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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101401
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】着座運動装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/00 20060101AFI20240722BHJP
   A63B 24/00 20060101ALI20240722BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A63B23/00 F
A63B24/00
A61H1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005363
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】511058040
【氏名又は名称】株式会社坂井電機
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 康秀
(72)【発明者】
【氏名】池浦 良淳
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA09
4C046AA27
4C046AA42
4C046AA45
4C046AA46
4C046AA47
4C046AA49
4C046BB07
4C046CC01
4C046CC04
4C046DD02
4C046DD12
4C046DD27
4C046DD35
4C046EE02
4C046EE05
4C046EE15
4C046EE24
4C046EE32
4C046FF12
4C046FF22
(57)【要約】
【課題】ユーザの利便性を向上させることが可能な着座運動装置を開示すること。
【解決手段】着座運動装置は、座面部と、前記座面部を水平状態と起立状態との間で移動させる移動機構であって、前記水平状態は、前記座面部の前端部と後端部とが略同じ高さである状態であり、前記起立状態は、前記前端部よりも前記後端部が高い状態である、前記移動機構と、を備える。前記移動機構は、前記座面部を、前記起立状態から、前記水平状態と前記起立状態との間の所定状態まで移動させる所要時間を変更可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座運動をユーザに行わせるための着座運動装置であって、
座面部と、
前記座面部を水平状態と起立状態との間で移動させる移動機構であって、前記水平状態は、前記座面部の前端部と後端部とが略同じ高さである状態であり、前記起立状態は、前記前端部よりも前記後端部が高い状態である、前記移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記座面部を、前記起立状態から、前記水平状態と前記起立状態との間の所定状態まで移動させる所要時間を変更可能である、着座運動装置。
【請求項2】
前記着座運動装置は、複数のモードのうちのいずれかのモードで動作可能であり、
前記着座運動装置は、さらに、
前記ユーザの臀部が前記座面部に接触することを検知する検知部と、
前記着座運動装置が前記複数のモードのうちのフレイルモードで動作する場合に、接触タイミングから着座タイミングまでの時間を計測する計測部であって、
前記接触タイミングは、前記ユーザの前記臀部が前記起立状態の前記座面部に接触することが前記検知部によって検知されるタイミングであり、
前記着座タイミングは、前記座面部が前記起立状態から前記水平状態に向けて移動する過程において、前記ユーザの前記臀部が所定重量以上で前記座面部に接触することが前記検知部によって検知されるタイミングである、前記計測部と、
前記着座運動装置が前記フレイルモードで動作する場合に、前記着座タイミングでの前記座面部の位置を特定する特定部と、を備え、
前記着座運動装置が前記複数のモードのうちの特定のモードであって、前記フレイルモードとは異なる前記特定のモードで動作する場合に、前記移動機構は、前記フレイルモードで計測済みの時間に対応する対応時間をかけて、前記座面部を、前記起立状態から、前記フレイルモードで特定済みの位置に対応する対応位置である前記所定状態まで移動させる、請求項1に記載の着座運動装置。
【請求項3】
前記対応時間は、前記フレイルモードで計測済みの時間に第1の所定割合を乗算することによって得られる時間であり、
前記対応位置は、前記起立状態と前記フレイルモードで特定済みの位置との間の角度に第2の所定割合を乗算することによって得られる角度だけ、前記座面部が前記特定済みの位置から前記起立状態に向けて移動した位置である、請求項2に記載の着座運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、エキセントリックトレーニングとしての着座運動をユーザに行わせるための着座運動装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自立歩行が困難な高齢者又は傷病者のためのトレーニング装置が開示されている。トレーニング装置は、ユーザが着座している着座部の前端部を支点として着座部の後端部を上昇させ、その後、元の状態に戻す。トレーニング装置は、この動作を繰り返し実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-215894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、エキセントリックトレーニングとしての着座運動をユーザに行わせることが想定されていない。本明細書では、ユーザの利便性を向上させることが可能な着座運動装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、着座運動をユーザに行わせるための着座運動装置を開示する。着座運動装置は、座面部と、前記座面部を水平状態と起立状態との間で移動させる移動機構であって、前記水平状態は、前記座面部の前端部と後端部とが略同じ高さである状態であり、前記起立状態は、前記前端部よりも前記後端部が高い状態である、前記移動機構と、を備えてもよい。前記移動機構は、前記座面部を、前記起立状態から、前記水平状態と前記起立状態との間の所定状態まで移動させる所要時間を変更可能であってもよい。
【0006】
上記の構成によると、着座運動装置は、ユーザに応じた時間をかけて、座面部を起立状態から所定状態まで移動させることができる。従って、ユーザは、自身の身体能力に応じたエキセントリックトレーニングとしての着座運動を行なうことができる。このために、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0007】
前記着座運動装置は、複数のモードのうちのいずれかのモードで動作可能であってもよい。前記着座運動装置は、さらに、前記ユーザの臀部が前記座面部に接触することを検知する検知部と、前記着座運動装置が前記複数のモードのうちのフレイルモードで動作する場合に、接触タイミングから着座タイミングまでの時間を計測する計測部であって、前記接触タイミングは、前記ユーザの前記臀部が前記起立状態の前記座面部に接触することが前記検知部によって検知されるタイミングであり、前記着座タイミングは、前記座面部が前記起立状態から前記水平状態に向けて移動する過程において、前記ユーザの前記臀部が所定重量以上で前記座面部に接触することが前記検知部によって検知されるタイミングである、前記計測部と、前記着座運動装置が前記フレイルモードで動作する場合に、前記着座タイミングでの前記座面部の位置を特定する特定部と、を備えてもよい。前記着座運動装置が前記複数のモードのうちの特定のモードであって、前記フレイルモードとは異なる前記特定のモードで動作する場合に、前記移動機構は、前記フレイルモードで計測済みの時間に対応する対応時間をかけて、前記座面部を、前記起立状態から、前記フレイルモードで特定済みの位置に対応する対応位置である前記所定状態まで移動させてもよい。
【0008】
上記の構成によると、着座運動装置は、フレイルモードにおいて、ユーザがゆっくりと着座運動を行なうための限界の時間を計測することができると共に、当該着座運動において着座してしまった限界の位置を特定することができる。そして、着座運動装置は、特定のモードにおいて、計測済みの時間に対応する対応時間と特定済みの位置に対応する対応位置とを利用して、着座運動をユーザに行なわせることができる。このために、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0009】
前記対応時間は、前記フレイルモードで計測済みの時間に第1の所定割合を乗算することによって得られる時間であってもよい。前記対応位置は、前記起立状態と前記フレイルモードで特定済みの位置との間の角度に第2の所定割合を乗算することによって得られる角度だけ、前記座面部が前記特定済みの位置から前記起立状態に向けて移動した位置であってもよい。上記の構成によると、着座運動装置は、ユーザの限界の時間及び限界の位置よりも少ない負荷で着座運動をユーザに行なわせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】着座運動装置の斜視図を示す。
図2】座面部が水平である状態の着座運動装置の側面図を示す。
図3】座面部が45度起立した状態の着座運動装置の側面図を示す。
図4図3の状態の着座運動装置の斜視図を示す。
図5】座面部が80度起立した状態の着座運動装置の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、着座運動装置10の構成を説明する。着座運動装置10は、通常の動作とは逆の動作をゆっくり行なうエキセントリックトレーニングとして、着座運動をユーザに行なわせることができる。なお、以下で記述する方向は、ユーザが着座運動装置10に着座した状態において、ユーザから見た方向を意味する。
【0012】
図1に示されるように、着座運動装置10は、左側の脚20a,20b,20cと、右側の脚20d,20e,20fと、を備える。後方の各脚20c,20fは、他の脚20a等よりも上方に伸びている。着座運動装置10は、さらに、後方の各脚20c,20fの間に配置されている2本のバー22a,22bと、2本のバー22a,22bの間に配置されているバー22cと、を備える。着座運動装置10は、さらに、左側の各脚20a~20cに接続されているバー22dと、右側の各脚20d~20fに接続されているバー22eと、を備える。着座運動装置10は、さらに、バー22dとバー22eとの間に配置されている3本の22fと、を備える。上記の各脚20a~20fと各バー22a~22fとによって、着座運動装置10の骨格が形成されている。
【0013】
着座運動装置10は、さらに、左側の各脚20a~20cに接続されている肘掛部24aと、右側の各脚20d~20fに接続されている肘掛部24bと、を備える。着座運動装置10は、さらに、左側の各脚20a,20bに接続されているカバー26aと、右側の各脚20d,20eに接続されているカバー26bと、を備える。
【0014】
着座運動装置10は、さらに、ユーザの臀部を支持するための、換言すると、ユーザが着座するための座面部30を備える。図1の状態では、座面部30の前端部30a、後端部30b、及び、左右の端部(符号省略)が同じ高さに位置する。以下では、座面部30のこの状態のことを「水平状態」と記載する。座面部30は、水平状態と起立状態との間で移動可能である。起立状態は、座面部30の前端部30aよりも後端部30bが高い状態であり、より詳細には、後端部30bが最も高い位置まで移動した状態である。
【0015】
図2図5では、カバー26a,26bが省略されている。図2は、座面部30が水平状態である様子を示す。即ち、図2は、座面角度が0度である状態を示す。図2等を参照しながら、座面部30を移動させる移動機構について説明する。以下では、移動機構を構成する各部材のうち、座面部30に近い部材から順に説明する。
【0016】
図2に示されるように、移動機構は、4本の棒部材32a,32b(右側(即ち紙面奥側)の棒部材は見えない)と、板部材36と、を備える。座面部30が水平状態である場合には、各棒部材32a,32bは、座面部30の下面から下方に伸びる。板部材36は、各棒部材32a,32bを受け入れるための4個の孔を備える。移動機構は、さらに、座面部30と板部材36との間において、各棒部材32a,32bを受け入れる4個の圧縮コイルバネ34a,34b(右側のバネは見えない)を備える。ユーザの臀部が座面部30に接触すると、座面部30は、各バネ34a,34bによって受け止められながら、板部材36の側に移動する。板部材36は、ジョイント72を介してブラケット70に回動可能に接続されている。
【0017】
移動機構は、さらに、板部材36の下面に接続されている板部材50を備える。座面部30が水平状態である場合には、板部材50は、前後方向(即ち図2の左右方向)に伸びる長孔52を備える。なお、右側(即ち紙面奥側)にも、板部材50と同様の板部材が存在するが、図2では見えない。右側の板部材を含む右側の各部材は見えないので、以下では、左側の各部材のみについて説明する。右側の各部材は、左側の各部材と同様の構成を備える。
【0018】
移動機構は、さらに、板部材50の長孔52に接続されているリンク機構を備える。リンク機構は、リンク64を備える。リンク64の一方のジョイント64b(図3参照)は、長孔52に受け入れられている。リンク64の他方のジョイント64aは、ブラケット65に接続されている。リンク機構は、さらに、リンク62を備える。リンク62の一方のジョイント62aは、リンク64の中央部に接続されている。リンク62の他方のジョイント62bは、円形部材60に接続されている。
【0019】
図4に示されるように、移動機構は、さらに、モータ90とボールねじ機構とを備える。ボールねじ機構は、モータ90に接続されているねじ軸92と、ナット部材94と、を備える。ナット部材94には、上記の円形部材60が接続されている。
【0020】
上記の構成によると、座面部30が水平状態である場合において、モータ90がねじ軸92を回転させると、ナット部材94及び円形部材60が前方(即ち図2の左方向)に移動する。これにより、リンク62のジョイント62bを支点としてジョイント62aが上昇し、リンク64のジョイント64aを支点としてジョイント64bが上昇し、板部材36がジョイント72を支点として回動する。この結果、板部材36と共に座面部30も回動し、座面部30の後端部30aが上昇する。
【0021】
図3及び図4は、座面角度が45度である状態を示す。図5は、座角が80度である状態を示す。この状態が、座面角度が最も大きい状態、即ち、座面部30の後端部30bが最も高く位置する状態である。換言すると、図5は、座面部30が起立状態である様子を示す。
【0022】
図5に示されるように、ジョイント64aは、ブラケット65を介して、ブラケット80の長孔82に摺動可能に接続されている。長孔82は、前後方向に伸びる。このため、図5の状態において、ナット部材94及び円形部材60が前方(即ち図5の左方向)にさらに移動すると、ブラケット65、リンク64、板部材50、板部材36、及び、座面部30が一体的に前方に移動する。即ち、起立状態の座面部30が前方に移動する。これにより、ユーザを前方に僅かに移動させ、ユーザが起立する動作をアシストすることができる。以下では、起立状態の座面部30が前方に移動した後の状態のことを「前進状態」と記載する。なお、変形例では、着座運動装置10は、座面部30を起立状態から前進状態に移動させるための機構(例えばブラケット80)を備えなくてもよい。
【0023】
移動機構は、さらに、コントローラ100(図2参照)を備える。コントローラ100は、後述の各センサの出力値を取得可能であると共に、モータ90を制御する。また、コントローラ100は、図示省略のBluetooth(登録商標)インターフェースを介して、ユーザの携帯端末との通信を実行可能である。なお、当該通信は、Bluetooth通信に限られず、Wi-Fi通信、NFC(Near Field Communication)通信等の他の無線通信であってもよい。また、別の変形例では、当該通信は、無線通信に限られず、有線通信であってもよい。
【0024】
続いて、着座運動装置10の各センサについて説明する。本実施例では、主に、座面部30の座面角度を特定するためのセンサと、ユーザが座面部30に接触することを検知するためのセンサと、が利用される。まず、前者のセンサ機構について説明する。ボールねじ機構のねじ軸92には、エンコーダ96が接続されている。これにより、エンコーダ96は、ねじ軸92の前後方向の位置を取得して、当該位置を示す値をコントローラ100に出力する。コントローラ100は、エンコーダ96の出力値に基づいて、座面部30の座面角度を特定することができる。
【0025】
続いて、図5を参照しながら、後者のセンサについて説明する。棒部材32aの下端部(図5の右端部)には、棒部材32aよりも細い略円柱形状を有する歯溝部材38が接続されている。歯溝部材38は、上下方向(図5の左右方向)に沿って並ぶ複数個の歯溝を備える。歯溝部材38には、歯溝に噛み合う歯車40を備えるエンコーダ42が接続されている。エンコーダ42は、歯車40の位相を取得して、当該位相を示す値をコントローラ100に出力する。コントローラ100は、エンコーダ42の出力値に基づいて、ユーザが座面部30に接触することを検知することができる。具体的には、ユーザが座面部30に接触すると、座面部30と共に棒部材32aが僅かに下方(即ち図5の右方)に移動し、この結果、歯車40が僅かに回転するので、エンコーダ42の出力値が僅かに変化する。コントローラ100は、エンコーダ42の出力値が予め決められている閾値よりも小さい変化量で変化する場合に、ユーザが座面部30に接触したと検知する。
【0026】
また、後で詳しく説明するが、座面部30が起立状態から水平状態に向けて移動する過程において、ユーザは、座面部30に座り込むことなく座面部30に僅かに接触しながら、座面部30の移動に追従するように着座運動を行なう。この際に、ユーザが自身を支えれなくなって座面部30に座り込んでしまう状況が想定される。この場合、座面部30と共に棒部材32aが大きく下方に移動し、この結果、歯車40が大きく回転するので、エンコーダ42の出力値が大きく変化する。コントローラ100は、エンコーダ42の出力値が上記の閾値よりも大きい変化量で変化する場合に、ユーザが座面部30に座り込んでしまったと検知する。ここで、上記の閾値としては、ユーザの臀部が所定重量以上で座面部30に接触する際の値が採用される。従って、コントローラ100は、ユーザの臀部が所定重量以上で座面部30に接触することを検知することによって、ユーザが座面部30に座り込んでしまったことを検知する。ここで、本実施例では、所定重量は、例えばユーザの体重の80%の値である。変形例では、80%とは異なる値(例えば70%、90%)が採用されてもよいし、ユーザの体重に依存しない所定値(例えば20kg)が採用されてもよい。また、別の変形例では、エンコーダ42に代えて、圧力センサ又は重量センサが設けられてもよい。この構成でも、コントローラ100は、ユーザが座面部30に接触したこと及び座り込んでしまったことを検知することができる。
【0027】
着座運動装置10は、複数のモードのうちのいずれかのモードで動作可能である。複数のモードは、フレイル(Frail)モードと筋力トレーニングモード(以下では「筋トレモード」と記載する)とストレッチモードとを含む。フレイルモードは、個々のユーザの着座運動の限界を特定するためのモードである。「フレイルモード」という標章は、本特許出願の出願人である株式会社坂井電機によって商標登録出願中である。筋トレモードは、負荷がかかる着座運動(即ちエキセントリックトレーニング)をユーザに行わせるためのモードである。ストレッチモードは、負荷がほぼかからないストレッチ運動をユーザに行わせるためのモードである。以下、各モードの詳細を説明する。
【0028】
まず、フレイルモードについて説明する。ユーザは、着座運動装置10を利用するための事前準備として、所定のアプリケーションを携帯端末(例えばスマートフォン、タブレットPC等)にインストールしておく。所定のアプリケーションは、着座運動装置10を利用するための様々な画面を携帯端末に表示させて、ユーザ操作に応じた指示を着座運動装置10に送信するためのプログラムである。
【0029】
ユーザは、水平状態の座面部30に座った状態において、携帯端末の上記の所定のアプリケーションを起動させる。これにより、携帯端末は、Bluetooth通信を実行して、着座運動装置10との通信リンクを確立する。これにより、携帯端末と着座運動装置10との間で様々な情報のBluetooth通信を実行可能な状態になる。
【0030】
携帯端末の所定のアプリケーションは、ホーム画面を表示する。ホーム画面は、フレイルモードと筋トレモードとストレッチモードとのそれぞれを示すモードアイコンを含む。所定のアプリケーションは、フレイルモードを示すモードアイコンが選択されると、ユーザの体重を入力するための入力画面を表示する。所定のアプリケーションは、ユーザの体重が入力されると、Bluetooth通信を利用して、ユーザを識別する識別情報と、フレイルモードを示すモード情報と、体重を示す体重情報と、を着座運動装置10に送信する。当該識別情報は、各ユーザに提供されるQRコード(登録商標)によって表わされる専用IDである。変形例では、当該識別情報は、他のIDであってもよい。
【0031】
着座運動装置10は、携帯端末から上記の各情報を受信すると、フレイルモードで動作する。コントローラ100は、まず、モータ90を制御して、水平状態から起立状態を経て前進状態まで座面部30を移動させる。これにより、ユーザは、座面部30から離れて起立する。その後、コントローラ100は、モータ90を制御して、前進状態から起立状態まで座面部30を移動させる。
【0032】
続いて、ユーザは、起立状態の座面部30に向けて着座運動を開始する。ユーザの臀部が座面部30に接触すると、コントローラ100は、エンコーダ42の出力値が閾値よりも小さい僅かな変化量で変化することを検知する。この場合、コントローラ100は、まず、タイマをスタートする。次いで、コントローラ100は、検知済みの変化量に相当する速度で座面部30が水平状態に向けて移動するように、モータ90を制御する。これにより、座面部30は、ユーザの着座運動に追従するように水平状態に向けて移動する。ここで、ユーザは、できるだけ低速で、かつ、できるだけ座り込むことなく、着座運動を行なう。即ち、ユーザは、エキセントリックトレーニングとしての着座運動を行なう。この着座運動により、後述の筋トレモードでのエキセントリックトレーニングの条件を決定するための設定値が計測される。
【0033】
例えば、筋力が衰えているユーザは、座面部30が水平状態に到達する前に、座面部30に座り込んでしまう。これにより、コントローラ100は、エンコーダ42の出力値が閾値よりも大きい変化量で変化することを検知する。ここで、本実施例では、閾値は、体重情報によって示される体重の80%の重量で座面部30に接触することに相当する値に設定される。この場合、コントローラ100は、タイマをストップする。この結果、コントローラ100は、ユーザの臀部が起立状態の座面部30に接触してから、ユーザが座面部30に座り込んでしまうまでの時間を計測することができる。次いで、コントローラ100は、座面部30の移動が停止するように、モータ90を制御する。そして、コントローラ100は、現時点でのエンコーダ96の出力値から座面部30の座面角度を特定する。以下では、上記のようにして計測された時間、特定された座面角度のことを、それぞれ、「フレイルタイム」、「フレイル角度」と記載する。また、フレイルタイム及びフレイル角度を合わせて「フレイル情報」と記載する。
【0034】
フレイルモードでは、ユーザができるだけ低速かつ座り込むことなく着座運動を行なうので、上記のフレイル情報は、ユーザによるエキセントリックトレーニングとしての着座運動の限界を示す情報である。着座運動装置10は、このフレイル情報を利用することによって、後述の筋トレモードでユーザに効率的に着座運動を行なわせることができる。
【0035】
なお、筋力が衰えていないユーザは、座面部30が水平状態まで移動した後に、座面部30に座り込む。このような状況では、コントローラ100は、エンコーダ42の出力値が閾値よりも大きい変化量で変化することを検知することなく、エンコーダ96の出力値から特定される座面角度がゼロになることを検知する。コントローラ100は、座面角度がゼロになることを検知するとタイマをストップし、このときの計測時間をフレイルタイムとして決定する。また、コントローラ100は、座面角度ゼロをフレイル角度として決定する。
【0036】
最後に、コントローラ100は、Bluetooth通信を利用して、上記の識別情報とフレイル情報(即ちフレイルタイム及びフレイル角度)とを携帯端末に送信する。携帯端末の所定のアプリケーションは、着座運動装置10からこれらの情報を受信すると、これらの情報を予め決められているクラウドサーバに送信する。この結果、これらの情報がクラウドサーバのメモリに記憶される。
【0037】
次いで、筋トレモードについて説明する。携帯端末の所定のアプリケーションは、ホーム画面に含まれる筋トレモードを示すモードアイコンが選択されると、上記の識別情報をクラウドサーバに送信する。これにより、所定のアプリケーションは、クラウドサーバから、上記の識別情報と共に記憶されているフレイル情報を受信する。次いで、所定のアプリケーションは、Bluetooth通信を利用して、上記の識別情報と、筋トレモードを示すモード情報と、フレイル情報と、を着座運動装置10に送信する。
【0038】
着座運動装置10は、携帯端末から、識別情報と、筋トレモードを示すモード情報と、フレイル情報と、を受信すると、筋トレモードで動作する。コントローラ100は、まず、フレイル情報に含まれるフレイルタイム(例えば5秒)に所定割合(本実施例では80%)を乗算することによって、筋トレタイム(例えば4秒)を算出する。次いで、コントローラ100は、フレイル情報に含まれるフレイル角度(例えば45度)と起立状態の座面角度である80度との差分(例えば35度)を算出し、当該差分に所定割合(本実施例では20%)を乗算して乗算値(例えば7度)を算出する。コントローラ100は、フレイル角度(例えば45度)に乗算値(例えば7度)を加算することによって、筋トレ角度(例えば52度)を算出する。そして、コントローラ100は、座面部30が筋トレタイムをかけて起立状態から筋トレ角度まで移動するためのモータ90の回転速度を算出する。以下では、ここで算出される回転速度のことを「筋トレ速度」と記載する。
【0039】
次いで、コントローラ100は、モータ90を制御して、水平状態から起立状態を経て前進状態まで座面部30を移動させ、その後、座面部30を前進状態から起立状態まで移動させる。続いて、ユーザは、起立状態の座面部30に向けて着座運動を開始する。コントローラ100は、エンコーダ42の出力値が閾値よりも小さい変化量で変化することを検知すると、算出済みの筋トレ速度でモータ90を駆動する。ここで、コントローラ100は、エンコーダ42の出力値が閾値の20~80%の範囲内であれば、図示省略の緑色の表示灯を点灯させ、エンコーダ42の出力値が閾値の20%以下であれば、橙色の表示灯を点灯させ、エンコーダ42の出力値が閾値の80%以上であれば、黄色の表示灯を点灯させてもよい。緑色の表示灯が常に点灯されるようにユーザが着座運動を行なうことにより、効果的にエキセントリックトレーニングが実現される。その後、コントローラ100は、エンコーダ96の出力値から特定される座面角度が筋トレ角度になることを検知すると、モータ90の駆動を停止する。即ち、コントローラ100は、筋トレタイムをかけて、座面部30を起立状態から筋トレ角度まで移動させる。これにより、ユーザは、座面部30の移動に追従するようにエキセントリックトレーニングとしての着座運動を行ない、座面部30が筋トレ角度まで移動すると座面部30に座り込む。
【0040】
次いで、コントローラ100は、モータ90を制御して、起立状態を経て前進状態まで座面部30を再び移動させ、その後、前進状態から起立状態まで座面部30を再び移動させる。これにより、ユーザは、着座運動を再び行なうことができる。コントローラ100は、予め決められている回数が終了するまで上記の動作を繰り返し実行する。これにより、ユーザは、負荷をかけた着座運動を繰り返し実行することができる。
【0041】
上述したように、本実施例の着座運動装置10は、ユーザに応じた時間をかけて、座面部30を起立状態から筋トレ角度まで移動させることができる。従って、ユーザは、自身の身体能力に応じたエキセントリックトレーニングとしての着座運動を行なうことができる。このために、ユーザの利便性を向上させることができる。特に、着座運動装置10は、フレイルタイム及びフレイル角度から、筋トレタイム、筋トレ角度、及び、筋トレ速度を算出し、これらを利用して座面部30を動作させる。このために、着座運動装置10は、ユーザの身体能力に応じた着座運動をユーザに行なわせることができる。特に、筋トレタイム及び筋トレ角度は、ユーザの限界よりもやや少ない負荷になるように設定される。従って、ユーザは、筋力トレーニングを無理なく行なうことができる。
【0042】
なお、携帯端末の所定のアプリケーションは、筋トレモードにおいて、ユーザから、筋トレタイム及び筋トレ角度の変更の指示を受け付けることが可能である。例えば、所定のアプリケーションは、筋トレタイムを算出するための所定割合(本実施例では80%)を増加又は減少させる指示を受け付けることができる。また、例えば、所定のアプリケーションは、筋トレ角度を算出するための所定割合(本実施例では20%)を増加又は減少させる指示を受け付けることができる。この場合、所定のアプリケーションは、変更後の割合を示す情報を着座運動装置10に送信する。コントローラ100は、当該情報に従って筋トレタイム及び筋トレ角度を変更する。このように、着座運動装置10は、ユーザの意図に応じた負荷でユーザに着座運動を行わせることができる。
【0043】
次いで、ストレッチモードについて説明する。携帯端末の所定のアプリケーションは、ホーム画面に含まれるストレッチモードを示すモードアイコンが選択されると、Bluetooth通信を利用して、上記の識別情報と、ストレッチモードを示すモード情報と、を着座運動装置10に送信する。
【0044】
着座運動装置10は、携帯端末から、識別情報と、ストレッチモードを示すモード情報と、を受信すると、ストレッチモードで動作する。コントローラ100は、モータ90を制御して、水平状態から起立状態を経て前進状態まで座面部30を移動させ、その後、座面部30を前進状態から起立状態まで移動させる。これにより、ユーザは、ほぼ負荷をかけずに起立することができる。続いて、ユーザは、起立状態の座面部30に向けて着座運動を開始する。コントローラ100は、エンコーダ42の出力値が閾値よりも小さい変化量で変化することを検知すると、当該変化量に相当する速度で座面部30が水平状態に向けて移動するように、モータ90を制御する。これにより、ユーザは、ほぼ負荷をかけずに着座することができる。
【0045】
コントローラ100は、予め決められている回数が終了するまで上記の動作を座面部30に繰り返し実行させる。これにより、ユーザは、負荷をほぼかけることなく起立及び着座のストレッチ運動を繰り返し実行することができる。なお、変形例では、ストレッチモードが設けられなくてもよい。
【0046】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
【0047】
(変形例1)着座運動装置10は、フレイルタイム及びフレイル角度を含むフレイル情報を携帯端末に送信し、携帯端末は、フレイル情報をクラウドサーバのメモリに記憶させる。これに代えて、携帯端末は、フレイル情報を携帯端末のメモリに記憶させてもよい。この場合、着座運動装置10は、携帯端末において筋トレモードが選択される場合に、携帯端末からフレイル情報を受信して、当該フレイル情報を利用して筋トレモードで動作してもよい。別の変形例では、着座運動装置10は、フレイル情報を携帯端末に送信せずに、着座運動装置10のメモリに記憶させてもよい。この場合、着座運動装置10は、携帯端末において筋トレモードが選択される場合に、着座運動装置10のメモリからフレイル情報を取得して、当該フレイル情報を利用して筋トレモードで動作してもよい。
【0048】
(変形例2)上記の実施例では、筋トレタイムを算出するための所定割合(請求項の「
第1の所定割合」の一例)が80%であるが、当該割合として他の値(例えば、90%、70%、50%等)が採用されてもよい。また、筋トレ角度を算出するための所定割合が20%であるが、当該割合として他の値(例えば、10%、30%、50%等)が採用されてもよい。
【0049】
(変形例3)上記の実施例では、筋トレタイム、筋トレ角度が、それぞれ、請求項の「対応時間」、「対応位置(即ち所定状態)」の一例である。これに代えて、着座運動装置10は、フレイルタイムから筋トレタイムを算出せず、フレイル角度から筋トレ角度を算出しなくてもよい。即ち、着座運動装置10は、筋トレモードにおいて、フレイルタイムをかけて、座面部30を起立状態からフレイル角度まで移動させてもよい。本変形例では、フレイルタイム、フレイル角度が、それぞれ、「対応時間」、「対応位置(即ち所定状態)」の一例である。特に、フレイル角度がゼロである場合には、水平状態が、「対応位置(即ち所定状態)」の一例である。
【0050】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
10:着座運動装置、30:座面部、42:エンコーダ、62,64:リンク、80:エンコーダ、90:モータ、100:コントローラ
図1
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図5