(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101454
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ヒーターエレメント及び車室浄化システム
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20240722BHJP
B60H 3/06 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H05B3/14 A
B60H3/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005439
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 崇史
【テーマコード(参考)】
3K092
3L211
【Fターム(参考)】
3K092PP15
3K092QA08
3K092QB05
3K092QB21
3K092QB38
3K092VV31
3L211BA09
3L211DA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機能材の劣化やハニカム構造体の破損を抑制することが可能なヒーターエレメントを提供する。
【解決手段】隔壁14がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体10、第1端面12a及び第2端面12bに設けられた一対の電極20a,20b、及び一対の電極20a,20bの少なくとも一部に設けられた端子30を備えるヒーターエレメントである。一対の電極20a,20bの体積抵抗率[Ω・cm]をρ1、一対の電極20a,20bの厚さ[mm]をt1、隔壁14の体積抵抗率[Ω・cm]をρ2、隔壁14の厚さ[mm]をt2、端子30の体積抵抗率[Ω・cm]をρ3、端子30の厚さ[mm]をt3としたときに、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)が0.003以下であり、且つ(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02以上である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体、
前記第1端面及び前記第2端面に設けられた一対の電極、及び
前記一対の電極の少なくとも一部に設けられた端子
を備え、
前記一対の電極の体積抵抗率[Ω・cm]をρ1、前記一対の電極の厚さ[mm]をt1、前記隔壁の体積抵抗率[Ω・cm]をρ2、前記隔壁の厚さ[mm]をt2、前記端子の体積抵抗率[Ω・cm]をρ3、前記端子の厚さ[mm]をt3としたときに、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)が0.003以下であり、且つ(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02以上である、ヒーターエレメント。
【請求項2】
前記端子が前記一対の電極と接触する面の面積[mm2]をS1、前記ハニカム構造体の前記第1端面又は前記第2端面の面積をS2[mm2]としたときに、S1/S2が0.010以上である、請求項1に記載のヒーターエレメント。
【請求項3】
前記S1/S2が0.010~0.430である、請求項2に記載のヒーターエレメント。
【請求項4】
前記一対の電極と前記端子との間に中間材を更に備え、前記端子が前記中間材と接触する面の面積[mm2]をS3、前記中間材が前記一対の電極と接触する面の面積[mm2]をS4としたときに、S4/S3が0.50~2.00である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項5】
PTC特性を有する前記材料はチタン酸バリウムを主成分とし、鉛を実質的に含まない材料で構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項6】
PTC特性を有する前記材料の25℃における体積抵抗率が0.5~30Ω・cmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項7】
前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.300mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つセルピッチが1.0mm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項8】
前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.08~0.36mm、セル密度が2.54~140セル/cm2、前記セルの開口率が0.70以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項9】
前記隔壁の表面上に機能材含有層を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項10】
前記機能材含有層が水蒸気、二酸化炭素、及び揮発成分から選択される一種又は二種以上を吸着する機能を有する機能材を含有する、請求項9に記載のヒーターエレメント。
【請求項11】
前記機能材含有層が触媒を含有する、請求項9に記載のヒーターエレメント。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の少なくとも一つのヒーターエレメントと、
前記ヒーターエレメントに電圧を印加するための電源と、
車室と前記ヒーターエレメントの前記第1端面とを連通する流入配管と、
前記ヒーターエレメントの前記第2端面と前記車室とを連通する第1経路を有する流出配管と、
前記流入配管を介して前記車室からの空気を前記ヒーターエレメントの前記第1端面に流入させるための通風機と
を備える車室浄化システム。
【請求項13】
前記流出配管は、前記第1経路に加えて、前記ヒーターエレメントの前記第2端面と車外とを連通する第2経路を有しており、
前記流出配管は、前記流出配管を流通する空気の流れを前記第1経路と前記第2経路の間で切替え可能な切替えバルブを有しており、
前記電源からの印加電圧をオフとし、前記流出配管を流通する空気が前記第1経路を通るように前記切替えバルブを切替え、前記通風機をオンとする第1のモードと、
前記電源からの印加電圧をオンとし、前記流出配管を流通する空気が前記第2経路を通るように前記切替えバルブを切替え、前記通風機をオンとする第2のモードと、
の間で切替えを実行可能な制御部を備える、請求項12に記載の車室浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーターエレメント及び車室浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの各種車両において、車室環境の向上に対する要求が高まっている。具体的な要求としては、車室内のCO2を低減して運転者の眠気を抑制すること、車室内を調湿すること、及び車室内のにおい成分やアレルギー誘因成分などの有害な揮発成分を除去することなどが挙げられる。このような要求に有効な対策として換気が挙げられるが、換気は、冬場のヒーターエネルギーを大きくロスする要因となり、冬場のエネルギー効率の低下を招く。特に電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)では、そのエネルギーロスにより、航続距離が大幅に減少するという問題がある。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、特許文献1及び2には、車室の空気中の水蒸気及びCO2などの除去対象成分を吸着材などの機能材に捕捉した後、加熱によって除去対象成分を反応又は離脱させて車外に放出し、機能材を再生する車室浄化システムが開示されている。このような車室浄化システムでは、除去対象成分の捕捉性能を確保するために空気と機能材との接触ができるだけ多いこと、及び機能材の再生を促進するために機能材を所定の温度に加熱できることが求められる。再生は、例えば、機能材に吸着した物質を酸化反応により除去する方法、及び機能材に吸着した物質を脱離させて排出する方法などにより行われるが、何れにしても吸着物質に応じて機能材を適切な温度に加熱することが必要である。
【0004】
他方、特許文献3には、外周壁と、外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有する柱状ハニカム構造体を備え、隔壁がPTC特性を有しており、隔壁の平均厚さが0.13mm以下であり、第1端面及び第2端面における開口率が0.81以上であるヒーターエレメントが開示されている。このヒーターエレメントは、車室の暖房用途に用いられるものであるが、ハニカム構造を有することで加熱面積を大きくすることができるので、効率の良い加熱手段である。したがって、このようなヒーターエレメントを機能材の担体として使用すると、機能材の再生時間の短縮化に貢献できると考えられる。特に、このヒーターエレメントは、通電による加熱が可能であり且つPTC特性を有するため、機能材を容易に加熱できる一方で、過剰な発熱を抑制し、機能材の熱劣化を抑制することもできると考えられる。また、過剰な温度になってしまう恐れが回避されるので、初期抵抗を小さく設定して加熱速度を速めても安全を確保でき、短時間での昇温が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-104774号公報
【特許文献2】特開2020-111282号公報
【特許文献3】国際公開第2020/036067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載のヒーターエレメントは、通電による加熱の際に、電流に偏りが生じることがある。このような電流の偏りは、ヒーターエレメント内で不均一な温度分布をもたらす原因となる。そして、機能材を担持したヒーターエレメントにおいて、ヒーターエレメントの低温部では機能材の性能が十分に発揮されない。また、機能材の性能が十分に発揮させるために通電量を多くすると、ヒーターエレメントがPTC特性を有していても局所的な過剰発熱を十分に抑制できないため、機能材の劣化やヒーターエレメントを構成するハニカム構造体の破損が起こることがある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、機能材の性能を十分に発揮させるとともに、機能材の劣化やハニカム構造体の破損を抑制することが可能なヒーターエレメントを提供することを課題とする。
また、本発明は、そのようなヒーターエレメントを備えた車室浄化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、ハニカム構造体と、ハニカム構造体の両端面に設けられた一対の電極と、一対の電極の少なくとも一部に設けられた端子とを備えるヒーターエレメントにおいて、ハニカム構造体を構成する隔壁、一対の電極、及び端子の体積抵抗率及び厚さを、所定の関係を満たすように制御することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように例示される。
【0009】
(1) 外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体、
前記第1端面及び前記第2端面に設けられた一対の電極、及び
前記一対の電極の少なくとも一部に設けられた端子
を備え、
前記一対の電極の体積抵抗率[Ω・cm]をρ1、前記一対の電極の厚さ[mm]をt1、前記隔壁の体積抵抗率[Ω・cm]をρ2、前記隔壁の厚さ[mm]をt2、前記端子の体積抵抗率[Ω・cm]をρ3、前記端子の厚さ[mm]をt3としたときに、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)が0.003以下であり、且つ(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02以上である、ヒーターエレメント。
【0010】
(2) 前記端子が前記一対の電極と接触する面の面積[mm2]をS1、前記ハニカム構造体の前記第1端面又は前記第2端面の面積[mm2]をS2としたときに、S1/S2が0.010以上である、(1)に記載のヒーターエレメント。
【0011】
(3) 前記S1/S2が0.010~0.430である、(2)に記載のヒーターエレメント。
【0012】
(4) 前記一対の電極と前記端子との間に中間材を更に備え、前記端子が前記中間材と接触する面の面積[mm2]をS3、前記中間材が前記一対の電極と接触する面の面積[mm2]をS4としたときに、S4/S3が0.50~2.00である、(1)~(3)のいずれか1つに記載のヒーターエレメント。
【0013】
(5) PTC特性を有する前記材料はチタン酸バリウムを主成分とし、鉛を実質的に含まない材料で構成されている、(1)~(4)のいずれか1つに記載のヒーターエレメント。
【0014】
(6) PTC特性を有する前記材料の25℃における体積抵抗率が0.5~30Ω・cmである、(1)~(5)のいずれか1つに記載のヒーターエレメント。
【0015】
(7) 前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.300mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つセルピッチが1.0mm以上である、(1)~(6)のいずれか1つに記載のヒーターエレメント。
【0016】
(8) 前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.08~0.36mm、セル密度が2.54~140セル/cm2、前記セルの開口率が0.70以上である、(1)~(6)のいずれか1つに記載のヒーターエレメント。
【0017】
(9) 前記隔壁の表面上に機能材含有層を備える、(1)~(8)のいずれか1つに記載のヒーターエレメント。
【0018】
(10) 前記機能材含有層が水蒸気、二酸化炭素、及び揮発成分から選択される一種又は二種以上を吸着する機能を有する機能材を含有する、(9)に記載のヒーターエレメント。
【0019】
(11) 前記機能材含有層が触媒を含有する、(9)又は(10)に記載のヒーターエレメント。
【0020】
(12) (1)~(11)のいずれか1つに記載の少なくとも一つのヒーターエレメントと、
前記ヒーターエレメントに電圧を印加するための電源と、
車室と前記ヒーターエレメントの前記第1端面とを連通する流入配管と、
前記ヒーターエレメントの前記第2端面と前記車室とを連通する第1経路を有する流出配管と、
前記流入配管を介して前記車室からの空気を前記ヒーターエレメントの前記第1端面に流入させるための通風機と
を備える車室浄化システム。
【0021】
(13) 前記流出配管は、前記第1経路に加えて、前記ヒーターエレメントの前記第2端面と車外とを連通する第2経路を有しており、
前記流出配管は、前記流出配管を流通する空気の流れを前記第1経路と前記第2経路の間で切替え可能な切替えバルブを有しており、
前記電源からの印加電圧をオフとし、前記流出配管を流通する空気が前記第1経路を通るように前記切替えバルブを切替え、前記通風機をオンとする第1のモードと、
前記電源からの印加電圧をオンとし、前記流出配管を流通する空気が前記第2経路を通るように前記切替えバルブを切替え、前記通風機をオンとする第2のモードと、
の間で切替えを実行可能な制御部を備える、(12)に記載の車室浄化システム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、機能材の性能を十分に発揮させるとともに、機能材の劣化やハニカム構造体の破損を抑制することが可能なヒーターエレメントを提供することができる。
また、本発明によれば、そのようなヒーターエレメントを備えた車室浄化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本発明の実施形態に係るヒーターエレメントのセル(流路)の延びる方向に平行な断面の模式図である。
【
図2A】本発明の別の実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に直交する断面の模式図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係るヒーターエレメントのセル(流路)の延びる方向に平行な断面の模式図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に直交する断面の模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車室浄化システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、外周壁と、外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも隔壁がPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する材料で構成されたハニカム構造体、第1端面及び第2端面に設けられた一対の電極、及び一対の電極の少なくとも一部に設けられた端子を備え、一対の電極の体積抵抗率[Ω・cm]をρ1、一対の電極の厚さ[mm]をt1、隔壁の体積抵抗率[Ω・cm]をρ2、隔壁の厚さ[mm]をt2、端子の体積抵抗率[Ω・cm]をρ3、端子の厚さ[mm]をt3としたときに、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)が0.003以下であり、且つ(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02以上である。このような構成とすることより、ヒーターエレメントを通電加熱する際に電流の偏りを抑制することができるため、ヒーターエレメント内の温度分布を均一にすることができる。そのため、ヒーターエレメント内を均一に通電加熱し、機能材の性能を十分に発揮させることができる。また、ヒーターエレメントの局所的な過剰発熱も起こり難いため、機能材の劣化やハニカム構造体の破損も抑制することができる。
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0026】
(1.ヒーターエレメント)
本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、自動車などの各種車両における車室浄化システムに用いられるヒーターエレメントとして好適に利用可能である。車両としては、特に限定されないが、自動車及び電車が挙げられる。自動車としては、特に限定されないが、ガソリン車、ディーゼル車、CNG(圧縮天然ガス)やLNG(液化天然ガス)などを用いるガス燃料車、燃料電池自動車、電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車が挙げられる。本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、特に電気自動車及び電車のような内燃機関を持たない車両に好適に利用可能である。
【0027】
図1Aは、本発明の実施形態に係るヒーターエレメントのセル(流路)の延びる方向に平行な断面の模式図である。また、
図1Bは
図1Aのa-a’線の断面の模式図であり、
図1Cは
図1Aのb-b’線の断面の模式図である。
図1A~1Cに示されるように、ヒーターエレメント1は、外周壁11と、外周壁11の内側に配設され、第1端面12aから第2端面12bまで延びる流路となる複数のセル13を区画形成する隔壁14とを有するハニカム構造体10と、第1端面12a及び第2端面12bに設けられた一対の電極20a,20bと、一対の電極20a,20bの少なくとも一部に設けられた端子30とを備える。
【0028】
ヒーターエレメント1は、機能材含有層を形成するための支持体(担体)として用いることができる。ヒーターエレメントに機能材含有層を形成した状態のセル(流路)の延びる方向に平行な断面の模式図を
図2A、
図2Aのa-a’線の断面の模式図を
図2B、
図2Aのb-b’線の断面の模式図を
図2Cにそれぞれ示す。
図2A~2Cは、機能材含有層が形成されていること以外は、
図1A~1Cと同じ構成である。
図2A~2Cに示されるように、ヒーターエレメント1は、隔壁14の表面上に設けられた機能材含有層40を備える。
【0029】
ヒーターエレメント1において、一対の電極20a,20bの体積抵抗率[Ω・cm]をρ1、一対の電極20a,20bの厚さ[mm]をt1、隔壁14の体積抵抗率[Ω・cm]をρ2、隔壁14の厚さ[mm]をt2、端子30の体積抵抗率[Ω・cm]をρ3、端子30の厚さ[mm]をt3とする。
この場合、ヒーターエレメント1は、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)が0.003以下である。このような範囲に(ρ1/t1)/(ρ2/t2)の値を制御することにより、一対の電極20a,20bの電気抵抗が、ヒーターエレメントの基材(隔壁14)の電気抵抗よりも十分に低くなる。その結果、一対の電極20a,20bから隔壁14へ電流が均一に広がり易くなるため、電流の偏りが抑制され、ヒーターエレメント1内の温度分布を均一にすることができる。この効果を安定して確保する観点から、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)は、0.001以下が好ましく、0.0001以下がより好ましい。なお、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)の値は小さいほど上記の効果が得られ易いため、その下限値は特に限定されないが、例えば、0.0000001である。
【0030】
また、ヒーターエレメント1は、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02以上である。このような範囲に(ρ1/t1)/(ρ3/t3)の値を制御することにより、端子30からの電流が一対の電極20a,20bに均一に広がり易くなる。その結果、一対の電極20a,20bから隔壁14へも電流が均一に広がり易くなるため、電流の偏りが抑制され、ヒーターエレメント1内の温度分布を均一にすることができる。なお、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02未満であると、端子内で電流を広げる前に一対の電極20a,20bの一部に電流が流れるため、電流の偏りが生じてしまう。上記の効果を安定して確保する観点から、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)は、1以上が好ましく、10以上がより好ましい。なお、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)の値は大きいほど上記の効果が得られ易いため、その上限値は特に限定されないが、例えば、5000である。
【0031】
ここで、本明細書において一対の電極20a,20bの厚さは、全ての電極20a,20bの厚さの平均値を指す。また、隔壁14の厚さとは、流路方向に直交する断面において、隣接するセル13の重心同士を線分で結んだときに当該線分が隔壁14を横切る長さを指す。隔壁14の厚さは、全ての隔壁14の厚さの平均値を指す。さらに、端子30の厚さは、全ての端子30の厚さの平均値を指す。
一対の電極20a,20b及び端子30の厚さは、流路方向に平行な断面において測定することができる。或いは、一対の電極20a,20b及び端子30に用いた材料の厚さを、一対の電極20a,20b及び端子30の厚さとしてもよい。また、隔壁14の厚さは、流路方向に直交する断面において測定することができる。
【0032】
一対の電極20a,20b、隔壁14及び端子30の体積抵抗率は、25℃における体積抵抗率を指す。25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0033】
ヒーターエレメント1において、端子30が一対の電極20a,20bと接触する面の面積[mm2]をS1、ハニカム構造体10の第1端面12a又は第2端面12bの面積[mm2]をS2とする。
この場合、ヒーターエレメント1は、S1/S2が0.010以上であることが好ましい。このような範囲にS1/S2の値を制御することにより、端子30からハニカム構造体10に電流が流れる領域の面積(通電面積)を大きくすることができるため、電流の偏りが抑制され、ヒーターエレメント1内の温度分布を均一にし易くなる。この効果を安定して確保する観点から、S1/S2は、0.050以上がより好ましく、0.150以上が更に好ましい。他方、S1/S2が大きいと、空気が流れる領域(セル13)の面積が小さくなる。そのため、S1/S2は0.430以下が好ましく、0.300以下がより好ましく、0.250以下が更に好ましい。
【0034】
ここで、本明細書において、ハニカム構造体10の第1端面12a又は第2端面12bの面積とは、外周壁11、セル13及び隔壁14から構成される第1端面12a又は第2端面12bの面積のことを指す。
【0035】
本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、必要に応じて、一対の電極20a,20bと端子30との間に中間材を更に備えることができる。このような実施形態に係るヒーターエレメントのセル(流路)の延びる方向に平行な断面の模式図を
図3に示す。
図3に示されるように、ヒーターエレメント2は、一対の電極20a,20bと端子30との間に中間材50を更に備える。
ヒーターエレメント2において、端子30が中間材50と接触する面の面積[mm
2]をS3、中間材50が一対の電極20a,20bと接触する面の面積[mm
2]をS4とする。
この場合、ヒーターエレメント2は、S4/S3が0.50~2.00であることが好ましい。このような範囲にS4/S3の値を制御することにより、一対の電極20a,20bと端子30との間の電流の流れをスムーズにすることができるため、電流の偏りが抑制され、ヒーターエレメント2内の温度分布を均一にし易くなる。S4/S3が2.00よりも大きくなると、上記の効果(電力の偏りによる局所発熱の抑制効果)は得られる一方で、中間材50によって空気の流れが阻害されてしまうため、機能材と空気との接触面積が低下し、機能材の性能が十分に得られ難い。また、S4/S3が0.50未満であると、上記の効果(電力の偏りによる局所発熱の抑制効果)が得られ難い。上記の効果を安定して確保する観点から、S4/S3は、0.50~1.20がより好ましく、0.80~1.20が更に好ましい。
以下、ヒーターエレメント1,2の各構成部材について詳細に説明する。
【0036】
(1-1.ハニカム構造体)
ハニカム構造体10の形状は、特に限定されない。例えば、ハニカム構造体10の流路方向(セル13が延びる方向)に直交する断面の外形を、四角形(長方形、正方形)、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形、円形、オーバル形状(卵形、楕円形、長円形、角丸長方形など)などにすることができる。なお、端面(第1端面12a及び第2端面12b)は、当該断面と同一の形状である。また、断面及び端面が多角形の場合、角部を面取りしてもよい。
【0037】
セル13の形状は、特に限定されないが、ハニカム構造体10の流路方向に直交する断面において、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形、円形、オーバル形状にすることができる。これらの形状は、単一であってもよいし、又は二種以上を組み合わせてもよい。また、これらの形状の中でも四角形又は六角形が好ましい。このような形状のセル13を設けることにより、空気が流通する際の圧力損失を小さくすることができる。なお、
図1A~1C及び
図2A~2Cでは、流路方向に直交する断面において、断面の外形及びセル13の形状が四角形であるハニカム構造体10を一例として示している。
【0038】
ハニカム構造体10は、複数のハニカムセグメントと、複数のハニカムセグメントの外周側面同士間を接合する接合層とを有するハニカム接合体であってもよい。ハニカム接合体を用いることにより、クラックの発生を抑えながら空気の流量確保に重要なセル13の総断面積を増やすことが可能となる。
なお、接合層は、接合材を用いて形成することができる。接合材としては、特に限定されないが、セラミックス材料に、水などの溶媒を加えてペースト状にしたものを用いることができる。接合材は、PTC特性を有する材料を含有してもよく、外周壁11及び隔壁14と同一の材料を含有してもよい。接合材は、ハニカムセグメント同士を接合する役割に加えて、ハニカムセグメントを接合した後の外周コート材として用いることも可能である。
【0039】
ハニカム構造体10の強度確保、空気がセル13を通過する際の圧力損失の低減、機能材の担持量確保、及び、セル13内を流れる空気との接触面積の確保等の観点から、隔壁14の厚さ、セル密度、及びセルピッチ(又はセルの開口率)を好適に組み合わせることが望ましい。
本明細書においてセル密度とは、ハニカム構造体10の一方の端面(第1端面12a又は第2端面12b)の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)でセル数を除して得られる値である。
本明細書においてセルピッチとは、以下の計算によって求められる値を指す。まず、セル数で、ハニカム構造体10の一方の端面(第1端面12a又は第2端面12b)の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)を除して1セル当たりの面積を算出する。次いで、1セル当たりの面積の平方根を算出し、これをセルピッチとする。
本明細書においてセル13の開口率とは、ハニカム構造体10の流路方向に直交する断面において、隔壁14によって区画されるセル13の合計面積を、一方の端面(第1端面12a又は第2端面12b)の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)で除して得られた値である。なお、セル13の開口率を算出するに当たり、一対の電極20a,20b及び機能材含有層40は考慮しない。
【0040】
十分な量の機能材を担持する観点で有利な実施形態においては、隔壁14の厚さが0.300mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つセルピッチが1.0mm以上である。好ましい実施形態においては、隔壁14の厚さが0.200mm以下、セル密度が70セル/cm2以下、且つセルピッチが1.2mm以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.130mm以下、セル密度が65セル/cm2以下、且つ、セルピッチが1.3mm以上である。
【0041】
上記の各実施形態において、ハニカム構造体10の強度を確保すること、及び電気抵抗を低く保つ観点から、隔壁14の厚さの下限は、0.010mm以上であることが好ましく、0.020mm以上であることがより好ましく、0.030mm以上であることが更に好ましい。
上記の各実施形態において、ハニカム構造体10の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、離脱を促進する観点から、セル密度の下限は、30セル/cm2以上であることが好ましく、35セル/cm2以上であることがより好ましく、40セル/cm2以上であることが更に好ましい。
上記の各実施形態において、ハニカム構造体10の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、離脱を促進する観点から、セルピッチの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることが更に好ましい。
【0042】
圧力損失の低減と強度の維持とを両立する観点で有利な実施形態においては、隔壁14の厚さが0.08~0.36mm、セル密度が2.54~140セル/cm2、セル13の開口率が0.70以上である。好ましい実施形態においては、隔壁14の厚さが0.09~0.35mm、セル密度が15~100セル/cm2、セル13の開口率が0.80以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁14の厚さが0.14~0.30mm、セル密度が20~90セル/cm2、セル13の開口率が0.85以上である。
【0043】
上記の各実施形態において、ハニカム構造体10の強度を確保する観点から、セル13の開口率の上限は、0.94以下であることが好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
【0044】
外周壁11の厚さは、特に限定されないが、次の観点に基づいて決定することが好ましい。まず、ハニカム構造体10を補強するという観点から、外周壁11の厚さは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.08mm以上である。一方、電気抵抗を大きくして初期電流を抑える観点、及び空気が流通する際の圧力損失を低減する観点から、外周壁11の厚さは、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以下、更により好ましくは0.3mm以下である。
本明細書において外周壁11の厚さとは、流路方向に直交する断面において、外周壁11と最も外周側のセル13又は隔壁14との境界からハニカム構造体10の側面までの、当該側面の法線方向の長さを指す。
【0045】
ハニカム構造体10の流路方向の長さ及び流路方向に直交する断面積は、要求されるヒーターエレメント1,2のサイズに合わせて調整すればよく、特に限定されない。例えば、所定の機能を確保しつつコンパクトなヒーターエレメント1,2に用いられる場合、ハニカム構造体10は、流路方向の長さを2~20mm、流路方向に直交する断面積を10cm2以上とすることができる。なお、流路方向に直交する断面積の上限値は、特に限定されないが、例えば、300cm2である。
【0046】
ハニカム構造体10を構成する隔壁14は、通電によって発熱可能な材料で構成されており、具体的にはPTC特性を有する材料で構成される。必要に応じて外周壁11も隔壁14と同様にPTC特性を有する材料で構成されていてもよい。このような構成とすることにより、発熱する隔壁14(及び必要に応じて外周壁11)からの伝熱によって機能材含有層40を加熱することが可能である。また、PTC特性を有する材料は、温度が上昇してキュリー点を超えると、急激に抵抗値が上昇して電気が流れ難くなるという特性を有する。そのため、隔壁14(及び必要に応じて外周壁11)は、ヒーターエレメント1,2が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、ヒーターエレメント1,2の過剰な発熱が抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する機能材含有層40の熱劣化を抑制することも可能である。
【0047】
PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の下限は、適度な発熱を得る観点からは、0.5Ω・cm以上であることが好ましく、1Ω・cm以上であることがより好ましく、5Ω・cm以上であることが更に好ましい。PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の上限は、低い駆動電圧で発熱させるという観点からは、30Ω・cm以下であることが好ましく、18Ω・cm以下であることがより好ましく、16Ω・cm以下であることが更に好ましい。本明細書において、PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0048】
通電発熱可能であり、且つPTC特性を有するという観点から、外周壁11及び隔壁14は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とする材料から構成されていることが好ましい。また、この材料は、Baの一部が希土類元素で置換されたチタン酸バリウム(BaTiO3)系結晶粒子を主成分とする材料で構成されるセラミックスであることがより好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、成分全体に占める割合が50質量%を超える成分のことを意味する。BaTiO3系結晶粒子の含有量は、蛍光X線分析により求めることができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0049】
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子の組成式は、(Ba1-xAx)TiO3で表すことができる。組成式中、Aは一種以上の希土類元素を表し、0.0001≦x≦0.010である。
Aは、希土類元素であれば特に限定されないが、好ましくはLa、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Y及びYbからなる群から選択される一種以上であり、より好ましくはLaである。xは、室温における電気抵抗が高くなり過ぎることを抑制する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.0015以上である。一方、xは、焼結不足となって室温における電気抵抗が高くなりすぎることを抑制する観点から、好ましくは0.009以下である。
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子のセラミックスにおける含有量は、主成分となる量であれば特に限定されないが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、更に好ましくは94質量%以上である。なお、BaTiO3系結晶粒子の含有量の上限値は、特に限定されないが、一般的に99質量%、好ましくは98質量%である。
このBaTiO3系結晶粒子の含有量は、蛍光X線分析によって測定することができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0050】
外周壁11及び隔壁14に用いられる材料は、環境負荷を軽減するという観点から、鉛(Pb)を実質的に含まないことが望ましい。具体的には、外周壁11及び隔壁14は、Pb含有量が、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%である。Pb含有量が少ないことにより、例えば、発熱中の隔壁14に接触させることで加温された空気をヒトなどの生物に安全に当てることができる。なお、外周壁11及び隔壁14において、Pb含有量は、PbOに換算すると、好ましくは0.03質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、更に好ましくは0質量%である。鉛の含有量は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)により求めることができる。
【0051】
外周壁11及び隔壁14を構成する材料のキュリー点の下限は、空気を効率良く加熱する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは125℃以上である。また、キュリー点の上限については、車室又は車室近傍に置かれる部品としての安全性の観点から、好ましくは250℃以下であり、より好ましくは225℃以下であり、更に好ましくは200℃以下であり、更により好ましくは150℃以下である。
【0052】
外周壁11及び隔壁14を構成する材料のキュリー点は、シフターの種類及び添加量によって調整可能である。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)のキュリー点は約120℃であるが、Ba及びTiの一部をSr、Sn及びZrの一種以上で置換することにより、キュリー点を低温側にシフトさせることができる。
【0053】
本明細書において、キュリー点は以下の方法により測定される。試料を測定用の試料ホルダーに取りつけ、測定槽(例:MINI-SUBZERO MC-810P エスペック株式会社製)内に装着して、10℃から昇温したときの温度変化に対する試料の電気抵抗の変化を、直流抵抗計(例:マルチメーター3478A YOKOGAWA HEWLETT PACKARD,LTD製)を用いて測定する。測定により得られた電気抵抗-温度プロットにより、抵抗値が室温(20℃)における抵抗値の2倍になるときの温度をキュリー点とする。
【0054】
(1-2.一対の電極)
一対の電極20a,20bは、第1端面12a及び第2端面12bに設けられる。
一対の電極20a,20bの間に電圧を印加することで、ジュール熱によりハニカム構造体10を発熱させることが可能となる。
【0055】
一対の電極20a,20bとしては、特に限定されないが、例えば、Cu、Ag、Al、Ni及びSiから選択される少なくとも一種を含有する金属又は合金を使用することができる。また、PTC特性を有する外周壁11及び/又は隔壁14とオーミック接触が可能なオーミック電極を使用することもできる。オーミック電極は、例えば、ベース金属としてAl、Au、Ag及びInから選択される少なくとも一種を含有し、ドーパントとしてn型半導体用のNi、Si、Zn、Ge、Sn、Se及びTeから選択される少なくとも一種を含有するオーミック電極を使用することができる。また、一対の電極20a,20bは、1層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。一対の電極20a,20bが2層以上の積層構造を有する場合、各層の材質は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0056】
一対の電極20a,20bの厚さは、一対の電極20a,20bの形成方法に応じて適宜設定することができる。一対の電極20a,20bの形成方法としては、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法が挙げられる。また、電極ペーストを塗布した後、焼き付ける方法や、溶射によっても一対の電極20a,20bを形成することもできる。さらに、金属板又は合金板を接合することによって一対の電極20a,20bとしてもよい。
【0057】
一対の電極20a,20bの厚さは、例えば、電極ペーストの焼付けでは5~30μm程度、スパッタリング及び蒸着のような乾式めっきでは100~1000nm程度、溶射では10~100μm程度、電解析出及び化学析出のような湿式めっきでは5~30μm程度とすることが好ましい。また、金属板又は合金板の接合では、それらの厚さを5~100μm程度とすることが好ましい。
【0058】
(1-3.端子)
端子30は、一対の電極20a,20bの少なくとも一部に設けられる。端子30を設けることにより、外部電源との接続が容易になる。端子30は、外部電源に接続された導線に接続される。
【0059】
端子30の材質としては、特に限定されないが、例えば、金属とすることができる。金属としては、単体金属及び合金などを採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Al及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金、リン青銅がより好ましい。
【0060】
端子30の大きさ及び形状は、特に限定されない。例えば、
図1A及び1Bに示されるように、外周壁11上の一対の電極20a,20bの全体に端子30を設けることができる。また、端子30は、
図4に示されるように、外周壁11上の一対の電極20a,20bの一部に設けてもよいし、外周壁11上の一対の電極20a,20bの外縁よりも外側に延出するように設けてもよい。さらに、図示していないが、端子30は、隔壁14上の一対の電極20a,20bの一部に設けてもよく、一部のセル13を塞ぐように設けてもよい。
また、端子30の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01~10mm、典型的に0.05~5mmである。
【0061】
端子30と一対の電極20a,20bとの接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されず、例えば、拡散接合、機械的な加圧機構、溶接などによって接続することができる。
【0062】
(1-4.中間材)
中間材50は、一対の電極20a,20bと端子30との間に設けられる。中間材50を設けることにより、一対の電極20a,20bと端子30との間の接続の構造的な自由度が高くなる。
中間材50の材質としては、特に限定されず、上記した端子30の材質と同様にすることができる。また、中間材50は、上記した端子30の材質と異なっていてもよい。この場合、中間材50は、はんだ、ろう材、導電性接着剤などから形成することができる。
【0063】
中間材50の大きさ及び形状は、特に限定されない。例えば、
図3に示されるように、外周壁11上の一対の電極20a,20bの全体に中間材50を設けることができる。また、図示していないが、中間材50は、外周壁11上の一対の電極20a,20bの一部に設けてもよいし、外周壁11上の一対の電極20a,20bの外縁よりも外側に延出するように設けてもよい。さらに、図示していないが、中間材50は、隔壁14上の一対の電極20a,20bの一部に設けてもよく、一部のセル13を塞ぐように設けてもよい。
中間材50の厚さは、特に限定されず、例えば、端子30の厚さと同程度とすることができる。
【0064】
中間材50と端子30及び一対の電極20a,20bとの接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されず、例えば、拡散接合、機械的な加圧機構、溶接などによって接続することができる。
【0065】
(1-5.機能材含有層)
機能材含有層40は、隔壁14(最外周のセル13の場合は、最外周のセル13を区画形成する隔壁14及び外周壁11)の表面上に設けることができる。このように機能材含有層40を設けることにより、機能材を加熱し易くなるため、機能材による所望の機能を発揮させることができる。
【0066】
機能材含有層40に含有される機能材としては、所望の機能を発揮させることができる材料であれば特に限定されないが、吸着材、触媒などを用いることができる。吸着材は、空気中の除去対象成分、例えば水蒸気、二酸化炭素、及び揮発成分から選択される一種又は二種以上を吸着する機能を有することが好ましい。また、触媒を用いることにより、除去対象成分を浄化することができる。更に、吸着材による除去対象成分の捕捉機能を高めるなどの目的で、吸着材と触媒とを併用してもよい。
【0067】
吸着材は、除去対象成分、例えば、水蒸気、二酸化炭素及び揮発成分などを-20~40℃で吸着し、60℃以上の高温で離脱することが可能な機能を有することが好ましい。このような機能を有する吸着材としては、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、アルミナ、シリカ、低結晶性粘土、非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体などが挙げられる。吸着材の種類は、除去対象成分の種類に応じて適宜選択すればよい。吸着材は一種を単独使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
触媒としては、酸化還元反応を促進させることが可能な機能を有することが好ましい。このような機能を有する触媒としては、Pt、Pd、Agなどの金属触媒、CeO2、ZrO2などの酸化物触媒などが挙げられる。触媒は一種を単独使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
車室の空気中に含まれる揮発成分は、例えば、揮発性有機化合物(VOC)や、VOC以外のにおい成分などである。揮発成分の具体例としては、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、N-メチルカルバミン酸-2-(1-メチルプロピル)フェニルなどが挙げられる。
【0070】
機能材含有層40の厚さは、セル13の大きさに応じて決定すればよく、特に限定されない。例えば、機能材含有層40の厚さは、空気との接触を十分確保する観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは30μm以上である。一方、隔壁14や外周壁11から機能材含有層40が剥離することを抑制する観点から、機能材含有層40の厚さは、好ましくは400μm以下、より好ましくは380μm以下、更に好ましくは350μm以下である。
【0071】
機能材含有層40の厚さは、以下の手順で測定する。ハニカム構造体10の流路方向に平行な任意の断面を切り出し、走査型電子顕微鏡などで50倍程度の断面画像を取得する。また、この断面は、ハニカム構造体10の流路に直交する断面における重心位置を通るようにする。断面画像から視認される各機能材含有層40について、断面積をセル13の流路方向の長さで除することで厚さを算出する。この計算を当該断面画像から視認される全ての機能材含有層40について行い、全体の平均値を機能材含有層40の厚さとする。
【0072】
機能材がヒーターエレメント1,2内で所望の機能を発揮するという観点から、機能材含有層40の量は、ハニカム構造体10の容積に対して、50~500g/Lであることが好ましく、100~400g/Lであることがより好ましく、150~350g/Lであることが更に好ましい。なお、ハニカム構造体10の容積は、ハニカム構造体10の外形寸法により定まる値である。
【0073】
(2.ヒーターエレメントの製造方法)
本発明の実施形態に係るヒーターエレメントの製造方法は、上記の特徴を有する方法であれば特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。以下、本発明の実施形態に係るヒーターエレメントを製造する方法について例示的に説明する。
ヒーターエレメントを構成するハニカム構造体の製造方法は、成形工程及び焼成工程を含む。
成形工程では、BaCO3粉末、TiO2粉末、及び希土類の硝酸塩又は水酸化物の粉末を含むセラミックス原料を含有する坏土を成形し、相対密度が60%以上のハニカム成形体を作製する。
セラミックス原料は、所望する組成となるように各粉末を乾式混合することによって得ることができる。
坏土は、セラミックス原料に、分散媒、バインダ、可塑剤及び分散剤を添加して混練することによって得ることができる。坏土には、シフター、金属酸化物、特性改善剤、導電体粉末などの添加剤を必要に応じて含有させてもよい。
セラミックス原料以外の成分の配合量は、ハニカム成形体の相対密度が60%以上となるような量であれば特に限定されない。
【0074】
ここで、本明細書において「ハニカム成形体の相対密度」とは、セラミックス原料全体の真密度に対するハニカム成形体の密度の割合のことを意味する。具体的には、以下の式によって求めることができる。
ハニカム成形体の相対密度(%)=ハニカム成形体の密度(g/cm3)/セラミックス原料全体の真密度(g/cm3)×100
ハニカム成形体の密度は、純水を媒体とするアルキメデス法により測定することができる。また、セラミックス原料全体の真密度は、各原料の質量を合計した値(g)を、各原料の実の体積を合計した値(cm3)で除することによって求めることができる。
【0075】
分散媒としては、水、又は水とアルコールなどの有機溶媒との混合溶媒などを挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0076】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの有機バインダを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。バインダは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよいが、アルカリ金属元素を含有していないことが好ましい。
【0077】
可塑剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリカルボン酸系高分子、アルキルリン酸エステルなどを例示することができる。
【0078】
分散剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールなどの界面活性剤を用いることができる。分散剤は、一種を単独で使用するものであっても、二種以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0079】
ハニカム成形体は、坏土を押出成形することによって作製することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度などを有する口金を用いることができる。
【0080】
押出成形によって得られるハニカム成形体の相対密度は、60%以上、好ましくは65%以上である。このような範囲にハニカム成形体の相対密度を制御することにより、ハニカム成形体を緻密化し、室温における電気抵抗を低下させることが可能となる。なお、ハニカム成形体の相対密度の上限値は、特に限定されないが、一般に80%、好ましくは75%である。
【0081】
ハニカム成形体は、焼成工程の前に乾燥させることができる。乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの従来公知の乾燥方法を用いることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0082】
焼成工程は、1150~1250℃で保持した後、20~600℃/時の昇温速度で1360~1430℃の最高温度に昇温させて0.5~10時間保持することを含む。
ハニカム成形体を1360~1430℃の最高温度で0.5~10時間保持することにより、Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子を主成分とするハニカム構造体10を得ることができる。
また、1150~1250℃で保持することにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が除去され易くなるため、ハニカム構造体10を緻密化させることができる。
さらに、1150~1250℃から1360~1430℃の最高温度までの昇温速度を20~600℃/時とすることにより、1.0~10.0質量%のBa6Ti17O40結晶粒子をハニカム構造体10に生成させることができる。
【0083】
1150~1250℃での保持時間は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10時間である。このような保持時間とすることにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が安定して除去され易くなる。
【0084】
焼成工程は、昇温時に900~950℃で0.5~5時間保持することを含むことが好ましい。900~950℃で0.5~5時間保持することにより、BaCO3が効率良く分解し、所定の組成を有するハニカム構造体10が得られ易くなる。
【0085】
なお、焼成工程の前には、バインダを除去するための脱脂工程を行ってもよい。脱脂工程の雰囲気は、有機成分を完全に分解するために大気雰囲気とすることが好ましい。
また、焼成工程の雰囲気も、電気特性の制御と製造コストの観点から大気雰囲気とすることが好ましい。
焼成工程や脱脂工程に用いられる焼成炉としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉などを用いることができる。
【0086】
このようにして得られたハニカム構造体10に、一対の電極20a,20bを形成することで、ヒーターエレメント1,2を製造することができる。また、一対の電極20a,20bは、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法によっても形成することができる。また、一対の電極20a,20bは、電極ペーストを塗布した後、焼き付けることによっても形成することもできる。さらに、一対の電極20a,20bは、溶射によって形成することもできる。一対の電極20a,20bは単層で構成してもよいが、組成の異なる複数の電極層で構成することもできる。以下、一対の電極20a,20bの代表的な形成方法を説明する。
【0087】
まず、電極材、有機バインダ及び分散媒を含む電極スラリーを調製し、ハニカム構造体10の第1端面12a又は第2端面12bに塗布する。分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。ハニカム構造体10の外周の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。その後、スラリーを乾燥させることによってハニカム構造体10の第1端面12a又は第2端面12bに一対の電極20a,20bを形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にヒーターエレメントを加熱しながら行うことができる。塗布、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの一対の電極20a,20bを設けることができる。
【0088】
次に、一対の電極20a,20bの所定の位置に端子30を配置し、一対の電極20a,20bと端子30とを接続する。一対の電極20a,20bと端子との接続方法としては、上述の方法を用いることができる。また、一対の電極20a,20bと端子30との間に中間材50を設ける場合、一対の電極20a,20bの所定の位置に中間材50を配置して接続した後、中間材50の所定の位置に端子30を配置して接続すればよい。これらの接続方法としては、上述の方法を用いることができる。
なお、端子30及び中間材50の設置は、下記の機能材含有層40を形成した後に行ってもよい。
【0089】
次いで、このようにして得られたヒーターエレメント1,2の隔壁14などの表面に機能材含有層40を形成することで、機能材含有層付ヒーターエレメントが得られる。
機能材含有層40の形成方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程により形成可能である。機能材、有機バインダ及び分散媒を含むスラリーにヒーターエレメント1,2を所定時間浸漬し、ハニカム構造体10の端面及び外周の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14の表面に機能材含有層40を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にヒーターエレメント1,2を加熱しながら行うことができる。浸漬、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの機能材含有層40を隔壁14などの表面に設けることができる。
【0090】
(3.車室浄化システム)
本発明の実施形態によれば、上述したヒーターエレメント1,2を備える車室浄化システムが提供される。当該車室浄化システムは、自動車などの各種車両に好適に利用可能である。
【0091】
図5は、本発明の実施形態に係る車室浄化システムの構成を示す模式図である。
図5に示されるように、車室浄化システム1000は、少なくとも一つのヒーターエレメント1,2と、ヒーターエレメント1,2に電圧を印加するためのバッテリーなどの電源200と、車室とヒーターエレメント1,2の第1端面12aとを連通する流入配管400と、ヒーターエレメント1,2の第2端面12bと車室とを連通する第1経路500aを有する流出配管500と、流入配管400を介して車室からの空気をヒーターエレメント1,2の第1端面12aに流入させるための通風機600とを備える。
【0092】
流出配管500は、第1経路500aに加えて、ヒーターエレメント1,2の第2端面12bと車外とを連通する第2経路500bを有することができる。また、流出配管500は、流出配管500を流通する空気の流れを第1経路500aと第2経路500bの間で切替え可能な切替えバルブ300を有することができる。
【0093】
車室浄化システム1000は、電源200からの印加電圧をオフとし、流出配管500を流通する空気が第1経路500aを通るように切替えバルブ300を切替え、通風機600をオンとする第1のモードと、電源200からの印加電圧をオンとし、流出配管500を流通する空気が第2経路500bを通るように切替えバルブ300を切替え、通風機600をオンとする第2のモードとの運転モードを有することができる。
【0094】
車室浄化システム1000は、第1のモードと第2のモードの間の切替えを実行可能な制御部900を備えることができる。制御部900は、例えば、第1のモードと第2のモードを交互に実行することができるように構成してもよい。第1のモードと第2のモードの切替えを一定サイクルで繰り返すことにより、車室内の除去対象成分を安定的に車外に排出することが可能となる。
【0095】
第1のモードでは、車室空気の浄化が行われる。具体的には、車室からの空気は、流入配管400を通ってヒーターエレメント1,2の第1端面12aから流入し、ヒーターエレメント1,2内を通過した後、ヒーターエレメント1,2の第2端面12bから流出する。車室からの空気の除去対象成分はヒーターエレメント1,2を通過する間に機能材に捕捉などされることにより除去される。ヒーターエレメント1,2の第2端面12bから流出した清浄な空気は、流出配管500の第1経路500aを通って車室へと返送される。
【0096】
第2のモードでは、機能材の再生が行われる。具体的には、車室からの空気は、流入配管400を通ってヒーターエレメント1,2の第1端面12aから流入し、ヒーターエレメント1,2内を通過した後、ヒーターエレメント1,2の第2端面12bから流出する。ヒーターエレメント1,2は通電により発熱し、これによりヒーターエレメント1,2に担持されている機能材が加熱されるため、機能材に捕捉などされた除去対象成分は機能材から離脱、又は反応する。
【0097】
機能材に捕捉などされた除去対象成分の離脱を促進するため、機能材の種類に応じて離脱温度以上に機能材を加熱することが好ましい。例えば、機能材として吸着材を使用する場合は機能材の少なくとも一部、望ましくは全部を70~150℃に加熱することが好ましく、80~140℃に加熱することがより好ましく、90~130℃に加熱することが更に好ましい。また、第2のモードは、機能材の再生が十分に行われるまでの時間行うことが望ましい。機能材の種類にもよるが、例えば、機能材として吸着材を使用する場合、第2のモードでは機能材は上記温度範囲に1~10分間加熱されることが好ましく、2~8分間加熱されることがより好ましく、3~6分間加熱されることが更に好ましい。
【0098】
車室からの空気はヒーターエレメント1,2を通過する間に機能材から離脱した除去対象成分を同伴しながらヒーターエレメント1,2の第2端面12bから流出する。ヒーターエレメント1,2の第2端面12bから流出した除去対象成分を含む空気は、流出配管500の第2経路500bを通って車外へと排出される。
【0099】
ヒーターエレメント1,2に対する印加電圧のオン及びオフの切替えは、例えば、電源200とヒーターエレメント1,2の一対の電極20a,20bとを電線810で電気的に接続し、その途中に設けた電源スイッチ910を操作することで可能である。電源スイッチ910の操作は制御部900が実行可能である。
【0100】
通風機600のオン及びオフの切替えは、例えば、制御部900と通風機600を電線820又は無線で電気的に接続し、通風機600のスイッチ(図示せず)を制御部900によって操作することで可能である。通風機600は、通風量を制御部900によって変化させることができるように構成することもできる。
【0101】
切替えバルブ300の切替えは、例えば、制御部900と切替えバルブ300を電線830又は無線で電気的に接続し、切替えバルブ300のスイッチ(図示せず)を制御部900によって操作することで可能である。
【0102】
切替えバルブ300としては、電気で駆動し、流路を切換える機能を有するバルブであれば特に制限はないが、電磁弁及び電動弁が挙げられる。一実施形態において、切替えバルブ300は、回転軸310に支持された開閉ドア312と、回転軸310を回動操作するモータ等のアクチュエータ314を備える。アクチュエータ314は制御部900によって制御可能に構成される。
【0103】
車室浄化システム1000は、上記の機能を安定して確保する観点から、ヒーターエレメント1,2が車室に近い位置に配置されることが望ましい。したがって、感電防止などの観点から、駆動電圧が60V以下であることが好ましい。ヒーターエレメント1,2に用いられているハニカム構造体10は、室温における電気抵抗が低いため、この低い駆動電圧でのハニカム構造体10の加熱が可能である。なお、駆動電圧の下限は、特に限定されないが、10V以上であることが好ましい。駆動電圧が10V未満であると、ハニカム構造体10の加熱時の電流が大きくなるため、電線810を太くする必要がある。
【0104】
図5に示す実施形態において、通風機600は、ヒーターエレメント1,2の上流側に設置されている。より詳細には、通風機600は、ヒーターエレメント1,2と車室とを連通する流入配管400の途中に設置されており、通風機600を通過した空気がヒーターエレメント1,2に対して押し込まれるように流入する。別法として、通風機600は、ヒーターエレメント1,2の下流側に設置してもよい。この場合、通風機600は例えば流出配管500の途中に設置することができ、流入配管400を通過した空気はヒーターエレメント1,2に吸い込まれるように流入する。
【実施例0105】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0106】
セラミックス原料としてBaCO3粉末、TiO2粉末及びLa(NH3)3・6H2O粉末を準備した。これらの粉末を、焼成後に所定の組成となるように秤量して、乾式混合して混合粉末を得た。乾式混合は、30分間実施した。次いで、得られた混合粉末100質量部に対して、押出成形後に相対密度が64.8%のセラミックス成形体が得られるように、水、バインダ、可塑剤及び分散剤を合計で3~30質量部の範囲で適量ずつ添加して混練し、坏土を得た。バインダとしてはメチルセルロースを使用した。可塑剤及び分散剤としてはポリオキシアルキレンアルキルエーテルを使用した。
【0107】
次に、得られた坏土を押出成形機に投入し、焼成後に以下に示されるような形状のハニカム構造体となるように所定の口金を用いて押出成形した。
流路方向に直交するハニカム構造体の断面及び端面の形状:四角形
流路方向に直交するセルの断面の形状:四角形
隔壁の厚さt2:表1に示す。
外周壁の厚さ:0.127mm
セル密度:85.3セル/cm2
セルピッチ:1.08mm
セルの開口率:0.55~0.80
ハニカム構造体の流路の延びる方向に直交する断面積:4721mm2
ハニカム構造体の流路の延びる方向の長さ:11mm
隔壁(及び外周壁)を構成する材料の25℃における体積抵抗率:表1に示す
隔壁(及び外周壁)を構成する材料のキュリー点:120℃
なお、隔壁の体積抵抗率は、原料の配合割合や焼成条件を調整することによって制御した。
【0108】
次に、得られたハニカム成形体を誘電乾燥及び熱風乾燥した後、焼成炉内にて大気雰囲気下で脱脂(450℃×4時間)し、次いで大気雰囲気下で焼成することにより、ハニカム構造体を得た。焼成は、950℃で1時間保持した後、1200℃まで昇温して1200℃で1時間保持し、次いで200℃/時の昇温速度で1400℃(最高温度)に昇温し、1400℃で2時間保持することによって行った。
【0109】
次に、得られたハニカム構造体の両端面(第1端面及び第2端面)に、表2に示す厚さt1を有する一対の電極を形成した。一対の電極は、次のようにして形成した。まず、アルミニウム(電極材)、エチルセルロース及びジエチレングリコールモノブチルエーテル(有機バインダ)を含む電極スラリーを調製し、一方の端面に塗布した。次に、ハニカム構造体の外周の余分な電極スラリーをブロー及び拭き取りによって除去した後、電極スラリーを乾燥させることによって一方の端面に電極を形成した。同様にして、他方の端面にも電極を形成した。
【0110】
次に、一対の電極を形成したハニカム構造体を、機能材としてのゼオライト(吸湿剤)、有機バインダ及び水を含むスラリーに浸漬し、余分な位置(外周など)に付着したスラリーをブロー及びふき取りによって除去した後、550℃程度の温度で乾燥させることによって所定の位置に機能材含有層を形成した。
次に、No.1~11のサンプルについては、外周壁上の一対の電極の全体及び隔壁上の一対の電極の一部に表1に示す厚さの端子(Al)を設けた。また、No.12~19については、外周壁上の一対の電極の全体及び隔壁上の一対の電極の一部に中間材(はんだ)、その上に表1に示す厚さの端子(Al)を設けた。
【0111】
上記のようにして得られたヒーターエレメントの各サンプルに対して、以下の評価を行った。なお、隔壁、一対の電極及び端子の体積抵抗率は、25℃においてJIS K6271:2008に従って測定した。
【0112】
<除湿性能>
相対湿度30%の空気を0.13m/秒の流量で各サンプルに流通させながら、13.5Vの電圧の印加3分及び電圧の印加なし3分を1サイクルとして1時間繰り返し、除湿できた水分量(g/h)を、モデルガス装置を用いて測定した。
この評価において、除湿できた水分量が66g/h以上であったものをA、66g/h未満50g/h以上であったものをB、50g/h未満であったものをCと表す。
【0113】
<局所発熱>
ハニカム構造体の中心部に熱電対を挿入して配置し、各サンプルに13.5Vの電圧を3分印加し、ハニカム構造体の最高温度を測定した。
この評価において、最高温度が200℃未満であったものをA、200℃以上240℃未満であったものをB、最高温度が240℃以上であったものをCと表す。なお、機能材は、その種類にもよるが200℃を超えると劣化することが多い。
【0114】
<クラック>
各サンプルに13.5Vの電圧を3分印加し、ハニカム構造体に発生するクラックの有無を評価した。
この評価において、目視及び顕微鏡の両方で視認可能なクラックがなかったものをA、目視では視認可能なクラックがないものの、顕微鏡で視認可能なクラックがあったものをB、目視及び顕微鏡の両方で視認可能なクラックがあったものをCと表す。
【0115】
上記の各評価結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
表1に示されるように、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)が0.003以下であり、且つ(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02以上である本発明例のヒーターエレメントは、除湿性能、局所発熱及びクラックの評価結果がいずれも良好であった。
これに対して、(ρ1/t1)/(ρ2/t2)が0.003を超える比較例のヒーターエレメント(No.4)は、除湿性能が十分でなかった。また、(ρ1/t1)/(ρ3/t3)が0.02未満である比較例のヒーターエレメント(No.7)は、局所発熱が生じた。
【0118】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、機能材の性能を十分に発揮させるとともに、機能材の劣化やハニカム構造体の破損を抑制することが可能なヒーターエレメントを提供することができる。また、本発明によれば、そのようなヒーターエレメントを備えた車室浄化システムを提供することができる。