(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101471
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ウェビング巻取装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/28 20060101AFI20240722BHJP
B60R 22/36 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B60R22/28 107
B60R22/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005475
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 友哉
(72)【発明者】
【氏名】村仲 淳一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 善輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優太
(72)【発明者】
【氏名】福和 佑太
(72)【発明者】
【氏名】中條 健吾
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018DA07
3D018HB00
(57)【要約】
【課題】ウェビングの引出許容荷重の上昇を抑制する。
【解決手段】ウェビング巻取装置10では、ウェビング16からの荷重によってトーションシャフト20が捩れ変形されることで、スプール14の引出方向への回転が許容されて、ウェビング16のスプール14からの引出しが許容される。ここで、トーションシャフト20が捩れ変形される際には、スプール14の回転面14Bの摺動対象がピニオン24のリブ24Bからベアリング26に変更されて、スプール14の摺動抵抗が低下される。このため、ウェビング16の引出許容荷重の上昇を抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングが巻取られ、引出方向に回転されてウェビングが引出されると共に、車両の緊急時に引出方向への回転が制限されるスプールと、
前記スプールの引出方向への回転が制限された際にウェビングからの荷重により捩れ変形されることで前記スプールの引出方向への回転が許容されてウェビングの前記スプールからの引出しが許容されるトーション部材と、
前記トーション部材が捩れ変形される途中で前記スプールの摺動抵抗を低下させる低下機構と、
を備えるウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記スプールの摺動部分と前記スプールが摺動する被摺動部分との少なくとも一方が変更される請求項1記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記摺動部分と前記被摺動部分との少なくとも一方が削られて前記摺動部分と前記被摺動部分との少なくとも一方が変更される請求項2記載のウェビング巻取装置。
【請求項4】
前記摺動部分と前記被摺動部分との少なくとも一方が変更されて前記摺動部分又は前記被摺動部分にされる変更部材を備える請求項2記載のウェビング巻取装置。
【請求項5】
前記摺動部分と前記被摺動部分との少なくとも一方が複数回変更される請求項2記載のウェビング巻取装置。
【請求項6】
前記スプールの摺動抵抗を低下させる潤滑剤を備える請求項1記載のウェビング巻取装置。
【請求項7】
前記スプールの摺動部分と前記スプールが摺動する被摺動部分との最大体積材料が同一にされる請求項1記載のウェビング巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプールの引出方向への回転が許容されるウェビング巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のベルトリトラクタでは、ベルトリールにウェビングが巻き取られており、ベルトリールの引出方向への回転が制限された際に、ウェビングからの荷重によりトーションロッドが捩れ変形されることで、ベルトリールの引出方向への回転が許容されて、ウェビングのベルトリールからの引出しが許容される。
【0003】
ここで、このようなベルトリトラクタでは、トーションロッドの捩れ変形量が大きくされるに従い、トーションロッドが捩れ変形されるための荷重が徐々に大きくされて、ウェビングの引出許容荷重が徐々に上昇される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、ウェビングの引出許容荷重の上昇を抑制できるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のウェビング巻取装置は、乗員に装着されるウェビングが巻取られ、引出方向に回転されてウェビングが引出されると共に、車両の緊急時に引出方向への回転が制限されるスプールと、前記スプールの引出方向への回転が制限された際にウェビングからの荷重により捩れ変形されることで前記スプールの引出方向への回転が許容されてウェビングの前記スプールからの引出しが許容されるトーション部材と、前記トーション部材が捩れ変形される途中で前記スプールの摺動抵抗を低下させる低下機構と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のウェビング巻取装置は、本発明の第1態様のウェビング巻取装置において、前記スプールの摺動部分と前記スプールが摺動する被摺動部分との少なくとも一方が変更される。
【0008】
本発明の第3態様のウェビング巻取装置は、本発明の第2態様のウェビング巻取装置において、前記摺動部分と前記被摺動部分との少なくとも一方が削られて前記摺動部分と前記被摺動部分との少なくとも一方が変更される。
【0009】
本発明の第4態様のウェビング巻取装置は、本発明の第2態様又は第3態様のウェビング巻取装置において、前記摺動部分と前記被摺動部分との少なくとも一方が変更されて前記摺動部分又は前記被摺動部分にされる変更部材を備える。
【0010】
本発明の第5態様のウェビング巻取装置は、本発明の第2態様~第4態様の何れか1つのウェビング巻取装置において、前記摺動部分と前記被摺動部分との少なくとも一方が複数回変更される。
【0011】
本発明の第6態様のウェビング巻取装置は、本発明の第1態様~第5態様の何れか1つのウェビング巻取装置において、前記スプールの摺動抵抗を低下させる潤滑剤を備える。
【0012】
本発明の第7態様のウェビング巻取装置は、本発明の第1態様~第6態様の何れか1つのウェビング巻取装置において、前記スプールの摺動部分と前記スプールが摺動する被摺動部分との最大体積材料が同一にされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様のウェビング巻取装置では、乗員に装着されるウェビングがスプールに巻取られており、スプールが引出方向に回転されて、ウェビングがスプールから引出される。また、車両の緊急時にスプールの引出方向への回転が制限された際に、ウェビングからの荷重によりトーション部材が捩れ変形されることで、スプールの引出方向への回転が許容されて、ウェビングのスプールからの引出しが許容される。
【0014】
ここで、トーション部材が捩れ変形される途中で、低下機構がスプールの摺動抵抗を低下させる。このため、ウェビングの引出許容荷重の上昇を抑制できる。
【0015】
本発明の第2態様のウェビング巻取装置では、スプールの摺動部分とスプールが摺動する被摺動部分との少なくとも一方が変更される。このため、スプールの摺動抵抗を変更できる。
【0016】
本発明の第3態様のウェビング巻取装置では、摺動部分と被摺動部分との少なくとも一方が削られて、摺動部分と被摺動部分との少なくとも一方が変更される。このため、簡単な構成で摺動部分と被摺動部分との少なくとも一方を変更できる。
【0017】
本発明の第4態様のウェビング巻取装置では、摺動部分と被摺動部分との少なくとも一方が変更されて、変更部材が摺動部分又は被摺動部分にされる。このため、スプールの摺動抵抗を容易に変更できる。
【0018】
本発明の第5態様のウェビング巻取装置では、摺動部分と被摺動部分との少なくとも一方が複数回変更される。このため、スプールの摺動抵抗を複数回変更できる。
【0019】
本発明の第6態様のウェビング巻取装置では、スプールの摺動抵抗を潤滑剤が低下させる。このため、簡単な構成でスプールの摺動抵抗を低下させることができる。
【0020】
本発明の第7態様のウェビング巻取装置では、スプールの摺動部分とスプールが摺動する被摺動部分との最大体積材料が同一にされる。このため、摺動部分と被摺動部分とが焼付くことで、スプールの摺動抵抗を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置を示す後側から見た断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置の主要部を示す下斜め右方から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置のベアリングを示す左側から見た斜視図である。
【
図4】(A)は、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置の主要部を示す左側から見た断面図であり、(B)は、本発明の実施形態の変形例に係るウェビング巻取装置の主要部を示す左側から見た断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置におけるウェビングの引出ストローク(横軸)とウェビングの引出許容荷重(縦軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置10が後側から見た断面図にて示されており、
図2には、ウェビング巻取装置10の主要部が下斜め右方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、ウェビング巻取装置10の前方を矢印FRで示し、ウェビング巻取装置10の右方を矢印RHで示し、ウェビング巻取装置10の上方を矢印UPで示している。
【0023】
本実施形態に係るウェビング巻取装置10は、車両に設置されており、ウェビング巻取装置10の前方、左方及び上方は、それぞれ例えば車幅方向外方、車両前方及び上方に向けられている。
【0024】
図1及び
図2に示す如く、ウェビング巻取装置10は、支持体としての金属製で断面U字形板状のフレーム12を備えており、フレーム12には、後側の背板12Aと、左側の脚板12Bと、右側の脚板12Cと、が設けられている。フレーム12は、背板12Aにおいて、車体に固定されており、これにより、ウェビング巻取装置10が車両に設置されている。脚板12B及び脚板12Cには、それぞれ円状の支持孔12D及び支持孔12Eが貫通形成されており、支持孔12D及び支持孔12Eは、同軸上に配置されている。
【0025】
フレーム12の脚板12Bと脚板12Cとの間には、回転体としての略円筒状のスプール14が配置されており、スプール14は、アルミニウムダイカスト製にされている。スプール14の左端部は、脚板12Bの支持孔12Dに同軸上に貫通されると共に、スプール14の右端部は、脚板12Cの支持孔12Eに同軸上に貫通されており、スプール14は、中心軸線周りの巻取方向及び引出方向に回転可能に支持されている。
【0026】
スプール14内には、略円柱状の内孔14Aが同軸上に貫通形成されている。内孔14Aの左端部は、同軸上に拡径されており、内孔14Aの左端部の周面は、摺動部分としての円筒面状の回転面14B(
図4(A)参照)にされている。
【0027】
スプール14には、長尺帯状のウェビング16が基端側から巻取られており、スプール14が巻取方向に回転されて、スプール14にウェビング16が巻取られると共に、スプール14からウェビング16が引出されて、スプール14が引出方向に回転される。また、スプール14からウェビング16が引出されることで、車両の座席に着座した乗員にウェビング16が装着される。
【0028】
フレーム12の右側には、付勢機構18が設けられており、付勢機構18は、スプール14の右端部に連結されて、スプール14を巻取方向に付勢している。
【0029】
スプール14の内孔14Aには、トーション部材(エネルギー吸収部材)としての略円柱状のトーションシャフト20が同軸上に挿入されており、トーションシャフト20は、軟鉄製にされている。トーションシャフト20の右端部は、スプール14の内孔14Aの右端部に一体回転可能に連結されており、トーションシャフト20は、スプール14と一体回転可能にされている。また、トーションシャフト20の左端部は、内孔14Aの回転面14B内に配置されている。
【0030】
スプール14の左側には、規制機構としてのロック機構22が設けられている。
【0031】
ロック機構22には、規制体を構成する連結部材としての略円板状のピニオン24が設けられており、ピニオン24は、アルミニウムダイカスト製にされている。このため、ピニオン24の材料とスプール14の材料とは、同種の金属にされており、ピニオン24とスプール14とは、最大体積材料が同一の金属にされている。
【0032】
ピニオン24の右側には、連結部としての略円筒状の連結筒24A(
図4(A)参照)が同軸上に一体形成されており、連結筒24Aは、外周面が円筒面状にされて、スプール14(内孔14A)の回転面14B内に同軸上に挿入されている。連結筒24A内には、トーションシャフト20の左端部が一体回転可能に連結されており、ピニオン24は、トーションシャフト20と一体回転可能にされている。
【0033】
連結筒24Aの外周面には、低下機構を構成する被摺動部分としての半円柱状のリブ24Bが所定数(本実施形態では8個)一体形成されており、リブ24Bは、連結筒24Aの径方向外側に突出されると共に、連結筒24Aの軸方向に延在されている。所定数のリブ24Bは、連結筒24Aの周方向に等間隔に配置されており、連結筒24Aは、所定数のリブ24Bにおいて、スプール14(内孔14A)の回転面14Bに接触されている。
【0034】
連結筒24Aの外周には、低下機構を構成する変更部材及び被摺動部分としての略円筒状のベアリング26(
図3及び
図4(A)参照)が同軸上に配置されており、ベアリング26は、樹脂製にされている。ベアリング26には、長尺矩形状の貫通孔26Aが所定数(本実施形態では8個)貫通形成されており、所定数の貫通孔26Aは、それぞれベアリング26の軸方向に延在されると共に、ベアリング26の周方向に等間隔に配置されている。貫通孔26Aには、連結筒24Aのリブ24Bが貫通されており、ベアリング26の内周面は、連結筒24Aの外周面に嵌合(接触)されている。リブ24Bは、ベアリング26の径方向外側に突出されており、ベアリング26の外周面は、スプール14(内孔14A)の回転面14Bから離間されている。
【0035】
ピニオン24の左側には、規制体を構成する規制部材としての金属製で略円板状のロックベース28が同軸上に配置されており、ロックベース28は、ピニオン24と一体回転可能に連結されている。
【0036】
ロック機構22には、ロックベース28の左側において、センサ機構30が設けられている。車両の衝突時(車両の急減速時及びウェビング16のスプール14からの急引出し時等の車両の緊急時)には、センサ機構30が作動されて、ロック機構22がロックベース28の引出方向への回転を規制(ロック)することで、ピニオン24の引出方向への回転が規制されて、トーションシャフト20を介してスプール14の引出方向への回転が制限される。
【0037】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0038】
以上の構成のウェビング巻取装置10では、スプール14からウェビング16が引出されて、乗員にウェビング16が装着される。また、付勢機構18の付勢力により、スプール14が巻取方向に回転されて、ウェビング16がスプール14に巻取られることで、乗員に装着されたウェビング16の弛みが除去される。
【0039】
車両の衝突時には、ロック機構22のセンサ機構30が作動されて、ロック機構22がロックベース28の引出方向への回転を規制することで、ピニオン24の引出方向への回転が規制されて、トーションシャフト20を介してスプール14の引出方向への回転が制限される。これにより、ウェビング16のスプール14からの引出しが制限されることで、ウェビング16によって乗員が拘束される。
【0040】
また、ロックベース28及びピニオン24の引出方向への回転が規制された状態で、乗員によってウェビング16にスプール14からの引出荷重が作用されて、スプール14の引出方向への回転荷重によりトーションシャフト20が捩れ変形されることで、スプール14のロックベース28及びピニオン24に対する引出方向への回転が許容されて、ウェビング16のスプール14からの引出しが許容される。これにより、乗員の運動エネルギーがトーションシャフト20の捩れ変形によって吸収される。
【0041】
ところで、トーションシャフト20が捩れ変形(塑性変形)される際には、トーションシャフト20の捩れ変形量の増加に比例して、トーションシャフト20が捩れ変形されるための荷重(トーションシャフト20の捩れ変形荷重)が徐々に大きくされる(
図5の破線参照)。また、ウェビング16の引出しが許容される際(スプール14の引出方向への回転が許容される際)には、ウェビング16が引出されるための荷重(ウェビング16の引出許容荷重、フォースリミッタ荷重)がトーションシャフト20の捩れ変形荷重とスプール14の摺動荷重との合計にされる。
【0042】
トーションシャフト20が捩れ変形される(ウェビング16の引出しが許容される)初期には、スプール14(内孔14A)の回転面14Bがピニオン24(連結筒24A)のリブ24Bに対し摺動する。また、スプール14(回転面14B)の材料とピニオン24(リブ24B)の材料とが同種の金属にされている。このため、回転面14Bがリブ24Bに対し摺動する際には、回転面14Bとリブ24Bとが焼付くことで、回転面14Bのリブ24Bに対する摺動荷重が大きくされて、スプール14の摺動荷重が大きくされる。
【0043】
これにより、トーションシャフト20が捩れ変形される初期には、トーションシャフト20の捩れ変形荷重が小さくても、スプール14の摺動荷重が大きくされることで、ウェビング16の引出許容荷重が大きくされる(
図5の実線参照)。
【0044】
また、回転面14Bがリブ24Bに対し摺動する際には、ピニオン24(連結筒24A)において、回転面14Bによりリブ24Bが徐々に削られて、リブ24Bのベアリング26に対する突出量が徐々に小さくされる。このため、トーションシャフト20が捩れ変形される際には、回転面14Bがリブ24Bに対し摺動する状態から回転面14Bがベアリング26に対し摺動する状態に徐々に変更される。これにより、トーションシャフト20が捩れ変形される中期には、回転面14Bがリブ24B及びベアリング26に対し摺動すると共に、トーションシャフト20が捩れ変形される後期には、回転面14Bがベアリング26に対し摺動する。また、スプール14(回転面14B)が金属製にされると共に、ベアリング26が樹脂製にされている。このため、回転面14Bがベアリング26に対し摺動する際には、回転面14Bのベアリング26に対する摺動荷重が小さくされる(略0にされる)。
【0045】
これにより、トーションシャフト20が捩れ変形される中期には、トーションシャフト20の捩れ変形荷重が徐々に大きくされる一方、回転面14Bのリブ24Bに対する摺動荷重が徐々に小さくされると共に、回転面14Bのベアリング26に対する摺動荷重が小さくされて(略0にされて)、スプール14の摺動荷重が徐々に小さくされることで、ウェビング16の引出許容荷重が維持される(
図5の実線参照)。
【0046】
そして、トーションシャフト20が捩れ変形される後期には、トーションシャフト20の捩れ変形荷重が徐々に大きくされる一方、回転面14Bのベアリング26に対する摺動荷重が小さくされて(略0にされて)、スプール14の摺動荷重が小さくされる(略0にされる)ことで、ウェビング16の引出許容荷重が徐々に大きくされる(
図5の実線参照)。
【0047】
以上により、トーションシャフト20が捩れ変形される際には、トーションシャフト20の捩れ変形量に対し、ウェビング16の引出許容荷重が平均化される。
【0048】
ここで、上述の如く、トーションシャフト20が捩れ変形される中期及び後期には、スプール14の回転面14Bの摺動対象がピニオン24のリブ24Bからベアリング26に変更されて、スプール14の摺動抵抗が低下される。このため、ウェビング16の引出許容荷重の上昇を抑制できる。
【0049】
また、トーションシャフト20が捩れ変形される際には、回転面14Bによってリブ24Bが削られて、回転面14Bの摺動対象がリブ24Bからベアリング26に変更される。このため、簡単な構成で回転面14Bの摺動対象を変更できる。
【0050】
さらに、トーションシャフト20が捩れ変形される際には、回転面14Bの摺動対象がピニオン24のリブ24Bからピニオン24とは別部材のベアリング26に変更される。このため、スプール14の摺動抵抗を容易に低下させることができる。
【0051】
また、スプール14(回転面14B)の材料とピニオン24(リブ24B)の材料とが同種の金属にされており、トーションシャフト20が捩れ変形される初期には、回転面14Bがリブ24Bに対し摺動して、回転面14Bとリブ24Bとが焼付く。このため、スプール14の摺動抵抗を大きくでき、トーションシャフト20の捩れ変形荷重が小さくても、ウェビング16の引出許容荷重を大きくできて、ウェビング16による乗員の拘束力を大きくできる。
【0052】
(変形例)
図4(B)には、上記実施形態の変形例に係るウェビング巻取装置50の主要部が左側から見た断面図にて示されている。
【0053】
図4(B)に示す如く、本変形例に係るウェビング巻取装置50では、ピニオン24(連結筒24A)のリブ24Bが矩形板状にされており、リブ24Bは、連結筒24Aの周方向に沿って湾曲されている。リブ24Bは、所定数(本変形例では6個)設けられており、所定数のリブ24Bは、連結筒24Aの周方向に等間隔に配置されている。
【0054】
ベアリング26には、貫通孔26Aが所定数(本変形例では6個)設けられており、所定数の貫通孔26Aは、ベアリング26の周方向に等間隔に配置されている。貫通孔26Aのベアリング26周方向の寸法は、上記実施形態に対し大きくされており、貫通孔26Aには、ピニオン24(連結筒24A)のリブ24Bが貫通されている。
【0055】
ここで、本変形例でも、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0056】
さらに、本変形例の如く、上記実施形態に対しリブ24B及び貫通孔26Aの形状、大きさ及び個数の少なくとも1つを変更することで、スプール14の摺動荷重の大きさ及びスプール14の摺動荷重の低下タイミングを調整できる。
【0057】
なお、上記実施形態(変形例を含む)では、スプール14(摺動部材)とピニオン24(被摺動部材)とがアルミニウムダイカスト製にされる。しかしながら、スプール14(摺動部材)とピニオン24(被摺動部材)とが例えば亜鉛ダイカスト製にされてもよい。しかも、スプール14(摺動部材)の材料とピニオン24(被摺動部材)の材料とは、完全に同一の金属でなくてもよく、スプール14とピニオン24とは、最大体積材料が同一の金属であればよい。さらに、スプール14(摺動部材)の材料とピニオン24(被摺動部材)の材料とは、異なる材料であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態(変形例を含む)では、ベアリング26が樹脂製にされる。しかしながら、ベアリング26の材料は、スプール14及びピニオン24の最大体積材料以外のもの(例えば鉄)にされればよい。
【0059】
さらに、上記実施形態(変形例を含む)では、ピニオン24の連結筒24Aの外周面にベアリング26が配置される。しかしながら、ピニオン24の連結筒24Aの外周面にベアリング26に代えて低下機構及び潤滑剤としてのグリスが配置(塗布)されてもよい。この場合、ベアリング26の配置範囲にグリスが代わりに配置される。これにより、トーションシャフト20が捩れ変形される際には、スプール14の回転面14Bにより連結筒24Aのリブ24Bが徐々に削られて、回転面14Bがリブ24Bに対し摺動する状態から回転面14Bがグリスを介してリブ24Bに対し摺動する状態に変更されることで、スプール14の摺動抵抗が低下される。
【0060】
また、上記実施形態(変形例を含む)では、ピニオン24(連結筒24A)のリブ24Bの突出量が全て同一にされる。しかしながら、ピニオン24(連結筒24A)のリブ24Bの突出量が互いに相違されてもよい。この場合、トーションシャフト20が捩れ変形される際に、スプール14の回転面14Bにより最大突出量のリブ24Bから最小突出量のリブ24Bが順に削られることで、回転面14Bが摺動するリブ24Bの個数が増加されて、スプール14の摺動抵抗が徐々に大きくされる。その後、回転面14Bがリブ24Bに対し摺動する状態から回転面14Bがベアリング26に対し摺動する(グリスを介してリブ24Bに対し摺動してもよい)状態に変更される。
【0061】
さらに、上記実施形態(変形例を含む)では、ピニオン24の連結筒24Aにリブ24B及びベアリング26(グリスでもよい)が設けられる。しかしながら、スプール14の回転面14Bにリブ24B及びベアリング26(グリスでもよい)が設けられてもよい。この場合、トーションシャフト20が捩れ変形される際に、リブ24B(摺動部分)が連結筒24Aの外周面(被摺動部分)に対し摺動する状態からベアリング26(摺動部分)が連結筒24Aの外周面に対し摺動する(リブ24Bがグリスを介して連結筒24Aの外周面に対し摺動してもよい)状態に変更される。
【0062】
また、上記実施形態(変形例を含む)では、スプール14とピニオン24との間にリブ24B及びベアリング26(グリスでもよい)が設けられて、トーションシャフト20が捩れ変形される際にスプール14がピニオン24に対し摺動される。しかしながら、スプール14とピニオン24以外の部分(例えばトーションシャフト20の左部)との間にリブ24B及びベアリング26(グリスでもよい)が設けられて、トーションシャフト20が捩れ変形される際にスプール14が当該ピニオン24以外の部分に対し摺動されてもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態(変形例を含む)では、トーションシャフト20が捩れ変形される際に、スプール14の摺動抵抗が低下されて略0にされる。しかしながら、トーションシャフト20が捩れ変形される際に、スプール14の摺動抵抗が低下されて0にされてもよい。
【0064】
また、上記実施形態(変形例を含む)では、トーションシャフト20が捩れ変形(塑性変形)される際に、トーションシャフト20の捩れ変形量の増加に比例して、トーションシャフト20の捩れ変形荷重が徐々に大きくされる。しかしながら、トーションシャフト20が捩れ変形(塑性変形)される際に、トーションシャフト20の捩れ変形量が大きくされるに従い、トーションシャフト20の捩れ変形荷重が大きくされればよい。
【符号の説明】
【0065】
10・・・ウェビング巻取装置、14・・・スプール、14B・・・回転面(摺動部分)、16・・・ウェビング、20・・・トーションシャフト(トーション部材)、24B・・・リブ(低下機構、被摺動部分)、26・・・ベアリング(低下機構、変更部材、被摺動部分)、50・・・ウェビング巻取装置