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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101350
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ヘッドユニット、及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/195 20060101AFI20240722BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B41J2/195
B41J2/14 301
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005295
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小杉 康彦
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA28
2C056EB03
2C056EB07
2C056EB29
2C056EB30
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C056KB13
2C056KC02
2C057AF71
2C057AG44
2C057AG91
2C057AG99
2C057AL03
2C057AL14
2C057AL24
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
2C057DB03
2C057DD06
(57)【要約】
【課題】プリントヘッドの内部に温度検知部を設けた構成におけるプリントヘッドの温度の取得精度の向上できるヘッドユニットを提供すること。
【解決手段】液体を吐出する第1プリントヘッドは、駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室と、第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を検出し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、を有し、第1プリントヘッドの温度を示す温度情報信号を出力する温度情報出力回路は、第1基準電位信号と第1温度信号との差分を増幅する第1増幅回路と、第1増幅回路の出力に応じた温度情報信号を出力する出力制御回路と、第1基準電位信号の電圧値を制御する基準電圧制御回路と、を有するヘッドユニット。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を受けて液体を吐出するヘッドユニットであって、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を備え、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を検出し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有し、
前記温度情報出力回路は、
第1基準電位信号と前記第1温度信号との差分を増幅する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路の出力に応じた前記温度情報信号を出力する出力制御回路と、
前記第1基準電位信号の電圧値を制御する基準電圧制御回路と、
を有する、
ことを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記温度情報出力回路は記憶部を有し、
前記記憶部には、前記第1温度情報と前記第1プリントヘッドの周囲温度とに応じた第1基準電圧値が記憶され、
前記基準電圧制御回路は、前記第1基準電圧値に応じた電圧値の前記第1基準電位信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第2プリントヘッドを備え、
前記第2プリントヘッドは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2圧力室の温度に対応する第2温度情報を検出し、第2温度信号として出力する第2温度検出部と、
を有し、
前記温度情報出力回路は、第2基準電位信号と前記第2温度信号との差分を増幅する第2増幅回路を有し、
前記基準電圧制御回路は、前記第2温度信号に応じた電圧値の前記第2基準電位信号を
前記第2増幅回路に出力し、
前記出力制御回路は、前記第1増幅回路の出力、及び前記第2増幅回路の出力の少なくとも一方に応じた前記温度情報信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
記憶部を備え、
前記記憶部は、前記第1温度情報と前記第1プリントヘッドの周囲温度とに応じた第1基準電圧値と、前記第2温度情報と前記第2プリントヘッドの周囲温度とに応じた第2基準電圧値と、を記憶し、
前記基準電圧制御回路は、前記第1基準電圧値に応じた電圧値の前記第1基準電位信号と、前記第2基準電圧値に応じた電圧値の前記第2基準電位信号と、を出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載のヘッドユニット。
【請求項5】
前記第1温度検出部は、前記第1振動板の他方側の面に積層された配線パターンを含み、
前記配線パターンは、白金を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヘッドユニット。
【請求項6】
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するヘッドユニットと、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を有し、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を検出し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を含み、
前記温度情報出力回路は、
第1基準電位信号と前記第1温度信号との差分を増幅する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路の出力を前記温度情報信号として出力する出力制御回路と、
前記第1基準電位信号の電圧値を制御する基準電圧制御回路と、
を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
前記温度情報出力回路は記憶部を有し、
前記記憶部には、前記第1温度情報と前記第1プリントヘッドの周囲温度とに応じた第1基準電圧値が記憶され、
前記基準電圧制御回路は、前記第1基準電圧値に応じた電圧値の前記第1基準電位信号を出力する、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記ヘッドユニットは、前記駆動信号を受けて液体を吐出する第2プリントヘッドを有し、
前記第2プリントヘッドは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2圧力室の温度に対応する第2温度情報を検出し、第2温度信号として出力する第2温度検出部と、
を有し、
前記温度情報出力回路は、第2基準電位信号と前記第2温度信号との差分を増幅する第2増幅回路を有し、
前記基準電圧制御回路は、前記第2温度信号に応じた電圧値の前記第2基準電位信号を前記第2増幅回路に出力し、
前記出力制御回路は、前記第1増幅回路の出力、及び前記第2増幅回路の出力の少なくとも一方に応じた前記温度情報信号を出力する、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
記憶部を備え、
前記記憶部は、前記第1温度情報と前記第1プリントヘッドの周囲温度とに応じた第1基準電圧値と、前記第2温度情報と前記第2プリントヘッドの周囲温度とに応じた第2基準電圧値と、を記憶し、
前記基準電圧制御回路は、前記第1基準電圧値に応じた電圧値の前記第1基準電位信号と、前記第2基準電圧値に応じた電圧値の前記第2基準電位信号と、を出力する、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第1温度検出部は、前記第1振動板の他方側の面に積層された配線パターンを含み、
前記配線パターンは、白金を含む、
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニット、及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置には、圧電素子と、圧力室と、圧力室と連通するノズルとを有するプリントヘッドを備えた構成が知られている。そして、プリントヘッドは、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで、圧力室に供給された液体をノズルから吐出する。このようなプリントヘッドを備えた液体吐出装置では、プリントヘッドに貯留されるインクの温度に基づいて圧電素子を駆動制御することで、当該インクの温度に適した吐出制御を実現する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電素子、圧力室、及びノズルを有するプリントヘッドの内部に、インクが貯留される圧力室の温度を検出する温度検知部が設けられていることで、温度検知部が検出する温度と圧力室内の温度との温度差を小さくすることができ、圧力室内に貯留されるインクの温度の検出精度を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-124599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の液体吐出装置のように、プリントヘッドの内部に温度検知部を設けた構成では、プリントヘッドの温度の取得精度の向上と観点において、特許文献1に記載の技術では十分でなく、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘッドユニットの一態様は、
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を受けて液体を吐出するヘッドユニットであって、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を備え、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を検出し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有し、
前記温度情報出力回路は、
第1基準電位信号と前記第1温度信号との差分を増幅する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路の出力に応じた前記温度情報信号を出力する出力制御回路と、
前記第1基準電位信号の電圧値を制御する基準電圧制御回路と、
を有する。
【0007】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するヘッドユニットと、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を有し、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を検出し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を含み、
前記温度情報出力回路は、
第1基準電位信号と前記第1温度信号との差分を増幅する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路の出力を前記温度情報信号として出力する出力制御回路と、
前記第1基準電位信号の電圧値を制御する基準電圧制御回路と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体吐出装置の概略構成を示す図である。
図2】プリントヘッドの構造を示す分解斜視図である。
図3】プリントヘッドをZ軸に沿って見た場合の平面図である。
図4図3に示すA-a断面を示す断面図である。
図5図4の要部の詳細を示す要部詳細図である。
図6図3に示すB-b断面を示す断面図である。
図7】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図8】駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
図9】駆動信号選択回路の構成を示す図である。
図10】デコーダーにおけるデコード内容の一例を示す図である。
図11】選択回路の構成を示す図である。
図12】駆動信号選択回路の動作を説明するための図である。
図13】温度情報出力回路の機能構成の一例を示す図である。
図14】増幅回路の構成の具体例を示す図である。
図15】増幅回路に理想的なヘッド温度信号TCが入力された場合における、ヘッド温度信号TCの電圧値とヘッド温度増幅信号ATCの電圧値と、の関係の一例を示す図である。
図16】基準電位信号Vrefの電圧値の調整方法の一例を示す図である。
図17】プリントヘッドの温度動作の一例を説明するための図である。
図18】基準電位信号Vrefの調整前後に増幅回路が出力するヘッド温度増幅信号ATCの一例を示す図である。
図19】基準電位信号Vrefの調整前後に増幅回路が出力するヘッド温度増幅信号ATCの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.液体吐出装置の構造
[液体吐出装置の構造]
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す図である。本実施形態の液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを吐出するプリントヘッド22を搭載したキャリッジ21が走査軸に沿って往復動し、搬送方向に沿って搬送される媒体Pに対してインクを吐出することで、媒体Pに所望画像を形成する所謂シリアル印刷方式のインクジェットプリンターである。また、液体吐出装置1における媒体Pとしては、印刷用紙、樹脂フィルム、布帛等の任意の印刷対象を用いることができる。なお、液体吐出装置1は、シリアル印刷方式のインクジェットプリンターに限るものではなく、ライン印刷方式のインクジェットプリンターであってもよい。また、液体吐出装置1は、インクジェットプリンターに限るものではなく、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出装置、立体造形装置、及び捺染装置等であってもよい。
【0011】
ここで、以下の説明では、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸を用いて説明を行う。また、以下の説明において、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれに沿った方向の向きを特定する場合、図示するX軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+X側、起点側を-X側と称し、図示するY軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+Y側、起点側を-Y側と称し、図示するZ軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+Z側、起点側を-Z側と称する。
【0012】
図1に示すように液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット20、移動ユニット30、搬送ユニット40、及びインク容器90を備える。
【0013】
インク容器90には、媒体Pに吐出される複数種類のインクが貯留されている。このようなインクが貯留されるインク容器90としては、インクカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及びインクの補充が可能なインクタンク等を用いることができる。
【0014】
制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、ヘッドユニット20を含む液体吐出装置1の各要素を制御する。
【0015】
ヘッドユニット20は、キャリッジ21、及び複数のプリントヘッド22を含む。キャリッジ21は、後述する移動ユニット30に含まれる無端ベルト32に固定されている。複数のプリントヘッド22は、キャリッジ21に搭載されている。また、複数のプリント
ヘッド22のそれぞれには、制御ユニット10が出力する制御信号Ctrl-H、及び駆動信号COMが入力される。さらに、複数のプリントヘッド22のそれぞれには、インク容器90に貯留されているインクが、不図示のチューブ等を介して供給される。プリントヘッド22は、入力される制御信号Ctrl-H及び駆動信号COMに基づいて、インク容器90から供給されるインクを吐出する。このとき、プリントヘッド22がインク吐出するZ軸に沿った方向であって、Z軸に沿って-Z側から+Z側に向かう方向を吐出方向と称する場合がある。
【0016】
移動ユニット30は、キャリッジモーター31、及び無端ベルト32を含む。キャリッジモーター31は、制御ユニット10から入力される制御信号Ctrl-Cに基づいて動作する。無端ベルト32は、X軸に沿って延在し、キャリッジモーター31の動作に従って回転する。これにより、無端ベルト32に固定されたキャリッジ21がX軸に沿って移動する。すなわち、移動ユニット30は、キャリッジ21に搭載された複数のプリントヘッド22をX軸に沿って往復動させる。ここで、以下の説明において、キャリッジ21に搭載された複数のプリントヘッド22が移動するX軸に沿った方向を走査方向と称する場合がある。
【0017】
搬送ユニット40は、搬送モーター41、及び搬送ローラー42を含む。搬送モーター41は、制御ユニット10から入力される制御信号Ctrl-Tに基づいて動作する。搬送ローラー42は、媒体Pを挟持した状態で、搬送モーター41の動作に従って回転する。これにより、搬送ローラー42に挟持された媒体PがY軸に沿って-Y側から+Y側に向かい搬送される。すなわち、搬送ユニット40は、媒体PをY軸に沿って-Y側から+Y側に向かい搬送させる。ここで、以下の説明において、媒体Pが搬送される-Y側から+Y側に向かう方向を搬送方向と称する場合がある。
【0018】
以上のように構成された液体吐出装置1は、移動ユニット30が、キャリッジ21の走査方向に沿った往復動を制御するとともに、搬送ユニット40が、媒体Pの搬送方向に沿った方向に搬送を制御する。そして、キャリッジ21の走査方向に沿った往復動と媒体Pの搬送方向への搬送とに連動して、キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド22がインクを吐出する。その結果、プリントヘッド22が吐出するインクを媒体Pの任意の表面に着弾させることができ、媒体Pに所望の画像が形成される。
【0019】
[プリントヘッドの構造]
次に、ヘッドユニット20が有するプリントヘッド22の構造の一例について説明する。図2は、プリントヘッド22の構造を示す分解斜視図であり、図3は、プリントヘッド22をZ軸に沿って見た場合の平面図であり、図4は、図3に示すA-a断面を示す断面図であり、図5は、図4の要部の詳細を示す要部詳細図であり、図6は、図3に示すB-b断面を示す断面図である。
【0020】
図2に示すように、プリントヘッド22は、圧力室基板310、連通板315、ノズルプレート320、コンプライアンス基板345、後述する振動板350、後述する圧電素子60、保護基板330、ケース部材340、及び配線基板420を有する。
【0021】
圧力室基板310は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板等からなる。図3に示すように、圧力室基板310には、複数の圧力室312がY軸に沿って並ぶ圧力室列が、X軸に沿って2列配置されている。ここで、2列の圧力室列のうち、+X側に位置する圧力室列を第1圧力室列と称し、第1圧力室列の-X側に位置する圧力室列を第2圧力室列と称する場合がある。なお、図3は、プリントヘッド22をZ軸に沿って見た場合の平面図であるが、圧力室基板310の周辺構成を図示し、保護基板330、ケース部材340等の図示を省略している。
【0022】
また、各圧力室列を構成する複数の圧力室312は、X軸に沿った位置が同じ位置となるように、Y軸に沿った直線上に配置されている。そして、Y軸に沿って互いに隣り合う圧力室312は、図6に示す隔壁311によって区画されている。もちろん、圧力室312の配置は特に限定されるものではなく、例えば、Y軸に沿って並ぶ複数の圧力室312の配置が、各圧力室312を1つ置きにX軸に沿った方向においてずれて位置する所謂千鳥配置であってもよい。
【0023】
また、本実施形態の圧力室312は、+Z側から見た平面視においてX軸に沿った方向の長さがY軸に沿った方向の長さよりも長い、所謂長方形に形成されている。もちろん、+Z側からの平面視における圧力室312の形状は、長方形に限定されず、平行四辺形状、多角形状、円形状、オーバル形状等であってもよい。ここで、オーバル形状とは、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円状とした形状をいい、角丸長方形状、楕円形状、卵形状などが含まれる。
【0024】
図2に示すように、圧力室基板310の+Z側には、連通板315と、ノズルプレート320及びコンプライアンス基板345とが積層されている。
【0025】
図2図4、及び図5に示すように、連通板315には、圧力室312とノズル321とを連通するノズル連通路316が設けられている。また、連通板315には、複数の圧力室312が連通する共通液室となるマニホールド400の一部を構成する第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318が設けられている。第1マニホールド部317は、連通板315をZ軸に沿った方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部318は、連通板315をZ軸に沿った方向に貫通することなく、+Z側の面に開口して設けられている。
【0026】
さらに、連通板315には、圧力室312のX軸に沿った方向の一方の端部に連通する供給連通路319が、圧力室312の各々に独立して設けられている。供給連通路319は、第2マニホールド部318と各圧力室312とを連通し、マニホールド400内のインクを各圧力室312に供給する。
【0027】
連通板315としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板等を用いることができる。また、金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。なお、連通板315は、熱膨張率が圧力室基板310と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、圧力室基板310及び連通板315の温度が変化した場合であっても、熱膨張率の違いに起因して圧力室基板310及び連通板315に反りが生じるおそれを低減できる。
【0028】
ノズルプレート320は、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、+Z側の面に設けられている。ノズルプレート320には、各圧力室312にノズル連通路316を介して連通するノズル321が形成されている。
【0029】
本実施形態では、プリントヘッド22は複数のノズル321を有し、複数のノズル321は、Y軸に方向に沿って並んで配置されている。具体的には、ノズルプレート320には、複数のノズル321が列設されたノズル列がX軸に沿った方向に離れて2列で設けられている。この2列のノズル列が、第1圧力室列、第2圧力室列にそれぞれ対応している。また、各列の複数のノズル321は、X軸に沿った方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なお、ノズル321の配置は特に限定されるものではなく、例えば、Y軸に沿った方向に並んで配置されるノズル321は、1つ置きにX軸方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0030】
ノズルプレート320の材料としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板を用いることができる。また、金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。さらに、ノズルプレート320の材料としては、ポリイミド樹脂のような有機物などであってもよい。ただし、ノズルプレート320は、連通板315の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、ノズルプレート320及び連通板315の温度が変化した場合であっても、熱膨張率の違いに起因してノズルプレート320及び連通板315に反りが生じるおそれを低減できる。
【0031】
コンプライアンス基板345は、ノズルプレート320とともに、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、+Z側の面に設けられている。このコンプライアンス基板345は、ノズルプレート320の周囲に設けられ、連通板315に設けられた第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318の開口を封止する。コンプライアンス基板345は、可撓性を有する薄膜からなる封止膜346と、金属等の硬質の材料からなる固定基板347と、を含む。そして、固定基板347のマニホールド400に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部348となっている。このため、マニホールド400の一方面は、可撓性を有する封止膜346のみで封止されたコンプライアンス部349となっている。
【0032】
一方、圧力室基板310のノズルプレート320等とは反対側、すなわち-Z側の面には、振動板350と、この振動板350を撓み変形させて圧力室312内のインクに圧力変化を生じさせる圧電素子60とが積層されている。換言すると、振動板350は、圧電素子60に対してZ軸に沿った方向の+Z側に設けられ、圧力室基板310は振動板350に対してZ軸に沿った方向の+Z側に設けられている。なお、図4は、プリントヘッド22の全体構成を説明するための図であり、圧電素子60の構成については簡略化している。
【0033】
さらに、圧力室基板310の-Z側の面には、圧力室基板310と略同じ大きさを有する保護基板330が接着剤等によって接合されている。保護基板330は、圧電素子60を保護する空間である保持部331を有する。保持部331は、Y軸に沿った方向に並んで配置された圧電素子60の列毎に独立して設けられた空間であって、X軸に沿った方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板330には、X軸に沿った方向に並んで配置された2つの保持部331の間にZ軸に沿った方向に貫通する貫通孔332が設けられている。
【0034】
また、保護基板330上には、複数の圧力室312に連通するマニホールド400を圧力室基板310とともに画成するケース部材340が固定されている。ケース部材340は、-Z側からの平面視において上述した連通板315と略同一形状を有し、保護基板330に接合されるとともに、上述した連通板315にも接合されている。
【0035】
このようなケース部材340は、保護基板330側に、圧力室基板310及び保護基板330を収容可能な深さの空間である収容部341を有する。収容部341は、保護基板330の圧力室基板310に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容部341に圧力室基板310及び保護基板330が収容された状態で、収容部341のノズルプレート320側の開口面が連通板315によって封止されている。
【0036】
また、ケース部材340には、X軸に沿った方向における収容部341の両外側のそれぞれには、第3マニホールド部342が画成されている。そして、連通板315に設けられた第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318と、第3マニホールド部3
42と、によってマニホールド400が構成されている。マニホールド400は、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられており、各圧力室312とマニホールド400とを連通する供給連通路319は、Y軸に沿った方向に並んで配置されている。
【0037】
また、ケース部材340には、マニホールド400に連通して各マニホールド400にインクを供給するための供給口344が設けられている。さらに、ケース部材340には、保護基板330の貫通孔332に連通して配線基板420が挿通される接続口343が設けられている。
【0038】
このようなプリントヘッド22は、インク容器90に貯留されたインクを供給口344から取り込む。そして、マニホールド400からノズル321に至るまで内部を当該インクで満たした後、集積回路421から、圧力室312に対応するそれぞれの圧電素子60に駆動信号COMに基づく信号が供給される。これにより圧電素子60とともに振動板350がたわみ変形し、各圧力室312内の圧力が高まり、各ノズル321からインクが吐出される。
【0039】
次に、上述した振動板350、圧電素子60を含む、圧力室基板310の-Z側に積層形成される構成について説明する。プリントヘッド22は、圧力室基板310の-Z側に積層される構成として、振動板350、圧電素子60に加え、個別リード電極391、共通リード電極392、測定用リード電極393、及び抵抗配線401を有する。
【0040】
図4図6に示すように、振動板350は、圧力室基板310側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜351と、弾性膜351上に設けられた酸化ジルコニウム膜からなる絶縁体膜352と、を含んで構成されている。圧力室312等の液体流路は、圧力室基板310を+Z側の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力室312等の液体流路の-Z側の面は、弾性膜351で構成されている。なお、振動板350の構成は特に限定されるものではなく、例えば、弾性膜351と絶縁体膜352とのいずれか一方で構成されていてもよく、さらには、弾性膜351及び絶縁体膜352以外のその他の膜が含まれていてもよい。ここで、振動板350を構成するその他の膜の材料としては、例えば、シリコン、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0041】
圧電素子60は、圧力室312内のインクに圧力変化を生じさせる圧電アクチュエーターとして機能する。この圧電素子60は、振動板350側である+Z側から-Z側に向かって順次積層された電極360と、圧電体370と、電極380とを有する。換言すると、圧電素子60は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層されるZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に設けられている。
【0042】
電極360及び電極380は、いずれも配線基板420と電気的に接続されている。そして、配線基板420に実装される集積回路421から供給される信号が電極360に供給され、配線基板420を伝搬する基準電位の信号が電極380に供給されることで、圧電体370に、集積回路421から供給される信号と基準電位の信号とが供給される。そして、電極360と電極380との間に生じた電位差により圧電体370が変形する。この圧電体370の変形により、振動板350が変形又は振動し、振動板350の変形により圧力室312の容積が変化する。そして、圧力室312の容積変化によって生じた圧力の変化が、圧力室312に収容されているインクに付与されることで、圧力室312に収容されているインクが、ノズル連通路316を介してノズル321から吐出される。このとき、ノズル321から吐出されるインクの吐出量は、圧力室312の容積変化量となる。
【0043】
ここで、以下の説明において、圧電素子60の内、電極360と電極380との間に電圧を印加した際に、圧電体370に圧電歪みが生じる部分を活性部410と称し、圧電体370に圧電歪みが生じない部分を非活性部415と称する。すなわち、圧電素子60の内、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれた部分が活性部410に相当し、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれていない部分が非活性部415に相当する。また、圧電素子60を駆動させた際、Z軸に沿った方向に変位する部分を可撓部と称し、Z軸に沿った方向に変位しない部分を非可撓部と称する。すなわち、圧電素子60の内、圧力室312にZ軸に沿った方向で対向する部分が可撓部に相当し、圧力室312の外側部分が非可撓部に相当する。なお、活性部410は能動部、非活性部415は非能動部と称する場合がある。
【0044】
一般的には、活性部410のいずれか一方の電極を活性部410毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部410に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、集積回路421が出力する信号が供給される電極360を個別電極として構成し、配線基板420を伝搬する基準電位の信号が供給される電極380を共通電極として構成しているとして説明を行う。
【0045】
具体的には、電極360は、圧電体370に対して+Z側に設けられ、圧力室312毎に切り分けられて活性部410毎に独立する個別電極を構成する。すなわち、電極360は、複数の圧力室312に対して個別に設けられる。電極360は、Y軸に沿った方向において、圧力室312の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、Y軸に沿った方向において、電極360の端部は、圧力室312に対向する領域の内側に位置している。
【0046】
また、電極360の+X側の端部360a及び-X側の端部360bは、それぞれ圧力室312の外側に配置されている。例えば、第1圧力室列では、図5に示すように、電極360の端部360aは、圧力室312の+X側の端部312aよりも+X側に配置されている。電極360の端部360bは、圧力室312の-X側の端部312bよりも-X側に配置されている。
【0047】
電極360の材料は特に限定されないが、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、電極360として白金(Pt)を用いた。
【0048】
圧電体370は、図3に示すように、X軸に沿った方向の長さを所定長さとして、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。すなわち、圧電体370は、所定の厚さで圧力室312の並設方向に沿って連続して設けられている。圧電体370の厚さは特に限定されないが、1000ナノメートルから4000ナノメートル程度の厚さで形成される。
【0049】
また、図5に示すように、圧電体370のX軸に沿った方向の長さは、圧力室312の長手方向であるX軸に沿った方向の長さよりも長い。このため、圧力室312のX軸に沿った方向の両側では、圧電体370は、圧力室312の外側まで延在している。このように、圧電体370がX軸に沿った方向において圧力室312の外側まで延在していることで、振動板350の強度が向上する。したがって、活性部410を駆動させて圧電素子60を変位させた際、振動板350や圧電素子60にクラック等が発生するおそれを低減することができる。
【0050】
また、例えば、第1圧力室列では、図5に示すように、圧電体370の+X側の端部3
70aは、電極360の端部360aよりも外側となる+X側に位置している。すなわち、電極360の端部360aは圧電体370によって覆われている。一方、圧電体370の-X側の端部370bは、電極360の端部360bよりも内側となる+X側に位置しており、電極360の端部360bは、圧電体370では覆われていない。
【0051】
なお、圧電体370には、図3及び図6に示すように、各隔壁311に対応して他の領域よりも厚さが薄い部分である溝部371が形成されている。本実施形態の溝部371は、圧電体370をZ軸に沿った方向に完全に除去することで形成されている。すなわち、圧電体370が他の領域よりも厚さの薄い部分を有するとは、圧電体370がZ軸に沿った方向に完全に除去されたものも含む。もちろん、溝部371の底面に圧電体370が他の部分よりも薄く形成されていてもよい。
【0052】
また、溝部371のY軸に沿った方向の長さ、つまり溝部371の幅は、隔壁311の幅と同一もしくは、それより広くなっている。本実施形態では、溝部371の幅は、隔壁311の幅よりも広くなっている。このような溝部371は、-Z側からの平面視において、矩形状となるように形成されている。もちろん、溝部371の-Z側からの平面視した形状は、矩形状に限定されず、5角形以上の多角形状であってもよく、円形状や楕円形状等であってもよい。
【0053】
圧電体370に溝部371を設けることにより、振動板350の圧力室312のY軸に沿った方向の端部に対向する部分、いわゆる振動板350の腕部の剛性が抑えられるため、圧電素子60をより良好に変位させることができる。
【0054】
圧電体370としては、電極360上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜、所謂ペロブスカイト型結晶が挙げられる。圧電体370の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等を用いることができる。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。本実施形態では、圧電体370として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
【0055】
また、圧電体370の材料としては、鉛を含む鉛系の圧電材料に限定されず、鉛を含まない非鉛系の圧電材料を用いることもできる。非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス((BiFeO3)、略「BFO」)、チタン酸バリウム((BaTiO3)、略「BT」)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)(NbO3)、略「KNN」)、ニオブ酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(NbO3))、ニオブ酸タンタル酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(Nb,Ta)O3)、チタン酸ビスマスカリウム((Bi1/2K1/2)TiO3、略「BKT」)、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi1/2Na1/2)TiO3、略「BNT」)、マンガン酸ビスマス(BiMnO3、略「BM」)、ビスマス、カリウム、チタン及び鉄を含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物(x[(BixK1-x)TiO3]-(1-x)[BiFeO3]、略「BKT-BF」)、ビスマス、鉄、バリウム及びチタンを含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物((1-x)[BiFeO3]-x[BaTiO3]、略「BFO-BT」)や、これにマンガン、コバルト、クロムなどの金属を添加したもの((1-x)[Bi(Fe1-yMy)O3]-x[BaTiO3](Mは、Mn、Co又はCr))等が挙げられる。
【0056】
電極380は、図3図5、及び図6に示すように、圧電体370に対して、電極360とは反対側である-Z側に設けられ、複数の活性部410に共通する共通電極を構成する。すなわち、電極380は、複数の圧力室312に対して共通に設けられている。電極380は、X軸に沿った方向の長さを所定長さとして、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。この電極380は、溝部371の内面、すなわち圧電体370の溝部371の側面上及び溝部371の底面である絶縁体膜352上にも設けられている。なお、溝部371内に関しては、電極380は、溝部371の内面の一部のみに設けられていてもよく、溝部371の内面の全面に亘って設けられていなくてもよい。
【0057】
また、例えば、第1圧力室列では、図5に示すように、電極380の+X側の端部380aが、圧電体370で覆われている電極360の端部360aよりも外側となるように+X側に配置されている。すなわち、電極380の端部380aは、圧力室312の端部312aよりも外側となる+X側で、電極360の端部360aよりも外側となる+X側に位置している。本実施形態では、電極380の端部380aは、X軸に沿った方向において、圧電体370の端部370aと実質的に一致している。このため、活性部410の+X側の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極360の端部360aによって規定されている。
【0058】
一方、電極380の-X側の端部380bは、圧力室312の-X側の端部312bよりも外側となる-X側であって、圧電体370の端部370bよりも内側となる+X側に配置されている。上述のように圧電体370の端部370bは、電極360の端部360bよりも+X側となる内側に位置している。したがって、電極380の端部380bは、電極360の端部360bよりも+X側となる圧電体370上に位置している。このため、電極380の端部380bの-X側には、圧電体370の表面が露出された部分が存在する。
【0059】
このように電極380の端部380bは、圧電体370の端部370b、及び電極360の端部360bよりも+X側に配置されている。そのため、活性部410の-X側の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極380の端部380bによって規定される。
【0060】
電極380の材料は特に限定されないが、電極360と同様に、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、電極380としてイリジウム(Ir)を用いた。
【0061】
また、電極380の端部380bの外側、すなわち電極380の端部380bのさらに-X側には、電極380と同一層となるが、電極380とは電気的に不連続となる配線部385が設けられている。また、配線部385は、電極380の端部380bと接触しないように間隔を空けた状態で、圧電体370上から圧電体370よりも-X側に延設された電極360上に亘って形成されている。この配線部385は、活性部410毎に独立して設けられている。すなわち、配線部385は、Y軸に沿った方向において所定の間隔で複数配置されている。なお、配線部385は、電極380とは別の層で形成されていてもよいが、電極380と同一層で形成することが好ましい。これにより、配線部385の製造工程を簡略化してコストの低減を図ることができる。
【0062】
また、圧電素子60を構成する電極360と電極380とには、電極360には個別リード電極391が接続され、電極380には駆動用共通電極である共通リード電極392がそれぞれ電気的に接続されている。個別リード電極391、及び共通リード電極392
の圧電素子60に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有する配線基板420が電気的に接続されている。配線基板420には、制御ユニット10、温度情報出力回路26、及び不図示の複数の回路と接続するための複数の配線が形成されている。本実施形態において、配線基板420は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)により構成されている。なお、FPCに代えて、FFC(Flexible Flat Cable)など、可撓性を有する任意の基板により構成されてもよい。
【0063】
本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、この貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。また、配線基板420には、圧電素子60を駆動するための信号を出力する集積回路421が実装されている。
【0064】
個別リード電極391及び共通リード電極392は、本実施形態では、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、個別リード電極391と共通リード電極392とをそれぞれ個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、個別リード電極391と共通リード電極392とを異なる層で形成してもよい。
【0065】
個別リード電極391及び共通リード電極392の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392として金(Au)を用いた。また、個別リード電極391及び共通リード電極392は、電極360及び電極380や振動板350との密着性を向上する密着層を有してもよい。
【0066】
個別リード電極391は、活性部410毎、すなわち、電極360毎に設けられたものである。図5に示すように、例えば、第1圧力室列では、個別リード電極391は、配線部385を介して、圧電体370の外側に設けられた電極360の端部360b付近に接続され、圧力室基板310上、実際には振動板350上まで-Xに沿った方向に引き出されている。
【0067】
一方、図3に示すように、例えば、第1圧力室列では、共通リード電極392は、Y軸に沿った方向の両端部において、圧電体370上の共通電極を構成する電極380上から振動板350上にまで-X側に引き出されている。また、共通リード電極392は、延設部392a、及び延設部392bを有する。図3図5に示すように、例えば、第1圧力室列では、延設部392aは、圧力室312の端部312aに対応する領域にY軸に沿った方向に沿って延設され、延設部392bは、圧力室312の端部312bに対応する領域にY軸に沿った方向に沿って延設される。これら延設部392a、及び延設部392bは、複数の活性部410に対してY軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。
【0068】
また、延設部392a、及び延設部392bは、X軸に沿った方向において、圧力室312の内側から圧力室312の外側まで延設されている。本実施形態では、圧電素子60の活性部410は、圧力室312のX軸に沿った方向の両端部において圧力室312の外側まで延設されており、延設部392a、及び延設部392bは、この活性部410上を圧力室312の外側まで延設されている。
【0069】
図5に示すように、振動板350の-Z側の面には、抵抗配線401が設けられる。抵抗配線401は、電気抵抗値が温度によって変化する特性を利用し、圧力室312の温度を検出する。このような抵抗配線401の材料としては、電気抵抗値が温度依存性を有する材料であって、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウ
ム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。このうち、白金(Pt)は、温度による抵抗値変化が大きく、また、安定性と精度が高い。さらに、白金(Pt)は、温度変化に対する抵抗値の変化の線形性も高い。係る観点から抵抗配線401の材料としては、白金(Pt)が好適に採用される。すなわち、抵抗配線401は、白金(Pt)を含んで構成されていることが好ましい。また、本実施形態では、抵抗配線401を、電極360と同層であって、電極360と電気的に不連続となるように、振動板350の-Z側の面に積層形成されている。すなわち、抵抗配線401は、振動板350のZ軸に沿った方向における-Z側の面に積層された配線パターンを含み、当該配線パターンは、白金(Pt)を含む。
【0070】
図3に示すように、抵抗配線401の一端は測定用リード電極393aと接続され、抵抗配線401の他端は測定用リード電極393bと接続されている。また、測定用リード電極393a,393bは、配線基板420と電気的に接続されている。これにより、抵抗配線401が検出した圧力室312の温度であって、圧力室312の温度によって変化する電気抵抗値に応じた電圧値の信号が、プリントヘッド22から出力される。また、本実施形態では、抵抗配線401は、圧電体370に覆われており、Z軸に沿った方向において、振動板350と圧電体370との間に位置している。
【0071】
抵抗配線401は、X軸に沿った方向において+X側に位置する第1圧力室列側蛇行パターンと、X軸に沿った方向において-X側に位置する第2圧力室列側蛇行パターンと、を含む。第1圧力室列側蛇行パターンは、-Z側から見て、第1圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と重なるように位置し、Y軸に沿った方向に蛇行している。第2圧力室列側蛇行パターンは、-Z側から見て、第2圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と重なるように位置し、Y軸に沿った方向に蛇行している。すなわち、抵抗配線401は、複数の圧力室312が形成する第1圧力室列に対応する第1圧力室列側蛇行パターンと、複数の圧力室312が形成する第2圧力室列に対応する第2圧力室列側蛇行パターンと、を含む。
【0072】
また、図4図5に示すように、圧力室312の-Z側の端部と抵抗配線401とのZ軸に沿った方向における距離は、圧力室312のZ軸に沿った方向における寸法より短い。また、例えば、第1圧力室列では、圧力室312の+X側の端部312aと抵抗配線401とのX軸に沿った方向における最長距離は、圧力室312のX軸に沿った方向における寸法より短い。このため、抵抗配線401の電気抵抗値は、圧力室312の温度変化に対応して変化しやすい。
【0073】
測定用リード電極393a及び測定用リード電極393bを含む測定用リード電極393は、本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392と同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、測定用リード電極393を、個別リード電極391及び共通リード電極392と個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、測定用リード電極393を、個別リード電極391及び共通リード電極392と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0074】
測定用リード電極393の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、測定用リード電極393として金(Au)を用いた。よって、測定用リード電極393の材料は、個別リード電極391及び共通リード電極392と同じ材料である。また、測定用リード電極393は、抵抗配線401や振動板350との密着性を向上する密着層を有していてもよい。
【0075】
以上のように、本実施形態では、測定用リード電極393は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。これにより、圧力室312の温度によって変化する抵抗配線401の電気抵抗値が配線基板420を介してプリントヘッド22から出力される。
【0076】
すなわち、本実施形態のヘッドユニット20が有するプリントヘッド22は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層されるZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に位置し、駆動信号COMを受けて駆動する圧電素子60と、圧電素子60に対してZ軸に沿った方向の一方側である+Z側に位置し、圧電素子60の駆動により変形する振動板350と、振動板350に対してZ軸に沿った方向の一方側である+Z側に位置し、振動板350の変形により容積が変化する圧力室312が設けられている圧力室基板310と、圧力室312の容積の変化に応じてインクを吐出するノズル321と、振動板350に対してZ軸に沿った方向の他方側である-Z側に位置し、圧力室312の温度に応じた温度を取得する抵抗配線401と、を含む。
【0077】
2.液体吐出装置の機能構成
[液体吐出装置の機能構成]
次に、液体吐出装置1の機能構成について説明する。図7は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図7に示すように液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット20、キャリッジモーター31、搬送モーター41、及びリニアエンコーダー92を備える。
【0078】
制御ユニット10は、駆動回路50、基準電圧出力回路52、及び制御回路100を有する。制御回路100は、例えば、CPUやFPGA等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含む。制御回路100には、液体吐出装置1の外部と通信可能に接続されたホストコンピューター等の外部機器から画像データ等を含む画像情報信号が入力される。制御回路100は、入力される画像情報信号に基づいて、液体吐出装置1を制御するための各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0079】
具体例には、制御回路100には、上述した画像情報信号に加えて、リニアエンコーダー92から、ヘッドユニット20に含まれる上述したキャリッジ21の走査位置に基づく検出信号が入力される。これにより、制御回路100は、キャリッジ21の走査位置であって、プリントヘッド22を含むヘッドユニット20の走査位置を把握する。そして、制御回路100は、入力される画像情報信号と、把握したヘッドユニット20の走査位置とに応じた各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0080】
詳細には、制御回路100は、ヘッドユニット20の走査位置に応じて、ヘッドユニット20の走査軸に沿った移動を制御するための制御信号Ctrl-Cを生成し、キャリッジモーター31に出力する。これにより、キャリッジモーター31が動作し、キャリッジ21に搭載されたヘッドユニット20の走査軸に沿った移動、及び走査位置が制御される。また、制御回路100は、媒体Pの搬送を制御するための制御信号Ctrl-Tを生成し、搬送モーター41に出力する。これにより、搬送モーター41が動作し、媒体Pの搬送方向に沿った移動が制御される。なお、制御信号Ctrl-Cは、不図示のドライバー回路を介して信号変換された後、キャリッジモーター31に入力されてもよく、制御信号Ctrl-Tは、不図示のドライバー回路を介して信号変換された後、搬送モーター41に入力されてもよい。
【0081】
また、制御回路100は、外部機器から入力される画像情報信号と、ヘッドユニット2
0の走査位置と、に基づいて、ヘッドユニット20を制御するための制御信号Ctrl-Hとして、印刷データ信号SI1~SIn、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKを生成し、ヘッドユニット20に出力する。さらに、制御回路100は、所定のタイミングでヘッドユニット20の温度を取得するための温度取得要求信号TDを生成し、ヘッドユニット20に出力する。このとき、制御回路100には、温度取得要求信号TDに応じたヘッドユニット20の温度を含む温度情報信号TIが入力される。制御回路100は、入力される温度情報信号TIに基づいて、ヘッドユニット20の状態を把握するとともに、制御信号Ctrl-H,Ctrl-C,Ctrl-Tを補正し、対応する構成に出力する。これにより、プリントヘッド22の温度であって、温度情報信号TIに応じて液体吐出装置1、及びヘッドユニット20の動作が制御される。その結果、液体吐出装置1、及びヘッドユニット20から吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0082】
また、制御回路100は、制御信号Ctrl-Hとして、デジタル信号である基駆動信号dA1を生成し、駆動回路50に出力する。駆動回路50は、駆動信号COMとして、基駆動信号dA1によって規定される信号波形の駆動信号COMを生成し、ヘッドユニット20に出力する。
【0083】
具体的には、制御回路100が出力する基駆動信号dA1は、駆動回路50に入力される。駆動回路50は、入力される基駆動信号dA1をデジタル/アナログ信号変換した後、変換されたアナログ信号をD級増幅することで駆動信号COMを生成し、ヘッドユニット20に出力する。すなわち、制御回路100は、温度情報信号TIに基づいて補正した制御信号Ctrl-Hとしての基駆動信号dA1を出力し、駆動回路50は、温度情報信号TIに基づいて補正された基駆動信号dA1に応じた補正された駆動信号COMを出力する。ここで、制御回路100が出力する基駆動信号dA1は、駆動信号COMの信号波形を規定するデジタル信号であるとして説明を行うが、基駆動信号dA1は、駆動信号COMの信号波形を規定することができればよく、アナログ信号であってもよい。また、駆動回路50は、基駆動信号dA1によって規定される信号波形をA級増幅、B級増幅、AB級増幅することで、駆動信号COMを生成してもよい。
【0084】
基準電圧出力回路52は、基準電圧信号VBSを生成し、ヘッドユニット20に出力する。この基準電圧信号VBSは、圧電素子60の駆動の基準となる電圧値が一定の信号であって、共通電極である電極380に供給される。このような基準電圧信号VBSの電圧値は、例えば、グラウンド電位で一定の信号であってもよく、5.5Vや6V等の電位で一定であってもよい。
【0085】
ヘッドユニット20は、複数のプリントヘッド22としてのプリントヘッド22-1~22-nと、温度情報出力回路26と、温度検出回路28と、を有する。また、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれは、駆動信号選択回路200、温度検出回路24、及び複数の圧電素子60を含む。
【0086】
プリントヘッド22-1には、制御回路100が出力する印刷データ信号SI1、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、クロック信号SCK、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力される。プリントヘッド22-1に入力されたクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SI1、及び駆動信号COMは、駆動信号選択回路200に入力される。駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SI1に基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の圧電素子60のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成する。そして、駆動信号選択回路200は、生成した駆動信号VOUTを、対応する圧電素子60のそれぞれの一端であって、個別電極である電極360のそれぞれに出力する。また、複数の圧電素子60の他端であ
って、共通電極である電極380には、基準電圧信号VBSが共通に入力されている。そして、複数の圧電素子60のそれぞれは、電極360に入力される駆動信号VOUTと、電極380に入力される基準電圧信号VBSとの電位差により変位する。これにより、圧電素子60の変位に応じた量のインクが、プリントヘッド22-1が有する対応するノズル321から吐出される。ここで、プリントヘッド22-1が有する駆動信号選択回路200の少なくとも一部が、上述した集積回路421としてプリントヘッド22-1の配線基板420に実装されている。
【0087】
また、プリントヘッド22-1が有する温度検出回路24は、プリントヘッド22-1の温度を検出する。そして、温度検出回路24は、検出したプリントヘッド22-1の温度に応じた電圧値のヘッド温度情報tc1を取得し、取得したヘッド温度情報tc1を含むヘッド温度信号TC1を温度情報出力回路26に出力する。ここで、プリントヘッド22-1が有する温度検出回路24の少なくとも一部が、上述した抵抗配線401としてプリントヘッド22-1に設けられている。すなわち、温度検出回路24が出力するプリントヘッド22-1の温度に応じた電圧値のヘッド温度情報tc1には、温度によって変化する抵抗配線401の抵抗値に応じて変化する電圧値の情報が含まれる。
【0088】
また、プリントヘッド22-2~22-nは、入力される信号、及び出力する信号が異なるのみでプリントヘッド22-1と同様の構成であり、同様の動作を実行する。具体的には、プリントヘッド22-i(iは2~nのいずれか)には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SIi、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力される。そして、プリントヘッド22-iが有する駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIiに基づいて、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の圧電素子60のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60の電極360に出力する。また、プリントヘッド22-iが有する複数の圧電素子60の電極380には、基準電圧信号VBSが共通に入力されている。これにより、プリントヘッド22-iが有する複数の圧電素子60が駆動し、圧電素子60の駆動に応じた量のインクが、プリントヘッド22-iが有するノズル321から吐出される。また、プリントヘッド22-iが有する温度検出回路24は、プリントヘッド22-iの温度に応じた電圧値のヘッド温度情報tciを取得し、取得したヘッド温度情報tciを含むヘッド温度信号TCiを温度情報出力回路26に出力する。ここで、プリントヘッド22-iが有する駆動信号選択回路200の少なくとも一部が、上述した集積回路421として、プリントヘッド22-iの配線基板420に実装され、プリントヘッド22-iが有する温度検出回路24の少なくとも一部が、上述した抵抗配線401として、プリントヘッド22-iに設けられている。
【0089】
以下の説明において、プリントヘッド22-1~22-nを区別する必要がない場合のプリントヘッド22には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHと、印刷データ信号SI1~SInとしての印刷データ信号SIと、駆動信号COMと、基準電圧信号VBSと、が入力されるとして説明を行う。そして、プリントヘッド22の温度検出回路24は、プリントヘッド22の温度に応じた電圧値のヘッド温度情報tc1~tcnとしてのヘッド温度情報tcを取得し、プリントヘッド22は、取得したヘッド温度情報tcを含むヘッド温度信号TC1~TCnとしてのヘッド温度信号TCを出力するとして説明を行う。
【0090】
温度検出回路28は、プリントヘッド22-1~22-nを含むヘッドユニット20の温度を検出する。そして、温度検出回路28は、検出した温度に応じた電圧値のユニット温度情報thを含むユニット温度信号THを生成する。温度検出回路28は、生成したユニット温度信号THを温度情報出力回路26、及び制御回路100に出力する。このよう
な温度検出回路28は、ヘッドユニット20の温度変化に応じて抵抗値が変化するサーミスター素子等を含んで構成される。
【0091】
温度情報出力回路26には、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれが出力するヘッド温度信号TC1~TCnと、温度検出回路28が出力するユニット温度信号THと、制御回路100が出力する温度取得要求信号TDと、が入力される。
【0092】
温度情報出力回路26は、ユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thに基づいて、ヘッド温度信号TC1~TCnを補正し増幅する。その後、温度情報出力回路26は、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに応じたヘッド温度情報tc1~tcnに基づく信号を、温度情報信号TIとして制御回路100に出力する。なお、温度情報出力回路26の構成、及び動作の具体例については後述する。
【0093】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1において、制御回路100は、温度情報信号TIに基づいて補正されたクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIを含む制御信号Ctrl-Hを出力し、駆動回路50は、温度情報信号TIに基づいて補正された駆動信号COMを出力する。そして、ヘッドユニット20は、制御信号Ctrl-Hと駆動信号COMとを受けてインクを吐出する。また、ヘッドユニット20は、駆動信号COMを受けてインクを吐出するプリントヘッド22-1~22-nと、プリントヘッド22-1~22-nの温度を示す温度情報信号TIを出力する温度情報出力回路26と、を有する。
【0094】
[駆動信号COMの信号波形と駆動信号選択回路の機能構成]
次に、プリントヘッド22が有する駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。前述の通り、プリントヘッド22が有する駆動信号選択回路200は、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60に出力する。そこで、駆動信号選択回路200の構成、及び動作を説明するにあたり、まず、駆動信号選択回路200に入力される駆動信号COMの波形の一例について説明する。
【0095】
図8は、駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。図8に示すように、駆動信号COMは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間t1に配置された台形波形Adpと、チェンジ信号CHが立ち上がってから次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間t2に配置された台形波形Bdpと、チェンジ信号CHが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間t3に配置された台形波形Cdpと、を含む。台形波形Adpは、所定量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形であり、台形波形Bdpは、所定量よりも少量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形であり、台形波形Cdpは、インクが吐出されない程度に圧電素子60を駆動する信号波形である。ここで、台形波形Cdpが圧電素子60に供給された場合、当該圧電素子60は、対応するノズル開孔部付近のインクを振動させることで、ノズル開孔部付近のインク粘度が増大するおそれを低減するための信号波形である。
【0096】
また、台形波形Adp,Bdp,Cdpは、それぞれの開始タイミング及び終了タイミングでの電圧値がいずれも電圧Vcで共通の信号波形である。すなわち、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する。
【0097】
以下の説明において、圧電素子60に台形波形Adpが供給された場合に、吐出される所定量のインクの量を中程度の量と称し、圧電素子60に台形波形Bdpが供給された場
合に、吐出される所定量のよりも少ないインクの量を小程度の量と称する場合がある。また、圧電素子60に台形波形Cdpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応するノズル開孔部付近のインクを振動させてインク粘度の増大を防止するための動作を微振動と称する場合がある。なお、図8に示す駆動信号COMの信号波形は一例であってこれに限られるものではない。駆動信号COMの信号波形は、吐出されるインクの性質やインクが着弾する媒体Pの材質等に応じて、様々な波形の組み合わせが用いられてもよい。
【0098】
そして、駆動信号選択回路200は、期間t1,t2,t3を含む周期tpにおいて、駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpを選択、又は非選択とする。これにより、駆動信号選択回路200は、周期tpにおいて複数のノズル321のそれぞれから吐出されるインクの吐出量を制御する。すなわち、駆動信号選択回路200は、周期tpにおいて媒体Pに形成されるドットサイズを制御する。この期間t1,t2,t3を含む周期tpにおいて、媒体Pに所定のサイズのドットが形成される。この所定のサイズのドットが形成される周期tpがドット形成周期に相当する。
【0099】
次に、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成する駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。図9は、駆動信号選択回路200の構成を示す図である。図9に示すように、駆動信号選択回路200は、選択制御回路210と、複数の圧電素子60と同数の複数の選択回路230を有する。なお、以下の説明では、プリントヘッド22は、p個の圧電素子60を有するとして説明を行う。すなわち、駆動信号選択回路200は、p個の選択回路230を有する。
【0100】
選択制御回路210には、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHが入力される。また、選択制御回路210には、シフトレジスター(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、p個の圧電素子60の各々に対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200は、p個のシフトレジスター212と、p個のラッチ回路214と、p個のデコーダー216とを含む。
【0101】
印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して選択制御回路210に入力される。また、印刷データ信号SIは、「大ドットLD」、「中ドットMD」、「小ドットSD」及び「非記録ND」のいずれかを選択するための2ビットの印刷データ[SIH,SIL]をp個の圧電素子60の各々に対応してシリアルに含む。印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]は、p個の圧電素子60に対応するp個のシフトレジスター212に保持される。具体的には、圧電素子60に対応したp個のシフトレジスター212が互いに縦続接続しているとともに、シリアルで入力された印刷データ信号SIが、クロック信号SCKに従って順次後段のシフトレジスター212に転送される。そして、印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持されることで、クロック信号SCKが停止する。これにより、印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持される。なお、図9には、p個のシフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが入力される上流側から順番に1段、2段、…、p段と表記している。
【0102】
p個のラッチ回路214の各々は、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応するシフトレジスター212に保持された印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。そして、ラッチ回路214がラッチした印刷データ[SIH,SIL]は、対応するデコーダー216に入力される。図10は、デコーダー216におけるデコード内容の一例を示す図である。デコーダー216は、期間t1,t2,t3のそれぞれにおいて、入力される印刷データ[SIH,SIL]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力する。例えば、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコ
ーダー216は、選択信号Sの論理レベルを、期間t1,t2,t3においてH,L,Lレベルとして出力する。
【0103】
デコーダー216が出力する選択信号Sは、選択回路230に入力される。選択回路230は、p個の圧電素子60のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200は、p個の圧電素子60と同数のp個の選択回路230を有する。図11は、選択回路230の構成を示す図である。図11に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232とトランスファーゲート234とを含む。
【0104】
選択信号Sは、トランスファーゲート234において丸印が付されていない正制御端に入力されるとともに、インバーター232によって論理レベルが反転された後、トランスファーゲート234において丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234の入力端には、駆動信号COMが供給されている。そして、トランスファーゲート234は、ハイレベルの選択信号Sが入力された場合に入力端と出力端との間を導通とし、ローレベルの選択信号Sが入力された場合に入力端と出力端との間を非導通とする。すなわち、トランスファーゲート234は、選択信号Sの論理レベルがハイレベルの場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力し、選択信号Sの論理レベルがローレベルの場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力しない。そして、駆動信号選択回路200は、選択回路230が有するトランスファーゲート234の出力端に出力された信号を、駆動信号VOUTとして出力する。
【0105】
ここで、図12を用いて駆動信号選択回路200の動作について説明する。図12は、駆動信号選択回路200の動作を説明するための図である。印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期したシリアル信号として選択制御回路210に入力される。そして、印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して、p個の圧電素子60に対応するp個のシフトレジスター212において順次転送される。その後、クロック信号SCKの入力が停止すると、シフトレジスター212には、p個の圧電素子60の各々に対応した印刷データ[SIH,SIL]が保持される。なお、印刷データ信号SIは、シフトレジスター212のp段、…、2段、1段の圧電素子60に対応した順に入力される。
【0106】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスター212に保持されている印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。なお、図14に示すLT1、LT2、…、LTpは、1段、2段、…、p段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた印刷データ[SIH,SIL]を示す。
【0107】
デコーダー216は、ラッチされた印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間t1,t2,t3のそれぞれにおいて、選択信号Sの論理レベルを図12に示す内容で出力する。そして、選択回路230が、デコーダー216が出力する選択信号Sの論理レベルに応じて駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成する。
【0108】
具体的には、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間t1,t2,t3においてH,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpを選択し、期間t2において台形波形Bdpを選択し、期間t3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0109】
「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間
t1において中程度の量のインクが吐出され、期間t2において小程度の量のインクが吐出され、期間t3においてインクが吐出されない。そして、吐出された中程度の量のインクと小程度の量のインクとが、媒体Pに着弾し結合することで、媒体Pに「大ドットLD」が形成される。
【0110】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間t1,t2,t3においてH,L,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpを選択し、期間t2において台形波形Bdpを選択せず、期間t3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0111】
「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間t1において中程度の量のインクが吐出され、期間t2においてインクが吐出されず、期間t3においてインクが吐出されない。そして、吐出された中程度の量のインクが媒体Pに着弾することで、媒体Pに「中ドットMD」が形成される。
【0112】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間t1,t2,t3においてL,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpを選択せず、期間t2において台形波形Bdpを選択し、期間t3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0113】
「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間t1においてインクが吐出されず、期間t2において小程度の量のインクが吐出され、期間t3においてインクが吐出されない。そして、吐出された小程度の量のインクが媒体Pに着弾することで、媒体Pに「小ドットSD」が形成される。
【0114】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間t1,t2,t3においてL,L,Hレベルとする。これにより、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpを選択せず、期間t2において台形波形Bdpを選択せず、期間t3において台形波形Cdpを選択する。その結果、駆動信号選択回路200は、「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0115】
「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間t1においてインクが吐出されず、期間t2においてインクが吐出されず、期間t3においてインクが吐出されない。したがって、媒体Pにドットが形成されない「非記録ND」となる。このとき、対応する圧電素子60には、台形波形Cdpを含む駆動信号VOUTが入力される。したがって、微振動が実行される。その結果、対応するノズル321の開孔部付近のインク粘度が増大するおそれが低減する。
【0116】
以上のように、駆動信号選択回路200は、駆動回路50が出力する駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60に出力する。そのため、駆動信号VOUTは、駆動回路50が出力する駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpのいずれかを含む。そうすると、駆動信号VOUTに基づいてインクを吐出するプリントヘッド22は、駆動信号COMに基づいてインクを吐出すると見做すこともできる。
【0117】
[温度情報出力回路の機能構成と動作]
次に、温度情報出力回路26の機能構成、及び動作について説明する。図13は、温度情報出力回路26の機能構成の一例を示す図である。温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれから入力されるヘッド温度情報tc1~tcnのそれぞれを含むヘッド温度信号TC1~TCnと、温度検出回路28から入力されるユニット温度情報thを含むユニット温度信号THと、を取得し、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに応じたプリントヘッド22の温度を示す温度情報信号TIを生成する。そして、温度情報出力回路26は、生成した温度情報信号TIを制御回路100に出力する。
【0118】
図13に示すように、温度情報出力回路26は、制御回路500、増幅回路510-1~510-n,520、マルチプレクサー530、AD変換回路540,550、DA変換回路560、及び記憶回路570を含む。
【0119】
増幅回路510-1~510-nは、プリントヘッド22-1~22-nに対して設けられている。増幅回路510-1~510-nのそれぞれには、対応するプリントヘッド22-1~22-nが出力するヘッド温度信号TC1~TCnのそれぞれと、基準電位信号Vrefと、が入力される。そして、増幅回路510-1~510-nのそれぞれは、基準電位信号Vrefの電圧値を基準電位として対応するヘッド温度信号TC1~TCnを増幅することでヘッド温度増幅信号ATC1~ATCnを出力する。
【0120】
具体的には、増幅回路510-1には、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TC1と、基準電位信号Vrefと、が入力される。増幅回路510-1は、入力されるヘッド温度信号TC1の電圧値と基準電位信号Vrefの電圧値との差分を増幅したヘッド温度増幅信号ATC1を出力する。また、増幅回路510-j(jは1~nのいずれか)には、プリントヘッド22-jが出力するヘッド温度信号TCjと、基準電位信号Vrefと、が入力される。増幅回路510-jは、入力されるヘッド温度信号TCjの電圧値と基準電位信号Vrefの電圧値との差分を増幅したヘッド温度増幅信号ATCjを出力する。ここで、増幅回路510-1~510-nはいずれも同様の構成であり、以下の説明において区別する必要がない場合、増幅回路510と称する場合がある。この場合において、増幅回路510には、ヘッド温度信号TC1~TCnとしてのヘッド温度信号TCと、基準電位信号Vrefとが入力され、ヘッド温度増幅信号ATC1~ATCnとしてのヘッド温度増幅信号ATCを出力するとして説明を行う。
【0121】
増幅回路510-1~510-nのそれぞれが出力するヘッド温度増幅信号ATC1~ATCnは、マルチプレクサー530に入力される。また、マルチプレクサー530には、制御回路500が出力するセレクト信号Selが入力される。マルチプレクサー530は、入力されるセレクト信号Selに従って、増幅回路510-1~510-nのそれぞれから入力されるヘッド温度増幅信号ATC1~ATCnのいずれかを選択し、選択温度信号STCとして出力する。
【0122】
AD変換回路540には、マルチプレクサー530が出力する選択温度信号STCと、制御回路500が出力するイネーブル信号EN1と、が入力される。AD変換回路540は、入力されるイネーブル信号EN1が有効である期間に入力される選択温度信号STCをデジタル信号に変換し、制御回路500に出力する。すなわち、AD変換回路540は、温度情報出力回路26に入力されるヘッド温度信号TC1~TCnの内、イネーブル信号EN1が有効である期間にマルチプレクサー530によって選択されたヘッド温度信号TCに含まれるヘッド温度情報tcの電圧値を、増幅回路510が増幅した電圧値に応じたデジタル信号であって、イネーブル信号EN1が有効である期間にマルチプレクサー530によって選択されたヘッド温度信号TCに対応するプリントヘッド22の温度に応じ
た電圧値のデジタル信号を生成し、制御回路500に出力する。以下の説明では、AD変換回路540が出力するデジタル信号をデジタル温度情報dtcと称する。
【0123】
増幅回路520には、ユニット温度信号THが入力される。そして、増幅回路520は、入力されるユニット温度信号THを増幅することでユニット増幅温度信号ATHを出力する。
【0124】
AD変換回路550には、増幅回路520が出力するユニット増幅温度信号ATHと、制御回路500が出力するイネーブル信号EN2と、が入力される。AD変換回路550は、入力されるイネーブル信号EN2が有効である期間に入力されるユニット増幅温度信号ATHをデジタル信号に変換し、制御回路500に出力する。すなわち、AD変換回路540は、イネーブル信号EN2が有効である期間に入力されるユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thの電圧値を、増幅回路520によって増幅した電圧値に応じたデジタル信号であって、イネーブル信号EN2が有効である期間のヘッドユニット20の温度に応じた電圧値を含むデジタル信号を生成し、制御回路500に出力する。以下の説明では、AD変換回路550が出力するデジタル信号をデジタル温度情報dthと称する場合がある。
【0125】
DA変換回路560には、制御回路500が出力するデジタル基準電位信号dvrefが入力される。DA変換回路560は、デジタル基準電位信号dvrefをアナログ信号に変換することで、基準電位信号Vrefを生成する。そして、DA変換回路560は、生成した基準電位信号Vrefを増幅回路510-1~510-nに出力する。すなわち、増幅回路510-1~510-nに入力される基準電位信号Vrefの電圧値は、制御回路500、及びDA変換回路560によって制御される。
【0126】
制御回路500は、要求解析部502、温度情報出力部504、及びメモリー制御部506を含む。制御回路500には、温度取得要求信号TDが入力される。そして、制御回路500は、入力される温度取得要求信号TDに応じたセレクト信号Sel、イネーブル信号EN1,EN2、及びデジタル基準電位信号dvrefを生成し、温度情報出力回路26に含まれる各種の構成を制御する。また、制御回路500には、セレクト信号Sel、及びイネーブル信号EN1に応じたデジタル温度情報dtcが入力される。制御回路500は、入力されるデジタル温度情報dtcに基づいて温度情報信号TIを生成し、温度情報出力回路26から出力する。
【0127】
具体的には、温度取得要求信号TDは、要求解析部502に入力される。要求解析部502は、入力される温度取得要求信号TDを解析する。そして、要求解析部502は、解析結果に応じたデジタル基準電位信号dvref、セレクト信号Sel、及びイネーブル信号EN1,EN2を対応する構成に出力させる。
【0128】
温度情報出力部504には、デジタル温度情報dtcが入力される。温度情報出力部504は、入力されるデジタル温度情報dtcに基づいて、プリントヘッド22-1~22-nの温度に応じた温度情報信号TIを生成し、制御回路100に出力する。なお、温度情報出力部504には、デジタル温度情報dtcに加えて、デジタル温度情報dthが入力されてもよく、この際、温度情報出力部504は、入力されるデジタル温度情報dtcとデジタル温度情報dthとに基づいて補正された温度情報信号TIを出力してもよい。
【0129】
メモリー制御部506は、記憶回路570にアクセスするためのメモリー制御信号MAを生成し、記憶回路570に出力するとともに、メモリー制御信号MAに応じたて記憶回路570が出力するメモリー読出信号MRを取得する。例えば、メモリー制御部506は、要求解析部502に解析結果に応じた基準電位信号Vrefの電圧値を、記憶回路57
0から読み出すためのメモリー制御信号MAを生成し、記憶回路570に出力する。これにより、記憶回路570から読み出された電圧値の情報を含むメモリー読出信号MRがメモリー制御部506に入力される。そして、制御回路500は、記憶回路570から読み出された電圧値に対応するデジタル基準電位信号dvrefを生成し、DA変換回路560に出力する。
【0130】
ここで、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500、増幅回路510-1~510-n,520、マルチプレクサー530、AD変換回路540,550、DA変換回路560、及び記憶回路570の内のいくつかが、1又は複数の集積回路として構成されていてもよい。
【0131】
次に、温度情報出力回路26が有する増幅回路510の構成の一例について説明する。図14は、増幅回路510の構成の具体例を示す図である。図14に示すように、増幅回路510は、抵抗511~514と、オペアンプ515と、を含む。
【0132】
オペアンプ515の高圧側入力端子には、任意の電圧値の電圧Vddが入力され、低圧側入力端子には、グラウンド電位GNDが供給されている。すなわち、オペアンプ515は電圧Vddとグラウンド電位GNDとの電位差に基づいて動作する。
【0133】
オペアンプ515の+側入力端子は、抵抗511の一端、及び抵抗512の一端と電気的に接続し、オペアンプ515の-側入力端子は、抵抗513の一端、及び抵抗514の一端と電気的に接続している。また、抵抗511の他端にはヘッド温度信号TCが入力され、抵抗512の他端にはグラウンド電位GNDが供給され、抵抗513の他端には基準電位信号Vrefが供給され、抵抗514の他端はオペアンプ515の出力端子と電気的に接続している。
【0134】
以上のように構成された増幅回路510は、ヘッド温度信号TCの電圧値と、基準電位信号Vrefの電圧値との差分に応じた信号を、抵抗511~514によって規定される増幅率で増幅することでヘッド温度増幅信号ATCを生成し、出力する所謂差動増幅回路を構成している。
【0135】
図15は、増幅回路510に理想的なヘッド温度信号TCが入力された場合における、ヘッド温度信号TCの電圧値とヘッド温度増幅信号ATCの電圧値と、の関係の一例を示す図である。
【0136】
図15には、プリントヘッド22、若しくは液体吐出装置1の温度が、製品仕様等に基づいて規定される最低温度以下の任意の温度の場合に、増幅回路510に入力されるヘッド温度信号TCの電圧値を電圧Vtminとして図示し、プリントヘッド22、若しくは液体吐出装置1の温度が、製品仕様等に基づいて規定される最高温度以上の任意の温度の場合に、増幅回路510に入力されるヘッド温度信号TCの電圧値を電圧Vtmaxとして図示している。すなわち、電圧Vtminは、プリントヘッド22、若しくは液体吐出装置1の温度が、製品仕様等に基づいて規定される最低温度以下の任意の温度の場合に、温度検出回路24が出力するヘッド温度情報tcの電圧値に対応し、電圧Vtmaxは、プリントヘッド22、若しくは液体吐出装置1の温度が、製品仕様等に基づいて規定される最高温度以上の任意の温度の場合に、温度検出回路24が出力するヘッド温度情報tcの電圧値に相当する。
【0137】
また、図15には、ヘッド温度信号TCの任意のタイミングの電圧値を電圧Vt[q]として図示し、増幅回路510に電圧Vt[q]が入力された場合に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値を電圧Va[q]として図示している。すな
わち、電圧Vt[q]は、当該任意のタイミングにおいて温度検出回路24が取得したヘッド温度情報tcの電圧値に対応し、電圧Va[q]は、当該任意のタイミングにおいて温度検出回路24が取得したヘッド温度情報tcを増幅した電圧値に対応する。なお、以下の説明において、特にタイミングを規定しない場合、ヘッド温度信号TCの電圧値を電圧Vtと称し、増幅回路510に電圧Vtが入力された場合に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値を電圧Vaと称する場合がある。
【0138】
図15に示すように、増幅回路510は、入力されるヘッド温度信号TCの電圧値に対して、電圧値が線形性を有するヘッド温度増幅信号ATCを出力する。このとき、増幅回路510に入力される電圧Vt[q]と、増幅回路510が出力する電圧Va[q]とは、基準電位信号Vrefの電圧値を電圧vrefとし、抵抗511~514のそれぞれの抵抗値を抵抗値r511~r514とした場合に、以下の式(1)のような関係となる。
【0139】
【数1】
【0140】
この場合において、抵抗511の抵抗値と抵抗512の抵抗値との比が、抵抗513の抵抗値と抵抗514の抵抗値との比と同じであって、好ましくは、抵抗511の抵抗値と抵抗513の抵抗値とが等しく、抵抗512の抵抗値と抵抗514の抵抗値とが等しくなるように、抵抗511~514の抵抗値は設定される。これにより、上述した式(1)は、以下の式(2)のように示すことができる。
【0141】
【数2】
【0142】
ここで、抵抗値が等しいとは、実測した抵抗値が同じであることに限るものではなく、抵抗値のばらつきを加味した場合に、同等と見做せる範囲が含まれる。すなわち、抵抗511の抵抗値と抵抗513の抵抗値とが等しいとは、抵抗511の抵抗値と抵抗513の抵抗値との定格値が同じ場合が含まれ、抵抗512の抵抗値と抵抗514の抵抗値とが等しいとは、抵抗512の抵抗値と抵抗514の抵抗値との定格値が同じ場合が含まれる
以上のように本実施形態の増幅回路510は、電圧Vt[q]と電圧vrefとの電圧差に、抵抗513,514の抵抗値の比によって規定される増幅率を掛けることにより得られる電圧Va[q]を出力する。換言すれば、本実施形態の増幅回路510は、基準電位信号Vrefとヘッド温度信号TCとの差分を増幅する差動増幅回路を構成する。
【0143】
また、図15に示すように、本実施形態の増幅回路510は、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vtminの場合にヘッド温度増幅信号ATCの電圧値が略0Vととなり、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vtmaxの場合にヘッド温度増幅信号ATCの電圧値が略電圧Vddとなるように増幅率を規定する抵抗511~514の抵抗値の値が設定されている。すなわち、増幅回路510の増幅率であって、抵抗511~514の抵抗値の値は、増幅回路510のダイナミックレンジが、オペアンプ515の低電位側入力端子に入力されるグラウンド電位GNDからオペアンプ515の高電位側入力端子に入力される電圧Vddとなるように設定される。これにより、増幅回路510におけるヘッド温度信号TCの検出精度が向上し、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの出力精度が向上する。その結果、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCに基づくプリントヘッド22の温度の検出精度を高めることができる。
【0144】
ここで、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vtminの場合の任意の温度とは、例えば、プリントヘッド22、又は液体吐出装置1が故障することなく動作可能な設計温度の最低値であってもよく、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vtmacの場合の任意の温度とは、例えば、プリントヘッド22、又は液体吐出装置1が故障することなく動作可能な設計温度の最高値であってもよい。なお、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vtminの場合の任意の温度、及びヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vtmaxの場合の任意の温度は、上述した温度に限るものではなく、液体吐出装置1の使用用途や使用環境に応じた任意の温度であってもよい。
【0145】
また、増幅回路510のダイナミックレンジがオペアンプ515の低電位側入力端子に入力されるグラウンド電位GNDからオペアンプ515の高電位側入力端子に入力される電圧Vddとなるように設定されるとは、抵抗511~514の抵抗値のばらつきや、オペアンプ515のオフセット電圧等を加味した場合に、増幅回路510のダイナミックレンジがオペアンプ515の低電位側入力端子に入力されるグラウンド電位GNDからオペアンプ515の高電位側入力端子に入力される電圧Vddとなるように設定されることが含まれる。すなわち、抵抗511~514の抵抗値は、オペアンプ515の低電位側入力端子に入力されるグラウンド電位GNDからオペアンプ515の高電位側入力端子に入力される電圧Vddとなるように設定される場合に限られるものではなく、増幅回路510のダイナミックレンジの低電位側電圧値が極力グラウンド電位GNDに近づくように設定され、増幅回路510のダイナミックレンジの高電位側電圧値が極力電圧Vddに近づくように設定されていればよい。
【0146】
しかしながら本実施形態に示すようなプリントヘッド22の内部に抵抗配線401を含む温度検出回路24が設けられた構成の場合、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401が細く長い配線パターンとして形成されるが故に、製造ばらつき等に起因して抵抗配線401の抵抗値に大きなばらつきが生じるおそれがある。すなわち、プリントヘッド22が出力するヘッド温度情報tcの電圧値に大きなばらつきが生じる可能性がある。
【0147】
このようなヘッド温度情報tcを含むヘッド温度信号TCの電圧値のばらつきは、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値のばらつきに直結する。特に、図15に示すように増幅回路510のダイナミックレンジを広く確保した場合、ヘッド温度情報tcを含むヘッド温度信号TCの電圧値のばらつきに起因して、出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値が、電圧Vdd又はグラウンド電位GNDで制限される。その結果、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの信頼性が低下するおそれがある。
【0148】
係る問題に対して、例えば、増幅回路510に含まれる抵抗511~514の抵抗値を調整し、増幅回路510のダイナミックレンジを狭くすることで、ヘッド温度情報tcを含むヘッド温度信号TCの電圧値のばらつきによってヘッド温度増幅信号ATCの電圧値が制限されるおそれを低減することも可能ではある。しかしながら、この場合、増幅回路510のダイナミックレンジが狭くなるが故に、増幅回路510におけるヘッド温度信号TCの取得精度が低下し、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの信頼性が低下する。
【0149】
すなわち、プリントヘッド22の内部に構成された抵抗配線401を含む温度検出回路24を用いてプリントヘッド22の温度を検出する構成を採用した場合、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの信頼性が低下するおそれがあるとの新たな問題が生じた。
【0150】
係る問題に対して、本実施形態の液体吐出装置1、及びヘッドユニット20では、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401の抵抗値のばらつきに起因して生じ得るヘッド温度情報tcの電圧値のばらつきを、基準電位信号Vrefの電圧値を調整することにより補正する。これにより、増幅回路510のダイナミックレンジを広く確保した状態で、ヘッド温度増幅信号ATCの電圧値が制限されるおそれを低減することができる。その結果、プリントヘッド22の内部に構成された抵抗配線401を含む温度検出回路24を用いて、プリントヘッド22の温度を検出する構成を採用した場合であっても、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの信頼性が低下するおそれが低減し、その結果、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIに含まれるプリントヘッド22の温度情報の精度が向上する。すなわち、プリントヘッド22の内部に温度検出回路24を設けた構成におけるプリントヘッド22の温度の取得精度が向上する。
【0151】
すなわち、本実施形態の液体吐出装置1、及びヘッドユニット20では、温度情報出力回路26が、基準電位信号Vrefとヘッド温度信号TCとの差分を増幅する増幅回路510と、増幅回路510の出力を温度情報信号TIとして出力する温度情報出力部504と、ヘッド温度信号TCに応じた電圧値の基準電位信号Vrefを増幅回路510に出力する制御回路500及びDA変換回路560と、を有することで、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの信頼性を向上させ、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIに含まれるプリントヘッド22の温度の精度を向上させることができる。
【0152】
ここで、増幅回路510に入力される基準電位信号Vrefの電圧値の調整方法の具体例について説明する。図16は、基準電位信号Vrefの電圧値の調整方法の一例を示す図である。
【0153】
まず、基準電位信号Vrefの電圧値を調整するにあたり、温度情報出力回路26は、増幅回路510が有する抵抗511~514の抵抗値r511~r514と、上述した式(2)と、に基づいて、増幅回路510に理想的な電圧値のヘッド温度信号TCが入力された場合に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値を算出する。そして、温度情報出力回路26は、算出した理想電圧Varを、当該ヘッド温度信号TCの電圧値に対応づけて記憶回路570に記憶する。この理想電圧Varは、既知の抵抗511~514の抵抗値r511~r514と、既知の抵抗配線401を含む温度検出回路24の設計情報と、から算出することができる。それ故に、ヘッド温度信号TCの電圧値に対応づけられた理想電圧Varは、例えば、液体吐出装置1の製造段階において、記憶回路570に記憶することができる。
【0154】
温度情報出力回路26は、制御回路100からプリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対応する増幅回路510-1~510-nに入力される基準電位信号Vrefの電圧値のである電圧vrefの調整を要求する温度取得要求信号TDが入力されることで、増幅回路510-1~510-nのそれぞれに対応する電圧vrefの調整を開始する(ステップS100)。ここで、本実施形態では、温度情報出力回路26は、増幅回路510-1~510-nのそれぞれに対応する基準電位信号Vrefの電圧値を算出する。そのため、以下の説明では、増幅回路510-1に対応する基準電位信号Vrefの電圧値を電圧vref1と称し、増幅回路510-nに対応する基準電位信号Vrefの電圧値を電圧vrefnと称する。
【0155】
温度情報出力回路26は、基準電位信号Vrefの電圧値の調整を要求する温度取得要求信号TDが入力されることで、変数jをj=1に初期化する(ステップS110)。その後、制御回路500は、変数jが“1”であるが故に、記憶回路570から電圧vref1の電圧値の情報を記憶回路570から読み出す(ステップS120)。そして、制御回路500は、読み出した電圧vref1の電圧値に対応するデジタル基準電位信号dv
refを生成し、DA変換回路560に出力する。すなわち、制御回路500は、読み出した電圧vref1の電圧値に対応するデジタル基準電位信号dvrefを出力する(ステップS130)。その結果、DA変換回路560は、増幅回路510-1に対応する基準電位信号Vrefであって、電圧値が電圧vref1の基準電位信号Vrefを増幅回路510-1に出力する。
【0156】
また、温度情報出力回路26は、増幅回路510-1が増幅したヘッド温度増幅信号ATC1を選択するためのセレクト信号Selを生成し、マルチプレクサー530に出力する。これにより、マルチプレクサー530は、ヘッド温度増幅信号ATCjとしてヘッド温度増幅信号ATC1を選択し(ステップS140)、選択温度信号STCとして出力する。
【0157】
その後、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、AD変換回路550におけるアナログ/デジタル変換を有効にするためのイネーブル信号EN2を出力する。これにより、AD変換回路550は、温度検出回路28が出力するユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thの電圧値を増幅回路520で増幅したユニット増幅温度信号ATHをデジタル信号に変換したデジタル温度情報dthを出力し、制御回路500は、AD変換回路550が出力するデジタル温度情報dthを取得する(ステップS150)。
【0158】
制御回路500は、取得したデジタル温度情報dthによって規定される温度に対応した理想状態のヘッド温度信号TCの電圧値を算出する。ここで、デジタル温度情報dthによって規定される温度は、プリントヘッド22-1~22-nを含むヘッドユニット20の温度であって、プリントヘッド22-1~22-nが駆動していない期間においては、プリントヘッド22-1~22-nの周囲温度、すなわち、プリントヘッド22-1~22-nの環境温度と略一致する。換言すれば、制御回路500は、このデジタル温度情報dthによって規定される温度に基づいて、プリントヘッド22-1の温度を推定し、推定した温度から理想状態のヘッド温度信号TCの電圧値を算出する。
【0159】
そして、制御回路500は算出した理想状態のヘッド温度信号TCの電圧値に応じた理想電圧Varを記憶回路570が読み出す。すなわち、制御回路500は、デジタル温度情報dthによって規定される温度に対応する理想電圧Varを記憶回路570から読み出す(ステップS160)。
【0160】
その後、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、AD変換回路540におけるアナログ/デジタル変換を有効にするためのイネーブル信号EN1を出力する。これにより、AD変換回路540は、マルチプレクサー530が出力する選択温度信号STCであって、ヘッド温度増幅信号ATC1に対応する選択温度信号STCをデジタル信号に変換したデジタル温度情報dtcを制御回路500に出力する。すなわち、制御回路500は、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcを取得する(ステップS170)。
【0161】
制御回路500は、取得したデジタル温度情報dtcに応じた電圧値と、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値と、を比較する。そして、制御回路500は、デジタル温度情報dtcに応じた電圧値が、理想電圧Varの電圧値に基づく所定の範囲内であるか否かの判定を行う。
【0162】
具体的には、制御回路500は、取得したデジタル温度情報dtcによって規定される電圧値と、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値から所定値α1を差し引いた値と、を比較する(ステップS180)。そして、制御回路500は、取得したデ
ジタル温度情報dtcによって規定される電圧値が、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値から所定値α1を差し引いた値以下の場合(ステップS180のY)、増幅回路510-1に対応する基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vref1から所定値βを差し引いた値を、新たな電圧vref1として算出する(ステップS185)。
【0163】
一方で、制御回路500は、取得したデジタル温度情報dtcによって規定される電圧値が、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値から所定値α1を差し引いた値よりも大きい場合(ステップS180のN)、制御回路500は、取得したデジタル温度情報dtcによって規定される電圧値と、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値に所定値α2を加算した値と、を比較する(ステップS190)。そして、制御回路500は、取得したデジタル温度情報dtcによって規定される電圧値が、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値に所定値α2を加算した値以上の場合(ステップS190のY)、増幅回路510-1に対応する基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vref1に所定値βを加えた値を、新たな電圧vref1として算出する(ステップS195)。
【0164】
そして、ステップS185、又はステップS195において、新たな電圧vref1が算出された後、制御回路500は、算出した電圧vref1に対応するデジタル基準電位信号dvrefを生成し、出力する(ステップS200)。これにより、DA変換回路560は、増幅回路510-1に対応する基準電位信号Vrefであって、電圧値が新たに算出した電圧vref1の基準電位信号Vrefを増幅回路510に出力する。
【0165】
その後、制御回路500は、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcを再度取得する(ステップS160)。すなわち、制御回路500は、増幅回路510-1が、ヘッド温度信号TCの電圧値と、新たに算出した電圧vref1の基準電位信号Vrefとの差分を増幅したヘッド温度増幅信号ATC1に対応する選択温度信号STCをデジタル信号に変換したデジタル温度情報dtcを取得する。そして、制御回路500は、取得したデジタル温度情報dtcによって規定される電圧値と、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値と、を比較するとともに、比較結果に応じて、電圧vref1の電圧値を調整する。制御回路500は、入力されるデジタル温度情報dtcによって規定される電圧値が、理想電圧Varの電圧値に基づく所定の範囲内となるまで電圧vref1の電圧値の調整を繰り返し実行する。具体的には、制御回路500は、取得したデジタル温度情報dtcによって規定される電圧値が、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値から所定値α1を差し引いた値よりも大きく(ステップS180のN)、且つ記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値に所定値α2を加算した値よりも小さく(ステップS190のN)なるまで電圧vref1の電圧値の調整を繰り返し実行する。
【0166】
そして、制御回路500は、取得したデジタル温度情報dtcによって規定される電圧値が、記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値から所定値α1を差し引いた値よりも大きく(ステップS180のN)、且つ記憶回路570から読み出した理想電圧Varの電圧値に所定値α2を加算した値よりも小さく(ステップS190のN)なった際の電圧vref1を、増幅回路510-1に対応する新たな電圧vref1として記憶回路570に記憶する(ステップS210)。なお、図16に示すステップS180,S185で実行される処理と、ステップS190,S195で実行される処理とが実行される順序は、逆であってもよい。
【0167】
その後、温度情報出力回路26は、変数jに“1”を加算する(ステップS220)とともに、加算後の変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数で
ある“n”以下であるか否かの判定を行う(ステップS230)。そして、変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”以下の場合(ステップS230のY)、温度情報出力回路26は、ステップS120~S230までの処理を繰り返し実行する。これにより、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対応して設けられる増幅回路510-1~510-nのそれぞれに対応した基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vref1~vrefnを算出し、記憶回路570に記憶する。その後、変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”を超えることで(ステップS230のN)、温度情報出力回路26は、基準電位信号Vrefの電圧値の調整を終了する。
【0168】
ここで、上述した所定値α1,α2は、例えば、電圧Vddとグラウンド電位GNDとの電位差に所定の比率を掛けた値であって、例えば、当該電位差の1%に設定される。また、所定値βは、調整される電圧vrefの調整幅を規定する任意の電圧値である。
【0169】
次に、温度情報出力回路26における、記憶回路570に記憶された電圧vref1~vrefnを用いたプリントヘッド22の温度の取得について説明する。図17は、プリントヘッド22の温度動作の一例を説明するための図である。図17に示すように、制御回路100から温度情報出力回路26に、複数のプリントヘッド22の内のいずれかの温度の取得を要求する温度取得要求信号TDが入力される(ステップS510)ことで、温度情報出力回路26は、温度情報出力処理を開始する。
【0170】
温度情報出力回路26に複数のプリントヘッド22の内のいずれかの温度の取得を要求する温度取得要求信号TDが入力されると、温度情報出力回路26の制御回路500に含まれる要求解析部502は、温度取得要求信号TDを解析し、複数のプリントヘッド22の内、温度を取得するプリントヘッド22-k(kは1~nのいずれか)を特定する(ステップS520)。その後、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-kに対応する電圧vrefkを記憶回路570が読出し、読み出した電圧vrefkに応じたデジタル基準電位信号dvrefを出力する(ステップS530)。これにより、増幅回路510-kには、電圧値が調整された電圧vrefkの基準電位信号Vrefが入力される。
【0171】
また、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-kが出力するヘッド温度信号TCと、基準電位信号Vrefとの電位差を増幅回路510-kが増幅したヘッド温度増幅信号ATCkを選択するセレクト信号Selを生成し、マルチプレクサー530に出力する(ステップS540)。これにより、マルチプレクサー530は、プリントヘッド22-kが出力するヘッド温度信号TCと、電圧値が調整された電圧vrefkの基準電位信号Vrefと、の差分を増幅回路510-kが増幅したヘッド温度増幅信号ATCkを選択し、選択温度信号STCとして出力する。
【0172】
その後、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、AD変換回路540におけるアナログ/デジタル変換を有効にするためのイネーブル信号EN1を出力する。これにより、AD変換回路540は、選択温度信号STCであって、プリントヘッド22-kが出力するヘッド温度信号TCと、電圧値が調整された電圧vrefkの基準電位信号Vrefと、の差分を増幅回路510-kが増幅したヘッド温度増幅信号ATCkを、デジタル温度情報dtcに変換し、制御回路100に出力する。すなわち、制御回路500は、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcを取得する(ステップS550)。
【0173】
そして、制御回路500に含まれる温度情報出力部504は、入力されるデジタル温度情報dtcに応じた温度情報信号TIであって、入力されるデジタル温度情報dtcを所定のフォーマットに変換した温度情報信号TIを出力する(ステップS560)。すなわ
ち、温度情報出力部504は、プリントヘッド22-kの温度を示すヘッド温度情報tckに応じたデジタル温度情報dtcを温度情報信号TIとして出力する。これにより、温度情報出力回路26は、温度情報信号TIの出力を終了する。
【0174】
すなわち、本実施形態の液体吐出装置1及びヘッドユニット20が有する温度情報出力回路26は、基準電位信号Vrefとヘッド温度信号TCとの差分を増幅する増幅回路510と、増幅回路510の出力に応じた温度情報信号TIを出力する温度情報出力部504と、基準電位信号Vrefの電圧値を制御するDA変換回路560及び制御回路500と、ヘッド温度信号TCとプリントヘッド22の周囲温度とに応じた電圧vref1~vrefnを記憶する記憶回路570と、を有し、DA変換回路560及び制御回路500は、電圧vref1~vrefnに応じた電圧値の基準電位信号Vrefを出力する。
【0175】
ここで、上述した基準電位信号Vrefの電圧値の調整方法いついて図18及び図19を用いて模式的に説明する。図18は、基準電位信号Vrefの調整前後に増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの一例を示す図である。なお、図18には、理想的なヘッド温度信号TCが入力された場合における、ヘッド温度信号TCの電圧値とヘッド温度増幅信号ATCの電圧値との関係を直線Aとして図示し、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefの調整前において、入力されるヘッド温度信号TCの電圧値とヘッド温度増幅信号ATCの電圧値との関係を直線Bとし図示し、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefの調整中において、入力されるヘッド温度信号TCの電圧値とヘッド温度増幅信号ATCの電圧値との関係を直線Cとし図示している。
【0176】
図18の(a)に示すように、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefの調整前において、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vt[q]の際に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]が、理想電圧Varよりも小さい場合、上述のとおり、制御回路500は、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vref1から所定値βを差し引き、ヘッド温度信号TC及び増幅回路510に対応する新たな電圧vrefとして出力する。これにより、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vt[q]の際に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]は、図18の(b)に示すように、大きくなる。換言すれば、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vt[q]の際に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]は、理想電圧Varに近づく。
【0177】
そして、制御回路500がヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]と理想電圧Varとの比較結果に基づく電圧vrefの調整を繰り返し実行し、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vt[q]の際に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]が理想電圧Varに対する所定の範囲となることで、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値は、図18の(c)に示すように、増幅回路510に理想的なヘッド温度信号TCが入力された場合における、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値と略等しくなる。
【0178】
図19は、基準電位信号Vrefの調整前後に増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの他の一例を示す図である。なお、図19には、図18と同様に、理想的なヘッド温度信号TCが入力された場合における、ヘッド温度信号TCの電圧値とヘッド温度増幅信号ATCの電圧値との関係を直線Aとして図示し、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefの調整前において、入力されるヘッド温度信号TCの電圧値とヘッド温度増幅信号ATCの電圧値との関係を直線Bとし図示し、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefの調整中において、入力されるヘッド温度信号TCの電圧値とヘッド温度増幅信号ATCの電圧値との関係を直線Cとし図示している。
【0179】
図19の(a)に示すように、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefの調整前において、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vt[q]の際に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]が、理想電圧Varよりも大きい場合、上述のとおり、制御回路500は、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vref1に所定値βを加え、ヘッド温度信号TC及び増幅回路510に対応する新たな電圧vrefとして出力する。これにより、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vt[q]の際に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]は、図19の(b)に示すように、小さくなる。換言すれば、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vt[q]の際に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]は、理想電圧Varに近づく。
【0180】
そして、制御回路500がヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]と理想電圧Varとの比較結果に基づく電圧vrefの調整を繰り返し実行し、ヘッド温度信号TCの電圧値が電圧Vt[q]の際に、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値である電圧Va[q]が理想電圧Varに対する所定の範囲となることで、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値は、図19の(c)に示すように、増幅回路510に理想的なヘッド温度信号TCが入力された場合における、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧値と略等しくなる。
【0181】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1、及びヘッドユニット20では、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401の抵抗値のばらつきに起因して生じ得るヘッド温度情報tcの電圧値のばらつきが、基準電位信号Vrefの電圧値の調整により補正される。これにより、増幅回路510のダイナミックレンジを広く確保した状態であっても、ヘッド温度増幅信号ATCの電圧値が制限されるおそれが低減し、その結果、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの信頼性が低下するおそれが低減する。よって、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIに含まれるプリントヘッド22の温度情報の精度が向上する。
【0182】
ここで、駆動信号COMが駆動信号の一例であり、駆動信号VOUTが駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択することで生成される点に鑑みると、駆動信号VOUTもまた駆動信号の一例である。
【0183】
また、温度情報出力回路26が温度情報出力回路の一例であり、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIが温度情報信号の一例であり、温度情報出力回路26に含まれる増幅回路510-1が第1増幅回路の一例であり、温度情報出力回路26に含まれる増幅回路510-2が第2増幅回路の一例であり、温度情報出力回路26に含まれる温度情報出力部504が出力制御回路の一例であり、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500及びDA変換回路560が基準電圧制御回路の一例であり、温度情報出力回路26に含まれる記憶回路570が記憶部の一例である。
【0184】
また、ヘッド温度情報tc1が第1温度情報の一例であり、ヘッド温度情報tc2が第2温度情報の一例であり、ヘッド温度情報tc1を含むヘッド温度信号TC1が第1温度信号の一例であり、ヘッド温度情報tc2を含むヘッド温度信号TC2が第2温度信号の一例であり、電圧vref1が第1基準電圧値の一例であり、電圧vref2が第2基準電圧値の一例であり、電圧値が電圧vref1の基準電位信号Vrefが第1基準電位信号の一例であり、電圧値が電圧vref2の基準電位信号Vrefが第2基準電位信号の一例である。
【0185】
また、プリントヘッド22-1が第1プリントヘッドの一例であり、プリントヘッド22-1に含まれる電極360が第1電極の一例であり、プリントヘッド22-1に含まれ
る電極380が第2電極の一例であり、プリントヘッド22-1に含まれる圧電体370が第1圧電体の一例であり、プリントヘッド22-1に含まれる圧電素子60が第1圧電素子の一例であり、プリントヘッド22-1に含まれる振動板350が第1振動板の一例であり、プリントヘッド22-1に含まれる圧力室312が第1圧力室の一例であり、プリントヘッド22-1に含まれる圧力室基板310が第1圧力室基板の一例であり、プリントヘッド22-1に含まれるノズル321が第1ノズルの一例であり、プリントヘッド22-1に含まれる抵抗配線401及び温度検出回路24が第1温度検出部の一例である。
【0186】
また、プリントヘッド22-2が第2プリントヘッドの一例であり、プリントヘッド22-2に含まれる電極360が第3電極の一例であり、プリントヘッド22-2に含まれる電極380が第4電極の一例であり、プリントヘッド22-2に含まれる圧電体370が第2圧電体の一例であり、プリントヘッド22-2に含まれる圧電素子60が第2圧電素子の一例であり、プリントヘッド22-2に含まれる振動板350が第2振動板の一例であり、プリントヘッド22-2に含まれる圧力室312が第2圧力室の一例であり、プリントヘッド22-2に含まれる圧力室基板310が第2圧力室基板の一例であり、プリントヘッド22-2に含まれるノズル321が第2ノズルの一例であり、プリントヘッド22-2に含まれる抵抗配線401及び温度検出回路24が第2温度検出部の一例である。
【0187】
そして、Z軸に沿った方向が第1積層方向、及び第2積層方向の一例であり、Z軸に沿った方向の内の+Z側が第1積層方向、及び第2積層方向の一方側の一例である。Z軸に沿った方向の内の-Z側が第1積層方向、及び第2積層方向の他方側の一例である。
【0188】
3.作用効果
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1のヘッドユニット20が有するプリントヘッド22は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層される積層方向であってZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に位置し、駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを受けて駆動する圧電素子60と、圧電素子60に対して積層方向の一方側に位置し、圧電素子60の駆動により変形する振動板350と、振動板350に対して積層方向の一方側に位置し、振動板350の変形により容積が変化する圧力室312が設けられている圧力室基板310と、圧力室312の容積の変化に応じてインクを吐出するノズル321と、振動板350に対して積層方向の他方側に位置し、圧力室312の温度に対応するヘッド温度情報tcを検出し、ヘッド温度信号TCとして出力する抵抗配線401を含む温度検出回路24と、を有する。すなわち、本実施形態のプリントヘッド22において、圧力室312に貯留されるインクの温度を検出する温度検出回路24は、圧力室312の近傍に配置される。これにより、温度検出回路24による圧力室312に貯留されるインクの温度の検出精度が向上する。
【0189】
また、本実施形態の液体吐出装置1のヘッドユニット20が有する温度情報出力回路26は、基準電位信号Vrefとヘッド温度信号TCとの差分を増幅する増幅回路510と、増幅回路510の出力に応じた温度情報信号TIを出力する温度情報出力部504と、基準電位信号Vrefの電圧値を制御する制御回路500及びDA変換回路560と、を有する。これにより、増幅回路510の増幅率を変化することなく、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの電圧範囲を調整することができる。これにより、温度検出回路24によるヘッド温度信号TCの検出精度が向上し、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCの出力精度が向上する。その結果、増幅回路510が出力するヘッド温度増幅信号ATCに基づくプリントヘッド22の温度の検出精度を高めることができる。
【0190】
4.変形例
上述した実施形態では、温度検出回路28が検出したヘッドユニット20の温度に基づいて、理想電圧Varを算出し、算出した理想電圧Varを用いて基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefを調整するとして説明を行ったが、基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefを調整する際、液体吐出装置1、又はヘッドユニット20を温度が一定の環境下に設置し、当該温度に基づいて理想電圧Varを算出し、算出した理想電圧Varを用いて基準電位信号Vrefの電圧値である電圧vrefを調整してもよい。係る構成であっても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0191】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0192】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0193】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0194】
ヘッドユニットの一態様は、
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を受けて液体を吐出するヘッドユニットであって、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を備え、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を検出し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を有し、
前記温度情報出力回路は、
第1基準電位信号と前記第1温度信号との差分を増幅する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路の出力に応じた前記温度情報信号を出力する出力制御回路と、
前記第1基準電位信号の電圧値を制御する基準電圧制御回路と、
を有する。
【0195】
このヘッドユニットによれば、第1増幅回路が増幅する第1基準電位信号の電圧値を、基準電圧制御回路が制御することで、第1温度検出部が出力する第1温度信号の電圧値で
あって、第1温度情報の電圧値にばらつきが生じた場合であっても、第1増幅回路は、ダイナミックレンジを確保した状態で第1温度信号を取得することができる。これにより、第1増幅回路における第1温度信号の取得精度が向上する。その結果、第1増幅回路の出力の精度が向上し、温度情報出力回路が、第1増幅回路の出力に応じて出力する温度情報信号の精度が向上する。すなわち、温度情報出力回路におけるプリントヘッドの温度の取得精度が向上する。
【0196】
上記ヘッドユニットの一態様において、
前記温度情報出力回路は記憶部を有し、
前記記憶部には、前記第1温度情報と前記第1プリントヘッドの周囲温度とに応じた第1基準電圧値が記憶され、
前記基準電圧制御回路は、前記第1基準電圧値に応じた電圧値の前記第1基準電位信号を出力してもよい。
【0197】
このヘッドユニットによれば、第1温度検出部が出力する第1温度信号の電圧値であって第1温度情報の電圧値とプリントヘッドの周囲温度に応じて第1基準電圧値を算出し、算出した第1基準電圧値を記憶部に記憶し、基準電圧制御回路は、第1基準電位信号の電圧値を第1基準電圧値に基づいて制御する。すなわち、基準電圧制御回路は、プリントヘッドの周囲温度を基準に算出された電圧値の第1基準電位信号を出力する。これにより、基準電圧制御回路が出力する第1基準電位信号の電圧値の精度がさらに向上する。
【0198】
上記ヘッドユニットの一態様において、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第2プリントヘッドを備え、
前記第2プリントヘッドは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2圧力室の温度に対応する第2温度情報を検出し、第2温度信号として出力する第2温度検出部と、
を有し、
前記温度情報出力回路は、第2基準電位信号と前記第2温度信号との差分を増幅する第2増幅回路を有し、
前記基準電圧制御回路は、前記第2温度信号に応じた電圧値の前記第2基準電位信号を前記第2増幅回路に出力し、
前記出力制御回路は、前記第1増幅回路の出力、及び前記第2増幅回路の出力の少なくとも一方に応じた前記温度情報信号を出力してもよい。
【0199】
ヘッドユニットが第1温度信号を取得する第1増幅回路に加えて、第2温度信号を取得する第2増幅回路を有する場合であっても、このヘッドユニットによれば、第2増幅回路が増幅する第2基準電位信号の電圧値を基準電圧制御回路が制御することで、第2温度検出部が出力する第2温度信号の電圧値であって、第2温度情報の電圧値にばらつきが生じた場合であっても、第2増幅回路は、ダイナミックレンジを確保した状態で第2温度信号を取得することができる。これにより、第2増幅回路における第2温度信号の取得精度が向上する。その結果、第2増幅回路の出力の精度も向上し、温度情報出力回路が、第2増幅回路の出力に応じて出力する温度情報信号の精度も向上する。すなわち、ヘッドユニッ
トが複数の増幅回路を有し、複数の増幅回路は、対応する温度信号を取得する場合であっても、温度情報出力回路におけるプリントヘッドの温度の取得精度が向上する。
【0200】
上記ヘッドユニットの一態様において、
記憶部を備え、
前記記憶部は、前記第1温度情報と前記第1プリントヘッドの周囲温度とに応じた第1基準電圧値と、前記第2温度情報と前記第2プリントヘッドの周囲温度とに応じた第2基準電圧値と、を記憶し、
前記基準電圧制御回路は、前記第1基準電圧値に応じた電圧値の前記第1基準電位信号と、前記第2基準電圧値に応じた電圧値の前記第2基準電位信号と、を出力してもよい。
【0201】
このヘッドユニットによれば、第1温度検出部が出力する第1温度信号の電圧値であって第1温度情報の電圧値とプリントヘッドの周囲温度に応じて第1基準電圧値を算出し、第2温度検出部が出力する第2温度信号の電圧値であって第2温度情報の電圧値とプリントヘッドの周囲温度に応じて第2基準電圧値を算出し、記憶部は、算出した第1基準電圧値及び第2基準電圧値を記憶する。そして、基準電圧制御回路は、第1基準電位信号の電圧値を第1基準電圧値に基づいて制御し、第2基準電位信号の電圧値を第2基準電圧値に基づいて制御する。すなわち、基準電圧制御回路は、プリントヘッドの周囲温度を基準に算出された電圧値の第1基準電位信号、及び第2基準電位信号を出力する。これにより、基準電圧制御回路が出力する第1基準電位信号の電圧値、及び第2基準電位信号の電圧値の精度がさらに向上する。
【0202】
上記ヘッドユニットの一態様において、
前記第1温度検出部は、前記第1振動板の他方側の面に積層された配線パターンを含み、
前記配線パターンは、白金を含んでもよい。
【0203】
このヘッドユニットによれば、第1温度検出部が、温度に対して優れた線形性を有する白金を含む配線パターンを含み、当該配線パターンが第1振動板に積層されていることで、第1温度検出部を第1圧力室のより近傍に配置することができ、第1温度検出部による第1圧力室の温度に対応する第1温度情報の検出精度がさらに向上する。
【0204】
液体吐出装置の一態様は、
温度情報信号に基づいて補正された駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するヘッドユニットと、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記駆動信号を受けて液体を吐出する第1プリントヘッドと、
前記第1プリントヘッドの温度を示す前記温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を有し、
前記第1プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1圧力室の温度に対応する第1温度情報を検出し、第1温度信号として出力する第1温度検出部と、
を含み、
前記温度情報出力回路は、
第1基準電位信号と前記第1温度信号との差分を増幅する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路の出力を前記温度情報信号として出力する出力制御回路と、
前記第1基準電位信号の電圧値を制御する基準電圧制御回路と、
を含む。
【0205】
この液体吐出装置によれば、ヘッドユニットの第1増幅回路が増幅する第1基準電位信号の電圧値を、基準電圧制御回路が制御することで、第1温度検出部が出力する第1温度信号の電圧値であって、第1温度情報の電圧値にばらつきが生じた場合であっても、第1増幅回路は、ダイナミックレンジを確保した状態で第1温度信号を取得することができる。これにより、第1増幅回路における第1温度信号の取得精度が向上する。その結果、第1増幅回路の出力の精度が向上し、温度情報出力回路が、第1増幅回路の出力に応じて出力する温度情報信号の精度が向上する。すなわち、温度情報出力回路におけるプリントヘッドの温度の取得精度が向上する。
【0206】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記温度情報出力回路は記憶部を有し、
前記記憶部には、前記第1温度情報と前記第1プリントヘッドの周囲温度とに応じた第1基準電圧値が記憶され、
前記基準電圧制御回路は、前記第1基準電圧値に応じた電圧値の前記第1基準電位信号を出力してもよい。
【0207】
この液体吐出装置によれば、ヘッドユニットの第1温度検出部が出力する第1温度信号の電圧値であって第1温度情報の電圧値とプリントヘッドの周囲温度に応じて第1基準電圧値を算出し、算出した第1基準電圧値を記憶部に記憶し、基準電圧制御回路は、第1基準電位信号の電圧値を第1基準電圧値に基づいて制御する。すなわち、基準電圧制御回路は、プリントヘッドの周囲温度を基準に算出された電圧値の第1基準電位信号を出力する。これにより、基準電圧制御回路が出力する第1基準電位信号の電圧値の精度がさらに向上する。
【0208】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記ヘッドユニットは、前記駆動信号を受けて液体を吐出する第2プリントヘッドを有し、
前記第2プリントヘッドは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2圧力室の温度に対応する第2温度情報を検出し、第2温度信号として出力する第2温度検出部と、
を有し、
前記温度情報出力回路は、第2基準電位信号と前記第2温度信号との差分を増幅する第2増幅回路を有し、
前記基準電圧制御回路は、前記第2温度信号に応じた電圧値の前記第2基準電位信号を前記第2増幅回路に出力し、
前記出力制御回路は、前記第1増幅回路の出力、及び前記第2増幅回路の出力の少なくとも一方に応じた前記温度情報信号を出力してもよい。
【0209】
ヘッドユニットが第1温度信号を取得する第1増幅回路に加えて、第2温度信号を取得する第2増幅回路を有する場合であっても、この液体吐出装置によれば、ヘッドユニットにおいて、第2増幅回路が増幅する第2基準電位信号の電圧値を基準電圧制御回路が制御することで、第2温度検出部が出力する第2温度信号の電圧値であって、第2温度情報の電圧値にばらつきが生じた場合であっても、第2増幅回路は、ダイナミックレンジを確保した状態で第2温度信号を取得することができる。これにより、第2増幅回路における第2温度信号の取得精度が向上する。その結果、第2増幅回路の出力の精度も向上し、温度情報出力回路が、第2増幅回路の出力に応じて出力する温度情報信号の精度も向上する。すなわち、ヘッドユニットが複数の増幅回路を有し、複数の増幅回路は、対応する温度信号を取得する場合であっても、温度情報出力回路におけるプリントヘッドの温度の取得精度が向上する。
【0210】
上記液体吐出装置の一態様において、
記憶部を備え、
前記記憶部は、前記第1温度情報と前記第1プリントヘッドの周囲温度とに応じた第1基準電圧値と、前記第2温度情報と前記第2プリントヘッドの周囲温度とに応じた第2基準電圧値と、を記憶し、
前記基準電圧制御回路は、前記第1基準電圧値に応じた電圧値の前記第1基準電位信号と、前記第2基準電圧値に応じた電圧値の前記第2基準電位信号と、を出力してもよい。
【0211】
この液体吐出装置によれば、ヘッドユニットにおいて、第1温度検出部が出力する第1温度信号の電圧値であって第1温度情報の電圧値とプリントヘッドの周囲温度に応じて第1基準電圧値を算出し、第2温度検出部が出力する第2温度信号の電圧値であって第2温度情報の電圧値とプリントヘッドの周囲温度に応じて第2基準電圧値を算出し、記憶部は、算出した第1基準電圧値及び第2基準電圧値を記憶する。そして、基準電圧制御回路は、第1基準電位信号の電圧値を第1基準電圧値に基づいて制御し、第2基準電位信号の電圧値を第2基準電圧値に基づいて制御する。すなわち、基準電圧制御回路は、プリントヘッドの周囲温度を基準に算出された電圧値の第1基準電位信号、及び第2基準電位信号を出力する。これにより、基準電圧制御回路が出力する第1基準電位信号の電圧値、及び第2基準電位信号の電圧値の精度がさらに向上する。
【0212】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記第1温度検出部は、前記第1振動板の他方側の面に積層された配線パターンを含み、
前記配線パターンは、白金を含んでもよい。
【0213】
この液体吐出装置によれば、第1温度検出部が、温度に対して優れた線形性を有する白金を含む配線パターンを含み、当該配線パターンが第1振動板に積層されていることで、第1温度検出部を第1圧力室のより近傍に配置することができ、第1温度検出部による第1圧力室の温度に対応する第1温度情報の検出精度がさらに向上する。
【符号の説明】
【0214】
1…液体吐出装置、10…制御ユニット、20…ヘッドユニット、21…キャリッジ、22…プリントヘッド、24…温度検出回路、26…温度情報出力回路、28…温度検出回路、30…移動ユニット、31…キャリッジモーター、32…無端ベルト、40…搬送
ユニット、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、50…駆動回路、52…基準電圧出力回路、60…圧電素子、90…インク容器、92…リニアエンコーダー、100…制御回路、200…駆動信号選択回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、310…圧力室基板、311…隔壁、312…圧力室、312a,312b…端部、315…連通板、316…ノズル連通路、317…第1マニホールド部、318…第2マニホールド部、319…供給連通路、320…ノズルプレート、321…ノズル、330…保護基板、331…保持部、332…貫通孔、340…ケース部材、341…収容部、342…第3マニホールド部、343…接続口、344…供給口、345…コンプライアンス基板、346…封止膜、347…固定基板、348…開口部、349…コンプライアンス部、350…振動板、351…弾性膜、352…絶縁体膜、360…電極、360a,360b…端部、370…圧電体、370a,370b…端部、371…溝部、380…電極、380a,380b…端部、385…配線部、391…個別リード電極、392…共通リード電極、392a,392b…延設部、393,393a,393b…測定用リード電極、400…マニホールド、401…抵抗配線、410…活性部、415…非活性部、420…配線基板、421…集積回路、500…制御回路、502…要求解析部、504…温度情報出力部、506…メモリー制御部、510…増幅回路、511~514…抵抗、515…オペアンプ、520…増幅回路、530…マルチプレクサー、540,550…AD変換回路、560…DA変換回路、570…記憶回路、P…媒体
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