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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101427
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】灯油および灯油製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/04 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
C10L1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005397
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】井口 靖敏
(72)【発明者】
【氏名】土師 勝彦
(57)【要約】
【課題】燃焼性の好ましい灯油を提供する。
【解決手段】本開示のある態様の灯油は、灯油の動粘度ν(30℃、mm/s)および密度ρ(15℃、g/cm)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯油の動粘度ν(30℃、mm/s)および密度ρ(15℃、g/cm)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、
前記灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きい灯油。
【請求項2】
前記灯油の5%留出温度と30%留出温度の差が7℃以上である、請求項1に記載の灯油。
【請求項3】
前記灯油の30%留出温度と50%留出温度の差が6℃以上である、請求項1に記載の灯油。
【請求項4】
前記灯油の50%留出温度と70%留出温度の差が6℃以上である、請求項1に記載の灯油。
【請求項5】
前記灯油の70%留出温度と95%留出温度の差が7℃以上である、請求項1に記載の灯油。
【請求項6】
前記灯油の全芳香族分が8.3容量%以上24.1容量%以下であり、前記灯油の2環以上の芳香族分が1.4容量%以下である、請求項1に記載の灯油。
【請求項7】
前記灯油は、複数の基材油を配合することによって製造され、
前記複数の基材油は、第1基材油および第2基材油を備え、
前記第1基材油は、直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、および、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を蒸留分離して除去した残油を備える第1群から選択され、
前記第2基材油は、ノルパララフィネート、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、FT合成油、FT合成油由来を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、FT合成油を異性化した灯油留分、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、請求項1に記載の灯油。
【請求項8】
前記灯油は、複数の基材油を配合することによって製造され、
前記複数の基材油は、第1基材油および第2基材油を備え、
前記第1基材油は、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第1群から選択され、
前記第2基材油は、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を抽出した後の残油、ノルパララフィネート、FT合成油、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、およびFT合成油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、請求項1に記載の灯油。
【請求項9】
前記複数の基材油は、非石油由来の基材油をさらに備える、請求項7または8に記載の灯油。
【請求項10】
複数の基材油の動粘度、密度および蒸留性状の数値を取得することと、
前記複数の基材油を目標配合比率で配合した目標灯油の動粘度ν(30℃、mm/s)および密度ρ(15℃、g/cm)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、前記目標灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きくなるように、前記目標配合比率を決定することと、
前記複数の基材油を前記目標配合比率で配合して前記目標灯油を製造することと、を備える灯油製造方法。
【請求項11】
前記複数の基材油の硫黄分の数値を取得することをさらに備え、
前記目標配合比率は、前記目標灯油の硫黄分が所定の基準値以下となるように決定される、請求項10に記載の灯油製造方法。
【請求項12】
前記複数の基材油の発熱量の数値を取得することをさらに備え、
前記目標配合比率は、前記目標灯油の発熱量が所定条件を充足するように決定される、請求項10に記載の灯油製造方法。
【請求項13】
前記複数の基材油のコストの数値を取得することをさらに備え、
前記目標配合比率は、前記目標灯油のコストが所定条件を充足するように決定される、請求項10に記載の灯油製造方法。
【請求項14】
前記複数の基材油の在庫量の数値を取得することをさらに備え、
前記目標配合比率は、前記目標灯油を所定の製造量で製造する場合に使用される前記複数の基材油のそれぞれの使用量が前記在庫量以下となるように決定される、請求項10に記載の灯油製造方法。
【請求項15】
前記複数の基材油は、第1基材油と、第2基材油とを備え、
前記第1基材油は、直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、および、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を蒸留分離して除去した残油を備える第1群から選択され、
前記第2基材油は、ノルパララフィネート、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、FT合成油、FT合成油由来を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、FT合成油を異性化した灯油留分、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、請求項10から14のいずれか一項に記載の灯油製造方法。
【請求項16】
前記複数の基材油は、第1基材油と、第2基材油とを備え、
前記第1基材油は、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第1群から選択され、
前記第2基材油は、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を抽出した後の残油、ノルパララフィネート、FT合成油、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、およびFT合成油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、請求項10から14のいずれか一項に記載の灯油製造方法。
【請求項17】
前記複数の基材油は、非石油由来の基材油を備える、請求項10から14のいずれか一項に記載の灯油製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、灯油および灯油製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油製品の需要が軽質化しており、重質油や残渣油を活用して灯油などの軽質油を増産することが求められている。重質油や残渣油を分解して得られる分解基材灯油は、ナフテノベンゼン類の含有割合が多い傾向にある。灯油に含まれるナフテノベンゼン量が増加すると、灯油ストーブなどの暖房機器の安定的な長期運転の支障になることが知られている。分解基材灯油を活用する場合には、灯油に含まれるナフテノベンゼン量を適切に管理する必要があるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-183030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナフテノベンゼン量の分析は煩雑で時間がかかるため、灯油の製造現場において灯油に含まれるナフテノベンゼン量を逐次分析することは困難である。
【0005】
本開示のある態様の例示的な目的の一つは、燃焼性の好ましい灯油を提供する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の灯油は、灯油の動粘度ν(30℃、mm/s)および密度ρ(15℃、g/cm)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きい。
【0007】
本開示の別の態様は、灯油製造方法である。この方法は、複数の基材油の動粘度、密度および蒸留性状の数値を取得することと、複数の基材油を目標配合比率で配合した目標灯油の動粘度ν(30℃、mm/s)および密度ρ(15℃、g/cm)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、目標灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きくなるように目標配合比率を決定することと、複数の基材油を目標配合比率で配合して目標灯油を製造することと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】灯油の動粘度および密度と燃焼性の関係性の一例を示すグラフである。
図2】実施例および比較例に係る灯油の性状を示す図である。
図3】基材油データのデータ構造の一例を示す図である。
図4】実施の形態に係る灯油製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の技術を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0011】
本開示の概要を説明する。本開示は、燃焼性の好ましい灯油を提供する技術に関する。灯油に含まれるナフテノベンゼン量が過多となると、灯油の燃焼時に揮発不良や燃焼不良が生じ、灯油の燃焼性が悪化する可能性がある。そのため、灯油のナフテノベンゼン量を直接的に管理できることが望ましい。しかしながら、ナフテノベンゼン量の計測には、電場イオン化質量分析法(FIMS)、ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析法(GC-TOFMS)、2次元ガスクロマトグラフ質量分析法(2DGC)などの質量分析法を用いる必要があり、煩雑で時間がかかる。そのため、灯油の製造現場にて灯油のナフテノベンゼン量を逐次測定することは現実的ではない。本開示では、灯油の製造現場で取得可能な灯油の密度、動粘度、蒸留性状に関する数値条件を用いて、燃焼性の好ましい灯油であるか否かを判定する。
【0012】
図1は、灯油の動粘度νおよび密度ρと燃焼性との関係性の一例を示すグラフである。図1は、様々な灯油について、動粘度ν(30℃、mm/s)を横軸とし、密度ρ(15℃、g/cm)を縦軸とするグラフ上に、燃焼性試験が合格(○)となるプロット12と、燃焼性試験が不合格(×)となるプロット14,16とを並べたものである。燃焼性試験は、例えば、灯油ストーブなどの暖房機器において1000時間の長期燃焼評価試験を実施したときに、火炎が大きくなる、逆火が生じる、目視可能な煙が生じる、芯式ストーブの芯が劣化する、ファンヒータのノズルが劣化する、油漏れや破損が生じる、芯やノズルへのカーボン堆積による流量低下が生じて火炎が小さくなる、一酸化炭素(CO)の増加といった排ガスの悪化が生じるといった不具合が発生しなければ合格となる。これらの不具合の少なくとも一つが発生する場合には不合格となる。
【0013】
図1の左下の網掛領域10は、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件を充足する範囲である。網掛領域10に含まれる合格プロット12はいずれも、灯油の10容量%留出温度(T10)と50容量%留出温度(T50)の差が10℃より大きい(つまり、T50-T10>10℃である)。網掛領域10に含まれる不合格プロット14はいずれも、灯油の10容量%留出温度(T10)と50容量%留出温度(T50)の差が10℃以下である(つまり、T50-T10≦10℃である)。網掛領域10に含まれる不合格プロット14は、蒸留温度範囲が狭すぎるため、燃焼試験において軽質分が一気に気化することで燃料過濃状態となって燃焼性が悪化する可能性がある。網掛領域10の外側にある不合格プロット16は、動粘度や密度が高すぎるために、燃焼試験において揮発不良や燃焼不良が生じることによって燃焼性が悪化する可能性がある。網掛領域10の外側にある不合格プロット16は、動粘度もしくは密度が高い、またはナフテノベンゼン量が過多となる灯油に相当する。
【0014】
図1の網掛領域10の外側であって、網掛領域10の境界近傍には合格プロットと不合格プロットが混在する。これは、燃焼試験に使用する暖房機器の個体差や燃焼試験の実施条件の微差などによって生じる試験結果の誤差(ゆらぎ)に起因する。網掛領域10は、このような試験結果の誤差が生じたとしても、試験結果が確実に合格となるように公差を考慮して設定されている。したがって、図1のグラフより、灯油の動粘度νおよび密度ρについて、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、かつ、灯油の蒸留性状について、T50-T10>10℃の条件が充足されれば、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。
【0015】
図2は、実施例および比較例に係る灯油の性状を示す図である。実施例1~3は、図1の網掛領域10内の合格プロット12に相当する。実施例1~3は、1000時間の長期燃焼評価試験に合格している。比較例1~2は、図1の網掛領域10内の不合格プロット14に相当する。比較例3は、図1の網掛領域10外の不合格プロット16に相当する。比較例1~3は、1000時間の長期燃焼評価試験にて不合格となっている。比較例1~2は、動粘度νおよび密度ρの条件を充足するが、T50-T10>10℃の条件を充足しない。比較例3は、T50-T10>10℃の条件を充足するが、動粘度νおよび密度ρの条件を充足しない。
【0016】
図1に示される様々な灯油は、複数の基材油を配合することによって製造される。本実施形態では、複数の基材油の動粘度、密度および蒸留性状の数値を用いて、動粘度、密度および蒸留性状が所望の条件を充足する目標灯油を製造するための複数の基材油の目標配合比率を決定する。
【0017】
目標灯油に用いる基材油は特に限られず、様々な種類の基材油を用いることができる。基材油は、原油の常圧蒸留装置や減圧蒸留装置から得られる灯油留分であってもよいし、水素化脱硫、接触分解、水素化分解および熱分解の少なくとも一つを用いて得られる灯油留分であってもよい。基材油は、例えば、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、常圧蒸留装置から得られる重質軽油や残渣油(直留重質油)を接触分解させた灯油留分、直留重質油を熱分解させた灯油留分、直留重質油を水素化分解させた灯油留分、減圧蒸留装置から得られる減圧軽油を水素化分解させた灯油留分、接触分解軽油を混合した重質軽油を水素化分解させた灯油留分、接触分解軽油を脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱流した灯油留分の少なくともいずれかを用いることができる。
【0018】
基材油は、灯油留分から特定成分(例えば軽質分)を抽出した後の残留分(ラフィネート)であってもよい。基材油は、灯油留分からノルマルパラフィン分を抽出した後の残油であるノルパララフィネートであってもよい。基材油は、灯油留分から留出温度が160℃以上190℃以下である軽質留分を抽出した後の残留分であってもよい。基材油は、炭素数が9である芳香族炭化水素を主成分とするC9芳香族炭化水素であってもよい。C9芳香族炭化水素は、例えば、炭素数が6~9であるC6~C9芳香族炭化水素からC6~C8芳香族炭化水素を抽出した後の残留分であってもよい。基材油は、イソブチレンの3量体以上またはそれを水素化したイソオクテンヘビーであってもよい。
【0019】
基材油は、非石油由来基材であってもよい。基材油は、一酸化炭素と水素の混合ガスからフィッシャー・トロプシュ合成(FT合成)によって得られるFT合成油であってもよく、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、またはFT合成油を異性化した灯油留分であってもよい。基材油は、植物や細菌から得られるバイオ原料由来油であってもよいし、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、またはバイオ原料由来油を異性化した灯油留分であってもよい。基材油は、廃プラスチック、廃タイヤ、廃食用油などの廃油を原料とする廃油由来再生油であってもよく、廃油由来再生油の灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、または廃油由来再生油を異性化した灯油留分であってもよい。
【0020】
図3は、基材油データ20のデータ構造の一例を示す図である。基材油データ20は、灯油の製造に用いる原料となる基材油の性状を示す数値データである。基材油データ20は、基材油を識別するためのIDおよび名称と、基材油の性状を示す複数のパラメータとを備える。基材油データ20は、基材油の製造現場で取得可能な複数のパラメータを備える。
【0021】
基材油データ20は、密度(15℃、g/cm)と、動粘度(30℃、mm/s)とを備える。15℃における密度は、JIS K2249「原油及び石油製品-密度の求め方」に準拠して測定できる。30℃における動粘度は、JIS K2283「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定できる。
【0022】
基材油データ20は、硫黄分(ppm)と、発熱量(kJ/kg)とを備える。硫黄分は、JIS K2541「原油及び石油製品-硫黄分試験方法」に準拠して測定できる。発熱量は、総発熱量と真発熱量の少なくとも一方を備えることができる。発熱量は、JIS K2279「原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法」に準拠して得ることができる。
【0023】
基材油データ20は、蒸留性状として留出温度(℃)を備えることができ、例えば、初留点温度(IPB)、a容量%留出温度(Ta)および終点温度(EP)を備えることができる。基材油データ20は、a容量%留出温度として、例えば、5容量%留出温度(T5)、10容量%留出温度(T10)、20容量%留出温度(T20)、30容量%留出温度(T30)、40容量%留出温度(T40)、50容量%留出温度(T50)%、60容量%留出温度(T60)、70容量%留出温度(T70)、80容量%留出温度(T80)、90容量%留出温度(T90)、95容量%留出温度(T95)および97容量%留出温度(T97)の少なくともいずれかを備えることができる。留出温度は、JIS K2254「石油製品-蒸留性状の求め方」に準拠して測定することができ、例えば、簡易蒸留法を用いて測定できる。
【0024】
基材油データ20は、成分比率(容量%)として、飽和分、オレフィン分、全芳香族分、1環芳香族分、2環芳香族分、3環以上(3環+)芳香族分を備えることができる。これらの成分比率は、例えば、石油学会法JPI-5S-49-97「石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフ」に準拠して測定できる。
【0025】
基材油データ20は、基材油の種類名、製造場所、製造日時、製造番号といった基材油を識別するための情報をさらに含んでもよい。基材油データ20は、基材油のコストに関する情報をさらに含んでもよく、基材油の製造にかかる単位容量あたりの価格を含んでもよい。基材油データ20は、基材油の在庫量に関する情報をさらに含んでもよく、製造工場などに貯留されている基材油の容量を含んでもよい。
【0026】
本実施形態では、基材油データ20を用いることにより、動粘度、密度および蒸留性状が所望の条件を充足する目標灯油を製造するための複数の基材油の目標配合比率を決定できる。例えば、配合に用いる複数の基材油の動粘度、密度および蒸留性状の数値と、目標配合比率とを用いれば、目標灯油の動粘度、密度および蒸留性状の数値を算出できる。そのため、算出された目標灯油の動粘度、密度および蒸留性状の数値が所望の条件を充足するように、目標配合比率を決定できる。例えば、焼きなまし法(Simulated Annealing法)などの最適化計算手法を用いることにより、複数の基材油の目標配合比率を決定できる。例えば、配合に用いる複数の基材油を識別するためのIDと、複数の基材油のそれぞれの配合比率(容量%)の値とを決定することにより、目標配合比率を決定できる。
【0027】
目標灯油の動粘度は、配合に用いる複数の基材油の動粘度の数値を目標配合比率で加重平均することによって算出できる。同様に、目標灯油の密度は、配合に用いる複数の基材油の密度の数値を目標配合比率で加重平均することによって算出できる。なお、目標灯油の蒸留性状は、蒸留性状が簡易蒸留法によって得られる場合、単純な加成性が成立しないことが知られている。一方、簡易蒸留法ではなく、真沸点蒸留法による蒸留性状であれば、単純な加成性が成立することが分かっている。そこで、基材油データ20が備える蒸留性状が簡易蒸留法による場合、簡易蒸留法による留出温度Taを真沸点蒸留法による留出温度Tcに変換し、真沸点蒸留法による留出温度Tcで加重平均する。その後、加重平均した留出温度Tcを簡易蒸留法による留出温度Taに逆変換することにより、特定の灯油の簡易蒸留法における蒸留性状を算出できる。簡易蒸留法と真沸点蒸留法の間での留出温度Ta,Tcの換算方法として、例えば、API Technical Databook Fifth Editionに記載される公知の方法を用いることができる。
【0028】
目標配合比率は、追加の制約条件をさらに充足するように決定されてもよい。例えば、目標灯油のa容量%留出温度と(a+25)容量%留出温度の差が7℃以上となるように目標配合比率を決定してもよい。例えば、a=5とし、5容量%留出温度(T5)と30容量%留出温度(T30)の差が7℃以上(つまり、T30-T5≧7℃)となるように目標配合比率が決定されてもよい。例えば、a=70とし、70容量%留出温度(T70)と95容量%留出温度(T95)の差が7℃以上(つまり、T95-T70≧7℃)となるように目標配合比率が決定されてもよい。その他、複数の条件(例えば、a=5およびa=70)が同時に満たされるように目標配合比率が決定されてもよい。これにより、算出された目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の蒸留温度範囲が狭くなることを抑制し、目標灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。図2の実施例1~3は、T30-T5≧7℃の条件およびT95-T70≧7℃を充足する。一方、図2の比較例1は、T30-T5≧7℃の条件を充足しない。図2の比較例2は、T30-T5≧7℃の条件を充足せず、T95-T70≧7℃の条件も充足しない。
【0029】
目標配合比率は、目標灯油のa容量%留出温度と(a+20)容量%留出温度の差が6℃以上となるように決定されてもよい。例えば、a=30とし、30容量%留出温度(T30)と50容量%留出温度(T50)の差が6℃以上(つまり、T50-T30≧6℃)となるように目標配合比率が決定されてもよい。例えば、a=50とし、50容量%留出温度(T50)と70容量%留出温度(T70)の差が6℃以上(つまり、T70-T50≧6℃)となるように目標配合比率が決定されてもよい。その他、複数の条件(例えば、a=30およびa=50)が同時に満たされるように目標配合比率が決定されてもよい。これにより、算出された目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の蒸留温度範囲が狭くなることを抑制し、目標灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。図2の実施例1~3は、T50-T30≧6℃の条件およびT70-T50≧6℃の条件を充足する。一方、図2の比較例1は、T50-T30≧6℃の条件を充足しない。図2の比較例2は、T50-T30≧6℃の条件を充足せず、T70-T50≧6℃の条件も充足しない。
【0030】
目標配合比率は、目標灯油の全芳香族分が8.3容量%以上24.1容量%以下となるように決定されてもよい。目標灯油の全芳香族分は、複数の基材油の全芳香族分の数値を目標配合比率で加重平均することで算出できる。目標灯油の全芳香族分が8.3容量%未満である場合、燃焼機器(暖房機器)の配管等のシール部材の膨潤不足または収縮による燃料の滲みや漏れが起こる可能性があるため好ましくない。目標灯油の全芳香族分が24.1容量%より大きい場合、煙点の低下や煤の生成といった悪影響が生じる可能性が高くなる。煙点は、例えば、JIS K2537「石油製品-灯油及び航空タービン燃料油-煙点試験方法」に準拠して測定できる。
【0031】
目標配合比率は、目標灯油の2環以上の芳香族分が1.4容量%以下となるように決定されてもよい。ここで、2環以上の芳香族分は、例えば、2環芳香族分と3環以上(3環+)芳香族分の合計に相当する。目標灯油の2環以上の芳香族分は、複数の基材油の2環以上の芳香族分の数値を目標配合比率で加重平均することで算出できる。目標灯油の2環以上芳香族分が1.4容量%よりも大きい場合、芯やノズルへのカーボン堆積による燃焼不良が発生する可能性が高くなる。
【0032】
目標配合比率は、目標灯油に含まれる特定成分の成分比率が所定の基準値以下となるように決定されてもよい。特定成分として、法律や標準規格によって基準値が定められる成分を用いることができ、例えば、硫黄分を0.0080質量%以下とする基準値を用いることができる。例えば、複数の基材油のそれぞれの硫黄分の数値を目標配合比率で加重平均することで目標灯油の硫黄分を算出し、算出される目標灯油の硫黄分が基準値以下となるかを確認できる。
【0033】
目標配合比率は、目標灯油の発熱量(総発熱量または真発熱量)が所定条件を充足するように決定されてもよい。目標配合比率で配合される目標灯油の発熱量は、基材油データ20に含まれる複数の基材油の発熱量の数値を用いて算出できる。例えば、複数の基材油のそれぞれの発熱量を目標配合比率で加重平均することで目標灯油の発熱量を算出し、算出される目標灯油の発熱量が所定条件を充足するかを確認できる。ここで、所定条件とは、目標灯油の発熱量が所定の数値範囲内となる条件であってもよいし、目標灯油の発熱量が所定の下限値以上となる条件であってもよい。
【0034】
目標配合比率は、目標灯油のコストが所定条件を充足するように決定されてもよい。目標配合比率で配合される目標灯油のコストは、基材油データ20に含まれる複数の基材油のコストを用いて算出できる。例えば、複数の基材油のそれぞれのコストの数値を目標配合比率で加重平均することで目標灯油のコストを算出し、算出される目標灯油のコストが所定条件を充足するかを確認できる。ここで、所定条件とは、目標灯油のコストが所定の数値範囲内となる条件であってもよいし、目標灯油のコストが所定の上限値未満となる条件であってもよい。
【0035】
目標配合比率は、目標配合比率で配合される目標灯油が複数の基材油の在庫量の範囲内で製造されるように決定されてもよい。この場合、目標灯油の目標製造量と複数の基材の目標配合比率とを用いて、複数の基材油のそれぞれの使用量を算出し、複数の基材油のそれぞれの使用量が在庫量の数値以下となるように目標配合比率を決定できる。
【0036】
図4は、実施の形態に係る灯油製造方法を示すフローチャートである。まず、灯油の製造に用いる複数の基材油の動粘度、密度および蒸留性状の数値を取得する(ステップS10)。次に、複数の基材油を目標配合比率で配合した目標灯油の動粘度、密度および蒸留性状が所望の条件を充足するように目標配合比率を決定する(ステップS12)。具体的には、目標灯油の動粘度νおよび密度ρについて、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、かつ、目標灯油の蒸留性状について、T50-T10>10℃の条件が充足されるように目標配合比率を決定する。複数の基材油を決定した目標配合比率で配合することにより目標灯油を製造する(ステップS14)。これにより、燃焼性の優れた目標灯油を製造できる。
【0037】
本実施の形態によれば、灯油の動粘度および密度の数値条件を用いることにより、灯油や基材油のナフテノベンゼン量を実測できない場合であっても、ナフテノベンゼン量が過多となるために燃焼性が悪化しうる灯油となるか否かを簡便に判定できる。また、灯油の蒸留性状を用いることにより、蒸留性状(温度範囲)が狭すぎるために燃焼性が悪化しうる灯油となるか否かを簡便に判定できる。
【0038】
本実施の形態によれば、ナフテノベンゼンの含有量が多いと推定される基材油を積極的に利用することができ、燃焼性の優れた灯油の増産が容易となる。ナフテノベンゼンの含有量が相対的に多い第1基材油は、直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、および、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を蒸留分離して除去した残油を備える第1群から選択できる。また、ナフテノベンゼンの含有量が相対的に少ない第2基材油は、例えば、ノルパララフィネート、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、FT合成油、FT合成油由来を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、FT合成油を異性化した灯油留分、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される。このような第1基材油と第2基材油を混合して灯油を製造することにより、ナフテノベンゼン量が過多となることを防ぎ、燃焼性に優れた灯油の増産が容易となる。
【0039】
本実施の形態によれば、基材油の蒸留性状を考慮することにより、蒸留性状(温度範囲)が狭すぎるために燃焼性の悪化につながると推定される基材油を積極的に利用して、燃焼性の優れた灯油の増産が容易となる。蒸留性状(温度範囲)が相対的に狭い第1基材油は、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第1群から選択される。また、蒸留性状(温度範囲)が相対的に狭い第2基材油は、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を抽出した後の残油、ノルパララフィネート、FT合成油、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、およびFT合成油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される。このような第1基材油と第2基材油を混合して灯油を製造することにより、蒸留性状(温度範囲)が狭くなることを防ぎ、燃焼性に優れた灯油の増産が容易となる。
【0040】
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0041】
以下、本開示のいくつかの態様について説明する。
【0042】
本開示の第1の態様は、灯油の動粘度ν(30℃、mm/s)および密度ρ(15℃、g/cm)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、前記灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きい灯油である。第1の態様によれば、灯油の製造現場にて取得可能な動粘度、密度および蒸留性状を用いて長期燃焼性に優れた灯油であるか否かを簡便に判定することができ、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。
【0043】
本開示の第2の態様は、前記灯油の5%留出温度と30%留出温度の差が7℃以上である、第1の態様に記載の灯油である。第2の態様によれば、灯油の蒸留性状(蒸留範囲)が狭くなることを抑制し、灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0044】
本開示の第3の態様は、前記灯油の30%留出温度と50%留出温度の差が6℃以上である、第1または第2の態様に記載の灯油である。第3の態様によれば、灯油の蒸留性状(蒸留範囲)が狭くなることを抑制し、灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0045】
本開示の第4の態様は、前記灯油の50%留出温度と70%留出温度の差が6℃以上である、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の灯油である。第4の態様によれば、灯油の蒸留性状(蒸留範囲)が狭くなることを抑制し、灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0046】
本開示の第5の態様は、前記灯油の70%留出温度と95%留出温度の差が7℃以上である、第1から第4のいずれか一つの態様に記載の灯油である。第5の態様によれば、灯油の蒸留性状(蒸留範囲)が狭くなることを抑制し、灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0047】
本開示の第6の態様は、前記灯油の全芳香族分が8.3容量%以上24.1容量%以下であり、前記灯油の2環以上の芳香族分が1.4容量%以下である、第1から第5のいずれか一つの態様に記載の灯油である。第6の態様によれば、煙点の低下、煤の生成、カーボン堆積による燃焼性不良といった不具合の発生を抑制できる。
【0048】
本開示の第7の態様は、前記灯油は、複数の基材油を配合することによって製造され、前記複数の基材油は、第1基材油および第2基材油を備え、前記第1基材油は、直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、および、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を蒸留分離して除去した残油を備える第1群から選択され、前記第2基材油は、ノルパララフィネート、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、FT合成油、FT合成油由来を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、FT合成油を異性化した灯油留分、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、第1から第6のいずれか一つの態様に記載の灯油である。第7の態様によれば、ナフテノベンゼン量が比較的多い第1基材油と、ナフテンベンゼン量が比較的少ない第2基材油とを組み合わせる場合であっても、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。これにより、ナフテノベンゼン量が比較的多い第1基材油を有効活用することができ、灯油の増産に寄与できる。
【0049】
本開示の第8の態様は、前記灯油は、複数の基材油を配合することによって製造され、前記複数の基材油は、第1基材油および第2基材油を備え、前記第1基材油は、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第1群から選択され、前記第2基材油は、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を抽出した後の残油、ノルパララフィネート、FT合成油、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、およびFT合成油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、第1から第6のいずれか一つの態様に記載の灯油である。第8の態様によれば、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第1基材油と、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第2基材油とを組み合わせる場合であっても、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。これにより、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第1基材油を有効活用することができ、灯油の増産に寄与できる。
【0050】
本開示の第9の態様は、前記複数の基材油は、非石油由来の基材油をさらに備える、第7または第8の態様に記載の灯油である。第9の態様によれば、非石油由来の基材油を用いる場合であっても、長期燃焼性に優れた灯油であるか否かを簡便に判定することができ、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。
【0051】
本開示の第10の態様は、複数の基材油の動粘度、密度および蒸留性状の数値を取得することと、前記複数の基材油を目標配合比率で配合した目標灯油の動粘度ν(30℃、mm/s)および密度ρ(15℃、g/cm)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足され、前記目標灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きくなるように、前記目標配合比率を決定することと、前記複数の基材油を前記目標配合比率で配合して前記目標灯油を製造することと、を備える灯油製造方法である。第10の態様によれば、基材油の動粘度、密度および蒸留性状を用いて長期燃焼性に優れた目標灯油を製造するための目標配合比率を決定することができ、燃焼性の好ましい目標灯油を提供できる。
【0052】
本開示の第11の態様は、前記複数の基材油の硫黄分の数値を取得することをさらに備え、前記目標配合比率は、前記目標灯油の硫黄分が所定の基準値以下となるように決定される、第10の態様に記載の灯油製造方法である。第11の態様によれば、硫黄分の基準値を満たすように配合比率を決定することにより、より好ましい目標灯油を提供できる。
【0053】
本開示の第12の態様は、前記複数の基材油の発熱量の数値を取得することをさらに備え、前記目標配合比率は、前記目標灯油の発熱量が所定条件を充足するように決定される、第10または第11の態様に記載の灯油製造方法である。第12の態様によれば、発熱量に関する条件を満たすように配合比率が決定することにより、より好ましい目標灯油を提供できる。
【0054】
本開示の第13の態様は、前記複数の基材油のコストの数値を取得することをさらに備え、前記目標配合比率は、前記目標灯油のコストが所定条件を充足するように決定される、第10から第12のいずれか一つの態様に記載の灯油製造方法である。第13の態様によれば、コストに関する条件を満たすように配合比率が決定されるため、ユーザの利便性を向上できる。
【0055】
本開示の第14の態様は、前記複数の基材油の在庫量の数値を取得することをさらに備え、前記目標配合比率は、前記目標灯油を所定の製造量で製造する場合に使用される前記複数の基材油のそれぞれの使用量が前記在庫量以下となるように決定される、第10から第13のいずれか一つの態様に記載の灯油製造方法である。第14の態様によれば、基材油の限られた在庫を活用することができ、燃焼性の優れた灯油の増産に寄与できる。
【0056】
本開示の第15の態様は、前記複数の基材油は、第1基材油と、第2基材油とを備え、前記第1基材油は、直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、および、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を蒸留分離して除去した残油を備える第1群から選択され、前記第2基材油は、ノルパララフィネート、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、FT合成油、FT合成油由来を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、FT合成油を異性化した灯油留分、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、第10から第14のいずれか一つの態様に記載の灯油製造方法である。第15の態様によれば、ナフテノベンゼン量が比較的多い第1基材油と、ナフテンベンゼン量が比較的少ない第2基材油とを組み合わせる場合であっても、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。これにより、ナフテノベンゼン量が比較的多い第1基材油を有効活用することができ、灯油の増産に寄与できる。
【0057】
本開示の第16の態様は、前記複数の基材油は、第1基材油と、第2基材油とを備え、前記第1基材油は、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第1群から選択され、前記第2基材油は、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を抽出した後の残油、ノルパララフィネート、FT合成油、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、およびFT合成油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、第10から第14のいずれか一つの態様に記載の灯油製造方法である。第16の態様によれば、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第1基材油と、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第2基材油とを組み合わせる場合であっても、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。これにより、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第1基材油を有効活用することができ、灯油の増産に寄与できる。
【0058】
本開示の第17の態様は、前記複数の基材油は、非石油由来の基材油を備える、第10から第16のいずれか一つの態様に記載の灯油製造方法である。第17の態様によれば、非石油由来の基材油を用いる場合であっても、長期燃焼性に優れた灯油を製造するための目標配合比率を決定でき、燃焼性の好ましい灯油を提供できる。
図1
図2
図3
図4