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特開2024-101353無線通信システムおよび無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101353
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】無線通信システムおよび無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20240722BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20240722BHJP
   H04W 28/16 20090101ALI20240722BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04W4/42
H04W28/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005301
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 芳人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 陽敏
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】基地局の配置などの制約がなく、ビート干渉を解消することが可能で、かつ、Tx1/Tx2の信号レベル比が0dBであっても1つのアンテナで受信し、復調可能な無線通信システムおよび無線通信方法を提供する。
【解決手段】時間差を設けて送信されたデータフレームDF_AおよびDF_Bの一方を復調対象データフレーム、他方をキャンセルデータフレームとし、復調対象データフレームから、キャンセルデータフレームのレプリカデータを生成し、データフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bの合成データフレームDF_A+DF_Bからキャンセルデータフレームのレプリカデータを差し引いて復調対象データフレームのブロックデータのみを抽出し、復調する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調された同一のデータフレームを同一周波数で送信する無線送信装置を備えた複数の基地局と、前記データフレームを受信して復調する無線受信装置を備えた移動局と、を備える無線通信システムであって、
前記複数の無線送信装置は、
既知のヘッダデータと、前記ヘッダデータと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、前記ヘッダデータと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、前記無データ区間の長さが前記ヘッダデータのデータ長以上とされた前記データフレームを、前記ヘッダデータのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信し、
前記無線受信装置は、
複数の前記データフレームが空間上で合成された合成データフレームを受信する受信手段と、
受信した前記合成データフレームから、所定の前記データフレームを分離して復調する復調手段と、を備え、
前記復調手段は、
複数の前記データフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとし、受信時刻が他のデータと重なっていない前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理と、
前記復調データを前記ヘッダデータに基づいて再変調し、前記キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理と、
異なる前記データフレームの前記ブロックデータ同士が合成された合成ブロックデータから前記レプリカデータを差し引いて、前記復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理と、を実行し、
前記ブロックデータ分離処理により分離された前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第2の復調処理と、前記第2の復調処理により生成された復調データに基づく前記レプリカデータ生成処理および前記ブロックデータ分離処理とを、前記復調対象データフレームの全てのブロックデータの復調が終了するまで繰り返す、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記復調手段は、
前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームのうち、最初に送信された前記データフレームを前記復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとする、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記復調手段は、
前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームのうち、最初に送信された前記データフレームの信号レベルと、最後に送信された前記データフレームの信号レベルとを比較し、
最初に送信された前記データフレームの信号レベルが最後に送信された前記データフレームの信号レベルよりも所定値以上高い場合には、前記第1の復調処理と、前記レプリカデータ生成処理と、前記ブロックデータ分離処理と、前記第2の復調処理と、を行なわずに、最初に送信された前記データフレームのみを復調する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線受信装置は、
複数の前記無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームの1フレーム分と、次フレームの前記ヘッダデータと、が合成された前記合成データフレームを記憶する記憶手段を備え、
前記復調手段は、
前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームのうち、最初に送信された前記データフレームの信号レベルと、最後に送信された前記データフレームの信号レベルとを比較し、
最初に送信された前記データフレームの信号レベルが、最後に送信された前記データフレームの信号レベルよりも高いときには、最初に送信された前記データフレームを前記復調対象データフレームとし、前記次フレームの前記ヘッダデータを前記レプリカデータ生成処理に用い、
最後に送信された前記データフレームの信号レベルが、最初に送信された前記データフレームの信号レベルよりも高いときには、最後に送信された前記データフレームを前記復調対象データフレームとし、最初に送信された前記データフレームの前記ヘッダデータを前記レプリカデータ生成処理に用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記復調手段は、
最初に送信された前記データフレームの信号レベルと、最後に送信された前記データフレームの信号レベルとの差が所定値以上である場合には、前記第1の復調処理と、前記レプリカデータ生成処理と、前記ブロックデータ分離処理と、前記第2の復調処理と、を行なわずに、信号レベルが高い方の前記データフレームのみを復調する、
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
変調された同一のデータフレームを同一周波数で送信する無線送信装置を備えた複数の基地局と、前記データフレームを受信して復調する無線受信装置を備えた移動局と、を備える無線通信システムであって、
前記複数の無線送信装置は、
既知のヘッダデータと、前記ヘッダデータと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、前記ヘッダデータと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、前記無データ区間の長さが前記ヘッダデータのデータ長以上とされた前記データフレームを、前記ヘッダデータのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信し、
前記無線受信装置は、
複数の前記データフレームが空間上で合成された合成データフレームを受信する受信手段と、
受信した前記合成データフレームから、所定の前記データフレームを復調する復調手段と、を備え、
前記復調手段は、
複数の前記データフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとするフレームセットを複数生成するフレームセット生成処理、を実行し、
前記複数のフレームセットごとに、
受信時刻が他のデータと重なっていない前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理と、
前記復調データを前記ヘッダデータに基づいて再変調し、前記キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理と、
異なる前記データフレームの前記ブロックデータ同士が合成された合成ブロックデータから前記レプリカデータを差し引いて、前記復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理と、を実行し、
前記ブロックデータ分離処理により分離された前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第2の復調処理と、前記第2の復調処理により生成された復調データに基づく前記レプリカデータ生成処理および前記ブロックデータ分離処理とを、前記復調対象データフレームの全てのブロックデータが分離されるまで繰り返し、
前記複数のフレームセットごとに得られた前記復調対象データフレームのブロックデータを合成して、復調する第3の復調処理を実行する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
複数の基地局の無線送信装置から変調された同一のデータフレームを同一周波数で送信し、移動局の無線受信装置により前記データフレームを受信して復調する無線通信方法であって、
前記複数の無線送信装置は、
既知のヘッダデータと、前記ヘッダデータと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、前記ヘッダデータと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、前記無データ区間の長さが前記ヘッダデータのデータ長以上とされた前記データフレームを、前記ヘッダデータのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信し、
前記無線受信装置は、
前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームが空間上で合成された合成データフレームを受信し、受信した前記合成データフレームから所定の前記データフレームを分離して復調するに際し、
複数の前記データフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとし、受信時刻が他のデータと重なっていない前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理と、
前記復調データを前記ヘッダデータに基づいて再変調し、前記キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理と、
異なる前記データフレームの前記ブロックデータ同士が合成された合成ブロックデータから前記レプリカデータを差し引いて、前記復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理と、を実行し、
前記ブロックデータ分離処理により分離された前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第2の復調処理と、前記第2の復調処理により生成された復調データに基づく前記レプリカデータ生成処理および前記ブロックデータ分離処理とを、前記復調対象データフレームの全てのブロックデータの復調が終了するまで繰り返す、
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
複数の基地局の無線送信装置から変調された同一のデータフレームを同一周波数で送信し、移動局の無線受信装置により前記データフレームを受信して復調する無線通信方法であって、
前記複数の無線送信装置は、
既知のヘッダデータと、前記ヘッダデータと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、前記ヘッダデータと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、前記無データ区間の長さが前記ヘッダデータのデータ長以上とされた前記データフレームを、前記ヘッダデータのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信し、
前記無線受信装置は、
前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームが空間上で合成された合成データフレームを受信し、受信した前記合成データフレームから所定の前記データフレームを分離して復調するに際し、
複数の前記データフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとするフレームセットを複数生成するフレームセット生成処理、を実行し、
前記複数のフレームセットごとに、
受信時刻が他のデータと重なっていない前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理と、
前記復調データを前記ヘッダデータに基づいて再変調し、前記キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理と、
異なる前記データフレームの前記ブロックデータ同士が合成された合成ブロックデータから前記レプリカデータを差し引いて、前記復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理と、を実行し、
前記ブロックデータ分離処理により分離された前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第2の復調処理と、前記第2の復調処理により生成された復調データに基づく前記レプリカデータ生成処理および前記ブロックデータ分離処理とを、前記復調対象データフレームの全てのブロックデータが分離されるまで繰り返し、
前記複数のフレームセットごとに得られた前記復調対象データフレームのブロックデータを合成して、復調する第3の復調処理を実行する、
ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビート干渉に対応した無線通信を行なう無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
列車と指令所が通信を行なうための無線通信システムは、図14(A)に示すように、線路(図示せず)に沿って配置された複数の基地局BS1、BS2・・・と、列車に搭載された移動局MS1とにより構成されている。複数の基地局BS1、BS2は、送信波が到達する通信エリアが互いに重なるように配置されており、同じデータの送信波Tx1、Tx2を同じ周波数を用いて同報的に送信する。これにより、移動局MS1は、線路上のどの位置にいる場合でも同じ搬送波周波数で送信波Tx1または送信波Tx2を受信することができる。
【0003】
このような無線通信システムにおいて、図14(B)に示すように、送信波Tx1に対して送信波Tx2が逆相となり、Tx1/Tx2の信号レベル比が0dBとなるエリアでは、送信波Tx1と送信波Tx2との合成波Tx1+Tx2に同一波干渉(以下、ビート干渉ともいう)が発生し、信号レベルが0となる地点が複数発生する。図14(A)、(B)に縦線で描いたように、ビート干渉は縞状に発生するが、このビート干渉発生地点から外れた位置にある移動局MS2、MS3は、基地局BS1またはBS2と通信を行なうことができる。これに対し、ビート干渉発生地点にある移動局MS4は、基地局BS1およびBS2と通信を行なうことができない。また、列車に搭載されて矢印方向に移動する移動局MS1は、ビート干渉発生地点と、それ以外の地点とを交互に移動するため、通信が断続的になる。ただし高速移動する場合通信断は短時間となり、誤り訂正により実用上の問題にはならない。
【0004】
受信機の位置を動かすことなく、ビート干渉発生地点を避けるためには、受信アンテナを2つ用意し、アンテナ間隔を電波の半波長分あける手法もある。そうすることにより、少なくともどちらか一方のアンテナが、信号を受信できる確率が上昇する。しかし、アンテナ間隔を半波長確保するためには受信装置の大型化が問題となる。さらに、縞状に分布するビート干渉発生地点に、たまたま並行に一致して2つのアンテナが位置した場合には、いずれのアンテナでも信号を受信できない。
【0005】
したがって、静止または、低速で移動している移動局における通信断を抑制するには、縞状に発生するビート干渉発生地点を距離軸(図14(B)の水平軸)に対して高速に移動させればよい。ビート干渉発生地点を距離軸方向に移動させるには、(1)2つの送信波の周波数が異なること、(2)2つの送信波の振幅が変動すること、(3)2つの送信波の位相差が変動すること、のいずれかの手法を用いることができる。
【0006】
例えば、特許文献1に記載の無線通信システムでは、第1基地局では通信データを第1マッピングに基づき4値FSK変調を行なって移動局へ送信し、第2基地局では通信データを第2マッピングに基づき4値FSK変調を行なって移動局へ送信するようにしている。これによれば、第1基地局から送信される送信波の周波数と、第2基地局からの送信される送信波の周波数とが異なることになるので、縞状のビート発生地点が常時移動し、ビート干渉を抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-166293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の無線通信システムでは、同じマッピングを用いる基地局の通信エリアが重ならないようにしなければならない。そのため、第1マッピングを用いる基地局と、第2マッピングを用いる基地局とを交互に配置するなど、基地局の配置などに制約が生じてしまう。また、第1のマッピングと第2のマッピングが異なることは、ビート干渉抑制には寄与するものの、見方を変えれば互いに妨害波なのであり、Tx1/Tx2の信号レベル比が0dBで受信した場合、受信機は従来のFSK復調器では復調できない。また、その具体的な復調方法もまだ示されていない。
【0009】
そこで本発明は、基地局の配置などの制約がなく、ビート干渉を解消することが可能で、かつ、Tx1/Tx2の信号レベル比が0dBであっても1つのアンテナで受信し、復調可能な無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、変調された同一のデータフレームを同一周波数で送信する無線送信装置を備えた複数の基地局と、前記データフレームを受信して復調する無線受信装置を備えた移動局と、を備える無線通信システムであって、前記複数の無線送信装置は、既知のヘッダデータと、前記ヘッダデータと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、前記ヘッダデータと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、前記無データ区間の長さが前記ヘッダデータのデータ長以上とされた前記データフレームを、前記ヘッダデータのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信し、前記無線受信装置は、複数の前記データフレームが空間上で合成された合成データフレームを受信する受信手段と、受信した前記合成データフレームから、所定の前記データフレームを分離して復調する復調手段と、を備え、前記復調手段は、複数の前記データフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとし、受信時刻が他のデータと重なっていない前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理と、前記復調データを前記ヘッダデータに基づいて再変調し、前記キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理と、異なる前記データフレームの前記ブロックデータ同士が合成された合成ブロックデータから前記レプリカデータを差し引いて、前記復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理と、を実行し、前記ブロックデータ分離処理により分離された前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第2の復調処理と、前記第2の復調処理により生成された復調データに基づく前記レプリカデータ生成処理および前記ブロックデータ分離処理とを、前記復調対象データフレームの全てのブロックデータの復調が終了するまで繰り返す、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線通信システムにおいて、前記復調手段は、前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームのうち、最初に送信された前記データフレームを前記復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとする、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の無線通信システムにおいて、前記復調手段は、前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームのうち、最初に送信された前記データフレームの信号レベルと、最後に送信された前記データフレームの信号レベルとを比較し、最初に送信された前記データフレームの信号レベルが最後に送信された前記データフレームの信号レベルよりも所定値以上高い場合には、前記第1の復調処理と、前記レプリカデータ生成処理と、前記ブロックデータ分離処理と、前記第2の復調処理と、を行なわずに、最初に送信された前記データフレームのみを復調する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の無線通信システムにおいて、前記無線受信装置は、複数の前記無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームの1フレーム分と、次フレームの前記ヘッダデータと、が合成された前記合成データフレームを記憶する記憶手段を備え、前記復調手段は、前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームのうち、最初に送信された前記データフレームの信号レベルと、最後に送信された前記データフレームの信号レベルとを比較し、最初に送信された前記データフレームの信号レベルが、最後に送信された前記データフレームの信号レベルよりも高いときには、最初に送信された前記データフレームを前記復調対象データフレームとし、前記次フレームの前記ヘッダデータを前記レプリカデータ生成処理に用い、最後に送信された前記データフレームの信号レベルが、最初に送信された前記データフレームの信号レベルよりも高いときには、最後に送信された前記データフレームを前記復調対象データフレームとし、最初に送信された前記データフレームの前記ヘッダデータを前記レプリカデータ生成処理に用いる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の無線通信システムにおいて、前記復調手段は、最初に送信された前記データフレームの信号レベルと、最後に送信された前記データフレームの信号レベルとの差が所定値以上である場合には、前記第1の復調処理と、前記レプリカデータ生成処理と、前記ブロックデータ分離処理と、前記第2の復調処理と、を行なわずに、信号レベルが高い方の前記データフレームのみを復調する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、変調された同一のデータフレームを同一周波数で送信する無線送信装置を備えた複数の基地局と、前記データフレームを受信して復調する無線受信装置を備えた移動局と、を備える無線通信システムであって、前記複数の無線送信装置は、既知のヘッダデータと、前記ヘッダデータと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、前記ヘッダデータと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、前記無データ区間の長さが前記ヘッダデータのデータ長以上とされた前記データフレームを、前記ヘッダデータのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信し、前記無線受信装置は、複数の前記データフレームが空間上で合成された合成データフレームを受信する受信手段と、受信した前記合成データフレームから、所定の前記データフレームを復調する復調手段と、を備え、前記復調手段は、複数の前記データフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとするフレームセットを複数生成するフレームセット生成処理、を実行し、前記複数のフレームセットごとに、受信時刻が他のデータと重なっていない前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理と、前記復調データを前記ヘッダデータに基づいて再変調し、前記キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理と、異なる前記データフレームの前記ブロックデータ同士が合成された合成ブロックデータから前記レプリカデータを差し引いて、前記復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理と、を実行し、前記ブロックデータ分離処理により分離された前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第2の復調処理と、前記第2の復調処理により生成された復調データに基づく前記レプリカデータ生成処理および前記ブロックデータ分離処理とを、前記復調対象データフレームの全てのブロックデータが分離されるまで繰り返し、前記複数のフレームセットごとに得られた前記復調対象データフレームのブロックデータを合成して、復調する第3の復調処理を実行する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、複数の基地局の無線送信装置から変調された同一のデータフレームを同一周波数で送信し、移動局の無線受信装置により前記データフレームを受信して復調する無線通信方法であって、前記複数の無線送信装置は、既知のヘッダデータと、前記ヘッダデータと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、前記ヘッダデータと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、前記無データ区間の長さが前記ヘッダデータのデータ長以上とされた前記データフレームを、前記ヘッダデータのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信し、前記無線受信装置は、前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームが空間上で合成された合成データフレームを受信し、受信した前記合成データフレームから所定の前記データフレームを分離して復調するに際し、複数の前記データフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとし、受信時刻が他のデータと重なっていない前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理と、前記復調データを前記ヘッダデータに基づいて再変調し、前記キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理と、異なる前記データフレームの前記ブロックデータ同士が合成された合成ブロックデータから前記レプリカデータを差し引いて、前記復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理と、を実行し、前記ブロックデータ分離処理により分離された前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第2の復調処理と、前記第2の復調処理により生成された復調データに基づく前記レプリカデータ生成処理および前記ブロックデータ分離処理とを、前記復調対象データフレームの全てのブロックデータの復調が終了するまで繰り返す、ことを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、複数の基地局の無線送信装置から変調された同一のデータフレームを同一周波数で送信し、移動局の無線受信装置により前記データフレームを受信して復調する無線通信方法であって、前記複数の無線送信装置は、既知のヘッダデータと、前記ヘッダデータと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、前記ヘッダデータと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、前記無データ区間の長さが前記ヘッダデータのデータ長以上とされた前記データフレームを、前記ヘッダデータのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信し、前記無線受信装置は、前記複数の無線送信装置から時間差を設けて送信された複数の前記データフレームが空間上で合成された合成データフレームを受信し、受信した前記合成データフレームから所定の前記データフレームを分離して復調するに際し、複数の前記データフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、前記復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとするフレームセットを複数生成するフレームセット生成処理、を実行し、前記複数のフレームセットごとに、受信時刻が他のデータと重なっていない前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理と、前記復調データを前記ヘッダデータに基づいて再変調し、前記キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理と、異なる前記データフレームの前記ブロックデータ同士が合成された合成ブロックデータから前記レプリカデータを差し引いて、前記復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理と、を実行し、前記ブロックデータ分離処理により分離された前記復調対象データフレームのブロックデータを復調して復調データを生成する第2の復調処理と、前記第2の復調処理により生成された復調データに基づく前記レプリカデータ生成処理および前記ブロックデータ分離処理とを、前記復調対象データフレームの全てのブロックデータが分離されるまで繰り返し、前記複数のフレームセットごとに得られた前記復調対象データフレームのブロックデータを合成して、復調する第3の復調処理を実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1および7に記載の発明によれば、時間差を設けて複数のデータフレームを送信するので、変調方式がFSKの場合、同時刻に受信したブロックデータはミクロで見ると周波数は異なるものとなり、縞状のビート干渉発生地点を移動させることが可能である。変調方式がPSKやQAMの場合、同時刻に受信したブロックデータはミクロで見ると周波数および位相差が変動し、縞状のビート干渉発生地点を移動させることが可能である。その結果、受信機は1つのアンテナであってもビート干渉の影響を受けることなく受信可能になる。さらにアンテナ1つで済むので、受信装置の大型化が避けられる。
【0019】
また、請求項1および7に記載の発明によれば、復調対象データフレームのブロックデータに基づいて、キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成し、このレプリカデータを利用して合成ブロックデータから復調対象データフレームのブロックデータを分離するようにしたので、合成データフレームから復調対象データフレームのみを分離して復調することが可能となる。さらに、時間差のある複数のデータフレームが合成された合成データフレームを受信して処理することにより、基地局の配置に制約を受けなくなる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、複数の基地局から時間差を設けて送信された複数のデータフレームのうち、最初に送信されたデータフレームを復調対象データフレームとして採用するようにしたので、以降の処理により迅速に着手することができ、復調処理の効率化を図ることが可能である。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、最初に送信されたデータフレームの信号レベルと、最後に送信されたデータフレームの信号レベルとを比較し、最初に送信されたデータフレームの信号レベルが最後に送信されたデータフレームの信号レベルよりも所定値以上高い場合には、第1の復号処理などを行なわずに、最初に送信されたデータフレームのみを復調するので、復調処理にかかる負荷を軽減し、処理時間を短縮することが可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、複数のデータフレームの1フレーム分と、次フレームのヘッダデータとを記憶し、最初に送信されたデータフレームの信号レベルと、最後に送信されたデータフレームの信号レベルとを比較し、最初に送信されたデータフレームの信号レベルが、最後に送信されたデータフレームの信号レベルよりも高いときには、最初に送信されたデータフレームを復調対象データフレームとする。また、これとは逆に、最後に送信されたデータフレームの信号レベルが、最初に送信されたデータフレームの信号レベルよりも高いときには、最後に送信されたデータフレームを復調対象データフレームとする。これにより、より信号レベルが高いデータフレームを復調することができるので、復調処理の精度を向上させることが可能である。また、最後に送信されたデータフレームを復調対象データフレームとする場合には、そのデータフレームの信号レベルにより近い次フレームのヘッダデータをレプリカデータ生成処理に用いるので、復調処理の精度をより向上させることが可能である。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、最初に送信されたデータフレームの信号レベルと、最後に送信されたデータフレームの信号レベルとの差が所定値以上である場合には、第1の復号処理などを行なわずに、信号レベルが高い方のデータフレームのみを復調するので、復調処理の精度が向上するとともに、復調処理にかかる負荷を軽減し、処理時間を短縮することが可能となる。
【0024】
請求項6および8に記載の発明によれば、時間差を設けて複数のデータフレームを送信するので、同時刻に受信したブロックデータはミクロで見ると周波数は異なるものとなり、ビート干渉の発生を抑制することが可能である。また、復調対象データフレームとキャンセルデータフレームとからなるフレームセットを複数生成し、フレームセットごとにレプリカデータを利用して合成ブロックデータから復調対象データフレームのブロックデータを生成し、フレームセットごとに得られた復調対象データフレームのブロックデータを合成して復調するようにしたので、復調処理の精度をより向上させることが可能である。さらに、複数のデータフレームが合成された合成データフレームを受信して処理することが可能であるため、基地局の配置に制約を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の実施の形態1に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
図2図1に示す基地局から送信されるデータフレームの構成を示す図である。
図3図1に示す移動局の無線通信装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図4】実施の形態1における復調処理の手順を示すフローチャートである。
図5】実施の形態1における復調処理を示す処理ブロック図である。
図6】実施の形態2において基地局から送信されるデータフレームの構成を示す図である。
図7】実施の形態2における復調処理を示す処理ブロック図である。
図8】実施の形態3における復調処理の手順を示すフローチャートである。
図9】実施の形態4にて用いられる移動局の無線通信装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図10】実施の形態4においてバッファリングされるデータフレームの範囲を示す図である。
図11】実施の形態4における復調処理の手順を示すフローチャートである。
図12】実施の形態4における、DF_Bを復調対象に設定した場合の復調処理を示す処理ブロック図である。
図13】実施の形態5における復調処理を示す処理ブロック図である。
図14】従来の無線通信システムにおけるビート干渉の発生状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、この発明の特徴的な構成について説明し、無線通信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を省略する。
【0027】
図1は、この発明の実施の形態に係る無線通信システム1の概略構成を示す図である。無線通信システム1は、例えば、列車と通信を行なうためのものであり、線路(図示せず)に沿って設置された複数の基地局、例えば基地局Aおよび基地局B(以下、A局およびB局ともいう)と、列車に搭載されて移動する移動局Dと、を備えている。基地局Aおよび基地局Bは、それぞれ無線通信装置(無線送信装置)2を備えており、移動局Dは無線通信装置(無線受信装置)3を備えている。これらの無線通信装置2および無線通信装置3は、アンテナ2aおよびアンテナ3aを介して無線回線4によって相互に接続される。
【0028】
この実施の形態に係る無線通信システム1は、複数の基地局Aおよび基地局Bから変調して送信された同一周波数の同一データフレームを移動局Dによって受信して復調するに際し、基地局Aと基地局Bとの送信波によって発生するビート干渉を抑制するものである。
【0029】
本実施の形態に係る基地局Aおよび基地局Bの無線通信装置2は、上述したビート干渉を抑制するために、既知の同期ワード(ヘッダデータ)と、同期ワードと同じデータ長を有する複数個のブロックデータと、同期ワードと先頭のブロックデータとの間に配置された無データ区間と、を備え、無データ区間の長さが同期ワードのデータ長以上とされたデータフレームを、同期ワードのデータ長に相当する時間差を設けてそれぞれ送信する。
【0030】
図2は、基地局Aおよび基地局Bから送信されるデータフレームの一例を示している。基地局AのデータフレームDF_Aは、例えば、FSK変調されたものであり、左端の先頭側から順に、同期ワードSW_A(SW:Sync Word)と、無データ区間ND_Aと、複数個、例えば7個のブロックデータBD_Aとを備えている。ブロックデータBD_Aには、ブロック番号A1、A2、A3、A4、A5、A6およびA7がそれぞれ付されている。
【0031】
同期ワードSW_Aは、所定のデータ長(シンボル数)Nを備える既知のデータであり、データフレームDF_Aの先頭を示す。無データ区間ND_Aは、A局のデータフレームDF_Aと、B局のデータフレームDF_Bとを移動局Dで同時に受信する際に、データフレームDF_Bの同期ワードSW_Bが他のデータと重ならずに(言い換えれば、合成されずに)単独で受信できるようにするために設けられている。無データ区間ND_Aの長さは、同期ワードSW_Aのデータ長Nよりも長いことが望ましく、本実施の形態では、同期ワードSW_Aのデータ長Nと同一である。
【0032】
ブロックデータBD_AのA1、A2、A3、A4、A5、A6およびA7には、変調された伝送データがそれぞれ格納されている。また、ブロックデータBD_AのA1、A2、A3、A4、A5、A6およびA7のデータ長(シンボル数)は、同期ワードSW_Aのデータ長Nと同一である。
【0033】
基地局Bから送信されるデータフレームDF_Bは、左端の先頭側から順に、同期ワードSW_Bと、無データ区間ND_Bと、複数個、例えば7個のブロックデータBD_Bとを備えている。データフレームDF_Bは、基地局AのデータフレームDF_Aと同一のものであり、同期ワードSW_B、無データ区間ND_BおよびブロックデータBD_Bは、それぞれ同期ワードSW_A、無データ区間ND_AおよびブロックデータBD_Aに対応する。
【0034】
ブロックデータBD_Bには、ブロック番号B1、B2、B3、B4、B5、B6およびB7がそれぞれ付されている。ブロックデータBD_BのB1、B2、B3、B4、B5、B6およびB7に格納されている伝送データは、データフレームDF_AのブロックデータBD_AのA1、A2、A3、A4、A5、A6およびA7に格納されている伝送データと同一である。
【0035】
無データ区間ND_Bは、A局のデータフレームDF_Aと、B局のデータフレームDF_Bとを移動局Dで同時に受信する際に、データフレームDF_Aの先頭のブロックデータBD_A1が他のデータと重ならずに(言い換えれば、合成されずに)単独で受信できるようにするために設けられている。
【0036】
基地局Aおよび基地局Bは、例えば、列車の運行を管理する運行管理センターの中央制御装置(図示せず)に接続されている。基地局Aおよび基地局Bは、この中央制御装置から受信した伝送データを変調してデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bに変換し、中央制御装置の指示にしたがってデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bを送信する。その際に、基地局Bは、最初に送信されるデータフレームDF_Aの送信に対し、同期ワードSW_Aのデータ長に相当する時間差を設けてデータフレームDF_Bを送信する。すなわち、基地局Bは、データフレームDF_Aに対して、データフレームDF_Bをデータ長N分だけ遅延送信する。データフレームDF_BをデータフレームDF_Aに対して遅延送信するのは、移動局DがデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bを同時に受信する際に、無データ区間ND_Aおよび無データ区間ND_Bを利用して、同期ワードSW_Aと、同期ワードSW_Bと、データフレームDF_Aの先頭のブロックデータBD_AのA1とを他のデータと重ならず(合成されずに)に単独で受信できるようにするためである。
【0037】
図3は、移動局Dの無線通信装置3の概略構成を示す機能ブロック図である。無線通信装置3は、データフレームの送信に用いられる変調器31および送信部32を備えるとともに、データフレームの受信に用いられる受信部(受信手段)33および復調器(復調手段)34を備え、さらに、インターフェース部35を備える。
【0038】
インターフェース部35は、主として、データ回線終端装置351(データ通信装置やデータ回線装置と呼ばれる機器を含む)を備える。インターフェース部35は、通信対象の伝送データの入力を受け、前記伝送データを、データ回線終端装置351を介して、変調器31へと出力する。
【0039】
変調器31は、インターフェース部35から出力される伝送データの入力を受け、前記伝送データに同期ワードを挿入してデータフレームを生成し、さらに、前記データフレームに所定の周波数の搬送波信号を重畳させてデジタル変調して出力する。なお、無線通信システム1において用いられる変調方式は、FSKに限定されるものではなく、PSK、QAMなどを用いてもよい。
【0040】
送信部32は、変調器31から出力されるデジタル変調されたデータフレームの入力を受け、前記データフレームを、D/A変換器でデジタル-アナログ変換した上で、局部発振器および混合器によって高周波の信号に変換する。送信部32は、また、周波数変換したデータフレームを、所定の周波数帯域の信号のみを通過させる送信フィルタを通過させるとともにパワーアンプで増幅した上で出力する。
【0041】
そして、変調器31においてデジタル変調されるとともに送信部32において周波数変換されたデータフレームは、送信部32から分波器36を介してアンテナ3aへと導かれ、アンテナ3aから無線回線4を介して基地局Aおよび基地局Bの無線通信装置2のアンテナ2aへと、電波として送信される。
【0042】
また、基地局Aおよび基地局Bの無線通信装置2のアンテナ2aからデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bが電波として送信されると、データフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bは空間を伝搬する過程で合成され、合成データフレームDF_A+DF_B(図5参照)が生成される。合成データフレームDF_A+DF_Bが移動局Dの無線通信装置3のアンテナ3aによって受信されると、アンテナ3aは、受信した合成データフレームDF_A+DF_Bを電気信号へと変換して出力する。
【0043】
アンテナ3aから出力される、電気信号に変換された合成データフレームDF_A+DF_Bは、分波器36を介して受信部33へと導かれる。
【0044】
受信部33は、合成データフレームDF_A+DF_Bの入力を受け、前記合成データフレームDF_A+DF_Bを、所定の周波数帯域の信号のみを通過させる受信フィルタを通過させるとともにプリアンプで増幅した上で、局部発振器および混合器によって低い周波数の信号に変換する。
【0045】
受信部33は、さらに、前記周波数変換した信号を、パワーアンプで増幅するとともにA/D変換器でアナログ-デジタル変換して、デジタル信号からなる合成データフレームDF_A+DF_Bを出力する。
【0046】
復調器34は、受信部33から出力される合成データフレームDF_A+DF_Bの入力を受け、合成データフレームDF_A+DF_Bの復調処理を行なって伝送データを取り出し、取り出した伝送データをインターフェース部35へと出力する。
【0047】
次に、移動局Dの復調器34によって実行される復調処理について、図4に示すフローチャートと、図5に示す処理ブロック図とを用いて説明する。復調器34は、比較処理S1と、第1の復調処理S2と、レプリカデータ生成処理S3と、ブロックデータ分離処理S4と、第2の復調処理S5と、を実行する。
【0048】
合成データフレームDF_A+DF_Bは、図5に示すように、基地局Aおよび基地局Bから時間差を設けて送信された複数のデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bに含まれる同期ワードSW_Aと、同期ワードSW_Bと、ブロックデータBD_Aと、ブロックデータBD_Bとが送信順に並ぶように合成されている。図2に示すように、データフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bには、無データ区間ND_Aおよび無データ区間ND_Bが存在するため、同期ワードSW_Bは無データ区間ND_Aの位置に配置され、ブロックデータBD_AのA1は、無データ区間ND_Bの位置に配置される。
【0049】
また、複数のブロックデータBD_AのA1~A7およびブロックデータBD_BのB1~B7のうち、同時刻に送信されたブロックデータ同士は合成されて合成ブロックデータが生成される。
【0050】
具体的には、ブロックデータBD_AのA2と、ブロックデータBD_BのB1とが合成されて合成ブロックデータA2+B1が生成される。同様に、ブロックデータBD_AのA3と、ブロックデータBD_BのB2とが合成されて合成ブロックデータA3+B2が生成され、ブロックデータBD_AのA4と、ブロックデータBD_BのB3とが合成されて合成ブロックデータA4+B3が生成され、ブロックデータBD_AのA5と、ブロックデータBD_BのB4とが合成されて合成ブロックデータA5+B4が生成され、ブロックデータBD_AのA6と、ブロックデータBD_BのB5とが合成されて合成ブロックデータA6+B5が生成され、ブロックデータBD_AのA7と、ブロックデータBD_BのB6と、が合成されて合成ブロックデータA7+B6が生成される。なお、ブロックデータBD_BのB7は、他のデータと受信時刻が重ならないため、合成ブロックデータA7+B6の後ろに配置される。
【0051】
比較処理S1では、受信した同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bを比較する。具体的には、受信した複数の同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bと、移動局Dの無線通信装置3が予め基準データとして記憶している同期ワード(以下、参照信号という)との相関を相関器によって求めることにより、データフレームDF_Aの信号レベルと、データフレームDF_Bの信号レベルとを比較し(例えば、B/Aレベル比)、データフレームDF_AとデータフレームDF_Bとの位相差Δθとを計算する。
【0052】
第1の復調処理S2では、受信した合成データフレームDF_A+DF_Bに含まれる複数のデータフレームのうちの1つを復調対象データフレームとし、復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとし、復調対象データフレームに含まれるブロックデータのうち、受信時刻が他のデータと重なっていないブロックデータを復調して復調データを生成する。
【0053】
具体的には、複数の基地局Aおよび基地局Bから時間差を設けて送信された複数のデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bのうち、最初に送信されたデータフレームDF_Aを復調対象データフレームとし、復調対象データフレーム以外のデータフレームDF_Bをキャンセルデータフレームとする。
【0054】
さらに、第1の復調処理S2では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aに含まれるブロックデータのうち、受信時刻が他のデータと重なっていないブロックデータ、すなわち、ブロックデータBD_AのA1を復調して復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_AのA1から取り出された伝送データTD_A1となる。
【0055】
レプリカデータ生成処理S3では、第1の復調処理S2にて生成された復調データを比較処理S1の比較結果に基づいて再変調し、キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成する。具体的には、第1の復調処理S2にて生成された復調データを、比較処理S1の比較結果であるB/Aレベル比、AB位相差に基づいて再変調し、振幅と位相を調整してブロックデータBD_BのB1のレプリカデータ(レプリカB1)を生成する。
【0056】
ブロックデータ分離処理S4では、合成ブロックデータからレプリカデータを差し引いて、復調対象データフレームのブロックデータを生成する。具体的には、合成ブロックデータA2+B1から、レプリカデータ生成処理S3にて生成されたレプリカB1を減算器によって差し引くことにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_AのブロックデータBD_AのA2を分離する。
【0057】
第2の復調処理S5では、ブロックデータ分離処理S4により分離されたブロックデータを復調して復調対象データフレームの復調データを生成する。具体的には、ブロックデータ分離処理S4により分離されたブロックデータBD_AのA2を復調して、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_AのA2から取り出された伝送データTD_A2となる。
【0058】
次のステップS6では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの全てのブロックデータの復調が終了したか否かが判定される。上述したように、1巡目の第2の復調処理S5では、データフレームDF_AのブロックデータBD_AのA2までしか復調していないため、レプリカデータ生成処理S3に戻る。
【0059】
2巡目のレプリカデータ生成処理S3では、第2の復調処理S5にて生成された復調データTD_A2を、比較処理S1の比較結果に基づいて再変調し、振幅と位相を調整してブロックデータBD_BのB2のレプリカデータ(レプリカB2)を生成する。
【0060】
2巡目のブロックデータ分離処理S4では、合成ブロックデータA3+B2から、レプリカデータ生成処理S3にて生成されたレプリカB2を減算器によって差し引くことにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_AのブロックデータBD_AのA3を生成する。
【0061】
2巡目の第2の復調処理S5では、ブロックデータ分離処理S4により分離されたブロックデータBD_AのA3を復調して、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_AのA3から取り出された伝送データTD_A3となる。
【0062】
2巡目のステップS5では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの全てのブロックデータの復調が終了したか否かが判定される。上述したように、2巡目の第2の復調処理S5は、データフレームDF_AのブロックデータBD_AのA3までしか復調していないため、レプリカデータ生成処理S3に戻る。
【0063】
以上のように、復調器34は、データフレームDF_Aの全てのブロックデータの復調が終了するまでステップS3~S6を繰り返す。これにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの復調データである、伝送データTD_A1、TD_A2、TD_A3、TD_A4、TD_A5、TD_A6およびTD_A7を得ることができる。取得した伝送データTD_A1、TD_A2、TD_A3、TD_A4、TD_A5、TD_A6およびTD_A7は、復調器34からインターフェース部35へと出力される。
【0064】
以上で説明したように、実施の形態1に係る無線通信システム1によれば、時間差を設けて複数のデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bを送信するので、同時刻に受信したブロックデータBD_AおよびブロックデータBD_Bミクロで見ると周波数は異なるものとなり、ビート干渉の発生を抑制することが可能である。また、復調対象データフレームのブロックデータ(例えばブロックデータBD_AのA1)に基づいて、キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータ(例えば、レプリカB1)を生成し、このレプリカデータを利用して合成ブロックデータから復調対象データフレームのブロックデータ(例えば、データフレームDF_AのA2)を分離するようにしたので、合成データフレームDF_A+DF_Bから復調対象データフレームのみを分離して復調することが可能となる。さらに、合成データフレームDF_A+DF_Bを受信して処理することが可能であるため、基地局の配置に制約を受けない。
【0065】
また、実施の形態1に係る無線通信システム1によれば、複数の基地局Aおよび基地局Bから時間差を設けて送信された複数のデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bのうち、最初に送信されたデータフレームDF_Aを復調対象データフレームとして採用するようにしたので、以降の処理をより迅速に着手することができ、復調処理の効率化を図ることが可能である。
【0066】
(実施の形態2)
実施の形態1では、通信エリアが重なる基地局が2つの場合について説明したが、本発明は3つ以上の基地局の通信エリアが重なる場合にも対応することが可能である。以下、基地局が3つの場合の復調処理について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成および処理については、詳しい説明は省略する。
【0067】
図6は、上述した基地局Aおよび基地局Bに加え、基地局C(図示せず)から送信されるデータフレームの一例を示している。基地局CのデータフレームDF_Cは、データフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bと同様に、FSK変調されたものであり、左端の先頭側から順に、同期ワードSW_Cと、無データ区間ND_Cと、複数個、例えば7個のブロックデータBD_Cとを備えている。ブロックデータBD_Cには、ブロック番号C1、C2、C3、C4、C5、C6およびC7が付されている。データフレームDF_Cは、データフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bと同一のものであり、同期ワードSW_C、無データ区間ND_CおよびブロックデータBD_Cは、それぞれ同期ワードSW_A、無データ区間ND_AおよびブロックデータBD_Aと、同期ワードSW_B、無データ区間ND_BおよびブロックデータBD_Bとに対応する。
【0068】
なお、基地局が3つ以上である場合、無データ区間ND_A、無データ区間ND_Bおよび無データ区間ND_Cは、基地局の数に応じて長くする必要がある。具体的には、無データ区間ND_Aの長さは、同期ワードSW_Aのデータ長に、遅延送信される基地局(遅延基地局)の数を乗算した長さ以上である必要がある。図6に示す例では、無データ区間ND_Aの長さは同期ワードSW_Aのデータ長Nの2倍の長さとなっている。また、無データ区間ND_Bおよび無データ区間ND_Cの長さも無データ区間ND_Aと同じ長さとなっている。
【0069】
このように、無データ区間ND_A、無データ区間ND_Bおよび無データ区間ND_Cの長さを基地局の数に応じて長くし、かつ、データフレームDF_Aの送信に対し、同期ワードSW_Aのデータ長分に相当する時間差をそれぞれ設けてデータフレームDF_BおよびデータフレームDF_Cを送信する。データフレームDF_A、データフレームDF_BおよびデータフレームDF_Cは、基地局から送信される過程で合成され、図7に示すように、合成データフレームDF_A+DF_B+DF_Cとして、移動局Dに受信される。移動局Dは、無データ区間ND_A、ND_BおよびND_Cにより、同期ワードSW_Aと、同期ワードSW_Bと、同期ワードSW_Cと、データフレームDF_Aの先頭のブロックデータA1とを単独で受信することが可能となる。
【0070】
移動局Dの復調器34による比較処理S1では、受信した複数の同期ワードSW_A、同期ワードSW_Bおよび同期ワードSW_Cを比較する。具体的には、受信した複数の同期ワードSW_A、同期ワードSW_Bおよび同期ワードSW_Cと、移動局Dの無線通信装置3が予め記憶している参照信号との相関を相関器によって求めることにより、データフレームDF_Aの信号レベルと、データフレームDF_Bの信号レベルと、データフレームDF_Cの信号レベルとを比較し(例えば、B/Aレベル比およびC/Aレベル比)、データフレームDF_AとデータフレームDF_Bとの位相差ΔθABと、データフレームDF_AとデータフレームDF_Cとの位相差ΔθACとを計算する。
【0071】
合成データフレームDF_A+DF_B+DF_Cは、図7に示すように、基地局A、基地局Bおよび基地局Cから時間差を設けて送信された複数のデータフレームDF_A、データフレームDF_BおよびデータフレームDF_Cに含まれる同期ワードSW_Aと、同期ワードSW_Bと、同期ワードSW_Cと、ブロックデータBD_Aと、ブロックデータBD_Bと、ブロックデータBD_Cとが送信順に並ぶように合成されている。図6に示すように、データフレームDF_A、データフレームDF_BおよびデータフレームDF_Cには、無データ区間ND_A、無データ区間ND_Bおよび無データ区間ND_Cが存在するため、同期ワードSW_Bは無データ区間ND_Aの位置に配置され、同期ワードSW_Cは無データ区間ND_AおよびND_Bの位置に配置され、ブロックデータBD_AのA1は、無データ区間ND_BおよびND_Cの位置に配置される。
【0072】
また、合成データフレームDF_A+DF_B+DF_Cは、複数のブロックデータBD_AのA1~A7、ブロックデータBD_BのB1~B7およびブロックデータBD_CのC1~C7のうち、同時刻に送信されたブロックデータ同士が空間で合成されて合成ブロックデータが生成される。
【0073】
具体的には、ブロックデータBD_AのA2と、ブロックデータBD_BのB1とが空間で合成されて合成ブロックデータA2+B1が生成される。同様に、ブロックデータBD_AのA3と、ブロックデータBD_BのB2と、ブロックデータBD_CのC1とが空間で合成されて合成ブロックデータA3+B2+C1が生成される。また、合成ブロックデータA2+B1および合成ブロックデータA3+B2+C1と同様に、合成ブロックデータA4+B3+C2と、合成ブロックデータA5+B4+C3と、合成ブロックデータA6+B5+C4と、合成ブロックデータA7+B6+C5と、合成ブロックデータB7+C6とが生成される。なお、ブロックデータBD_CのC7は、他のデータと受信時刻が重ならないため、合成ブロックデータB7+C6の後ろに配置される。
【0074】
第1の復調処理S2では、複数の基地局A、基地局Bおよび基地局Cから時間差を設けて送信された複数のデータフレームDF_A、データフレームDF_BおよびデータフレームDF_Cのうち、最初に送信されたデータフレームDF_Aを復調対象データフレームとし、復調対象データフレーム以外のデータフレームDF_BおよびデータフレームDF_Cをキャンセルデータフレームとする。
【0075】
さらに、第1の復調処理S2では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aに含まれるブロックデータのうち、受信時刻が他のデータと重なっていないブロックデータ、すなわち、ブロックデータBD_AのA1を復調して復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_AのA1から取り出された伝送データTD_A1となる。
【0076】
レプリカデータ生成処理S3では、第1の復調処理S2にて生成されたブロックデータBD_AのA1の復調データを、比較処理S1の比較結果に基づいて再変調し、振幅と位相を調整してブロックデータBD_BのB1のレプリカデータ(レプリカB1)を生成する。
【0077】
ブロックデータ分離処理S4では、合成ブロックデータA2+B1から、レプリカデータ生成処理S3にて生成されたレプリカB1を減算器によって差し引くことにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_AのブロックデータBD_AのA2を分離する。
【0078】
第2の復調処理S5では、ブロックデータ分離処理S4により分離されたブロックデータBD_AのA2を復調して、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_AのA2から取り出された伝送データTD_A2となる。
【0079】
次のステップS6では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの全てのブロックデータの復調が終了したか否かが判定される。上述したように、1巡目の第2の復調処理S5では、データフレームDF_AのブロックデータBD_AのA2までしか復調していないため、レプリカデータ生成処理S3に戻る。
【0080】
2巡目のレプリカデータ生成処理S3では、第2の復調処理S5にて生成された復調データTD_A2を、比較処理S1の比較結果に基づいて再変調し、振幅と位相を調整してブロックデータBD_BのB2のレプリカデータ(レプリカB2)を生成する。また、2巡目のレプリカデータ生成処理S3では、1巡目のレプリカデータ生成処理S3にて生成されたレプリカB1を、比較処理S1の比較結果に基づいて調整器により位相および振幅を調整し、ブロックデータBD_CのC1のレプリカデータ(レプリカC1)を生成する。
【0081】
2巡目のブロックデータ分離処理S4では、2巡目のレプリカデータ生成処理S3にて生成されたレプリカB2とレプリカC1とを加算器で加算してレプリカB2+C1を生成し、合成ブロックデータA3+B2+C1からレプリカB2+C1を減算器によって差し引くことにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_AのブロックデータBD_AのA3を生成する。
【0082】
2巡目の第2の復調処理S5では、2巡目のブロックデータ分離処理S4により生成されたブロックデータBD_AのA3を復調して、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_AのA3から取り出された伝送データTD_A3となる。
【0083】
2巡目のステップS6では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの全てのブロックデータの復調が終了したか否かが判定される。上述したように、2巡目の第2の復調処理S5は、データフレームDF_AのブロックデータBD_AのA3までしか復調していないため、レプリカデータ生成処理S3に戻る。
【0084】
以上のように、復調器34は、データフレームDF_Aの全てのブロックデータの復調が終了するまでステップS3~S6を繰り返す。これにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Aの復調データである、伝送データTD_A1、TD_A2、TD_A3、TD_A4、TD_A5、TD_A6およびTD_A7を得ることができる。取得した伝送データTD_A1、TD_A2、TD_A3、TD_A4、TD_A5、TD_A6およびTD_A7は、復調器34からインターフェース部35へと出力される。
【0085】
以上で説明したように、3つ以上の基地局の通信エリアが重なる場合でもビート干渉の影響を抑制した状態でデータフレームを復調することができるので、基地局の配置に制約を受けることがない。
【0086】
(実施の形態3)
次に、この発明の実施の形態3に係る無線通信システムについて説明する。本実施の形態3は、複数の基地局から時間差を設けて送信された複数のデータフレームのうち、最初に送信されたデータフレームの信号レベルと、最後に送信されたデータフレームの信号レベルとを比較し、最初に送信されたデータフレームの信号レベルが最後に送信されたデータフレームの信号レベルよりも所定値以上高い場合には、第1の復調処理などを行なわずに、最初に送信されたデータフレームのみを復調する点で実施の形態1と異なる。なお、実施の形態1と同様の構成および処理については、詳しい説明は省略する。
【0087】
図8のフローチャートに示すように、本実施の形態3では、最初に実行される比較処理S1において、最初に送信されたデータフレームDF_Aの信号レベルと、最後に送信されたデータフレームDF_Bの信号レベルとを比較し、次のステップS8において、データフレームDF_Aの信号レベルがデータフレームDF_Bの信号レベルよりも所定値以上高い場合には、第1の復調処理S2と、レプリカデータ生成処理S3と、ブロックデータ分離処理S4と、第2の復調処理S5と、を行なわずに、データフレームDF_Aのみを復調する(ステップS9)。
【0088】
なお、データフレームDF_Aの信号レベルがデータフレームDF_Bの信号レベルよりも所定値以上高い場合とは、例えば、データフレームDF_Bの信号レベルに対するデータフレームDF_Aの信号レベル比(DF_A/DF_B)が、所定dB以上(例えば、5dB以上)の場合が挙げられる。なお、この所定値はあくまでも例示したものであり、通信環境や無線通信装置の性能などに応じて適宜設定可能である。
【0089】
以上で説明したように、実施の形態3に係る無線通信システム1によれば、最初に送信されたデータフレームDF_Aの信号レベルが最後に送信されたデータフレームDF_Bの信号レベルよりも所定値以上高い場合には、第1の復調処理S2などを行なわずに、データフレームDF_Aのみを復調するので、復調処理にかかる負荷を軽減し、処理時間を短縮することが可能となる。
【0090】
(実施の形態4)
次に、この発明の実施の形態4に係る無線通信システムについて説明する。本実施の形態4は、受信したデータフレームの信号レベルに応じて、復調対象データフレームを設定する点で実施の形態1と異なる。なお、実施の形態1と同様の構成および処理については、詳しい説明は省略する。
【0091】
図9に示すように、本実施の形態4に係る移動局Dの無線通信装置3には、受信部33と復調器34との間に記憶部(記憶手段)36が配置されている。この記憶部36には、図10に示すように、基地局Aおよび基地局Bによって時間差を設けて送信された複数のデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bの1フレーム分(第nフレーム)と、次フレーム(第n+1フレーム)の同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bとが一時的に記憶(バッファリング)される。
【0092】
図11のフローチャートに示すように、移動局Dの復調器34による比較処理S1では、受信した複数の同期ワードSW_Aと、同期ワードSW_Bとの信号レベルが比較される。同期ワードSW_Aの信号レベルが同期ワードSW_Bよりも高い場合(ステップS10でYES)には、データフレームDF_Aを復調対象データフレームに設定し、データフレームDF_Bをキャンセルデータフレームに設定する(ステップS11)。この場合には、図5の処理ブロック図に示すように、第nフレームの合成データフレームDF_A+DF_Bを、同じく第nフレームの同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bに基づいて昇順(ブロックデータのデータ番号が小さい順)に処理していく。なお、昇順の処理は、実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0093】
また、同期ワードSW_Bの信号レベルが同期ワードSW_Aよりも高い場合(ステップS10でNO)には、データフレームDF_Bを復調対象データフレームに設定し、データフレームDF_Aをキャンセルデータフレームに設定する(ステップS12)。
【0094】
データフレームDF_Bが復調対象データフレームに設定された場合には、図12に示すように、第nフレームのデータフレームDF_AのブロックデータBD_AのA1から、次フレーム(n+1フレーム)の同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bまでの合成データフレームDF_A+DF_Bを、次フレーム(n+1フレーム)の同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bに基づいて降順(ブロックデータのデータ番号が大きい順)に処理していく。
【0095】
降順の処理では、比較処理S1によって、次フレーム(n+1フレーム)の同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bが比較される。具体的には、次フレーム(n+1フレーム)の同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bと、参照信号との相関を相関器によって求めることにより、データフレームDF_Aの信号レベルと、データフレームDF_Bの信号レベルとを比較し(例えば、B/Aレベル比)、データフレームDF_AとデータフレームDF_Bとの位相差Δθとを計算する。
【0096】
第1の復調処理S2では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Bに含まれるブロックデータのうち、受信時刻が他のデータと重なっていないブロックデータ、すなわち、ブロックデータBD_BのB7を復調して復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_BのB7から取り出された伝送データTD_B7となる。
【0097】
レプリカデータ生成処理S3では、第1の復調処理S2にて生成された復調データを比較処理S1の比較結果に基づいて再変調し、キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成する。具体的には、第1の復調処理S2にて生成された復調データを、比較処理S1の比較結果に基づいて再変調し、振幅と位相を調整してブロックデータBD_AのA7のレプリカデータ(レプリカA7)を生成する。
【0098】
ブロックデータ分離処理S4では、合成ブロックデータA7+B6から、レプリカデータ生成処理S3にて生成されたレプリカA7を減算器によって差し引くことにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_BのブロックデータBD_BのB6を生成する。
【0099】
第2の復調処理S5では、ブロックデータ分離処理S4により生成されたブロックデータBD_BのB6を復調して、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Bの復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_BのB6から取り出された伝送データTD_B6となる。
【0100】
次のステップS6では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Bの全てのブロックデータの復調が終了したか否かが判定される。上述したように、1巡目の第2の復調処理S5では、データフレームDF_BのブロックデータBD_BのB6までしか復調していないため、レプリカデータ生成処理S3に戻る。
【0101】
2巡目のレプリカデータ生成処理S3では、第2の復調処理S5にて生成された復調データTD_B6を、比較処理S1の比較結果に基づいて再変調し、振幅と位相を調整してブロックデータBD_AのA6のレプリカデータ(レプリカA6)を生成する。
【0102】
2巡目のブロックデータ分離処理S4では、合成ブロックデータA6+B5から、2巡目のレプリカデータ生成処理S2にて生成されたレプリカA6を減算器によって差し引くことにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_BのブロックデータBD_BのB5を生成する。
【0103】
2巡目の第2の復調処理S5では、2巡目のブロックデータ分離処理S4により生成されたブロックデータBD_BのB5を復調して、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Bの復調データを生成する。この復調データは、ブロックデータBD_BのB5から取り出された伝送データTD_B5となる。
【0104】
2巡目のステップS6では、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Bの全てのブロックデータの復調が終了したか否かが判定される。上述したように、2巡目の第2の復調処理S5では、データフレームDF_BのブロックデータBD_BのB5までしか復調していないため、レプリカデータ生成処理S3に戻る。
【0105】
以上のように、復調器34は、データフレームDF_Bの全てのブロックデータの復調が終了するまでステップS6~S7を繰り返す。これにより、復調対象データフレームであるデータフレームDF_Bの復調データである、伝送データTD_B1、TD_B2、TD_B3、TD_B4、TD_B5、TD_B6およびTD_B7を得ることができる。取得した伝送データTD_B1、TD_B2、TD_B3、TD_B4、TD_B5、TD_B6およびTD_B7は、復調器34からインターフェース部35へと出力される。
【0106】
以上で説明したように、実施の形態4に係る無線通信システム1によれば、送信されたデータフレームDF_AおよびDF_Bの1フレーム分と、次フレームの同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bとを記憶し、最初に送信されたデータフレームDF_Aの信号レベルと、最後に送信されたデータフレームDF_Bの信号レベルとを比較し、最初に送信されたデータフレームDF_Aの信号レベルが、最後に送信されたデータフレームDF_Bの信号レベルよりも高いときには、最初に送信されたデータフレームDF_Aを復調対象データフレームとする。また、これとは逆に、最後に送信されたデータフレームDF_Bの信号レベルが、最初に送信されたデータフレームDF_Aの信号レベルよりも高いときには、最後に送信されたデータフレームDF_Bを復調対象データフレームとする。これにより、より信号レベルが高いデータフレームを復調することができるので、復調処理の精度を向上させることが可能である。また、最後に送信されたデータフレームDF_Bを復調対象データフレームとする場合には、そのデータフレームDF_Bの信号レベルにより近い次フレームの同期ワードSW_Aおよび同期ワードSW_Bをレプリカデータ生成処理S3に用いるので、復調処理の精度をより向上させることが可能である。
【0107】
なお、本実施の形態4では、データフレームDF_Aと、データフレームDF_Bとのいずれか一方を復調対象データフレームとして復調処理を行なうようにしたが、例えば、最初に送信されたデータフレームDF_Aの信号レベルと、最後に送信されたデータフレームDF_Bの信号レベルとの差が所定値以上である場合には、第1の復調処理S2などの処理を行なわずに、信号レベルが高い方のデータフレームのみを復調するようにしてもよい。これによれば、復調処理の精度が向上するとともに、復調処理にかかる負荷を軽減し、処理時間を短縮することが可能となる。
【0108】
(実施の形態5)
次に、この発明の実施の形態5に係る無線通信システムについて説明する。本実施の形態5は、実施の形態4で説明した昇順の処理と、降順の処理とを一緒に実行し、昇順の処理により得たブロックデータと、降順の処理により得たブロックデータとを合成して復調する点で実施の形態1と異なる。なお、実施の形態1と同様の構成および処理については、詳しい説明は省略する。
【0109】
図13に示すように、本実施の形態5に係る復調器34は、合成データフレームDF_A+DF_Bを受信した後に、データフレームDF_Aを復調対象データフレームとして、合成ブロックデータA2+B1、A3+B2、A4+B3、A5+B4、A6+B5およびA7+B6から、データフレームDF_AのブロックデータBD_AのA1、A2、A3、A4、A5、A6およびA7を分離する昇順の処理を実行する。また、この昇順の処理と同時に、データフレームDF_Bを復調対象データフレームとして、合成ブロックデータA2+B1、A3+B2、A4+B3、A5+B4、A6+B5およびA7+B6から、データフレームDF_BのブロックデータBD_BのB1、B2、B3、B4、B5、B6およびB7を分離する降順の処理を実行する。
【0110】
すなわち、復調器34は、受信した複数のデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bのうちの1つを復調対象データフレームとし、復調対象データフレーム以外のデータフレームをキャンセルデータフレームとするフレームセットを、復調対象データフレームを変更して複数生成する。次いで、フレームセットごとに、受信時刻が他のデータと重なっていないブロックデータを復調して復調データを生成する第1の復調処理S2と、復調データを比較処理S1の比較結果に基づいて再変調し、キャンセルデータフレームのブロックデータに対応したレプリカデータを生成するレプリカデータ生成処理S3と、合成ブロックデータからレプリカデータを差し引いて、復調対象データフレームのブロックデータを分離するブロックデータ分離処理S4と、を実行する。次いで、ブロックデータ分離処理S4により生成されたブロックデータを復調して復調対象データフレームの復調データを生成する第2の復調処理S5と、第2の復調処理S5により生成された復調データに基づくレプリカデータ生成処理S3およびブロックデータ分離処理S4とを、復調対象データフレームの全てのブロックデータが生成されるまで繰り返す。
【0111】
そして、復調器34は、昇順の処理により得たブロックデータBD_AのA1、A2、A3、A4、A5、A6およびA7と、降順の処理により得たブロックデータBD_BのB1、B2、B3、B4、B5、B6およびB7とを加算器によって合成し、復調する(第3の復調処理に相当)。これにより、復調器34は、複数のデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bの合成結果を復調して伝送データTD_1、TD_2、TD_3、TD_4、TD_5、TD_6およびTD_7を得ることができる。
【0112】
以上で説明したように、実施の形態5に係る無線通信システム1によれば、
時間差を設けて複数のデータフレームDF_AおよびデータフレームDF_Bを送信するので、同時刻に受信したブロックデータはミクロで見ると周波数は異なるものとなり、ビート干渉の発生を抑制することが可能である。また、復調対象データフレームとキャンセルデータフレームとからなるフレームセットを複数生成し(昇順のフレームセットおよび降順のフレームセット)、フレームセットごとにレプリカデータを利用して合成ブロックデータから復調対象データフレームのブロックデータを分離し、フレームセットごとに得られた復調対象データフレームのブロックデータを合成して復調するようにしたので、復調処理の精度をより向上させることが可能である。さらに、複数のデータフレームが合成された合成データフレームを受信して処理することが可能であるため、基地局の配置に制約を受けない。
【0113】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、データフレームの変調および復調にFSKを用いたが、PSKやQAMを用いてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 無線通信システム
2 無線通信装置(無線送信装置)
3 無線通信装置(無線受信装置)
33 受信部(受信手段)
34 復調器(復調手段)
36 記憶部(記憶手段)
A 基地局
B 基地局
D 移動局
S1 比較処理
S2 データフレーム合成処理
S3 第1の復調処理
S4 レプリカデータ生成処理
S5 ブロックデータ生成処理
S6 第2の復調処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14