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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101479
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】歩行者保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20240722BHJP
【FI】
B60R21/36 320
B60R21/36 352
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005488
(22)【出願日】2023-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】相川 国大
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 篤
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】仁田山 健
(72)【発明者】
【氏名】鮎川 佑介
(57)【要約】
【課題】左エアバッグ若しくは右エアバッグの容積の増大を抑制できて、かつ、安定した保護性能を確保可能な歩行者保護装置を提供すること。
【解決手段】車両Vにおけるフードパネル8の後端8a近傍に配設されるとともに、それぞれ、内部に膨張用ガスを流入させた膨張完了時に、車幅方向側で並設される左エアバッグ40Lと右エアバッグ40Rとを、備え、左エアバッグと右エアバッグとが、膨張完了時に、ともに、車幅方向に沿うように配置されて、カウルの上面側を覆うカウルカバー部52L,52Rを、備える。各カウルカバー部が、膨張完了時における相互に接近する端側に、上下方向側で相互に重ねられて配置される端部領域70L,70Rを、有する。一方の端部領域70Rが、膨張完了時の内圧を、右エアバッグにおける一般領域54よりも高められるように、構成されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるフードパネルの後端近傍に配設されるとともに、それぞれ、内部に膨張用ガスを流入させた膨張完了時に、車幅方向側で並設される左エアバッグと右エアバッグとを、備えて、
前記左エアバッグと前記右エアバッグとが、膨張完了時に、ともに、車幅方向に沿うように配置されて、カウルの上面側を覆うカウルカバー部を、備える構成の歩行者保護装置であって、
前記各カウルカバー部が、膨張完了時における相互に接近する端側に、上下方向側で相互に重ねられて配置される端部領域を、有する構成とされ、
少なくとも一方の前記端部領域が、膨張完了時の内圧を、前記左エアバッグ若しくは前記右エアバッグにおける一般領域よりも高められるように、構成されていることを特徴とする歩行者保護装置。
【請求項2】
膨張完了時に上側に位置する上側端部領域が、膨張完了時の内圧を他の一般領域よりも高められるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護装置。
【請求項3】
前記左エアバッグと前記右エアバッグとが、それぞれ、左右の一対のワイパにおいて車幅方向の中央側に配置されるワイパピボットの左右で膨張するように構成されて、
膨張完了時に下側に位置する下側端部領域が、端縁を前記ワイパピボットに隣接させるような構成とされることを特徴とする請求項2に記載の歩行者保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるフードパネルの後端近傍に配設される歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフードパネルの後端近傍に配設される歩行者保護装置としては、車両搭載スペースをコンパクトにするために、左右で分割させて、膨張完了時に、車幅方向側で並設される左エアバッグと右エアバッグと、を備える構成のものがあった。この従来の歩行者保護装置では、左エアバッグと右エアバッグとが、それぞれ、膨張完了時に車幅方向に略沿うように配置されてカウルの上方を覆うカウルカバー部を、備える構成とされるとともに、この2つのカウルカバー部における相互に近接した側の端末相互を重ねるように膨張させて、カウルの上方を略全長にわたって覆うような構成とされていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-177986公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の歩行者保護装置では、左エアバッグと右エアバッグとにおける各カウルカバー部の端末相互を、膨張完了時に単に上下で重ねるように配置させるのみであることから、この端末相互が重なっている領域の保護性能を、カウルカバー部における端末以外の一般領域と略同等の保護性能とするためには、重なり量を大きく設定する必要があった。すなわち、従来の歩行者保護装置では、各左エアバッグ,右エアバッグの膨張完了時に、カウルカバー部の端末相互を大きく重ならせる必要があり、左エアバッグ若しくは右エアバッグの容積(折り畳んだ左エアバッグ若しくは右エアバッグを収納させるケースの容積)の増大を抑制して、コンパクトにする点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、左エアバッグ若しくは右エアバッグの容積の増大を抑制できて、かつ、安定した保護性能を確保可能な歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行者保護装置は、車両におけるフードパネルの後端近傍に配設されるとともに、それぞれ、内部に膨張用ガスを流入させた膨張完了時に、車幅方向側で並設される左エアバッグと右エアバッグとを、備えて、
左エアバッグと右エアバッグとが、膨張完了時に、ともに、車幅方向に沿うように配置されて、カウルの上面側を覆うカウルカバー部を、備える構成の歩行者保護装置であって、
各カウルカバー部が、膨張完了時における相互に接近する端側に、上下方向側で相互に重ねられて配置される端部領域を、有する構成とされ、
少なくとも一方の端部領域が、膨張完了時の内圧を、左エアバッグ若しくは右エアバッグにおける一般領域よりも高められるように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の歩行者保護装置では、左エアバッグと右エアバッグとの各カウルカバー部において、膨張完了時における相互に接近する端側に配置されて、上下方向側で相互に重ねられる端部領域が、少なくとも一方を、左エアバッグ若しくは右エアバッグにおける一般領域よりも内圧を高められて配置される構成とされている。すなわち、本発明の歩行者保護装置では、各カウルカバー部において、重なっているうちの少なくとも一方の端部領域が、高い内圧を維持した状態で配置される構成であることから、カウルカバー部の全ての領域を略同一の内圧として、端部相互を重ねる場合と比較して、相互の重なり量を小さく設定しても、高い保護性能を確保することができ、歩行者を安定して保護することができる。すなわち、本発明の歩行者保護装置では、各カウルカバー部の端部領域相互の重なり量を小さくすることができ、換言すれば、カウルカバー部の長さ寸法を相対的に小さくすることができて、左エアバッグ若しくは右エアバッグの容積の増大を抑制することができる。
【0008】
したがって、本発明の歩行者保護装置では、左エアバッグ若しくは右エアバッグの容積の増大を抑制できて、かつ、安定した保護性能を確保することができる。
【0009】
また、本発明の歩行者保護装置において、膨張完了時に上側に位置する上側端部領域を、膨張完了時の内圧を他の一般領域よりも高められるような構成とすることが、好ましい。このような構成とすれば、左エアバッグ及び右エアバッグの膨張完了時において、カウルカバー部の境界部位付近(相互に重なっている端部領域)による歩行者の受止時に、まず、内圧を高く設定される領域(上側端部領域)が、下面側を下側端部領域に支持された状態で、歩行者と接触して、歩行者を受け止めることとなる。すなわち、相対的に硬く膨張している部位が直接歩行者を受け止めることから、内圧を高く設定される領域を下側で重ねる場合と比較して、歩行者の保護に必要な反力を確保しやすく、歩行者を安定して保護することができる。
【0010】
さらに、上記構成の歩行者保護装置において、左エアバッグと右エアバッグとを、それぞれ、左右の一対のワイパにおいて車幅方向の中央側に配置されるワイパピボットの左右で膨張するように構成して、
膨張完了時に下側に位置する下側端部領域を、端縁をワイパピボットに隣接させるような構成とすることが、好ましい。
【0011】
歩行者保護装置を上記構成とすれば、左エアバッグ及び右エアバッグの膨張完了時に、下側端部領域と上側端部領域とが上下で重なっている領域において、下側端部領域の端縁と上側端部領域の下面側との間に生じる凹んだ領域に、ワイパピボットが配設されるような態様となることから、膨張した左エアバッグ若しくは右エアバッグにおけるカウルカバー部の端末付近、すなわち、端部領域によって、カウルから部分的に上方に突出しているワイパピボットの上方を覆う構成としていても、左エアバッグ及び右エアバッグにおけるカウルカバー部の端末側の領域(端部領域)が、ワイパピボットと干渉して大きく浮き上がることを抑制でき、上側端部領域によって、的確にワイパピボットの上方を覆うことができる。また、上側端部領域は、下面側を下側端部領域に支持されるような態様となり、換言すれば、左エアバッグと右エアバッグとの膨張完了時には、上側端部領域と下側端部領域とを上下で重ねられるように厚く膨張している領域が、ワイパピボットに隣接されることとなり、加えて、内圧を高く設定される上側端部領域が、ワイパピボットの上方を覆っている。そのため、左エアバッグと右エアバッグとの膨張完了時に、歩行者が、ワイパピボット付近の領域に接触するような態様となっても、高い内圧を維持される上側端部領域と、上側端部領域の下面側を支持している下側端部領域と、によって、歩行者とワイパピボットとの接触を、的確に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である歩行者保護装置を搭載させた車両の平面図である。
図2図1の車両において、ワイパピボットの配置部位を示す概略縦断面図である。
図3】実施形態の歩行者保護装置における右エアバッグ装置を示す概略縦断面図である。
図4】右エアバッグ装置に使用される右エアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
図5図4の右エアバッグの底面図である。
図6図4の右エアバッグにおいて、カウルカバー部の左端側部位を示す部分拡大平面図と、この左端側部位における車体側壁部と隔壁とを重ねた状態の部分拡大平面図である。
図7図4の右エアバッグにおいて、左端側部位の膨張途中の状態と膨張完了の状態とを示す概略部分拡大断面図である。
図8図4の右エアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
図9】左エアバッグ装置に使用される左エアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
図10図9の左エアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
図11】実施形態の歩行者保護装置において、左エアバッグと右エアバッグとが膨張を完了させた状態を示す車両の平面図である。
図12】実施形態の歩行者保護装置において、右エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略縦断面図である。
図13】実施形態の歩行者保護装置において、左エアバッグと右エアバッグとの膨張完了時に、相互に重なっている端部領域の部位を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の歩行者保護装置Mは、図1に示すように、運転席を左側に配置させている、いわゆる左ハンドル車である車両Vに、搭載されている。具体的には、歩行者保護装置Mは、図1に示すように、フードパネル8の後端8a側の下方であって、実施形態の場合、カウル6の部位に配置される左右一対のワイパ10L,10Rにおいて、右側(助手席側)に配置されるワイパ10Rの後述するワイパピボット12Rを間にして、左右両側に配設される2つのエアバッグ装置20L,20Rを、備えている。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後,上下,左右の方向は、それぞれ、車両Vにおける前後,上下,左右の方向と一致させて、説明する。
【0014】
カウル6は、ボディ側の剛性の高いカウルパネル6aと、カウルパネル6aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ6bと、から構成されている。
【0015】
ワイパ10L,10Rは、左右一対として、それぞれ、図1,2に示すように、カウルルーバ6bの上側に配置されるワイパ本体11L,11Rと、カウルルーバ6bの下方に配置されてワイパ本体11L,11Rを駆動させる駆動機構15L,15Rと、を備えている。各ワイパ本体11L,11Rは、駆動機構15L,15Rに連結されるワイパピボット12L,12Rと、元部側をワイパピボット12L,12Rに対して回動自在に連結される長尺状のアーム部13L,13Rと、を備えている。ワイパピボット12L,12Rは、図2に示すように、アーム部13L,13Rを連結させている上端12a側を、カウルルーバ6bよりも上方に突出させるように、構成されている。そして、実施形態の場合、右側(助手席側)に配置されるワイパ10Rが、ワイパピボット12Rを、車幅方向(左右方向)の中央側に配置させている。具体的には、右側のワイパ10Rのワイパピボット12Rは、カウル6における車幅方向(左右方向)の中央よりやや左方となる位置に、配置されている(図1参照)。
【0016】
2つのエアバッグ装置20L,20Rは、フードパネル8の後端8a付近の下方となる位置に配設されるもので、具体的には、カウルルーバ6bの前側となる位置に、隣接して、配設されている(図3参照)。詳細には、図1に示すように、左側(運転席側)に配置される左エアバッグ装置20Lは、各ワイパ10L,10Rにおけるワイパピボット12L,12R間の領域に、配設され、右側(助手席側)に配置される右エアバッグ装置20Rは、右側のワイパ10Rにおけるワイパピボット12Rの右方となる位置に、配設されている。各左エアバッグ装置20L,右エアバッグ装置20Rは、左エアバッグ40L,右エアバッグ40Rの膨張完了形状を若干異ならせていることと、装置自体の大きさ(後述するケース22L,22Rの大きさ、具体的には、ケース22L,22Rの左右方向側の幅寸法、図1参照)を若干異ならせる以外は、同一の構成であることから、同一の図符号の末尾にL若しくはRを付け、実施形態では、主に、右側(助手席側)に配置される右エアバッグ装置20Rを例に採り、説明をする。なお、実施形態では、各左エアバッグ装置20L,右エアバッグ装置20Rの作動時には、図示しないアクチュエータにより、フードパネル8の後端8a側が上方に持ち上げられることとなる(図2,3参照)。
【0017】
右エアバッグ装置20Rは、右エアバッグ40Rと、右エアバッグ40Rに膨張用ガスを供給するインフレーター28Rと、折り畳まれた右エアバッグ40Rとインフレーター28Rとを収納する収納部位としてのケース22Rと、折り畳まれた右エアバッグ40Rを覆うエアバッグカバー26Rと、を備えている。
【0018】
ケース22Rは、金属製(板金製)として、車両Vのボディ1側のカウルパネル6aから延びるフランジ等から構成される取付部2Rに対して、インフレーター28Rの取付ブラケット31Rのボルト32Rと、ナット33Rと、を利用して、固定されている(図3参照)。ケース22Rは、上端側に、膨張時の右エアバッグ40Rを突出させるための突出用開口22aを有した略直方体の箱形状とされるもので、車両Vの左右方向(車幅方向)に略沿って延びた略長方形板状の底壁部23Rと、底壁部23Rの外周縁から上方に延びる略四角筒形状の周壁部24Rと、を備えている。ケース22Rは、フードパネル8の後端8aの下方となるカウル6の前端側に、配設されている。さらに具体的には、ケース22Rは、右側のワイパ10Rにおけるワイパピボット12Rよりも前方であって、かつ、ワイパピボット12Rの右側で近接した位置に、配設されている(図1参照)。また、カウル6におけるケース22Rの後側の領域には、図3に示すように、右側のワイパ10Rのアーム部13Rが、配設されている。
【0019】
エアバッグカバー26Rは、ケース22Rの突出用開口22aを覆うように、カウルルーバ6bと略面一として、カウルルーバ6bから前方に延びるように配置されるもので、ケース22Rにおける周壁部24Rの前側の部位に取り付けられている。このエアバッグカバー26Rは、ケース22R内に収納された右エアバッグ40Rの膨張時に、右エアバッグ40Rによって押し開かれることとなる。
【0020】
インフレーター28Rは、図3及び図5の二点鎖線に示すように、軸方向を車両Vの左右方向(車幅方向)に略沿わせるように配置させた略円柱状として、先端側(実施形態の場合、右端側)に、膨張用ガスを吐出するガス吐出部29Rを、配設させて構成されている。インフレーター28Rは、実施形態の場合、複数(実施形態の場合3個)の取付ブラケット31Rに保持され、インナチューブ80Rに周囲を包まれた状態で右エアバッグ40R内に挿入され、取付ブラケット31Rのボルト32Rを利用して、ケース22Rの底壁部23Rに固定されている(図3参照)。上述したように、取付ブラケット31Rのボルト32Rは、底壁部23Rを貫通して、車両Vのボディ1側の取付部2Rにナット33R止めされて、インフレーター28Rとともに、ケース22Rを取付部2Rに固定している(図3参照)。また、このインフレーター28Rは、右エアバッグ40R内に挿入された状態とされているから、この取付ブラケット31Rの取付部2Rへの取付時に、右エアバッグ40Rも、ケース22Rの底壁部23Rに取付固定されることとなる。なお、インフレーター28Rは、車両Vのフロントバンパ3に設けられている図示しないセンサによって車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、作動するように、構成されている。
【0021】
右エアバッグ40Rと、左エアバッグ40Lと、は、後述するカウルカバー部52L,52Rの長さ寸法や、カウルカバー部52L,52Rに対する後述するケース側部位41L,41Rの配置位置を若干異ならせて構成されているが、カウルカバー部52L,52Rにおける車幅方向の中央側の領域の構成以外は、基本的な構成は左右対称的に配置されるのみで、略同一とされている(図4,9参照)。そのため、カウルカバー部52L,52Rの車幅方向の中央側の領域以外の部材には、同一の図符号の末尾にL若しくはRを付して、適宜省略しつつ説明をする。
【0022】
右エアバッグ40Rは、図4,5に示すように、膨張完了時にケース22R側からフードパネル8の後端8aの下面側にかけて配置されるケース側部位41Rと、膨張完了時にケース22Rから後方に延びるように配置される本体膨張部50Rと、を備えている。また、右エアバッグ40Rは、外形形状を略同一として、膨張完了時にボディ1側に配置される車体側壁部40aと、車体側壁部40aと対向して配置される歩行者側壁部40bと、を有し、車体側壁部40aと歩行者側壁部40bとの外周縁相互を全周にわたって結合(縫着)させることにより、袋状とされている。
【0023】
ケース側部位41Rは、本体膨張部50Rにおける後述するカウルカバー部52Rから前方に延びるように形成されるもので、膨張完了時の後端側(本体膨張部50R側)の部位で、ケース22Rに取り付けられて、膨張完了時に、ケース22Rの直上から前方側の領域の上方、すなわち、フードパネル8の後端8a付近の下方を覆うような構成とされている(図11,12参照)。このケース側部位41Rは、本体膨張部50Rにおけるカウルカバー部52Rよりも狭幅(左右方向の幅寸法を小さな設定)として、カウルカバー部52Rから部分的に前方に突出するように形成されるもので、左右方向側(車幅方向側)の幅寸法を、ケース22Rの左右方向側の幅寸法より若干小さな寸法に、設定されている(図1,11参照)。車体側壁部40aにおいて、ケース側部位41Rの後端側を構成している領域には、インフレーター28Rを内部に挿入させるための挿入用開口部42Rが、形成されている(図5参照)。挿入用開口部42Rは、インナチューブ80Rに外周側を包まれた状態のインフレーター28Rを右エアバッグ40R内に挿入させるための挿入用スリット43Rと、取付ブラケット31Rのボルト32Rを挿通させるための挿通孔44Rと、挿入用スリット43Rを外周側から塞ぐ蓋パネル45Rと、を備えている。挿入用スリット43Rは、左右方向に略沿った略直線状に形成され、挿通孔44Rは、挿入用スリット43Rよりも前側の領域に形成されている(図5,8参照)。蓋パネル45Rは、挿入用スリット43Rの外表面側を覆うもので、後縁側を、挿入用スリット43Rの後方側の車体側壁部40aに結合させ、前端側に、取付ブラケット31Rのボルト32Rを突出させるための取付孔45aを、挿通孔44Rに対応して、配設させている(図5,8参照)。
【0024】
本体膨張部50Rは、膨張完了時の外形形状を、正面側から見て、略L字形状とされるもので、フロントウィンドシールド4の下部4aに略沿うように左右方向(車幅方向)に略沿って配置されるカウルカバー部52Rと、カウルカバー部52Rの車幅方向外側の端部(右端)から後方へ延びて右側のフロントピラー5Rの前面の下部5a側を覆うピラーカバー部51Rと、を備えている。ピラーカバー部51Rは、実施形態の場合、右エアバッグ40Rを平らに展開した状態で、カウルカバー部52Rよりも幅広として、右側のフロントピラー5Rの前面下部5a側を広く覆い可能な構成とされている(図4,5,11参照)。
【0025】
カウルカバー部52Rは、右エアバッグ40Rの膨張完了時に、カウル6からフロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての上面側(前面側)を覆うような構成とされるもので、具体的には、右エアバッグ40Rの膨張完了時に、カウル6の右端から、右側のワイパ10Rのワイパピボット12Rの左方の領域にかけてを覆う構成とされている(図11参照)。カウルカバー部52Rは、詳細には、ケース側部位41Rよりも左方に延びる部位を有し、このケース側部位41Rよりも左方に位置する左端側部位55を、右エアバッグ40Rを平らに展開した状態において、端縁55a側を後方に向けるように、左右方向(車幅方向)に対して僅かに傾斜させるように、構成されている(図4参照)。また、実施形態では、カウルカバー部52Rにおける左端側部位55は、内部に配設される隔壁58によって残りの右側の領域(一般膨張部54)と区画されることにより、膨張完了時の内圧を高められるような構成とされている。
【0026】
カウルカバー部52R内に配置される隔壁58は、具体的には、図4,5,6のAに示すように、カウルカバー部52Rにおいて、ケース側部位41Rの左端41a側との境界部位付近に配設されている。この隔壁58は、車体側壁部40a側に連結される左縁58b側の一部を除いて、外周縁を、略全周にわたって右エアバッグ40R側(車体側壁部40a,歩行者側壁部40b)に結合されて、左端側部位55と一般膨張部54(一般領域)とを区画している。また、隔壁58は、一般膨張部54内に流入した膨張用ガスGを左端側部位55側に流出可能な流出用開口部65と、流出用開口部65を経て左端側部位55内に流入した膨張用ガスの逆流を抑制可能な逆流抑制部66と、を備える構成とされている。具体的には、流出用開口部65は、図6のB及び図7のA,Bに示すように、隔壁58の左縁58b側を断続的に車体側壁部40aに縫着(結合)させている結合部位(下外側部分結合部61F,61B,下内側部分結合部62)間の隙間から、形成され、逆流抑制部66は、隔壁58におけるこの結合部位(下外側部分結合部61F,61B,下内側部分結合部62)の周囲を構成している部位から、形成されている。
【0027】
実施形態の場合、隔壁58は、右エアバッグ40Rを平らに展開した状態において、図4,5,6のAに示すように、カウルカバー部52Rにおけるケース側部位41Rの左端41a側の後方の領域付近に配置されるもので、図8に示すような隔壁用パネル88から構成されている。隔壁用パネル88の前縁88aと後縁88bとは、車体側壁部40a(後述する車体側パネル85R)及び歩行者側壁部40b(後述する歩行者側パネル86R)の外周縁85a,86aに略沿うような形状として、それぞれ、全長にわたって車体側壁部40a(車体側パネル85R)と歩行者側壁部40b(歩行者側パネル86R)との外周縁85a,86a相互とともに結合(共縫い)される(図6のA,B参照)。隔壁用パネル88(隔壁58)の右縁58aは、右エアバッグ40Rを平らに展開した状態において、前後方向に略沿う後側部位58abと、前端を左方に向けるように傾斜している前側部位58aaと、を有して、屈曲して形成されている(図6のA,B参照)。この右縁58aは、全長にわたって、上側結合部位60を形成するようにして、歩行者側壁部40b(歩行者側パネル86R)に結合(縫着)されている(図6のA参照)。この右縁58aにおける後側部位58abは、右エアバッグ40Rを平らに展開した状態において、ケース側部位41Rの左端41aよりも右方となる位置に配置され、詳細には、ケース側部位41Rの左側1/3程度となる位置に、配置されている(図4参照)。右縁58aにおける前側部位58aaは、前端を、ケース側部位41Rと左端側部位55との境界部位付近に位置させている。隔壁用パネル88(隔壁58)の左縁58bは、カウルカバー部52Rの左端側部位55の軸方向と略直交するような直線状として、形成されるもので、断続的に、車体側壁部40a(車体側パネル85R)に結合(縫着)されている。具体的には、左縁58bは、平らに展開した状態での前端側と後端側とを、下外側部分結合部61F,61Bを形成するように、部分的に、車体側壁部40a(車体側パネル85R)に結合(縫着)されている(図5,6のB参照)。また、隔壁用パネル88(隔壁58)は、図5,6のBに示すように、左右の中央よりもやや左側となる位置において、下内側部分結合部62によって、車体側壁部40a(車体側パネル85R)に結合(縫着)されている。下内側部分結合部62は、下外側部分結合部61F,61B(すなわち、隔壁58の左縁58b)に略沿うような直線状として構成されるとともに、右エアバッグ40Rを平らに展開した状態において、両端末を、それぞれ、各下外側部分結合部61F,61Bと左右方向側で重ならせるような長さ寸法とされている(図6のB参照)。すなわち、下内側部分結合部62は、下外側部分結合部61F,61B間の隙間を、左右方向側で離隔した内方で、全長にわたって塞ぐような構成とされている。
【0028】
そして、実施形態の右エアバッグ40Rでは、ケース側部位41Rを経てカウルカバー部52Rの一般膨張部54内に流入した膨張用ガスGは、この下内側部分結合部62と各下外側部分結合部61F,61Bとの間の隙間を経て、左端側部位55内に流入することとなる(図7のA参照)。詳細には、一般膨張部54内に流入した膨張用ガスGは、図6のBに示すように、下内側部分結合部62と各下外側部分結合部61F,61Bとに略沿って迂回するようにして、左端側部位55内に流入することとなる。そして、左端側部位55が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張すれば、左端側部位55内に流入した膨張用ガスGの内圧により、隔壁58において下内側部分結合部62と各下外側部分結合部61F,61Bの周囲を構成している領域が、車体側壁部40a側に押圧されて、閉塞されるような態様となって(図7のB参照)、膨張用ガスGの一般膨張部54側への逆流が抑制されることとなる。このように、一般膨張部54側への膨張用ガスGの流出を抑制されることにより、膨張完了後の左端側部位55の内圧が、高い状態で維持されることとなる。
【0029】
右エアバッグ40Rの膨張完了時に、隔壁58は、車体側壁部40a及び歩行者側壁部40bに対して(上下方向に対して)、傾斜するように配置されることとなる。また、右エアバッグ40Rの膨張完了時には、この隔壁58を歩行者側壁部40b側に結合させている上側結合部位60を起点として、左端側部位55が、端縁55a側を若干持ち上げられるように、僅かに屈曲して配置されることとなる(図7のB参照)。そして、このカウルカバー部52Rにおける左端側部位55は、端部領域70Rとして、右エアバッグ40R及び左エアバッグ40Lの膨張完了時に、一般膨張部54よりも内圧を高められた状態で、左エアバッグ40Lにおけるカウルカバー部52Lの右端側部位68(端部領域70L)の上側で、重なるように、配置されることとなる(図11,13参照)。
【0030】
また、実施形態では、右エアバッグ40Rの内部には、歩行者側壁部40bと車体側壁部40aとを連結して、膨張完了時の厚さを規制するようなテザー75R,76R,77Rが、配設されている(図4,5,8参照)。テザー75Rは、カウルカバー部52Rにおける一般膨張部54からピラーカバー部51Rにかけての略全域にわたって配設されている。詳細には、テザー75Rは、一般膨張部54からピラーカバー部51Rにかけて、幅方向の略中央となる位置において、連続的に配設されている。テザー76Rは、カウルカバー部52Rとピラーカバー部51Rとの境界部位付近における前縁側に、部分的に配設されている。テザー77Rは、ケース側部位41Rとカウルカバー部52R(本体膨張部50R)との境界部位付近において、この境界部位を部分的に塞ぐように、左右方向に略沿って配設されるもので、略長方形状に形成される開口77aを、左右方向側で複数個(実施形態の場合、2個)並設させている(図8参照)。このテザー77Rは、長さ寸法を、平らに展開した状態のケース側部位41Rの左右方向側の幅寸法よりも小さく設定されている。ケース側部位41R内に流入した膨張用ガスは、テザー77Rの両端側に形成される隙間と、2つの開口77a,77aと、から、本体膨張部50R内に流入することとなる。
【0031】
インフレーター28Rの外周側を覆うインナチューブ80Rは、図5の二点鎖線に示すように、取付ブラケット31Rを取付済みのインフレーター28Rを挿入させる挿入筒部80cを有するとともに、挿入筒部80cにおけるガス吐出部29Rの配置部位から両側に延びて先端側に膨張用ガスを流出させる流出口80a,80bを配設させている略三又状の筒形状として、構成されている。挿入筒部80cには、各取付ブラケット31Rのボルト32Rを貫通させる取付孔(図符号省略)が、形成されている。インナチューブ80Rは、図8に示すようなチューブ用基材94Rから、構成されている。
【0032】
実施形態の右エアバッグ40Rは、図8に示すように、車体側壁部40aを構成する車体側パネル85R,歩行者側壁部40bを構成する歩行者側パネル86R,隔壁58を構成する隔壁用パネル88,各テザー75R,76R,77Rを構成するテザー用基材90R,91R,92R,インナチューブ80Rを構成するチューブ用基材94Rから、構成されている。これらの基材は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布を、所定形状に裁断して、形成されている。
【0033】
左エアバッグ40Lにおけるカウルカバー部52Lは、図11に示すように、左エアバッグ40Lの膨張完了時に、カウル6の左端から、右側のワイパ10Rのワイパピボット12Rの左方にかけての領域を、覆う構成とされている。カウルカバー部52Lは、図9に示すように、ケース側部位41Lよりも右方に延びる部位を有し、このケース側部位41Lよりも右方に位置する右端側部位68は、膨張完了時に、端縁68a(右縁)を、ワイパピボット12Rに隣接させるような構成とされている(図11,13参照)。左エアバッグ40Lのカウルカバー部52L内には、前述の右エアバッグ40Rのカウルカバー部52R内に配置される隔壁58は、配設されていない。そして、このカウルカバー部52Lにおける右端側部位68は、端部領域70Lとして、右エアバッグ40R及び左エアバッグ40Lの膨張完了時に、右エアバッグ40Rにおけるカウルカバー部52Rの左端側部位55(端部領域70R)の下側で、重なるように、配置されることとなる(図13参照)。具体的には、実施形態の歩行者保護装置Mでは、左エアバッグ40Lと右エアバッグ40Rとの膨張完了時の端部領域70L,70R相互の重なり量(ラップ量)は、100~180mm程度に設定されている。この左エアバッグ40Lにおけるカウルカバー部52Lは、ケース側部位41Lからの突出量(右端側部位68の左右方向側の幅寸法)を、右エアバッグ40Rのカウルカバー部52Rのケース側部位41Rからの突出量(左端側部位55の左右方向側の幅寸法)よりも小さく設定されている。また、実施形態では、助手席側となる右エアバッグ装置20Rが、右側のワイパピボット12Rの右方であって、車両Vの車幅方向の略中央となる位置に、搭載され、運転席側となる左エアバッグ装置20Lが、ワイパピボット12L,12R間であって、車両Vの車幅方向の中央より大きく左端側に偏った位置に、搭載される構成であることから、左エアバッグ40Lと右エアバッグ40Rとは、このような搭載位置に対応して、カウルカバー部52L,52Rの長さを異ならせるような構成とされている(図4,9参照)。そして、このようなカウルカバー部52L,52Rの長さ寸法の差分、左エアバッグ40Lは、右エアバッグ40Rよりも小容積とされている。
【0034】
左エアバッグ40Lは、右エアバッグ40Rと同様に、図10に示すごとく、車体側壁部40aを構成する車体側パネル85L,歩行者側壁部40bを構成する歩行者側パネル86L,各テザー75L,76L,77Lを構成するテザー用基材90L,91L,92L,インナチューブ80Lを構成するチューブ用基材94Lから構成されている。
【0035】
実施形態の歩行者保護装置Mの車両Vへの搭載について説明をすると、まず、右エアバッグ40Rを、ケース22R内に収納可能に折り畳み、取付ブラケット31Rを組付済みのインフレーター28Rを、インナチューブ80Rに挿入させた状態で、挿入用スリット43Rを利用して、右エアバッグ40R内に挿入する。そして、インナチューブ80Rの取付孔(図符号省略)から突出している各取付ブラケット31Rのボルト32Rを、右エアバッグ40Rの挿通孔44Rから突出させ、次いで、蓋パネル45Rを、挿入用スリット43Rを覆うように閉じて、取付孔45aにボルト32Rを挿通させる。その後、右エアバッグ40Rとインフレーター28Rとをケース22R内に収納させ、ケース22Rにエアバッグカバー26Rを取り付けて、右エアバッグ装置20Rを組み立てる。次いで、車両Vの所定位置にケース22Rを配置させて、ケース22Rから突出しているボルト32Rを、取付部2Rにナット33R止めし、インフレーター28Rを、図示しない作動回路に接続させれば、右エアバッグ装置20Rを、車両Vに搭載することができる。同様にして、左エアバッグ装置20Lを組み立てて、車両Vに搭載すれば、歩行者保護装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0036】
実施形態の歩行者保護装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ3に配置される図示しないセンサからの作動信号に基づいて、車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、各インフレーター28L,28Rが作動されて、右エアバッグ40Rと左エアバッグ40Lとが、内部に膨張用ガスを流入させて膨張することとなる。右エアバッグ40Rは、カウル6における右半分程度の領域と、右側のフロントピラー5Rの前面の下部5a側と、を覆い、左エアバッグ40Lは、カウル6における左半分程度の領域と、左側のフロントピラー5Lの前面の下部5a側と、を覆うように膨張することとなる(図1の二点鎖線及び図11参照)。
【0037】
そして、実施形態の歩行者保護装置Mでは、左エアバッグ40Lと右エアバッグ40Rとの各カウルカバー部52L,52Rにおいて、膨張完了時における相互に接近する端側に配置されて、上下方向側で相互に重ねられる端部領域70L,70Rが、少なくとも一方(実施形態の場合、右エアバッグ40Rのカウルカバー部52Rに形成される端部領域70R)を、右エアバッグ40Rにおける一般領域(一般膨張部54)よりも内圧を高められて配置される構成とされている。すなわち、実施形態の歩行者保護装置Mでは、各カウルカバー部52L,52Rにおいて、重なっているうちの一方の端部領域70Rが、高い内圧を維持した状態で配置される構成であることから、カウルカバー部の全ての領域を略同一の内圧として、端部相互を重ねる場合と比較して、相互の重なり量を小さく設定しても、高い保護性能を確保することができ、歩行者を安定して保護することができる。すなわち、実施形態の歩行者保護装置Mでは、各カウルカバー部52L,52Rの端部領域70L,70R相互の重なり量を小さくすることができ、換言すれば、実施形態の場合、上側で重ねられるカウルカバー部52Rの長さ寸法を相対的に小さくすることができて、右エアバッグ40Rの容積の増大を抑制することができる。
【0038】
したがって、実施形態の歩行者保護装置Mでは、左エアバッグ40L若しくは右エアバッグ40R(具体的には、右エアバッグ40R)の容積の増大を抑制できて、かつ、安定した保護性能を確保することができる。
【0039】
また、実施形態の歩行者保護装置Mでは、膨張完了時に上側に位置する上側端部領域(実施形態の場合、上側で重ねられる右エアバッグ40Rの端部領域70R)が、膨張完了時の内圧を他の一般領域(カウルカバー部52Rの一般膨張部54)よりも高められるような構成とされている。そのため、左エアバッグ40L及び右エアバッグ40Rの膨張完了時において、カウルカバー部52L,52Rの境界部位付近(相互に重なっている端部領域70L,70R)による歩行者の受止時に、まず、内圧を高く設定される領域(上側で重ねられる端部領域70R)が、下面側を端部領域70Lに支持された状態で、歩行者と接触して、歩行者を受け止めることとなる。すなわち、相対的に硬く膨張している部位が、直接歩行者を受け止めることから、内圧を高く設定される領域を下側で重ねる場合と比較して、歩行者の保護に必要な反力を確保しやすく、歩行者を安定して保護することができる。なお、このような点を考慮しなければ、下側で重ねられる端部領域の内圧を高めるように、構成してもよい。また、実施形態では、上側で重ねられる端部領域のみを、膨張完了時の内圧を高く設定される構成としているが、勿論、両方の端部領域を、それぞれ、膨張完了時の内圧を他の一般領域よりも高めるような構成としてもよい。両方の端部領域の内圧を高める構成とする場合、端部領域のラップ量(重なり量)は、一層小さくすることもできる。
【0040】
さらに、実施形態の歩行者保護装置Mでは、左エアバッグ40Lと右エアバッグ40Rとが、それぞれ、左右の一対のワイパ10L,10Rにおいて車幅方向の中央側に配置されるワイパピボット12Rの左右で膨張するように構成されており、膨張完了時に下側に位置する左エアバッグ40Lの端部領域70L(右端側部位68)が、端縁68aをワイパピボット12Rに隣接させるような構成とされている。すなわち、実施形態の歩行者保護装置Mでは、左エアバッグ40L及び右エアバッグ40Rの膨張完了時に、下側の端部領域70L(右端側部位68)と上側の端部領域70R(左端側部位55)とが上下で重なっている領域において、下側の端部領域70L(右端側部位68)の端縁68aと上側の端部領域70R(左端側部位55)の下面側との間に生じる凹んだ領域に、ワイパピボット12Rが配設されるような態様となる(図13参照)。そのため、膨張した右エアバッグ40Rにおけるカウルカバー部52Rの端末付近、すなわち、端部領域70R(左端側部位55)によって、カウル6(具体的には、カウルルーバ6b)から部分的に上方に突出しているワイパピボット12Rの上方を覆う構成としていても、この端部領域70R(左端側部位55)が、カウルルーバ6bから上端12a側を部分的に突出させているワイパピボット12Rと干渉して大きく浮き上がることを抑制でき、端部領域70R(左端側部位55)によって、的確にワイパピボット12Rの上方を覆うことができる。また、端部領域70R(左端側部位55)は、下面側を端部領域70L(右端側部位68)に支持されるような態様となり、換言すれば、左エアバッグ40Lと右エアバッグ40Rとの膨張完了時には、端部領域70R(左端側部位55)と端部領域70L(右端側部位68)とを上下で重ねられるように厚く膨張している領域が、ワイパピボット12Rに隣接されることとなり、加えて、内圧を高く設定される端部領域70R(左端側部位55)が、ワイパピボット12Rの上方を覆っている。そのため、左エアバッグ40Lと右エアバッグ40Rとの膨張完了時に、歩行者が、ワイパピボット12R付近の領域に接触するような態様となっても、高い内圧を維持される端部領域70R(左端側部位55)と、端部領域70Rの下面側を支持している端部領域70L(右端側部位68)と、によって、歩行者とワイパピボット12Rとの接触を、的確に抑制することができる。
【0041】
なお、実施形態の歩行者保護装置Mでは、助手席側となる右側に配設される右エアバッグ40Rが、端部領域70Rを高い内圧で膨張させるように、内部に隔壁58を設けるとともに、端部領域70Rを上側で重ねられるようにして、カウルカバー部52Rの長さ寸法を、運転席側となる左側に配設される左エアバッグ40Lのカウルカバー部52Lよりも大きく設定されている。勿論、本発明の歩行者保護装置は、実施形態に限定されるものではなく、運転席側に配置されるエアバッグを、カウルカバー部の端部領域を高内圧で膨張させ、上側で重ねられるような構成としてもよい。しかしながら、運転席側のエアバッグは、2つのワイパのワイパピボットの間の隙間の領域に搭載されるケースに収納させる必要があり、車幅方向の中央側のワイパピボットの側方の領域に搭載される助手席側のエアバッグと比較して、広い搭載スペースを確保し難いことから、容積を増大させる構成としても搭載スペースを容易に確保可能な助手席側に、高内圧で膨張させる構成の端部領域を備えるエアバッグを搭載させる構成とすることが、好ましい。勿論、このような高内圧の端部領域は、上述したごとく、一方のエアバッグ側のみではなく、両方のエアバッグに、設ける構成としてもよい。また、実施形態では、歩行者保護装置を、左ハンドル車に搭載しているが、勿論、運転席を右側に配置させる右ハンドル車に搭載することもできる。右ハンドル車の場合、左右のワイパが、左ハンドル車と左右で反転するように搭載されることとなり、一方のエアバッグに高内圧の端部領域を設ける構成とする場合には、助手席側となる左側に配置されるエアバッグに、高内圧の端部領域を設ける構成とすることが、好ましい。さらに、実施形態の歩行者保護装置では、左エアバッグと右エアバッグとは、それぞれ、別のインフレーターから供給される膨張用ガスを内部に流入させて膨張する構成であるが、分岐するガス供給管等を用いて、1つのインフレーターから供給される膨張用ガスにより、2つのエアバッグを膨張させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
6…カウル、8…フードパネル、8a…後端、10L,10R…ワイパ、12L,12R…ワイパピボット、40L…左エアバッグ、40R…右エアバッグ、52L,52R…カウルカバー部、54…一般膨張部(一般領域)、55…左端側部位、58…隔壁、68…右端側部位、70L,70R…端部領域、V…車両、M…歩行者保護装置。
図1
図2
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図10
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