(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101438
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】遮音壁
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005416
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】594075765
【氏名又は名称】日本環境アメニティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 康
(72)【発明者】
【氏名】木山 雅和
(72)【発明者】
【氏名】白石 飛鳥
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2D001CA01
2D001CB01
2D001CB02
2D001PC01
2D001PE01
(57)【要約】
【課題】遮音板の取り付け作業を安全で安価にできるようにする。
【解決手段】鉄道高架線の縁辺に沿って所定間隔置きに立設された複数の支柱1と、各支柱1間に支持された遮音板4と、支柱1に遮音板4を固定する固定具5とを備え、支柱1は、H型鋼により形成されてその一対のフランジ2間に形成された溝部3を備え、遮音板4は、その左右の側縁部夫々が溝部3に挿入されて支持されている遮音壁であって、支柱1の一対のフランジ2の内の鉄道線路側に位置するものに、固定具5を取り付け、固定具5には、遮音板4の側縁部を一対のフランジ2の内の鉄道線路側とは反対側のものに弾性的に押し付ける圧接手段10を設け、遮音板4の左右両側において圧接手段10の遮音板接当部11を受け入れ自在な凹部12を設けてある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道高架線の縁辺に沿って所定間隔置きに立設された複数の支柱と、
各支柱間に支持された遮音板と、
前記支柱に前記遮音板を固定する固定具とを備え、
前記支柱は、H型鋼により形成されてその一対のフランジ間に形成された溝部を備え、
前記遮音板は、その左右の側縁部夫々が前記溝部に挿入されて支持されている遮音壁であって、
前記支柱の一対のフランジの内の鉄道線路側に位置するものに、前記固定具を取り付け、
前記固定具には、前記遮音板の側縁部を前記一対のフランジの内の鉄道線路側とは反対側のものに弾性的に押し付ける圧接手段を設け、
前記遮音板の左右両側において前記圧接手段の遮音板接当部を受け入れ自在な凹部を設けてある遮音壁。
【請求項2】
前記圧接手段に、前記遮音板に圧接する弾性力の調整機構を設けてある請求項1に記載の遮音壁。
【請求項3】
前記凹部を設けた前記遮音板の左右両側の肉厚内に、遮音板補強リブを前記支柱に沿って設けてある請求項1又は2に記載の遮音壁。
【請求項4】
前記支柱の一対のフランジの内の鉄道線路側に位置するものに、そのフランジ突出方向における前記固定具の取り付け域を拡張する板部材を取り付け、
前記板部材を介して前記固定具を前記フランジに固定してある請求項3に記載の遮音壁。
【請求項5】
前記遮音板の左右方向で、前記凹部の幅を、前記板部材の突出端縁部よりもその突出方向に大きく形成してあって、前記固定具を前記凹部と前記板部材との間に水平方向に挿入可能に構成してある請求項4に記載の遮音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道高架線の縁辺に沿って所定間隔置きに立設された複数の支柱と、各支柱間に支持された遮音板と、前記支柱に前記遮音板を固定する固定具とを備え、前記支柱は、H型鋼により形成されてその一対のフランジ間に形成された溝部を備え、前記遮音板は、その左右の側縁部夫々が前記溝部に挿入されて支持されている遮音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記遮音壁は、前記支柱の一対のフランジの内の鉄道線路側とは反対側に位置するものに、前記固定具を固定し、前記固定具には、前記遮音板の側縁部を前記一対のフランジの内の鉄道線路側に弾性的に押し付ける圧接手段を設けるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の遮音壁において、遮音板を固定具で固定するには、作業員が鉄道線路側とは反対側で、支柱のフランジに固定する作業をしなければならず、そのために特に鉄道線路が高架線であれば、作業足場を組んで作業しなければならず、その作業は危険で費用も高くつくという問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、遮音板の取り付け作業を安全で安価にできるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、鉄道高架線の縁辺に沿って所定間隔置きに立設された複数の支柱と、各支柱間に支持された遮音板と、前記支柱に前記遮音板を固定する固定具とを備え、前記支柱は、H型鋼により形成されてその一対のフランジ間に形成された溝部を備え、前記遮音板は、その左右の側縁部夫々が前記溝部に挿入されて支持されている遮音壁であって、前記支柱の一対のフランジの内の鉄道線路側に位置するものに、前記固定具を取り付け、前記固定具には、前記遮音板の側縁部を前記一対のフランジの内の鉄道線路側とは反対側のものに弾性的に押し付ける圧接手段を設け、前記遮音板の左右両側において前記圧接手段の遮音板接当部を受け入れ自在な凹部を設けたところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記支柱の一対のフランジの内の鉄道線路側に位置するものに、前記固定具を取り付け、前記固定具には、前記遮音板の側縁部を前記一対のフランジの内の鉄道線路側とは反対側のものに弾性的に押し付ける圧接手段を設けたところにより、施工作業員は、鉄道線路側から遮音板を支柱に固定でき、そのために、例え鉄道線路が高架線であっても作業のための作業足場を設ける必要もなく、安全でしかも経済的にも安価に施工できるようになった。
しかも、前記遮音板の左右両側において前記圧接手段の遮音板接当部を受け入れ自在な凹部を設けてあることにより、遮音板における凹部以外の本体部において遮音板の遮音性能を上げるべく備え付ける吸音材の厚みを多少増加させても、固定具により遮音板を支柱に固定することができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記圧接手段に、前記遮音板に圧接する弾性力の調整機構を設けたところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、調整機構により圧接手段の弾性力を調整できるように構成してあるために、鉄道線路上での車両の通過による振動に伴って遮音板が振動しても、固定具による遮音板の固定状態を常に維持できるように調整できる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記凹部を設けた前記遮音板の左右両側の肉厚内に、遮音板補強リブを前記支柱に沿って設けてある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、遮音板に凹部を設けてあっても、その凹部を設けた前記遮音板の左右両側の肉厚内に遮音板補強リブを前記支柱に沿って設けることにより、凹部を設けることに起因する遮音板その物の強度の低下を防止できる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記支柱の一対のフランジの内の鉄道線路側に位置するものに、そのフランジ突出方向における前記固定具の取り付け域を拡張する板部材を取り付け、前記板部材を介して前記固定具を前記フランジに固定したところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、例え、支柱におけるフランジの突出幅が小さくても、板部材により、フランジ突出方向における前記固定具の取り付け域を拡張して、遮音板の固定を、より安定的で確実にしやすくできる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記遮音板の左右方向で、前記凹部の幅を、前記板部材の突出端縁部よりもその突出方向に大きく形成してあって、前記固定具を前記凹部と前記板部材との間に水平方向に挿入可能に構成してある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、板部材を設けることにより、固定具の取り付け位置が遮音板における左右両端部から内側に多少変位しても、前記遮音板の左右方向で、前記凹部の幅を、前記板部材の突出端縁部よりもその突出方向に大きく形成してあることにより、固定具は、前記凹部と前記板部材との間に水平方向に挿入できて、支柱に対する遮音板の固定を確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】遮音壁6の設置状態を示す全体斜視図である。
【
図6】(a)は、
図4のB部分の正面図、(b)は、
図4のB部分の側面図、(c)は、
図4のB部分の背面図である。
【
図7】夫々遮音板の支柱に対する取り付け状態を示す横断面図で、(a)は、本実施形態を示し、(b)は、別実施形態を示し、(c)は更に別の実施形態を示す。
【
図8】遮音板の支柱に対する取り付け状態を示す横断面図で、固定具を取り付ける作用図である。
【
図9】(a)、(b)、(c)、(d)は、夫々別実施形態の遮音板の側面視形状である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0018】
図1~
図6に示すように、鉄道高架線の縁辺に沿って所定間隔置きに複数のH型鋼から形成された支柱1が立設され、その支柱1の一対のフランジ2間に形成された溝部3に、左右の側縁部夫々が挿入された状態で、複数の支柱1間に夫々支持された遮音板4を設け、支柱1に遮音板4を固定する固定具5を備えて遮音壁6を構成してある。
【0019】
前記遮音板4は、板金製で箱型に成形され、鉄道線路側に多数の孔を形成した高耐候メッキ鋼板のスチール板から成るパンチングメタル7を設けると共に、鉄道線路側とは反対側には、開口部のないスチール板やその他の金属板から成る背面板8を設けて、パンチングメタル7と背面板8との間に空隙部を設け、且つ、パンチングメタル7と背面板8との間の板厚内の空隙部に、通気性及び音透過性のある表皮材(図外)で覆われた吸音材9として、ポリエステルウール系の繊維材、グラスファイバーやロックウール等から成る繊維材や、それらを混合した繊維材等の中綿を内装して構成してある(
図2、
図3)。
【0020】
そして、支柱1の一対のフランジ2の内の鉄道線路側に位置するものに、固定具5を取り付け、固定具5には、遮音板4の側縁部を一対のフランジ2の内の鉄道線路側とは反対側のものに弾性的に押し付ける圧接手段10を設け、遮音板4の左右両側において圧接手段10の遮音板接当部11を受け入れ自在な凹部12を、夫々設けてある(
図2~
図5)。
【0021】
即ち、
図2には、前記支柱1の一対のフランジ2の内の鉄道線路側に位置するものに、そのフランジ突出方向における前記固定具5の取り付け域を拡張する板部材13を取り付け、板部材13を介して固定具5を前記フランジ2に固定してある。
固定具5は、板バネで形成され、
図2、
図8に示すように、フランジ2に取り付ける板部材13にボルト14で固定する取付部15と、圧接手段10として板バネのバネ弾性を利用して遮音板4を鉄道線路側とは反対側の民地側に圧接する遮音板接当部11を備え、ボルト14の締め込み調整によって板バネの弾性力を調整できる調整機構16を備えてある。
【0022】
前記凹部12を設けた遮音板4の左右両側の肉厚内に、板金製で縦断面形状を溝形に屈曲させた遮音板補強リブ17を、支柱1に沿って一体に設けてあり、これにより、凹部12を設けることに起因する遮音板4その物の強度の低下を防止でき、しかも、固定具5の遮音板接当部11の押し付け力に対する変形を防止できるように構成してある。
【0023】
また
図2、
図8に示すように、前記遮音板4の左右方向で、前記凹部12の幅を、前記板部材13の突出端縁部よりもその突出方向に大きく形成してあって、前記固定具5を前記凹部12と前記板部材13との間に水平方向に挿入可能に構成してあり、これにより、固定具5は、前記凹部12と前記板部材13との間に水平方向に挿入できて、支柱1に対する遮音板4の固定を確実にできる。
その上、上記凹部12の形成により、左右両側の凹部12間の部分で、吸音性能をより増大させる必要がある場合、吸音材9を内装する部分の厚みを大きくしても、遮音板4は、固定具5により支柱1に確実に固定できる。
【0024】
図2~
図6に示すように、背面板8は、遮音板4において背面部はもちろんのこと、上下部夫々の天井部及び底部にまたがって屈曲した板から成り、側面コーナーカバー材20と共に、正面部のパンチングメタル7を取り付けて全体として吸音材9を内蔵する箱形の構造体を形成してある。
【0025】
そして、
図4~
図6に示すように、遮音板4の左右夫々の側面には、上端部と下端部夫々に、背面板8と側面コーナーカバー材との間に形成させるスリットによって排水孔18が形成され、遮音板4の内部に侵入した雨水を外部に排水できるように構成してある。
前記排水孔18を上下夫々に設けたのは、遮音板4を支柱に取り付ける場合に、上下逆に取り付けても、いずれも排水機能が損なわれないようにしてある。
【0026】
背面板8には、
図2、
図3、
図6(c)~
図8に示すように、遮音板4を支柱1の溝部4内に取り付ける時にフランジ2に密接させるためのシール材19を貼り付けてあり、線路側の騒音が民地側に漏洩するのを防止してある。
【0027】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
なお、以下の他の実施形態において、上記実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
〈1〉 前記固定具5は、
図2、
図7(a)では、板部材13に取り付けたが、支柱1を形成するH型鋼によっては、その断面サイズが大きい物(例えば125H型よりも150H型や175H型等、溝部3の幅が大きい場合)においては、板部材13をフランジ2に取り付けずに、
図7(c)に示すように、直接フランジ2に固定具5を取り付けるようにしてあってもよいし、また、遮音板4の凹部12の深さを小さくできる場合でも、同様にフランジ2に固定具5を直接取り付けてもよい。ただしこの場合、遮音板補強リブ17を、固定具5の接当する位置に合わせて形成しておく必要性がある。また、
図7(b)のように、支柱1の左右のフランジ2の一方にのみ板部材13を取り付けてあってもよい。
〈2〉 前記板部材13のフランジ2に対する固定方法は、ボルトにより取り付ける以外に、溶接により取り付けてあってもよい。
〈3〉 固定具5の形状は、
図2、
図8のような板バネから成る形状以外に他の形状であってもよく、また、金属以外のゴム楔等を使用してもよい。
〈4〉 遮音板4の支柱1に対する固定方法は、全てバネ弾性のある固定具5を使用する以外に、遮音板4の左右両端側の一方は、落下防止のために支柱1にボルト等でリジッドに固定すると共に、他方は、前記固定具5を使用して支柱1に押し付ける摩擦固定をして、温度変化等に伴う遮音板4の伸縮に対応できるようにしてあってもよい。
〈5〉 遮音板4における鉄道線路側の表面板としては、前記パンチングメタル7に代えて、長孔と多数設けた多孔板や、メッシュ板、その他ガラリ(ルーバー)を設けた板であってもよく、つまり、吸音したい音を透過する板であればよい。
〈6〉 上記表面板の材質は、前記高耐候メッキ鋼板等のスチール板以外に、アルミニウム板やポリカーボネート、アクリル等の樹脂板及びセメント板であってもよい。
〈7〉 前記凹部12は、遮音板4左右両側に厚みの薄くなった段部を形成する以外に、固定具5が支柱1の溝部3内にさえ入ればよいために、遮音板4の左右端辺部夫々より内側の2箇所のみに凹入した部分を設け、その凹部12に固定具5を挿入できるようにしてあってもよい。つまり、凹部12以外の両端部を、遮音板4本体のほぼ中央部とほぼ同厚の板であってもよい。
〈8〉 前記遮音板4の側面視の形状は、
図6(b)の形状以外に、
図9(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、遮音板4を支柱1の溝部3内に上下に複数枚積み重ねた時に、夫々の上端面と下端面同士が互いに係合して安定するように構成してあってもよく、これらの係合により、上下積層した遮音板4同士の間に隙間がなくなり、遮音壁6としての遮音性能が向上する。
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 支柱
2 フランジ
3 溝部
4 遮音板
5 固定具
6 遮音壁
10 圧接手段
11 遮音板接当部
12 凹部
13 板部材
16 調整機構
17 遮音板補強リブ