(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101466
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】成形用下型及びシートパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/12 20060101AFI20240722BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20240722BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240722BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20240722BHJP
B68G 5/02 20060101ALI20240722BHJP
B68G 11/06 20060101ALI20240722BHJP
A47C 7/18 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C33/42
B29C45/14
A47C27/14
A47C27/14 A
B68G5/02
B68G11/06
A47C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005470
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 浩二
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 一人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 豊之
【テーマコード(参考)】
3B084
3B096
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3B084CA03
3B084CA05
3B084CB01
3B096AD07
4F202AA31
4F202AB02
4F202AD03
4F202AD13
4F202AH26
4F202AR07
4F202CA01
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB20
4F202CB28
4F202CK12
4F202CQ03
4F206AA31
4F206AB02
4F206AD03
4F206AD13
4F206AH26
4F206AR07
4F206JA04
4F206JB12
4F206JB20
4F206JB28
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】張出曲部が形成されたワイヤが成形用下型にセットされた時に当該ワイヤがその主軸部の軸線回りに回転してしまうのを防止することが可能な成形用下型及びシートパッドの製造方法を得る。
【解決手段】成形用下型30のブロック部40において、主軸支持部42は、第二ワイヤ20の主軸部20Aを下側から支持し、位置規制部44は、第二ワイヤ20がセットされた状態で主軸部20Aの一部から張出曲部20Bの一部にかけての部分に接して第二ワイヤ20の平面視の位置を規制する。また、成形用下型30のブロック部40において、回転規制部46は、第二ワイヤ20がセットされた状態で張出曲部20Bの所定範囲を下側から支持して主軸部20Aの軸線回りの第二ワイヤ20の回転を規制する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線が同一直線上に配置される複数の主軸部と、互いに隣り合う前記主軸部同士を繋ぐ部分を構成して前記主軸部から曲げられて張り出す張出曲部と、を有するワイヤをセット可能に構成され、発泡樹脂製のシートパッドの成形用とされた成形用下型であって、
前記主軸部を下側から支持する主軸支持部と、
前記ワイヤがセットされた状態で前記主軸部の一部から前記張出曲部の一部にかけての側部に接して前記ワイヤの平面視の位置を規制する位置規制部と、
前記ワイヤがセットされた状態で前記張出曲部の所定範囲を下側から支持して前記主軸部の軸線回りの前記ワイヤの回転を規制する回転規制部と、
を備える成形用下型。
【請求項2】
前記位置規制部は、前記ワイヤがセットされた状態で前記主軸部の一部の一方の側部が連続的に当てられる第一変位規制部と、前記第一変位規制部と連続して形成されると共に前記ワイヤがセットされた状態で前記張出曲部の基端部側の一方の側部が連続的に当てられる第二変位規制部と、によって構成され、
前記回転規制部は、前記第一変位規制部及び前記第二変位規制部の各下縁側に連続して形成された上向き面の一部とされている、請求項1に記載の成形用下型。
【請求項3】
前記第二変位規制部の上側に連続すると共に前記張出曲部の一部を前記第二変位規制部に接する位置へ案内する傾斜状の案内部を備える、請求項2に記載の成形用下型。
【請求項4】
互いに同形状で同じ側に張り出す前記張出曲部を二個有する前記ワイヤをセット可能に構成され、
前記第一変位規制部と前記第二変位規制部と前記回転規制部とを備えるブロック部が、一本の前記ワイヤがセットされる領域において当該領域の長手方向に並ぶように一対で設けられ、
一対の前記ブロック部は、平面視で前記長手方向と直交する方向の直線を対称軸として互いに線対称となるように形成されている、請求項2に記載の成形用下型。
【請求項5】
軸線が同一直線上に配置される複数の主軸部と、互いに隣り合う前記主軸部同士を繋ぐ部分を構成して前記主軸部から曲げられて張り出す張出曲部と、を有するワイヤを、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の成形用下型にセットして、発泡樹脂製のシートパッドを成形するシートパッドの製造方法であって、
前記主軸部を前記主軸支持部に下側から支持させ、前記主軸部の一部から前記張出曲部の一部にかけての側部を前記位置規制部に接触させ、前記張出曲部の所定範囲を前記回転規制部に下側から支持させることによって、前記ワイヤを前記成形用下型にセットした状態にし、
前記ワイヤがセットされた前記成形用下型に発泡樹脂原料を注入し、前記成形用下型と成形用上型とを型閉じした状態でシートパッドを発泡成形する、シートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用下型及びシートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートのシートパッドの製造においては、直線状のワイヤが成形用下型にセットされてインサート成形される技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、成型用下型にセットされるワイヤについては、軸線が同一直線上に配置される複数の主軸部と、互いに隣り合う主軸部同士を繋ぐ部分を構成して主軸部から曲げられて張り出す張出曲部と、を有するものが適用される場合がある。
【0005】
しかしながら、張出曲部が形成されたワイヤが成形用下型にセットされた時に、当該ワイヤの張出曲部が重力によって下方側に下がり当該ワイヤがその主軸部の軸線回りに回転してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、張出曲部が形成されたワイヤが成形用下型にセットされた時に当該ワイヤがその主軸部の軸線回りに回転してしまうのを防止することが可能な成形用下型及びシートパッドの製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載する本発明の成形用下型は、軸線が同一直線上に配置される複数の主軸部と、互いに隣り合う前記主軸部同士を繋ぐ部分を構成して前記主軸部から曲げられて張り出す張出曲部と、を有するワイヤをセット可能に構成され、発泡樹脂製のシートパッドの成形用とされた成形用下型であって、前記主軸部を下側から支持する主軸支持部と、前記ワイヤがセットされた状態で前記主軸部の一部から前記張出曲部の一部にかけての側部に接して前記ワイヤの平面視の位置を規制する位置規制部と、前記ワイヤがセットされた状態で前記張出曲部の所定範囲を下側から支持して前記主軸部の軸線回りの前記ワイヤの回転を規制する回転規制部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、成形用下型は、主軸支持部、位置規制部及び回転規制部を備えている。主軸支持部は、ワイヤの主軸部を下側から支持する。位置規制部は、ワイヤがセットされた状態で主軸部の一部から張出曲部の一部にかけての側部に接してワイヤの平面視の位置を規制する。回転規制部は、ワイヤがセットされた状態で張出曲部の所定範囲を下側から支持して主軸部の軸線回りのワイヤの回転を規制する。このため、ワイヤがその主軸部の軸線回りに回転してしまうのを防止することができる。
【0009】
請求項2に記載する本発明の成形用下型は、請求項1に記載の構成において、前記位置規制部は、前記ワイヤがセットされた状態で前記主軸部の一部の一方の側部が連続的に当てられる第一変位規制部と、前記第一変位規制部と連続して形成されると共に前記ワイヤがセットされた状態で前記張出曲部の基端部側の一方の側部が連続的に当てられる第二変位規制部と、によって構成され、前記回転規制部は、前記第一変位規制部及び前記第二変位規制部の各下縁側に連続して形成された上向き面の一部とされている。
【0010】
上記構成によれば、位置規制部は、第一変位規制部と第二変位規制部とによって構成されている。第一変位規制部は、ワイヤがセットされた状態で主軸部の一部の一方の側部が連続的に当てられる。また、第二変位規制部は、第一変位規制部と連続して形成されると共にワイヤがセットされた状態で張出曲部の基端部側の一方の側部が連続的に当てられる。これらにより、ワイヤの平面視の位置が規制される。また、回転規制部は、第一変位規制部及び第二変位規制部の各下縁側に連続して形成された上向き面の一部となっている。このような構成では、位置規制部及び回転規制部が設けられても、それらの部分に溝が形成されるわけではないので、成形後に成形用下型に発泡樹脂のカスが溜まりにくい。このため、成形後に発泡樹脂のカスを取り除く手間を省く又は減らすことができるので、生産性が向上する。
【0011】
請求項3に記載する本発明の成形用下型は、請求項2に記載の構成において、前記第二変位規制部の上側に連続すると共に前記張出曲部の一部を前記第二変位規制部に接する位置へ案内する傾斜状の案内部を備える。
【0012】
上記構成によれば、成形用下型にワイヤを上方側からセットする場合には、張出曲部の一部が傾斜状の案内部によって第二変位規制部に接する位置へ案内されるので、成形用下型へのワイヤのセット性を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載する本発明の成形用下型は、請求項2に記載の構成において、互いに同形状で同じ側に張り出す前記張出曲部を二個有する前記ワイヤをセット可能に構成され、前記第一変位規制部と前記第二変位規制部と前記回転規制部とを備えるブロック部が、一本の前記ワイヤがセットされる領域において当該領域の長手方向に並ぶように一対で設けられ、一対の前記ブロック部は、平面視で前記長手方向と直交する方向の直線を対称軸として互いに線対称となるように形成されている。
【0014】
上記構成によれば、一対の第一変位規制部及び一対の第二変位規制部によって、ワイヤの変位を一層安定的に規制でき、一対の回転規制部によって、主軸部の軸線回りのワイヤの回転を安定的に規制することができる。
【0015】
請求項5に記載する本発明のシートパッドの製造方法は、軸線が同一直線上に配置される複数の主軸部と、互いに隣り合う前記主軸部同士を繋ぐ部分を構成して前記主軸部から曲げられて張り出す張出曲部と、を有するワイヤを、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の成形用下型にセットして、発泡樹脂製のシートパッドを成形するシートパッドの製造方法であって、前記主軸部を前記主軸支持部に下側から支持させ、前記主軸部の一部から前記張出曲部の一部にかけての側部を前記位置規制部に接触させ、前記張出曲部の所定範囲を前記回転規制部に下側から支持させることによって、前記ワイヤを前記成形用下型にセットした状態にし、前記ワイヤがセットされた前記成形用下型に発泡樹脂原料を注入し、前記成形用下型と成形用上型とを型閉じした状態でシートパッドを発泡成形する。
【0016】
上記構成によれば、主軸部を主軸支持部に下側から支持させ、主軸部の一部から張出曲部の一部にかけての側部を位置規制部に接触させ、張出曲部の所定範囲を回転規制部に下側から支持させることによって、ワイヤを成形用下型にセットした状態にする。このとき、位置規制部によってワイヤの平面視の位置が規制され、回転規制部によって主軸部の軸線回りのワイヤの回転が規制される。次に、ワイヤがセットされた成形用下型に発泡樹脂原料を注入し、成形用下型と成形用上型とを型閉じした状態でシートパッドを発泡成形する。以上により、ワイヤを所定の位置で一体化させたシートパッドを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の成形用下型及びシートパッドの製造方法によれば、張出曲部が形成されたワイヤが成形用下型にセットされた時に当該ワイヤがその主軸部の軸線回りに回転してしまうのを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成形用下型を用いて成形されたシートクッションパッド等を示す平面図である。
【
図2】
図1の2-2線に相当する位置でシートクッションを切断した状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る成形用下型の一部を示す斜視図である。
【
図4】
図3の図中右側部分を拡大して
図3とは異なる角度から見た状態で示す斜視図である。
【
図5】
図4のブロック部を拡大しかつ第二ワイヤがセットされていない状態を示す斜視図である。
【
図6】シートクッションパッドの成形型を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る成形用下型及びシートパッドとしてのシートクッションパッドの製造方法について
図1~
図6を用いて説明する。なお、各図においては、図面を見易くする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0020】
図1には、本実施形態に係る成形用下型を用いて成形された発泡樹脂製のシートパッドとしてのシートクッションパッド12等の平面図が示されている。まず、このシートクッションパッド12を備えたシートクッション10について説明する。
【0021】
(シートクッションの構成)
シートクッションパッド12は、シートクッション10のクッション材を構成し、シートクッションフレーム(図示省略)に被せられる。シートクッション10は、車両用シートのうち乗員が着座する着座部を構成し、前記シートクッションフレームは、シートクッション10の骨格部を構成している。シートクッションパッド12の上面部12U、前面部及び側面部は、シートクッション表皮(トリムカバー)14(
図2参照)で覆われるが、
図1では、シートクッション10の内部構成を分かり易く示すために、図示を省略している。なお、図中の矢印FRはシートクッション10の前方側を示しており、図中の矢印Wはシートクッション10の幅方向を示している。
【0022】
シートクッションパッド12は、ポリウレタンフォーム等の発泡成形体で構成され、着座乗員の臀部及び大腿部を下方側から支持する本体部12Aと、着座乗員の臀部及び大腿部を左右方向外方側から支持する左右のサイドサポート部12Bと、を有している。左右のサイドサポート部12Bはシートクッション10の上方側に凸状に形成されている。
【0023】
シートクッションパッド12の上面部12Uにおける幅方向の両側には、本体部12Aとサイドサポート部12Bとの境界部に細長い凹状の第一溝部12Xが形成されている。第一溝部12Xは、シートクッションパッド12の前後方向に沿って延在されている。また、シートクッションパッド12の上面部12Uには、本体部12Aの前部側と後部側に細長い凹状の第二溝部12Yが形成されている。二本の第二溝部12Yは、それぞれシートクッションパッド12の幅方向に沿って延在され、それぞれ左右一対の第一溝部12Xを繋ぐように形成されている。
【0024】
また、シートクッションパッド12の上面部12Uには、シートヒーター16が載置されている。シートヒーター16は、シートクッションパッド12の本体部12Aの上、言い換えると、左右一対の第一溝部12Xの間に配置されている。シートヒーター16は、通気性を有するシート状の基材16Mと、基材16Mに配置されたヒーター線(図示省略)と、を備えている。
【0025】
基材16Mの左右の端部16Sは、左右一対の第一溝部12Xの近傍に位置し、第一溝部12Xの延在方向に沿って延在されている。基材16Mの前端16Fは、シートクッションパッド12の上面部12Uの前端部側の部分に配置され、シートクッションパッド12の幅方向に沿って延在されている。シートヒーター16の基材16Mの後端16Rは、シートクッションパッド12の上面部12Uの後端部側の部分に配置され、シートクッションパッド12の幅方向に沿って延在されている。
【0026】
また、基材16Mには、二本の第二溝部12Y及びその周囲部に対応する部分のうち左右両側の部分において略矩形状に切り欠かれた切欠部16Aが形成されている。さらに、基材16Mには、二本の第二溝部12Y及びその周囲部に対応する部分のうち中央部に略矩形状の貫通部16Bが貫通形成されている。
【0027】
シートヒーター16における前記ヒーター線(図示省略)は、基材16Mの全域に張り巡らされており、電源(図示省略)と接続された電線(図示省略)に接続され、通電によって温度を上げることが可能になっている。なお、ヒーター線を備えたシートヒーター16には、公知技術の構成が適用されているので、シートヒーター16の詳細説明は省略する。
【0028】
シートクッションパッド12には、全体として第一溝部12Xに沿って配置される第一ワイヤ18が埋設されている。第一ワイヤ18の長手方向両端側の部分は、湾曲状に曲げられた湾曲部18Aとされている。第一ワイヤ18の一部は、第一溝部12Xの底側において露出している。
【0029】
また、シートクッションパッド12には、第二溝部12Yに沿って配置される部分を含むワイヤとしての第二ワイヤ20が埋設されている。第二ワイヤ20は、全体としては、シートクッションパッド12の幅方向に延在されている。第二ワイヤ20の長手方向両端側の部分は、湾曲状に曲げられた湾曲部20Cとされている。
【0030】
第二ワイヤ20は、軸線が同一直線上に配置される複数の主軸部20Aと、互いに隣り合う主軸部20A同士を繋ぐ部分を構成して主軸部20Aから曲げられて張り出す張出曲部20Bと、を有する。本実施形態では、主軸部20Aと張出曲部20Bの一部との成す角は鈍角である。第二ワイヤ20は、張出曲部20Bを二個有し、二個の張出曲部20Bは互いに同形状で同じ側に張り出す。主軸部20Aの一部及び張出曲部20Bのうち平面視で第二溝部12Yと重なる部分は、第二溝部12Yの底側において露出している。なお、シートクッション10の前側部分の第二ワイヤ20とシートクッション10の後側部分の第二ワイヤ20とでは、張出曲部20Bの形状が異なるが、便宜上同一符号を付す。
【0031】
図2には、
図1の2-2線に相当する位置でシートクッション10を切断した状態の断面図が示されている。
図2において矢印UPはシートクッション10の上方側を示す。
図2に示されるように、シートクッション表皮14の裏面側の一部には吊り込み部材22が縫い付けられている。吊り込み部材22は、第二ワイヤ20の主軸部20A(
図1参照)にホグリング(図示省略)によって固定されている。なお、
図1に示される第一ワイヤ18に対しても、シートクッション表皮14の裏面側の一部に縫い付けられた吊り込み部材(図示省略)がホグリング(図示省略)によって固定されている。
【0032】
第二ワイヤ20の張出曲部20Bは、シートクッション表皮14(
図2参照)がホグリング(図示省略)を用いて固定される際に、シートヒーター16のヒーター線(図示省略)が第二ワイヤ20に当接して断線するのを回避するために設けられている。すなわち、第二ワイヤ20の張出曲部20Bは、シートヒーター16のヒーター線(図示省略)の断線対策用とされる。
【0033】
シートクッションパッド12は、
図6に模式的に示される成形用下型30と成形用上型60とを用いて成形される。成形用下型30と成形用上型60とを型閉じした状態では、成形用下型30と成形用上型60との間にシートクッションパッド12(
図1参照)を成形するためのキャビティ62が形成される。
【0034】
(成形用下型の構成)
次に、シートクッションパッド12(
図1参照)の成形用とされた成形用下型30について説明する。
図3には、成形用下型30の一部が斜視図で示されている。成形用下型30は、シートクッションパッド12(
図1参照)にインサートされる第一ワイヤ18及び第二ワイヤ20をセット可能に構成されている。以下、成形用下型30の具体的な構成について説明する。
【0035】
図3に示されるように、成形用下型30には、第一溝部12X(
図1参照)を成形するための第一凸部32が形成されている。第一凸部32は、成形用下型30の縦方向(シートクッション前後方向に対応する方向)を長手方向として延在されている。第一凸部32には、長手方向の所定位置に第一ワイヤ18を支持するための短円柱状のワイヤ支持部34が上方側へ向けて突出形成されている。
【0036】
また、成形用下型30には、第二溝部12Y(
図1参照)を成形するための第二凸部36が形成されている。第二凸部36は、成形用下型30の横方向(シートクッション幅方向に対応する方向)を長手方向として延在されている。第二凸部36における左右両端寄りの位置及び左右方向中央位置には、第二ワイヤ20の主軸部20Aを下側から支持する主軸支持部38が上方側へ向けて突出形成されている。
【0037】
また、第二凸部36には、その長手方向中間部における左側及び右側にブロック部40が上方側へ向けて突出形成されている。すなわち、ブロック部40は、一本の第二ワイヤ20がセットされる領域において当該領域の長手方向に並ぶように一対で設けられている。一対のブロック部40は、平面視で前記長手方向(一本の第二ワイヤ20がセットされる領域の長手方向)と直交する方向の直線を対称軸として互いに線対称となるように形成されている。
【0038】
図4には、
図3の図中右側部分を拡大して
図3とは異なる角度から見た状態の斜視図が示されている。
図5には、
図4のブロック部40を拡大しかつ第二ワイヤ20がセットされていない状態の斜視図が示されている。
図5に示されるように、ブロック部40は、第二凸部36の横方向を長手方向とする略直方体形状から一部が切除されたような形状になっている。
図4及び
図5に示されるように、ブロック部40は、その切除されたような形状部に、第二ワイヤ20の主軸部20Aを下側から支持する主軸支持部42と、第二ワイヤ20がセットされた状態で主軸部20Aの一部から張出曲部20Bの一部にかけての側部に接して第二ワイヤ20の平面視の位置を規制する位置規制部44と、第二ワイヤ20がセットされた状態で張出曲部20Bの所定範囲を下側から支持して主軸部20Aの軸線回りの第二ワイヤ20の回転を規制する回転規制部46と、を有する。
【0039】
位置規制部44は、第二ワイヤ20がセットされた状態で主軸部20Aの一部の一方の側部が連続的に当てられる第一変位規制部44Aと、第一変位規制部44Aと連続して形成されると共に第二ワイヤ20がセットされた状態で張出曲部20Bの基端部側の一方の側部が連続的に当てられる第二変位規制部44Bと、によって構成されている。第一変位規制部44Aと第二変位規制部44Bとの成す角は、鈍角となるように形成されている。また、回転規制部46は、第一変位規制部44A及び第二変位規制部44Bの各下縁側に連続して形成された上向き面48の一部とされている。
【0040】
ブロック部40には、第一変位規制部44Aの上側に連続する縦壁面50が形成されている。また、ブロック部40には、第二変位規制部44Bの上側に連続すると共に第二ワイヤ20の張出曲部20Bの一部を第二変位規制部44Bに接する位置へ案内する傾斜状の案内部52が形成されている。案内部52は、誘い面として把握することができる要素である。案内部52は、下方側へ向けて上向き面48の面積を小さくする方向へ傾斜している。縦壁面50及び案内部52は、互いに連続して形成され、各々の上端位置は高さが揃えられている。なお、
図4に示されるように、ブロック部40の長手方向の一方側で回転規制部46が形成された側とは反対側(図中左側)の端部54の一部には、第二ワイヤ20の張出曲部20Bの基端部側の部分が接するようになっている。
【0041】
(シートクッションパッドの製造方法)
次に、シートクッションパッド12の製造方法について概説する。まず、
図3に示されるように、第一ワイヤ18及び第二ワイヤ20を成形用下型30にセットする。成形用下型30への第二ワイヤ20のセットについて補足説明すると、
図4に示される主軸部20Aを主軸支持部38に下側から支持させ、主軸部20Aの一部から張出曲部20Bの一部にかけての側部を位置規制部44に接触させ、張出曲部20Bの所定範囲を回転規制部46に下側から支持させることによって、第二ワイヤ20を成形用下型30にセットした状態にする。次に、
図3に示される第一ワイヤ18及び第二ワイヤ20がセットされた成形用下型30に発泡樹脂原料を注入し、
図6に示されるように、成形用下型30と成形用上型60とを型閉じした状態でシートクッションパッド12(
図1参照)を発泡成形する。その後、成形用下型30と成形用上型60とを型開きして成形品である
図1に示されるシートクッションパッド12を取り出す。以上により、シートクッションパッド12が製造される。
【0042】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0043】
図4に示されるように、成形用下型30のブロック部40において、主軸支持部42は、第二ワイヤ20の主軸部20Aを下側から支持し、位置規制部44は、第二ワイヤ20がセットされた状態で主軸部20Aの一部から張出曲部20Bの一部にかけての側部に接して第二ワイヤ20の平面視の位置を規制する。また、成形用下型30のブロック部40において、回転規制部46は、第二ワイヤ20がセットされた状態で張出曲部20Bの所定範囲を下側から支持して主軸部20Aの軸線回りの第二ワイヤ20の回転を規制する。このため、第二ワイヤ20がその主軸部20Aの軸線回りに回転してしまうのを防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、位置規制部44は、第一変位規制部44Aと第二変位規制部44Bとによって構成されている。第一変位規制部44Aは、第二ワイヤ20がセットされた状態で主軸部20Aの一部の一方の側部が連続的に当てられる。また、第二変位規制部44Bは、第一変位規制部44Aと連続して形成されると共に第二ワイヤ20がセットされた状態で張出曲部20Bの基端部側の一方の側部が連続的に当てられる。これらにより、第二ワイヤ20の平面視の位置が規制される。
【0045】
また、本実施形態では、回転規制部46は、第一変位規制部44A及び第二変位規制部44Bの各下縁側に連続して形成された上向き面48の一部となっている。このような構成では、位置規制部44及び回転規制部46が設けられても、それらの部分に溝が形成されるわけではないので、成形後に成形用下型30に発泡樹脂のカスが溜まりにくい。このため、成形後に発泡樹脂のカスを取り除く手間を省く又は減らすことができるので、生産性が向上する。
【0046】
また、本実施形態では、成形用下型30には、第二変位規制部44Bの上側に連続すると共に第二ワイヤ20の張出曲部20Bの一部を第二変位規制部44Bに接する位置へ案内する傾斜状の案内部52が形成されている。これにより、成形用下型30に第二ワイヤ20を上方側からセットする場合には、第二ワイヤ20の張出曲部20Bの一部が傾斜状の案内部52によって第二変位規制部44Bに接する位置へ案内されるので、成形用下型30への第二ワイヤ20のセット性を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、第一変位規制部44Aと第二変位規制部44Bと回転規制部46を備えるブロック部40は、
図3に示されるように、一本の第二ワイヤ20がセットされる領域において当該領域の長手方向に並ぶように一対で設けられている。一対のブロック部40は、平面視で前記長手方向(一本の第二ワイヤ20がセットされる領域の長手方向)と直交する方向の直線を対称軸として互いに線対称となるように形成されている。このため、一対の第一変位規制部44A及び一対の第二変位規制部44Bによって、第二ワイヤ20の変位を一層安定的に規制でき、一対の回転規制部46によって、主軸部20Aの軸線回りの第二ワイヤ20の回転を安定的に規制することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、張出曲部20Bが形成された第二ワイヤ20が成形用下型30にセットされた時に第二ワイヤ20がその主軸部20Aの軸線回りに回転してしまうのを防止することが可能になる。このため、第二ワイヤ20の回転を防いだ状態で発泡樹脂原料を注入してシートクッションパッド12(
図1参照)を発泡成形することができる。
【0049】
また、本実施形態では、第二ワイヤ20において、シートヒーター16のヒーター線(図示省略)の断線対策用として設けられた張出曲部20Bを第二ワイヤ20の回転防止にも利用しているため、第二ワイヤ20の形状を複雑化する必要もないうえ、成形用下型30の構成の複雑化も抑えることができる。
【0050】
(実施形態の補足説明)
なお、
図1~
図6に示される上記実施形態では、互いに同形状で同じ側に張り出す張出曲部20Bを二個有する第二ワイヤ20をセット可能に構成された成形用下型30について説明したが、変形例として、一個の張出曲部(20B)を有するワイヤをセット可能に構成された成形用下型に本発明が適用されてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、成形用下型30には、第二変位規制部44Bの上側に連続すると共に第二ワイヤ20の張出曲部20Bの一部を第二変位規制部44Bに接する位置へ案内する傾斜状の案内部52が形成されているが、このような案内部が設けられない構成も採り得る。
【0052】
また、上記実施形態では、位置規制部44は、第一変位規制部44Aと第二変位規制部とによって構成されているが、変形例として、上記実施形態の構成に加えて第一変位規制部(44A)と対向する位置に配置されて第二ワイヤ(20)に接する規制部が設けられてもよいし、上記実施形態の構成に加えて第二変位規制部(44B)と対向する位置に配置されて第二ワイヤ(20)に接する規制部が設けられてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、シートパッドとしてのシートクッションパッド12の成形用とされた成形用下型30について説明したが、シートパッドとしてのシートバックパッドの成形用とされた成形用下型に本発明が適用されてもよい。
【0054】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0055】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
12 シートクッションパッド(シートパッド)
20 第二ワイヤ(ワイヤ)
20A 主軸部
20B 張出曲部
30 成形用下型
38 主軸支持部
40 ブロック部
42 主軸支持部
44 位置規制部
44A 第一変位規制部
44B 第二変位規制部
46 回転規制部
48 下向き面
52 案内部
60 成形用上型