(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101395
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】吸着器
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
B01D53/04 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005357
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北永 裕章
(72)【発明者】
【氏名】本田 義彦
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA07
4D012CB11
4D012CE03
4D012CF02
4D012CF10
4D012CH01
(57)【要約】
【課題】吸着器の吸着能力を想定の吸着能力に近付けることができる技術を提供する。
【解決手段】吸着器は、吸着材を収容する円筒状の収容部を備え、収容部を通過するガスに含まれる成分を吸着材で吸着する。収容部の直径がD、収容部の長さがL、収容部を通過するガスについての空間速度がSVである場合に、SV×D/Lが1800以下であってもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材を収容する円筒状の収容部を備え、
前記収容部を通過するガスに含まれる成分を前記吸着材で吸着する吸着器であって、
前記収容部の直径がD、前記収容部の長さがL、前記収容部を通過するガスについての空間速度がSVである場合に、SV×D/Lが1800以下である、吸着器。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着器であって、
前記吸着材は、前記収容部を通過するガスに含まれるアンモニアを吸着する、吸着器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸着器であって、
前記吸着材は、ゼオライトを含む、吸着器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の吸着器であって、
前記吸着材は、1~5w%のバインダーを含む、吸着器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、ガスに含まれる成分を吸着材で吸着する吸着器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガスに含まれる成分を吸着材で吸着する吸着器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスに含まれる成分を吸着材で吸着する吸着器には、様々な体格の吸着器が存在する。例えば、直径が大きい吸着器、長さが長い吸着器等が存在する。また、処理対象のガスの流速も様々である。これにより、吸着器の吸着能力にバラツキが生じ、目的とする吸着能力を有する吸着器を得ることが難しくなっている。本明細書は、吸着器の吸着能力を想定の吸着能力に近付けることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術の第1の態様では、吸着器が、吸着材を収容する円筒状の収容部を備え、前記収容部を通過するガスに含まれる成分を前記吸着材で吸着する。前記収容部の直径がD、前記収容部の長さがL、前記収容部を通過するガスについての空間速度がSVである場合に、SV×D/Lが1800以下であってもよい。
【0006】
この構成によれば、吸着器の収容部の直径がDであり長さがLである場合に、その収容部に収容される吸着材の量から算出される吸着材の計算上の最大吸着量を第1吸着量とし、実際にガスが収容部を通過する場合に、収容部に収容されている吸着材がガスに含まれる成分を吸着する際の実際の吸着量を第2吸着量とする場合に、第1吸着量に対する第2吸着量の比率を90%以上にすることができる。即ち、想定の第1吸着量に対する実際の第2吸着量の比率を90%以上にすることができる。よって、吸着器の吸着能力を想定の吸着能力に近付けることができる。そのため、複数の吸着器を作製する場合に、複数の吸着器の間で収容部の直径Dと収容部の長さLにバラツキがある場合であっても、SV×D/Lを1800以下にすることにより、複数の吸着器の間での吸着能力のバラツキを抑制することができる。
【0007】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記吸着材は、前記収容部を通過するガスに含まれるアンモニアを吸着してもよい。この構成によれば、吸着材の吸着効率を向上させることができる。
【0008】
第3の態様では、上記第1又は第2の態様において、前記吸着材は、ゼオライトを含んでもよい。この構成によれば、吸着材の吸着効率を向上させることができる。
【0009】
第4の態様では、上記第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記吸着材は、1~5w%のバインダーを含んでもよい。この構成によれば、吸着材の吸着効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例の発電システム4及び吸着器2について図面を参照して説明する。
図1に示すように、実施例の発電システム4は、タンク50と、気化器52と、改質器54と、吸着器2と、燃料電池56とを備えている。
【0012】
タンク50は、液体アンモニアを貯留している。タンク50には、第1通路60の上流端が接続されている。第1通路60の下流端は気化器52に接続されている。第1通路60は、タンク50から気化器52へ液体アンモニアを供給する。第1通路60にはポンプ(不図示)が設けられていてもよい。
【0013】
気化器52は、液体アンモニアを加熱する加熱装置(不図示)を備えている。気化器52では、液体アンモニアが蒸発し、気化する。これにより気体アンモニアが生成される。気化器52には、第2通路62の上流端が接続されている。第2通路62の下流端は改質器54に接続されている。第2通路62は、気化器52から改質器54へ気体アンモニアを供給する。
【0014】
改質器54は、例えば水蒸気改質により、気体アンモニアを改質する。改質器54は、気体アンモニアを改質することにより、水素(H2)と窒素(N2)の混合ガスを生成する。水素(H2)と窒素(N2)の混合ガスは、未分解の気体アンモニア(NH3)を含んでいる。改質器54には、第3通路64の上流端が接続されている。第3通路64の下流端は吸着器2に接続されている。第3通路64は、改質器54から吸着器2へ水素(H2)と窒素(N2)と気体アンモニア(NH3)の混合ガスを供給する。吸着器2に供給される混合ガスにおける気体アンモニア(NH3)の比率は、約1000ppm±30ppmであり、水素(H2)の比率は、約25w%±1w%であり、窒素(N2)の比率は、約74.9w%±1w%である。
【0015】
次に、吸着器2について説明する。
図2に示すように、吸着器2は、容器10と、容器10の内部に配置されている吸着材30とを備えている。容器10の底部には第3通路64が接続されており、第3通路64を通じて容器10の内部に混合ガス(水素(H
2)と窒素(N
2)と気体アンモニア(NH
3)の混合ガス)が導入される。この混合ガスは、容器10の内部を流れる過程で吸着材30を通過する。容器10の頂部には第4通路66が接続されている。容器10の内部を通過した混合ガスが第4通路66に流出する。
【0016】
容器10は、例えば金属製であり、概して円筒状に構成されている。容器10は、その軸方向が鉛直方向を向くように配置されている。容器10の長手方向が上下方向に延びている。容器10の内部には、支持部材12と、押圧部材14と、一対の挟持部材16(16a、16b)と、一対のフィルタ18(18a、18b)と、吸着材30が配置されている。
【0017】
支持部材12は、例えば金属製であり、概して円筒状に構成されている。支持部材12は、容器10内の下部に配置されている。支持部材12は、下側挟持部材16bを支持している。
【0018】
押圧部材14は、上下方向に伸縮するコイルバネから構成されている。押圧部材14は、容器10内の上部に配置されている。押圧部材14は、上側挟持部材16aを下方へ押圧している。
【0019】
挟持部材16(上側挟持部材16a及び下側挟持部材16b)は、例えば金属製であり、概して円板状に構成されている。一対の挟持部材16a、16bは、一対のフィルタ18a、18bと吸着材30を挟持している。一対の挟持部材16a、16bの間に一対のフィルタ18a、18bと吸着材30が配置されている。各挟持部材16a、16bには、混合ガスが通過する複数の貫通孔26が設けられている。
【0020】
フィルタ18(上側フィルタ18a及び下側フィルタ18b)は、例えばセラミックウールから構成されている。フィルタ18は、容器10の内部を流れる混合ガスに含まれる塵埃を捕集する。一対のフィルタ18a、18bは、吸着材30を挟持している。一対のフィルタ18a、18bの間に吸着材30が配置されている。一対のフィルタ18a、18bの間には、吸着材30を収容する収容部20が形成されている。
【0021】
収容部20は、円筒状に構成されている。吸着材30は、収容部20を通過する混合ガスに含まれるアンモニアを吸着することにより混合ガスからアンモニアを分離除去する。吸着材30は、例えば、ゼオライトとバインダーを含んでいる。ゼオライトがバインダーにより結合されている。ゼオライトの種類は特に限定されないが、例えば、合成ゼオライト、天然ゼオライト、人工ゼオライトが挙げられる。バインダーの種類は特に限定されないが、例えば、無機高分子からなるバインダーが挙げられる。吸着材30は、例えば、1~5w%のバインダーを含んでいる。変形例では、吸着材30は、活性炭を含んでもよい。
【0022】
上記の吸着器2では、収容部20の直径がD(m)であり、収容部20の長さがL(m)であり、収容部20を通過する混合ガスについての空間速度がSV(1/h)である場合に、SV×D/Lが、0以上、1800以下である。空間速度SVは、収容部20を通過する混合ガスの流速がX(L/h)であり、収容部20の容積がY(L)である場合に、X/Y(1/h)で表される。
【0023】
図1に示すように、吸着器2の頂部には第4通路66の上流端が接続されている。第4通路66の下流端は燃料電池56に接続されている。第4通路66は、吸着器2から燃料電池56へ水素を供給する。第4通路66は、吸着器2でアンモニアが吸着された後の残存する水素を燃料電池56へ供給する。なお、窒素も併せて燃料電池56へ供給される。
【0024】
燃料電池56は、複数の電池セルを備えており、水素と酸素を用いて発電する。燃料電池56には、第5通路68の下流端が接続されている。第5通路68の上流端は大気に開放されている。第5通路68は、大気中の酸素を含む空気を燃料電池56へ供給する。燃料電池56は、第4通路66を通じて供給される水素と、第5通路68を通じて供給される酸素を用いて発電する。
【0025】
(効果)
以上、実施例の発電システム4及び吸着器2について説明した。以上の説明から明らかなように、実施例の吸着器2は、収容部20の直径がD、収容部20の長さがL、収容部20を通過するガスについての空間速度がSVである場合に、SV×D/Lが1800以下である。この構成によれば、吸着器2の吸着能力を想定の吸着能力に近付けることができる。
【0026】
吸着材30は、ゼオライトを含むと共に、1~5w%のバインダーを含んでいる。この構成によれば、吸着材30の吸着効率を向上させることができる。
【0027】
(試験例)
試験例では、吸着器2におけるSV×D/Lの値を様々な値に変更して吸着材30の利用率を調べた。利用率は、吸着器2の収容部20の直径がDであり長さがLである場合に、その収容部20に収容される吸着材30の量から算出される吸着材30の計算上の最大吸着量を第1吸着量A1とし、実際に混合ガスが収容部20を通過する場合に、収容部20に収容されている吸着材30が混合ガスに含まれるアンモニアを吸着する際の実際の吸着量を第2吸着量A2とする場合に、第1吸着量A1に対する第2吸着量A2の比率(=A2/A1)で表される。
【0028】
第1吸着量A1は、例えば、収容部20を通過する混合ガスに含まれるアンモニアの分圧から求められる吸着材30の単位体積当たりの吸着量をEとし、収容部20に収容されている吸着材30の量をFとする場合、E×Fで表される。
【0029】
第2吸着量A2は、例えば、収容部20に流入する前の混合ガスに含まれるアンモニアの量G1と、収容部20から流出した後の混合ガスに含まれるアンモニアの量G2との差(G2-G1)で表される。
【0030】
図3は、試験例の結果を示すグラフである。
図3に示すように、試験例の吸着器2では、SV×D/Lが1800以下である場合に、利用率が90%以上になることが確認された。即ち、実際の第2吸着量A2が想定の第1吸着量A1に近付くことが確認された。よって、上記の構成によれば、吸着器2の実際の吸着能力を想定の吸着能力に近付けることができる。そのため、複数の吸着器2を作製する場合に、複数の吸着器2の間で収容部20の直径Dと収容部20の長さLにバラツキがある場合であっても、SV×D/Lを1800以下にすることにより、複数の吸着器2の間での吸着能力のバラツキを抑制することができる。
【0031】
(変形例)
上記の実施例では、吸着材30がアンモニアを吸着する構成について説明したが、この構成に限定されない。変形例では、吸着材30が、収容部20を通過するガスに含まれる成分であってアンモニア以外の成分を吸着する構成であってもよい。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
2:吸着器、4:発電システム、10:容器、12:支持部材、14:押圧部材、16:挟持部材、18:フィルタ、20:収容部、26:貫通孔、30:吸着材、50:タンク、52:気化器、54:改質器、56:燃料電池