(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101359
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 12/71 20110101AFI20240722BHJP
【FI】
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005311
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 大悟
(72)【発明者】
【氏名】手塚 優太
(72)【発明者】
【氏名】岸端 裕矢
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA21
5E223AB21
5E223AC13
5E223AC27
5E223AC37
5E223BA01
5E223BA07
5E223CB24
5E223CD01
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB33
5E223DB36
5E223EA02
5E223EA36
(57)【要約】
【課題】接続部材の配置位置を容易に調整可能なコネクタの接続構造を得ることを目的とする。
【解決手段】接続構造は、端子11を収容するハウジング12を、ペグ3を介して基板2に接続する構造である。ハウジング12には、ペグ3を支持する支持部126が設けられている。支持部126は、前後方向Xに延びる係止部1261と、係止部1261とハウジング12とを接続する第一ブリッジ1261-1及び第二ブリッジ1261-2を備えている。ペグ3には、係止部1261に対して左右方向Yに引っ掛かり固定されるフック部31が設けられ、フック部31は、先端部が第一ブリッジ1261-1と第二ブリッジ1261-2との間に形成された収容空間Sに収容された状態で係止部1261に支持されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を収容するハウジングを、接続部材を介して基板に接続する接続構造であって、
前記ハウジングには、前記接続部材を支持する支持部が設けられ、
前記支持部は、前記基板に対向し、前記ハウジングと間隔をあけて所定方向に延びる係止部と、前記係止部と前記ハウジングとを接続する第一ブリッジと、前記第一ブリッジと前記所定方向に間隔をあけて設けられ前記係止部と前記ハウジングとを接続する第二ブリッジと、を備え、
前記接続部材には、前記係止部に対して前記所定方向と交差する交差方向に引っ掛かり固定されるフック部が設けられ、
前記フック部は、先端部が前記第一ブリッジと前記第二ブリッジとの間に形成された収容空間に収容された状態で前記係止部に支持されていることを特徴とする接続構造。
【請求項2】
前記フック部の前記先端部には、前記ハウジングのうち前記係止部と対向する対向壁面に向かって突出する係止突起が設けられ、
前記係止突起は、前記フック部が前記係止部に固定された状態で、前記係止部と前記対向壁面の対向方向の内方に向かって前記対向壁面を押圧していることを特徴とする請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記係止突起は、前記所定方向に間隔をあけて少なくとも2個設けられていることを特徴とする請求項2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記接続部材は、前記フック部に連続し前記基板に向かって延びて前記基板に接続される接続部と、前記接続部に連続し前記フック部の曲がり方向と反対側に延びる折返し部と、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の接続構造。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記所定方向の一方側に開口する箱状に設けられ、
前記所定方向は、前後方向であり、
前記ハウジングには、前記前後方向に交差する左右方向に間隔をあけて対向し、前記基板から立ち上がる1対の側壁が設けられ、
前記1対の側壁の各々には、前記係止部が設けられ、
前記接続部材の前記接続部は、前記前後方向に延在する板部材であり、
前記接続部の前記前後方向一方側には、前記前後方向一方側に突出する連鎖突起が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の接続構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の接続構造を有し、
前記ハウジングは前記所定方向の一方側に開口し、
前記第一ブリッジと前記第二ブリッジは、前記所定方向に重ならない位置に配置され、
前記第一ブリッジから前記収容空間を介し前記第二ブリッジに沿って延び前記所定方向の他方側に開口する第一空間と、
前記第二ブリッジから前記収容空間を介し前記第一ブリッジに沿って延び前記所定方向の一方側に開口する第二空間と、を備えていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子を保持する樹脂製箱状のハウジングを、ペグによって基板に固定し、基板用コネクタを構成する接続構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の基板用コネクタでは、ハウジングの側壁に上下方に開口する略ポケット状の圧入部が形成されており、この圧入部にペグを圧入した状態で、ペグ下端を半田等で基板に固定することで、ハウジングが基板に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような接続構造では、略ポケット状の圧入部にペグを圧入する構造上、圧入部の配置やペグの配置に制約が生じるため、ペグやハウジングを専用部品で構成する必要が生じる等、コネクタの製造コストが増加することとなっていた。
【0005】
本発明の目的は、接続部材の配置位置を容易に調整可能なコネクタの接続構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、接続構造は、端子を収容するハウジングを、接続部材を介して基板に接続する接続構造であって、前記ハウジングには、前記接続部材を支持する支持部が設けられ、前記支持部は、前記基板に対向し、前記ハウジングと間隔をあけて所定方向に延びる係止部と、前記係止部と前記ハウジングとを接続する第一ブリッジと、前記第一ブリッジと前記所定方向に間隔をあけて設けられ前記係止部と前記ハウジングとを接続する第二ブリッジと、を備え、前記接続部材には、前記係止部に対して前記所定方向と交差する交差方向に引っ掛かり固定されるフック部が設けられ、前記フック部は、先端部が前記第一ブリッジと前記第二ブリッジとの間に形成された収容空間に収容された状態で前記係止部に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接続部材の配置位置を容易に調整可能なコネクタの接続構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタ、基板、及びペグの分解斜視図。
【
図2】(A)は、ペグの斜視図であり、(B)は、ペグの正面図であり、(C)は、ペグの側面図であり、(D)は、ペグの背面図。
【
図3】(A)は、基板に接続されたコネクタの平面図であり、(B)は、
図3(A)のA-A線矢視断面図。
【
図5】(A)は、ハウジングの平面図であり、(B)は、
図5(A)のB-B線矢視断面図であり、(C)は、樹脂成形途中のハウジングを示す概要図。
【
図7】変形例におけるハウジング及びペグを収容部の位置で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、接続構造について説明する。接続構造は、コネクタ1のうち端子11を収容するハウジング12を、自動車等の車両に搭載される電子機器の基板2に、ペグ3(接続部材)を介して接続する構造である。すなわち、コネクタ1は、接続構造を有している。図において、X、Y、Zは、互いに直交する方向である。そして、後述するハウジング12の奥行き方向を前後方向とし、「前後方向X」と記す。また、前後方向Xの一方側を「前側X1」、他方側を「後側X2」と記す。なお、前後方向Xは、本発明における所定方向でもある。
【0010】
そして、後述するハウジング12の幅方向を左右方向とし、「左右方向Y」と記す。また、左右方向Yの一方側を「左側Y1」、他方側を「右側Y2」と記す。また、基板2の板厚方向を高さ方向とし、「高さ方向Z」と記す。また、高さ方向Zの一方側を「上側Z1」、他方側を「下側Z2」と記す。これは、あくまでも説明の便宜のためであり、必ずしも実際の使用状態における方向と一致するとは限らず、実際の使用状態における方向を限定するものではない。
【0011】
コネクタ1は、
図1に示すように、基板2に接続される複数の端子11と、端子11を収容するハウジング12と、を備えている。端子11は、金属製の針金部材を2箇所で略直角に折り曲げ加工して、略L字状に形成されており、基板接続部111と、部品接続部112と、を備えている。基板接続部111は、端子11の後側X2の端部で構成され、基板2に接続される。部品接続部112は、端子11の前側X1の端部で構成され、ハウジング12内に挿し込まれ、ハウジング12に嵌合する不図示の相手コネクタの相手端子と接続される。
【0012】
ハウジング12は、前側X1(所定方向の一方側)に開口し端子11を収容する樹脂製の箱状部材であり、底壁121と、側壁122と、上壁123と、後壁124と、フランジ部125と、支持部126と、を備えている。
【0013】
底壁121は、基板2の実装面である上側Z1の面と対向し、当該面と平行に延びている。側壁122は、底壁121の左右方向Y両端縁から上側Z1に立ち上がり上側Z1及び前後方向Xに延びている。すなわち、ハウジング12には、左右方向Yに間隔をあけて対向し、基板2から立ち上がる1対の側壁122が設けられている。上壁123は、一方の側壁122の上端縁から他方の側壁122の上端縁まで左右方向Yに延び底壁121と高さ方向Zに対向している。
【0014】
上壁123には、上側Z1及び後側X2に開口する凹状の肉抜き部123aが、複数形成されている。肉抜き部123aは、ハウジング12を樹脂成形する際に、樹脂に含まれるガラスファイバー等の繊維の配向をランダムにするために形成されるものである。この肉抜き部123aの形成により、繊維の配向が一定でなくなることから、熱等の影響によるハウジング12の反りが防止されている。
【0015】
後壁124は、底壁121の後端縁から上側Z1に立ち上がりハウジング12の後側X2を閉じている。後壁124には、前後方向Xに貫通し、
図3に示すように端子11がそれぞれ挿通する不図示の挿通孔が複数形成されている。フランジ部125は、防水、または防塵等の目的で設けられる部分であり、ハウジング12の開口縁部に全周に亘って形成され、開口の外方に向かって広がっている。フランジ部125の左右方向Y両側には、前後方向Xに貫通する金型抜孔125aが貫通形成されている。
【0016】
金型抜孔125aは、後述する第二空間a2に連通している。なお、金型抜孔125aは、IP40規格を考慮して、直径1mm以上の固形物が入らない寸法に設定されることが好ましい。
【0017】
支持部126は、ハウジング12を基板2に接続する接続部材としてのペグ3を支持する部分であり、1対の側壁122の各々に設けられている。支持部126は、
図1に示すように、係止部1261と、第一ブリッジ1261-1と、第二ブリッジ1261-2と、を備えている。係止部1261は、平板状に形成され、下縁部が基板2に対して高さ方向Zに対向し、側壁122と左右方向Yに間隔をあけて前後方向Xに延びている。
【0018】
係止部1261の前側X1の部分は、他の部分よりも高さ方向Zの寸法(幅寸法)が大きい幅広部1261aとなっている。幅広部1261aとなっている部分は、係止部1261のうち、ペグ3の後述するフック部31が引っ掛かる部分およびその近傍であり、この幅広部1261aの形成により、フック部31を支える強度を向上させている。
【0019】
第一ブリッジ1261-1は、係止部1261の前側X1の端部と側壁122(すなわち、ハウジング12)とを接続する部材であり、
図5(A)に示すように、板状に形成されている。
【0020】
第二ブリッジ1261-2は、係止部1261の後側X2の端部と側壁122(すなわち、ハウジング12)とを接続する部材であり、
図5(A)に示すように、第一ブリッジ1261-1と前後方向Xに間隔をあけて設けられ、板状に形成されている。
【0021】
図5(B)に示すように、第一ブリッジ1261-1と、第二ブリッジ1261-2と、は高さ方向Zに隣接して配置されている。すなわち、第一ブリッジ1261-1と第二ブリッジ1261-2は、前後方向Xに重ならない位置に配置されている。具体的には、第二ブリッジ1261-2の方が第一ブリッジ1261-1よりも上側Z1に配置され、第一ブリッジ1261-1の上面が第二ブリッジ1261-2の下面と同一平面上に位置している。なお、第一ブリッジ1261-1と第二ブリッジ1261-2の配置は、逆でもよい。すなわち、第一ブリッジ1261-1を第二ブリッジ1261-2よりも上側Z1に配置してもよい。この場合、第一ブリッジ1261-1の下面は、第二ブリッジ1261-2の上面と同一平面上に位置するようにするとよい。
【0022】
第一ブリッジ1261-1と第二ブリッジ1261-2の前後方向Xの間には、
図5(B)に示すように、収容空間Sが形成されている。この収容空間Sには、
図4に示すように、ペグ3のフック部31が収容されることとなっている。また、
図5(B)に示すように、第二ブリッジ1261-2の下側Z2には、第一空間a1が形成され、第一ブリッジ1261-1の上側Z1には、第二空間a2が形成されている。
【0023】
第一空間a1は、第一ブリッジ1261-1から収容空間Sを介し、第二ブリッジ1261-2に沿って第二ブリッジ1261-2の下側Z2を前後方向Xに延び、後側X2に開口している。
【0024】
第二空間a2は、第二ブリッジ1261-2から収容空間Sを介し、第一ブリッジ1261-1に沿って第一ブリッジ1261-1の上側Z1を前後方向Xに延び、前側X1に開口している。
【0025】
このように構成されるハウジング12は、樹脂成形により成形される。この場合、上述のとおり、ハウジング12は前側X1に開口し、第一空間a1は後側X2に開口し、第二空間a2は前側X1に開口していることから、これらの開口方向が全て前後方向Xに揃うこととなる。このため、ハウジング12を成形する金型は、前後方向Xに開くように配置される。
【0026】
図5(C)は、樹脂成形途中のハウジング12を示す概要図であり、支持部126を成形する金型が図示されている。ここでは、第一空間a1の開口が形成される部分から前側X1に向かって、第一ブリッジ1261-1の後側X2の端部が形成される位置まで前後方向Xに延びる第一金型D1が閉じられている。そして、金型抜孔125aが形成される部分を介し、第二空間a2が形成される部分から後側X2に向かって、第二ブリッジ1261-2の前側X1の端部が形成される位置まで前後方向Xに延びる第二金型D2が閉じられている。
【0027】
ここで、第一ブリッジ1261-1と第二ブリッジ1261-2とは前後方向Xに重ならない配置であることから、第一金型D1と第二金型D2とは、互いに前後方向Xに干渉しない。一方で、第一ブリッジ1261-1は第二ブリッジ1261-2に沿って延び、第二ブリッジ1261-2は第一ブリッジ1261-1に沿って延びることから、第一金型D1と第二金型D2とは、一部が高さ方向Zに重なって隣接することとなる。
【0028】
そして、第一金型D1、第二金型D2を上述のように閉じた状態で、樹脂を注入し、冷却して固めた後、第一金型D1を後側X2に開き、第二金型D2を前側X1に開くことで、ハウジング12が成形される。この際、
図5(B)に示すように、第一金型D1と第二金型D2の重なっていた部分に収容空間Sが形成される。また、
図5(C)に示すように、第一金型D1の前側X1の端部と第二金型D2の下側Z2の端面に囲まれた部分に第一ブリッジ1261-1が成形される。また、第二金型D2の後側X2の端部と、第一金型D1の上側Z1の端面に囲まれた部分に第二ブリッジ1261-2が成形される。
【0029】
そして、
図5(B)に示すように、第一ブリッジ1261-1の後側X2には、収容空間Sを介し第二ブリッジ1261-2に沿って延び後側X2に開口する第一空間a1が形成される。また、第二ブリッジ1261-2の前側X1には、収容空間Sを介し第一ブリッジ1261-1に沿って延び前側X1に開口する第二空間a2が形成される。
【0030】
このように、ハウジング12が、第一ブリッジ1261-1、収容空間S、第二ブリッジ1261-2等を備えていても、その成形時に、スライド金型を用いることなく、ハウジング12を成形することができる。すなわち、本実施形態のコネクタ1は、ハウジング12の成形に際してスライド金型を必要としないスライドレスコネクタとして構成されている。
【0031】
次に、コネクタ1が接続される基板2について説明する。基板2は、例えば、板部材に電子部品がはんだ付けされたプリント回路基板であり、
図1に示すように、パッド部21と、端子接続部22と、を備えている。パッド部21は、ペグ3の後述する接続部32の下端部をはんだ付けするための部分であり、銅箔で構成されている。端子接続部22は、上述の端子11の基板接続部111が接続される部分であり、各端子11に対応するよう、複数形成されている。
【0032】
次に、コネクタ1を基板2に固定するペグ3について説明する。ペグ3は、金属製の板部材を折り曲げ加工等して形成され、
図2(A)~(D)に示すように、フック部31と、接続部32と、折返し部33と、を備えている。フック部31は、係止部1261の上縁に対して左右方向Y(すなわち、所定方向と交差する交差方向)に引っ掛かり、固定される部分である。
【0033】
フック部31は、
図1に示すように、収容空間S側(左右方向Y内方)に向かって湾曲し、
図2(C)に示すように、下側Z2に向かって開口する略U字状に形成されている。このフック部31は、下端部(先端部)が収容空間Sに収容された状態で支持部126の係止部1261に支持されている。このような構成にすることで、ペグ3は、係止部1261の上縁のうち、ペグ3の設置後にフック部31が収容空間Sに収容される位置、すなわち第一ブリッジ1261-1と第二ブリッジとの間であれば、どこにでも配置することができる。
【0034】
フック部31の下端部には、係止突起31aが形成されている。係止突起31aは、ハウジング12のうち、係止部1261と対向する対向壁面としての側壁122に向かって左右方向Y内方に突出している。
図4に示すように、フック部31が係止部1261に引っ掛かり固定された状態では、係止突起31aは、係止部1261と側壁122の対向方向である左右方向Yの内方に向かって、側壁122を押圧している。この状態では、係止突起31aは、側壁122に対して食い込んでいる。
【0035】
なお、
図2(A)、(B)に示すように、本実施形態では、係止突起31aの数は、それぞれ2個であり、各々が前後方向Xに間隔をあけて配置されているが、係止突起31aの数、配置は、これ以外であってもよい。すなわち、係止突起31aは、2個以下であっても2個以上であってもよい。しかしながら、フック部31の傾きを防止する観点から、係止突起31aは、本実施形態のように、所定方向に間隔をあけて少なくとも2個設けられていることが好ましい。
【0036】
接続部32は、フック部31に連続し基板2に向かって下側Z2延び、その下端部がはんだ付けにより基板2のパッド部21に接続固定される。接続部32は、
図2(B)、(D)に示すように、前後方向Xに延在する板部材で構成されている。なお、接続部32の形状は、板状でなくてもよく、例えばアーチ状など、上述のフック部31と、折返し部33と、を高さ方向Zに接続できる形状であれば、様々な形状であってよい。
【0037】
接続部32の前後方向X一方側には、前後方向X一方側に突出する連鎖突起32aが形成されている。すなわち、接続部32の前側X1または後側X2の縁部には、前後方向X外方に突出する連鎖突起32aが形成されている。連鎖突起32aは、ペグ3の成形時に形成される突起である。具体的には、この種のコネクタに用いられるペグ3は、製造コストの観点より一枚の板部材から、複数個分が、まとめて打ち抜き等されて形成される。この際、打ち抜き後のペグ3にフック部31や折返し部33等をまとめて形成可能なように、打ち抜かれた状態のペグ3同士は、連鎖突起32aが形成される部分で接続されている。そして、フック部31や折返し部33等が形成された後で、連鎖突起32aが形成される部分で各ペグ3を切り離し、複数のペグ3を得ることとなる。そして、この際、得られた各ペグ3には、同方向に突出する突起が残されることとなる。この突起が連鎖突起32aである。
【0038】
折返し部33は、接続部32の下端部に連続しフック部31の曲がり方向と反対側、すなわち左右方向Y外方に折り返されて上側Z1に向かって延びている。折返し部33がこのように折り返されていることで、コネクタ1がペグ3によって基板2に固定された際には、折返し部33がコネクタ1外部に露出することとなる。このため、例えば、ペグ3を基板2に対して半田付け等の方法で固定した場合、半田付けが正しく行われたか否かを、目視、又は、折返し部33をマーカーとした画像検索等により判定することができる。
【0039】
以上、上述した実施形態によれば、接続構造は、端子11を収容するハウジング12を、ペグ3(接続部材)を介して基板2に接続する構造である。ハウジング12には、ペグ3を支持する支持部126が設けられている。支持部126は、基板2に対向し、ハウジング12と間隔をあけて前後方向X(所定方向)に延びる係止部1261と、係止部1261とハウジング12とを接続する第一ブリッジ1261-1と、第一ブリッジ1261-1と前後方向Xに間隔をあけて設けられ係止部1261とハウジング12とを接続する第二ブリッジ1261-2と、を備えている。ペグ3には、係止部1261に対して左右方向Y(所定方向と交差する交差方向)に引っ掛かり固定されるフック部31が設けられ、フック部31は、先端部が第一ブリッジ1261-1と第二ブリッジ1261-2との間に形成された収容空間Sに収容された状態で係止部1261に支持されている。
【0040】
このような構成によれば、ペグ3は、係止部1261のうち、ペグ3の配置後にフック部31の先端部が収容空間Sに収容される位置であれば、どこにでも配置することができる。すなわち、ペグ3は、第一ブリッジ1261-1と第二ブリッジ1261-2の間でその設置位置を選択することができ、ペグ3の配置についての制約を低減することができる。また、フック部31を引っ掛けることで係止部1261にペグ3を固定することができるため、従来のようにポケット状の圧入部にペグを圧入する構造と比較して、ペグ3のハウジング12への設置、及び設置位置の変更を容易に行うことができる。したがって、ペグ3の配置位置を容易に調整可能なコネクタ1の接続構造を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、フック部31を係止部1261に引っ掛けて固定した際に、フック部31の先端部に設けられた係止突起31aは、係止部1261と側壁122(対向壁面)の左右方向Y(対向方向)の内方に向かって側壁122を押圧することとなる。このため、当該押圧力により、フック部31の位置ずれ等が防止され、ペグ3が係止部1261に固定された状態を安定して維持することができる。
【0042】
また、係止突起31aは、前後方向Xに間隔をあけて少なくとも2個設けられているので、少なくとも前側X1と、後側X2と、から、係止突起31aによって側壁122を押圧することができる。このため、ペグ3の傾きを防止することができ、ペグ3が係止部1261に固定された状態を、さらに安定して維持することができる。
【0043】
また、ペグ3が係止部1261に固定され、ペグ3の接続部32が基板2に接続された状態では、フック部31が収容空間Sに収容される一方、折返し部33は、上述のとおりコネクタ1の外部に露出することとなる。このため、例えば、ペグ3の接続部32を基板2に対して半田付け等の方法で固定した場合、半田付けが正しく行われたか否かを、目視、又は、折返し部33をマーカーとした画像検索等により判定することができる。これにより、コネクタ1の検品を自動化することなどができ、コネクタ1の検品に係るコストを低減することができる。
【0044】
また、上述のとおり、製造コストを考慮したペグ3の製造方法により、ペグ3には、連鎖突起32aが残されることとなる。そして、このペグ3をハウジング12の左側Y1の側壁122と右側Y2の側壁と、で共用しようとすると、
図1に示すように、連鎖突起32aの突出方向が、それぞれ反対となる。すなわち、左側Y1に設置されるペグ3の連鎖突起32aは、前側X1に突出し、右側Y2に設置されるペグ3の連鎖突起32aは、後側X2に突出する。
【0045】
ここで、従来のように、ポケット状の圧入部にペグを圧入する構造では、その連鎖突起32aの形状、すなわち突出方向を踏まえて圧入部を形成する必要が生じる。そうすると、左側壁に形成される圧入部と、右側壁に形成される圧入部の形状と、を異なる形状に形成しなければ、1種類のペグをハウジングの左右で共用とすることができない。このため、従来の構造では、コネクタの製造コストが低減し難い。一方、圧入部を同じ形状にした場合には、ペグ3を2種類用意する必要が生じる。すなわち、例えば、左側Y1に配置された際に前側X1に突出する連鎖突起32aを備えるペグ3と、右側Y2に配置された際に前側X1に突出する連鎖突起32aを備えるペグ3とが必要になる場合がある。したがって、ペグ3の製造工数が増加するとともに、各ペグの管理が煩わしくなり、この場合もコネクタの製造コストが低減し難い。
【0046】
しかしながら、本構成によれば、接続部32の前後方向X一方側に突出する連鎖突起32aが設けられていたとしても、フック部31を係止部1261に引っ掛けて固定する構造上、当該固定に連鎖突起32aの突出方向が影響することがない。したがって、係止部1261の形状を左右の側壁122ごとに変更する必要も、ペグ3の種類をハウジング12の左右で変更する必要もなく、ペグ3をハウジング12の左右で共用することができる。
【0047】
また、本実施形態では、ハウジング12の成形にスライド金型を用いる必要のないスライドレスコネクタに、上述のようにペグ3の配置位置を容易に調整可能な接続構造を採用することができた。すなわち、本実施形態に係る接続構造は、スライド金型を不要とすることでハウジングの製造工数が少なくて済み、製造コストを低減することができるコネクタに採用することができる。
【0048】
以上、接続構造の実施の形態および変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0049】
図6は、変形例におけるコネクタ1’のハウジング12’の斜視図である。変形例では、ハウジング12’の上壁に、ハニカム形状の肉抜き部123a’が複数形成されている。また、ハウジング12’の左右両側壁に、上側Z1及び左右方向Y外方に開口するポケット状の収容部127が形成されている。このように、変形例におけるコネクタ1’は、ハウジング12’の開口方向と異なる方向である上側Z1に開口する肉抜き部123aや収容部127を備えたコネクタである。このため、コネクタ1’では、ハウジング12’の成形時に、収容部127等を成形するためのスライド金型が必要となる。すなわち、コネクタ1’は、本実施形態のコネクタ1のようなスライドレスコネクタではなく、上述の圧入部のような構成を備える従来のコネクタである。
【0050】
収容部127の内部は、ペグ3のフック部31を収容可能に設けられている。
図7は、変形例におけるコネクタ1’のハウジング12’及びペグ3を収容部127の位置で切断した断面図である。
図7に示すように、ペグ3が収容部127に収容された状態では、収容部127の上縁にフック部31の湾曲部分が引っ掛かり、フック部31の下端部が、収容部127の底壁に当接して支持されている。このような構成によれば、スライドレスコネクタ以外のコネクタのハウジング12’に対しても、本実施形態におけるペグ3を固定することができる。
【符号の説明】
【0051】
S 収容空間
X 前後方向(所定方向)
Y 左右方向(交差方向)
1 コネクタ
11 端子
12 ハウジング
126 支持部
1261 係止部
1261-1 第一ブリッジ
1261-2 第二ブリッジ
2 基板
3 ペグ(接続部材)
31 フック部