(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101433
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B26D 1/20 20060101AFI20240722BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240722BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20240722BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20240722BHJP
B26D 7/22 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B26D1/20 A
B41J29/38 206
B41J29/38 350
B41J11/70
B26D7/06 Z
B26D7/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005404
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慶充
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 康介
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
【テーマコード(参考)】
2C058
2C061
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
2C058AB04
2C058AB06
2C058AC07
2C058AE02
2C058AF51
2C058LA03
2C058LA07
2C058LB07
2C058LC15
2C061AP01
2C061AP04
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS02
2C061BB10
2C061CK01
2C061HJ04
2C061HK19
2C061HK23
2C061HN15
3C021HA07
3C027SS02
3C027SS03
3C027SS06
(57)【要約】
【課題】切断部により安定した品質での切断を可能とする。
【解決手段】印刷装置1は、カッター(80)と、制御部と、を備え、前記制御部は、予め定められた条件に基づいて、搬送方向(D1)と交差する方向である移動刃(82)の走査方向に移動刃(82)が移動可能な可動範囲において、用紙(P)が搬送される領域である搬送領域を少なくとも含む範囲を少なくとも1回以上往復するように移動刃(82)を移動させる慣らし処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブに含まれる印刷データに基づいて、印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、
印刷媒体を排出する方向である搬送方向に沿って搬送する搬送部と、
固定刃と、前記固定刃に対して摺動する移動刃と、を有し、搬送された印刷媒体を切断する切断部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
予め定められた条件に基づいて、前記搬送方向と交差する方向である前記移動刃の走査方向に前記移動刃が移動可能な可動範囲において、印刷媒体が搬送される領域である搬送領域を少なくとも含む範囲を少なくとも1回以上往復するように前記移動刃を移動させる慣らし処理を実行する、印刷装置。
【請求項2】
印刷ジョブに含まれる印刷データに基づいて、印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、
印刷媒体を排出する方向である搬送方向に沿って搬送する搬送部と、
固定刃と、前記固定刃に対して摺動する移動刃と、を有し、搬送された印刷媒体を切断する切断部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
予め定められた条件に基づいて、前記搬送方向と交差する方向である前記移動刃の走査方向における原点位置から終点位置までの可動範囲において、前記移動刃を前記原点位置から前記終点位置に向かう方向である往路方向及び前記終点位置から前記原点位置に向かう方向である復路方向に交互に移動させながら、前記終点位置に徐々に近づけるように前記移動刃を移動させる慣らし処理を実行する、印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記慣らし処理を定期的に実行する、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記印刷部に対して実行される所定のメンテナンス動作と共に前記慣らし処理を実行する、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記印刷装置の動作を初期化する初期化動作と共に前記慣らし処理を実行する、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記搬送部により搬送される印刷媒体を前記搬送方向に案内する搬送路を更に備え、
前記制御部は、
受信した印刷ジョブに印刷媒体を切断する切断処理が含まれている場合、前記搬送路において印刷媒体が搬送される前に前記慣らし処理を実行する、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項7】
インタフェースを更に備え、
前記制御部は、
前記インタフェースの入力に基づいて、前記慣らし処理を実行する、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記慣らし処理において、印刷媒体を切断する切断処理時における前記移動刃の移動速度である第1速度よりも遅い第2速度にて、前記移動刃を移動させる、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記慣らし処理において、前記第1速度で前記移動刃を移動させている際、前記移動刃の移動特性の異常を特定するパラメータが、予め定められた閾値以下であるか判定する判定処理を更に実行し、
前記判定処理において、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定された場合、前記移動刃を、前記走査方向の復路方向に移動させた後、前記第2速度で前記走査方向の往路方向に移動させる、請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記慣らし処理において、前記搬送部により印刷媒体を前記切断部の切断位置まで搬送し、印刷媒体が前記切断位置に到達した状態で実行する、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記慣らし処理を印刷媒体が搬送されていない状態で実行する、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記慣らし処理において、前記移動刃を移動させている際、前記移動刃の移動特性の異常を特定するパラメータが、予め定められた閾値以下であるか判定する判定処理を更に実行し、
前記判定処理において、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定された場合、前記移動刃を停止させる、請求項1または2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷のために搬送中であるシートを切断する切断機構を備えた画像形成装置がある。例えば、特許文献1には、ロール紙を切断する切断手段を備える画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の画像形成装置のように、切断手段を備えた画像形成装置では、用紙を切断する切断部の未使用状態が続くと、切断部の刃の腐食、埃等の異物の付着等が原因となり、切断部による切断の品質が低下することが考えられる。
【0005】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切断部により安定した品質での切断を可能とする印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の態様1に係る印刷装置は、印刷ジョブに含まれる印刷データに基づいて、印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、印刷媒体を排出する方向である搬送方向に沿って搬送する搬送部と、固定刃と、前記固定刃に対して摺動する移動刃と、を有し、搬送された印刷媒体を切断する切断部と、制御部と、を備え、前記制御部は、予め定められた条件に基づいて、前記搬送方向と交差する方向である前記移動刃の走査方向に前記移動刃が移動可能な可動範囲において、印刷媒体が搬送される領域である搬送領域を少なくとも含む範囲を少なくとも1回以上往復するように前記移動刃を移動させる慣らし処理を実行する。
【0007】
上記態様1の構成によれば、印刷媒体を切断する切断処理を実行していない状態であっても、切断部の移動刃は、固定刃に対して摺動しながら可動範囲全域に渡って往復するように移動する。そのため、切断部の未使用状態により移動刃又は固定刃に錆などの異物が付着することを防止することができる。これにより、切断部により安定した品質での切断を提供することができる。
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の態様2に係る印刷装置は、印刷ジョブに含まれる印刷データに基づいて、印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、印刷媒体を排出する方向である搬送方向に沿って搬送する搬送部と、固定刃と、前記固定刃に対して摺動する移動刃と、を有し、搬送された印刷媒体を切断する切断部と、制御部と、を備え、前記制御部は、予め定められた条件に基づいて、前記搬送方向と交差する方向である前記移動刃の走査方向における原点位置から終点位置までの可動範囲において、前記移動刃を前記原点位置から前記終点位置に向かう方向である往路方向及び前記終点位置から前記原点位置に向かう方向である復路方向に交互に移動させながら、前記終点位置に徐々に近づけるように前記移動刃を移動させる慣らし処理を実行する。
【0009】
上記態様2の構成によれば、印刷媒体を切断する切断処理を実行していない状態であっても、切断部の移動刃は、固定刃に対して摺動しながら、走査方向における往路方向及び復路方向に交互に移動する。そのため、慣らし処理により切断部の未使用状態を防止することができる。これにより、切断部により安定した品質での切断を提供することができる。
【0010】
本開示の態様3に係る印刷装置において、制御部は、前記慣らし処理を定期的に実行する。上記態様3の構成によれば、定期的に慣らし処理が実行されるため、切断部の未使用状態が続くのを防止することができる。これにより、切断部により安定した品質での切断を提供することができる。
【0011】
本開示の態様4に係る印刷装置において、前記制御部は、前記印刷部に対して実行される所定のメンテナンス動作と共に前記慣らし処理を実行する。上記態様4の構成によれば、定期的に実行される印刷部のメンテナンス動作と共に慣らし処理が実行されるため、切断部の未使用状態が続くのを防止することができる。これにより、切断部により安定した品質での切断を提供することができる。
【0012】
本開示の態様5に係る印刷装置において、前記制御部は、前記印刷装置の動作を初期化する初期化動作と共に前記慣らし処理を実行する。上記態様5の構成によれば、印刷装置の初期化動作と共に慣らし処理が実行される。そのため、印刷装置の使用時において切断部の未使用状態を解消することができる。これにより、切断部により安定した品質での切断を提供することができる。
【0013】
本開示の態様6に係る印刷装置は、前記搬送部により搬送される印刷媒体を前記搬送方向に案内する搬送路を更に備え、前記制御部は、受信した印刷ジョブに印刷媒体を切断する切断処理が含まれている場合、前記搬送路において印刷媒体が搬送される前に前記慣らし処理を実行する。上記態様6の構成によれば、搬送路において印刷媒体が搬送される前に慣らし処理が実行される。そのため、切断処理時において切断部の未使用状態を解消することができる。これにより、切断部により安定した品質での切断を提供することができる。
【0014】
本開示の態様7に係る印刷装置は、インタフェースを更に備え、前記制御部は、前記インタフェースの入力に基づいて、前記慣らし処理を実行する。上記態様7の構成によれば、ユーザによるインタフェースの入力に基づいて切断処理の前に慣らし処理が実行することができるため、切断処理時において切断部の未使用状態を解消することができる。これにより、切断部により安定した品質での切断を提供することができる。
【0015】
本開示の態様8に係る印刷装置において、前記制御部は、前記慣らし処理において、印刷媒体を切断する切断処理時における前記移動刃の移動速度である第1速度よりも遅い第2速度にて、前記移動刃を移動させる。上記態様8の構成によれば、慣らし処理において、切断時における移動刃の移動速度よりも遅い移動速度で移動刃を移動させる。そのため、移動刃又は固定刃に付着した錆等の異物に対して移動刃又は固定刃が当接したとしても、移動刃又は固定刃に対する衝撃を少なくすることができる。これにより、切断部の故障を防止することができる。
【0016】
本開示の態様9に係る印刷装置において、前記制御部は、前記慣らし処理において、前記第1速度で前記移動刃を移動させている際、前記移動刃の移動特性の異常を特定するパラメータが、予め定められた閾値以下であるか判定する判定処理を更に実行し、前記判定処理において、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定された場合、前記移動刃を、前記走査方向の復路方向に移動させた後、前記第2速度で前記走査方向の往路方向に移動させる。
【0017】
上記態様9の構成によれば、移動刃の移動特性に異常があると判定された場合、遅い速度で移動刃を移動させる。そのため、移動刃の移動特性に異常がある状態で、第2速度で移動刃を移動させ、移動特性の異常の解除を試みることができる。これにより、切断部が故障してしまうことを防止しつつ、切断部の慣らし動作を実行することができる。
【0018】
本開示の態様10に係る印刷装置において、前記制御部は、前記慣らし処理において、前記搬送部により印刷媒体を前記切断部の切断位置まで搬送し、印刷媒体が前記切断位置に到達した状態で実行する。上記態様10の構成によれば、印刷媒体を切断しながら慣らし処理を実行することができる。そのため、印刷媒体の切断時に移動刃及び固定刃に負荷がかかるため、移動刃及び固定刃に付着した錆などを除去することができる。これにより、切断部による切断の品質が低下する虞を軽減することができる。
【0019】
本開示の態様11に係る印刷装置において、前記制御部は、前記慣らし処理を印刷媒体が搬送されていない状態で実行する。上記態様11の構成によれば、慣らし処理を印刷媒体が搬送されない状態で実行する。これにより、印刷媒体を不要に消費してしまうことを防止することができる。
【0020】
本開示の態様12に係る印刷装置において、前記制御部は、前記慣らし処理において、前記移動刃を移動させている際、前記移動刃の移動特性の異常を特定するパラメータが、予め定められた閾値以下であるか判定する判定処理を更に実行し、前記判定処理において、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定された場合、前記移動刃を停止させる。
【0021】
上記態様12の構成によれば、移動刃の移動特性の異常を特定するパラメータが予め定められた閾値以上である場合、制御部は移動刃を停止させる。そのため、移動刃の移動特性に異常がある場合であっても、移動刃は無理に移動させられることがない。これにより、切断部の故障を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一態様によれば、切断部により安定した品質での切断を可能とする印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の実施形態1に係る印刷装置の内部構造を示す断面図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係るカッターを上方から見た図である。
【
図4】実施形態1に係る制御部によるカッターの慣らし処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係る固定刃に対する移動刃の動作を説明する図である。
【
図6】移動刃の移動時における特性情報について説明する図である。
【
図7】移動刃を往復移動させた際の移動刃の特性情報の変化の一例を示す図である。
【
図8】実施形態2に係る制御部によるカッターの慣らし処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2に係る慣らし処理における用紙の切断位置を説明する図である。
【
図10】実施形態3に係る固定刃に対する移動刃の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1に係る印刷装置1ついて、
図1~
図7を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本開示の実施形態1に係る印刷装置1の内部構造を示す断面図である。
【0025】
[印刷装置の構成]
図1に示す印刷装置1は、印刷ジョブにより指定された印刷データを、例えばインクを吐出することにより、印刷媒体の一例である用紙Pに記録するインクジェット式のプリント機能を有するプリンタである。なお、印刷の方式は、インクジェット方式に限らず、電子写真方式であってもよい。また、印刷装置1は、プリント機能及びスキャン機能を有するMFP(Multi-Function Peripheral)であってもよい。用紙Pに印刷される画像は、カラー印刷が可能であってもよいし、モノクロ印刷専用であってもよい。用紙Pは、紙媒体に限らず、他にも、例えばOHPシートのような樹脂媒体であってもよい。
【0026】
図1に示すように、印刷装置1は、装置本体2と、給紙トレイ21と、排紙トレイ22と、給紙ローラ24と、第1搬送ローラ60と、印刷部3と、第2搬送ローラ62と、排出ローラ64と、カッター80とを備えている。以下、説明の便宜上、
図1の矢印に示されるように、印刷装置1の上下方向、及び前後方向を定義する。また、
図1の紙面奥行方向を印刷装置1の右方向、
図1の紙面手前方向を印刷装置1の左方向とする。
【0027】
給紙トレイ21は、用紙Pを収容するためのケースであり、上面が開放している。給紙トレイ21は、載置部210を有し、載置部210に載置された用紙Pを収容する。用紙Pのサイズは、例えばA4サイズである。給紙トレイ21及び排紙トレイ22は、印刷装置1の前面に形成された開口に、前後方向に移動可能に配置されている。
【0028】
給紙ローラ24は、給紙トレイ21に収容された用紙Pを、搬送路R1へ給送するためのローラである。給紙ローラ24は、搬送部の一例である。給紙ローラ24は、給送アーム25の先端部に回転可能に支持されている。給送アーム25は、印刷装置1のフレームに支持された軸26に回動可能に支持されている。給送アーム25は、自重又はバネ等による弾性力によって、給紙トレイ21へ向けて回動付勢されている。
【0029】
給紙ローラ24は、給送モータ101(
図2参照)が駆動することにより正回転する。給紙ローラ24が正回転することにより、給紙トレイ21に収容された用紙Pが1枚ずつ搬送路R1へ給送される。搬送路R1へ給送された用紙Pは、搬送方向D1に沿って搬送される。
【0030】
搬送路R1は、装置本体2に設けられている。搬送路R1は、給紙ローラ24、第1搬送ローラ60、第2搬送ローラ62、及び排出ローラ64により搬送される印刷媒体を搬送方向D1に案内する。搬送路R1は、ガイド部材51,52,53,54、及び印刷部3等によって形成される空間をいう。搬送路R1は、給紙トレイ21の後端部から上方に延び、ガイド部材51,52で区画される領域にて湾曲し、印刷部3の位置を経由して、ガイド部材53,54で区画される領域にて直線状に延び、排紙トレイ22に至る経路である。
【0031】
搬送路R1における印刷部3よりも搬送方向の上流には、第1搬送ローラ60が配置されている。第1搬送ローラ60は、搬送部の一例である。第1搬送ローラ60の下部と対向する位置には、ピンチローラ61が配置されている。第1搬送ローラ60は、搬送モータ102(
図2照)によって駆動される。ピンチローラ61は、第1搬送ローラ60の回転に伴って回転する。第1搬送ローラ60及びピンチローラ61が正回転することにより、用紙Pは、第1搬送ローラ60及びピンチローラ61に挟持されて、印刷部3まで搬送される。
【0032】
印刷部3は、搬送路R1において第1搬送ローラ60と第2搬送ローラ62との間に設けられ、用紙Pに画像を印刷する。印刷部3は、ヘッドキャリッジ31と、記録ヘッド32と、プラテン33とを有している。記録ヘッド32は、ヘッドキャリッジ31に搭載される。記録ヘッド32の下面には、図示しない複数のノズルが設けられている。記録ヘッド32は、ピエゾ素子等の振動素子を振動させることによって、ノズルからインク滴を吐出する。プラテン33は、用紙Pが載置される矩形板状の部材である。プラテン33に支持された用紙Pに対して、ヘッドキャリッジ31が移動する過程において、記録ヘッド32がインク滴を選択的に吐出することによって、用紙Pに画像が印刷される。
【0033】
プラテン33は、搬送路R1と平行な状態である第1位置(
図1の実線参照)と、当該第1位置から所定角度だけ下方に回動した第2位置(
図1の点線参照)との間で回動可能に配置されている。プラテン33は、用紙Pの搬送時及び印刷時には、第1位置にある。一方、用紙Pの紙詰まり等が生じた際には、ユーザは、プラテン33を第2位置にある状態にさせ、紙詰まりした用紙Pを取り除く処理を行うことが可能である。
【0034】
ヘッドキャリッジ31は、ヘッドキャリッジモータ103(
図2参照)の駆動力が伝達されることによって、走査方向に往復移動する。用紙Pへの画像印刷において、印刷装置1の制御部7(
図2参照)は、用紙Pの搬送が停止している状態でヘッドキャリッジ31を走査方向に移動させながら記録ヘッド32からインクを吐出させ、1行分の画像を用紙Pに印刷させる印刷処理と、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62を駆動させて用紙Pを所定の改行量だけ搬送する改行処理とを繰り返す。
【0035】
搬送路R1における印刷部3よりも搬送方向の下流には、第2搬送ローラ62が配置されている。第2搬送ローラ62は、搬送部の一例である。第2搬送ローラ62の上部と対向する位置には、拍車63が配置されている。第2搬送ローラ62は、搬送モータ102(
図2参照)によって駆動される。拍車63は、第2搬送ローラ62の回転に伴って回転する。第2搬送ローラ62及び拍車63が正回転することにより、用紙Pは、第2搬送ローラ62及び拍車63に挟持されて、カッター80へ搬送される。
【0036】
カッター80は、搬送路R1において、第2搬送ローラ62と排出ローラ64との間に配置されている。カッター80は、切断部の一例である。カッター80は、カッターキャリッジ81と、移動刃82と、固定刃83とを有する。カッターキャリッジ81は、カッターキャリッジモータ104(
図2参照)の駆動力が伝達されることによって、搬送方向D1と直交する走査方向D2(
図3参照)に移動する。なお、走査方向D2は、搬送方向D1に対して交差する方向であればよい。移動刃82は、円形状の丸刃であり、カッターキャリッジ81に搭載されている。移動刃82は、カッターキャリッジ81の移動に伴い走査方向D2に移動し、回転しながら固定刃83に対して摺動する。固定刃83は、走査方向D2に延設され、印刷装置1の装置本体2に対して固定されている。固定刃83は、走査方向D2において、少なくとも印刷媒体が搬送される搬送領域A2(
図3参照)を含むように延設されている。
【0037】
カッター80は、印刷部3により画像が印刷された用紙Pを切断する。カッター80は、第2搬送ローラ62と排出ローラ64とにより挟持されて停止している状態の用紙Pに対して、移動刃82を用紙Pの幅方向に移動させることで、用紙Pの所定位置を幅方向に切断する。具体的には、カッター80は、カッターキャリッジ81を用紙Pの幅方向に移動させることで、移動刃82を固定刃83に対して摺動させながら用紙Pを幅方向に切断する。カッター80は、例えば、用紙Pを所定の切断位置で切断することにより、用紙Pを2等分に切断する。2等分に切断後の第1用紙P1および第2用紙P2は、排出ローラ64及び拍車65に挟持されて、排紙トレイ22へ排出される。
【0038】
また、カッター80の配置は、搬送路Hにおいて、第2搬送ローラ62と排出ローラ64との間に限られない。例えば、搬送路Hにおいて、印刷部3と第2搬送ローラ62との間であってもよい。また、搬送路Hにおいて、第1搬送ローラ60と印刷部3の間であってもよい。つまり、搬送路Hにおいて、用紙Pを切断することができる位置に設けられていればよい。
【0039】
搬送路R1におけるカッター80より搬送方向の下流には、排出ローラ64が配置されている。排出ローラ64は、搬送部の一例である。排出ローラ64の上部と対向する位置には、拍車65が配置されている。排出ローラ64は、搬送モータ102(
図2参照)によって駆動される。拍車65は、排出ローラ64の回転に伴って回転する。排出ローラ64及び拍車65が正回転することにより、用紙P又は切断後の第1用紙P1及び第2用紙P2は、排出ローラ64及び拍車65に挟持されて、排紙トレイ22へ排出される。
図1に示すように、給紙トレイ21の上方には、排紙トレイ22が配置されている。排紙トレイ22は、排出ローラ64によって排出された用紙P又は第1用紙P1及び第2用紙P2を収容する。
【0040】
搬送路R1における第1搬送ローラ60よりも上流には、レジセンサ106が設けられている。レジセンサ106は、ガイド部材52に取り付けられ、用紙Pの前端又は後端が第1搬送ローラ60との当接位置を通過することを検知するセンサである。レジセンサ106は、用紙Pが搬送路R1における所定位置に有るか否かを検知するセンサである。レジセンサ106としては、用紙Pが当接することで揺動するアクチュエータを有するセンサや、光センサ等を用いることができる。レジセンサ106は、用紙Pがレジセンサ106の位置を通過している状態でオン信号を出力し、用紙Pがレジセンサ106の位置を通過していない状態でオフ信号を出力する。即ち、用紙Pの前端がレジセンサ106の位置に到達したタイミングから用紙Pの後端がレジセンサ106の位置を通過するまでの間はオン信号を出力し、それ以外の間はオフ信号を出力する。レジセンサ106による検知信号は、制御部7へ出力される。
【0041】
第1搬送ローラ60には、第1搬送ローラ60の回転を検出するエンコーダ105が設けられている。このエンコーダ105は、第1搬送ローラ60の回転に応じてパルス信号を制御部7へ出力する。
【0042】
[印刷装置の電気的構成]
図2は、本開示の実施形態1に係る印刷装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、印刷装置1は、上述した各部に加え、制御部7と、ネットワークインターフェース(I/F)107と、操作パネル108と、位置センサ109と、高電圧生成回路110とを備えている。
【0043】
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73、EEPROM74(登録商標)、及びASIC75を有し、これらが内部バスによって接続されている。ROM72には、CPU71が各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM73は、CPU71が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、又はデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM74には、電源オフ後も保持すべき設定情報が格納される。制御部7は、ROM72から読み出した制御プログラムに基づいて、給送モータ101、搬送モータ102、ヘッドキャリッジモータ103、記録ヘッド32、及びカッターキャリッジモータ104等を制御する。
【0044】
ASIC75には、給送モータ101、搬送モータ102、ヘッドキャリッジモータ103、記録ヘッド32、カッターキャリッジモータ104、エンコーダ105、レジセンサ106、及びネットワークI/F107が接続されている。
【0045】
ASIC75は、給送モータ101、搬送モータ102、ヘッドキャリッジモータ103、及びカッターキャリッジモータ104に駆動電流を供給する。給送モータ101、搬送モータ102、ヘッドキャリッジモータ103、及びカッターキャリッジモータ104は、供給される駆動電流が大きいほど回転速度が速くなり、供給される駆動電流が小さいほど回転速度が遅くなるDCモータである。制御部7は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、給送モータ101、搬送モータ102、ヘッドキャリッジモータ103、及びカッターキャリッジモータ104の回転を制御する。
【0046】
また、制御部7は、記録ヘッド32の振動素子に駆動電圧を印加することによって、ノズルからインク滴を吐出させる。制御部7は、エンコーダ105から出力されるパルス信号に基づいて第1搬送ローラ60の回転量を検知する。制御部7は、レジセンサ106から出力される検出信号に基づいて、用紙Pが第1搬送ローラ60との当接位置を通過したことを検知する。そして、制御部7は、レジセンサ106からオン信号が出力された後、エンコーダ105から出力されるパルス信号に基づいて、用紙Pの搬送路R1における搬送量を推定する。
【0047】
ネットワークI/F107は、LAN等のネットワークに接続され、印刷装置1用のドライバが組み込まれた外部装置との接続を可能にしている。印刷装置1は、ネットワークI/F107を介して、用紙Pの種類を識別する識別情報を含む印刷ジョブを受信可能である。
【0048】
操作パネル108は、ユーザの操作により、印刷装置1による印刷、及びカッター80等に関する各種処理の実行及び各種設定を行うことが可能な構成となっている。操作パネル108は、装置本体2の外面に設けられている。操作パネル108は、各種操作ボタンおよびディスプレイを有する。操作パネル108は、インタフェースの一例である。操作パネル108から入力された情報は制御部7へ出力される。なお、印刷装置1は、操作パネル108を備える構成に限られず、タッチパネルを備える構成としてもよい。タッチパネルは、インタフェースの一例である。
【0049】
位置センサ109は、カッターキャリッジ81の支持レール16(
図3参照)に対する位置を検知するセンサである。位置センサ109は、発光部及び受光部を有する光センサである。位置センサ109の受光部は、図示していないエンコーダディスクから反射した位置センサ109の発光部からの光を受光する。エンコーダディスクには、スリット状のスケールが形成されている。エンコーダディスクは、カッターキャリッジモータ104の回転と共に回転する。位置センサ86がエンコーダディスクのスケールを検出することにより、カッターキャリッジ81の位置が検知される。なお、位置センサ109は、磁気によってエンコーダディスクのスケールを検出するものであってもよい。
【0050】
高電圧生成回路110は、カッターキャリッジモータ104に印加する電圧を生成する回路である。制御部7は、高電圧生成回路110をPWM(Pulse Width Moduration)制御により制御する。より詳細には、制御部7は、デューティ比を設定し、設定されたデューティ比に基づいてPWM信号PSを高電圧生成回路110に出力する。高電圧生成回路110は、制御部7により出力されたPWM信号PSに基づいて、生成される電圧が制御される。
【0051】
また、高電圧生成回路110は、カッターキャリッジモータ104に流れる電流値を検出する。高電圧生成回路110は、検出した電流値を表す電気信号FBを制御部7に送信する。制御部7は、電気信号FBに基づきデューティ比を設定する。
【0052】
[カッターの動作について]
図3を参照して、カッター80の動作について説明する。
図3は、実施形態1に係るカッター80を上方から見た図である。
【0053】
図3に示すように、印刷装置1は、装置本体2に設けられた支持レール16を更に備えている。支持レール16は、カッター80を走査方向D2に移動可能に支持する部材であって、走査方向D2に延設されている。支持レール16には、回転軸17に巻回された無端ベルト18が設けられている。無端ベルト18は、カッターキャリッジ10と連結されている。カッターキャリッジモータ104の駆動力によって回転軸17が回転すると、無端ベルト18が回動することで、カッターキャリッジ10が支持レール16に沿って走査方向D2に移動する。
【0054】
実施形態1では、カッターキャリッジ81は、待機状態、即ち印刷装置1が印刷を行っていない状態では、
図3に示すホーム位置B1に位置する。用紙Pの切断時には、カッターキャリッジ81は、ホーム位置B1から走査方向D2に移動し、用紙Pが搬送される領域である搬送領域A2を通り、用紙Pの切断が完了する位置である切断完了位置B2で停止する。搬送領域A2は、印刷装置1が搬送することができる最大幅の用紙Pが搬送される領域である。切断完了位置B2は、搬送領域A2を挟んで、ホーム位置B1とは反対側である。移動刃82は、用紙Pを切断後、切断完了位置B2からホーム位置B1まで移動する。
【0055】
本実施形態において、移動刃82は、ホーム位置B1から切断完了位置B2までの範囲を移動可能である。即ち、ホーム位置B1から切断完了位置B2までの範囲は、移動刃82の可動範囲A1である。ホーム位置B1は、可動範囲A1の原点位置の一例である。また、本実施形態において、切断完了位置B2は可動範囲A1の終点位置である。なお、可動範囲A1の終点位置は、切断完了位置B2とは異なる位置であってもよい。
【0056】
[制御部の制御動作]
次に、実施形態1に係る印刷装置1によるカッター80の慣らし処理時の制御の流れについて、
図4のフローチャートを参照して説明する。また、適宜、
図5~
図7を参照して、移動刃82の動作等について説明する。
図4は、実施形態1に係る制御部7によるカッター80の慣らし処理の制御の流れを示すフローチャートである。
図5は、実施形態1に係る固定刃83に対する移動刃82の動作を説明する図である。
図6は、移動刃82の移動時における特性情報について説明する図である。
図7は、移動刃を往復移動させた際の移動刃82の特性情報の変化の一例を示す図である。
【0057】
実施形態1に係る印刷装置1では、定期的に慣らし処理が実行される。なお、制御部7は、
図4に示す慣らし処理において、移動刃82の可動範囲A1において、搬送領域A2を少なくとも含む範囲を少なくとも1回以上往復するように移動刃82を移動させる。
図4に示す慣らし処理は、用紙Pが搬送されていない状態で実行される。
【0058】
先ず、制御部7は、カッターキャリッジモータ104を制御し、移動刃82を第1位置から第2位置に移動させる(S1)。本実施形態において、第1位置は、ホーム位置B1であり、第2位置は切断完了位置B2である。なお、第1位置は、ホーム位置B1に限られず、走査方向D2のホーム位置B1側において、搬送領域A2よりも外側に設定されていればよい。また、第2位置は、切断完了位置B2に限られず、走査方向D2の切断完了位置B2側において、搬送領域A2よりも外側に設定されていればよい。
【0059】
また、ステップS1において、制御部7は、通常の切断時の速度である第1速度にて移動刃82を移動させる。本実施形態において、第1速度は、印刷部3により印刷された用紙Pをカッター80により切断する切断処理時における移動刃82の移動速度である。なお、ステップS1において、制御部7は、第1速度とは異なる速度で移動刃82を移動させてもよい。
【0060】
図5の(A)に示すように、本実施形態において、移動刃82は、固定刃83の延設されている範囲内において移動する。即ち、移動刃82の可動範囲A1は、固定刃83の延設範囲内に収まっている。なお、可動範囲A1は、走査方向D2において、固定刃83が延設されている範囲よりも外側の範囲を含まれる構成であってもよい。即ち、移動刃82は、走査方向D2において、固定刃83の延設されている範囲よりも外側を移動可能である。
【0061】
図4に戻り、次に、制御部7は、移動刃82を移動させている際、移動刃82の移動特性の異常を特定するパラメータが、予め定められた閾値を超えているか否か判定する(S2)。移動刃82の移動特性とは、移動刃82の移動時における特性情報であり、移動刃82を走査方向に移動させた際に、移動刃82に生じる負荷を示す情報である。移動刃82に生じる負荷を示す情報は、例えば、カッターキャリッジモータ104の駆動の電圧値である。より詳細には、制御部7は、高電圧生成回路110に出力されたPWM信号PSのデューティ比に基づいて、カッターキャリッジモータ104に印加された電圧値を算出することにより、移動刃82に生じる負荷を示す情報を取得する。以下の説明において、移動刃82の移動時における特性情報を単に“移動特性”と称する。
【0062】
ここで、
図6を参照して、移動特性について例示する。
図6の(A)及び(B)には、それぞれ上側に固定刃83に対する移動刃82の動作が示され、下側に移動特性を示すグラフが示されている。なお、移動特性を示すグラフでは、縦軸がカッターキャリッジモータ104に印加される電圧値Vを示し、横軸が移動刃82の可動範囲A1におけるホーム位置B1からの距離Lが示されている。距離Lは、可動範囲A1内における移動刃82の位置を示す。
【0063】
図6の(A)には、固定刃83に錆等の異物Mが付着している場合に想定される移動特性が例示されている。固定刃83の異物Mと移動刃82とが当接すると、移動刃82に対して負荷が生じる。そのため、
図6の(A)に示すように、移動刃82を可動範囲A1の全域を移動させた場合、固定刃83の異物Mが付着する位置に対応して電圧値Vが上昇する。
【0064】
また、
図6の(B)には、移動刃82に錆等の異物Mが付着している場合に想定される移動特性が例示されている。移動刃82の異物Mと固定刃83とが当接すると、移動刃82に対して負荷が生じる。そのため、
図6の(B)に示すように、移動刃82を可動範囲A1の全域を移動させた場合、移動刃82に異物Mが付着する位置に対応して周期的に電圧値Vが上昇する。
【0065】
図4に戻り、移動特性の異常を特定するパラメータが予め定められた閾値以下である場合(S5:NO)、制御部7は、第1速度にて切断完了位置B2からホーム位置B1へ移動刃82を移動させる(S3)。次に制御部7は、ホーム位置B1と切断完了位置B2との間を所定回数往復したか否かを判定する(S4)。所定回数往復していなければ(S4:NO)、制御部7はステップS1を実行する。所定回数往復していれば(S4:YES)、制御部7は、
図4に示すフローチャートを終了する。
【0066】
移動特性の異常を特定するパラメータが予め定められた閾値を超えている場合(S5:YES)、制御部7は、移動刃82の移動を停止する(S5)。次に、制御部7は、移動特性の異常を特定するパラメータが閾値を超えた位置に基づいて、第3位置及び第4位置を算出する(S6)。第3位置は、ステップS5にて移動刃82を停止させた位置よりもホーム位置B1側の位置である。第4位置は、ステップS5にて移動刃82を停止させた位置よりも切断完了位置B2側の位置である。
【0067】
ステップS6の後、制御部7は、停止していた移動刃82を第3位置まで移動させる(S7)。ステップS6において、制御部7は、第1速度よりも遅い速度である第2速度にて移動刃82を移動させる。ステップS7の後、制御部7は、第2速度にて移動刃82を第4位置まで移動させる(S8)。
【0068】
ここで、ステップS5~S8の処理の詳細について、
図5を参照して説明する。
図5の(B)に示すように、移動刃82の可動範囲A1は複数の第1区間S1~第4区間S4に予め分けられている。また、各区間S1~S4は、走査方向において、ラップしている区間がある。なお、各区間S1~S4は、均等の間隔で分けられた区間であってもよいし、異なる間隔で分けられた区間であってもよい。また、各区間S1~S4は、走査方向において、ラップしている区間が無くてもよい。
【0069】
本実施形態において。制御部7は、ステップS6において、移動特性のパラメータが閾値を超えた位置が複数の第1区間S1~第4区間S4の内のどの区間に含まれるかを判定し、閾値を超えた位置が含まれる区間に基づいて第3位置及び第4位置が算出される。たとえば、移動特性のパラメータが閾値を超えた位置が第2区間に含まれる場合、制御部7は、第2区間の開始位置、即ち最もホーム位置B1側の位置を第3位置B3として算出する。また、制御部7は、第2区間の終了位置、即ち最も切断完了位置B2側の位置を第4位置B4として算出する。なお、ステップS6において、第3位置B3及び第4位置B4は、移動特性のパラメータが閾値を超えた位置に対して予め定められた間隔となるように算出されてもよい。
【0070】
図4に戻り、次に、制御部7は、移動刃82の移動特性の異常を特定するパラメータが、予め定められた閾値を超えているか否か判定する(S9)。移動特性の異常を特定するパラメータが予め定められた閾値以下である場合(S9:NO)、制御部7は移動刃82を第4位置から切断完了位置B2まで移動させる(S10)。次に、制御部7はステップS2を実行する。
【0071】
移動特性の異常を特定するパラメータが予め定められた閾値を超えている場合(S9:YES)、制御部7は第3位置と第4位置との間を所定回数往復したか否かを判定する(S11)。本実施形態において、ステップS11の所定回数は3回である。なお、所定回数は3回に限られるものではない。第3位置と第4位置との間を所定回数往復していない場合(S11:NO)、制御部7はステップS7を実行する。第3位置と第4位置との間を所定回数往復した場合(S11:YES)、制御部7は、操作パネル108のディスプレイにエラーを表示する(S12)。ステップS12の後、
図4に示すフローチャートを終了する。
【0072】
移動特性のパラメータが閾値を超えている場合の移動刃82の動作について、
図7を参照して詳細に説明する。
図7(A)~(B)には、それぞれ右側に固定刃83に対する移動刃82の動作が示され、左側に移動特性を示すグラフが示されている。
図7では、可動範囲A1の第2区間S2内に固定刃83の異物Mが付着している場合が示されている。この場合、第2区間の開始位置が第3位置B3に、第2区間の終了位置が第4位置B4に設定される。移動特性のパラメータが閾値V1を超えている場合、第3位置と第4位置との間を、所定回数を限度に、移動刃82を往復移動させることで、移動刃82に対する負荷の除去を試みる。即ち、固定刃83に付着している異物Mの除去を試みる。
【0073】
例えば、
図7の(A)に示す例のように、第3位置と第4位置との間で1回目の往復移動を行うことにより、固定刃83に付着する異物Mの除去を試みる。1回目の往復移動における移動特性のパラメータが閾値V1を超える場合、
図7の(B)に示す例のように、移動刃82は、2回目の往復移動を行う。
図7の(B)に示す例のように、2回目の往復移動を行うことにより、移動特性のパラメータが閾値V1に近い値、即ち固定刃83の異物Mの除去が徐々に行われている。2回目の往復移動における移動特性のパラメータが閾値V1を超える場合、
図7の(C)に示す例のように、移動刃82は、3回目の往復移動を行う。
図7の(C)に示す例のように、移動刃82は、3回目の往復移動を行う。3回目の往復移動により、移動特性のパラメータは閾値V1以下となり、移動刃82は第4位置から第2位置へ移動する。なお、いずれの往復移動においても、移動特性のパラメータが閾値V1を超える場合、エラーがディスプレイに表示される。
【0074】
なお、実施形態1では、制御部7は第3位置を算出する構成としたが、これに限られるものではない。制御部7は、第4位置のみを算出する構成としてもよい。即ち、制御部7は、第1位置と第4位置との間にて移動刃82を往復移動させる構成としてもよい。
【0075】
実施形態1に係る慣らし処理の構成によれば、用紙Pを切断する切断処理を実行していない状態であっても、カッター80の移動刃82は、移動刃82が移動可能な可動範囲A1において、用紙Pが搬送される領域である搬送領域A2を少なくとも含む範囲に渡って少なくとも1回以上往復する。そのため、カッター80の未使用状態により移動刃82又は固定刃83に錆などの異物が付着することを防止することができる。これにより、カッター80により安定した品質での切断を提供することができる。
【0076】
また、実施形態1において、定期的に慣らし処理が実行されるため、カッター80の未使用状態が続くのを防止することができる。これにより、カッター80により安定した品質での切断を提供することができる。
【0077】
また、実施形態1の慣らし処理において、切断時における移動刃82の移動速度よりも遅い移動速度で移動刃82を移動させる。そのため、移動刃82又は固定刃83に付着した錆等の異物に対して移動刃82又は固定刃83が当接したとしても、移動刃82又は固定刃83に対する衝撃を少なくすることができる。これにより、カッター80の故障を防止することができる。
【0078】
また、実施形態1の慣らし処理において、移動刃82の移動特性に異常があると判定された場合、遅い速度(第2速度)で移動刃82を移動させる。そのため、移動刃82の移動特性に異常がある状態で、第2速度で移動刃82を移動させ、移動特性の異常の解除を試みることができる。これにより、カッター80が故障してしまうことを防止しつつ、カッター80の慣らし動作を実行することができる。
【0079】
また、実施形態1の慣らし処理は、用紙Pが搬送されない状態で実行される。これにより、用紙Pを不要に消費してしまうことを防止することができる。
【0080】
また、実施形態1の慣らし処理において、移動刃82の移動特性の異常を特定するパラメータが予め定められた閾値V1以上である場合、制御部7は移動刃82を停止させる。そのため、移動刃82の移動特性に異常がある場合であっても、移動刃82は無理に移動させられることがない。これにより、カッター80の故障を防止することができる。
【0081】
〔その他の実施形態〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0082】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、
図8および
図9を参照して以下に説明する。
図8は、実施形態2に係る制御部7によるカッター80の慣らし処理の制御の流れを示すフローチャートである。
図9は、実施形態2に係る慣らし処理における用紙Pの切断位置を説明する図である。上述した実施形態1では、慣らし処理は、定期的に実行される処理としたが、このような構成に限られるものではない。制御部7は、ユーザからの操作パネル108の入力に基づいて本開示の慣らし処理を実行する構成としてもよい。実施形態2においては、ユーザからの入力に基づいて、慣らし処理が実行される。
【0083】
また、上述した実施形態1では、用紙Pが搬送されていない状態で慣らし処理を実行したが、このような構成に限られるものではない。本開示の慣らし処理は、用紙Pを搬送した状態で実行する構成としてもよい。即ち、実施形態2においては、用紙Pを切断しながら慣らし処理が実行される。
【0084】
ユーザの操作により、操作パネル108から用紙Pを切断しながら慣らし処理を実行する入力が行われると、先ず、制御部7は、
図8に示すように、給紙トレイ21に収容されている用紙Pを搬送路R1に給紙する(S21)。次に、制御部7は、カッター80の切断位置Xに用紙Pの第1切断位置CL1(
図9参照)が位置するまで用紙Pを搬送する(S22)。
【0085】
ステップS22の後、制御部7は、用紙Pの第1切断位置CL1がカッター80の切断位置Xに到達した状態で、カッター80の移動刃82を第1位置から第2位置に移動させる(S23)。ステップS23により、用紙Pは、第1切断位置CL1にて切断される。ステップS23の後、制御部7は、移動刃82を第2位置から第1位置へ移動させる(S24)。
【0086】
次に、制御部7は、用紙Pを所定回数切断したか否かを判定する(S25)。所定回数切断していない場合(S25:NO)、制御部7はカッター80の切断位置Xに用紙Pの次の切断位置が位置するまで用紙Pを搬送する(S26)。ステップS26の後、制御部7は、ステップS23を実行する。所定回数切断した場合(S25:YES)、制御部7は用紙Pを排紙トレイ22に排紙する(S27)。ステップS27の後、制御部7は、
図8に示すフローチャートを終了する。
【0087】
実施形態2に係る慣らし処理では、用紙Pを所定回数切断する。所定回数が3回である場合は、
図9に例示するように、用紙Pに対して第1切断位置CL1~第3切断位置CL3が設定される。制御部7は、用紙Pの搬送と、各切断位置CL1~CL3での切断を繰り返すことにより、慣らし処理を実行する。
【0088】
実施形態2に係る慣らし処理によれば、ユーザによる操作パネル108の入力に基づいて切断処理の前に本開示の慣らし処理が実行することができるため、切断処理時においてカッター80の未使用状態を解消することができる。これにより、カッター80により安定した品質での切断を提供することができる。
【0089】
実施形態2に係る慣らし処理によれば、用紙Pを切断しながら慣らし処理を実行することができる。そのため、用紙Pの切断時に移動刃82及び固定刃83に負荷がかかるため、移動刃82及び固定刃83に付着した錆などを除去することができる。これにより、カッター80による切断の品質が低下する虞を軽減することができる。
【0090】
〔実施形態3〕
本開示の実施形態3について、
図10を参照して以下に説明する。
図10は、実施形態3に係る固定刃83に対する移動刃82の動作を説明する図である。実施形態3に係る慣らし処理では、移動刃82の可動範囲A1において、移動刃82をホーム位置B1から切断完了位置B2に向かう方向である往路方向及び切断完了位置B2からホーム位置B1に向かう方向である復路方向に交互に移動させながら、切断完了位置B2に徐々に近づけるように移動刃82を移動させる。
【0091】
図10の(A)に示すように、制御部7は、ホーム位置B1に位置する移動刃82を、ホーム位置B1から所定の間隔である第1間隔分離れた位置である第5位置B5まで、移動させる。
図10の(B)に示すように、制御部7は、第5位置B5に位置する移動刃82を、第5位置B5から第1間隔よりも短い間隔である第2間隔分だけ離れた第6位置B6まで移動させる。次に、制御部7は、第6位置B6に位置する移動刃82を、第6位置B6から第1間隔分だけ離れた第7位置B7まで移動させる。
【0092】
ここで、ホーム位置B1から第5位置まで間隔と、第6位置B6から第7位置B7までの間隔とは同じ第1間隔である。また、ホーム位置B1から第5位置B5までの第1間隔よりも、第5位置から第6位置B6までの第2間隔の方が短い。即ち、実施形態3に係る慣らし処理は、移動刃82を第1間隔分だけ往路方向に移動させた後、第2間隔分だけ復路方向移動させることで、徐々に切断完了位置B2に近づけている。
【0093】
実施形態3に係る慣らし処理の構成によれば、用紙Pを切断する切断処理を実行していない状態であっても、カッター80の移動刃82は、固定刃83に対して摺動しながら、走査方向D2における往路方向及び復路方向に交互に移動する。そのため、慣らし処理によりカッター80の未使用状態を防止することができる。これにより、カッター80により安定した品質での切断を提供することができる。
【0094】
なお、実施形態3に係る慣らし処理は、実施形態1に係る慣らし処理と組み合わせてもよい。一例を挙げると、慣らし処理において、制御部7は、移動刃82をホーム位置B1と切断完了位置B2との間を1回往復移動させた後、実施形態3に係る慣らし処理を実行してもよい。より詳細には、移動刃82をホーム位置B1と切断完了位置B2との間を1回往復移動させた際に移動特性のパラメータが閾値を超えた場合、実施形態3に係る慣らし処理を実行してもよい。
【0095】
〔実施形態4〕
上述した実施形態1では、定期的に慣らし処理のみ実行する構成としたが、このような構成に限られるものではない。実施形態4において、制御部7は、印刷部3に対して実行される所定のメンテナンス動作と共に本開示の慣らし処理を実行してもよい。
【0096】
画像形成装置は、メンテナンス動作を実行するため、メンテナンスユニットを更に備えていてもよい。メンテナンスユニットは、ノズルが形成される記録ヘッド32のノズル面を封止するキャップと、記録ヘッド32のノズル内の液体(インク)を吸引する吸引ポンプとを有する。メンテナンスユニットは、制御部7により制御される。
【0097】
メンテナンス動作は、メンテナンスユニットにより記録ヘッド32のノズルの吐出状態を回復させるための動作であり、定期的に実行される。制御部7は、メンテナンスユニットの吸引ポンプを制御し、記録ヘッド32のノズルから残存するインクを強制的に吸引する。これにより、記録ヘッド32のノズルの吐出状態が回復される。制御部7は、このメンテナンス動作と共に上述した実施形態に係る慣らし処理を実行する。
【0098】
実施形態4に係る慣らし処理の構成によれば、定期的に実行される印刷部3のメンテナンス動作と共に慣らし処理が実行されるため、カッター80の未使用状態が続くのを防止することができる。これにより、カッター80により安定した品質での切断を提供することができる。
【0099】
〔実施形態5〕
上述した実施形態1では、慣らし処理は、定期的に実行される処理としたが、このような構成に限られるものではない。実施形態5において、制御部7は、印刷装置1の動作を初期化する初期化動作と共に本開示の慣らし処理を実行する構成としてもよい。初期化動作には、印刷部3の動作の初期化、各ローラ24,60,62,64の動作のガラ回し、カッター80の動作の初期化などが例示できる。
【0100】
実施形態5に係る慣らし処理の構成によれば、印刷装置1の初期化動作と共に本開示の慣らし処理が実行される。そのため、印刷装置1の使用時においてカッター80の未使用状態を解消することができる。これにより、カッター80により安定した品質での切断を提供することができる。
【0101】
〔実施形態6〕
上述した実施形態1では、慣らし処理は、定期的に実行される処理としたが、このような構成に限られるものではない。実施形態6において、制御部7は、印刷媒体に画像を印刷する印刷処理、及び画像が印刷された印刷媒体を切断する切断処理を実行する前に本開示の慣らし処理を実行する構成としてもよい。即ち、実施形態6において、制御部7は、受信した印刷ジョブに用紙Pを切断する切断処理が含まれる場合、給紙トレイ21から搬送路R1に用紙Pが搬送される前に本開示の慣らし処理を実行する。
【0102】
実施形態6に係る慣らし処理の構成によれば、搬送路R1において用紙Pが搬送される前に本開示の慣らし処理が実行される。そのため、切断処理時においてカッター80の未使用状態を解消することができる。これにより、カッター80により安定した品質での切断を提供することができる。
【0103】
(付記的事項)
上述した各実施形態では、用紙Pを2分の1に切断するものとしたが、これに限らず、例えば用紙Pを3分の1に切断してもよい。また、用紙Pの切断位置Xは、印刷データのサイズに応じて適宜変更可能である。
【0104】
上述した各実施形態では、ローラ部材である第1搬送ローラ60、第2搬送ローラ62、及び排出ローラ64を用いることにより、用紙Pを搬送するものとしたが、これに限らない。他にも、ベルト部材を用いてもよいし、ドラム部材を用いてもよい。
【0105】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1 印刷装置
3 印刷部
7 制御部
80 カッター
82 移動刃
83 固定刃