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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101349
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】推定装置及び推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/48 20060101AFI20240722BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240722BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240722BHJP
   G01S 5/04 20060101ALN20240722BHJP
【FI】
G01S3/48
G01S7/02 218
H01Q21/06
G01S5/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005294
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】満井 勉
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 碩文
【テーマコード(参考)】
5J021
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021GA04
5J021JA10
5J062AA08
5J062CC14
5J062GG02
5J070AA02
5J070AC13
5J070AE20
5J070AF01
5J070AH34
5J070AK14
(57)【要約】
【課題】マップを使用した事前計算を行うことなく、基地局アンテナから送信されるビームのビーム方向及びビーム幅を推定することができる推定装置及び推定方法を提供する。
【解決手段】推定装置1は、複数のアンテナ素子Rx1~RxNを有し、基地局アンテナTxから送信された送信信号の複数のビームを測定エリア内の複数の測定点で受信信号として受信するアンテナ装置10と、アンテナ装置10が配置された各測定点の位置及び方位を取得する位置方位取得装置13と、各測定点に配置されたアンテナ装置10により受信された受信信号のデータと、位置方位取得装置13より取得された各測定点の位置及び方位のデータとを記録するデータ収録装置14と、データ収録装置14に記録された受信信号のデータ並びに各測定点の位置及び方位のデータから各ビームのビーム方向及びビーム幅を推定する信号処理装置20と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子(Rx1~RxN)を有し、基地局アンテナ(Tx)から送信された送信信号の複数のビームを測定エリア(MA)内の複数の測定点(30)で前記複数のアンテナ素子により受信信号として受信するアンテナ装置(10)と、
前記アンテナ装置が配置された各前記測定点の位置及び方位を取得する位置方位取得装置(13)と、
各前記測定点に配置された前記アンテナ装置により受信された前記受信信号のデータと、前記位置方位取得装置より取得された各前記測定点の位置及び方位のデータと、を記録するデータ収録装置(14)と、
前記データ収録装置に記録された前記受信信号のデータ並びに各前記測定点の位置及び方位のデータから、各前記ビームのビーム方向及びビーム幅を推定する信号処理装置(20)と、を備え、
前記信号処理装置は、
前記受信信号に含まれる参照信号を抽出する参照信号抽出部(22)と、
前記送信信号に含まれる既知の参照信号と、前記参照信号抽出部により前記受信信号から抽出された前記参照信号とから、各前記ビームのチャネル応答を生成するチャネル応答生成部(23)と、
前記チャネル応答生成部により生成された各前記ビームのチャネル応答に基づいて、各前記ビームの最も電力レベルが高い到来方向を前記測定点ごとに推定する到来方向推定部(24)と、
前記到来方向推定部により推定された前記到来方向を用いて、前記基地局アンテナの位置を推定する基地局位置推定部(25)と、
各前記測定点における前記複数のアンテナ素子の受信電力を算出する受信電力算出部(26)と、
各前記測定点の位置と、前記基地局位置推定部により推定された前記基地局アンテナの位置と、前記受信電力算出部により算出された受信電力に基づいて、前記測定エリアにおける各前記ビームの電力分布の最大値の位置である最大値位置と、前記最大値から3dB低い位置であるビーム境界と、を算出する電力分布計算部(27)と、
前記基地局位置推定部により推定された前記基地局アンテナの位置と、前記電力分布計算部により算出された各前記ビームの前記最大値位置に基づいて、各前記ビームのビーム方向を推定するビーム方向推定部(28)と、
前記電力分布計算部により算出された各前記ビームの前記ビーム境界に基づいて、前記ビームのビーム幅を推定するビーム幅推定部(29)と、を含むことを特徴とする推定装置。
【請求項2】
複数のアンテナ素子(Rx1~RxN)を有し、基地局アンテナ(Tx)から送信された送信信号の複数のビームを測定エリア(MA)内の複数の測定点(30)で前記複数のアンテナ素子により受信信号として受信するアンテナ装置(10)と、
前記アンテナ装置が配置された各前記測定点の位置及び方位を取得する位置方位取得装置(13)と、
各前記測定点に配置された前記アンテナ装置により受信された前記受信信号のデータと、前記位置方位取得装置より取得された各前記測定点の位置及び方位のデータと、を記録するデータ収録装置(14)と、
前記データ収録装置に記録された前記受信信号のデータ並びに各前記測定点の位置及び方位のデータから、各前記ビームのビーム方向及びビーム幅を推定する信号処理装置(20)と、を備える推定装置(1)を用いる推定方法であって、
前記受信信号に含まれる参照信号を抽出する参照信号抽出ステップ(S5)と、
前記送信信号に含まれる既知の参照信号と、前記参照信号抽出ステップにより前記受信信号から抽出された前記参照信号とから、各前記ビームのチャネル応答を生成するチャネル応答生成ステップ(S6)と、
前記チャネル応答生成ステップにより生成された各前記ビームのチャネル応答に基づいて、各前記ビームの最も電力レベルが高い到来方向を前記測定点ごとに推定する到来方向推定ステップ(S9)と、
前記到来方向推定ステップにより推定された前記到来方向を用いて、前記基地局アンテナの位置を推定する基地局位置推定ステップ(S10)と、
各前記測定点における前記複数のアンテナ素子の受信電力を算出する受信電力算出ステップ(S11)と、
各前記測定点の位置と、前記基地局位置推定ステップにより推定された前記基地局アンテナの位置と、前記受信電力算出ステップにより算出された受信電力に基づいて、前記測定エリアにおける各前記ビームの電力分布の最大値の位置である最大値位置と、前記最大値から3dB低い位置であるビーム境界と、を算出する電力分布計算ステップ(S12)と、
前記基地局位置推定ステップにより推定された前記基地局アンテナの位置と、前記電力分布計算ステップにより算出された各前記ビームの前記最大値位置に基づいて、各前記ビームのビーム方向を推定するビーム方向推定ステップ(S13)と、
前記電力分布計算ステップにより算出された各前記ビームの前記ビーム境界に基づいて、前記ビームのビーム幅を推定するビーム幅推定ステップ(S14)と、を含むことを特徴とする推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局から送信される電波のビーム形状を推定する推定装置及び推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムとして第5世代移動通信システムが運用され、対応する携帯端末も増えている。その中で超高速通信を実現可能な周波数が高いミリ波も用いられている。ミリ波の電波は直進性が強く、遮蔽に弱く、距離減衰が大きいという特徴がある。そのため、携帯端末で通信可能な十分な電力が得られるように、基地局が形成するアンテナビームは、ビーム幅の狭い複数のビームからなる複雑なものとなっている。そして、アンテナビームのビーム方向やビーム幅などのビーム形状の情報は、基地局によって異なることや秘匿性確保のために開示されていない。しかしながら、基地局新設時には、既存システムへの干渉等を回避するために、周辺に存在する基地局のアンテナビームの情報が必要となる。
【0003】
また、ミリ波よりも周波数の低い電波を用いるシステムでは、建物の影であっても電波の回析によって通信可能となるが、ミリ波では直進性が高いために建物で遮られてしまうと通信可能なエリアが限定されてしまう。このため、通信可能エリアの拡大を図る目的で、反射板等を設置する技術も開発されている。反射板の設置位置の算出には、既存の基地局アンテナのビーム方向やビーム幅などのパラメータを把握する必要がある。
【0004】
アンテナビームのパラメータを推定する方法としては、電波マップを構築し、観測データが見通しか非見通しかをフレネルゾーンと高さマップを用いて判定して見通しでの測定データを選定し、加重平均を行うことで推定する方法(例えば、非特許文献1参照)が知られている。また、他の推定方法として、フィールドに無線センサを配置して測定した受信電力分布と、計算により求めた推定電力分布との相関係数を用いる方法(例えば、非特許文献2参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】松尾祥吾,中條宏郁,宮本直,藤井威生,若藤健司"電波マップとマルチビームアンテナモデルに基づいたミリ波ビームパターン推定手法の検討,"信学技報RCS2022-120(2022-08)
【非特許文献2】國澤良雄,松野宏己,林高弘,天野良晃,"ダイナミック周波数共用のための指向性アンテナの指向方向推定に関する一検討,"電子情報通信学会総合大会2020, B-17-4, March 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1,2に開示された従来の方法は、推定するエリアごとに3Dマップ等を用いた事前計算を必要とする。事前計算に必要とされる3Dマップ等は随時更新されていればよいが、フィールドでの測定時とは異なる場合が想定され、大きな誤差を生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、マップを使用した事前計算を行うことなく、基地局アンテナから送信されるビームのビーム方向及びビーム幅を推定することができる推定装置及び推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る推定装置は、複数のアンテナ素子を有し、基地局アンテナから送信された送信信号の複数のビームを測定エリア内の複数の測定点で前記複数のアンテナ素子により受信信号として受信するアンテナ装置と、前記アンテナ装置が配置された各前記測定点の位置及び方位を取得する位置方位取得装置と、各前記測定点に配置された前記アンテナ装置により受信された前記受信信号のデータと、前記位置方位取得装置より取得された各前記測定点の位置及び方位のデータと、を記録するデータ収録装置と、前記データ収録装置に記録された前記受信信号のデータ並びに各前記測定点の位置及び方位のデータから、各前記ビームのビーム方向及びビーム幅を推定する信号処理装置と、を備え、前記信号処理装置は、前記受信信号に含まれる参照信号を抽出する参照信号抽出部と、前記送信信号に含まれる既知の参照信号と、前記参照信号抽出部により前記受信信号から抽出された前記参照信号とから、各前記ビームのチャネル応答を生成するチャネル応答生成部と、前記チャネル応答生成部により生成された各前記ビームのチャネル応答に基づいて、各前記ビームの最も電力レベルが高い到来方向を前記測定点ごとに推定する到来方向推定部と、前記到来方向推定部により推定された前記到来方向を用いて、前記基地局アンテナの位置を推定する基地局位置推定部と、各前記測定点における前記複数のアンテナ素子の受信電力を算出する受信電力算出部と、各前記測定点の位置と、前記基地局位置推定部により推定された前記基地局アンテナの位置と、前記受信電力算出部により算出された受信電力に基づいて、前記測定エリアにおける各前記ビームの電力分布の最大値の位置である最大値位置と、前記最大値から3dB低い位置であるビーム境界と、を算出する電力分布計算部と、前記基地局位置推定部により推定された前記基地局アンテナの位置と、前記電力分布計算部により算出された各前記ビームの前記最大値位置に基づいて、各前記ビームのビーム方向を推定するビーム方向推定部と、前記電力分布計算部により算出された各前記ビームの前記ビーム境界に基づいて、前記ビームのビーム幅を推定するビーム幅推定部と、を含む構成である。
【0009】
この構成により、本発明に係る推定装置は、基地局アンテナからの送信信号の直接波の到来方向を推定できるため、マップを使用した事前計算を行うことなく、基地局アンテナから送信されるビームのビーム方向及びビーム幅を推定することができる。
【0010】
また、本発明に係る推定方法は、複数のアンテナ素子を有し、基地局アンテナから送信された送信信号の複数のビームを測定エリア内の複数の測定点で前記複数のアンテナ素子により受信信号として受信するアンテナ装置と、前記アンテナ装置が配置された各前記測定点の位置及び方位を取得する位置方位取得装置と、各前記測定点に配置された前記アンテナ装置により受信された前記受信信号のデータと、前記位置方位取得装置より取得された各前記測定点の位置及び方位のデータと、を記録するデータ収録装置と、前記データ収録装置に記録された前記受信信号のデータ並びに各前記測定点の位置及び方位のデータから、各前記ビームのビーム方向及びビーム幅を推定する信号処理装置と、を備える推定装置を用いる推定方法であって、前記受信信号に含まれる参照信号を抽出する参照信号抽出ステップと、前記送信信号に含まれる既知の参照信号と、前記参照信号抽出ステップにより前記受信信号から抽出された前記参照信号とから、各前記ビームのチャネル応答を生成するチャネル応答生成ステップと、前記チャネル応答生成ステップにより生成された各前記ビームのチャネル応答に基づいて、各前記ビームの最も電力レベルが高い到来方向を前記測定点ごとに推定する到来方向推定ステップと、前記到来方向推定ステップにより推定された前記到来方向を用いて、前記基地局アンテナの位置を推定する基地局位置推定ステップと、各前記測定点における前記複数のアンテナ素子の受信電力を算出する受信電力算出ステップと、各前記測定点の位置と、前記基地局位置推定ステップにより推定された前記基地局アンテナの位置と、前記受信電力算出ステップにより算出された受信電力に基づいて、前記測定エリアにおける各前記ビームの電力分布の最大値の位置である最大値位置と、前記最大値から3dB低い位置であるビーム境界と、を算出する電力分布計算ステップと、前記基地局位置推定ステップにより推定された前記基地局アンテナの位置と、前記電力分布計算ステップにより算出された各前記ビームの前記最大値位置に基づいて、各前記ビームのビーム方向を推定するビーム方向推定ステップと、前記電力分布計算ステップにより算出された各前記ビームの前記ビーム境界に基づいて、前記ビームのビーム幅を推定するビーム幅推定ステップと、を含む構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、マップを使用した事前計算を行うことなく、基地局アンテナから送信されるビームのビーム方向及びビーム幅を推定することができる推定装置及び推定方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る推定装置の構成を示す図である。
図2】(a)は本発明の実施形態に係る推定装置におけるアンテナ装置及び位置方位取得装置が一体の装置として構成される例を示しており、(b)は本発明の実施形態に係る推定装置におけるアンテナ装置、位置方位取得装置、及びデータ収録装置が一体の装置として構成される例を示している。
図3】アンテナ装置の構成を示す概略図であり、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
図4】基地局アンテナと複数の測定点の位置関係の例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る推定装置における信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図6】信号処理装置による基地局アンテナの位置の推定方法を説明するための図である。
図7】(a)は基地局アンテナから送信されたビームの電力分布の最大値の位置と最大値から-3dBの位置を示すグラフであり、(b)は送信信号のビームの仰俯角θを示すグラフである。
図8】基地局アンテナから送信されたビームのフィッティング例を示すグラフである。
図9】(a)は送信信号のビームの水平ビーム幅を説明するためのグラフであり、(b)及び(c)は送信信号のビームの垂直ビーム幅を説明するためのグラフである。
図10】レイトレースシミュレーションによるビームのパラメータと、本発明の実施形態に係る推定装置によるビームのパラメータの推定結果との誤差を示すグラフである。
図11】本発明の実施形態に係る推定装置を用いる推定方法の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る推定装置及び推定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の推定装置1は、アンテナ装置10と、位置方位取得装置13と、データ収録装置14と、信号処理装置20と、表示装置40と、操作装置41と、を備える。各装置は、互いに無線通信又は有線通信で接続される。
【0015】
図2(a)は、アンテナ装置10と位置方位取得装置13とがドローン等に積載可能な一体の装置として構成され、アンテナ装置10及び位置方位取得装置13がデータ収録装置14にそれぞれ無線通信で接続され、データ収録装置14と信号処理装置20とが有線通信で接続される構成を示している。データ収録装置14と信号処理装置20とは、クラウドサーバ内に構成されてもよい。
【0016】
図2(b)は、アンテナ装置10と位置方位取得装置13とデータ収録装置14とがドローン等に積載可能な一体の装置として構成され、アンテナ装置10及び位置方位取得装置13がデータ収録装置14にそれぞれ有線通信で接続され、データ収録装置14と信号処理装置20とが無線通信で接続される構成を示している。信号処理装置20は、クラウドサーバ内に構成されてもよい。
【0017】
アンテナ装置10は、基地局100の基地局アンテナTxから送信された送信信号の複数のビームを、測定エリアMA内の複数の測定点30(図4参照)で受信するものである。アンテナ装置10は、基地局アンテナTxから送信された送信信号を受信信号として受信する複数Nのアンテナ素子Rx1~RxNと、複数Nのアンテナ素子Rx1~RxNと同数の受信部11-1~11-Nを有する受信機11と、を有する。各アンテナ素子Rx1~RxNは、例えば、マイクロストリップアンテナなどの平面アンテナである。
【0018】
各受信部11-1~11-Nは、対応するアンテナ素子Rx1~RxNにより受信された受信信号(無線信号)に、増幅、周波数変換、アナログ-デジタル変換などの受信処理を行うようになっている。なお、受信部11-1~11-Nの数は、アンテナ素子Rx1~RxNの数より少なくてもよく、その場合には、スイッチなどでアンテナ素子Rx1~RxNを切り替えて各受信部11-1~11-Nに接続できる構成であればよい。
【0019】
図3(a)及び(b)は、アンテナ装置10の構成例を示す概略図である。図3(a)及び(b)の例では、N=8であり、四角柱状の柱12の4つの側面において、高さh1に4つのアンテナ素子Rx1~Rx4、高さh2に4つのアンテナ素子Rx5~Rx8が設けられている。
【0020】
図3(a)に示されているように、4つのアンテナ素子Rx1~Rx4の組と4つのアンテナ素子Rx5~Rx8の組とは、高さ方向に0.5λ離れるように配置される。また、図3(b)に示されているように、4つのアンテナ素子Rx1~Rx4は、隣り合うアンテナ素子の中心位置が水平方向に互いに0.5λ離れるように配置される。4つのアンテナ素子Rx5~Rx8も同様に、隣り合うアンテナ素子の中心位置が水平方向に0.5λ離れるように配置される。ここで、λは基地局アンテナTxから送信されるミリ波のビームの波長である。
【0021】
図4は、基地局アンテナTxと複数の測定点30の位置関係の例を示している。図中の黒丸は基地局アンテナTxの位置を示しており、白四角は各測定点30の位置を示している。例えば、基地局アンテナTxから送信されるビームがミリ波である場合には、複数の測定点30は、通信エリアであると想定される100m×100mの範囲に設けられればよい。アンテナ装置10は、例えば、4つのアンテナ素子Rx1~Rx4の組の中心位置と、4つのアンテナ素子Rx5~Rx8の組の中心位置との中間の位置が各測定点30に一致するように配置される。
【0022】
位置方位取得装置13は、アンテナ装置10が配置された各測定点30の位置及び方位を取得する装置である。位置方位取得装置13は、例えば、2つのGPS(Global Positioning System)アンテナの相対的な位置関係から測定点30の方位を取得するとともに、測定点30の位置を取得するGPSコンパスによって構成される。位置方位取得装置13は、複数の測定点30の位置及び方位を取得することが可能であれば、GPSコンパスに限定されず、電子コンパス、ジャイロコンパス、又は量子センサなどであってもよい。
【0023】
データ収録装置14は、各測定点30に配置されたアンテナ装置10により受信処理された受信信号のデータと、位置方位取得装置13より取得された各測定点30の位置及び方位のデータと、を記録するストレージを備えた装置である。
【0024】
信号処理装置20は、データ収録装置14に記録された上記のデータ(受信信号のデータと、各測定点30の位置及び方位のデータ)から、基地局アンテナTxから送信された送信信号のビームのビーム方向及びビーム幅を推定する装置である。
【0025】
図5に示すように、信号処理装置20は、信号同期部21と、参照信号抽出部22と、チャネル応答生成部23と、到来方向推定部24と、基地局位置推定部25と、受信電力算出部26と、電力分布計算部27と、ビーム方向推定部28と、ビーム幅推定部29と、を含む。
【0026】
信号同期部21は、アンテナ装置10により受信処理された受信信号に含まれる同期信号と、対応する既知の同期信号とを用いて、時間領域同期(シンボルやスロットなどのタイミング同期)と、周波数領域同期(キャリア周波数オフセットの補償)のどちらか少なくとも一方を、アンテナ装置10により受信処理された受信信号に対して行うようになっている。例えば、5G NR(New Radio)規格であれば、SS/PBCHブロック(Synchronization Signal / Physical Broadcast Channel Block:SSB)に含まれるプライマリ同期信号(Primary Synchronization Signal:PSS)及びセカンダリ同期信号(Secondary Synchronization Signal:SSS)のどちらか少なくとも一方が同期信号として信号同期部21に用いられる。
【0027】
また、信号同期部21は、受信信号のSSBに含まれているPBCHに基づいて、SSBを識別するためのSSBインデックスを取得する。SSBインデックスは、基地局アンテナTxから放射されるビームと一対一で対応しているため、信号同期部21は、受信信号が基地局アンテナTxから放射されたどのビームに対応するものであるかを特定することができる。
【0028】
参照信号抽出部22は、信号同期部21により同期された受信信号に含まれる参照信号を抽出するようになっている。例えば、5G NR規格であれば、CSI-RS(Channel State Information Reference Signal)、DM-RS(Demodulation Reference Signal)、TRS(Tracking Reference Signal)、PT-RS(Phase Tracking Reference Signal)などの参照信号が参照信号抽出部22により抽出される。
【0029】
チャネル応答生成部23は、基地局アンテナTxから送信された送信信号に含まれる既知の参照信号と、参照信号抽出部22により受信信号から抽出された参照信号とから、基地局アンテナTxから放射されるビームごとのチャネル応答を測定点30ごとに生成するようになっている。チャネル応答は、受信信号から抽出された参照信号の既知の参照信号に対する振幅変動量及び位相変動量の情報を含んでいる。例えば、5G NR規格であれば、参照信号抽出部22により受信信号から抽出されたCSI-RS、DM-RS、TRS、及びPT-RSなどの参照信号と、対応する既知の参照信号とが、チャネル応答生成部23によるチャネル応答の生成に用いられる。
【0030】
到来方向推定部24は、チャネル応答生成部23により生成された各測定点30における各ビームのチャネル応答に基づいて、基地局アンテナTxからの送信信号の各ビームの到来方向特性を測定点30ごとに算出し、算出された各ビームの到来方向特性において最も電力レベルが高い到来方向を測定点30ごとに推定するようになっている。すなわち、到来方向推定部24は、基地局アンテナTxからの送信信号の直接波の到来方向を推定するものである。例えば、到来方向推定部24は、周知のビームフォーマ、MUSIC(Multiple Signal Classification)法、又はFISTA(Fast Iterative Shrinkage-Thresholding Algorithm)などのアルゴリズムを使用して到来方向推定を行うものであればよい。
【0031】
具体的には、到来方向推定部24は、基地局アンテナTxからの送信信号の各ビームの到来方向の方位角依存性を、4つのアンテナ素子Rx1~Rx4の組又は4つのアンテナ素子Rx5~Rx8の組を用いて測定点30ごとに算出し、算出された方位角依存性において最も高い電力レベルを示す方位角を測定点30ごとに推定するようになっている。
【0032】
また、到来方向推定部24は、基地局アンテナTxからの送信信号の各ビームの到来方向の仰俯角依存性を4つのアンテナ素子Rx1~Rx4の組を用いて測定点30ごとに算出し、算出された仰俯角依存性において最も高い電力レベルを示す仰俯角を測定点30ごとに推定するようになっている。同様に、到来方向推定部24は、基地局アンテナTxからの送信信号の各ビームの到来方向の仰俯角依存性を4つのアンテナ素子Rx5~Rx8の組を用いて測定点30ごとに算出し、算出された仰俯角依存性において最も高い電力レベルを示す仰俯角を測定点30ごとに推定するようになっている。
【0033】
基地局位置推定部25は、到来方向推定部24により推定されたビームごとの各測定点30における到来方向を用いて、基地局アンテナTxの位置を推定するようになっている。なお、基地局位置推定部25は、基地局アンテナTxの位置を推定する際に、全ての測定点30で得られた到来方向を用いてもよく、あるいは、一部の測定点30で得られた到来方向を用いてもよい。
【0034】
図6は、基地局位置推定部25による水平面(複数の測定点30が配置されるxy平面)内の基地局アンテナTxの位置の推定方法を説明するための図であり、到来方向推定部24により圧縮センシングの1つであるFISTAを用いて推定された到来方向の一部が示されている。
【0035】
図6に示すように、基地局位置推定部25は、例えば3つの測定点30a,30b,30cにおける到来方向の方位角φa,φb,φcによってそれぞれ規定されるxy平面内の直線(図6中の矢印)の交点の位置を基地局アンテナTxのxy平面内の位置と推定する。各測定点30における到来方向の直線が一点に交わらない場合には、基地局位置推定部25は、それらの交点で形成される多角形の重心を基地局アンテナTxのxy平面内の位置と推定する。
【0036】
基地局位置推定部25によるxy平面内の基地局位置の推定結果は、アンテナ装置10において同一の高さh1に配置された4つのアンテナ素子Rx1~Rx4の組、又は、アンテナ装置10において同一の高さh2に配置された4つのアンテナ素子Rx5~Rx8の組から得られる。
【0037】
また、基地局位置推定部25は、高さ方向をz軸方向とするとき、測定点30を含む垂直面(xy平面に垂直な面)内の基地局位置、すなわち、基地局アンテナTxの高さを推定することもできる。基地局位置推定部25による基地局アンテナTxの高さの推定結果は、例えば、4つのアンテナ素子Rx1~Rx4の組から得られた到来方向の仰俯角と、4つのアンテナ素子Rx5~Rx8の組から得られた到来方向の仰俯角とを用いて、xy平面内の基地局位置の推定方法と同様に交点の位置を求めることで得られる。アンテナ装置10において、4つのアンテナ素子Rx1~Rx4の組と4つのアンテナ素子Rx5~Rx8の組と異なる高さに他のアンテナ素子の組が更に設けられている場合には、基地局位置推定部25により、そのアンテナ素子の組から得られた仰俯角も用いて交点(又は多角形の重心)の位置を求めることで、基地局アンテナTxの高さの推定結果が得られる。
【0038】
受信電力算出部26は、各測定点30における複数のアンテナ素子Rx1~RxNの最大の受信電力Pを算出するようになっている。
【0039】
電力分布計算部27は、位置方位取得装置13により取得された各測定点30の位置と、基地局位置推定部25により推定された基地局アンテナTxの位置と、受信電力算出部26により算出された受信電力Pに基づいて、測定エリアMAにおける各ビームの電力分布Pを算出するようになっている。
【0040】
より詳細には、電力分布計算部27は、基地局位置推定部25により推定された基地局アンテナTxの位置から各測定点30までの距離dを算出し、算出された距離dと基地局アンテナTxから送信されるビームの波長λとを用いて、下記の式(1)に従って自由空間伝搬損失(Free Space Path Loss:FSPL)[dB]を算出する。
【0041】
【数1】
【0042】
各測定点30における受信電力P[dBm]は、下記の式(2)で表される。ここで、G[dBi]は基地局アンテナTxのアンテナ利得であり、G[dBi]は複数のアンテナ素子Rx1~RxNのアンテナ利得であり、P[dBm]は基地局アンテナTxの送信電力である。
【0043】
【数2】
【0044】
次に、電力分布計算部27は、下記の式(3)に示すように、各測定点30で得られた受信電力Pから複数のアンテナ素子Rx1~RxNの既知のアンテナ利得Gを差し引くとともに、FSPLを補償して、測定エリアMA内の各ビームの電力分布Pを算出する。ここで、送信電力Pは一定であると仮定する。
【0045】
【数3】
【0046】
次に、電力分布計算部27は、内挿法により測定エリアMA内の各ビームの電力分布Pの最大値の位置(以下、「最大値位置」と呼ぶ)を算出する。さらに、電力分布計算部27は、電力分布Pの最大値から-3dBの位置(以下、「ビーム境界」と呼ぶ)を内挿法により算出する。図7(a)は、基地局アンテナTxから送信されたビームの数が12のときに、電力分布計算部27により得られた各ビームの電力分布Pの最大値位置を*で示すとともに、最大値から-3dBの位置を-3と表されている曲線で示している。以下、この曲線を3dB曲線とも呼ぶ。
【0047】
ビーム方向推定部28は、基地局位置推定部25により推定された基地局アンテナTxの位置と、電力分布計算部27により算出された各ビームの最大値位置に基づいて、各ビームのビーム方向を推定するようになっている。ビーム方向は、基地局アンテナTxから見た方位角と仰俯角とで示される。
【0048】
図7(a)に示すように、ビーム方向推定部28は、基地局アンテナTxから見た各ビームの電力分布Pの最大値位置の方位角φを推定する。図7(a)においては、xy平面上に投影した基地局アンテナTxの位置と、注目するビームの電力分布Pの最大値位置とを結ぶ方向にx'軸を取っている。このとき、x'軸とx軸が成す角度が方位角φとなる。
【0049】
また、図7(b)に示すように、ビーム方向推定部28は、送信信号のビームの仰俯角θを、基地局アンテナTxの位置と各ビームの電力分布Pの最大値位置の水平垂直距離の差分を用いて算出する。
【0050】
ここで、垂直距離の差分Δhは、基地局アンテナTxの高さhbと測定点30の高さhaの差で表される。また、水平距離の差分Δlは、xy平面上に投影した基地局アンテナTxの位置と、注目するビームの電力分布Pの最大値位置との距離で表される。すなわち、仰俯角θは、atan(Δh/Δl)で求められる。なお、複数の測定点30が配置されるxy平面の高さは、十分な受信電力が得られる高さであれば、どのような高さであっても同様の仰俯角θが得られることになる。
【0051】
ビーム幅推定部29は、電力分布計算部27により算出された各ビームのビーム境界に基づいて、送信信号のビームのビーム幅を推定するようになっている。以下、ビーム幅推定部29によるビーム幅の推定方法について説明する。
【0052】
まず、ビーム幅推定部29は、電力分布計算部27により算出された電力分布Pの3dB曲線のデータを楕円にフィッティングし、短軸半径a及び長軸半径bを求める。このフィッティングには最小二乗法を用いることができるが、その他のアルゴリズムを用いてもよい。
【0053】
図8は、ビーム幅推定部29によるフィッティング例を示している。図8において、実線は電力分布Pの3dB曲線を表しており、破線は3dB曲線にフィッティングした楕円を表している。図8から、3dB曲線が楕円によくフィッティングできていることが分かる。なお、図中の*は、電力分布計算部27により得られた電力分布Pの最大値位置を示している。
【0054】
図9(a)~(c)は、ビーム幅推定部29による送信信号のビームのビーム幅の算出例を示している。図9(a)に示すように、基地局アンテナTxをxy平面に投影した位置から見た、上記のフィッティングにより得られた楕円の短軸の見込角をφ0とすると、φ0が水平ビーム幅となる。
【0055】
図9(a)には、xy平面上に投影した基地局アンテナTxの位置と、上記のフィッティングにより得られた楕円の2つの長軸の両端B1,B2とを結ぶ方向に取ったx軸及びx軸も表示されている。図9(b)及び(c)に示すように、xz平面及びxz平面において両端B1,B2から見た基地局アンテナTxの仰俯角をそれぞれθ1,θ2とすると、θ2-θ1が垂直ビーム幅となる。
【0056】
信号処理装置20は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などを含むコンピュータなどの制御装置で構成される。例えば、信号処理装置20は、CPU又はGPUによる所定のプログラムの実行により、信号同期部21、参照信号抽出部22、チャネル応答生成部23、到来方向推定部24、基地局位置推定部25、受信電力算出部26、電力分布計算部27、ビーム方向推定部28、及びビーム幅推定部29の少なくとも一部をソフトウェア的に構成することが可能である。なお、上記のプログラムは、ROM又はHDDにあらかじめ格納されている。あるいは、上記のプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式でコンパクトディスク、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録された状態で提供又は配布されるものであってもよい。あるいは、上記のプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータに格納され、ネットワーク経由でのダウンロードにより提供又は配布されるものであってもよい。
【0057】
表示装置40は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などの表示機器で構成され、信号処理装置20からの制御信号に基づいて、各ビームの方位角、仰俯角、水平ビーム幅、及び垂直ビーム幅の推定結果を表示するようになっている。さらに、表示装置40は、各種条件を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0058】
操作装置41は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示装置40の表示画面に対応する入力面への接触操作による接触位置を検出するためのタッチセンサを備えるタッチパネルで構成される。あるいは、操作装置41は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。例えば、ユーザは、操作装置41への操作入力により、基地局アンテナTxから送信されるビームの波長λ、複数のアンテナ素子Rx1~RxNの既知のアンテナ利得Gなどを設定することができる。
【0059】
以下、シミュレーションにより、本実施形態に係る推定装置1の効果を確認する。
【0060】
まず、レイトレースシミュレーションで所望のパラメータ(方位角、仰俯角、水平ビーム幅、垂直ビーム幅)のビームを生成し、各測定点30における複数のアンテナ素子Rx1~RxNの受信電力Pを求めた。ここでは、基地局アンテナTxが高さ11mの建物の屋上に設置されているとし、図4に示すように、通信エリアであると想定される測定エリアMAに格子状に複数の測定点30が設けられているとした。また、基地局アンテナTxからのビームの数は12であるとした。
【0061】
図10は、レイトレースシミュレーションで生成された各測定点30における受信電力Pを用いて、ビームのパラメータを本発明の推定装置1による推定方法で推定した結果と、レイトレースシミュレーションで生成されたビームの所望のパラメータとの誤差を、12のビームの二乗平均平方根誤差(Root Mean Squared Error:RMSE)[deg]で表している。このシミュレーションでは、測定点30の格子間隔を1m~8mの範囲で変化させている。図10に示した結果から、測定点30の格子間隔が5m程度以下であれば、1°程度のRMSEでビームのパラメータを推定可能であることが確認できた。
【0062】
以下、本実施形態に係る推定装置1を用いる推定方法について、図11のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。以下の処理では、1つの測定点30で全てのビームのデータを取得した後に、他の測定点30で同様の処理を順次行うものとする。
【0063】
まず、ドローン等に積載されたアンテナ装置10及び位置方位取得装置13が、測定エリアMA内の複数の測定点30のうちのいずれかに配置される(ステップS1)。
【0064】
次に、アンテナ装置10は、基地局アンテナTxから送信された送信信号のビームを複数のアンテナ素子Rx1~RxNにより受信信号として受信し、受信信号に増幅、周波数変換、アナログ-デジタル変換などの受信処理を行う(ステップS2)。
【0065】
次に、信号同期部21は、アンテナ装置10により受信処理された受信信号に含まれる同期信号と、対応する既知の同期信号とを用いて、時間領域同期及び周波数領域同期のどちらか少なくとも一方を受信信号に対して行う(信号同期ステップS3)。
【0066】
次に、信号同期部21は、受信信号のSSBに含まれているPBCHに基づいて、SSBを識別するためのSSBインデックスを取得し、基地局アンテナTxから送信されたビームを特定する(ステップS4)。
【0067】
次に、参照信号抽出部22は、信号同期部21により同期された受信信号に含まれる参照信号を抽出する(参照信号抽出ステップS5)。
【0068】
次に、チャネル応答生成部23は、基地局アンテナTxから送信された送信信号に含まれる既知の参照信号と、参照信号抽出ステップS5により受信信号から抽出された参照信号とから、ステップS4で特定されたビームのチャネル応答を生成する(チャネル応答生成ステップS6)。
【0069】
次に、信号処理装置20は、基地局アンテナTxから送信され得る全てのビームのチャネル応答がチャネル応答生成ステップS6により生成されたか否かを判断する。チャネル応答生成ステップS6で全てのビームのチャネル応答が生成された場合(ステップS7:YES)、信号処理装置20は、ステップS8以降の処理を実行する。チャネル応答生成ステップS6で全てのビームのチャネル応答が生成されていない場合(ステップS7:NO)、信号処理装置20は、まだチャネル応答が得られていないビームについて再びステップS2以降の処理を実行する。
【0070】
次に、信号処理装置20は、アンテナ装置10及び位置方位取得装置13が測定エリアMA内の全ての測定点30に配置されたか否かを判断する。アンテナ装置10及び位置方位取得装置13が、測定エリアMA内の全ての測定点30に配置された場合(ステップS8:YES)、信号処理装置20は、ステップS9以降の処理を実行する。アンテナ装置10及び位置方位取得装置13が測定エリアMA内の全ての測定点30に配置されていない場合(ステップS8:NO)、信号処理装置20は、再びステップS1以降の処理を実行して、アンテナ装置10及び位置方位取得装置13がまだ配置されていない測定点30に、アンテナ装置10及び位置方位取得装置13を配置させる。
【0071】
次に、到来方向推定部24は、チャネル応答生成ステップS6により生成された各測定点30における各ビームのチャネル応答に基づいて、基地局アンテナTxからの送信信号の各ビームの到来方向特性を測定点30ごとに算出し、算出された各ビームの到来方向特性において最も電力レベルが高い到来方向を測定点30ごとに推定する(到来方向推定ステップS9)。
【0072】
基地局位置推定部25は、到来方向推定ステップS9により推定されたビームごとの各測定点30における到来方向を用いて、基地局アンテナTxの位置を推定する(基地局位置推定ステップS10)。
【0073】
受信電力算出部26は、各測定点30における複数のアンテナ素子Rx1~RxNの最大の受信電力Pを算出する(受信電力算出ステップS11)。
【0074】
電力分布計算部27は、位置方位取得装置13により取得された各測定点30の位置と、基地局位置推定ステップS10により推定された基地局アンテナTxの位置と、受信電力算出ステップS11により算出された受信電力Pに基づいて、測定エリアMAにおける各ビームの電力分布Pの最大値の位置である最大値位置と、最大値から3dB低い位置であるビーム境界と、を算出する(電力分布計算ステップS12)。
【0075】
ビーム方向推定部28は、基地局位置推定ステップS10により推定された基地局アンテナTxの位置と、電力分布計算ステップS12により算出された各ビームの最大値位置に基づいて、各ビームのビーム方向、すなわち、基地局アンテナTxから見た各ビームの最大値位置の方位角及び仰俯角を推定する(ビーム方向推定ステップS13)。
【0076】
ビーム幅推定部29は、電力分布計算ステップS12により算出された各ビームのビーム境界に基づいて、送信信号のビームのビーム幅、すなわち、測定点30が存在するxy平面における水平ビーム幅及び垂直ビーム幅を推定する(ビーム幅推定ステップS14)。
【0077】
次に、表示装置40は、各ビームの方位角、仰俯角、水平ビーム幅、及び垂直ビーム幅の推定結果を表示する(ステップS15)。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る推定装置1は、基地局アンテナTxから送信された送信信号の複数のビームの到来方向を測定点30ごとに推定し、推定した複数のビームの到来方向を用いて基地局アンテナTxの位置を推定するようになっている。ここで、本実施形態に係る推定装置1は、各ビームの最も電力レベルが高い到来方向を測定点30ごとに推定するようになっている。さらに、本実施形態に係る推定装置1は、基地局アンテナTxの位置と各ビームの電力分布とに基づいて、各ビームのビーム方向及びビーム幅を推定するようになっている。
【0079】
これにより、本実施形態に係る推定装置1は、基地局アンテナTxからの送信信号の直接波の到来方向を推定できるため、マップを使用した事前計算を行うことなく、基地局アンテナTxから送信されるビームのビーム方向及びビーム幅を推定することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 推定装置
10 アンテナ装置
11 受信機
11-1~11-N 受信部
13 位置方位取得装置
14 データ収録装置
20 信号処理装置
21 信号同期部
22 参照信号抽出部
23 チャネル応答生成部
24 到来方向推定部
25 基地局位置推定部
26 受信電力算出部
27 電力分布計算部
28 ビーム方向推定部
29 ビーム幅推定部
30,30a,30b,30c 測定点
100 基地局
Tx 基地局アンテナ
Rx1~RxN アンテナ素子
MA 測定エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11