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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101393
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】空中表示装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240722BHJP
   G02B 30/56 20200101ALI20240722BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240722BHJP
   G06F 3/042 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G02B30/56
G06F3/044 126
G06F3/042 472
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005355
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】代工 康宏
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB08
2H199BB20
2H199BB27
2H199BB29
2H199BB30
2H199BB52
(57)【要約】
【課題】 観察者による空中像へのタッチ操作をより正確に検知することが可能な空中表示装置を提供する。
【解決手段】 空中表示装置は、画像を表示する表示素子20と、表示素子20からの光を受けるように配置され、表示素子20からの光を、表示素子20と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子40と、光学素子40の上方に、表示素子20と平行な第1検知領域と、第1検知領域と異なるレベルの第2検知領域とを形成し、第1及び第2検知領域に存在する対象物を検知するセンシング素子50と、第1検知領域における第1検知位置と、第2検知領域における第2検知位置とを算出し、第1及び第2検知位置に基づいて、空中像がタッチされたか否かを判定する判定部60Cとを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示素子と、
前記表示素子からの光を受けるように配置され、前記表示素子からの光を、前記表示素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子と、
前記光学素子の上方に、前記表示素子と平行な第1検知領域と、前記第1検知領域と異なるレベルの第2検知領域とを形成し、前記第1及び第2検知領域に存在する対象物を検知するセンシング素子と、
前記第1検知領域における第1検知位置と、前記第2検知領域における第2検知位置とを算出し、前記第1及び第2検知位置に基づいて、前記空中像がタッチされたか否かを判定する判定部と
を具備する空中表示装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1及び第2検知位置に基づいて、前記対象物が移動する移動方向を判定し、前記移動方向の延長線上に前記画像が存在する場合に、前記空中像がタッチされたと判定する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記センシング素子は、静電容量型である
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記センシング素子は、複数の第1電極と、前記複数の第1電極に対向して配置された複数の第2電極と、前記複数の第1電極に駆動信号を供給する駆動回路と、前記複数の第2電極の電圧を検出する検出回路とを含み、
前記判定部は、前記検出回路による検出結果と閾値とを比較し、比較結果に応じて前記対象物の位置を判定する
請求項3に記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記センシング素子は、前記第1検知領域を形成する第1センシング素子と、前記第2検知領域を形成する第2センシング素子とを含み、
前記第1センシング素子及び前記第2センシング素子の各々は、前記検知領域に向けて光を発光する発光部と、前記対象物で反射された反射光を受光する受光部とを含む
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記光学素子は、平面状の基材と、前記基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の光学要素とを含み、
前記複数の光学要素の各々は、前記基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、前記表示素子からの光のうち斜め方向の光成分を透過する光制御素子をさらに具備する
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項8】
前記光制御素子は、交互に配置された複数の透明部材及び複数の遮光部材を含み、
前記複数の遮光部材は、前記光制御素子の法線に対して傾いている
請求項7に記載の空中表示装置。
【請求項9】
前記表示素子及び前記光学素子は、互いに平行に配置される
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項10】
画像を表示する表示素子と、
前記表示素子の上方に、前記表示素子と平行な第1検知領域と、前記第1検知領域と異なるレベルの第2検知領域とを形成し、前記第1及び第2検知領域に存在する対象物を検知するセンシング素子と、
前記第1検知領域における第1検知位置と、前記第2検知領域における第2検知位置とを算出し、前記第1及び第2検知位置に基づいて、前記画像がタッチされたか否かを判定する判定部と
を具備する表示装置。
【請求項11】
前記判定部は、前記第1及び第2検知位置に基づいて、前記対象物が移動する移動方向を判定し、前記移動方向の延長線上に前記画像が存在する場合に、前記画像がタッチされたと判定する
請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記センシング素子は、静電容量型である
請求項10に記載の表示装置。
【請求項13】
前記センシング素子は、複数の第1電極と、前記複数の第1電極に対向して配置された複数の第2電極と、前記複数の第1電極に駆動信号を供給する駆動回路と、前記複数の第2電極の電圧を検出する検出回路とを含み、
前記判定部は、前記検出回路による検出結果と閾値とを比較し、比較結果に応じて前記対象物の位置を判定する
請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記センシング素子は、前記第1検知領域を形成する第1センシング素子と、前記第2検知領域を形成する第2センシング素子とを含み、
前記第1センシング素子及び前記第2センシング素子の各々は、前記検知領域に向けて光を発光する発光部と、前記対象物で反射された反射光を受光する受光部とを含む
請求項10に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像や動画などを空中像として表示可能な空中表示装置が研究され、新しいヒューマン・マシン・インターフェースとして期待されている。空中表示装置は、例えば、2面コーナーリフレクタがアレイ状に配列された2面コーナーリフレクタアレイを備え、表示素子の表示面から出射される光を反射し、空中に実像を結像する。2面コーナーリフレクタアレイによる表示方法は、収差が無く、面対称位置に実像(空中像)を表示することができる。
【0003】
特許文献1は、透明平板の表面から突出した透明な四角柱を2面コーナーリフレクタとして使用し、複数の四角柱を平面上にアレイ状に配置した光学素子を開示している。また、特許文献2は、第1及び第2光制御パネルの各々を、透明平板の内部に垂直に複数の平面光反射部を並べて形成し、第1及び第2光制御パネルを、互いの平面光反射部が直交するように配置した光学素子を開示している。特許文献1、2の光学素子は、表示素子から出射された光を直交する反射面で2回反射させ、空中像を生成している。
【0004】
観察者は、機器に接触することなく、空中表示装置が表示した空中像をタッチすることが可能である。空中表示装置が備えるセンシング素子は、空中像の領域に存在する物体を検知し、観察者が空中像をタッチしたことを認識する。センシング素子には、観察者による空中像へのタッチ操作をより正確に検知することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-191404号公報
【特許文献2】特開2011-175297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、観察者による空中像へのタッチ操作をより正確に検知することが可能な空中表示装置及び表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によると、画像を表示する表示素子と、前記表示素子からの光を受けるように配置され、前記表示素子からの光を、前記表示素子と反対側に反射し、空中に空中像を結像する光学素子と、前記光学素子の上方に、前記表示素子と平行な第1検知領域と、前記第1検知領域と異なるレベルの第2検知領域とを形成し、前記第1及び第2検知領域に存在する対象物を検知するセンシング素子と、前記第1検知領域における第1検知位置と、前記第2検知領域における第2検知位置とを算出し、前記第1及び第2検知位置に基づいて、前記空中像がタッチされたか否かを判定する判定部とを具備する空中表示装置が提供される。
【0008】
本発明の第2態様によると、前記判定部は、前記第1及び第2検知位置に基づいて、前記対象物が移動する移動方向を判定し、前記移動方向の延長線上に前記画像が存在する場合に、前記空中像がタッチされたと判定する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0009】
本発明の第3態様によると、前記センシング素子は、静電容量型である、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0010】
本発明の第4態様によると、前記センシング素子は、複数の第1電極と、前記複数の第1電極に対向して配置された複数の第2電極と、前記複数の第1電極に駆動信号を供給する駆動回路と、前記複数の第2電極の電圧を検出する検出回路とを含み、前記判定部は、前記検出回路による検出結果と閾値とを比較し、比較結果に応じて前記対象物の位置を判定する、第3態様に係る空中表示装置が提供される。
【0011】
本発明の第5態様によると、前記センシング素子は、前記第1検知領域を形成する第1センシング素子と、前記第2検知領域を形成する第2センシング素子とを含み、前記第1センシング素子及び前記第2センシング素子の各々は、前記検知領域に向けて光を発光する発光部と、前記対象物で反射された反射光を受光する受光部とを含む、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0012】
本発明の第6態様によると、前記光学素子は、平面状の基材と、前記基材の下に設けられ、それぞれが第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向に並んだ複数の光学要素とを含み、前記複数の光学要素の各々は、前記基材の法線方向に対してそれぞれが傾き、互いに接する入射面及び反射面を有する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0013】
本発明の第7態様によると、前記表示素子と前記光学素子との間に配置され、前記表示素子からの光のうち斜め方向の光成分を透過する光制御素子をさらに具備する、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0014】
本発明の第8態様によると、前記光制御素子は、交互に配置された複数の透明部材及び複数の遮光部材を含み、前記複数の遮光部材は、前記光制御素子の法線に対して傾いている、第7態様に係る空中表示装置が提供される。
【0015】
本発明の第9態様によると、前記表示素子及び前記光学素子は、互いに平行に配置される、第1態様に係る空中表示装置が提供される。
【0016】
本発明の第10態様によると、画像を表示する表示素子と、前記表示素子の上方に、前記表示素子と平行な第1検知領域と、前記第1検知領域と異なるレベルの第2検知領域とを形成し、前記第1及び第2検知領域に存在する対象物を検知するセンシング素子と、前記第1検知領域における第1検知位置と、前記第2検知領域における第2検知位置とを算出し、前記第1及び第2検知位置に基づいて、前記画像がタッチされたか否かを判定する判定部とを具備する表示装置が提供される。
【0017】
本発明の第11態様によると、前記判定部は、前記第1及び第2検知位置に基づいて、前記対象物が移動する移動方向を判定し、前記移動方向の延長線上に前記画像が存在する場合に、前記画像がタッチされたと判定する、第10態様に係る表示装置が提供される。
【0018】
本発明の第12態様によると、前記センシング素子は、静電容量型である、第10態様に係る表示装置が提供される。
【0019】
本発明の第13態様によると、前記センシング素子は、複数の第1電極と、前記複数の第1電極に対向して配置された複数の第2電極と、前記複数の第1電極に駆動信号を供給する駆動回路と、前記複数の第2電極の電圧を検出する検出回路とを含み、前記判定部は、前記検出回路による検出結果と閾値とを比較し、比較結果に応じて前記対象物の位置を判定する、第12態様に係る表示装置が提供される。
【0020】
本発明の第14態様によると、前記センシング素子は、前記第1検知領域を形成する第1センシング素子と、前記第2検知領域を形成する第2センシング素子とを含み、前記第1センシング素子及び前記第2センシング素子の各々は、前記検知領域に向けて光を発光する発光部と、前記対象物で反射された反射光を受光する受光部とを含む、第10態様に係る表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、観察者による空中像へのタッチ操作をより正確に検知することが可能な空中表示装置及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る空中表示装置の斜視図である。
図2図2は、図1に示した空中表示装置のXZ面における側面図である。
図3A図3Aは、図1に示した光制御素子の平面図である。
図3B図3Bは、図3AのA-A´線に沿った光制御素子の断面図である。
図4図4は、図1に示した光学素子の斜視図である。
図5A図5Aは、図1に示したセンシング素子の斜視図である。
図5B図5Bは、図5Aに示したセンシング素子の平面図である。
図5C図5Cは、図5Bに示したB-B´線に沿ったセンシング素子の断面図である。
図6図6は、空中表示装置のブロック図である。
図7図7は、光学素子における光の反射の様子を説明する斜視図である。
図8図8は、光学素子における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。
図9図9は、光学素子における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。
図10図10は、光学素子における入射面及び反射面の角度条件を説明する図である。
図11図11は、センシング素子の動作を説明する模式図である。
図12図12は、センシング素子の複数の検知領域を説明する模式図である。
図13図13は、センシング素子における複数の検知領域と電圧との関係を説明する図である。
図14図14は、空中表示装置が表示する空中像を説明する模式図である。
図15図15は、観察者の視点の位置に応じて空中像の位置が変化する様子を説明する模式図である。
図16図16は、空中表示装置の検知動作を説明する模式図である。
図17図17は、観察者が空中表示装置を斜め方向から見た場合の検知動作を説明する模式図である。
図18図18は、Z座標における画像の位置を算出する方法を説明する模式図である。
図19図19は、Z座標を補正した仮想表示面を説明する模式図である。
図20図20は、観察者のタッチ操作を判定する動作を説明する模式図である。
図21図21は、空中表示装置における全体動作を説明するフローチャートである。
図22図22は、本発明の第2実施形態に係る表示装置の斜視図である。
図23図23は、表示装置の検知動作を説明する模式図である。
図24図24は、観察者が表示装置を斜め方向から見た場合の検知動作を説明する模式図である。
図25図25は、表示装置における全体動作を説明するフローチャートである。
図26図26は、本発明の第3実施形態に係る表示装置の斜視図である。
図27図27は、センシング素子の構成を説明する図である。
図28図28は、本発明の第4実施形態に係る空中表示装置における全体動作を説明するフローチャートである。
図29図29は、観察者のタッチ操作を判定する動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
[1] 第1実施形態
[1-1] 空中表示装置1の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る空中表示装置1の斜視図である。図1において、X方向は、空中表示装置1のある1辺に沿った方向であり、Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向(法線方向ともいう)である。図2は、図1に示した空中表示装置1のXZ面における側面図である。
【0025】
空中表示装置1は、画像(動画を含む)を表示する装置である。空中表示装置1は、自身の光出射面の上方の空中に、空中像を表示する。空中表示装置1の光出射面とは、空中表示装置1を構成しかつ光路上に配置された複数の部材のうち最上層に配置された部材の上面を意味する。空中像とは、空中に結像する実像である。
【0026】
空中表示装置1は、照明素子(バックライトともいう)10、表示素子20、光制御素子30、光学素子40、及びセンシング素子50を備える。照明素子10、表示素子20、光制御素子30、光学素子40、及びセンシング素子50は、この順にZ方向に沿って配置され、互いに平行に配置される。照明素子10、表示素子20、光制御素子30、光学素子40、及びセンシング素子50は、互いに特定の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で特定の位置に固定される。照明素子10、表示素子20、光制御素子30、光学素子40、及びセンシング素子50は、図示せぬ筐体に収容される。
【0027】
照明素子10は、照明光を発光し、この照明光を表示素子20に向けて出射する。照明素子10は、光源部11、導光板12、及び反射シート13を備える。照明素子10は、例えばサイドライト型の照明素子である。照明素子10は、面光源を構成する。照明素子10は、後述する角度θの斜め方向に光強度がピークになるように構成してもよい。
【0028】
光源部11は、導光板12の側面に向き合うように配置される。光源部11は、導光板12の側面に向けて光を発光する。光源部11は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)からなる複数の発光素子を含む。導光板12は、光源部11からの照明光を導光し、照明光を自身の上面から出射する。反射シート13は、導光板12の底面から出射した照明光を、再び導光板12に向けて反射する。照明素子10は、導光板12の上面に、光学特性を向上させる部材(プリズムシート、及び拡散シートを含む)を備えていてもよい。
【0029】
表示素子20は、透過型の表示素子である。表示素子20は、例えば液晶表示素子で構成される。表示素子20の駆動モードについては特に限定されず、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、又はホモジニアスモードなどを用いることができる。表示素子20は、照明素子10から出射された照明光を受ける。表示素子20は、照明素子10からの照明光を透過して光変調を行う。そして、表示素子20は、自身の画面に特定の画像を表示する。
【0030】
光制御素子30は、不要光を低減する機能を有する。不要光とは、空中像を生成するのに寄与しない光成分であり、法線方向に光学素子40を透過する光成分を含む。光制御素子30は、法線方向に対して角度θの斜め方向を中心として所定の角度範囲の光成分を透過するとともに、上記角度範囲以外の光成分を遮光するように構成される。光制御素子30の面積は、表示素子20の面積以上に設定される。光制御素子30の詳細な構成については後述する。
【0031】
光学素子40は、底面側から入射した光を上面側に反射する。また、光学素子40は、底面側から斜めに入射した入射光を、例えば正面方向(法線方向)に反射する。光学素子40の面積は、表示素子20の面積以上に設定される。光学素子40の詳細な構成については後述する。光学素子40は、空中に空中像2を結像する。空中像2は、光学素子40の素子面に平行であり、2次元の画像である。素子面とは、光学素子40が面内方向に広がる仮想的な平面を言う。素子面は、面内と同じ意味である。その他の素子の素子面についても同様の意味である。光学素子40の正面にいる観察者3は、空中像2を視認することができる。
【0032】
センシング素子50は、非接触で対象物を検知可能なように構成される。センシング素子50は、空中表示装置1が生成した空中像2の一部又は全部を含む2次元の空間領域に、検知領域を形成する。センシング素子50は、検知領域に存在する対象物(物体)を検知するとともに、対象物の位置を検知する。本実施形態では、静電容量型のセンシング素子を例に挙げて説明する。図1では、センシング素子50が光学素子50から離れて図示されているが、例えば、センシング素子50は、光学素子50の上面に近接して配置される。センシング素子50の面積は、表示素子20の面積以上に設定される。センシング素子50の詳細な構成については後述する。
【0033】
[1-1-1] 光制御素子30の構成
図3Aは、図1に示した光制御素子30の平面図である。図3Bは、図3AのA-A´線に沿った光制御素子30の断面図である。
【0034】
基材31は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。基材31は、光を透過する。
【0035】
基材31上には、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の透明部材33が設けられる。また、基材31上には、それぞれがY方向に延び、X方向に並んだ複数の遮光部材34が設けられる。複数の透明部材33と複数の遮光部材34とは、隣接するもの同士が接するようにして交互に配置される。
【0036】
複数の透明部材33及び複数の遮光部材34上には、基材32が設けられる。基材32は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。基材32は、光を透過する。
【0037】
透明部材33は、XZ面において、基材31の法線方向に対して角度θの斜め方向に延びる。透明部材33は、XZ面において、側面が角度θだけ傾いた平行四辺形である。透明部材33は、光を透過する。
【0038】
遮光部材34は、XZ面において、基材31の法線方向に対して角度θの斜め方向に延びる。遮光部材34は、XZ面において、側面が角度θだけ傾いた平行四辺形である。遮光部材34は、光を遮光する。遮光部材34の厚みは、透明部材33の厚みより薄く設定される。
【0039】
隣接する2個の遮光部材34は、Z方向において互いの端部が若干重なるように配置される。
【0040】
基材31、32、及び透明部材33としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。遮光部材34としては、例えば、黒色の染料又は顔料が混入された樹脂が用いられる。
【0041】
なお、基材31、32の一方又は両方を省略して、光制御素子30を構成してもよい。複数の透明部材33と複数の遮光部材34とが交互に配置されていれば、光制御素子30の機能を実現できる。
【0042】
このように構成された光制御素子30は、法線方向に対して角度θの斜め方向の光強度がピークになるように、表示光を透過することができる。例えば、光制御素子30は、法線方向に対して30°±30°の範囲以外の光成分を遮光するように構成される。望ましくは、光制御素子30は、法線方向に対して30°±20°の範囲以外の光成分を遮光するように構成される。
【0043】
なお、変形例として、光制御素子30は、照明素子10と表示素子20との間に配置してもよい。また、光制御素子30を省略して、空中表示装置1を構成してもよい。
【0044】
[1-1-2] 光学素子40の構成
図4は、図1に示した光学素子40の斜視図である。図4には、光学素子40の一部を拡大した拡大図も図示している。図4の拡大図は、XZ面における側面図である。
【0045】
光学素子40は、基材41、及び複数の光学要素42を備える。基材41は、XY面において平面状に構成され、直方体を有する。
【0046】
基材41の底面には、複数の光学要素42が設けられる。複数の光学要素42の各々は、三角柱で構成される。光学要素42は、三角柱の3個の側面がXY面と平行になるように配置され、1つの側面が基材41に接する。複数の光学要素42は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んで配置される。換言すると、複数の光学要素42は、XZ面において鋸歯状を有する。
【0047】
複数の光学要素42の各々は、入射面43及び反射面44を有する。Y方向から見て、左側の側面が入射面43であり、右側の側面が反射面44である。入射面43は、表示素子20からの光が入射する面である。反射面44は、入射面43に外部から入射した光を、光学要素42の内部で反射する面である。入射面43と反射面44とは、角度θを有する。
【0048】
基材41及び光学要素42は、透明材料で構成される。光学要素42は、例えば、基材41と同じ透明材料によって基材41と一体的に形成される。基材41と光学要素42とを個別に形成し、透明な接着材を用いて基材41に光学要素42を接着してもよい。基材41及び光学要素42を構成する透明材料としては、ガラス、又は透明な樹脂(アクリル樹脂を含む)が用いられる。
【0049】
このように構成された光学素子40は、入射光を内部で反射して、空中に実像を結像する。また、光学素子40は、素子面の正面の位置に、空中像2を結像する。
【0050】
[1-1-3] センシング素子50の構成
図5Aは、図1に示したセンシング素子50の斜視図である。図5Bは、図5Aに示したセンシング素子50の平面図である。図5Bには、センシング素子50が備える回路構成も示している。図5Cは、図5Bに示したB-B´線に沿ったセンシング素子50の断面図である。
【0051】
センシング素子50は、2個の基板51、52、複数の電極53、複数の電極54、及び絶縁層55を備える。基板51、52は、透明かつ絶縁性を有する基板で構成され、ガラス基板又はプラスチック基板で構成される。
【0052】
基板51上には、複数の電極53が設けられる。複数の電極53の各々の平面形状は、例えば正方形を有する。電極53は、1本の対角線がX方向と平行になるように配置される。複数の電極53は、マトリクス状に配置される。Y方向に並んだ1列分の電極53は、Y方向に延びる複数の接続電極を介して電気的に接続される。Y方向に並んだ1列分の電極53は、Y方向に延びる引き出し電極を介して信号線TLに接続される。電極53は、送信電極として機能する。
【0053】
基板52上には、複数の電極54が設けられる。複数の電極54の各々の平面形状は、例えば正方形を有する。電極54は、1本の対角線がX方向と平行になるように配置される。複数の電極54は、マトリクス状に配置される。X方向に並んだ1行分の電極54は、X方向に延びる複数の接続電極を介して電気的に接続される。X方向に並んだ1行分の電極54は、X方向に延びる引き出し電極を介して信号線RLに接続される。電極54は、受信電極として機能する。
【0054】
複数の電極53と複数の電極54とは、平面視において重ならないように配置される。基板51と基板52とは、複数の電極53と複数の電極54とが向き合うように配置される。電極53及び電極54は、透明電極で構成され、例えばITO(インジウム錫酸化物)で構成される。
【0055】
複数の電極53と複数の電極54との間には、絶縁層55が設けられる。絶縁層55は、透明な絶縁材料で構成される。絶縁層55は、複数の層で構成してもよい。
【0056】
センシング素子50は、駆動回路56、及び検出回路57をさらに備える。駆動回路56は、複数の信号線TLに接続される。駆動回路56は、複数の信号線TLの各々に、パルス波形からなる駆動信号を供給する。また、駆動回路56は、複数の信号線TLに順次パルスが印加されるように、駆動信号を生成する。
【0057】
検出回路57は、複数の信号線RLに接続される。検出回路57は、複数の信号線RLの電圧値を検出する。
【0058】
[1-1-4] 空中表示装置1のブロック構成
図6は、空中表示装置1のブロック図である。空中表示装置1は、制御部60、記憶部61、入出力インターフェース(入出力IF)62、表示部63、センシング素子50、及び入力部64を備える。制御部60、記憶部61、及び入出力インターフェース62は、バス65を介して互いに接続される。
【0059】
入出力インターフェース62は、表示部63、センシング素子50、及び入力部64に接続される。入出力インターフェース62は、表示部63、センシング素子50、及び入力部64のそれぞれに対して、所定の規格に応じたインターフェース処理を行う。
【0060】
表示部63は、照明素子10、及び表示素子20を備える。表示部63は、画像を表示する。
【0061】
センシング素子50は、上方に複数の検知領域を形成する。センシング素子50は、電極53と電極54との間の静電容量の変化に基づいて、複数の検知領域に存在する対象物を検知する。
【0062】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサにより構成される。制御部60は、記憶部61に格納されたプログラムを実行することで各種機能を実現する。制御部60は、表示処理部60A、画像処理部60B、及び検知位置判定部60Cを備える。
【0063】
表示処理部60Aは、表示部63(具体的には、照明素子10、及び表示素子20)の動作を制御する。表示処理部60Aは、照明素子10のオン及びオフを制御する。表示処理部60Aは、表示素子20に画像信号を送信し、表示素子20に画像を表示させる。
【0064】
画像処理部60Bは、空中表示装置1が表示する画像を生成する。画像処理部60Bは、記憶部61に格納された画像データを用いることが可能である。画像処理部60Bは、図示せぬ通信機能を用いて外部から画像データを取得してもよい。
【0065】
検知位置判定部60Cは、センシング素子50の動作を制御する。検知位置判定部60Cは、センシング素子50の検知結果に基づいて、複数の検知領域ごとに、対象物が検知された検知位置を算出する。検知位置判定部60Cは、複数の検知位置に基づいて、対象物が移動する方向(ベクトル)を判定する。検知位置判定部60Cは、対象物が移動する方向の延長線と、表示素子20の表示面との交点の位置を算出する。検知位置判定部60Cは、算出した表示面上の位置が、表示素子20の画像の領域に含まれるか否かを判定する。
【0066】
記憶部61は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、及びレジスタ等の揮発性記憶装置とを含む。記憶部61は、制御部60が実行するプログラムを格納する。記憶部61は、制御部60の制御に必要な各種データを格納する。記憶部61は、空中表示装置1が表示する画像のデータを格納する。
【0067】
入力部64は、例えばタッチパネルやボタンなどを含み、ユーザが入力した情報を受け付ける。画像処理部60Bは、入力部64が受け付けた情報に基づいて、表示部63に表示する画像を選択することが可能である。
【0068】
[1-2] 動作
次に、上記のように構成された空中表示装置1の動作について説明する。
【0069】
[1-2-1] 空中表示装置1の基本動作
まず、空中表示装置1の基本動作について説明する。
【0070】
図2の矢印は、光路を示している。図2に示すように、表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、光制御素子30に入射する。表示素子20から出射された光のうち角度θの光成分(角度θを中心とした所定の角度範囲の光成分を含む)は、光制御素子30を透過する。光制御素子30を透過した光は、光学素子40に入射する。光学素子40は、入射光を、光制御素子30と反対側に反射し、空中に空中像2を結像する。
【0071】
図7は、光学素子40における光の反射の様子を説明する斜視図である。図8は、光学素子40における光の反射の様子を説明するXZ面の側面図である。図8は、観察者3の両目(すなわち、両目を結ぶ線)がX方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。図9は、光学素子40における光の反射の様子を説明するYZ面の側面図である。図9は、観察者3の両目がY方向に平行な状態で光学素子40を見た図である。
【0072】
表示素子20の任意の点“o”から出射された光は、光学素子40の入射面43に入射し、反射面44に到達する。反射面44の法線方向に対して臨界角よりも大きい角度で反射面44に到達した光は、反射面44で全反射され、光学素子40の光学要素42が形成されている側と反対側の平面から出射される。臨界角とは、その入射角を超えると全反射する最少の入射角である。臨界角は、入射面の垂線に対する角度である。
【0073】
図8のXZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素42の反射面44で全反射され、その光は空中で結像されて空中像を生成する。
【0074】
図9のYZ面では、点“o”から出射された光は、光学要素42の反射面44で反射されず、その光は空中で結像することがないため空中像の生成に寄与しない。
【0075】
すなわち、観察者3が空中像を視認できる条件は、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態(例えばX方向に対して±10度)である。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、観察者3は、空中像を常に認識することができる。
【0076】
図10は、光学素子40における入射面43及び反射面44の角度条件を説明する図である。
【0077】
Z方向(素子面に垂直な方向)に対する入射面43の角度をθ、Z方向に対する反射面44の角度をθ、入射面43と反射面44とのなす角度をθとする。角度をθは、以下の式(1)で表される。
θ=θ+θ ・・・(1)
【0078】
光制御素子30から角度θで出射された光は、入射面43に入射する。光学素子40の材料の屈折率をn、空気の屈折率を1とする。入射面43における入射角をθ、屈折角をθとする。反射面44における入射角をθ、反射角をθ(=θ)とする。光学素子40の上面における入射角をθ、屈折角をθとする。屈折角θが出射角である。出射角θは、以下の式(2)で表される。
θ=sin-1(n*sin(sin-1((1/n)*sin(90°-(θ+θ)))+θ2+2θ-90°)) ・・・(2)
【0079】
反射面44における臨界角は、以下の式(3)で表される。
臨界角<θ(=θ
臨界角=sin-1(1/n) ・・・(3)
【0080】
すなわち、反射面44における入射角θは、反射面44における臨界角より大きく設定される。換言すると、反射面44の角度θは、反射面44に入射する光の入射角が臨界角より大きくなるように設定される。
【0081】
また、入射面43に入射した光は、入射面43で全反射されないように設定される。すなわち、入射面43の角度θは、入射面43に入射する光の入射角が臨界角より小さくなるように設定される。
【0082】
光学素子40の素子面と空中像2の面との角度、及び光学素子40の素子面と空中像2の面との距離は、光学素子40に入射する光の角度θ、光学素子40の屈折率、光学素子40の入射面43の角度θ、光学素子40の反射面44の角度θを最適に設定することで調整が可能である。
【0083】
[1-2-2] センシング素子50の動作
次に、センシング素子50の動作について説明する。
【0084】
図11は、センシング素子50の動作を説明する模式図である。
【0085】
駆動回路56は、信号線TLを介して電極53に駆動信号を供給する。駆動信号は、所定の周期を有するパルス波形からなる。電極53と電極54とは容量結合しており、両者の間には電界が発生している。検出回路57は、電極54の電圧値を検出可能なように構成される。
【0086】
観察者3の指3Aは、接地電圧GNDを有する。対象物(例えば、観察者3の指3A)がセンシング素子50に近づくと、対象物と電極53とが容量結合する。この場合、電極53と電極54との間の容量値が変化する。具体的には、対象物と電極53とが容量結合すると、電極53と電極54との間の容量値が減少する。電極53と電極54との間の容量値が変化すると、電極54の電圧が変化する。検出回路57は、電極54の電圧値を検出する。
【0087】
図12は、センシング素子50の複数の検知領域を説明する模式図である。
【0088】
センシング素子50は、検出した電圧値に基づいて、複数の検知領域を形成することができる。ここでいう検知領域とは、センシング素子50が検知可能な2次元の領域であり、センシング素子50の上面と平行な領域である。複数の検知領域は、センシング素子50の上面からの高さ(レベル)が異なる。図12では、4個の検知領域DE1~DE4を一例として示している。
【0089】
図13は、センシング素子50における複数の検知領域と電圧との関係を説明する図である。図13において、対象物を検知した場合を“タッチオン”、対象物を検知していない場合を“タッチオフ”と表記している。
【0090】
検出回路57は、複数の信号線RLの電圧を検出する。検出回路57により検出された複数の電圧は、検知位置判定部60Cに送られる。検知位置判定部60Cは、検出回路57により検出された電圧値と閾値Th1~Th4とを比較する。検知位置判定部60Cは、電圧値が、閾値Th1以上かつ閾値Th2未満である場合、対象物が検知領域DE1に存在すると判定する。検知位置判定部60Cは、電圧値が、閾値Th2以上かつ閾値Th3未満である場合、対象物が検知領域DE2に存在すると判定する。検知位置判定部60Cは、電圧値が、閾値Th3以上かつ閾値Th4未満である場合、対象物が検知領域DE3に存在すると判定する。検知位置判定部60Cは、電圧値が、閾値Th4以上である場合、対象物が検知領域DE4に存在すると判定する。
【0091】
このように、センシング素子50は、自身の上方の空中の複数のレベルで対象物を検知することができる。
【0092】
[1-2-3] 空中表示装置1の検知動作
次に、空中表示装置1の検知動作について説明する。
【0093】
図14は、空中表示装置1が表示する空中像2を説明する模式図である。空中表示装置1は、筐体4を備える。筐体4は、照明素子10、表示素子20、光制御素子30、光学素子40、及びセンシング素子50を収容する。筐体4は、上部にセンシング素子50を露出する開口部を有する。図14において、鉛直方向がY方向になるように、空中表示装置1を配置している。
【0094】
空中表示装置1は、空中に空中像2を表示する。図14では、空中像2として、押しボタンを一例として示している。観察者3は、自身の指3Aで押しボタンを押す。センシング素子50は、空中像2を含む2次元の空間に検知領域を形成し、観察者3が指3Aで押しボタンを押した場合に、指3Aを検知する。
【0095】
図15は、観察者3の視点の位置に応じて空中像2の位置が変化する様子を説明する模式図である。
【0096】
光学素子40の構造に起因した作用として、観察者3がY方向に沿って視点を動かした場合、観察者3の視点を追うように空中像2の位置が変化する。図面の上方向に観察者3の視点が移動すると、空中像2も上方向に移動し、図面の下方向に観察者3の視点が移動すると、空中像2も下方向に移動する。すなわち、空中像2は常に観察者3の正面に位置する。
【0097】
図16は、空中表示装置1の検知動作を説明する模式図である。図17は、観察者3が空中表示装置1を斜め方向から見た場合の検知動作を説明する模式図である。
【0098】
表示素子20は、自身の画面に画像21を表示する。画像21は、例えば押しボタンである。空中表示装置1は、表示素子20の上面の平行な2次元の空間領域に空中像2を表示する。
【0099】
センシング素子50は、空中像2と平行な2次元の空間領域に複数の検知領域を形成する。本実施形態では、センシング素子50は、2個の検知領域を形成する場合を例に説明する。センシング素子50は、センシング素子50から遠い側から順に、検知領域DE1、及び検知領域DE2を形成する。検知領域DE2は、空中像2と同じ2次元の空間領域、すなわち、空中像2と重なるように設定される。
【0100】
観察者3は、自身の指3Aで空中像2をタッチするものとする。観察者3の指3Aは、検知領域DE1、及び検知領域DE2を通過する。センシング素子50は、検知領域DE1、及び検知領域DE2のそれぞれにおいて、対象物を検知する。
【0101】
センシング素子50の上面を座標の基準面とする。本実施形態における座標とは、物体の空間での位置を定めるものであり、物体の位置と同じ意味である。画像21の座標を(x,y,z)とする。検知領域DE1における対象物の検知位置の座標を(x,y,z)、検知領域DE2における対象物の検知位置の座標を(x,y,z)とする。図16に示すように、観察者3の視点の位置に応じて、検知領域DE1、DE2における対象物の検知位置が異なる。
【0102】
空間における直線の方程式より、以下の式(4)が成り立つ。
(x-x)/(x-x)=(y-y)/(y-y)=(z-z)/(z-z) ・・・(4)
【0103】
押しボタンの押下時、X方向のズレは僅少であると仮定する。すなわち、X座標において、以下の式(5)が成り立つ。
=x(=x) ・・・(5)
【0104】
式(4)から、Y座標において、以下の式(6)が成り立つ。
y=y+(z-z)*(y-y)/(z-z) ・・・(6)
【0105】
検知位置判定部60Cは、センシング素子50が検出した電圧値に基づいて、対象物の位置を判定する。検知位置判定部60Cによる検知位置は、検知領域DE1、DE2における座標を含む。zは、基準面から検知領域DE1までの距離であり、zは、基準面から検知領域DE2までの距離である。z及びzは、予め決められた設計値である。
【0106】
図18は、Z座標における画像21の位置を算出する方法を説明する模式図である。図18において、表示面は、表示素子20の表示面であり、基準面は、センシング素子50の上面であり、空中像面は、空中像2が表示される面である。
【0107】
前述したように、表示素子20から角度θで出射した光が光学素子40により観察者3の正面に反射される。表示素子20と光学素子40との距離をlとする。距離lを規定する際の光学素子40の基準面は、例えば光学素子40の上面である。距離lは、予め決められた設計値である。
【0108】
Z座標において、以下の式(7)が成り立つ。
z=l/sinθ ・・・(7)
【0109】
図19は、Z座標を補正した仮想表示面を説明する模式図である。仮想表示面とは、表示素子20からの光が直線的に進むと仮定した場合に、表示素子20の表示面の位置を補正した仮想的な表示面である。式(7)を用いて表示面の位置を補正すると、仮想表示面が得られる。仮想表示面に表示される画像の光は、仮想的に、Z方向に進んで観察者3に観察される。
【0110】
式(5)~(7)から、仮想表示面での座標(x,y)が求められる。これまでの座標算出方法について、光制御素子30、光学素子40、及びセンシング素子50の光学的影響(屈折率、厚みなど)は考慮に入れていないが、適宜追加及び補正を行えばよい。
【0111】
図20は、観察者3のタッチ操作を判定する動作を説明する模式図である。図20は、表示素子20の仮想表示面22における座標を示している。表示素子20は、自身の画面に画像21を表示する。
【0112】
仮想表示面22の左上の角を座標(0,0)、仮想表示面22の右下の角を座標(m,n)とする。画像21の左上の角を座標(m,n)、画像21の右下の角を座標(m,n)とする。
【0113】
検知位置判定部60Cは、センシング素子50の検出結果に基づいて、対象物の検知領域DE1、DE2における位置(x,y,z)、(x,y,z)を算出する。さらに、検知位置判定部60Cは、位置(x,y,z)、(x,y,z)に基づいて、仮想表示面22での位置(x,y)を算出する。
【0114】
換言すると、検知位置判定部60Cは、位置(x,y,z)、(x,y,z)に基づいて、対象物が移動する移動方向(ベクトル)を判定する。検知位置判定部60Cは、対象物の移動方向の延長線と仮想表示面22との交点である位置(x,y)を算出する。検知位置判定部60Cは、観察者3が視認する空中像2を結像する光の光路を逆に辿るように上記延長線を算出する。すなわち、検知位置判定部60Cは、表示素子20から斜めに出射して光学素子40で反射される光路を逆に辿るように上記延長線を算出する。
【0115】
検知位置判定部60Cは、算出した位置(x,y)が、画像21の領域に含まれるか否かを判定する。画像21の領域は、座標(m,n)と座標(m,n)とで規定される四角形の領域である。検知位置判定部60Cは、算出した位置(x,y)が、画像21の領域に含まれる場合、選択、すなわち空中像2が観察者3にタッチされたと判定する。一方、検知位置判定部60Cは、算出した位置(x,y)が、画像21の領域に含まれない場合、非選択、すなわち空中像2が観察者3にタッチされていないと判定する。
【0116】
[1-2-4] 全体動作の流れ
次に、空中表示装置1における全体動作の流れについて説明する。図21は、空中表示装置1における全体動作を説明するフローチャートである。
【0117】
制御部60は、空中像2を表示する(ステップS100)。表示処理部60Aは、表示素子20の画面に画像を表示させる。光学素子40は、表示素子20からの光を反射し、空中に空中像2を結像する。
【0118】
続いて、センシング素子50は、センシング動作を実行する(ステップS101)。センシング素子50の駆動回路56は、複数の信号線TLを介して、複数の電極53に駆動信号を供給する。センシング素子50の検出回路57は、複数の信号線RLを介して、複数の電極54の電圧を検出する。そして、センシング素子50は、検出した電圧と複数の閾値とを比較することで、検知領域DE1、DE2を形成する。
【0119】
続いて、検知位置判定部60Cは、センシング素子50からの信号に基づいて、対象物を検知したか否か判定する(ステップS102)。
【0120】
対象物を検知した場合(S102=Yes)、検知位置判定部60Cは、センシング素子50の検知結果に基づいて、対象物の位置を算出する(ステップS103)。すなわち、検知位置判定部60Cは、検知領域DE1における位置(x,y,z)、及び検知領域DE2における位置(x,y,z)を算出する。
【0121】
続いて、検知位置判定部60Cは、表示素子20の仮想表示面における対象物の位置を算出する(ステップS104)。
【0122】
続いて、検知位置判定部60Cは、算出した対象物の位置が画像21の領域に含まれるか否かを判定する(ステップS105)。
【0123】
対象物の位置が画像21の領域に含まれる場合(S105=Yes)、検知位置判定部60Cは、観察者3により空中像2がタッチされたと判定する(ステップS106)。
【0124】
その後、制御部60は、観察者3のタッチ操作に応じた動作を実行する。
【0125】
[1-3] 第1実施形態の効果
第1実施形態では、センシング素子50は、光学素子40の上方に、表示素子20と平行な複数の検知領域(検知領域DE1、DE2を含む)を形成し、複数の検知領域に存在する対象物を検知する。検知位置判定部60Cは、センシング素子50の検知結果に基づいて、対象物の移動方向(進行方向)を算出する。検知位置判定部60Cは、算出した移動方向の延長線と表示素子20の画面(表示面)とが交差する位置を算出する。そして、検知位置判定部60Cは、延長線と画面とが交差する位置が、表示素子20の画像の領域に含まれる場合に、観察者3が空中像をタッチしたと判定する。
【0126】
従って第1実施形態によれば、観察者3が空中表示装置1を見る位置に応じて空中像2の位置が変化した場合でも、空中像2の領域に存在する対象物を判定することができる。ひいては、観察者3による空中像2へのタッチ操作をより正確に検知することが可能な空中表示装置1を実現できる。
【0127】
また、空中表示装置1は、表示素子20から出射された光を光学素子40で反射させることで、空中に空中像2を表示することができる。また、空中表示装置1は、その正面方向において、光学素子40の素子面に平行に空中像2を表示することができる。また、表示品質を向上させることが可能な空中表示装置1を実現できる。
【0128】
また、観察者3の両眼がX方向(すなわち、複数の光学要素42が並ぶ方向)に平行、又はそれに近い状態で光学素子40を見た場合に、観察者3は、空中像を視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態でY方向に沿って視点を移動した場合、空中像を常に視認することができる。また、観察者3の両眼がX方向に平行、又はそれに近い状態において、より広い視野角を実現できる。
【0129】
また、空中表示装置1を構成する複数の素子を平行に配置することができる。これにより、Z方向に小型化が可能な空中表示装置1を実現できる。
【0130】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、センシング素子50を備えた表示装置70の実施例である。表示装置70は、自身の画面に画像を表示する一般的な表示装置である。
【0131】
図22は、本発明の第2実施形態に係る表示装置70の斜視図である。表示装置70は、照明素子10、表示素子20、及びセンシング素子50を備える。照明素子10、表示素子20、及びセンシング素子50は、互いに平行に配置される。照明素子10、表示素子20、及びセンシング素子50は、互いに特定の間隔を空けるようにして、図示せぬ固定部材で特定の位置に固定される。照明素子10、表示素子20、及びセンシング素子50は、図示せぬ筐体に収容される。照明素子10、表示素子20、及びセンシング素子50のそれぞれの構成は、第1実施形態と同じである。
【0132】
図23は、表示装置70の検知動作を説明する模式図である。図24は、観察者3が表示装置70を斜め方向から見た場合の検知動作を説明する模式図である。センシング素子50の動作は、第1実施形態と同じである。
【0133】
表示素子20は、自身の画面に画像21を表示する。画像21は、例えば押しボタンである。観察者3は、表示素子20の画面に表示された画像21を視認する。
【0134】
センシング素子50は、上方に、表示素子20と平行な2次元の空間領域に複数の検知領域を形成する。本実施形態では、センシング素子50は、2個の検知領域を形成する場合を例に説明する。センシング素子50は、センシング素子50から遠い側から順に、検知領域DE1、及び検知領域DE2を形成する。センシング素子50は、検知領域DE1、及び検知領域DE2のそれぞれにおいて、対象物を検知する。
【0135】
観察者3は、自身の指3Aで画像21を操作するものとする。観察者3の指3Aは、検知領域DE1、及び検知領域DE2を通過する。センシング素子50は、検知領域DE1、及び検知領域DE2のそれぞれにおいて、対象物を検知する。
【0136】
センシング素子50の上面を座標の基準面とする。画像21の座標を(x,y,z)とする。検知領域DE1における対象物の検知位置の座標を(x,y,z)、検知領域DE2における対象物の検知位置の座標を(x,y,z)とする。図23に示すように、観察者3の視点の位置に応じて、検知領域DE1、DE2における対象物の検知位置が異なる。
【0137】
第1実施形態と同様に、空間における直線の方程式より、上記式(4)が成り立つ。X座標及びY座標において、上記式(5)、(6)が成り立つ。
【0138】
Z座標において、zは、基準面と表示素子20との距離であり、zは、基準面と検知領域DE1との距離であり、zは、基準面と検知領域DE2との距離である。z、z、zは、予め決められた設計値である。
【0139】
式(5)~(6)から、検知位置判定部60Cは、表示素子20上の座標(x,y)を算出する。換言すると、検知位置判定部60Cは、位置(x,y,z)、(x,y,z)に基づいて、対象物が移動する移動方向(ベクトル)を判定する。検知位置判定部60Cは、対象物の移動方向の延長線と表示素子20の表示面との交点である位置(x,y)を算出する。これまでの座標算出方法について、センシング素子50の光学的影響(屈折率、厚みなど)は考慮に入れていないが、適宜追加及び補正を行えばよい。
【0140】
次に、表示装置70における全体動作の流れについて説明する。図25は、表示装置70における全体動作を説明するフローチャートである。表示装置70のブロック図は、第1実施形態と同じである。
【0141】
表示処理部60Aは、表示素子20の画面に画像を表示させる(ステップS200)。続いて、センシング素子50は、センシング動作を実行する(ステップS201)。センシング素子50は、検知領域DE1、DE2を形成する。
【0142】
続いて、検知位置判定部60Cは、センシング素子50からの信号に基づいて、対象物を検知したか否か判定する(ステップS202)。
【0143】
対象物を検知した場合(S202=Yes)、検知位置判定部60Cは、対象物の位置を算出する(ステップS203)。すなわち、検知位置判定部60Cは、検知領域DE1における位置(x,y,z)、及び検知領域DE2における位置(x,y,z)を算出する。
【0144】
続いて、検知位置判定部60Cは、表示素子20の画面(表示面)における対象物の位置を算出する(ステップS204)。
【0145】
続いて、検知位置判定部60Cは、算出した対象物の位置が画像21の領域に含まれるか否かを判定する(ステップS205)。
【0146】
対象物の位置が画像21の領域に含まれる場合(S205=Yes)、検知位置判定部60Cは、観察者3により画像21がタッチされたと判定する(ステップS206)。
【0147】
その後、制御部60は、観察者3のタッチ操作に応じた動作を実行する。
【0148】
第2実施形態によれば、自身の画面に画像を表示する一般的な表示装置70にセンシング素子50を適用できる。また、表示装置70は、非接触で対象物を検知することができる。
【0149】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、センシング素子50の他の構成例である。
【0150】
図26は、本発明の第3実施形態に係る表示装置70の斜視図である。表示装置70は、複数のセンシング素子50を備える。本実施形態では、2個のセンシング素子50-1、50-2を例に挙げて説明する。
【0151】
センシング素子50-1、50-2は、表示素子20の上方に配置される。センシング素子50-1、50-2は、平面視において、表示素子20が占める領域の外側に配置される。例えば、センシング素子50-1、50-2は、表示装置70のX方向における一側部に配置される。センシング素子50-1は、センシング素子50-2より上方に配置される。照明素子10、表示素子20、及びセンシング素子50-1、50-2は、図示せぬ固定部材で特定の位置に固定される。照明素子10、表示素子20、及びセンシング素子50-1、50-2は、図示せぬ筐体に収容される。センシング素子50-1、50-2は、照明素子10及び表示素子20が収容される筐体とは別個に設けてもよい。
【0152】
センシング素子50-1、50-2はそれぞれ、検知領域DE1、及び検知領域DE2を形成する。検知領域DE1、及び検知領域DE2は、表示素子20と平行に設定される。検知領域DE1は、検知領域DE2の上方に形成される。
【0153】
センシング素子50-1は、検知領域DE1に存在する対象物を検知する。センシング素子50-1は、検知領域DE1に光を出射し、対象物で反射された反射光を検知する。センシング素子50-1が出射する光は、可視光以外の光が望ましく、例えば赤外光が用いられる。センシング素子50-1は、検知領域DE1に向けて赤外光を発光する発光部と、対象物で反射された反射光を検知する受光部(センサ)とを含む。センシング素子50-1は、例えば、複数の発光素子と複数の受光素子とが交互に一列に並んだラインセンサで構成される。ラインセンサは、赤外光を用いてライン状に空間をスキャンすることが可能であり、複数の発光素子が並んだ方向と光が進む方向とからなる2次元の空間をスキャンすることが可能である。
【0154】
センシング素子50-1と同様に、センシング素子50-2は、検知領域DE2に存在する対象物を検知する。
【0155】
図27は、センシング素子50-1の構成を説明する図である。図27(a)が平面図、図27(b)が側面図である。センシング素子50-2の構成は、図27と同じである。
【0156】
センシング素子50-1は、基板80、複数の発光素子81、複数の受光素子82、複数のレンズ83、及びケース84を備える。図27に示した発光素子81、受光素子82、及びレンズ83の数は一例である。複数の発光素子81を纏めて発光部と呼び、複数の受光素子82を纏めて受光部と呼ぶ。
【0157】
複数の発光素子81、及び複数の受光素子82は、基板80に実装される。基板80は、複数の配線層(図示せず)を含む。複数の発光素子81、及び複数の受光素子82は、交互に配置される。
【0158】
複数の発光素子81の各々は、レーザー光を発光する。レーザー光は、例えば、利用者の視覚を刺激せず、可視光の影響を受けない赤外光である。発光素子81は、例えばレーザーダイオードで構成される。
【0159】
複数の受光素子82の各々は、対象物で反射されたレーザー光(赤外光)を検知する。受光素子82は、例えばフォトダイオードで構成される。
【0160】
複数のレンズ83は、複数の発光素子81に対応して設けられ、複数の発光素子81の上方に配置される。複数のレンズ83は、一方向に並んで配置される。複数のレンズ83の各々は、例えば平凸レンズで構成される。複数のレンズ83は、複数の発光素子81から出射されたレーザー光を正面方向に集光する機能を有する。また、複数のレンズ83は、対象物で反射されたレーザー光を集光する機能を有する。
【0161】
ケース84は、基板80、複数の発光素子81、複数の受光素子82、及び複数のレンズ83を収容する。ケース84は、上部にレンズ83を露出する開口部を有する。図27では、ケース84の外形のみを簡略化して示している。
【0162】
表示装置70の検知動作は、第2実施形態と同じである。第3実施形態においても、第2実施形態と同じ効果を得ることができる。第3実施形態のセンシング素子は、第1実施形態に適用することが可能である。
【0163】
[4] 第4実施形態
第4実施形態は、観察者3が空中像2以外の領域をタッチしている場合に、カーソルで選択位置を提示するようにしている。
【0164】
図28は、本発明の第4実施形態に係る空中表示装置1における全体動作を説明するフローチャートである。空中表示装置1の構成は、第1実施形態と同じである。
【0165】
ステップS300~S306の動作は、第1実施形態のステップS100~S106と同じである。
【0166】
対象物の位置が画像21の領域に含まれない場合(S305=No)、検知位置判定部60Cは、仮想表示面22上の選択された位置にカーソル23を表示する(ステップS307)。
【0167】
図29は、観察者3のタッチ操作を判定する動作を説明する模式図である。図29は、表示素子20の仮想表示面22における座標を示している。表示素子20は、自身の画面に画像21を表示する。
【0168】
検知位置判定部60Cは、観察者3により選択された位置が画像21の領域に含まれない場合、表示素子20の仮想表示面22上の観察者3により選択された位置に、カーソル23を表示する。観察者3は、カーソル23を視認することで、空中像2以外の領域をタッチしていることを認識できる。これにより、観察者3の指3Aを空中像2に導くことができる。
【0169】
第4実施形態は、第2実施形態の表示装置70に適用することも可能である。
【0170】
変形例として、音を用いて、非選択状態であることを観察者3に通知してもよい。検知位置判定部60Cは、観察者3により選択された位置が画像21の領域に含まれない場合、特定の音を出力する。この変形例の場合、空中表示装置1は、音を出力可能なスピーカを備える。これにより、観察者3に空中像2をタッチしていないことを認識させることができる。
【0171】
[5] 変形例
上記実施形態では、センシング素子50が静電容量型である場合を例に挙げて説明している。しかし、これに限定されず、空間の物体を検知可能な他の種類のセンシング素子を用いることが可能である。
【0172】
上記実施形態では、表示素子20と光学素子40とを平行に配置している。しかし、これに限定されず、光学素子40に対して表示素子20を斜めに配置してもよい。表示素子20と光学素子40との角度は、0度より大きく45度より小さい範囲に設定される。この変形例では、光制御素子30を省略できる。
【0173】
上記実施形態では、光学要素42の左側の側面が入射面43、右側の側面が反射面44として定義している。しかし、これに限定されず、入射面43と反射面44とを逆に構成してもよい。この場合、実施形態で説明した空中表示装置1の作用も左右が逆になる。
【0174】
上記実施形態では、表示素子20として液晶表示素子を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。表示素子20は、自発光型である有機EL(electroluminescence)表示素子、又はマイクロLED(Light Emitting Diode)表示素子などを用いることも可能である。マイクロLED表示素子は、画素を構成するR(赤)、G(緑)、B(青)をそれぞれLEDで発光させる表示素子である。自発光型の表示素子20を用いる場合、照明素子10は不要である。
【0175】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0176】
1…空中表示装置、2…空中像、3…観察者、4…筐体、10…照明素子、11…光源部、12…導光板、13…反射シート、20…表示素子、21…画像、22…仮想表示面、23…カーソル、30…光制御素子、31…基材、32…基材、33…透明部材、34…遮光部材、40…光学素子、41…基材、42…光学要素、43…入射面、44…反射面、50…センシング素子、51…基板、52…基板、53…電極、54…電極、55…絶縁層、56…駆動回路、57…検出回路、60…制御部、60A…表示処理部、60B…画像処理部、60C…検知位置判定部、61…記憶部、62…入出力インターフェース、63…表示部、64…入力部、65…バス、70…表示装置、80…基板、81…発光素子、82…受光素子、83…レンズ、84…ケース。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29