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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101382
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20240722BHJP
   F24F 6/06 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
F24F6/00 E
F24F6/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005343
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】笠輪 裕士
(72)【発明者】
【氏名】水越 悠介
【テーマコード(参考)】
3L055
【Fターム(参考)】
3L055BA04
(57)【要約】
【課題】気化フィルタの回転による騒音を低減することができる加湿器を提供する。
【解決手段】送風ファン6の回転数が所定値より小さい場合、ターンモータ24の回転速度を所定の回転速度より小さくするようにしたので、気化フィルタ9の回転による着水及び離水時の騒音、並びに水滴の落下音(ポチャポチャ音)を低減することができ、運転音が比較的小さい状況下において発生する騒音を極力低減することで、ユーザーに与える不快感を極力抑えることができる。

【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体と、
水を貯水する水槽と、
当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、
前記器具本体外の空気を取り入れる吸込口と、
当該吸込口を通過した空気が流通する送風経路と、
当該送風経路中に設けられ、前記水槽の水に下部が浸漬し回転駆動が可能な気化フィルタと、
当該気化フィルタを所定の回転速度で回転駆動するターンモータと、
前記気化フィルタで発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する吹出口と、
前記加湿空気を前記送風ファンにより前記送風口から送風する運転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記送風ファンの回転数が所定値より小さい場合、前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度より小さくすることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
器具本体と、
水を貯水する水槽と、
当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、
前記器具本体外の空気を取り入れる吸込口と、
当該吸込口を通過した空気が流通する送風経路と、
当該送風経路中に設けられ、前記水槽の水に下部が浸漬し回転駆動が可能な気化フィルタと、
当該気化フィルタを所定の回転速度で回転駆動するターンモータと、
前記気化フィルタで発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する吹出口と、
前記加湿空気を前記送風ファンにより前記送風口から送風する運転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ターンモータの回転駆動中において、前記気化フィルタが前記水槽の水に着水する直前から着水して離水する直後までの間は、前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度よりも小さくすることを特徴とする加湿器。
【請求項3】
前記ターンモータは、回転角度及び回転速度を制御可能なステッピングモータとし、
前記制御部は、前記気化フィルタが前記水槽に浸漬した状態で回転前の姿勢から、前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度よりも小さい回転速度として前記気化フィルタを第一の所定角度だけ回転させ、更に、前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度として第二の所定角度だけ回転させ、更に、前記気化フィルタが前記水槽に浸漬した状態で停止するまで前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度よりも小さい回転速度とすることを特徴とする請求項2に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気化式の加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、気化フィルタを回転自在とし、一方の下端部が水槽部の水中に水没した状態と、水面と略水平に保持される状態と、他方の下端部が水中に水没する状態で夫々停止するようにする加湿器があった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-302007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、気化フィルタの回転速度を早くすると、回転そのものの騒音、着水及び離水時の騒音(水を切る音)、並びに離水時にフィルタから水滴が落下する際の音(ポチャポチャ音)が大きくなる。
一方、気化フィルタの回転速度を遅くすると、回転開始から着水までの時間が遅くなることで、加湿を始めるまでの時間がかかってしまう。また、回転中に加湿フィルタに当たらずに通過する空気(加湿に寄与しない空気)が増えるため、加湿量が変動し不安定になってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の加湿器では、器具本体と、水を貯水する水槽と、当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、前記器具本体外の空気を取り入れる吸込口と、当該吸込口を通過した空気が流通する送風経路と、当該送風経路中に設けられ、前記水槽の水に下部が浸漬し回転駆動が可能な気化フィルタと、当該気化フィルタを所定の回転速度で回転駆動するターンモータと、前記気化フィルタで発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する吹出口と、前記加湿空気を前記送風ファンにより前記送風口から送風する運転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記送風ファンの回転数が所定値より小さい場合、前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度より小さくすることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2の加湿器では、器具本体と、水を貯水する水槽と、当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、前記器具本体外の空気を取り入れる吸込口と、当該吸込口を通過した空気が流通する送風経路と、当該送風経路中に設けられ、前記水槽の水に下部が浸漬し回転駆動が可能な気化フィルタと、当該気化フィルタを所定の回転速度で回転駆動するターンモータと、前記気化フィルタで発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する吹出口と、前記加湿空気を前記送風ファンにより前記送風口から送風する運転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ターンモータの回転駆動中において、前記気化フィルタが前記水槽の水に着水する直前から着水して離水する直後までの間は、前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度よりも小さくすることを特徴としている。
【0007】
また、請求項3の加湿器では、前記ターンモータは、回転角度及び回転速度を制御可能なステッピングモータとし、前記制御部は、前記気化フィルタが前記水槽に浸漬した状態で回転前の姿勢から、前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度よりも小さい回転速度として前記気化フィルタを第一の所定角度だけ回転させ、更に、前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度として第二の所定角度だけ回転させ、更に、前記気化フィルタが前記水槽に浸漬した状態で停止するまで前記ターンモータの回転速度を前記所定の回転速度よりも小さい回転速度とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、制御部は、送風ファンの回転数が所定値より小さい場合、ターンモータの回転速度を所定の回転速度より小さくするようにしたので、気化フィルタの回転による着水及び離水時の騒音、並びに水滴の落下音(ポチャポチャ音)を低減することができ、運転音が比較的小さい状況下において発生する騒音を極力低減することで、ユーザーに与える不快感を極力抑えることができる。
【0009】
また、制御部は、ターンモータの回転駆動中において、気化フィルタが水槽の水に着水する直前から着水して離水する直後までの間は、ターンモータの回転速度を所定の回転速度よりも小さくするようにしたので、着水及び離水時の騒音、並びに水滴の落下音(ポチャポチャ音)を低減しつつ、気化フィルタに当たらずに通過する空気(加湿に寄与しない空気)を減らして加湿量の変動を抑制することができる。
【0010】
また、ターンモータは、回転角度及び回転速度を制御可能なステッピングモータとし、制御部は、気化フィルタが水槽に浸漬した状態で回転前の姿勢から、ターンモータの回転速度を所定の回転速度よりも小さい回転速度として気化フィルタを第一の所定角度だけ回転させ、更に、ターンモータの回転速度を所定の回転速度として第二の所定角度だけ回転させ、更に、気化フィルタが水槽に浸漬した状態で停止するまでターンモータの回転速度を所定の回転速度よりも小さい回転速度としたので、特別にセンサ等を用いることがなく、気化フィルタ9回転時の騒音の低減及び加湿量変動の抑制を容易かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施形態の外観を説明する斜視図
図2】同実施形態の加湿運転時における背面側断面図
図3】同実施形態の乾燥運転時における背面側断面図
図4】同実施形態における気化フィルタの回転伝達部分の断面図
図5】同実施形態の制御ブロック図
図6】同実施形態における気化フィルタの回転動作を説明する図
図7】同実施形態におけるターンモータの回転動作を説明するフローチャート
図8】第二の実施形態におけるターンモータの回転動作を説明するフローチャート
図9】気化フィルタの回転中における加湿量の変動を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の一実施形態における加湿器を図に基づいて説明する。
【0013】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、図1図4における定義に従う。また、上下方向は、器具本体1の設置時における鉛直方向に対応する。前後方向及び左右方向は、器具本体1の設置時における水平方向に対応する。
【0014】
1は加湿器の器具本体、2は器具本体1内の下部に設けられた水槽で、カートリッジ式の給水タンク3によって給水される。前記給水タンク3は、器具本体1の上面から器具本体1内に挿入され、水槽2上に載置されて当該水槽2内に一定量の水を供給する。4は室内の乾燥した空気(乾燥空気)を器具本体1内に取り入れる吸込口で、器具本体1の側面部に開口している。5は室内に湿った空気(加湿空気)を送る吹出口で、器具本体1の上面に開口している。6は吸込口4から吹出口5に至る送風経路12中に設置されたシロッコファン等からなる送風ファン、7は送風ファン6を駆動するモータである。送風ファン6の下流側には、空気を加熱するヒータ8と、吸水性の良いシート状の素材をプリーツ折りした縦長方形の気化フィルタ9が設置される。当該気化フィルタ9は回転自在に取り付けられ、その両端は交互に水槽2内の水に浸漬されており、毛細管現象にて水を全面に行き渡るように吸い上げる。
【0015】
送風ファン6によって吸込口4から取り入れた室内の乾燥空気は、ヒータ8を通過後、水槽2の水により湿潤した気化フィルタ9を通過することで加湿空気となって、吹出口5から室内へ送出する。12は送風ファン6で送風された空気が器具本体1内を流通する送風経路である。
【0016】
13は送風ファン6の外周を囲うように設置されるファンケーシングである。吸込口4から送風ファン6の中央部に吸い込まれた空気は、送風ファン6の外周より遠心状に送風し、ファンケーシング13内の渦巻き状の風路(図示せず)を送風ファン6の回転方向に沿って流通し、下流側となる送風経路12へ送出される。
【0017】
14は気化フィルタ9の上部を囲うように設置されるフィルタケーシングである。フィルタケーシング14はファンケーシング13と一体に成形されている。
【0018】
15は不織布等のシート状の濾材で構成されたHEPAフィルタ等からなるエアフィルタであり、吸込口4から取り入れる空気に対し、微細な塵埃やPM2.5等の微小粒子を捕集して空気清浄を行い、吸込口4に形成された取り付け部(図示せず)に対して自在に装着、及び脱着が可能である。
【0019】
水槽2は、給水タンク3によって給水される給水部10と、気化フィルタ9が設置される気化フィルタ設置部11が並べて配置され、両者は樹脂により一体に成形されており、共に底部の連通口32を介して連通し、同一レベルの水を貯水する。そして、この水槽2は器具本体1の背面から引き出し用取っ手16を引くことで取り出し可能となっている。
【0020】
17は気化フィルタ9の周囲を覆って当該気化フィルタ9を収納する枠体である。枠体17には上下及び左右の略中間に回転用の支点18と雌継手20が設けられており、水槽2に設けられた支点受け部19と雌継手受け部21に、支点18と雌継手20をそれぞれ設置することで、気化フィルタ9は支点18と雌継手20を回転中心として回転可能となっている。
【0021】
24は所定の回転速度で回転駆動するターンモータである。ターンモータ24は雌継手20と対向した器具本体1の前面内部に設けられ、ターンモータ24の軸が雄継手25を介して雌継手20に嵌合している。これにより、ターンモータ24を駆動することで雌継手20を回転させ、気化フィルタ9を回転させることができる。
【0022】
29は給水タンク3の蓋となる給水口キャップである。給水口キャップ29には、図示しない弁機構が設けられており、図示しない圧縮バネによって常時閉弁となるよう規制されている。給水タンク3が給水部10にセット(収納)されることで、給水部10に固定された突起部30の上端が、前記弁機構の底面に当接し弁が押し上げられることで開弁状態となり、給水タンク3から給水部10に給水される。
【0023】
31は給水部10内に設けられ、給水部10及び気化フィルタ設置部11に一定水位以上の貯水があるとき、水位有りを検知し、水位検知信号を出力するフロートセンサである。33は器具本体1が設置された室内の湿度を検知する湿度センサである。
【0024】
34は複数のスイッチが備えられ各種操作指令を行う操作部である。操作部34には、加湿運転の開始及び停止を指示する運転スイッチと、湿度の設定を行うスイッチと、加湿運転の強弱を設定する運転切替スイッチと、気化フィルタ9を乾燥する乾燥運転を開始する乾燥スイッチと、等が備えられている。
【0025】
また、操作部34には各スイッチに対応したランプが備えられており、運転スイッチが操作されたら点灯する運転ランプと、設定湿度を表示するランプと、運転切替スイッチで切り替えた運転状態を表示するランプと、等が備えられている。
【0026】
35はフロートセンサ31や湿度センサ33の各センサで検知された検知値や、操作部34上に備えられた各スイッチでの設定内容に基づき、運転内容を制御するマイコンで構成された制御部である。当該制御部35には、送風ファン6を所定の回転数で駆動させる送風ファン制御手段40と、ヒータ8のON/OFF状態を変化させるヒータ制御手段41と、気化フィルタ9を回転させるターンモータ24の動作を制御するターンモータ制御手段42と、特定の動作開始時から経過した時間をカウントする計時手段としてのタイマー43と、が備えられている。
【0027】
次に、本発明の一実施形態での運転開始から終了までの動作について説明する。
【0028】
加湿器を運転する際に、給水タンク3に水を入れ水槽2に設置することにより、水槽2には給水タンク3より一定量の水が流れ出し、縦長に設置された気化フィルタ9の下端部を浸漬する。これにより、気化フィルタ9は水を吸い上げ湿潤する。
【0029】
このとき、操作部34の運転スイッチが操作されると、制御部35は送風ファン6を駆動し、吸込口4から室内の乾燥空気を吸い込む。送風ファン6により送出された乾燥空気は、送風経路12に設けたヒータ8により加熱される。そして、加熱された乾燥空気は図2に示すように、一端を水槽2に水没させることで湿潤した気化フィルタ9を通過し、気化フィルタ9内の水を気化させて加湿空気となり、吹出口5から室内に放出される。
【0030】
また、気化フィルタ9の下端が水没した状態で運転を開始すると同時に、制御部35内のタイマー43により所定の時間をカウントする。所定時間が経過したら気化フィルタ9を略180度回転させ、水没していなかった他端が水没する状態で停止する。そして再び気化フィルタ9は水を吸い上げ湿潤し、気化フィルタ9を通過した空気が水を気化させながら加湿空気となり送出される。
【0031】
以後、この動作を繰り返して加湿運転を継続する。このとき、気化フィルタ9の回転方向は正回転でも逆回転でも良い。
【0032】
加湿運転終了後は、気化フィルタ9を図2の状態から略90度回転して、図3に示すようにその全体を水槽2の水面と略水平状態になるように水面上で保持する。そして制御部35内のタイマー43により所定の時間をカウントし、その間、送風経路12に設けたヒータ8によって加熱された空気により気化フィルタ9を乾燥する乾燥運転を行う。
【0033】
乾燥運転終了後、再び操作部34の運転スイッチが操作されると、気化フィルタ9を略90度回転して下端部を浸漬し、加湿運転を行う。
【0034】
また乾燥運転終了後、気化フィルタ9及び水槽2を器具本体1から取り出して清掃等をする場合には、器具本体1の引き出し用取っ手16から図1に示す矢印の向きに取り出せばよい。また、気化フィルタ9及び水槽2は着脱可能となっているため、気化フィルタ9を取り出し後、水槽2を清掃することができる。
【0035】
次に、本発明の一実施形態において、送風ファンの回転数が所定値より小さい場合、ターンモータの回転速度を所定の回転速度より小さくする制御について、図6及び図7に基づいて説明する。
【0036】
操作部34の運転スイッチが操作されると、図6(a)のように気化フィルタ9を略鉛直方向に縦長の姿勢として下端部が水に浸漬した状態で、加湿運転を開始する(ステップS101)。そして、制御部35内のタイマー43により加湿運転時間のタイマーカウントを開始する(ステップS102)。
【0037】
加湿運転を継続しつつ、タイマーカウントが所定時間(例えば5分)を経過したかどうか判断する(ステップS103)。これは、所定時間が経過したら気化フィルタ9を略180度回転させ、水没していなかった他端を浸漬させるためである。つまり、気化フィルタ9を回転して、所定時間毎にその両端を交互に水槽2内の水に浸漬することにより、気化フィルタ9全体を水分の気化、即ち加湿に寄与させることができる。
【0038】
ステップS103でタイマーカウントが所定時間を経過していた場合、ステップS104にて加湿運転中の送風ファン6の回転数が所定値より小さいかどうか判断する。送風ファン6の回転数が所定値より小さい場合とは、設定した湿度に到達したことで加湿量を抑えた運転を行う場合や、就寝中などで送風ファン6の運転音を極力抑えたい場合などが該当し、運転音は比較的小さい状態である。ここで、ターンモータ24を駆動して気化フィルタ9を回転すると、気化フィルタ9が水槽2内の水に着水する時、また離水する時に発生する騒音や、離水した直後に気化フィルタ9から落ちる水滴の落下音(ポチャポチャ音)が発生する。気化フィルタ9の回転に起因するこれらの騒音が、運転音が比較的小さい状況下では大きな騒音となり、ユーザーにとって耳障りで不快な騒音となる虞がある。
【0039】
そこで、ステップS104にて加湿運転中の送風ファン6の回転数が所定値より小さい場合、ターンモータ24を駆動する回転速度を所定の回転速度より小さくする(ステップS105)ことで、気化フィルタ9が着水及び離水する時の騒音、並びに水滴の落下音を低減することができるので、運転音が比較的小さい状況下において発生する騒音を極力低減し、ユーザーに与える不快感を抑えることができる。ステップS105では、ターンモータ24の回転速度は3rpm(90度回転するのに5秒)とし、回転角度は気化フィルタ9の他端が浸漬し略鉛直方向に縦長となるまで、図6(a)の状態から(b)、(c)、(d)と180度回転する。
【0040】
一方で、ステップS104にて送風ファン6の回転数が所定値以上であった場合は、ターンモータ24の回転速度は所定値とする(ステップS106)。送風ファン6の回転数が所定値以上である場合とは、設定した湿度に到達するため加湿量が多い運転を行う場合が該当し、運転音は比較的大きい状態となっている。
【0041】
この場合、気化フィルタ9の回転に起因する騒音の抑制より、気化フィルタ9の回転速度が遅いことにより加湿量が不安定になることを抑制するため、ターンモータ24の回転速度は通常の所定値とする。気化フィルタ9の回転中は、気化フィルタ9に当たって通過する空気が減少し、加湿に寄与せず通過する空気量が多くなるので、加湿量が変動(減少)して不安定になる。そのため、送風ファン6の回転数が所定値以上であり、多くの加湿量が求められる運転状況においては、騒音の抑制よりも加湿量の変動を抑制して、安定した加湿量の確保を行う方が望ましい。
【0042】
なお、ステップS106では、ターンモータ24の回転速度は5rpm(90度回転するのに3秒)とし、回転角度はステップ105と同様に180度回転する。
【0043】
ステップS105又は106において、ターンモータ24を駆動し、気化フィルタ9を180度回転させたら、図6(d)の状態でターンモータ24を停止する(ステップS107)。そして、加湿運転時間のタイマーカウントをリセットし(ステップS108)、再びステップS102でタイマーカウントを開始して、次の気化フィルタ9の回転開始タイミングをカウントする。
【0044】
前述と同様に、タイマーカウントが所定時間を経過したら、送風ファン6の回転数に応じてターンモータの回転速度を決定して気化フィルタ9を回転する。このとき、図6(d)の状態から(e)、(f)、(a)と180度回転する。
【0045】
次に、本発明の第二の実施形態として、気化フィルタ9が着水する直前から着水して離水する直後までの間は、ターンモータ24の回転速度を所定の回転速度よりも小さくする制御について、図6及び図9に基づいて説明する。
【0046】
気化フィルタ9が回転する際に発生する騒音は、着水及び離水する時の騒音、並びに水滴の落下音である。従って、気化フィルタ9が水槽の水に着水する直前から着水して離水する直後までの間のみ、ターンモータ24の回転速度を所定の回転速度よりも小さくして騒音を抑制すれば良い。一方、これ以外の期間、即ち気化フィルタ9が離水してから次に着水するまでの間では、前述した騒音の発生は無いことから騒音抑制よりも加湿量の変動抑制を行うこととし、ターンモータ24は通常の回転速度として素早く回転させ、気化フィルタ9に当たらずに通過する空気量を低減する。つまり、図6(c)で着水する直前から図6(d)を経て、図6(e)で離水するまで、ターンモータ24の回転速度を所定の回転速度よりも小さくし、図6(e)で離水してから図6(f)で着水する直前までは、ターンモータ24の回転速度を所定の回転速度とする。
【0047】
これにより、気化フィルタ9が着水及び離水する時の騒音、並びに水滴の落下音を低減しつつ、離水してから着水する直前までの間は加湿量の変動を抑制することができる。
【0048】
図9は、気化フィルタ9が図6(a)~(d)の状態まで回転する際に変動する加湿量のイメージを表したものである。曲線Aは、第一の実施形態においてターンモータ24の回転速度を所定の回転速度より小さくした場合(ステップ105)の加湿量を示し、曲線Bは、第二の実施形態において着水する直前から着水して離水する直後までの間のみ、ターンモータ24の回転速度を所定の回転速度よりも小さくした場合の加湿量を示す。
【0049】
曲線Bの加湿量の変動(低下)量ΔBは、曲線Aの加湿量の変動(低下)量ΔAに比べて小さくなっており、気化フィルタ9の回転時間、即ち加湿量の変動が生じている時間は曲線Bの方が曲線Aよりも短くなっている。これは、曲線Aが回転中全てにおいて回転速度を小さくしているのに対し、曲線Bは着水する直前から着水して離水する直後までの間のみ回転速度を小さくしているためであり、後者の方が加湿量の変動を抑制していることを示している。
【0050】
なお、図6(a)の状態、つまり気化フィルタ9を縦長の姿勢として下端部が水に浸漬した状態でターンモータ24を停止する際や、図6(b)及び図6(c)の状態、つまり気化フィルタ9が離水及び着水する際には、ターンモータ24の駆動時間で各タイミングを判断し制御すれば良いが、各種センサを用いて精度良く回転時の位置(角度)を検知しても良い。つまり、赤外線センサ、磁気センサ、光センサ、及びリミットスイッチ(機械的スイッチ)、等を用いた位置検知スイッチ(図示せず)を用いても良い。また、ターンモータ24はギヤモータ(ギヤードモータ)等のインダクションモータを用いても良い。
【0051】
ここで、ターンモータ24にステッピングモータを使用することで、回転角度や回転速度が簡単に制御できるので、特別にセンサ等を用いることがなく、回転時の位置検出を容易かつ高精度に行うことができる。
【0052】
ターンモータ24にステッピングモータを使用して、回転角度及び回転速度を制御する実施形態について、図6及び図8を用いて説明する。
【0053】
前述した第一の実施形態と同様に、図6(a)のように気化フィルタ9の下端部が水に浸漬した状態で、加湿運転を開始し(ステップS201)、加湿運転時間のタイマーカウントを開始する(ステップS202)。そして、気化フィルタ9の回転開始タイミングを計るため、タイマーカウントが所定時間(例えば5分)を経過したかどうか判断する(ステップS203)。
【0054】
ステップS203でタイマーカウントが所定時間を経過していた場合、気化フィルタ9の回転を開始するが、ターンモータ24を駆動する回転速度を所定の回転速度より小さくする(ステップS204)。ステップS204では、ターンモータ24の回転速度は3rpm(90度回転するのに5秒)とし、回転角度は気化フィルタ9が離水するまで、図6(a)の状態から(b)まで角度θ1(第一の所定角度)回転する。なお、ターンモータ24の回転速度及び回転角度の制御は、制御部35のターンモータ制御手段42にて、回転速度に比例したパルス速度、及び回転角度に比例したパルス数をターンモータ24のステッピングモータへ指令することで行うことができるので、容易かつ高精度に制御することができる。
【0055】
次に、気化フィルタ9が離水してから次に着水する直前までの間は、ターンモータ24の回転速度は所定値とする(ステップS205)。ステップ205では、ターンモータ24の回転速度は5rpm(90度回転するのに3秒)とし、回転角度は気化フィルタ9が離水してから着水するまで、図6(b)の状態から(c)まで角度θ2(第二の所定角度)回転する。
【0056】
次に、気化フィルタ9が着水する直前から他端が浸漬し略鉛直方向に縦長となるまでの間は、ターンモータ24を駆動する回転速度を所定の回転速度より小さくする(ステップS206)。ステップS206では、ターンモータ24の回転速度は3rpm(90度回転するのに5秒)とし、回転角度は気化フィルタ9が着水してから略鉛直方向に縦長となるまで、図6(c)の状態から(d)まで角度θ3回転する。
【0057】
また、図6(d)の状態となったら、ターンモータ24を停止する(ステップS207)。そして、加湿運転時間のタイマーカウントをリセットし(ステップS208)、再びステップS202でタイマーカウントを開始して、次の気化フィルタ9の回転開始タイミングをカウントする。
【0058】
このように、ターンモータ24にステッピングモータを使用することで、特別にセンサ等を用いることがなく、精度良く気化フィルタ9の位置検出を行うことができるので、気化フィルタ9回転時の騒音の低減及び加湿量変動の抑制を容易かつ高精度に行うことができる。
【0059】
なお、加湿運転開始前の気化フィルタ9の姿勢は、図3のように略水平状態となっており、ここから図2及び図6(a)の略鉛直方向に縦長となるよう、略90度回転して気化フィルタ9を浸漬する。また、加湿運転終了後は気化フィルタ9を図2及び図6(a)の状態から図3の略水平状態となるよう、略90度回転して乾燥運転を行う。これらの回転駆動中において、気化フィルタ9の着水及び離水が発生するが、気化フィルタ9を素早く回転させて早く加湿運転を開始及び終了するために、ターンモータ24の回転速度は所定値とすることが望ましい。
【0060】
また、本発明の実施形態において、送風ファン6は気化フィルタ9の上流に配置されているが、気化フィルタ9の下流に配置されていても良い。つまり、気化フィルタ9の上流から空気を押し込む配置と、気化フィルタ9の下流から空気を引っ張る配置との違いによって、気化フィルタ9の回転に起因する騒音発生に影響はなく、またターンモータ24の回転速度を低下させることによる作用効果も同様に発揮されるため、送風ファン6が気化フィルタ9の下流に配置されていても、本発明の課題を解決するための手段によって同様の作用効果が及ぶものである。
【0061】
また、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 器具本体
2 水槽
4 吸込口
5 吹出口
6 送風ファン
9 気化フィルタ
12 送風経路
24 ターンモータ
35 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9