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特開2024-101384車両用灯具システム、制御装置、配光制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101384
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】車両用灯具システム、制御装置、配光制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20240722BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20240722BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
F21S41/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005346
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 重之
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA12
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA25
3K339CA01
3K339DA01
3K339GB01
3K339HA03
3K339KA07
3K339KA09
3K339LA06
3K339LA26
3K339LA31
3K339MA01
3K339MC03
3K339MC13
3K339MC14
3K339MC15
3K339MC17
3K339MC26
3K339MC27
3K339MC74
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】悪天候の場合の車両周囲の視認性を向上する新たな灯具を提供する。
【解決手段】制御部は、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合(S14のNo)には第1の配光パターンを照射するように車両用灯具を制御し(S16)、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合(S18のYes)には反射物が存在する部分領域を第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御し(S20)、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合(S18のNo)には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御する(S22)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方を照射可能な車両用灯具と、
車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように前記車両用灯具を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように前記車両用灯具を制御し、
通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御し、
雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御する、
ことを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項2】
車両前方を照射可能な車両用灯具と、
車両前方に存在する反射物の反射物情報及び前記反射物での反射光の路面への映り込みの有無に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように前記車両用灯具を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
車両前方に前記反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように前記車両用灯具を制御し、
車両前方に前記反射物が存在しかつ前記映り込みが無い場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御し、
車両前方に前記反射物が存在しかつ前記映り込みが有る場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御する、
ことを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項3】
前記制御部は、撮像部で路面を撮像した画像情報に基づいて所定の輝度以上の映り込み領域が検出された場合に前記第3の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記制御部は、撮像部で路面を撮像した画像情報に基づいて所定の輝度以上の映り込み領域が検出されかつ前記映り込み領域の面積が所定の面積よりも大きい場合に前記第3の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項5】
前記制御部は、車内の運転者の視線情報に基づいて運転者の視線が車両から所定の距離より手前側に向いている場合に前記第3の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項6】
前記車両用灯具は、複数の発光領域がマトリックス状に配列した光源を有し、
前記制御部は、前記複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで前記部分領域の明るさが異なる複数の配光パターンを形成可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用灯具システム。
【請求項7】
前記光源は、矩形の短辺方向に20以上の発光素子が配列され、長辺方向に100以上の発光素子が配設されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用灯具システム。
【請求項8】
車両前方を照射可能な車両用灯具を制御する制御装置であって、
車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように前記車両用灯具を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように前記車両用灯具を制御し、
通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御し、
雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項9】
車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する配光制御方法であって、
通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように前記車両用灯具を制御し、
通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御し、
雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御する、
ことを特徴とする配光制御方法。
【請求項10】
車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する制御部に実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記制御部に、
通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように前記車両用灯具を制御するステップと、
通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御するステップと、
雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には前記反射物が存在する部分領域を前記第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように前記車両用灯具を制御するステップと、を実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前方路面の視認性は降雨時、降雪時、または霧発生時のような悪天候下において様々な要因により低くなる。例えば、降雨時には、自車からの照明光の多くが路面上の水膜によって鏡面反射されるので、路面で拡散反射または再帰反射されて自車に戻る光は少なくなる。そのため路面が見にくくなる。その一方で、対向車からの照明光は水膜で反射され、そうした反射光はグレアを発生させうる。また、路面の周囲にある街路灯等の発光物や標識等の反射物といった様々な構造物の水膜への映り込みも路面視認性に影響しうる。
【0003】
そこで、悪天候下のハイビーム配光パターンとして、通常天候時に形成される第1配光パターンおよび悪天候時に形成される第2配光パターンを形成可能な一対の灯具ユニットと、車両周囲の天候状態に基づき、第2配光パターンが形成されるよう一対の灯具ユニットを制御する制御部と、を備える車両用灯具システムが考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-34758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の車両用灯具システムが備える灯具ユニットで悪天候時に形成可能な第2配光パターンは、主に車両正面の中央領域が遮光又は減光されることで、光幕グレアを低減することができる。
【0006】
しかしながら、前述の第2配光パターンは、光幕グレアを低減することができるものの、車両正面の中央領域が遮光又は減光されることで、車両正面の中央領域に含まれる遠方領域や標識等の視認性も低下してしまう。一方、車両正面全体の視認性を向上するために通常天候時に形成される第1配光パターンを照射すると、標識等の反射物からの反射光が運転者にグレアを与える可能性がある。特に、悪天候時には、反射物が路面に写り込むことで更なる視認性の低下を招くおそれもある。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、悪天候の場合の車両周囲の視認性を向上する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具システムは、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する制御部と、を備える。制御部は、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように車両用灯具を制御し、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御し、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御する。
【0009】
この態様によると、車両用灯具が、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで車両前方を照射することで、反射物の路面への映り込みが低減される。ひいては、悪天候の場合の車両周囲の視認性が向上する。
【0010】
本発明の別の態様もまた、車両用灯具システムである。この車両用灯具システムは、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両前方に存在する反射物の反射物情報及び反射物での反射光の路面への映り込みの有無に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する制御部と、を備える。制御部は、車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように車両用灯具を制御し、車両前方に反射物が存在しかつ映り込みが無い場合には反射物が存在する部分領域を第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御し、車両前方に反射物が存在しかつ映り込みが有る場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御する。
【0011】
この態様によると、車両用灯具が、車両前方に反射物が存在しかつ映り込みが有る場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで車両前方を照射することで、反射物の路面への映り込みが低減される。ひいては、悪天候の場合の車両周囲の視認性が向上する。
【0012】
制御部は、撮像部で路面を撮像した画像情報に基づいて所定の輝度以上の映り込み領域が検出された場合に第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御してもよい。これにより、車両用灯具は、輝度が高く映り込みの影響が大きい反射物が存在している場合は、第3の配光パターンで車両前方を照射し、輝度が低く映り込みの影響が小さい反射物が存在している場合は、反射物が存在する部分領域が第3の配光パターンよりも明るい第2の配光パターンで車両前方を照射できる。
【0013】
制御部は、撮像部で路面を撮像した画像情報に基づいて所定の輝度以上の映り込み領域が検出されかつ映り込み領域の面積が所定の面積よりも大きい場合に第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御してもよい。これにより、車両用灯具は、輝度が高く映り込みの影響が大きい反射物が存在している場合は、第3の配光パターンで車両前方を照射し、輝度が低く映り込みの影響が小さい反射物が存在している場合は、反射物が存在する部分領域が第3の配光パターンよりも明るい第2の配光パターンで車両前方を照射できる。
【0014】
制御部は、車内の運転者の視線情報に基づいて運転者の視線が車両から所定の距離より手前側に向いている場合に第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御してもよい。これにより、映り込みの有無を直接把握するカメラからの情報がなくても、車内の運転者の視線情報に基づいて、車両用灯具に第3の配光パターンで車両前方を照射させることができる。
【0015】
車両用灯具は、複数の発光領域がマトリックス状に配列した光源を有してもよい。制御部は、複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで部分領域の明るさが異なる複数の配光パターンを形成可能に構成されていてもよい。これにより、一つの光源で様々な配光パターンを形成できる。また、反射物が存在する部分領域が複数あっても、それぞれの部分領域の明るさが調整された配光パターンを形成できる。
【0016】
光源は、矩形の短辺方向に20以上の発光素子が配列され、長辺方向に100以上の発光素子が配設されていてもよい。
【0017】
本発明の更に別の態様は、制御装置である。この装置は、車両前方を照射可能な車両用灯具を制御する制御装置であって、車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する制御部を有する。制御部は、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように車両用灯具を制御し、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御し、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御する。
【0018】
この態様によると、制御装置が、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御することで、反射物の路面への映り込みが低減される。ひいては、悪天候の場合の車両周囲の視認性が向上する。
【0019】
本発明の更に別の態様は、配光制御方法である。この方法は、車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する配光制御方法であって、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように車両用灯具を制御し、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御し、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御する。
【0020】
この態様によると、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御することで、反射物の路面への映り込みが低減される。ひいては、悪天候の場合の車両周囲の視認性が向上する。
【0021】
本発明の更に別の態様は、プログラムである。このプログラムは、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する制御部に実行させるためのプログラムである。また、このプログラムは、制御部に、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンを照射するように車両用灯具を制御するステップと、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御するステップと、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御するステップと、を実行させる。
【0022】
この態様によると、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する制御部に実行させることで、反射物の路面への映り込みが低減される。ひいては、悪天候の場合の車両周囲の視認性が向上する。
【0023】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法や制御方法などの方法、灯具や照明、制御装置などの装置、発光モジュール、光源、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、悪天候の場合の車両周囲の視認性を向上する新たな灯具を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
図2】車両用灯具システムによって通常天候時に形成される第1の配光パターンの一例を模式的に示す図である。
図3】通常天候時に形成される第2の配光パターンの一例を模式的に示す図である。
図4】反射物を照射した光が路面に映り込んだ状態を説明するための模式図である。
図5】本実施の形態に係る配光制御方法を説明するためのフローチャートである。
図6】変形例に係る配光制御方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本実施の形態に係る車両灯具は、車両前方に配置された車両用前照灯であり、様々な制御部やセンサ等と適宜組み合わされることで車両用灯具システムを構成する。はじめに、本実施の形態に係る車両用灯具システムの概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
【0028】
車両用灯具システム10は、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)に対応したカメラユニット12と、センタECU14と、室内カメラ16と、ワイパスイッチ18と、ランプスイッチ20と、を備える。カメラユニット12は、車両前方を撮像する前方カメラ22と、前方カメラ22で撮像した画像情報に基づいて車両前方に存在する標識や車両等の物体を検出するカメラECU24と、を有する。本実施の形態に係るカメラユニット12やセンタECU14は車両本体側に設けられているが、車両全体のどこに設けてもかまわない。
【0029】
さらに、車両用灯具システム10は、ランプECU26と、ランプECU26によって配光制御されるLoビーム用ランプ28及びHiビーム用ランプ30と、高精細ADB(Adaptive Driving Beam)用のコントローラ32と、コントローラ32で制御される高精細ADB用のLEDユニット34と、を備える。本実施の形態に係るランプECU26やコントローラ32は、車両用灯具であるLoビーム用ランプ28やHiビーム用ランプ30、LEDユニット34のいずれかに設けられている。
【0030】
図2は、車両用灯具システムによって通常天候時に形成される第1の配光パターンの一例を模式的に示す図である。通常天候時か否かは、例えば、ワイパスイッチ18や不図示の雨滴センサの状態、前方カメラ22で撮像した画像情報等に基づいてセンタECU14で判定される。具体的には、ワイパスイッチ18がONであれば悪天候(雨天)時、ワイパスイッチ18がOFFであれば通常天候(晴天)時と判定され、天候情報としてその後の配光パターンの決定に用いられる。
【0031】
図2に示す第1の配光パターンP1は、Loビーム用ランプ28により形成されるロービーム用配光パターンPLと、Hiビーム用ランプ30により形成されるハイビーム用配光パターンPHと、LEDユニット34により形成されるADB配光パターンPHLと、が重なったパターンである。
【0032】
Loビーム用ランプ28は、H-H線より下方の車両近傍領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されている。Hiビーム用ランプ30は、H-H線より上方の遠方領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されている。Hiビーム用ランプ30は、8個のLEDが一方向に並んでおり、各LEDの点消灯を制御することで、ハイビーム用配光パターンPHの一部が遮光又は減光された配光パターンを形成できる。
【0033】
ADB配光パターンPHLは、H-H線とV線との交点を中心にロービーム用配光パターンPLとハイビーム用配光パターンPHの両方と重なる配光パターンである。また、各LEDの駆動電流を個別に制御し、一部のLEDの駆動電流をゼロまたは減らすことで、ADB配光パターンPHLを構成するマトリックスの一部のピクセルを遮光又は減光した状態にできる。これにより、ADB配光パターンPHLの範囲に含まれる車両や人へのグレアを防止する際の遮光領域を極力小さくできるとともに、その他の領域への視認性を維持できる。
【0034】
LEDユニット34は、縦64個、横256個のLED34a(発光領域)がマトリックス状に配列された光源を有し、コントローラ32からの指示に基づいて各LEDの駆動が個別に制御される。なお、LEDユニット34は、矩形の短辺方向に20以上の発光素子が配列され、長辺方向に100以上の発光素子が配設されていてもよい。また、LED以外でもマトリックス状の発光領域を個別に点消灯できるのであれば、有機EL素子や液晶シャッタ、MEMSミラーといったものも光源として適用可能である。
【0035】
コントローラ32は、複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで部分領域の明るさが異なる複数の配光パターンを形成可能に構成されている。これにより、一つのLEDユニット34で様々な配光パターンを形成できる。また、反射物が存在する部分領域が複数あっても、それぞれの部分領域の明るさが調整された配光パターンを形成できる。
【0036】
次に、車両前方に物標や反射物が存在している場合に適用される第2の配光パターンについて説明する。ここで、物標とは、歩行者や車両、信号機、街路灯、各種交通標識、デリニエータといったものである。物標の中で反射物とは、車両用灯具で照射された光が反射することで視認性が向上する各種交通標識やデリニエータといったものである。図3は、通常天候時に形成される第2の配光パターンの一例を模式的に示す図である。
【0037】
図3に示す物標は、歩行者36、交通標識38及び対向車40である。カメラユニット12は、前方カメラ22で撮像した画像情報に基づいて物標の位置や種類を検知し、その情報をランプECU26に送信する。通常天候時の場合、センタECU14は、物標の位置や種類に応じて部分的な遮光位置の決定や減光量の決定が行われ、所望の第2の配光パターンが選択される。ランプECU26及びコントローラ32は、選択された第2の配光パターンが形成されるように、Loビーム用ランプ28、Hiビーム用ランプ30及びLEDユニット34の照射状態を制御する。
【0038】
図3に示す第2の配光パターンP2のロービーム用配光パターンPLは第1の配光パターンP1と同様である。また、第2の配光パターンP2のハイビーム用配光パターンPHは、歩行者36と対向車40の位置に相当する部分領域R1~R3が非照射(遮光)された状態である。また、第2の配光パターンP2のADB配光パターンPHLは、歩行者36と対向車の位置に相当する部分領域R4,R5が非照射(遮光)された状態であり、反射物である交通標識38の位置に相当する部分領域R6が減光された状態である。なお、交通標識38の位置に相当する部分領域R6を減光するのは、ハイビームで交通標識38を照射した反射光が運転者に与えるグレアを抑制するためである。
【0039】
第2の配光パターンでは部分領域R6を減光して照射しているため、路面が乾いている通常天候時では交通標識38の反射光が路面に映り込むことはほとんどない。しかしながら、雨天のような悪天候時には、部分領域R6を減光して照射していても、交通標識38の反射光が濡れた路面に映り込むことがあり、運転者の視認性の低下の一因となる。
【0040】
図4は、反射物を照射した光が路面に映り込んだ状態を説明するための模式図である。なお、図4では、ADB配光パターンPHLの領域のみ図示している。図4において、交通標識42,44,46,48で反射した光は長細い反射像A1~A4として濡れた路面に映り込む。そのため、運転者は反射像A1~A4の存在により注意が引き付けられることで、車両周囲の視認性が低下するおそれがある。
【0041】
そこで、本実施の形態に係る車両用灯具システムでは、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域R7~R10を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンP3で照射するように車両用灯具を制御する。これにより、反射物の路面への映り込みが低減される。ひいては、雨天等の悪天候の場合の車両周囲の視認性が向上する。
【0042】
このように、本実施の形態に係る車両用灯具システム10は、車両前方を照射可能な車両用灯具(Loビーム用ランプ28、Hiビーム用ランプ30及びLEDユニット34)と、車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する、各種ECU(カメラECU24、センタECU14及びランプECU26)やコントローラ32からなる制御部と、を備える。なお、各種検知、判別、制御がどのECUやコントローラで実行するかは特に限定されず、適宜選択すればよい。
【0043】
制御部は、カメラやセンサ等の出力結果から通常天候時かつ車両前方に反射物が存在しない場合には第1の配光パターンP1(図2参照)を照射するように車両用灯具を制御し、通常天候時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域を第1の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第2の配光パターンP2(図3参照)で照射するように車両用灯具を制御し、雨天時かつ車両前方に反射物が存在する場合には反射物が存在する部分領域R7~R10を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンP3(図4参照)で照射するように車両用灯具を制御する。
【0044】
なお、反射物が存在しない場合のADB配光パターンPHLの各発光領域の明るさA1を100とすると、通常天候時かつ反射物が存在する場合のADB配光パターンPHLの反射物が存在する部分領域(発光領域)の明るさA2を70、雨天時かつ反射物が存在する場合のADB配光パターンPHLの反射物が存在する部分領域(発光領域)の明るさA3を40(A1>A2>A3>0)としてもよい。あるいは、前述の明るさの順番となるように、第1の配光パターンP1~第3の配光パターンP3における各発光領域(部分領域)のLEDを駆動する電流値を予め設定していてもよい。
【0045】
図5は、本実施の形態に係る配光制御方法を説明するためのフローチャートである。この方法は、車両周囲の天候状態と相関する天候情報及び車両前方に存在する反射物の反射物情報に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する。
【0046】
はじめに、センタECU14は、カメラユニット12を用いて車両前方に存在する反射物情報を取得する(S10)。反射物情報とは、反射物の種類や、車両前方25mの仮想スクリーン上での位置である。次に、センタECU14は、ワイパスイッチ18や雨滴センサからの情報に基づいて天候情報を取得する。次に、車両前方に反射物が存在するか否かを判定する(S14)。反射物が存在しない場合(S14のNo)、天候情報の結果にかかわらず、ランプECU26及びコントローラ32は、第1の配光パターンP1を形成するように車両用灯具を制御する(S16)。反射物が存在し(S14のYes)、かつ、通常天候の場合(S18のYes)、ランプECU26及びコントローラ32は、第2の配光パターンP2を形成するように車両用灯具を制御する(S20)。一方、通常天候ではない雨天のような場合(S18のNo)、ランプECU26及びコントローラ32は、第3の配光パターンP3を形成するように車両用灯具を制御する(S22)。なお、このような制御方法の各ステップを制御装置に実行させるプログラムも本発明の態様の一部である。
【0047】
(変形例)
次に、本実施の形態に係る車両用灯具システムの変形例について説明する。なお、車両用灯具システム10と同様の構成については説明を適宜省略する。変形例に係る車両用灯具システムは、天候情報の代わりに反射物での反射光の路面への映り込みの有無に基づいて第2の配光パターンと第3の配光パターンの選択を行っている。
【0048】
図6は、変形例に係る配光制御方法を説明するためのフローチャートである。この方法は、車両前方に存在する反射物の反射物情報及び反射物での反射光の路面への映り込みの有無に基づいて決定された配光パターンで車両前方を照射するように車両用灯具を制御する。なお、図6の説明において、図5で説明したステップと同様のステップは同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
図6のフローチャートにおいて、反射物情報を取得(S10)した後、映り込み情報を取得する(S24)。路面の映り込みの有無は、カメラユニット12で反射物の位置や種類を検知した画像情報を利用して判定される。反射物が存在し(S14のYes)、かつ、路面の映り込みが無い場合(S26のYes)、ランプECU26及びコントローラ32は、第2の配光パターンP2を形成するように車両用灯具を制御する(S20)。一方、路面の映り込みが有る場合(S26のNo)、ランプECU26及びコントローラ32は、第3の配光パターンP3を形成するように車両用灯具を制御する(S22)。なお、このような制御方法の各ステップを制御装置に実行させるプログラムも本発明の態様の一部である。
【0050】
これにより、車両用灯具が、車両前方に反射物が存在しかつ映り込みが有る場合には反射物が存在する部分領域を第2の配光パターンの該当する部分領域よりも暗くした第3の配光パターンP3で車両前方を照射することで、反射物の路面への映り込みが低減される。ひいては、悪天候の場合の車両周囲の視認性が向上する。また、ワイパスイッチ18や雨滴センサといった他の装置を用いた天候情報がなくても、第3の配光パターンで車両前方を照射する状況か否かを判定できる。
【0051】
変形例に係る車両用灯具システムが備える制御部は、前方カメラ22で路面を撮像した画像情報に基づいて所定の輝度以上の映り込み領域が検出された場合に第3の配光パターンP3で照射するように車両用灯具を制御する。これにより、車両用灯具は、輝度が高く映り込みの影響が大きい反射物が存在している場合は、第3の配光パターンで車両前方を照射し、輝度が低く映り込みの影響が小さい反射物が存在している場合は、反射物が存在する部分領域が第3の配光パターンよりも明るい第2の配光パターンで車両前方を照射できる。
【0052】
また、制御部は、前方カメラ22で路面を撮像した画像情報に基づいて所定の輝度以上の映り込み領域が検出されかつ映り込み領域の面積が所定の面積よりも大きい場合に第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御してもよい。
【0053】
また、制御部は、室内カメラ16で撮像した車内の運転者の視線情報や顔の向きの情報に基づいて運転者の視線が車両から所定の距離(例えば10mm)より手前側に向いている場合に第3の配光パターンで照射するように車両用灯具を制御してもよい。室内カメラ16は、インストルメントパネルに設けた赤外線カメラであってもよい。これにより、映り込みの有無を直接把握するカメラからの情報がなくても、車内の運転者の視線情報や顔の向きの情報に基づいて、車両用灯具に第3の配光パターンで車両前方を照射させることができる。
【0054】
また、制御部は、路面への映り込みの大きさや明るさに応じて第3の配光パターンにおける反射物が存在する部分領域の減光率を変化させてもよい。例えば、映り込みが大きい場合は減光率を大きくし(比較的暗くし)、映り込みが小さい場合は減光率を小さくし(比較的明るくし)てもよい。
【0055】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0056】
10 車両用灯具システム、 12 カメラユニット、 14 センタECU、 16 室内カメラ、 18 ワイパスイッチ、 20 ランプスイッチ、 22 前方カメラ、 24 カメラECU、 26 ランプECU、 28 Loビーム用ランプ、 30 Hiビーム用ランプ、 32 コントローラ、 34 LEDユニット、 34a LED、 36 歩行者、 38 交通標識、 40 対向車、 42 交通標識、 P1 第1の配光パターン、 P2 第2の配光パターン、 P3 第3の配光パターン、 PH ハイビーム用配光パターン、 PHL ADB配光パターン、 PL ロービーム用配光パターン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6