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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101478
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】放射線施設の解体工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240722BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
E04G23/08 J
E04G23/08 E
E04G23/08 H
G21F9/30 T
G21F9/30 535A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005487
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】井戸 康浩
(72)【発明者】
【氏名】奥田 修司
(72)【発明者】
【氏名】石丸 達朗
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】右田 周平
(72)【発明者】
【氏名】田中 高広
(72)【発明者】
【氏名】工藤 真温
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176DD28
2E176DD51
2E176DD62
(57)【要約】
【課題】周辺環境への影響が少ない放射線施設解体工法を提供する。
【解決手段】積層構造の遮蔽材12を備えた放射線施設10の解体工法であって、
遮蔽材12における、少なくとも一部を露出させる天井部露出工程と、
遮蔽材12の、露出した部位である露出部32を、揚重しながら、ガス切断装置により切断して分離させる切断工程と、
露出部32の、分離した部位である切断遮蔽材64を撤去する撤去工程と、を備えた。
切断工程では、遮蔽材12を支保手段30により支えながら切断が行われる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造の遮蔽材を備えた放射線施設の解体工法であって、
前記遮蔽材における、少なくとも一部を露出させる露出工程と、
前記遮蔽材の、露出した部位である露出部を、揚重しながら、非打撃解体手段により切断して分離させる切断工程と、
前記露出部の、分離した部位である分離部を撤去する撤去工程と、を備えた放射線施設の解体工法。
【請求項2】
前記切断工程では、前記遮蔽材を支保手段により支えながら切断が行われる、請求項1に記載の放射線施設の解体工法。
【請求項3】
前記切断工程では、切断を複数回繰り返す、請求項1に記載の放射線施設の解体工法。
【請求項4】
前記切断工程の後、前記遮蔽材の残った壁部を引き倒して除去する壁部除去工程を備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の放射線施設の解体工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、病院等に設置された放射線施設の解体工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放射線を利用する施設では、放射線の照射が行われる部屋の周囲を遮蔽材により囲うことが行われている。放射線を利用する施設としては、放射線治療装置(リニアック)を備えた病院等を例示できる。
【0003】
後掲の特許文献1(段落0025、0026、図1Aなど)には、門型の遮蔽材(10)により、放射線装置から放射される放射線が室外に漏洩するのを防止することが開示されている。また、特許文献1の段落0038には、遮蔽材(11、12)が、複数の遮蔽層(13、14)により構成され、各遮蔽層(13、14)は鋼板により構成されていることが開示されている。さらに、段落0036には、先行躯体(30)自体が遮蔽材(10)を支持する支持材となるので、支持材の設置、解体、補修などに係る作業が不要になることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6456186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄筋や鋼板等を内蔵したコンクリート壁やスラブを解体する方法として、ブレーカー等による打撃解体がある。打撃解体においては、例えば、スラブ等の構造物に対して、ブレーカーによる打撃が加えられ、鋼板等の周りの鉄筋コンクリートが除去された後、鋼板等が撤去される。しかし、このような打撃解体においては、ブレーカー等や打撃による騒音や振動が発生し、周辺環境に及ぼす影響が大きい。
【0006】
また、放射線施設の解体では、鉄筋コンクリートや、鉄筋コンクリートの中に埋め込まれた分厚い鋼板を解体する必要がある。さらに、放射線治療装置(リニアック)等が備えられた放射線施設は病院に付属しているため、市街地に建造されていることが多い。したがって、病院周辺の住宅等に対し、騒音や振動の影響を抑えるための配慮が必要になる。また、病院等における放射線施設の改修工事は、建物における他の部分の利用を継続しながら解体作業を行う、所謂「居ながら解体」になる場合が多く、騒音や振動に対してより一層の配慮が必要になる。
【0007】
本発明は、周辺環境への影響が少ない放射線施設の解体工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る放射線施設の解体工法は、
積層構造の遮蔽材を備えた放射線施設の解体工法であって、
前記遮蔽材における、少なくとも一部を露出させる露出工程と、
前記遮蔽材の、露出した部位である露出部を、揚重しながら、非打撃解体手段により切断して分離させる切断工程と、
前記露出部の、分離した部位である分離部を撤去する撤去工程と、を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周辺環境への影響が少ない放射線施設の解体工法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る解体工法により解体される放射線施設を斜めから見た状態を模式的に示す説明図、(b)はコンクリート天井部の解体を模式的に示す説明図である。
図2】(a)は図1(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図2(a)に続く工程を示す説明図である。
図3】(a)は図2(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図3(a)に続く工程を示す説明図である。
図4】(a)は図3(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図4(a)に続く工程を示す説明図である。
図5】(a)は図4(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図5(a)に続く工程を示す説明図である。
図6】(a)は図5(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図6(a)に続く工程を示す説明図である。
図7】(a)は図6(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図7(a)に続く工程を示す説明図である。
図8】(a)は図7(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図8(a)に続く工程を示す説明図である。
図9】(a)は図8(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図9(a)に続く工程を示す説明図である。
図10】(a)は図9(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図10(a)に続く工程を示す説明図である。
図11】(a)は図10(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図11(a)に続く工程を示す説明図である。
図12】(a)は図11(b)に続く工程を示す説明図、(b)は図12(a)に続く工程を示す説明図である。
図13】ガス切断装置の構成を模式的に示す説明図である。
図14】遮蔽材に固定された当て板の一例を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る放射線施設の解体工法について説明する。図1図12は、本実施形態に係る解体工法の手順を順に示している。図1(a)において、符号10は、解体工事の対象となる放射線施設を部分的に示している。本実施形態の放射線施設10は、放射線治療装置(リニアック)の放射線を遮蔽する。
【0012】
放射線施設10には、門型の遮蔽材12や、遮蔽材12を覆ったコンクリート部14が備えられている。コンクリート部14は、図示は省略するが、部分的に鉄筋を含んだ鉄筋コンクリートである。図1(a)の例では、遮蔽材12の端面(端辺)12aがコンクリート部14から露出している。
【0013】
放射線施設10は、壁部(以下では「コンクリート壁部」と称する)16、18と、天井部(以下では「コンクリート天井部」と称する)20と、床部21とを有している。また、遮蔽材12は、壁部(以下では「遮蔽材壁部」と称する)22、24と、天井部(以下では「遮蔽材天井部」と称する)26とを有している。ここで、一方のコンクリート壁部16の側壁面は、内部の遮蔽材壁部22の側壁面に対し、所定の角度をもって斜めに形成されている。
【0014】
なお、放射線施設10(及び遮蔽材12)は、門型のものに限られない。例えば、遮蔽材12が床部(床部遮蔽材)を備えた形状のものであってもよい。その場合は、床部21にも、以降に説明するような解体工法を適用することが可能である。
【0015】
さらに、遮蔽材天井部26が、例えば、湾曲した形状のものや、多角形の一部を構成するような形状のもの等であってもよい。また、例えば、遮蔽材壁部22、24と、遮蔽材天井部26とが(及び、コンクリート壁部16、18と、コンクリート天井部20とが)、滑らかに連続した曲面形状のもの(アーチ型のもの)等であってもよい。さらに、遮蔽材壁部22、24(及びコンクリート壁部16、18)が、湾曲した形状のもの等であってもよい。
【0016】
本実施形態の解体工法は、積層構造の遮蔽材12を備えた放射線施設10の解体工法である。本実施形態の解体工法は、遮蔽材12の少なくとも一部を露出させる露出工程(図1(b)、図2(a)、図6(b)~図7(b)に示す工程など)と、遮蔽材12の、露出した部位である露出部(露出部23、25、32など)を、揚重しながら、非打撃解体手段(後述するガス切断装置100など)により切断して分離させる切断工程(図3(b)、図8(a)に示す工程など)と、を備えている。また、本実施形態の解体工法は、露出部32の、分離した部位である分離部(切断遮蔽材64、72、78、86など)を撤去する撤去工程(図4(a)、図8(b)に示す工程など)を備えている。
【0017】
遮蔽材12を解体する非打撃解体手段には、例えばブレーカーのように、解体対象物に打撃を加えて解体を行うものは含まれない。非打撃解体手段には、例えば、プラズマ切断装置、レーザー切断装置、ガス切断装置、ウォータージェット切断装置、及び、ランス(ファイアーランス)切断装置等といった、打撃によらない各種の解体手段を採用することができる。
【0018】
本実施形態においては、非打撃解体手段として、ガス切断装置が用いられている。ガス切断装置としても種々のものを採用できるが、本実施形態で用いられているガス切断装置は、燃料ガス中に金属パウダーを混合するものである。金属パウダーを混合して燃焼させるタイプのガス切断装置は、例えば、本出願人による特願2020-157195号明細書等(特開2022-50977号公報)に開示されている。
【0019】
図13には、このタイプのガス切断装置100が模式的に示されている。図13に示すように、このタイプのガス切断装置100には、切断トーチ102が備えられている。切断トーチ102の先端部には、火口受け104が設けられており、火口受け104には、火口106がねじ込まれている。
【0020】
切断トーチ102には、燃料ガス、切断酸素、予熱酸素、金属パウダー(「金属粉」ともいう、以下では「パウダー」と称する)、及び、冷却水等が、図示を省略した調整供給部から、所定の圧力で供給される。燃料ガスやパウダー等は、火口受け104及び火口106の内部を通り、火口106の先端から噴射されて混合ガスとなる。混合ガスへの着火により、切断トーチ102の先端から、火炎が高速で直進性よく噴射される。
【0021】
本実施形態においては、切断トーチ102は、リニアガイド装置110に装着されている。リニアガイド装置110は、ガス切断装置100に備えられている。リニアガイド装置110は、モータ(図示略)を駆動源とし、切断トーチ102を、例えば、1軸方向へ自動的に直線移動させる。リニアガイド装置110は、有線又は無線による駆動源の遠隔操作が可能である。リニアガイド装置110を利用した遮蔽材12の解体方法については後述する。
【0022】
遮蔽材12は、例えば、10~90mm程度の板厚の鋼板27を、複数枚(例えば数枚~十数枚など)積層して構成され、積層構造を有している。鋼板27が積層されていることから、鋼板27同士の間には、僅かではあるが、隙間が存在する。
【0023】
鋼板27は、図14に一例を示すように、当て板28を溶接して束ねられている。また、当て板28が設けられた箇所以外でも、鋼板27は、端部において部分的に溶接されている。当て板28が設けられた部分や、鋼板27同士の溶接された端部を除去することにより、鋼板27は分離する。
【0024】
当て板28は、仮設物であり、作業現場における作業者や監督者の判断により、必要に応じて付加される。このため、当て板28は、事前に作成される設計図面には記載されておらず、通常、放射線施設10の解体前には、遮蔽材12の有無や配置は判明していない。そして、遮蔽材12の周囲のコンクリート部14を除去してみなければ、遮蔽材12の解体をどのように進めると効率よく解体できるのか、といった事項を把握するのは困難である。
【0025】
このような放射線施設10に対して、図1(b)に示すように、先ず、圧砕機38を用い、コンクリート部14を圧砕する(はつる)。図1(b)において圧砕機38は、車両系建設機械(重機)のアーム部42に、アタッチメントとして装着されている。圧砕機38は、コンクリート用のものであり、油圧により挟み状の部分を開閉動作させて、コンクリート部14を挟み込む。
【0026】
圧砕機38が挟み込める最大の厚さは700mm程度であることが多い。このため、コンクリート部14の圧砕は、700mm程度以下の厚みの部位に対して、圧砕機38により加圧することによって行われる。コンクリート部14の圧砕により、図1(b)に示すように、コンクリート片33が発生する。コンクリート片33は、解体作業を行い易くなるよう、適宜除去される。
【0027】
図2(a)は、圧砕により、遮蔽材天井部26(スラブ鋼板)を部分的に露出させた状態を示している。図2(a)に示すように、遮蔽材天井部26を部分的に露出させた後、図2(b)に示すように、コンクリート壁部16、18の外側に、足場46、48が設置される。足場46、48は、詳細な図示や説明は省略するが、ベース部やジャッキ部の上に、建枠、筋交い、布板等の一般的な足場材を用いて多段に構成されている。
【0028】
ここで、図2(b)において足場46、48は、図示が煩雑にならないよう、グレースケールにより示されている。このことは、以降に参照する図3(a)、(b)、図4(a)、(b)、図5(a)、及び、図8(a)、(b)でも同様である。
【0029】
また、遮蔽材12に対しては、支保手段30により、支持や保持が行われている。支保手段30は、解体中の遮蔽材12やコンクリート部14が倒れたり崩れたりしないよう、適宜な形態で組み上げることが可能である。図2(b)では、支保手段30を構成するパイプ類等は、黒い直線により模式的に示されている。
【0030】
ここで、図2(b)では、支保手段30は黒線により示されているが、図3(a)以降では、支保手段30は、図示が煩雑にならないよう、グレースケールにより示されている(図3(a)、(b)、図4(a)、(b)、図5(a))。
【0031】
続いて、図3(a)に示すように、遮蔽材天井部26の露出した部分に対して、直線的に切断が行われる。図3(a)の符号52、54は、遮蔽材天井部26に形成された第1切断線と第2切断線を示している。第1切断線52と第2切断線54は、連続して(繋がって)形成されている。
【0032】
図3(a)の例において、第1切断線52は、図4に示す奥行き方向に伸びており、第2切断線54は、幅方向に延びている。図3(a)には、直交するXYZ座標が示されている。図3(a)の例では、奥行き方向はY軸方向に一致しており、幅方向はX軸方向に一致している。ここで、図3(a)の例では、図の手前側から奥側へ向かう向きが、Y軸の正方向であり、図の左側から右側へ向かう向きが、X軸の正方向である。
【0033】
Y軸方向(奥行き方向)に伸びる第1切断線52が、先に、正方向(手前から奥の方向)に形成されている。この後、X軸方向(幅方向)に伸びる第2切断線54が、正方向(左側から右側)に形成されている。
【0034】
第1切断線52及び第2切断線54の形成(遮蔽材12の切断)は、前述のガス切断装置100(図13)を用いて行われている。ガス切断装置100においては、図13に示すように、切断トーチ102が、リニアガイド装置110に装着されている。切断トーチ102は、リニアガイド装置110によって、1軸方向に案内される。
【0035】
リニアガイド装置110は、ベース部112と、ベース部112上で1軸方向にリニアスライドするホルダ部114を備えている。ホルダ部114は、丸棒状のガイドロッド116に沿って移動する。ホルダ部114は、切断トーチ102を保持している。切断トーチ102は、火口106から火炎を噴射して、遮蔽材12を切断する。切断トーチ102が直線移動することにより、遮蔽材12は直線状に切断される。
【0036】
ガス切断装置100は、遮蔽材天井部26の上面56に載せられ、適宜移動させられる。ガス切断装置100の位置を直線的に変更し、ガス切断装置100を移動させることにより、リニアガイド装置110における切断トーチ102の可動範囲よりも長い範囲を切断できる。
【0037】
なお、リニアガイド装置110は、モータ等の駆動源を備えたものに限らず、例えば、手動で切断トーチ102を変位させるものであってもよい。また、ガス切断装置100にリニアガイド装置110を備えず、ガス切断装置100を移動させることのみによって、線状に切断を行うものであってもよい。
【0038】
第1切断線52及び第2切断線54は、遮蔽材天井部26を貫通している。前述したような各種の非打撃解体手段(プラズマ切断装置、レーザー切断装置、ガス切断装置、ウォータージェット切断装置、及び、ランス切断装置等)のいずれを用いても、第1切断線52及び第2切断線54を、遮蔽材天井部26を貫通するように形成できる。したがって、種々の非打撃解体手段により、遮蔽材12の解体を行うことが可能である。
【0039】
さらに、本実施形態のように、パウダー混合ガスの噴射を行う切断トーチ102(図13)を用いることにより、相対的に短時間で、第1切断線52及び第2切断線54を、遮蔽材天井部26を貫通するように形成することが可能である。これは、パウダーを含む混合ガスを介し、鋼板27同士の間に隙間が存在しても連続性をもって、鋼板27を効率よく切断できるためであると考えられる。
【0040】
図3(a)に符号58で示すのは、切り欠き部である。切り欠き部58は、矩形状に開口している。切り欠き部58は、遮蔽材天井部26の、第2切断線54に面する部位を矩形状に切り取ることにより形成されている。切り欠き部58の加工は、コンクリート部14を部分的に圧砕して、遮蔽材天井部26を露出させた後に行われている。
【0041】
切り欠き部58は、図示は省略するが、遮蔽材天井部26の厚さ方向に直線状に延びており、遮蔽材天井部26を貫通している。そして、切り欠き部58は、遮蔽材天井部26の下面59にも、上面56と同様に開口している。
【0042】
続いて、図3(b)に示すように、切り欠き部58に対して、揚重のための吊りワイヤ60が通される。吊りワイヤ60の上端は、重機(図示略)のアームに繋がっている。吊りワイヤ60の下端は、図3(b)に示すように、切り欠き部58から、一旦、遮蔽材天井部26の手前側(Y軸の負側)に引き回され、遮蔽材天井部26の前縁部29に巻き付けられている。
【0043】
ここで、図3(b)では、吊りワイヤ60の状態を明示するために、遮蔽材天井部26の前縁部29を透視した状態が模式的に示されている。このことは、以降に参照する図4(a)、(b)でも同様である。
【0044】
吊りワイヤ60の先端部は、遮蔽材天井部26の前縁部29を回って、吊りワイヤ60に接続されている。そして、吊りワイヤ60に対して、重機により上方から張力が与えられ、遮蔽材天井部26の重量の一部が、吊りワイヤ60を介して支えられている。
【0045】
さらに、図3(b)に示すように、遮蔽材天井部26が切断され、第3切断線62が形成される。第3切断線62は、第2切断線54に繋がっており、Y軸方向の負側から正側に向かって伸びている。第3切断線62は、遮蔽材天井部26を貫通している。このため、遮蔽材天井部26から、切断遮蔽材64が切り出される。
【0046】
切断遮蔽材64は、吊りワイヤ60を介して支持されており、切断遮蔽材64の重量は、重機(図示略)により支えられる。切断遮蔽材64は、重機により、図4(a)に示すように吊り下げられ、遮蔽材12から離れた位置に除去される。このような遮蔽材12から切断遮蔽材64を除去する作業を1サイクルとし、遮蔽材12に対して、2サイクル目以降の、コンクリート部14の圧砕や、切断遮蔽材64の切り出し作業が繰り返される。
【0047】
図4(b)は、2サイクル目の切り出し作業を示している。2サイクル目においては、支保手段30の設置の後、1サイクル目よりもY軸方向の正側に、第1切断線66、第2切断線68、及び、第3切断線70が形成される。さらに、吊りワイヤ60により、切断遮蔽材72が揚重され、切断遮蔽材72は、図示は省略するが、図4(a)の例と同様に、吊りワイヤ60により吊り下げられて除去される。
【0048】
ここで、図2(a)~図4(b)の例では、1サイクル目におけるコンクリート部14の圧砕により、2サイクル目の切断遮蔽材72を切断できる位置まで、コンクリート部14が除去されている。しかし、1サイクル目におけるコンクリート部14の圧砕では、圧砕の量を少とし、切断遮蔽材64となる部位までしか露出しない程度に、コンクリート部14の圧砕範囲を小さく抑えてもよい。この場合、2サイクル目にも、コンクリート部14の圧砕が行われ、2サイクル目のための露出部が形成されることとなる。
【0049】
図5(a)は、3サイクル目の切り出し作業を示している。本実施形態の3サイクル目においては、コンクリート部14の圧砕や、支保手段30の設置の後、Y軸方向に第1切断線74、第2切断線76が形成され、遮蔽材天井部26における最奥部が切り出される。切り出された切断遮蔽材78は、図示は省略するが、図4(a)の例と同様に、吊りワイヤ60により吊り下げられて除去される。
【0050】
ここで、図5(a)では、支保手段30の位置を示すために、支保手段30の一部(図中の左側)が、コンクリート壁部16や遮蔽材壁部22を透過して模式的に示されている。
【0051】
図4(b)や図5(a)に示すように、2サイクル目以降も、切断遮蔽材64の大きさが1サイクル目と同程度となるように、遮蔽材12の切り出しを行うことが可能である。なお、作業が進行すると、1サイクル目と同程度の大きさの切断遮蔽材64を切り出すことは困難になる場合もある。その場合は、作業が可能な適宜の大きさで、遮蔽材12の切り出しを行うことが可能である。
【0052】
図5(b)は、左右の両端に、遮蔽材天井部26の一部が残っている状態を示している。ここでは、遮蔽材天井部26の残った部分を「耳部」と称し符号80を付す。図5(b)に示す段階では、足場46、48は撤去されている。
【0053】
続いて、図6(a)に示すように、遮蔽材壁部22、24に、吊りピース84が、溶接等の方法により固定される。さらに、遮蔽材壁部22、24やコンクリート壁部16、18の転倒防止のため、遮蔽材壁部22、24やコンクリート壁部16、18を支える四角支柱(図示略、支保手段の一種)が設置される。ここで、吊りピース84が、放射線施設10の建造時に既に設けられている場合もある。このような場合、吊りピース84が、設計図面に記載されていないこともある。
【0054】
耳部80が取り外されて除去され、図6(b)に示すように、遮蔽材壁部22、24やコンクリート壁部16、18が残る。耳部80の取り外しは、例えば、各種の非打撃解体手段や圧砕機38等の手段を用いて行うことが可能である。遮蔽材壁部22、24の露出した部分は、露出部23、25である。図7(a)に示すように、遮蔽材壁部22、24の奥側において、圧砕機38を用いて、コンクリート壁部16、18の上部が破砕される。この破砕は、遮蔽材壁部22、24を、縁切りするための破砕(縁切り破砕)である。この場合に、連続コアボーリングを併用することも可能である。さらに、図7(b)に示すように、遮蔽材壁部22、24の上部のコンクリート部14が、圧砕機38を用いて、除去される。
【0055】
図8(a)に示すように、コンクリート壁部16、18の外側に、足場46、48が再度設置される。一方の遮蔽材壁部22の吊りピース84に吊りワイヤ60が掛けられ、遮蔽材壁部22をラフター(フック部85のみ図示する)により揚重した状態で、切断トーチ102(図13)を用いた切断が行われる。切断トーチ102は、前述のように、ガス切断装置100に装着されている。
【0056】
図8(a)の例では、ガス切断装置100は、一方の足場46に設置されている。ガス切断装置100は、足場46に設置された棒状のリニアガイド部118に沿って、Y軸方向に案内される。ガス切断装置100の位置は、足場46上で、水平且つ直線的に変更される。ガス切断装置100を移動させることにより、遮蔽材壁部22をY軸方向に切断できる。図8(a)の破線Aは、遮蔽材壁部22の切断位置の一例を示している。
【0057】
遮蔽材壁部22の切断により、図8(b)に示すように、切断遮蔽材86が、重機(図示略)により吊り下げられ、離れた位置に除去される。他方の遮蔽材壁部24についても同様に切断が行われる。図9(a)には、他方の遮蔽材壁部24についても、切断と除去が終わった後の状態を示している。
【0058】
続いて、図9(b)に示すように、圧砕機38により、床部21の破砕が行われ、床部21が掘り下げられる。図10(a)に示すように、圧砕機38により、地中梁90の破砕が行われ、図10(b)に示すように、残っている遮蔽材壁部22の引き倒し(室内側への引き倒し)が行われる。遮蔽材壁部22は、引き倒された後に、矢印Cで示すように引き出され、離れた場所(ヤード)に除去される。除去された遮蔽材壁部22は、切断トーチ102(図13)を用いて切断される。なお、引き倒しを行わずに、コンクリート部14の破砕や、遮蔽材壁部22の切断が行われる場合もある。
【0059】
続いて、図11(a)に示すように、残ったコンクリート壁部16の破砕が行われ、図11(b)に示すように、コンクリート壁部16の撤去が完了する。さらに、他方の遮蔽材壁部22とコンクリート壁部18についても同様の作業が行われ、図12に示すように、遮蔽材壁部22とコンクリート壁部18が撤去される。
【0060】
ここで、これまでに説明した解体工法における解体作業は、作業現場の周りを囲うようにカーテン(図示略)を接地し、カーテン内の空気を集塵機により吸引し、集塵のための空気の流れを形成しながら行うことが可能である。このようにすることで、作業現場の周辺に塵埃が漏れるのを防止できる。
【0061】
<実施形態から抽出できる発明>
本実施形態からは、以下のような発明を抽出することができる。
(1)積層構造の遮蔽材(遮蔽材12など)を備えた放射線施設(放射線施設10など)の解体工法であって、
前記遮蔽材における、少なくとも一部を露出させる露出工程(図1(b)、図2(a)、図6(b)~図7(b)に示す工程など)と、
前記遮蔽材の、露出した部位である露出部(露出部23、25、32など)を、揚重しながら、非打撃解体手段(ガス切断装置100など)により切断して分離させる切断工程(図3(a)、図8(a)に示す工程など)と、
前記露出部の、分離した部位である分離部(切断遮蔽材64、72、78、86など)を撤去する撤去工程(図4(a)、図8(b)に示す工程など)と、を備えた放射線施設の解体工法。
このような発明によれば、遮蔽材(遮蔽材12など)を露出させてから遮蔽材が、非打撃解体手段(ガス切断装置100など)により解体されることから、ブレーカーを使用した場合に比べて、騒音や振動が少なく、周辺環境への影響を低減できる。
また、遮蔽材(遮蔽材12など)を揚重しながら切断するため、落下物が生じるのを防止でき、このことによっても騒音や振動が少なく、周辺環境への影響を低減できる。
また、天井部(遮蔽材天井部26など)と壁部(遮蔽材壁部22、24など)を有する場合には、天井部を除去してから壁部を、非打撃解体手段により解体することにより、壁部の解体時に天井部が落下することがなく、このことによっても、騒音や振動が少なく、周辺環境への影響を低減できる。
(2)前記切断工程では、前記遮蔽材(遮蔽材12など)を支保手段(支保手段30など)により支えながら切断が行われる、上記(1)に記載の放射線施設の解体工法。
このような発明によれば、解体中に遮蔽材が倒れるのを防止でき、より安全に解体作業を実施できる。
(3)前記切断工程では、切断を複数回繰り返す(図3(a)~図5(a)に示す工程など)、上記(1)に記載の放射線施設の解体工法。
このような発明によれば、遮蔽材12を細分化でき、作業性よく安全に解体を行うことが可能である。
(4)前記切断工程(遮蔽材壁部22、24の切断工程など)の後、前記遮蔽材の残った壁部を引き倒して除去する壁部除去工程(図10(b)に示す工程など)を備えた、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の放射線施設の解体工法。
このような発明によれば、壁部を切断して小さくしたうえで引き倒すことができ、騒音や振動が少なく、周辺環境への影響を低減できる。
(5)少なくとも一部をコンクリート部(コンクリート部14など)に覆われた遮蔽材(遮蔽材12など)の端辺から、前記コンクリート部を圧砕機(圧砕機38など)により圧砕して前記遮蔽材の少なくとも一部を露出させ、前記遮蔽材の露出した部位である露出部(遮蔽材壁部22、24の露出した部分など)を非打撃解体手段により切断して分離する切断工程(図3(a)、図8(a)に示す工程など)を備え、
前記切断工程における切断により生じた空間に圧砕機を進入させて、再度、前記切断工程を実行し、前記切断工程を繰り返すことにより前記遮蔽材を解体する、放射線施設の解体工法。
このような発明によっても、上記(1)の発明と同様に、ブレーカーを使用した場合に比べて、騒音や振動が少なく、周辺環境への影響を低減できる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で多くの変形が可能である。そして、説明した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0063】
切断トーチ102は、作業者により手で把持して使用されるものであってもよい。この場合、切断トーチ102を、例えば、1~2m程度の長さのものとすることで、作業者と火炎の距離を確保し易くなる。また、切断トーチ102を重機に装着して、遮蔽材12の切断を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 :放射線施設
12 :遮蔽材
12a :遮蔽材の端面
14 :コンクリート部
16、18 :コンクリート壁部
21 :床部
22、24 :遮蔽材壁部
23、25、32 :露出部
26 :遮蔽材天井部
27 :鋼板
28 :当て板
29 :遮蔽材の前縁部
30 :支保手段
33 :コンクリート片
38 :圧砕機
42 :アーム部
46、48 :足場
52 :第1切断線
54 :第2切断線
56 :上面
58 :切り欠き部
59 :下面
60 :吊りワイヤ
62 :第3切断線
64、72、78、86 :切断遮蔽材
66、74 :第1切断線
68、76 :第2切断線
70 :第3切断線
80 :耳部
82 :付加ピース
84 :吊りピース
85 :フック部
90 :地中梁
100 :ガス切断装置
102 :切断トーチ
110 :リニアガイド装置
118 :リニアガイド部

図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
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