出力に応じて散水量を決定することができる。具体的には、1kW相当の太陽電池51の出力(発電量)に対して、必要な散水量は以下の数3~数7で算定することができる。
【0044】
(数3)
太陽電池1kW相当の出力[kW]≒日射量[kW/m2]
【0045】
(数4)
消費電力≒Ks×太陽電池1kW相当の出力×定格消費電力
【0046】
(数5)
削減可能な消費電力=消費電力×P[%]
【0047】
(数6)
必要な気化熱量=削減可能な消費電力×(COP-1)
【0048】
(数7)
必要な散水量=必要な気化熱量÷潜熱×安全率
【0049】
ここで、上記数3に関して、太陽電池1kW相当の出力は、日射量と概ね同一とみなすことができる。また上記数4に関して、係数Ksとは、
図4(b)に示した、日射量と消費電力との関係を示す近似式の係数である。また上記数5に関して、P[%]とは、空調装置100の消費電力に対する、削減可能な消費電力の割合である。また上記数6は、前述の数1と同様である。また上記数7は、前述の数2に対して、安全率(例えば、2~3程度)を考慮したものである。
【0050】
例えば、1kWの太陽電池の出力が0.6kW、定格消費電力が2.2kW、係数Ksが0.37、Pが20%、COPが4、安全率が3である場合、散水量=0.6kJ/sec×0.37×2.2kW×20%×(4-1)÷2.258kJ/L×60sec×3=7.8mL/min×3=23.4mL/minとなる。
【0051】
このようにして決定された散水量に応じて電磁弁11のON/OFF(開閉)を制御することで、散水量を制御することができる。
【0052】
上述のような散水量の算出方法を用いて、例えば各時刻(1時間毎など)の太陽電池51の出力に応じて散水量を制御することで、例えば悪天候時など、空調負荷の少ない時間帯の散水量を抑制することができる。これによって、空調装置100による消費電力の削減効果を維持しながら、使用水量の抑制を図ることができる。
【0053】
なお、夜間等の太陽電池51による出力が得られない時間帯では、上記数3~数7では適切な散水量を算出することができないため、散水量を一定量に設定することが可能である。
【0054】
一方、外気温と空調装置100の消費電力にも、日射量と空調装置100の消費電力と同様の相関関係(
図4(b)参照)があるため、夜間等においては、太陽電池51の出力ではなく、外気温に基づいて散水量を算出することも可能である。
【0055】
以下では、制御部24による散水量の制御態様について具体的に説明する。
【0056】
制御部24は、例えば各時刻(1時間毎など)において
図5に示す処理を実行することで、散水量を算出し、その散水量で散水が行われるように電磁弁11を制御する。
【0057】
具体的には、ステップS101において、制御部24は、空調装置100が運転(稼働)している(ON)か否か判定する。空調装置100が運転しているか否かを判定する方法は特に限定するものではない。例えば制御部24は、空調装置100から運転状態に関する信号を受信し、その信号に基づいて空調装置100が運転しているか否かを判定することが可能である。また制御部24は、予め定められた空調装置100の運転スケジュールを取得し、その運転スケジュールに基づいて空調装置100が運転しているか否かを判定してもよい。
【0058】
制御部24は、空調装置100が運転していると判定した場合、ステップS102に移行する。一方制御部24は、空調装置100が運転していない(停止している)と判定した場合、
図5に示す処理を終了する。
【0059】
ステップS102において、制御部24は、太陽電池51の出力(発電)が有るか否か判定する。すなわち制御部24は、太陽電池51の出力が0より大きいか否かを判定する。なお、太陽電池51の出力の有無を判定するための閾値(上記例では、0)は、任意に変更することが可能である。制御部24は、太陽電池51の出力が有ると判定した場合、ステップS103に移行する。一方制御部24は、太陽電池51の出力が無いと判定した場合、ステップS104に移行する。
【0060】
ステップS103において、制御部24は、現在(現時刻)の太陽電池51の出力(発電量)に基づいて、空調装置100の消費電力を算定する。この処理によって、太陽電池51の出力が有る場合(日射がある場合)における空調装置100の消費電力を算定することができる。当該算定には、上記数4を用いることができる。制御部24は、ステップS103の処理を行った後、ステップS105に移行する。
【0061】
一方、ステップS102から移行したステップS104において、制御部24は、外気温に基づいて、空調装置100の消費電力を算定する。この処理によって、太陽電池51の出力が無い場合(例えば夜間などの日射が無い場合)における空調装置100の消費電力を算定することができる。この算定には、以下の数8を用いることができる。
【0062】
(数8)
消費電力≒Kt×外気温×定格消費電力
【0063】
上記数8は、前述の数4の「太陽電池1kW相当の出力」を「外気温」に置き換えたものである。また上記数8で示した係数Ktは、外気温と消費電力との関係を示す近似式(y=Kt×x)から求められる。制御部24は、ステップS104の処理を行った後、ステップS105に移行する。
【0064】
ステップS105において、制御部24は、ステップS103又はステップS104で算定された消費電力から、必要な気化熱量を算出する。この算定には、上述の数4、数5及び数6を用いることができる。制御部24は、ステップS105の処理を行った後、ステップS106に移行する。
【0065】
ステップS106において、制御部24は、ステップS105で算定された必要な気化熱量から、必要な散水量を算定する。この算定には、上述の数7を用いることができる。制御部24は、ステップS106の処理を行った後、ステップS107に移行する。
【0066】
ステップS107において、制御部24は、ノズルの特性に合わせて、ステップS106で算定された散水量で散水が可能なduty比を決定する。制御部24は、ステップS107の処理を行った後、ステップS108に移行する。
【0067】
ステップS108において、制御部24は、ステップS107で決定されたDuty比に合わせて、電磁弁11の動作を制御する。これによって、ノズル12から室外機130へと、空調装置100の消費電力に応じた散水量で散水が行われる。これによって、散水量に無駄が生じることがなく、水道代の負担の増加を抑制することができる。
【0068】
制御部24は、
図5に示す処理を次回行うまで、電磁弁11を動作させる。例えば
図5に示す処理を9時、10時、11時・・・のように各時刻に(1時間毎に)行う場合には、9時の太陽電池51の出力に応じて散水量が決定され、その散水量で9時から10時までの1時間の間、散水が行われることになる。また10時の太陽電池51の出力に応じて散水量が決定され、その散水量で10時から11時までの1時間の間、散水が行われることになる。
【0069】
以上の如く、本実施形態に係る室外機冷却システム1は、
空調装置100の室外機130に散水する散水装置10と、
前記散水装置10の動作を制御する制御部24と、
を具備し、
前記制御部24は、
太陽電池51(太陽光発電部)の出力、又は、日射量の少なくとも一方に基づいて、前記散水装置10による散水量を決定する第一散水量決定処理(ステップS103、ステップS105、ステップS106)を実行可能なものである。
このように構成することにより、散水量の最適化を図ることができる。すなわち、太陽電池51の出力又は日射量に基づいて散水量を決定することで、無駄のない散水を行うことができる。
【0070】
また、前記制御部24は、
前記第一散水量決定処理において、
前記太陽電池51の出力、又は、日射量の少なくとも一方に基づいて、前記空調装置100の消費電力を算定し(ステップS103)、算定された前記消費電力に基づいて前記散水量を決定するものである。
このように構成することにより、散水量の最適化を図ることができる。すなわち、空調装置100の消費電力に基づいて散水量を決定することで、無駄のない散水を行うことができる。
【0071】
また、前記制御部24は、
前記第一散水量決定処理において、
算定された前記消費電力に基づいて、前記消費電力を削減するために必要な気化熱量を算定し、算定された前記気化熱量に基づいて前記散水量を決定するものである。
このように構成することにより、散水量の最適化を図ることができる。すなわち、必要な気化熱量に基づいて散水量を決定することで、無駄のない散水を行うことができる。
【0072】
また、前記制御部24は、
外気温に基づいて、前記散水装置10による散水量を決定する第二散水量決定処理(ステップS104、ステップS105、ステップS106)を実行可能なものである。
このように構成することにより、散水量の最適化を図ることができる。すなわち、外気温に基づいて散水量を決定することで、無駄のない散水を行うことができる。
【0073】
また、前記制御部24は、
前記太陽電池51の出力が有る場合(ステップS102でYES)に、前記第一散水量決定処理を実行し、
前記太陽電池51の出力が無い場合(ステップS102でNO)に、前記第二散水量決定処理を実行するものである。
このように構成することにより、散水量の最適化をより効果的に図ることができる。すなわち、太陽電池51の出力が有る場合に限らず、太陽電池51の出力が無い場合にも散水量の最適化を図ることで、無駄のない散水を行うことができる。
【0074】
なお、本実施形態に係る太陽電池51は、本発明に係る太陽光発電部の実施の一形態である。
【0075】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、上記実施形態では、太陽電池51の出力が無い場合には、外気温に基づいて散水量を決定する例(ステップS104、ステップS105、ステップS106)を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば太陽電池51の出力が無い場合(例えば、夜間など)には、冷房負荷が比較的安定すると考えられるため、散水量を一定値に設定することも可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、太陽電池51で発電された電力を一旦蓄電池52に蓄え、その後に制御部24へと供給する例(
図3参照)を示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば蓄電池52を除いた(蓄電池52を備えない)構成とすることも可能である。例えば蓄電池52を除いた場合、制御部24及び電磁弁11が作動するのは太陽電池51の出力が得られる時間帯(昼間)のみになるが、空調装置100の消費電力が大きい時間帯は、太陽電池51の出力が得られる時間帯と概ね一致すると考えられるため、水の使用量の削減の観点から効果的であると考えられる。
【0078】
また蓄電池52を除いた場合において、太陽電池51の出力が小さい場合(例えば、悪天候など)には制御部24及び電磁弁11を作動させることができないことが想定されるが、この場合は空調装置100の消費電力も小さいと考えられるため、散水が行われなくても特に問題ないと考えられる。
【0079】
また、上記実施形態では、各時刻における太陽電池51の出力(瞬時値)に基づいて(ステップS103)散水量を制御する方法を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、日射負荷の蓄積を考慮して、ある一定期間(例えば、一時間など)の太陽電池51の出力の積算値に基づいて、散水量を制御することも可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、太陽電池51の出力に基づいて散水量を算定する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば上述の数3及び数4に示すように、空調装置100の消費電力と日射量との間にも一定の相関関係があるため、日射量を検出可能な日射センサ等により日射量を検出し、検出された日射量を用いて散水量を算定することも可能である。
【0081】
また、上記実施形態で示した散水装置10等(
図2参照)の構成は一例であり、任意に変更することが可能である。例えば、本実施形態では室外機130に対して2つのノズル12等を設けた例を示したが、ノズル12や電磁弁11等の個数や配置は、任意に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 室外機冷却システム
10 散水装置
24 制御部
100 空調装置
130 室外機