(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101387
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】圧力開放弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20240722BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20240722BHJP
H01M 50/333 20210101ALI20240722BHJP
F16K 1/18 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
F16K17/04 E
H01M50/317 201
H01M50/333
F16K1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005349
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 徳雄
【テーマコード(参考)】
3H052
3H059
5H012
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052CA12
3H059AA10
3H059CD03
3H059EE01
5H012AA07
5H012BB08
5H012GG07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】弁閉位置から弁開位置への弁部材の移動に要する時間を短縮する
【解決手段】圧力開放弁10は、開口部23,24を含み、筐体100の表面に固定されているケース20と、筐体100の表面に平行な回転軸32,37を中心に閉位置から開位置へ回転可能であるようケース20によって支持され、閉位置において開口部を覆う弁部材30,35と、弁部材30,35の回転方向において弁部材30,35を付勢する付勢部材40と、を備える。付勢部材40は、閉位置においては、回転方向において弁部材30,35を閉位置へ向かわせる閉方向付勢力を弁部材30,35に加える。弁部材30,35が、閉位置と開位置との間に位置する基準ラインよりも開かれると、付勢部材40が弁部材30,35に加える付勢力が、閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部のガスの内圧が上昇したときに筐体からガスを逃がす圧力開放弁であって、
開口部を含み、前記筐体の表面に固定されているケースと、
前記筐体の前記表面に平行な回転軸を中心に閉位置から開位置へ回転可能であるよう前記ケースによって支持され、閉位置において前記開口部を覆う弁部材と、
前記弁部材の回転方向において前記弁部材を付勢する付勢部材と、を備え、
前記付勢部材は、前記閉位置においては、前記回転方向において前記弁部材を前記閉位置へ向かわせる閉方向付勢力を前記弁部材に加え、
前記弁部材が、前記閉位置と前記開位置との間に位置する基準ラインよりも開かれると、前記付勢部材が前記弁部材に加える付勢力が、閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される、圧力開放弁。
【請求項2】
前記付勢部材は、巻線部、第1アーム及び第2アームを含むトーションスプリングである、請求項1に記載の圧力開放弁。
【請求項3】
前記弁部材は、前記第1アームに連結され、前記筐体の前記表面に平行な第1回転軸を中心に回転可能な第1弁部材と、前記第2アームに連結され、前記筐体の前記表面に平行な第2回転軸を中心に回転可能な第2弁部材と、を含む、請求項2に記載の圧力開放弁。
【請求項4】
前記第1回転軸と前記第2回転軸は、共通の1つの回転軸である、請求項3に記載の圧力開放弁。
【請求項5】
前記付勢部材は、長さ方向において伸縮し、
前記付勢部材は、前記弁部材に連結された第1端と、長さ方向において前記第1端の反対側に位置する第2端と、を含み、
前記閉位置において、前記付勢部材の前記第1端及び前記第2端を通る直線が、前記弁部材の前記回転軸よりも外側に位置し、
前記開位置において、前記付勢部材の前記第1端及び前記第2端を通る直線が、前記弁部材の前記回転軸よりも内側に位置する、請求項1に記載の圧力開放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部の圧力を調整する圧力開放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力開放弁は、筐体の内部の圧力を調整するための装置である。筐体は、例えば、自動車に搭載されるバッテリーパックである。バッテリーパックの内部には、バッテリーセルなどのデバイスが収容され、密閉されている。圧力開放弁は、バッテリーパックなどの筐体に取り付けられている。例えば、圧力開放弁は、筐体に形成されている通気口を覆うように配置されている。圧力開放弁は、筐体の内部の圧力が閾値を超えると、筐体の内部のガスを外部に放出するよう動作する。圧力開放弁は、圧力の上昇に起因して筐体の内部のデバイスが損傷することを抑制できる。
【0003】
いくつかの圧力開放弁が提案されている。
例えば特許文献1は、筐体の通気口に通じる開口部が形成されたケースと、ケーの開口部を覆う弁部材と、弁部材に付勢力を加える付勢部材と、を備える圧力開放弁を開示している。弁部材は、回転軸を中心に閉位置から開位置へ回転可能であるよう支持されている。付勢部材は、ケースの開口部に向かう方向に作用する付勢力を弁部材に加えている。閉位置において、弁部材が筐体の内圧から受ける力が、弁部材が付勢部材から受ける付勢力よりも大きくなると、弁部材が閉位置から開位置へ向かって回転移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の圧力開放弁においては、弁部材が閉位置から開位置へ向かって回転移動するにつれて、弁部材が付勢部材から受ける付勢力が増加する。このため、閉位置から開位置への弁部材の移動に時間を要する。
【0006】
本発明は、このような課題を解決できる圧力開放弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[5]に関する。
[1] 筐体の内部のガスの内圧が上昇したときに筐体からガスを逃がす圧力開放弁であって、
開口部を含み、前記筐体の表面に固定されているケースと、
前記筐体の前記表面に平行な回転軸を中心に閉位置から開位置へ回転可能であるよう前記ケースによって支持され、閉位置において前記開口部を覆う弁部材と、
前記弁部材の回転方向において前記弁部材を付勢する付勢部材と、を備え、
前記付勢部材は、前記閉位置においては、前記回転方向において前記弁部材を前記閉位置へ向かわせる閉方向付勢力を前記弁部材に加え、
前記弁部材が、前記閉位置と前記開位置との間に位置する基準ラインよりも開かれると、前記付勢部材が前記弁部材に加える付勢力が、閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される、圧力開放弁。
【0008】
[2] [1]に記載の圧力開放弁において、前記付勢部材は、巻線部、第1アーム及び第2アームを含むトーションスプリングであってもよい。
【0009】
[3] [2]に記載の圧力開放弁において、前記弁部材は、前記第1アームに連結され、前記筐体の前記表面に平行な第1回転軸を中心に回転可能な第1弁部材と、前記第2アームに連結され、前記筐体の前記表面に平行な第2回転軸を中心に回転可能な第2弁部材と、を含んでいてもよい。
【0010】
[4] [3]に記載の圧力開放弁において、前記第1回転軸と前記第2回転軸は、共通の1つの回転軸であってもよい。
【0011】
[5] [1]に記載の圧力開放弁において、前記付勢部材は、長さ方向において伸縮してもよく、前記付勢部材は、前記弁部材に連結された第1端と、長さ方向において前記第1端の反対側に位置する第2端と、を含んでもよく、前記閉位置において、前記付勢部材の前記第1端及び前記第2端を通る直線が、前記弁部材の前記回転軸よりも外側に位置してもよく、前記開位置において、前記付勢部材の前記第1端及び前記第2端を通る直線が、前記弁部材の前記回転軸よりも内側に位置してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、閉位置から開位置への弁部材の移動に要する時間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】閉位置における
図1の圧力開放弁を示す斜視図である。
【
図3】開位置における
図1の圧力開放弁を示す斜視図である。
【
図4】開位置における
図1の圧力開放弁を示す斜視図である。
【
図5】閉位置における
図1の圧力開放弁を示す断面図である。
【
図6】閉位置から開位置へ移動している
図1の圧力開放弁を示す断面図である。
【
図7】開位置における
図1の圧力開放弁を示す断面図である。
【
図8】閉位置における第1変形例の圧力開放弁を示す断面図である。
【
図9】閉位置から開位置へ移動している第1変形例の圧力開放弁を示す断面図である。
【
図10】開位置における第1変形例の圧力開放弁を示す断面図である。
【
図11】閉位置における第2変形例の圧力開放弁を示す断面図である。
【
図12】閉位置から開位置へ移動している第2変形例の圧力開放弁を示す断面図である。
【
図13】開位置における第2変形例の圧力開放弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0015】
図1は、圧力開放弁10の一例を示す断面図である。圧力開放弁10は、筐体100に取り付けられる。筐体100は、例えば、自動車に搭載されるバッテリーパックである。バッテリーパックの内部には、バッテリーセルなどのデバイスが収容され、密閉されている。筐体100は、筐体100を貫通する通気口103を含む。圧力開放弁10は、通気口103を覆うよう筐体100に取り付けられている。
【0016】
圧力開放弁10は、筐体100の内部の圧力が閾値を超えると、筐体100の内部のガスを外部に放出するよう動作する。筐体100の内部の圧力のことを、内圧とも称する。
【0017】
圧力開放弁10は、通気口103に通じる開口部を含むケース20と、ケース20の開口部を覆う弁部材と、弁部材を付勢する付勢部材40と、を備える。
図1に示す例において、ケース20は、通気口103に通じる第1開口部23及び第2開口部24を含む。
【0018】
弁部材は、第1弁部材30及び第2弁部材35を含む。第1弁部材30及び第2弁部材35は、閉位置から開位置へ回転方向Rにおいて回転可能であるようケース20によって支持されている。閉位置とは、弁部材がケース20の開口部を覆う位置である。
図1においては、閉位置にある第1弁部材30及び第2弁部材35が実線で示されている。閉位置においては、第1弁部材30が第1開口部23を覆い、第2弁部材35が第2開口部24を覆う。開位置とは、弁部材が回転可能な範囲のうち、閉位置から最も遠い位置である。
図1においては、開位置にある第1弁部材30及び第2弁部材35が点線で示されている。
【0019】
圧力開放弁10の構成要素について、
図1~
図4を参照して詳細に説明する。
図2は、閉位置における
図1の圧力開放弁10を示す斜視図である。
図3及び
図4は、開位置における
図1の圧力開放弁10を示す斜視図である。
図3においては、圧力開放弁10が外側から視認され、
図4においては、圧力開放弁10が内側から視認されている。「外側」とは、筐体100の通気口103から離れる側であり、「内側」とは、筐体100の通気口103に近づく側である。
【0020】
(ケース)
ケース20は、筐体100の表面に固定されているプレート21を含む。プレート21には、プレート21を貫通する第1開口部23及び第2開口部24が形成されている。また、ケース20は、
図2に示すように、弁部材の回転軸を支持する支持部25を含む。支持部25は、プレート21の外側の面上に位置していてもよい。
【0021】
ケース20は、
図1に示すように、ガスケット22を含んでいてもよい。例えばゴムによって構成されている。ガスケット22は、閉位置にある弁部材に接触するよう配置されている。ガスケット22は、プレート21の外側の面上に位置していてもよい。
【0022】
(弁部材)
第1弁部材30は、カバー31と、カバー31に取り付けられた第1回転軸32と、を含む。カバー31は、ケース20の第1開口部23に面する内面311を含む。
図1及び
図2に示すように、第1回転軸32は、平面視におけるカバー31の端部に取り付けられていてもよい。「平面視」とは、筐体100の表面の法線方向に沿って対象物を見ることを意味する。
【0023】
カバー31は、ケース20によって支持された第1回転軸32を中心に、閉位置から開位置へ回転方向Rに沿って回転する。第1回転軸32は、筐体100の表面に平行に配置されている。第1回転軸32は、例えば、ケース20の支持部25によって支持されているシャフトである。
【0024】
また、第1弁部材30は、付勢部材40に連結された連結部33を含む。連結部33は、例えば、付勢部材40の一部が挿入される孔を含む。付勢部材40の付勢力は、連結部33に加えられる。連結部33は、第1回転軸32よりも内側に位置していてもよい。例えば、連結部33は、カバー31の内面311に設けられていてもよい。
【0025】
第2弁部材35は、カバー36及びカバー36に取り付けられた第2回転軸37を含む。カバー36は、ケース20の第2開口部24に面する内面361を含む。第1回転軸32と同様に、第2回転軸37は、平面視におけるカバー36の端部に取り付けられていてもよい。
【0026】
カバー36は、ケース20によって支持された第2回転軸37を中心に、閉位置から開位置へ回転方向Rに沿って回転する。第2回転軸37は、筐体100の表面に平行に配置されている。第2回転軸37は、例えば、ケース20の支持部25によって支持されているシャフトである。第2回転軸37は、第1回転軸32と共通の1つの回転軸であってもよい。例えば、第1回転軸32及び第2回転軸37が、1つのシャフトによって構成されていてもよい。
【0027】
また、第2弁部材35は、付勢部材40に連結された連結部38を含む。連結部38は、例えば、付勢部材40の一部が挿入される孔を含む。付勢部材40の付勢力は、連結部38に加えられる。連結部38は、第2回転軸37よりも内側に位置していてもよい。例えば、連結部38は、カバー36の内面361に設けられていてもよい。
【0028】
図1に示すように、閉位置において、第1弁部材30の連結部33と第2弁部材35の連結部38とは、連結部33の孔と連結部38の孔とを通る仮想的な直線が筐体100の表面に平行であるよう、構成されていてもよい。
【0029】
(付勢部材)
付勢部材40は、閉位置においては、回転方向Rにおいて閉方向付勢力を弁部材に加える。閉方向付勢力は、弁部材を閉位置へ向かわせる付勢力である。閉方向付勢力は、回転方向Rにおいて、開位置から閉位置へ向かう向きに作用する。
【0030】
付勢部材40が弁部材に加える付勢力は、弁部材が閉位置から開位置へ移動する間に、閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される。開方向付勢力は、弁部材を開位置へ向かわせる付勢力である。開方向付勢力は、回転方向Rにおいて、閉位置から開位置へ向かう向きに作用する。
【0031】
付勢力が閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される位置を、基準ラインとも称する。基準ラインは、閉位置と開位置との間のある位置で規定される。弁部材が基準ラインよりも開かれると、付勢力が閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される。
【0032】
図1に示す例において、付勢部材40は、トーションスプリングである。具体的には、付勢部材40は、線材が巻かれた巻線部41と、第1アーム43及び第2アーム44と、を含む。第1アーム43は、巻線部41の一端から延び出た線材によって構成される。第2アーム44は、巻線部41の他端から延び出た線材によって構成される。トーションスプリングを用いることにより、後述する閉方向付勢力から開方向付勢力への転換をより確実に生じさせることができる。
【0033】
第1アーム43は、第1弁部材30の連結部33に連結されている。例えば、第1アーム43は、連結部33の孔に挿入されている端部431を含む。第1アーム43が、第1弁部材30に付勢力を加える。第2アーム44は、第2弁部材35の連結部38に連結されている。例えば、第2アーム44は、連結部38の孔に挿入されている端部441を含む。第2アーム44が、第2弁部材35に付勢力を加える。
【0034】
巻線部41は、第1弁部材30の第1回転軸32及び連結部33並びに第2弁部材35の第2回転軸37及び連結部38よりも内側に位置していてもよい。巻線部41は、筐体100の内部に位置していてもよい。巻線部41は、ケース20に対して固定されていない。このため、後述する
図5~
図7に示されるように、巻線部41は、開位置へ向かう第1弁部材30及び第2弁部材35の移動に伴って外側へ移動できる。
【0035】
次に、圧力開放弁10の動作の一例を説明する。圧力開放弁10は、バッテリーパックに取り付けられていると仮定する。
【0036】
バッテリーパックが正常に動作しているとき、第1弁部材30及び第2弁部材35を含む弁部材は、
図5に示す閉位置にある。
図5に示す例において、付勢部材40は、符号F1で表される付勢力を第1弁部材30及び第2弁部材35に加えている。付勢力F1は、第1アーム43及び第2アーム44が閉じる方向に向かう復元力に基づく。
【0037】
図5において、符号R1は、閉位置にある第1弁部材30及び第2弁部材35が開位置に向かって移動する場合の回転方向を表す。付勢力F1を、回転方向の成分(以下、回転方向成分とも称する)と、回転方向に直交する成分(以下、半径方向成分とも称する)とに分解して考える。付勢力F1の回転方向成分は、回転方向R1とは反対の向きに作用する。すなわち、閉位置において、付勢力は、閉方向付勢力である。
【0038】
符号Pは、筐体100の内圧に基づいて第1弁部材30及び第2弁部材35が受ける力を表す。付勢部材40が第1弁部材30及び第2弁部材35に加える閉方向付勢力が、力Pよりも大きい限り、第1弁部材30及び第2弁部材35が閉位置に維持される。
【0039】
バッテリーパックの筐体100の内圧が所定の閾値を超えると、力Pが、付勢部材40が第1弁部材30及び第2弁部材35に加える閉方向付勢力よりも大きくなる。この結果、第1弁部材30及び第2弁部材35が回転方向Rに沿って開位置へ向かって移動する。
図6は、閉位置から開位置へ移動する途中の圧力開放弁10を示す。
図6においては、第1弁部材30の連結部33と第2弁部材35の連結部38とを結ぶ直線上に第1回転軸32及び第2回転軸37が位置している。
【0040】
図6に示す例において、付勢部材40は、符号F2で表される付勢力を第1弁部材30及び第2弁部材35に加えている。
図6において、符号R2は、
図6の位置にある第1弁部材30及び第2弁部材35が開位置に向かって移動する場合の回転方向を表す。付勢力F2の回転方向成分は、回転方向R2と同一の向きに作用する。すなわち、閉位置において、付勢力は、開方向付勢力である。
【0041】
第1弁部材30及び第2弁部材35が
図5の閉位置から
図6の位置へ移動する間に、付勢力が、閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される。付勢力が閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される基準ラインSLは、例えば
図6において点線で示すように、
図5の閉位置と
図6の位置との間にする。なお、基準ラインSLの位置は任意である。例えば、第1弁部材30の連結部33と第2弁部材35の連結部38とを結ぶ直線上に第1回転軸32及び第2回転軸37が位置する時に付勢力が閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換されるよう、第1弁部材30及び第2弁部材35が構成されてもよい。この場合、連結部33、連結部38、第1回転軸32及び第2回転軸37を結ぶ直線が、基準ラインになる。
【0042】
付勢力が閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換されると、力P及び付勢力の両方が、第1弁部材30及び第2弁部材35を開位置へ向かわせるように作用する。従って、第1弁部材30及び第2弁部材35が基準ラインを超えると、開位置へ向かう第1弁部材30及び第2弁部材35の回転移動が促進される。このため、本実施の形態によれば、閉位置から開位置への弁部材の移動に要する時間を低減できる。すなわち、弁部材が開くときの弁部材の応答性を高めることができる。このため、圧力開放弁10で生じる圧力損失を低減できる。また、筐体100の外部へ放出されるガスの流量を増加させることができる。
【0043】
図7は、開位置にある第1弁部材30及び第2弁部材35を示す断面図である。本実施の形態においては、上述のように、弁部材の応答性が高められている。このため、例えば、弁部材の開放角度を大きくできる。開放角度とは、開位置にある弁部材のカバーの内面と、筐体100の表面とが成す角度である。開放角度を大きくすることにより、例えば、筐体100の内部のガスを、筐体100の表面の法線方向に沿って筐体100の外部へ放出できる。これにより、圧力開放弁10の設置位置の自由度を高めることができる。
【0044】
また、本実施の形態においては、1つの付勢部材40によって、2つの弁部材を制御できる。このため、1つの付勢部材40によって、筐体100の外部へ放出されるガスの流量を著しく増加させることができる。
【0045】
弁部材の開位置は、付勢部材40の復元力がゼロになる位置として定められてもよい。若しくは、弁部材の開位置は、弁部材の回転がストッパなどによって止められる位置として定められてもよい。
【0046】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0047】
(第1変形例)
上述の実施の形態においては、付勢部材40の第1アーム43及び第2アーム44に第1弁部材30及び第2弁部材35が連結される例を示した。すなわち、1つの付勢部材40が2つの弁部材を制御する例を示した。本変形例においては、1つの付勢部材40が1つの弁部材を制御する例を説明する。
【0048】
図8は、閉位置における第1変形例の圧力開放弁10を示す断面図である。付勢部材40は、上述の実施の形態の場合と同様に、巻線部41、第1アーム43及び第2アーム44を含むトーションスプリングである。第1アーム43の端部431は、第1弁部材30の連結部33に連結されている。第2アーム44の端部441は、ケース20又は筐体100に対して固定されている。連結部33は、平面視におけるカバー31の端部に取り付けられていてもよい。
【0049】
図8に示すように、カバー31は、第1回転軸32を境界として第1部分313及び第2部分314に区画されてもよい。第1部分313は、閉位置においてケース20の第1開口部23を覆う部分である。第2部分314は、連結部33が設けられている部分である。
【0050】
図8に示すように、圧力開放弁10が閉位置にあるとき、第1回転軸32は、付勢部材40の端部431と端部441とを通る仮想的な直線よりも内側に位置していてもよい。
【0051】
第1変形例の圧力開放弁10の動作の一例を説明する。
図8に示す例において、付勢部材40は、符号F1で表される付勢力を第1弁部材30に加えている。付勢力F1は、第1アーム43及び第2アーム44が開く方向に向かう復元力に基づく。
【0052】
圧力開放弁10が閉位置にあるとき、外側(
図8においては上側)に向かう力が第2部分314に加わると、第1部分313には、内側(
図8においては下側)に向かう力が加わる。
図8に示すように、付勢力F1は、外側に向かう力の成分を含む。すなわち、付勢部材40は、外側に向かう力を第2部分314に加えている。従って、閉位置において、付勢力F1は、第1部分313を閉位置へ向かわせる閉方向付勢力として機能する。閉方向付勢力が、力Pよりも大きい限り、第1弁部材30が閉位置に維持される。
【0053】
力Pが閉方向付勢力よりも大きくなると、第1部分313が開位置へ向かうように第1弁部材30が第1回転軸32を中心に回転移動する。
図9は、閉位置から開位置へ移動する途中の圧力開放弁10を示す。
【0054】
図9に示す例において、付勢部材40は、符号F2で表される付勢力を第1弁部材30に加えている。付勢力F2の方向は、連結部33と第1回転軸32とを結ぶ仮想的な直線に平行である。この場合、付勢力F2は、カバー31の回転方向における成分を含まない。従って、
図9において、カバー31は、基準ラインに位置していると言える。
【0055】
図9の状態において、カバー31の第1部分313は、筐体100の内圧に基づく力Pによって外側へ押される。このため、カバー31の第1部分313は、
図9に示す位置から開位置へ向かって移動する。
【0056】
カバー31の第1部分313が基準ラインよりも開かれると、付勢部材40が、内側に向かう付勢力を第2部分314に加えるようになる。この場合、第1部分313には、外側に向かう力が加えられる。すなわち、カバー31の第1部分313が基準ラインよりも開かれると、付勢力が閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される。
【0057】
図10は、開位置にある第1弁部材30を示す断面図である。本変形例においても、カバー31の第1部分313が基準ラインよりも開かれた後、開位置へ向かう第1弁部材30の回転移動を促進できる。
【0058】
図10に示すように、圧力開放弁10が開位置にあるとき、第1回転軸32は、付勢部材40の端部431と端部441とを通る仮想的な直線よりも外側に位置していてもよい。
【0059】
(第2変形例)
第1変形例においては、付勢部材40がトーションスプリングである例を示した。本変形例においては、付勢部材40が、長さ方向において伸縮する弾性体である例を説明する。付勢部材40は、
図11~
図13に示すように、例えばコイルスプリング45である。図示はしないが、付勢部材40は、板ばねなどであってもよい。
【0060】
以下の説明において、上述した第1変形例と同様に構成され得る部分について、第1変形例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0061】
図11は、閉位置における第2変形例の圧力開放弁10を示す断面図である。付勢部材40は、第1端451と、付勢部材40の長さ方向において第1端451の反対側に位置する第2端452と、を含む。第1端451は、第1弁部材30の連結部33に連結されている。第2端452は、ケース20又は筐体100に対して固定されている。
【0062】
図11に示すように、圧力開放弁10が閉位置にあるとき、第1回転軸32は、付勢部材40の第1端451と第2端452とを通る仮想的な直線よりも内側に位置していてもよい。
【0063】
第1変形例の圧力開放弁10の動作の一例を説明する。
図11に示す例において、付勢部材40は、符号F1で表される付勢力を第1弁部材30に加えている。付勢力F1は、コイルスプリング45が伸長する方向に向かう復元力に基づく。
【0064】
図11に示すように、付勢力F1は、外側に向かう力の成分を含む。すなわち、付勢部材40は、外側に向かう力を第2部分314に加えている。従って、閉位置において、付勢力F1は、第1部分313を閉位置へ向かわせる閉方向付勢力として機能する。閉方向付勢力が、力Pよりも大きい限り、第1弁部材30が閉位置に維持される。
【0065】
力Pが閉方向付勢力よりも大きくなると、第1部分313が開位置へ向かうように第1弁部材30が第1回転軸32を中心に回転移動する。
図12は、閉位置から開位置へ移動する途中の圧力開放弁10を示す。
【0066】
図12に示す例において、付勢部材40は、符号F2で表される付勢力を第1弁部材30に加えている。付勢力F2の方向は、連結部33と第1回転軸32とを結ぶ仮想的な直線に平行である。この場合、付勢力F2は、カバー31の回転方向における成分を含まない。従って、
図12において、カバー31は、
図9に示す第1変形例の場合と同様に、基準ラインに位置していると言える。
【0067】
カバー31の第1部分313が基準ラインよりも開かれると、付勢部材40が、内側に向かう付勢力を第2部分314に加えるようになる。この場合、第1部分313には、外側に向かう力が加えられる。すなわち、カバー31の第1部分313が基準ラインよりも開かれると、付勢力が閉方向付勢力から開方向付勢力へ転換される。
【0068】
図13は、開位置にある第1弁部材30を示す断面図である。本変形例においても、カバー31の第1部分313が基準ラインよりも開かれた後、開位置へ向かう第1弁部材30の回転移動を促進できる。
【0069】
図13に示すように、圧力開放弁10が開位置にあるとき、第1回転軸32は、付勢部材40の第1端451と第2端452とを通る仮想的な直線よりも外側に位置していてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 圧力開放弁
20 ケース
21 プレート
22 ガスケット
23 第1開口部
24 第2開口部
25 支持部
30 第1弁部材
31 カバー
311 内面
32 第1回転軸
33 連結部
35 第2弁部材
36 カバー
361 内面
37 第2回転軸
38 連結部
40 付勢部材
41 巻線部
43 第1アーム
431 端部
44 第2アーム
441 端部
100 筐体
103 通気口