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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101520
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】眼科測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A61B3/103
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123150
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2023005190
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
(72)【発明者】
【氏名】倉地 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 直己
(72)【発明者】
【氏名】太田 博士
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA28
4C316FA18
4C316FB06
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】 より精度よく、より適切な測定結果を得る。
【解決手段】 被検眼眼底に測定光を投光し、被検眼眼底からの測定光の反射光を受光素子に受光する測定光学系と、測定光学系における被検眼の瞳共役位置に配置され、眼底からの反射光を多重のリング像に変換して受光素子に受光させる変換部材と、変換部材の共役位置又は変換部材の近傍に配置される制限部材を有し、受光素子に受光されるリング像の一部を制限部材によって制限することで被検眼上の測定領域を変化させる制限手段と、制限手段を制御し、制限部材によって変化する被検眼上の測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させる制限制御手段と、受光素子に受光されたリング像を処理して眼屈折力情報を得る処理手段と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼屈折力分布を測定する眼科測定装置であって、
被検眼眼底に測定光を投光する投光光学系と、測定光の被検眼眼底からの反射光を受光素子に受光する受光光学系と、を備える測定光学系と、
前記測定光学系における被検眼の瞳共役位置に配置され、眼底からの反射光を多重のリング像に変換して前記受光素子に受光させる変換部材と、
前記変換部材の共役位置又は前記変換部材の近傍に配置される制限部材を有し、前記受光素子に受光される前記リング像の一部を前記制限部材によって制限することで被検眼上の測定領域を変化させる制限手段と、
前記制限手段を制御し、前記制限部材によって変化する被検眼上の測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させる制限制御手段と、
前記受光素子に受光された前記リング像を処理して眼屈折力情報を得る処理手段と、
を備えることを特徴とする眼科測定装置。
【請求項2】
請求項1の眼科測定装置において、
前記受光素子に受光される前記リング像の結像状態を被検眼の視度に応じて調整する視度補正手段と、
前記視度補正手段を作動させるために被検眼の視度を得る事前測定を行い、事前測定によって得られた測定結果に基づいて前記視度補正手段を作動させることで本測定を行う測定制御手段と、
本測定時に前記制限手段を使用せずに測定を行う第1モードと、事前測定時及び本測定時の少なくとも一方で、前記制限手段を使用した測定を行う第2モードと、を切換えるモード切換手段と、
を備えることを特徴とする眼科測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼科測定装置において、
前記制限制御手段は、前記受光素子上に受光される多重の前記リング像の内、被検眼の視度を得る事前測定時には、前記受光素子上に受光可能な前記リング像を減少するように前記制限手段を制御し、事前測定後の本測定時には、事前測定時に対して、被検眼上の前記測定領域が変化するように前記制限手段を制御することを特徴とする眼科測定装置。
【請求項4】
請求項1~3の眼科測定装置において、
前記制限手段は、前記受光素子に受光される多重の前記リング像の内、隣接する前記リング像が前記受光素子に受光されないように、少なくとも2つのパターンの制限状態に前記制限部材が変更可能にされ、
前記制限制御手段は、前記制限部材の前記制限状態を順次変更し、
前記処理手段は、前記制限状態の順次変更によって、前記受光素子に順次受光された前記リング像をそれぞれ処理して得た眼屈折力の測定結果を合成することで、前記多重のリング像による眼屈折力情報を得ることを特徴とする眼科測定装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れかの眼科測定装置において、
前記制限手段は、前記受光素子上に受光される各リング像に対応する被検眼上の測定領域のリング幅を、少なくとも2分割した制限状態に前記制限部材が変更可能にされ、
前記制限制御手段は、少なくとも2分割した制限状態を順次変更し、
前記処理手段は、前記制限状態の順次変更によって、前記受光素子に順次受光された前記リング像をそれぞれ処理して得た眼屈折力の測定結果を合成することで、前記多重のリング像による眼屈折力情報を得ることを特徴とする眼科測定装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れかの眼科測定装置において、
前記制限手段は、前記受光素子上に受光可能な多重の前記リング像の内、前記受光素子に受光される前記リング像を任意に選択可能にされ、
前記制限制御手段は、予め選択された前記リング像が前記受光素子に受光されるように、前記制限手段を制御することを特徴とする眼科測定装置。
【請求項7】
請求項4の眼科測定装置において、
前記制限部材は、前記受光素子に受光可能な多重の前記リング像に対応して、前記受光素子に受光される前記リング像を、1つ飛ばし又は2つ飛ばし以上で、異なるリング像に順次制限する複数の制限部材で構成されていることを特徴とする眼科測定装置。
【請求項8】
前記制限部材は、前記受光素子に受光される多重の前記リング像に対応した1周分の円周方向が等分割されると共に、前記等分割された領域に対応して、少なくとも隣り合う前記リング像が前記受光素子に受光されないように遮光する遮光領域が形成され、
前記制限手段は、前記リング像に対応した前記制限部材の中心を基準に前記制限部材を回転する回転手段を有し、
前記制限制御手段は、前記回転手段を制御し、前記制限部材を等分割の角度に基づいて回転することで、前記制限部材による前記リング像の制限状態を順次変更することを特徴とする眼科測定装置。
【請求項9】
請求項8の眼科測定装置において、
前記制限部材は、前記受光素子に受光される多重の前記リング像に対応した1周分の円周方向が2個以上の偶数の個数で等分割され、その等分割された領域について、内側から偶数番目のリング像を前記受光素子に受光させ、内側から奇数番目のリング像を前記受光素子に受光させないように遮光された第1領域と、内側から奇数番目のリング像を前記受光素子に受光させ、内側から偶数番目のリング像を前記受光素子に受光させないように遮光された第2領域と、が交互に配置され、
前記制限制御手段は、前記回転手段を制御し、前記制限部材を等分割の角度分にて回転することで、前記制限部材による前記リング像の制限状態を順次変更することを特徴とする眼科測定装置。
【請求項10】
請求項8の眼科測定装置において、
前記制限部材は、前記受光素子に受光される多重の前記リング像に対応した1周分の円周方向が3個以上の個数で等分割され、その分割の個数に応じて、隣り合う前記リング像が前記受光素子に受光されないように、分割された各領域に光透過領域と遮光領域が形成され、
前記制限制御手段は、前記回転手段を制御し、前記制限部材を等分割の角度分で順次回転することで、前記制限部材による前記リング像の制限状態を順次変更することを特徴とする眼科測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼屈折力分布を測定する眼科測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼屈折力分布を測定する眼科測定装置としては、被検眼眼底にスリット光束を投影し、その反射光束を受光素子によって検出したときの位相差信号を利用する方式(例えば、特許文献1参照)、被検眼眼底からの反射光束を多数の点像からなる測定指標像(波面センサ、マイクロレンズアレイの利用を含む)に変換して受光素子に受光させる方式(例えば、特許文献2参照)、被検眼眼底からの反射光束を多重のリング像からなる測定指標像に変換して受光素子に受光させる方式(例えば、特許文献3参照)が提案されている。例えば、被検眼の眼屈折力分布の測定結果は、レーザ光によって角膜形状を変化させる角膜矯正手術等に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10―108837号公報
【特許文献2】特開2008―113810号公報
【特許文献3】特開2005―103103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、より精度よく、より適切な測定結果を得る上では、さらなる改善が望まれる。例えば、多重のリング像を利用する方式においては、被検眼の状態によっては、あるいは、受光素子に受光されるリング像が密になることにより、隣接するリング像の区別がつきにくくなることがある。この場合、適切な測定結果が得られ難くなる。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、より精度よく、より適切な測定結果が得られる眼科測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科測定装置は、被検眼の眼屈折力分布を測定する眼科測定装置であって、被検眼眼底に測定光を投光する投光光学系と、測定光の被検眼眼底からの反射光を受光素子に受光する受光光学系と、を備える測定光学系と、前記測定光学系における被検眼の瞳共役位置に配置され、眼底からの反射光を多重のリング像に変換して前記受光素子に受光させる変換部材と、前記変換部材の共役位置又は前記変換部材の近傍に配置される制限部材を有し、前記受光素子に受光される前記リング像の一部を前記制限部材によって制限することで被検眼上の測定領域を変化させる制限手段と、前記制限手段を制御し、前記制限部材によって変化する被検眼上の測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させる制限制御手段と、前記受光素子に受光された前記リング像を処理して眼屈折力情報を得る処理手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】眼科測定装置の外観図である。
図2】第1実施形態における眼科測定装置の光学系の概略図である。
図3】本開示のリングレンズの例を示す図である。
図4】予備測定段階で使用されるマスク部材の例である。
図5】隣接するリング像の区別を説明する図である。
図6】隣接するリング像が受光されないように制限するマスク部材の例である。
図7】精密な眼屈折力分布の測定を説明する図である。
図8】眼屈折力分布の精密測定モードに適用されるマスク部材の例を示す図である。
図9】第2実施形態における眼科測定装置の光学系を示す図である。
図10】撮像素子上のリング像が何番目のものかの判別し難いケースの例である。
図11】目印形成マスクのマスク部材の例を示す図である。
図12】マスク部材が受光光学系の光路に配置された場合に、撮像素子に受光される受光されるリング像の例である。
図13図12に対して、目印が形成されていることにより、内側から1番目のリング像と2番目のリング像が判別可能にされた例を示す図である。
図14】リングレンズに代えて、多数の点像からなる測定指標像に変換するマイクロレンズアレイが使用される例である。
図15】瞳孔縁による測定光束のケラレ状態を考慮した測定を説明する図である。
図16】前眼部像における瞳孔領域と、瞳孔上で対応する測定領域と、の比較を説明する図である。
図17】測定光束のケラレを考慮したリング像に対応する各測定領域について、経線方向毎の眼屈折力情報を求める場合を説明する図である。
図18】撮像素子がリング像の集光点より後側の離れた位置にある場合を説明する図である。
図19図18において、測定光束にケラレが生じていない場合と、測定光束にケラレが生じている場合とで、それぞれ取得画像上で検出されるリング像を示す図である。
図20】隣接するリング像が撮像素子に受光されないようにするマスク部材の変容例を説明する図である。
図21】マスク部材が図20(a)の配置状態の場合に取得された第1画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[概要]
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0009】
例えば、眼科測定装置(例えば、眼科測定装置10)は、被検眼の眼屈折力分布(波面収差の場合を含む)を測定する。例えば、眼科測定装置は、測定光学系(例えば、測定光学系100)と、変換部材(例えば、リングレンズ125、マイクロレンズアレイ125S)と、第1処理手段(例えば、制御部50)と、を備える。例えば、眼科測定装置は、制限手段(例えば、マスク130)と、制限制御手段(例えば、制御部50)を備えていてもよい。例えば、眼科測定装置は、視度補正手段(例えば、駆動ユニット160、駆動部161)と、測定制御手段(例えば、制御部50)と、モード切換手段(例えば、操作部17、制御部50)と、の少なくとも一つを備えていてもよい。例えば、眼科測定装置は、アライメント検出手段(例えば、アライメント指標投影光学系600、観察光学系200、制御部50)を備えていてもよい。
【0010】
例えば、眼科測定装置は、目印形成手段(例えば、目印形成マスク140)と、第2処理手段(例えば、制御部50)と、挿脱手段(例えば、マスク駆動部140A)と、挿脱制御手段(例えば、制御部50)と、の少なくとも一つを備えていてもよい。例えば、眼科測定装置は、前眼部像取得手段(例えば、観察光学系200)と、第3処理手段(例えば、制御部50)と、の少なくとも一つを備えていてもよい。
【0011】
<測定光学系>
例えば、測定光学系は、被検眼眼底に測定光を投光する投光光学系(例えば、投光光学系110)と、測定光の被検眼眼底からの反射光を受光素子(例えば、撮像素子126)に受光する受光光学系(例えば、受光光学系120)と、を備える。
【0012】
<アライメント検出手段>
例えば、アライメント検出手段は、被検眼に対する測定光学系のアライメント状態を検出する。例えば、アライメント検出手段は、被検眼にアライメント指標を投影する指標投影光学系(アライメント指標投影光学系600)と、被検眼に投影されたアライメント指標を検出する検出光学系(観察光学系200)と、を備えていてもよい。例えば、アライメント検出手段は、被検眼に投影されたアライメント指標の検出結果に基づき、被検眼に対する測定光学系のX方向(被検眼に対する左右方向)及びY方向(被検眼に対する上下方向)のアライメントずれの偏位を検出する。
【0013】
<変換部材>
例えば、変換部材は、測定光学系において、被検眼の瞳共役位置に配置される。例えば、変換部材は、眼底からの反射光を多重(例えば、3個以上)のリング像からなる測定指標像、又は多数の点像(例えば、測定光軸を中心に3周以上の多数の点像)からなる測定指標像に変換して受光素子に受光させる。例えば、変換部材は、レンズ部材が使用される。例えば、変換部材は、多重のリング像に変換する場合、多重のリングレンズ(例えば、リングレンズ125)あってもよい。例えば、リングレンズは、3個以上のリング状の円柱レンズ部からなる。例えば、変換部材は、多数の点像に変換する場合、マイクロレンズアレイ、又はハルトマン板であってもよい。
【0014】
<制限手段>
例えば、制限手段は、変換部材の共役位置又は近傍に配置される制限部材(例えば、マスク部材131、132、135、136、137、138、 )を有する。例えば、制限手段は、マスク手段であってもよい。例えば、制限手段は、変換部材によって受光素子上に受光される測定指標像(例えば、リング像)の一部を制限部材によって制限することで被検眼上の測定領域を変化させる。例えば、制限手段は、複数の制限部材(例えば、マスク部材)を備えていてもよい。例えば、制限手段は、駆動部(例えば、マスク駆動部130A)を有し、駆動部によって複数の制限部材は選択的に光路に挿入及び脱出される。例えば、変換部材が、眼底からの反射光を多重のリング像からなる測定指標像に変換して受光素子に受光させる場合、制限手段は、受光素子に受光されるリング像を1つ又は2つに限定する第1制限部材(例えば、マスク部材131、132)と、経線方向で隣接するリング像が受光素子に受光されないように制限する第2制限部材(例えば、マスク部材135、136、143、144、145)と、受光素子に受光されるリング像のリング幅を分割する第3制限部材(例えば、マスク部材137、138)と、の少なくとも一つを有していてもよい。
【0015】
なお、本開示における共役位置とは、略共役位置の場合も含む。略共役とは、完全に共役でなくも、測定精度との関係で必要とされる精度で共役であればよい。また、近傍についても、測定精度との関係で必要とされる精度で近傍であればよい。
【0016】
例えば、第1制限部材は、受光素子に受光されるリング像を異なる直径に制限する、少なくとも2パターンの制限部材が使用されてもよい。これを言い換えれば、第1制限部材は、少なくとも2パターンの制限部材であって、受光素子上に受光される多重のリング像の内、少なくとも2つの異なる直径のリング像に制限する制限部材であってもよい。
【0017】
例えば、第2制限部材は、受光素子に受光される多重のリング像の内、隣接するリング像が受光素子に受光されないように、少なくとも2つのパターンの制限状態にする制限部材が使用されてもよい。
【0018】
例えば、第2制限部材は、多重のリング像の内、内側から奇数番目のリング像を受光素子に受光させる光過領域と、内側から偶数番目のリング像を受光素子に受光させない遮光領域と、を有する第1リング制限部材(例えば、マスク部材135)と、これとは逆に、多重のリング像の内、内側から偶数番目のリング像を受光素子に受光させる光過領域と、内側から奇数番目のリング像を受光素子に受光されない遮光領域と、を有する第2リング制限部材(例えば、マスク部材136)と、を備えていてもよい。すなわち、第1リング制限部材と第2リング制限部材とからな第2制限部材は、受光素子に受光されるリング像を1つ飛ばしで、異なるリング像に制限する複数の制限部材で構成されていてもよい。さらに、第2制限部材は、受光素子に受光されるリング像を2つ飛ばし以上で、異なるリング像に順次制限する複数の制限部材で構成されていてもよい。
【0019】
また、例えば、第2制限部材は、1つの制限部材であって、受光素子に受光される多重のリング像に対応した1周分の円周方向が等分割されると共に、等分割された領域に対応して、少なくとも隣り合うリング像が受光素子に受光されないように遮光する遮光領域が形成されていてもよい。この場合、制限手段は、リング像に対応した制限部材の中心を基準に第2制限部材を回転する回転手段(例えば、マスク駆動部130A)を有していてもよい。そして、制限制御手段によって回転手段が制御され、第2制限部材が等分割の角度に基づいて回転されることで、第2制限部材によるリング像の制限状態が順次変更される。
【0020】
また、例えば、第2制限部材は、1つの制限部材であって、受光素子に受光される多重のリング像に対応した1周分の円周方向が2以上の偶数の個数(例えば、2個、4個、6個など)で等分割され、その等分割された各領域について、内側から偶数番目のリング像を受光素子に受光させ、内側から奇数番目のリング像を受光素子に受光させないように遮光された第1領域と、内側から奇数番目のリング像を受光素子に受光させ、内側から偶数番目のリング像を受光素子に受光させないように遮光された第2領域と、が交互に配置されていてもよい。この場合、第2制限部材が等分割の角度分で回転されることで、制限部材によるリング像の制限状態が2つのパターンに変更される。
【0021】
また、例えば、第2制限部材は、1つの制限部材であって、多重のリング像に対応した1周分の円周方向が3以上の個数で等分割され、その分割の個数に応じて、隣り合うリング像が受光素子に受光されないように、分割された各領域に光透過領域と遮光領域が形成されていてもよい。この場合、第2制限部材が等分割の角度で順次回転されることで、制限部材によるリング像の制限状態が順次変更される。
【0022】
例えば、第3制限部材は、受光素子に受光されるリング像のリング幅を少なくとも2分割する、少なくとも2つのパターンの制限部材が使用されてもよい。
【0023】
<制限制御手段>
例えば、制限制御手段は、制限手段を制御し、制限部材によって変化する被検眼上の測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させる。これにより、より精度よく、より適切な測定結果が得られる。
【0024】
例えば、制限制御手段は、異なる制限部材によって受光素子に受光されるリング像を異なる直径に制限することで、測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させる第1制御を行ってもよい。例えば、制限制御手段は、受光素子に受光される多重のリング像の内、異なる制限部材によって、隣接するリング像が受光素子に受光されないように、リング像の制限状態を少なくとも2つのパターン以上に変化させることで、測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させる第2制御を行ってもよい。例えば、制限制御手段は、異なる制限部材によって、受光素子に受光されるリング像のリング幅を少なくとも2分割することで、測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させる第3制御を行ってもよい。例えば、制限制御手段は、上記の第1制御と、第2制御と、第3制御と、の少なくとも一つを行うことでもよい。例えば、制限制御手段は、上記の第1制御と、第2制御と、第3制御と、の少なくとも2つを組み合わせることで、測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させてもよい。
【0025】
例えば、制限制御手段は、受光素子上に受光される多重のリング像の内、事前測定時には受光素子上に受光可能なリング像を減少するように制限手段を制御してもよい。例えば、制限制御手段は、事前測定時には、3個以上のリング像の内、受光素子上に受光可能なリング像を1つ又は2つに限定するように制限手段を制御してもよい。そして、例えば、制限制御手段は、事前測定後の本測定時には、事前測定時に対して、被検眼上の測定領域が変化するように制限手段を制御してもよい。例えば、制限制御手段は、本測定時には、事前測定時に対して、受光素子上に受光可能なリング像の数を増加させると共に、被検眼上の測定領域を少なくとも2つのパターン以上で変化させるように、制限手段を制御してもよい。これにより、事前測定時と本測定時とで、それぞれ被検眼の状態に応じて適切な測定が行える。例えば、制限制御手段は、本測定時には、事前測定時に制限される被検眼上の測定領域に対し、少なくとも一部が異なる測定領域に限定するように制限手段を制御してもよい。これによっても、事前測定時と本測定時とで、それぞれ被検眼の状態に応じて適切な測定が行える。
【0026】
例えば、制限手段によって、受光素子に受光される多重のリング像の内、隣接するリング像が受光素子に受光されないように、少なくとも2つのパターンの制限状態に制限部材が変更可能にされている場合、制限制御手段は、少なくとも2つの制限状態を順次変更してもよい。
【0027】
例えば、制限手段によって、受光素子上に受光される各リング像に対応する被検眼上の測定領域のリング幅を、少なくとも2分割した制限状態に制限部材が変更可能にされている場合、制限制御手段は、少なくとも2分割した制限状態を順次変更してもよい。
【0028】
例えば、受光素子上に受光可能な多重のリング像の内、制限手段によって、受光素子に受光されるリング像が任意に選択可能にされている場合、制限制御手段は、予め選択されたリング像が受光素子に受光されるように制限手段を制御してもよい。これにより、目的に応じて、より適切な眼屈折力情報が得られる。
【0029】
<視度補正手段>
例えば、視度補正手段は、受光素子に受光される測定指標像の結像状態を被検眼の視度に応じて調整する。例えば、視度補正手段は、眼屈折力の事前測定で得られた眼屈折力情報に基づき、少なくとも受光素子を測定光軸方向に移動することで、受光素子に受光される測定指標像の結像状態を調整する。
【0030】
<測定制御手段>
例えば、測定制御手段は、視度補正手段を作動させるために被検眼の視度を得る事前測定を行い、事前測定によって得られた測定結果に基づいて視度補正手段を作動させることで本測定を行う。
【0031】
<モード切換手段>
例えば、モード切換手段は、本測定時に制限手段を使用せずに測定を行う第1モードと、事前測定時及び本測定時の少なくとも一方で、制限手段を使用した測定を行う第2モードと、を切換可能にするために設けられていてもよい。例えば、第1モード時には、被検眼に負担を掛けることなく、スピーディに測定を行え、第2モード時には、被検眼の状態に応じて、より精度よく、より適切な測定結果が得られる。
【0032】
例えば、さらにモード切換手段は、本測定では、制限手段が使用されない眼屈折力分布の標準測定モードと、制限手段が使用される特殊測定モードと、が切換え可能にされていてもよい。また、例えば、特殊測定モードは、眼屈折力分布の白内障眼測定モード、眼屈折力分布の精密測定モード、測定領域限定測定モードの少なくとも一つを備えていてもよい。
【0033】
<第1処理手段>
例えば、第1処理手段は、受光素子に受光された測定指標像(例えば、リング像)を処理して眼屈折力情報を得る。例えば、変換部材が測定指標像として受光素子上に多重のリング像を受光させる場合、制限手段によって、受光素子に受光される多重のリング像の内、隣接するリング像が受光素子に受光されないように、少なくとも2つのパターンの制限状態に制限部材が変更可能にされていてもよい。そして、制限制御手段によって少なくとも2つの制限状態を順次変更される場合、第1処理手段は、受光素子に順次受光されたリング像をそれぞれ処理して得た眼屈折力の測定結果を合成することで、多重のリング像による眼屈折力情報を得てもよい。これにより、白内障眼等で眼内の散乱反射などによって、受光素子に受光されたリング像のコントラストが悪くなる場合であっても、リング像の間隔が広くされた状態でリング像が受光されるので、リング像の区別がつきやすくなり、リング像毎の眼屈折力情報をより精度よく、より適切に得ることができる。
【0034】
例えば、制限手段によって、受光素子上に受光される各リング像に対応する被検眼上の測定領域のリング幅を、少なくとも2分割した制限状態に制限部材が変更可能にされ、制限制御手段によって少なくとも2分割した制限状態が順次変更される場合、第1処理手段は、制限状態の順次変更によって、受光素子に順次受光されたリング像をそれぞれ処理して得た眼屈折力の測定結果を合成することで、多重のリング像による眼屈折力情報を得てもよい。これにより、リングレンズ等の変換部材のリング幅を細かく製造できない場合であっても、より細かな測定領域での眼屈折力情報を得ることができる。
【0035】
例えば、第1処理手段は、制限部材によって被検眼上の測定領域の変化前後で、アライメント検出手段により被検眼に対する測定光学系のアライメントずれが検出された場合には、検出されたアライメントずれの偏位に基づき、眼屈折力の測定結果を得た測定領域を補正してもよい。例えば、第1処理手段は、制限手段によって制限状態が変更され、受光素子に順次受光されたリング像をそれぞれ処理して得た眼屈折力の測定結果を合成する際に、検出されたアライメントずれの偏位に基づき、リング像に対応する瞳孔上の測定領域を補正してもよい。これにより、アライメントずれが有った場合にも、眼屈折力情報に対応する測定領域の測定結果がより適切に得られる。
【0036】
<目印形成手段>
例えば、第2態様における目印形成手段は、受光素子に受光された測定指標像が被検眼上で対応する測定領域の何れの位置からの光束であるかを判別するための目印を測定指標像の中に形成させる。例えば、目印形成手段は、変換部材の近傍又は変換部材と共役位置に配置されていてもよいし、あるいは変換部材に直接設けられていてもよい。これにより、被検眼の状態によっては、受光素子上の測定指標像が乱れたり、信号レベルが低かったりした場合であっても、測定指標像が測定光軸の中心位置から何周目(何番目)のものかの区別がつきやすくなり、より適切な測定結果が得られる。
【0037】
例えば、変換部材によって、測定光学系の光軸を中心に少なくとも3周以上のリング像からなる測定指標像、又は測定光学系の光軸を中心に少なくとも3周以上の多数の点像の並びからなる測定指標像が受光素子に受光される場合、目印形成手段は、測定指標像の少なくとも一つの、隣り合うリング像又は隣り合う周の並びの多数の点像の間で異なる目印を形成してもよい。
【0038】
例えば、変換部材によって受光素子上で多重のリング像に変換される場合、目印形成手段は、少なくとも一つの隣り合うリング像を区別可能に、目印としてリング像に切れ目を形成してもよい。なお、目印形成手段は、切れ目に限られず、リング像が被検眼上で対応する測定領域の何れの位置からの光束であるかを判別するための目印になるものであればよい。例えば、変換部材がリング像に変換する光学部材で構成される場合、リング像に目印を形成するように、その光学部材自体が変形されていてもよい。
【0039】
<第2処理手段>
例えば、第2処理手段は、受光素子に受光された測定指標像を処理して眼屈折力情報を得る。例えば、第2処理手段は、目印形成手段により形成された目印によって欠落した測定指標像の部分の眼屈折力情報を、欠落した部分の周囲の測定指標像に基づいて補間して得てもよい。これにより、より適切な測定結果が得られる。
【0040】
<挿脱手段、挿脱制御手段>
例えば、挿脱手段は、目印形成手段を光路に挿入及び脱出させる。これにより、測定指標像が重なる等の必要時に目印形成手段を光路に挿入することで、受光素子に受光された測定指標像の区別を可能にできる。また、受光素子に受光された測定指標像が区別可能な場合は、目印形成手段を光路から脱出させことで、測定指標像の欠落がなく、精度よく測定結果を得ることができる。
【0041】
例えば、挿脱制御手段は、受光素子に受光された測定指標像の受光状態に基づいて、目印形成手段を光路に挿入するか否かを判断し、その判断結果に基づいて挿脱手段の駆動を制御してもよい。なお、挿脱手段は、手動によって操作されてもよい。また、挿脱手段を選択的に作動させる作動手段が備えられていてもよい。
【0042】
<前眼部像取得手段、第3処理手段>
例えば、前眼部像取得手段は、被検眼の瞳孔を含む前眼部像を取得する。例えば、第3処理手段は、受光素子に受光された測定指標像を処理し、測定指標像が瞳孔上で対応する測定領域における眼屈折力情報を得る。例えば、第3処理手段は、前眼部像における瞳孔領域と、瞳孔上で対応する測定領域と、を比較することで、測定領域を通過する測定光束の瞳孔縁によるケラレ状態を検出し、その検出結果に基づき、眼屈折力情報を得る測定領域を補正する。これにより、より適切な測定結果が得られる。
【0043】
例えば、第3処理手段は、測定領域を通過する測定光束のケラレの有無に拘わらず、受光素子に受光された測定指標像の受光結果(例えば、受光位置)に基づいて測定領域における眼屈折力情報を求め、測定光束のケラレがあると検出された第1測定領域の眼屈折力情報に関し、第1測定領域を通過する測定光束のケラレ状態に基づいて第1測定領域を補正した第2測定領域に読み替えてもよい。なお、変換部材が多重のリング像に変換する場合、第3処理手段は、多重の測定領域の内で測定光束のケラレがあると検出された第1測定領域に関し、測定光束のケラレ状態に基づいて第1測定領域を補正した第2測定領域に読み替えてもよい。
【0044】
例えば、第3処理手段は、測定光学系の測定光軸を基準とした経線方向毎の眼屈折力情報を求めると共に、経線方向毎に測定光束のケラレ分を第1測定領域から差し引いた残りの領域幅で第2測定領域を求めてもよい。これにより、測定光軸に対して瞳孔縁が偏心している場合にも、より精度よく、より適切な測定結果が得られる。
【0045】
例えば、変換部材が測定指標像として受光素子上にリング像を受光させる部材であってもよいこの場合、第3処理手段は、リング像に基づいて測定光学系の測定光軸を基準とした経線方向毎の眼屈折力情報を求めると共に、測定領域を通過する測定光束のケラレ状態の検出結果に基づき、眼屈折力情報を得た経線方向毎に測定領域を補正してもよい。これにより、経線方向毎により適切な測定結果が得られる。
【0046】
例えば、変換部材が測定指標像として受光素子上に多重のリング像を受光させる場合において、第3処理手段は、リング像に対応するリング状の測定領域の内で、1つのリング状の測定領域を通過する測定光束の一部に瞳孔縁によるケラレが有ると検出された場合には、眼屈折力情報を得る測定領域を、測定光束のケラレ状態に基づき、1つのリング状の測定領域の幅を狭めた測定領域に補正してもよい。
【0047】
例えば、変換部材が測定指標像として受光素子上にリング像を受光させる場合において、第3処理手段は、さらに、測定光束の瞳孔縁によるケラレ状態の検出結果と、瞳孔を通過した測定光束によって受光素子に受光されたリング像の受光位置と、に基づき、受光素子に受光されたリング像が瞳孔上で対応する測定領域における眼屈折力情報を求めることでもよい。例えば、第3処理手段は、測定光束のケラレ状態の検出結果とリング像の受光位置とに基づき、測定光束のケラレが無い場合のリング像のリング幅の中心位置に相当する眼屈折力情報を求めてもよい。あるいは、第3処理手段は、測定光束のケラレ状態とリング像の位置に対する眼屈折力の対応関係が予め定められた関数又はテーブルに基づいて眼屈折力情報を求めてもよい。これにより、変換部材によるリング像の集光点が受光素子上に位置せず、リング像がぼける場合であっても、測定光束のケラレ状態の情報があることで、より適切な眼屈折力を得ることができる。
【0048】
[第1実施形態]
第1実施形態における眼科測定装置の一実施例を説明する。
【0049】
<全体構成>
図1は、眼科測定装置10の外観図である。なお、図1の眼科測定装置10は据え置き型であるが、必ずしもこれに限られるものではなく、手持ち型であってもよい。
【0050】
本開示の眼科測定装置10は、基台11、測定部12、アライメント駆動部13、顔支持ユニット15、モニタ16、操作部17、及び制御部50、等を少なくとも有している。
【0051】
測定部12は、被検眼の測定に利用する光学系等を収納する。顔支持ユニット15は、基台11に固設されており、検者の顔を支持することにより、被検眼を固定する。アライメント駆動部13は、被検眼に対する測定部12の位置関係を変更する。例えば、アライメント駆動部13は、基台11に対して、測定部12を3次元的に移動させることで、被検眼に対して測定部12をX方向(左右方向)、Y方向(上下方向)及びZ方向(前後方向)に移動させる。
【0052】
モニタ16は、各種の情報(例えば、被検眼の前眼部画像、被検眼の光学特性の測定結果、等)を表示する。操作部17は、各種の設定を行う。なお、モニタ16はタッチパネルとして機能し、モニタ16が操作部17を兼用してもよい。
【0053】
<光学系>
図2は、眼科測定装置10の光学系の概略図である。一例として、測定部12は、測定光学系100、固視標呈示光学系150、観察光学系200、指標投影光学系400、アライメント指標投影光学系600、等を備える。また、各光学系の光路を分岐及び結合するハーフミラー501と502、対物レンズ505、等を有する。
【0054】
<測定光学系>
測定光学系100は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定するために利用される。測定光学系100は、投光光学系110及び受光光学系120を有する。投光光学系110は、被検眼における瞳孔の中心部を介して、被検眼の眼底にスポット状の測定光束を投影する。受光光学系120は、眼底により反射された測定光束の反射光束を、瞳孔を介して多重のリング状又は多重のスポット状に取り出す。
【0055】
投光光学系110は、光源111、リレーレンズ112、ホールミラー113、対物レンズ505、等を備える。光源111は、光軸L1上に配置され、眼底共役位置に配置される。光源111は、SLD(Superluminescent diode)光源であってもよいし、LED(Light Emitting Diode)光源であってもよいし、その他の光源であってもよい。本実施例において、光源111は赤外光源であり、測定光束として赤外光束を投影してもよい。例えば、波長800nm~900nmの間にピークをもつ近赤外光束であってもよい。一例としては、波長870nmをピークとする近赤外光束であってもよい。ホールミラー113の開口部は、瞳共役位置に配置される。光源111を出射した測定光は、リレーレンズ112、ホールミラー113、ハーフミラー501と502、対物レンズ505を経て被検眼の眼底に投光される。
【0056】
受光光学系120は、対物レンズ505、ホールミラー113、リレーレンズ121と122、受光絞り123、コリメータレンズ124、変換部材の例であるリングレンズ125、撮像素子126、等を備える。さらに、受光光学系120は、制限部材の例であるマスク130を備える。リングレンズ125は、眼底からの反射光を撮像素子126上で多重(経線方向に分割された複数)のリング像に変換して受光(結像)させる機能を有する。リングレンズ125は、被検眼の瞳(瞳孔)の共役位置に配置される。受光絞り123は、眼底共役位置に配置される。撮像素子126は、眼底共役位置に配置される。マスク130は、リングレンズ125の共役位置又はリングレンズ125の近傍に配置される。図2では、マスク130がリングレンズ125の近傍に配置された例である。
【0057】
なお、本開示における共役位置とは、略共役位置の場合も含む。略共役とは、完全に共役でなくも、測定精度との関係で必要とされる精度で共役であればよい。また、近傍についても、測定精度との関係で必要とされる精度で近傍であればよい。
【0058】
図3は、本開示のリングレンズ125の例を示す図である。図3における左側は、リングレンズ125の平面図を示し、右側はリングレンズ125の断面図を示す。例えば、リングレンズ125は、リング状の円柱レンズ部からなり、撮像素子126上で3個以上の多重のリング像を形成するように構成されている。図3の例では、7個のリング像を形成するように内側からリング状のレンズ部RL1、RL2、RL3、RL4、RL5、RL6、RL7が設けられている。例えば、最内側のレンズ部RL1の瞳孔上での直径D1(レンズ部の中心部の直径)は、投光光学系110によって投光される測定光の角膜反射光の影響を少なくしたサイズで、できるだけ小径のサイズとされている。例えば、瞳孔上での直径D1は1.5mm以下とされている。例えば、最外側のレンズ部RL7の瞳孔上での直径D7(レンズ部の中心部の直径)は、想定される人眼の大きな瞳孔径をカバーするサイズとされている。例えば、瞳孔上での直径D7は6mm以上とされている。また、実施例では、レンズ部RL1~RL7は、同じリング幅Wで形成されている。そして、レンズ部RL1~RL7の各リング領域に対応する瞳孔上での各リング領域が測定領域とされる。
【0059】
リングレンズ125において、レンズ部RL1の内側領域、レンズ部RL1~RL7のそれぞれの間の領域、及びレンズ部RL7の外側領域は、遮光部125bが形成されている。隣り合うレンズ部の隙間は、同一の間隔で、微小とされることが好ましい。なお、リングレンズ125のリング数は、これに限られず、3個以上であればよい。
【0060】
本実施例のマスク130は、リングレンズ125によって撮像素子126上に受光される多重のリング像の内の一部を選択的に制限するために、制限部材としての複数のマスク部材が用意されている。マスク130は、マスク駆動部130Aによって選択的に光路に挿入及び脱出される。例えば、マスク130が備える複数のマスク部材は、ターレット板(図示を略す)に配置され、マスク駆動部130Aによってターレット板が回転されることにより、選択的に光路に配置される。また、ターレット板には光透過の開口が設けられ、その開口が光路に挿入されることで、マスク部材が光路から脱出された状態を作り出される。例えば、マスク部材は、ガラス等の透明部材に遮光用のコーティングが施されたものが使用されてもよいし、物理的な穴あき形状の板金が使用されてもよい。また、マスク130として、透過型LCDのようにマスク状態を電子的に制御可能な素子であってもよい。この場合、光透過の領域と遮蔽の領域とを自由に作り出せる。
【0061】
投光光学系110によって被検眼眼底に投光された測定光束は、眼底にて反射される。眼底から反射光束は、対物レンズ505、ハーフミラー501と502を経由し、ホールミラー113のミラー部に反射されて光軸L2の方向へと進行し、リレーレンズ121と122、受光絞り123、コリメータレンズ124、マスク130、及びリングレンズ125を介して、撮像素子126に到達する。これにより、撮像素子126は、リングレンズ125によって変換された測定指標像として7個のリング像を受光可能とされる。
【0062】
なお、測定光学系100は、被検眼の眼底に測定光束を投影する投光光学系と、眼底により反射された測定光束の反射光束を受光する受光光学系と、を有する光学系であればよく、上記の構成に限定されない。例えば、測定光学系100は、眼底にスポット指標を投影し、眼底におけるスポット指標の反射光束をシャックハルトマンセンサにて検出する光学系であってもよい。この場合、リングレンズ125に代えてハルトマン板を配置してもよい。スポット指標の反射光束はハルトマン板によって複数の光束に分離して変換され、多数の点像が撮像素子126に撮像されることで複数の点状の測定指標像が検出される。
【0063】
<固視標呈示光学系>
固視標呈示光学系150は、被検眼に対して固視標を呈示する。固視標呈示光学系150は、被検眼を固視させるために利用される。また、被検眼に雲霧及び調節負荷を与えるために利用される。
【0064】
固視標呈示光学系150は、光源151、固視標板155、レンズ156と157、対物レンズ505、等を備える。光源151は、光軸L5上に配置される。固視標板155は、眼底共役位置に配置される。光源151からの固視光束は、固視標板155、レンズ156、レンズ157を通過した後、ハーフミラー502を透過して光軸L1と同軸となり、ハーフミラー501に反射され、さらに対物レンズ505を介すことで、眼底に到達する。
【0065】
<観察光学系>
観察光学系200は、被検眼の前眼部の観察画像を取得するために利用される。観察画像は、アライメントの他、リングレンズ125に対応する瞳孔上での測定領域の解析、等に利用される。例えば、観察光学系200は、撮像素子201、レンズ202、対物レンズ505、等を備える。撮像素子205は、瞳共役位置に配置される。なお、観察光学系200は、指標投影光学系400から角膜に投影される指標像、及び、アライメント指標投影光学系600から角膜に投影される指標像を検出する検出光学系を兼ねる。
【0066】
<指標投影光学系>
指標投影光学系400は、角膜形状を測定するために利用される。指標投影光学系400は、被検眼と対向する正面から前眼部へ、角膜形状を測定するための指標を投影する。指標投影光学系400は、複数の点光源401を備える。点光源401は、角膜に平行光束を照射することで無限遠指標を投影する。点光源401は、光軸L1を中心として、上下対称及び左右対称に配置される。例えば、本実施例では、点光源が左右に2つずつ設けられる。これによって、角膜に対して4つの点像指標が投影される。なお、指標の数はこれに限られたものではなく、3つ以上の点像指標によって構成されてもよい。また、指標の形状はこれに限られたものではなく、線状等の指標が含まれてもよい。
【0067】
<アライメント指標投影光学系>
アライメント指標投影光学系600は、被検眼に対して測定部12をアライメント(位置合わせ)するために利用される。アライメント指標投影光学系600は、アライメント用光源601を備える。アライメント用光源601は、角膜に拡散光束を照射することで有限遠指標を投影する。アライメント用光源601は、光軸L1を中心として、リング状に配置される。これによって、角膜に対してリング指標(いわゆるマイヤーリング像)が、投影される。
【0068】
本実施例では、アライメント用光源601と、指標投影光学系400と、によって、アライメント指標投影光学系が形成される。例えば、アライメント用光源601によるプルキンエ像と、指標投影光学系400によるプルキンエ像と、が所定の比率で撮影されるように、測定部12を前後方向に移動させることで、作動距離調整が行われてもよい。
【0069】
<視度補正手段>
本実施例では、測定光学系100における光源111、リングレンズ125、及び撮像素子126と、固視標呈示光学系150における光源151と固視標板155は、駆動ユニット160として、光軸に沿って一体的に移動させることが可能である。例えば、被検眼の眼屈折力(すなわち、被検眼の視度)に応じて駆動ユニット160が駆動部161により移動されることで、被検眼に対する固視標板155の呈示距離(すなわち、固視標の呈示位置)を変更できる。そして、撮像素子126が被検眼の眼底に対して共役な位置付近になるように、受光光学系120のリングレンズ125及び撮像素子126が一体的に光軸方向に移動されることで、撮像素子126に受光されるリング像の結像状態(合焦状態)が、被検眼の視度に応じて調整される。
【0070】
<制御系>
図2において、制御部50は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。CPUは、眼科測定装置10における各部の駆動を制御する。RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。ROMには、CPUが実行する各種プログラム等が記憶されている。なお、制御部は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0071】
制御部50には、アライメント駆動部13、モニタ16、不揮発性メモリ55(以下、メモリ55)、等が電気的に接続される。また、制御部50には、測定部12の各光源、各撮像素子、各駆動部、等が電気的に接続される。メモリ55は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ55としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を用いることができる。メモリ55には、被検眼の測定結果等を記憶してもよい。
【0072】
制御部50は、撮像素子201に得られた前眼部画像を処理して各種の情報を得る処理手段として機能する。また、制御部50は、撮像素子126からの出力画像、あるいは、撮像素子126から逐次に出力されるデータの加算画像、に対して処理を行い、眼屈折力情報を得る処理手段として機能する。また、制御部50は、マスク駆動部130Aの駆動を制御し、マスク130が備えるマスク部材によって変化する被検眼上の測定領域を少なくとも2パターン以上で変化させる。
【0073】
<動作>
以上のような構成を備える眼科測定装置10の動作を説明する。本実施例の眼科測定装置10では、本測定前の予備測定と、予備測定後の本測定と、が行われる。本測定では、マスク130が使用されない眼屈折力分布の標準測定モードと、マスク130が使用される特殊測定モードと、が用意されている。例えば、特殊測定モードの中には、眼屈折力分布の白内障眼測定モード、眼屈折力分布の精密測定モード、測定領域限定測定モード、が用意されている。各測定モードは、検者が操作部17を操作することによって切換えることも可能であり、また、眼科測定装置10(制御部50)が、自動的に切換えることも可能とされている。各測定モードの詳細は後述する。
【0074】
<アライメント>
検者は、被検者に、顔を顔支持ユニット15へ載せるように指示する。制御部50は、操作部17からの信号に基づいて、被検眼に対する測定部12のアライメントを実行する。例えば、制御部50は、固視標呈示光学系150の光源151を点灯させ、被検眼に固視標を呈示する。また、制御部50は、指標投影光学系400とアライメント指標投影光学系600の各光源を点灯させ、被検眼の角膜にアライメント指標を投影する。例えば、制御部50は、観察光学系200の撮像素子201により撮影された観察画像からアライメント指標像(点像及びマイヤーリング像)を検出し、被検眼に対する測定部12のX方向、Y方向、及びZ方向のアライメント状態を検出する。そして、制御部50は、アライメント状態の検出結果に基づいてアライメント駆動部13の駆動を制御し、被検眼に対する測定部12の位置関係を所定に位置関係に調整する。
【0075】
<予備測定>
アライメントが完了すると、眼屈折力分布を得る本測定の前に予備測定が実行される。予備測定は、本測定に当たって、撮像素子126を被検眼眼底に対して共役な位置付近に位置させるために、被検眼の視度補正情報を得ることを主の目的として行われる。また、予備測定は、本測定時に被検眼に雲霧を掛けるために行われる。
【0076】
予備測定の初期段階では、撮像素子126は、被検眼が0D(被検眼の屈折誤差がない度数で、「D」は度数の単位のディオプタを示す)の状態の位置に置かれている。ここで、被検眼の屈折誤差の球面度数が低度数(例えば、プラス及びマイナスの3D以下)の場合には、リングレンズ125によって撮像素子126上に受光される7個のリング像は、リング像同士が分離し、また、コントラストも大きく低下せずに、7個の各リング像を区別して検出できる。一方、被検眼の屈折誤差の球面度数がマイナス側の高度数(例えば、7D以上)の場合、7個のリング像は縮小され、隣接するリング像同士が接近し、各リング像を区別して検出することが難しくなることがある。また、被検眼の屈折誤差の球面度数がプラス側の高度数(例えば、7D以上)の場合、リング像は拡大してボケることで、リング像のコントラストが低下し、やはり隣接するリング像の区別が難しくなることがある。また、被検眼の状態によって、白内障眼に代表されるように、眼内の反射、散乱等の状態が異なるため、隣接するリング像の区別がより難しくなることがある。
【0077】
そこで、予備測定では、多重(実施例では7個)のリング像の内、撮像素子126上に受光可能なリング像が減少される。例えば、撮像素子126上に受光されるリング像が1つ又は2つに限定されるように、マスク130が持つマスク部材が光路に挿入される。予備測定段階でマスク130を使用した測定モードとするか、マスク無しの測定モードとするかは、制御部50によって自動的に切換えられてもよい。例えば、初めは、マスク130のマスク無しの状態で撮像素子126上に受光された7個のリング像の画像が処理され、各リング像の区別が難しいと判断された場合に、制御部50が自動的にマスク130を使用する測定モードに切換える。なお、マスク無しの測定モードに関し、リングレンズ125の中央部分は角膜反射輝点の除去のためのマスクが有ってもよい。
【0078】
図4は、予備測定段階で使用されるマスク部材の例である。図4(a)のマスク部材131は、撮像素子126上に受光されるリング像が、図3に示されたレンズ部RL3による1つのリング像に限定されるように、リング状の光透過領域131aが形成され、その他の領域は遮光領域131bとされている。例えば、光透過領域131aの瞳孔上でのリング幅中心の直径Dは、レンズ部RL3と同じく、3.2mmとされている。また、光透過領域131aのリング幅は、レンズ部RL3と同じ幅Wとされている。
【0079】
マスク130のマスク部材131が光路上に配置されると、撮像素子126上に受光されるリング像は、レンズ部RL3による1つのリング像に限定される。これにより、被検眼の屈折誤差の球面度数が高度数であっても、制御部50は、撮像素子126により撮像されたリング像を画像解析して各経線方向における眼屈折力を求め、この眼屈折力に対して所定の処理を施すことで、少なくとも球面度数(ここでは予備測定における球面度数)を取得する。制御部50は、予備測定における球面度数と共に乱視度数を取得してもよい。
【0080】
なお、マスク部材131は、被検眼の瞳孔径が標準的なサイズの場合(例えば、3.2mm以上)の場合に適用されものである。被検眼の瞳孔径が標準的なサイズより小さい場合は、レンズ部RL3より内側のレンズ部RL2又はRL1によるリング像に限定されるようにマスク部材が用意されていてもよい。例えば、図4(b)のマスク部材132は、撮像素子126上に受光されるリング像が、図3に示されたレンズ部RL2に対応して限定されるように、リング状の光透過領域132aが形成された例である。光透過領域132a以外の領域は遮光領域132bとされている。光透過領域132aは、瞳孔上でのリング幅中心の直径Dが、例えば、2.3mmとされている。光透過領域132aの幅は、レンズ部RL2と同じ幅Wとされている。
【0081】
例えば、予備測定の段階で使用されるマスク部材が複数用意(実施例では、マスク部材131とマスク部材132)されている場合、何れのものを使用するかは、被検眼の瞳孔サイズに応じて制御部50が次のように判断してもよい。制御部50は、観察光学系200の撮像素子201によって取得された前眼部画像を画像処理し、被検眼の瞳孔領域のサイズを求める。制御部50は、瞳孔領域のサイズが瞳孔上でのレンズ部RL3の測定領域より大きい場合は、マスク部材131を使用すると判断する。制御部50は、瞳孔領域のサイズが瞳孔上でのレンズ部RL3の測定領域より小さい場合(言い換えれば、小瞳孔径の場合)は、マスク部材132を使用すると判断する。そして、制御部50は、その判断結果に基づいてマスク駆動部130Aを駆動し、マスク130の内のマスク部材131と132を選択的に切換える。
【0082】
なお、予備測定の段階では、撮像素子126上に受光されるリング像が2つに限定されるマスク部材が使用されてもよい。例えば、図4(a)に示された光透過領域131aと、図4(b)に示された光透過領域132aと、の2つの光透過領域を持つマスク部材が使用されてもよい。この場合、撮像素子126上に受光されるリング像は2つのみであるので、その区別は比較的容易とされる。そして、被検眼が小瞳孔径の場合は、光透過領域132aを通過した測定光束のリング像が撮像素子126上に受光されることで、小瞳孔径の眼屈折力が得られる。 <眼屈折力分布の標準測定モード>
予備測定が完了すると、本測定に移行される。初めに眼屈折力分布の標準測定モードを説明する。眼屈折力分布の標準測定モードは、マスク130を使用せずに、被検眼の瞳孔内の広い範囲に渡って眼屈折力分布を得る測定モードである。例えば、眼屈折力分布の測定結果は、レーザ光によって角膜形状を変化させる角膜矯正手術等に利用される。眼屈折力分布の標準測定モードは、眼内での反射や散乱等の影響が少なく、標準的な状態の被検眼の場合に用いられる。
【0083】
予備測定によって被検眼の屈折力の球面度数が得られたならば、視度補正手段が作動される。例えば、予備測定における球面度数に基づいて、駆動ユニット160が備える固視標板155、リングレンズ125、及び撮像素子126等が、駆動部161に駆動によって、一体的に光軸に沿って移動されることで、撮像素子126が被検眼の眼底と共役な位置付近に置かれると共に、固視標板155が被検眼の焦点が合う雲霧開始位置に置かれる。これにより、被検眼は固視標をはっきりと観察できるようになる。その後、固視標板155が雲霧開始位置から遠ざかるように移動され、所定のディオプタ分の雲霧が付加される。これによって、被検眼の調節が解除され、眼屈折力の測定結果が真値へと近づくことになる。
【0084】
本測定では、予備測定で使用されたマスク130のマスク部材131又は132が光路から外される。そして、眼屈折力分布の標準測定モードでは、撮像素子126上に受光される多重のリング像がマスク130によって制限されない状態で、眼屈折力分布が測定される。例えば、制御部50は、所定のタイミング毎に、各リング像を撮像素子226に連続して撮影させる。また、例えば、制御部50は、各リング像を加算処理することでノイズ光が低減されたリング像の画像を取得する。そして、例えば、制御部50は、取得された画像の各リング像を細線化し、各リング像について、それぞれ各経線方向(例えば、1度毎)における眼屈折力分布を求める。例えば、図3に示すリングレンズ125に対応する7個のリング像が取得されていれば、角膜中心を基準として、各レンズ部RL1~RL7の瞳孔上での直径サイズの位置について、それぞれの各経線方向の詳細な眼屈折力分布が求められる。眼屈折力分布の測定結果はメモリ55に記憶される。
【0085】
また、被検眼の詳細な眼屈折力分布が求められると、その測定結果がモニタ16の画面に表示される。例えば、眼屈折力分布の測定結果は、屈折力の大きさに応じて色分けされたカラーマップ、等高線マップ、等で表示される。
【0086】
この標準測定モードでは、マスク130が使用されないため、後述する眼屈折力分布の白内障眼測定モード及び精密測定モードに対して、被検眼に負担を掛けることなく、スピーディに測定を行える。
【0087】
<眼屈折力分布の白内障眼測定モード>
本測定の眼屈折力分布の測定において、被検眼の状態によって、眼内の反射、散乱等の状態が異なり、撮像素子226に受光されるリング像のプロファイルが変わり、各リング像が加算処理されとしても、隣接するリング像の区別がつきにくくなることがある。例えば、被検眼が白内障眼の場合、眼内での散乱成分が大きくなり、リング像のコントラストが低下しやすく、隣接するリング像の区別がつきにくくなる。そこで、事前測定後の本測定時には、事前測定時に対して、被検眼上の測定領域が変化するようにマスク130の駆動が制御される。なお、事前測定時に撮像素子226に受光可能なリング像が減少されていた場合、本測定時には、事前測定時に対して、撮像素子226に受光可能なリング像の数が増加されるように、マスク130の駆動が制御される。
【0088】
図5は、隣接するリング像の区別を説明する図である。図5(a)は、眼内の反射や散乱が少ない被検眼における4個のリング像PA1、PA2、PA3、PA4の信号のプロファイル(位置に対する諧調)の例を示す。この場合、4個のプロファイルは各リング像PA1、PA2、PA3、PA4を区別するための十分なコントラストが得られている。
【0089】
一方、図5(b)は、眼内の反射や散乱が多い被検眼における4個のリング像PA1~PA4の信号のプロファイルの例を示す。眼内の反射、散乱等の状態が異なるため、リング像のプロファイルのバックグラウンドBGが変化する。図5(b)の例の場合、隣接するリング像間の諧調は十分に落ち込まず、コントラストが低くなっている。このため、4個のリング像PA1、PA2、PA3、PA4の位置を区別し難い。
【0090】
そこで、この対応としてマスク130が使用される。図5(c)は、図5(b)のリング像PA1、PA2、PA3、PA4に対して、リング像PA2とPA4が撮像素子126に受光されないように制限された信号のプロファイルの例を示す。この場合、リング像PA1とリング像PA3との間の諧調は、2つのリング像を区別できる程度に十分なコントラストが得られている。したがって、リングレンズ125によって撮像素子126に受光されるリング像の内、隣接するリング像が受光されないように、マスク130が持つマスク部材が光路に配置されることで、眼内の反射や散乱が多い被検眼であっても、リング像の区別が可能にされる。そして、光路に配置されるマスク部材が順次切換えられることで、他のリング像の区別が可能にされる。
【0091】
図6は、マスク130において、隣接するリング像が受光されないように制限するマスク部材の例である。図6(a)のマスク部材135は、レンズ部RL1~RL7の内、内側から偶数番目のレンズ部RL2、RL4、RL6によるリング像が撮像素子126に受光されないように、リング状の遮光領域135bが設けられ、奇数番目のレンズ部RL1、RL3、RL5、RL7によるリング像が撮像素子126に受光されるように、リング状の光透過領域135aが形成されている。図6(b)のマスク部材136は、遮光と透過の領域がマスク部材135とは逆にされたものである。すなわち、マスク部材136は、奇数番目のレンズ部RL1、RL3、RL5、RL7によるリング像が撮像素子126に受光されないように、リング状の遮光領域136bが形成され、偶数番目のレンズ部RL2、RL4、RL6によるリング像が撮像素子126に受光されるように、リング状の光透過領域136aが形成されている。
【0092】
眼屈折力分布の白内障眼測定モードの本測定実行時には、例えば、初めにマスク部材135が光路に挿入されることで、奇数番目のレンズ部RL1、RL3、RL5、RL7によるリング像が撮像素子126に受光される。この奇数番目のリング像の第1画像は、メモリ55(又は制御部50が持つメモリ)に記憶されることで取得される。次に、光路に挿入されるマスク130がマスク部材136に変更されることで、偶数番目のレンズ部RL2、RL4、RL6によるリング像が撮像素子126に受光される。この偶数番目のリング像の第2画像は、メモリ55(又は制御部50が持つメモリ)に記憶されることで取得される。制御部50は、取得された第1画像を処理し、奇数番目のリング像の測定位置について、それぞれ各経線方向における眼屈折力分布を求める。同様に、制御部50は、取得された第2画像を処理し、偶数番目のリング像の測定位置について、それぞれ各経線方向における眼屈折力分布を求める。これにより、眼内の反射や散乱が多い被検眼であっても、隣接するリング像の区別が可能とされ、より正確な眼屈折力が得られる。そして、制御部50は、最終的に、第1画像及び第2画像をそれぞれ処理して得た測定結果を合成することで、レンズ部RL1~RL7によるリング像に基づく、全体の眼屈折力分布を得る。
【0093】
なお、上記では、マスク部材135及び136は、リングレンズ125によるリング像を一つ飛ばし(一つ置き)に取得する場合の例を説明したが、順次変更(切換え)されるマスク部材の数を増やすことで、隣接するリング像の間隔を2つ飛ばし(2つ置き)以上にしてもよい。この場合も、制御部50は、マスク部材を順次変更し、撮像素子126に順次受光されたリング像をそれぞれ処理して得た眼屈折力の測定結果を合成することで、リングレンズ125による全体の眼屈折力分布を得ることができる。
【0094】
なお、本測定において、眼屈折力分布の白内障眼測定モードに切換えるか否かは、予備測定時における撮像素子126からのリング像の出力信号、又は本測定開始時にマスク130が使用されていない状態における撮像素子126からのリング像の出力信号、の少なくとも一つに基づき、制御部50によって自動的に判断(選択)されてもよい。あるいは、眼屈折力分布の白内障眼測定モードへの切換えは、モニタ16に撮像素子126に受光されたリング像の画像が表示されることで、検者がその画像のリング像の状態を見て判断し、検者が操作部17を操作することで切換えてもよい。また、白内障眼測定モードへの切換えは、前眼部徹照像が取得されている場合には、その前眼部徹照像に基づき、制御部50によって自動的に判断されてもよい。
【0095】
<眼屈折力分布の精密測定モード>
眼屈折力分布測定において、被検眼の瞳孔上における測定領域の分割数は、リングレンズ125に設けられたリング状のレンズ部(実施例ではRL1~RL7)の個数によって定められる。リング状のレンズ部の数を増加させると、撮像素子126に受光されるリング像が密になり、隣接するリング像の区別がつきにくくなる。また、リング状のレンズ部を細かくしたリングレンズ125を作成することは難しく、限界がある。
【0096】
そこで、以下では、リングレンズ125のリング状のレンズ部の数を増加させることなく、マスク135を工夫することで、実質的に被検眼の測定領域の分割数を増加させ、より精密な眼屈折力分布を得る例を説明する。例えば、精密測定モードでは、撮像素子126に受光されるリング像のリング幅を2分割以上に分割するマスク部材が使用される。
【0097】
図7は、精密な眼屈折力分布の測定を説明する図である。図7(a)は、リングレンズ125が持つ、あるリング状のレンズ部RLnについて、測定光束(眼底からの反射光)の通過及び撮像素子126上の結像を示す。被検眼の瞳孔上におけるレンズ部RLnのリング幅をWとし、そのリング幅の中心の直径をDnとする。例えば、直径Dnを4.0mm、リング幅Wを0.2mmとすると、1つのレンズ部RLnでは、被検眼の瞳孔上での測定領域3.8~4.2mmに対する眼屈折力が得られる。例えば、この場合の測定結果は、リング幅Wの中心の直径Dnに対応する瞳孔径4.0mmにおける測定結果として表現される。
【0098】
図7(b)は、リング状のレンズ部RLnのリング幅Wを2分割する場合の例である。例えば、マスク部材M1をレンズ部RLnの近傍に配置し、レンズ部RLnの外側半分の領域を遮光することで、レンズ部RLnを通過する光束を制限する。この場合、被検眼の瞳孔上における測定領域は、直径Dnと直径(DN-W)との間の領域となる。すなわち、図7(a)と同じ寸法例では、瞳孔上における測定領域は、3.8~4.0mmとなる。この場合の測定結果は、レンズ部RLnを通過した光束の中心に対応する瞳孔径3.9mmでの測定結果として表現される。
【0099】
なお、図7(c)は、図7(b)のマスク部材M1とレンズ部RLnの領域とを正面から見た時の図である。マスク部材M1は、レンズ部RLnの内側半分が透過領域N1となるパターンとされている。
【0100】
次に、図7(b)に対して、図7(d)のように、マスク部材M2によってレンズ部RLnの内側半分の領域を遮光することで、レンズ部RLnを通過する光束を制限する。この場合、被検眼の瞳孔上における測定領域は、直径Dnと直径(DN+W/2)との間の領域となる。すなわち、図7(a)と同じ寸法例では、瞳孔上における測定領域は、4.0~4.2mmとなる。そして、この場合の測定結果は、レンズ部RLnを通過した光束の中心に対応する瞳孔径4.1mmでの測定結果として表現される。
【0101】
なお、図7(e)は、図7(d)のマスク部材M2とレンズ部RLnの領域とを正面から見た時の図である。マスク部材M2は、レンズ部RLnの外側半分が透過領域N2となるパターンとされている。
【0102】
このように、リングレンズ125のリング状のレンズ部の数を増やすことなく、マスク部材を使用することで、実施的に被検眼の瞳孔上における測定領域の分割数を増加させることができ、より精密な眼屈折力分布を得ることができる。
【0103】
図8は、眼屈折力分布の精密測定モードに適用されるマスク130のマスク部材の例を示す図である。図8(a)のマスク部材137は、図7(c)と同じく、各レンズ部RL1~RL7に対して外側の半分のリング像が撮像素子126に受光されないように、リング状の遮光領域137bが形成されると共に、各レンズ部RL1~RL7に対して内側の半分のリング像が撮像素子126に受光されるように、リング状の光透過領域137aが形成されている。
【0104】
図8(b)のマスク部材138は、マスク部材137とは逆に、各レンズ部RL1~RL7に対して外側の半分のリング像が撮像素子126に受光されるように、図7(e)と同じく、リング状の光透過領域138aが形成されていると共に、各レンズ部RL1~RL7に対して内側の半分のリング像が撮像素子126に受光されないように、リング状の遮光領域138bが形成されている。
【0105】
眼屈折力分布の精密測定モードの本測定実行時には、例えば、初めにマスク部材137が光路に挿入されることで、リング状の各レンズ部RL1~RL7の内側半分のリング像が撮像素子126に受光され、そのリング像の第1画像が制御部50によって取得される。次に、光路に挿入されていたマスク部材137がマスク部材138に切換えられ、今度は、リング状の各レンズ部RL1~RL7の外側半分のリング像が撮像素子126に受光され、そのリング像の第2画像が制御部50によって取得される。制御部50は、取得された第1画像を処理し、各レンズ部RL1~RL7のリング幅Wの内側半分に対応する測定領域に対する、それぞれ各経線方向における眼屈折力分布を求める。また、制御部50は、取得された第2画像を処理し、各レンズ部RL1~RL7のリング幅Wの外側半分に対応する測定領域に対する、それぞれ各経線方向における眼屈折力分布を求める。そして、制御部50は、最終的に、第1画像及び第2画像をそれぞれ処理して得た測定結果を合成することで、各レンズ部RL1~RL7に対応する瞳孔上の測定領域が2分割された測定領域における眼屈折力分布を得る。すなわち、実質的にレンズリング125の各レンズ部RL1~RL7で分割される測定領域の分割数を2倍にすることができ、より精密な眼屈折力分布の測定結果を得ることができる。これにより、より精度よく、より適切な測定結果が得られる。
【0106】
なお、上記では各レンズ部RL1~RL7に対応する測定領域をそれぞれ2分割する例を説明したが、マスク130のマスク部材の数を増やし、さらに3分割以上に分割数を増やしてもよい。こうすれば、さらに細かな領域での眼屈折力分布が得られる。
【0107】
<測定領域限定測定モード>
測定領域限定測定モードは、マスク130のマスク部材を利用することで、リングレンズ125の各レンズ部RL1~RL7に対応する被検眼瞳孔上の測定領域の内、特定のレンズ部に対応する測定領域に限定して眼屈折力を得る測定モードである。例えば、この測定モードでは、被検眼の球面度数(S値)、乱視度数(C値)、乱視軸角度(A値)を得ることで、その測定結果は眼鏡レンズやコンタクトレンズの処方の際に利用される。
【0108】
例えば、測定領域限定測定モードの本測定では、図4に示されたマスク部材131又は132が利用される。測定領域限定測定モードが選択されている場合、制御部50は、予備測定段階で使用されたマスク130のマスク部材131又は132をそのまま配置した状態で本測定を実行する。例えば、マスク部材131がレンズ部RL3に対応し、瞳孔上でのレンズ部RL3の中心部の直径D4が3.2mm、リング幅Wが0.2mmの場合、瞳孔径3.0~3.4mmの測定領域に限定される。
【0109】
制御部50は、所定のタイミング毎に、レンズ部RL3によって撮像素子126上に受光されるリング像の画像を加算処理し、ノイズ光が低減されたリング像の画像を取得する。制御部50は、取得された画像のリング像を細線化し、各経線方向の眼屈折力を求め、この眼屈折力に対して所定の処理を行うことで、被検眼の屈折誤差の球面度数(S値)、乱視度数(C値)、乱視軸角度(A値)の測定結果を得る。
【0110】
なお、被検眼が瞳孔径3.0mm以下の小瞳孔の場合、マスク部材132が光路に配置されることで、小瞳孔用に限定された測定領域での眼屈折力が得られる。
【0111】
なお、マスク部材131が使用されず、制御部50は、リングレンズ125によって撮像素子126に受光された7個のリング像の内からレンズ部RL1に対応するリング像を抽出し、そのリング像に基づく眼屈折力を得ることは可能であるかもしれない。しかし、前述のように、被検眼の白内障眼で眼内の反射、散乱等があると、レンズ部RL1に対応するリング像の特定に影響を及ぼす可能性がある。これに対して、この測定領域限定測定モードを用いる場合、多重のリングレンズ125が配置された測定光学系でありながら、マスク130が適宜切換えられることで、眼鏡レンズやコンタクトレンズの処方のための球面度数(S値)、乱視度数(C値)、乱視軸角度(A値)が精度よく、適切に得られる。
【0112】
<第1実施形態の変容例>
上記では、眼屈折力分布の精密測定モードは、眼屈折力分布の白内障眼測定モードとは別ものとして説明したが、両方のモードが組み合わされてもよい。例えば、精密測定モードの適用において、被検眼の眼内の反射や散乱の影響によって、隣接するリング像の区別がし難い場合には、図6のマスク部材135、136に対して、図8のマスク部材137、138をそれぞれ加える。すなわち、奇数番目のレンズ部RL1、RL3、RL5、RL7によるリング像に対し、それぞれ内側半分のリング像に限定された第1画像と、それぞれ外側半分のリング像に限定された第2画像と、偶数番目のレンズ部RL2、RL4、RL6によるリング像に対し、それぞれ内側半分のリング像に限定された第3画像と、それぞれ外側半分のリング像に限定された第4画像と、が取得される。そして、第1画像~第4画像の眼屈折力分布の測定結果が合成されることで、眼内の反射や散乱がある白内障眼であっても、より精密な眼屈折力分布の測定結果が得られる。
【0113】
上記では、受光光学系120は、マスク130、変換部材(リングレンズ125)、撮像素子126を持つ1系統の光学系としたが、ハーフミラーによって2系統に分岐された光学系にそれぞれマスク130、変換部材(リングレンズ125)、撮像素子126が配置された構成であってもよい。この場合、各系統のマスク130で、異なるマスク部材が配置されることにより、異なるパターンのリング像の制限状態を作り出せる。
【0114】
また、上記では、測定モードに応じて予め定められたマスク130のマスク部材(言い換えれば、予め定められたリング像)が使用されるものとしたが、受光素子(撮像素子126)に受光されるリング像が任意に選択可能にされていてもよい。例えば、マスク130として透過型LCD等の電子素子が使用される場合、任意のマスク状態が作り出されることで、リング像が任意に選択される。例えば、選択手段の例である操作部17が検者によって操作されることで、リング像が任意に選択される。例えば、検者はモニタ16に表示される画面を操作することで、リング像(言い換えれば測定、被検眼上の領域)を選択する。そして、制御部50は、測定時に、予め選択されたリング像が撮像素子126に受光されるようにマスク130の駆動を制御する。
【0115】
例えば、被検眼上の中心領域、周辺領域、または、特定の測定領域を分けて測定したい場合に、リング像が任意に選択されることによって測定領域が任意に選択されるため、目的に応じて、より適切な眼屈折力情報が得られる。例えば、屈折型多焦点IOL(同心円で眼屈折分布が変化するIOL)が挿入された被検眼の測定で、特定領域の屈折度数を測定したい場合に、リング像が任意に選択されることで、より適切な眼屈折力情報が得られる。
【0116】
また、例えば、被検眼が白内障等で、一部のみリング像にノイズが出るケースの場合には、リング像が選択されることで、ノイズのリング像を排除して、より適切な眼屈折力情報が得られる。この場合、制御部50が撮像素子126により得られたリング像に基づいて、自動で判断してノイズのリング像を排除するようにリング像を選択してもよい。あるいは、検者がリング像の画像を観察し、おかしい個所を特定することで、そのリングを排除し、その後に再測定することでも良い。また、ノイズ部分を特定できれば、マスクは必ずしも円状でなくても良い。
【0117】
また、マスク130の挿入前後で、又はマスク130の切換え前後で、被検眼に対する測定部12(測定光学系100)のアライメントずれ(XY方向のアライメントずれ)が有った場合、マスク130及びリング像が対応する被検眼上の位置が変わる。このため、制御部50は、そのアライメントずれ情報に基づき、眼屈折力情報を取得した測定領域を補正してもよい。例えば、図6において、奇数番目のリング像を得るようにマスクされた測定時に対し、偶数番目のリング像を得るようにマスクが切換えられた測定時にアライメントずれが有った場合には、制御部50は、そのアライメントずれの偏位ΔDを考慮し、撮像素子126に順位受光されたリング像をそれぞれ処理した眼屈折力情報を合成する際に、リング像に対応する瞳孔上の測定領域を偏位ΔDだけ補正する。これにより、アライメントずれが有った場合にも、眼屈折力情報に対応する測定領域の測定結果(例えば、眼屈折力分布のマップとして出力)がより適切に得られる。なお、偏位ΔDは、撮像素子201により撮像された前眼部像におけるアライメント指標像に基づき、制御部50によって検出される。
【0118】
また、上記では、隣接するリング像が撮像素子126に受光されないようにするマスク130が備えるマスク部材の構成として、多重のリング像を1つ飛ばし(1つ置き)で、異なるリング像に制限する2つのマスク135及び136を使用する例と、多重のリング像を2つ飛ばし(2つ置き)以上で、異なるリング像に順次制限するための複数のマスク部材であってもよい旨を説明したが、これに限られない。
【0119】
図20は、隣接するリング像が撮像素子126に受光されないようにするマスク部材の変容例を説明する図である。例えば、図20(a)のマスク143には、マスク143の中心MOを基準にして、撮像素子126に受光される多重のリング像に対応した1周分の円周方向が、2等分割された第1領域143Aと第2領域143Bとに区分けされている。上半分の第1領域143Aには、撮像素子126に受光される多重のリング像に対応して、内側から偶数番目のリング像が撮像素子126に受光されるように、半リング状の光透過領域143Aaが形成され、内側から奇数番目のリング像が撮像素子126に受光されないように、半リング状の遮光領域143Abが形成されている。
【0120】
一方、下半分の第2領域143Bには、撮像素子126に受光される多重のリング像に対応して、内側から奇数番目のリング像が撮像素子126に受光されるように、半リング状の光透過領域143Baが形成され、内側から偶数番目のリング像が撮像素子126に受光されないように、半リング状の遮光領域143Bbが形成されている。
【0121】
そして、この変容例の場合、マスク143は、マスク駆動部130Aによって測定光学系100の光路(すなわち、受光光学系120の光路)に挿入されると共に、中心MOを基準にして、2等分割の角度分(この例では360度の1/2の180度)にて回転されることで、マスク143によるリング像の制限状態が2つのパターンに変更可能にされる。なお、マスク143は、その中心MOが光軸L2に一致するように、光路に配置される。
【0122】
眼屈折力の測定時には、制御部50によってマスク駆動部130Aの駆動が制御され、例えば、初めに、マスク143が図20(a)に示す配置状態で光路に挿入されて測定が実行されることで、マスク143の光透過領域143Aa及び143Baを通過した、測定光の眼底からの戻り光によるリング像が撮像素子126に受光される。このときのリング像の第1画像がメモリ55に記憶される。次に、マスク143が180度回転されることで、撮像素子126に受光されるリング像の制限状態が変更される。そして、この制限状態によるリング像が撮像素子126に受光され、そのリング像の第2画像がメモリ55に記憶される。
【0123】
図21は、マスク143が図20(a)の配置状態で取得された第1画像の例を示す図であり、例えは、収差の大きな被検眼の場合に取得されたリング像の例である。図21において、上半分の領域には、光透過領域143Aaを通過した戻り光により、内側から2番目のリング像MI2、4番目のリング像MI4、6番目のリング像MI6が撮像素子126に受光されている。一方、下半分の領域には、光透過領域143Baを通過した戻り光により、内側から1番目のリング像MI1、3番目のリング像MI3、5番目のリング像MI5、7番目のリング像MI7が撮像素子126に受光されている。
【0124】
ここで、上半分の領域にある2番目のリング像MI2及び4番目のリング像MI4と、下半分の領域にある3番目のリング像MI3に着目すると、リング像MI3のリング像の幅は、リング像MI2とリング像MI4との隙間の幅と、同程度となっている。このため、仮に、マスク143が光路に配置されず、全てのリング像が撮像素子126に受光されているとすると、リング像MI3は、これに隣接するリング像MI2及びリング像MI4との区別がつき難くなる。これに対して、マスク143が使用された場合には、隣接するリング像が撮像素子126に受光されないため、リング像MI2、リング像MI3及びリング像MI4の区別が容易となる。すなわち、図21においては、上半分の領域にあるリング像MI2及びリング像MI4の間には、隣接するリング像MI3が存在せずに隙間があるため、リング像MI2及びリング像MI4を容易に区別できる。また、下半分の領域にあるリング像MI3については、隣接するリング像MI2及びリング像MI4が存在せず、リング像MI1及びリング像MI5との間に隙間があるため、リング像MI3を容易に区別できる。
【0125】
なお、マスク143が180度回転されることで得られる第2画像は、図21の上下の領域が入れ替わった状態とされるので、その図示は省略する。
【0126】
上記のように第1画像及び第2画像が得られると、処理手段を兼ねる制御部50によって、第1画像及び第2画像がそれぞれ画像処理されることで、各画像のリング像に基づく眼屈折力分布の測定結果が得られる。そして、第1画像に基づく測定結果と第2画像に基づく測定結果とが合成されることで、全体の眼屈折力分布の測定結果が得られる。
【0127】
図20の説明に戻り、図20(b)は、図20(a)のマスク部材に対する変容例を示す図である。図20(b)に示されるマスク144は、撮像素子126に受光される多重のリング像に対応した1周分の円周方向が4個に等分割され、その等分割された各領域について、隣接するリング像が撮像素子126に受光されないように、リング状の光透過領域及び遮光領域が形成されている。
【0128】
例えば、図20(b)のマスク144においては、4等分割された領域144A1と、その180度反対側の領域144A2と、に関して、内側から偶数番目のリング像が撮像素子126に受光されように光透過領域144Aaが形成され、内側から奇数番目のリング像が受光素子に受光されないように遮光する遮光領域144Abが形成されている。また、領域144A1と領域144A2との間の領域144B1及び領域144B2に関して、内側から奇数番目のリング像が撮像素子126に受光されように光透過領域144Baが形成され、内側から偶数番目のリング像が受光素子に受光されないように遮光する遮光領域144Bbが形成されている。
【0129】
このマスク144においては、マスク駆動部130Aによってマスク144の中心MOを基準にして、等分割の個数に対応する角度(この例では90度)にて回転されることで、マスク部材によるリング像の制限状態が2つのパターンに変更される。そして、この制限状態が順次変更されることに伴い、撮像素子126に順次受光されるリング像の画像がそれぞれ画像処理されることで眼屈折力分布の測定結果が得られ、その測定結果が合成されることで全体の眼屈折力分が得られる。
【0130】
なお、図20(a)及び図20(b)のマスク部材においては、リング像に対応した1周分の円周方向を2等分割した例と、4等分割した例を示したが、分割数は偶数の個数であれば、それらより多くてもよい。言い換えれば、マスク部材は、撮像素子126に受光される多重のリング像に対応した1周分の円周方向が2以上の偶数の個数で等分割され、その等分割された各領域について、内側から偶数番目のリング像が撮像素子126に受光され、内側から奇数番目のリング像が撮像素子126に受光されないように遮光された第1領域と、内側から奇数番目のリング像が撮像素子126に受光され、内側から偶数番目のリング像が撮像素子126に受光されないように遮光された第2領域と、を備え、その第1領域と第2領域とが交互に配置されていればよい。
【0131】
図20(c)は、隣接するリング像が撮像素子126に受光されないようにするためのマスク部材の他の例を示す図である。マスク部材は、撮像素子126に受光されるリング像に対応した1周分の円周方向が3以上の個数で等分割され、その分割の個数に応じて、隣り合うリング像が撮像素子126に受光されないように、分割された各領域に光透過領域と遮光領域とが形成されていてもよい。
【0132】
例えば、図20(c)のマスク145では、中心MOを基準に円周方向が3等分で分割された例である。その3等分された1つ目の第1領域145Aには、内側から1番目のリング像と、3等分の分割数に対応するように、2個のリング像を飛ばして4番目、7番目のリング像と、が撮像素子126に受光されるように、光透過領域145Aaが形成され、内側から2番目、3番目、5番目及び6番目のリング像が受光されないように遮光する遮光領域145Abが形成されている。また、3等分された2つ目の第2領域145Bには、3等分の分割数に対応して、内側から2番目、5番目のリング像が撮像素子126に受光されるように、光透過領域145Baが形成され、内側から1番目、3番目、4番目、6番目及び7番目のリング像が受光されないように遮光する遮光領域145Bbが形成されている。また、3等分された3つ目の第3領域145Cには、3等分の分割数に対応して、内側から3番目、6番目のリング像が撮像素子126に受光されるように、光透過領域145Caが形成され、内側から1番目、2番目、4番目、5番目及び7番目のリング像が受光されないように遮光する遮光領域145Cbが形成されている。
【0133】
この例の場合、マスク145は、マスク駆動部130Aによって3等分の分割数に対応する角度(この例では120度)にて順次回転されることで、マスク部材によるリング像の制限状態が3つのパターンに変更される。そして、この制限状態が順次変更されることに伴い、撮像素子126に順次受光されるリング像の画像がそれぞれ画像処理され、これにより得られた眼屈折力分布の測定結果が合成されることで、全体の眼屈折力分が得られる。このようなマスク部材によっても、撮像素子126によって得られる各画像においては、隣接するリング像が撮像素子126に受光されないため、各リング像の区別が容易になり、より精度よく、より適切な測定結果が得られる。
【0134】
なお、図20(c)に示されるマスク部材の場合、各取得画像では隣接するリング像の間隔が2個以上の飛ばしにできるので、リング像の数が増加され、各リング像の間隔が狭くされた場合に、より有利となる。また、上記のように、隣接するリング像が撮像素子126に受光されないように改善されたマスク部材は、被検眼が白内障眼の場合に限らず、被検眼が大きな収差を持つ場合にも適用されるとよい。
【0135】
以上、図20(a)、図20(b)、図20(c)に示されたマスク部材の構成を纏めれば、次のように言い換えることもできる。例えば、マスク部材は、1つのマスク材であって、撮像素子126に受光される多重のリング像に対応した1周分の円周方向が等分割されると共に、等分割された領域に対応して、少なくとも隣り合うリング像が撮像素子126に受光されないように遮光する遮光領域が形成されていればよい。この場合、マスク部材は、リング像に対応したマスク部材の中心を基準に回転可能にされ、マスク部材が等分割の角度に基づいて回転されることで、マスク部材によるリング像の制限状態が順次変更される。
【0136】
[第2実施形態]
第2実施形態における眼科測定装置の一実施例を説明する。図9は、第2実施形態における眼科測定装置10の光学系を示す図である。なお、第1実施形態と同一の要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0137】
多重のリング像を利用する方式においては、受光素子に受光された各リング像が、被検眼上で対応する各リング状測定領域の内の内側から何番目かを特定する必要がある。しかし、被検眼の状態によっては、受光素子上のリング像が乱れたり、信号レベルが低かったりし、リング像が何番目のものかの区別がつきにくい場合がある。リング像の区別を誤ると、適切な測定結果が得られ難くなる。
【0138】
多重のリング像を利用する方式においては、撮像素子126に受光された各リング像が、被検眼上で対応する各測定領域の内の何番目か(言い換えれば、測定光軸の中心位置から何周目か)を特定する必要がある。しかし、多重のリングレンズ125によって撮像素子126に受光される各リング像は、被検眼の状態(例えば、眼内の内部反射、角膜反射、等)によっては、撮像素子126上のリング像が乱れたり、信号レベルが低かったりし、リング像が何番目のものかの判別し難いケースが生じ得ることが、発明者の実験によって分かった。例えば、図10(a)は、眼内の内部反射又は角膜反射が重なったケースのリング像の例である。この場合、内側の2つのリング像が、何れのレンズ部RL1、RL2等に対応するか、すなわち、隣り合うリング像が被検眼上で対応する測定領域の何れの位置からの光束か、分かり難い。
【0139】
また、図10(b)及び図10(c)は、駆動ユニット160が移動される視度補正前に撮像素子126に受光されたリング像の例である。図10(b)は被検眼の球面度数がプラス度数の場合である。この場合、撮像素子126に受光されるリング像のサイズが大きくなり、リング像の数が減少した状態で、リング像の諧調が低くなる。このため、撮像素子126上のリング像が何れのレンズ部RL1~RL7に対応するか、すなわち、各リング像が被検眼上で対応する測定領域の何れの位置からの光束か、分かり難くなる場合がある。図10(c)は被検眼の球面度数がマイナス度数の場合である。この場合、リング像のサイズが小さくなり、隣接するリング像が重なった状態で、リング像が撮像素子126に受光される。このため、撮像素子126上のリング像が何れのレンズ部RL1~RL7に対応するか、すなわち、各リング像が被検眼上で対応する測定領域の何れの位置からの光束か、分かり難くなる場合がある。
【0140】
そこで、第2実施形態における眼科測定装置10は、撮像素子126に受光されるリング像が何れのレンズ部RL1~RL7に対応するかを判別するための目印が測定指標像に形成されるように、目印形成手段(目印形成部材)の例である目印形成マスク140を測定光学系100に追加した例である。すなわち、目印形成マスク140は、撮像素子126に受光される測定指標像が被検眼上で対応する測定領域の何れの位置からの光束であるかを判別するための目印を、撮像素子126に受光される測定指標像に形成するものである。例えば、目印形成マスク140は、リングレンズ125の近傍又は共役位置に配置される。リングレンズ125の近傍は、目印形成マスク140の遮光部がリングレンズ125に直接が形成されている場合も含む。図9の例では、目印形成マスク140は、リングレンズ125の共役位置に配置されている。目印形成マスク140は、マスク駆動部140Aによって選択的に光路に挿入及び脱出される。マスク駆動部140Aの駆動は、制御部50によって制御される。
【0141】
なお、目印形成マスク140は、マスク130と同様に、ガラス等の透明部材に遮光用のコーティングが施されたものが使用されてもよいし、物理的な穴あき形状の板金が使用されてもよい。また、マスク140として、透過型LCDのように電子的に制御可能な素子が使用されてもよい。
【0142】
図11は、目印形成マスク140のマスク部材141の例を示す図である。例えば、図11において、マスク部材141には、隣り合うリング像の間で異なる目印が形成されるように、光透過部材141a上に、リングレンズ125のリング状のレンズ部RL1~RL7に関して、内側から偶数番目のレンズ部RL2、RL4、RL6に対応する部分に目印形成用の遮光部141bが設けられている。例えば、遮光部141bは、内側から偶数番目のレンズ部RL2、RL4、RL6によって形成されるリング像に対して、十字の切れ目ができるように、0度、90度、180度及び270度の4方向(90度間隔の方向)に切れ目を形成するように設けられている。隣り合うリング像の間で、異なる目印が形成されればよいので、マスク部材141の例では、内側から奇数番目のレンズ部RL1、RL3、RL5、RL7に対応する部分には、遮光部は設けられていない構成とされている。なお、これとは逆に、遮光部141bは、奇数番目のレンズ部の対応部分に設けられ、偶数番目のレンズ部には設けられていない構成であってもよい。
【0143】
図12は、マスク部材141が受光光学系120の光路に配置された場合に、撮像素子126に受光される受光されるリング像の例である。この場合、内側から2番目のリング像RI2、4番目のリング像RI4、6番目のリング像RI6において、上方向、下方向、右方方向及び左方向の4箇所にそれぞれ切れ目の目印BL141cが形成されている。これにより、例えば、図13に示すように、内側から1番目のリング像RI1が2番目のリング像RI2に接近し、リング像RI1の一部の信号レベル(諧調)が低い場合にも、2番目のリング像RI2に目印BL141cが形成されていることにより、各リング像が何れのレンズ部RL1、RL2に対応するかを区別可能となる。
【0144】
このように、目印BL141cが無い場合、隣接するリング像同士(例えば、1番目と2番目のリング像、2番目と3番目のリング像、3番目と4番目のリング像)は間違える可能性がある。なお、1番目と3番目のリング像は十分に離れているため、間違える可能性は低い。このため、図12のように、一つ飛ばし(一つ置き)のリング像に目印BL141cが形成される場合であっても、各リング像が何れのレンズ部RL1~RL7に対応するか、すなわち、各リング像が被検眼上で何れの測定領域に対応するかを判別できる。
【0145】
また、図示を略すが、被検眼の球面度数がプラス度数でリング像のサイズが大きくなり、リング像の数が減少して諧調が低くなった場合、及び被検眼の球面度数がマイナス度数で、リング像のサイズが小さくなり、隣接するリング像が接近した場合にも、切れ目の目印BL141cが2番目のリング像RI2、4番目のリング像RI4、6番目のリング像RI6にそれぞれ形成されていることにより、各リング像を判別可能とされる。
【0146】
以上のような目印形成マスク140は、第1実施形態での予備測定、及び本測定の両方で受光光学系120に挿入さてもよい。また、予備測定の際には、図4のようにリング像を一つに限定するマスク130が使用され場合には、目印形成マスク140は光路から外され、本測定の際(例えば、眼屈折力分布の標準測定モードの際)に、目印形成マスク140が挿入されてもよい。
【0147】
例えば、目印形成マスク140を光路に挿入するか否かは、制御部50によって、撮像素子126に受光されたリング像の状態に基づいて判断され、その判断結果に基づいてマスク駆動部140Aの駆動が制御されてもよい。例えば、撮像素子126に受光されたリング像が画像処理され、各リング像に区別できない部分があると判断された場合には、マスク駆動部140Aが駆動され、目印形成マスク140が光路に挿入される。
【0148】
制御部50は、撮像素子126に受光されたリング像に基づいて眼屈折力分布を得る。ここで、目印形成マスク140が光路に挿入された場合には、目印BL141cによってリング像の情報に欠落した部分が生じる。この場合、制御部50は、欠落部分の眼屈折力部分の情報を、欠落部分の周囲のリング像(例えば、同一リング像で、欠落した部分以外の周囲のリング像)を基に補間して得る。
【0149】
<第2実施形態の変容例>
目印形成マスク140のマスク部材141の例は、あくまで一例であり、少なくとも一つの隣り合うリング像が判別できるように、少なくとも一つの隣り合うリング像の間で異なる目印が形成されていればよい。例えば、全てのリング像に対して、隣り合うリング像に目印が形成されるように遮光部が設けられていてもよい。例えば、内側から奇数番目のレンズ部RL1、RL3、RL5、RL7に対応する部分には、45度、135度、215度及び305度の4方向に切れ目を形成し、内側から偶数番目のレンズ部RL2、RL4、RL6に対応する部分には、0度、90度、180度及び270度の4方向に切れ目を形成するように、遮光部が設けられていてもよい。あるいは、隣り合うリング像間で、目印となる切れ目の数が異なるようにしてもよい。また、隣り合うリング像間で、切れ目の形状が異なる目印(例えば、リング像の外側向く三画形状の切れ目と、リング像の内側を向く三画形状の切れ目の目印)としてもよい。
【0150】
また、目印形成手段は、全ての隣り合うリング像が区別可能に設けられている必要はなく、被検眼の状態によって中心部側のリング像が比較的に区別し難い場合が多いので、例えば、中心側から1番目と2番目のリング像が区別できるように、少なくとも一部の隣り合うリング像の間で目印が形成されていてもよい。
【0151】
また、目印形成手段は、リング像が被検眼上で対応する測定領域の何れの位置からの光束であるかを判別するための目印になればよく、切れ目に限られない。例えば、上記では、目印形成手段は、リングレンズ125の近傍又は共役位置に配置されるものとしたが、リングレンズ125に直接設けられていてもよい。この場合、リングレンズ125に目印が形成されるように、リングレンズ125自体が変形されていてもよい。例えば、リング状の円柱レンズ部の一部が曲率半径を持たない状態にされてもよい。例えば、リング状の円柱レンズ部の一部が切断され、そこに球面のレンズ部が形成されることで、像素子126に受光されるリング像の一部が点像にされてもよい。
【0152】
また、上記では、撮像素子126に受光される測定指標像が、多重のリング像となる変換部材の例のリングレンズ125を使用する場合を説明したが、多数の点状の点像からなる測定指標像に変換する変換部材が使用されてもよい。例えば、図14は、リングレンズ125に代えて、多数の点像からなる測定指標像に変換するマイクロレンズアレイが使用される例であり、いわゆるシャックハルトマンセンサに用いられるハルトマン板の例である。
【0153】
図14(a)は、マイクロレンズアレイ125Sの例を示す図である。多数のマイクロレンズMLは、光軸L2の中心と、それを格子状に囲むように、第1周目~第7周目まで配列されている。図14(b)は、目印形成マスク140に配置されるマスク部材141Sの例である。マスク部材141Sも、光透過部材上に、遮光部141Sbが設けられている。遮光部141Sbは、マイクロレンズMLによる点像の並びの2周目、4週目及び6周目において、点像の並びの切れ目を形成するように設けられている。例えば、遮光部141Sbは、図11のマスク部材141と同様に、光軸L2を中心に、0度、90度、180度及び270度の4方向に配置されている。
【0154】
図14(c)は、マスク部材141が光路に配置された場合に、マイクロレンズアレイ125Sによって撮像素子162上に受光される点像SIを示す図である。この場合、遮光部141Sbに対応して、点像SIの並びの2周目、4週目及び6周目において、点像SIの欠落部分が生じる。この欠落部分を目印として、各点像SIが、マイクロレンズMLの並びの何周目のものかを判別できる。
【0155】
[第3実施形態]
第3実施形態における眼科測定装置の一実施例を説明する。第3実施形態における眼科測定装置10の構成要素は、第1実施形態の図1図2と同様なため、その説明は省略する。なお、第3実施形態においては、マスク130は必ずしも配置されてなくてもよい。
【0156】
リング像を利用する方式において、被検眼の瞳孔上で対応するリング状の測定領域の幅に対し、瞳孔縁(虹彩縁)が掛かり、瞳孔(測定領域)を通過する測定光束がケラレる場合がある。この場合、測定光束のケラレを考慮しないと、正しい瞳孔上の測定位置(測定領域)での眼屈折力情報が得られない。測定光軸周りの多数の点像を利用する方式においても、同種の問題がある。
【0157】
図15は、瞳孔縁による測定光束のケラレ状態を考慮した測定を説明する図である。図15(a)は、リングレンズ125が持つリング状のレンズ部RL4、RL5(このレンズ部は単に例であって、これに限られない)について、瞳孔縁による測定光束のケラレが無い場合における、測定光束(眼底からの反射光)の通過及び撮像素子126上の結像を示す。この場合、レンズ部RL4、RL5の領域に対応する瞳孔上の測定領域の眼屈折力が得られる。
【0158】
一方、図15(b)は、レンズ部RL5の領域に対応する瞳孔上の測定領域において、瞳孔縁による測定光束のケラレが生じている場合における、測定光束の通過及び撮像素子126上の結像を示す。図15(a)及び図15(b)の場合も、レンズ部RL5を通過できた測定光束の撮像素子126上の結像位置は同じである。このため、撮像素子126に結像(受光)されたリング像を解析しただけでは、瞳孔縁によって測定光束にケラレが生じているか否かは判別できない。
【0159】
そこで、観察光学系200により取得される前眼部像が利用される。例えば、前眼部像における瞳孔領域と、リングレンズ125の各レンズ部に対応する瞳孔上での測定領域と、が比較されることで、測定領域での測定光束のケラレ状態が検出(判別)される。そして、その結果に基づき、眼屈折力を得た測定領域(又は測定位置)が補正される。
【0160】
図16(a)は、眼屈折力分布の本測定の実行時に観察光学系200によって取得された前眼部像FEIの例を示す図である。図16(b)は、図16(a)の前眼部像FEIにおける瞳孔PUと、瞳孔上で対応するリングレンズ125の各レンズ部(RL1~RL7)の測定領域と、の位置関係を示す図である。
【0161】
制御部50は、観察光学系200の撮像素子201により得られた前眼部像FEIを画像処理し、例えば、測定光学系100の光軸L3が位置する中心位置L0を基準とし、瞳孔PUの瞳孔縁PEの位置(例えば、座標位置)を得る。次に、制御部50は、図16(b)に示すように、中心位置L0を基準とし、リングレンズ125の各レンズ部(RL1~RL7)の測定領域RE1、RE2、RE3、RE4、RE5、RE6、RE7を前眼部像FEI上で対応させる。なお、この多重の測定領域RE1~RE7は、測定光軸を基準とした経線方向で分割された領域に言い換えることができる。
【0162】
次に、制御部50は、瞳孔縁PEと各測定領域(RE1~RE7)とを比較し、各測定領域(RE1~RE7)について、経線方向における測定光束のケラレ状態を検出する。図16(b)の例では、測定領域RE5の内部(一部)に瞳孔縁PEが掛かっているため、レンズ部RL5の測定領域RE5を通過する測定光束の一部にケラレが有ると検出される。
【0163】
制御部50は、撮像素子126に受光された各リング像を画像処理し、図17に示すように、各リング像に対応する各測定領域について、経線方向RMn毎の眼屈折力情報を求める。図17の例では、測定領域RE6及びRE7に対応するリング像は撮像素子126に受光されず、測定領域RE1~RE5に対応するリング像が撮像素子126に受光される。このとき、測定領域RE5を通過した測定光束によるリング像の撮像素子126上での結像位置は、測定光束にケラレが無い場合と同様である。このため、制御部50は、測定光束のケラレの有無に拘わらず、リング像を画像処理して経線方向RMn毎の眼屈折力情報を求める。ただし、その測定結果の測定領域に関しては、制御部50は、リング幅W(レンズ部R5に対応する瞳孔上でのリング幅)のままの領域でなく、リング幅Wから瞳孔縁PEによる測定光束のケラレ分を差し引いた残りの領域幅Waの測定領域として読み替えて出力する。
【0164】
例えば、前述の図15(a)において、測定領域RE5に対応するリング状のレンズ部RL5の中心直径D5を5mm、リング幅Wを0.2mmとし、測定光束のケラレがない場合、レンズ部RL5によるリング像に基づく経線方向RMn毎の眼屈折力分布の測定結果は、瞳孔径5mmの測定位置に対する測定結果として出力される。また、瞳孔径4.8~5.2mmの測定領域に対する測定結果として表現される。
【0165】
一方、前述の図15(b)のように、測定領域RE5を通過する測定光束のケラレが有り、測定光束が通過する領域幅Waが0.1mmであったとすると、そのリング像に基づく測定結果は、直径D5、リング幅W、領域幅Waの関係から、直径D5aの瞳孔径4.9mmの測定位置に対する測定結果に補正される。また、瞳孔径4.8~5.0mmの測定領域に対する測定結果に補正される。これにより、瞳孔縁によって測定光束のケラレがあった場合にも、より正確な測定位置で、より適切な測定結果が得られる。
【0166】
なお、測定光軸L3に対して瞳孔縁PEが偏心している場合、リング像に基づく測定結果は、経線方向RMn毎に測定光束のケラレ分を差し引いた残りの領域幅Waを求め、その領域幅Waに応じた測定位置又は測定領域の測定結果に補正すればよい。これにより、瞳孔縁PEが偏心している場合にも、より精度よく、より適切な測定結果が得られる。
【0167】
例えば、眼屈折力分布の測定結果は、屈折力の大きさに応じて色分けされたカラーマップ、等高線マップ、等で表示される。例えば、カラーマップは、正面から見た被検眼の前眼部上の2次元位置に対する眼屈折力分布が色分けされて表現される。このとき、眼屈折力分布の測定位置又は測定領域が、より正確に補正されることで、より適切な測定結果を提供できる。
【0168】
以上、第3実施形態はリングレンズ125を用いる場合を説明したが、リングレンズ125に代え、測定光軸周りに多数の点像を撮像素子126に受光させるマイクロレンズアレイやシャックハルトマンセンサのハルトマン板を用いる場合も同様に適用できる。
【0169】
<第3実施形態の変容例>
上記の図15の説明では、測定光束のケラレが有る場合及びケラレが無い場合も、瞳孔を通過できた測定光束によるリング像が撮像素子126上の同じ位置で結像することを前提としていた。しかし、実際には必ずしもリング像の集光点に撮像素子126が位置するわけでなく、図18のように、撮像素子126上のリング像がぼけることがある。図18は、リングレンズ125が持つリング状のあるレンズ部RLnに対応する瞳孔上の測定領域において、瞳孔縁による測定光束のケラレが生じている場合であって、撮像素子126がリング像の集光点より後側の離れた位置にある場合を説明する図である。例えば、瞳孔上の測定領域を通過する測定光束の外側半分が、瞳孔縁によってケラレているとする。この測定光束のケラレ状態は、観察光学系200により取得される前眼部像における瞳孔領域と、リングレンズ125の各レンズ部に対応する瞳孔上での測定領域と、が比較されることで検出される。
【0170】
図19(a)は、図18において、瞳孔を通過する測定光束にケラレが生じていない場合に、撮像素子126の取得画像上で検出されるリング像を示す図である。一方、図19(b)は、図18において、瞳孔を通過する測定光束にケラレが生じている場合に、撮像素子126の取得画像上で検出されるリング像を示す図である。
【0171】
例えば、図19(a)に示すように、測定光束にケラレが生じていない場合、眼屈折力は、撮像素子126の取得画像が処理されて検出されるリング像RINaの幅の中心位置CRaに基づいて取得(演算)される。これに対し、図19(b)に示すように、測定光束にケラレが生じている場合、リング像が瞳孔上で対応する測定領域の眼屈折力は、撮像素子126の取得画像が処理されて検出されるリング像RINbの幅の中心位置CRbでなく、測定光束のケラレ状態の検出結果とリング像RINbの検出位置とに基づいて取得される。例えば、測定光束のケラレ状態の検出結果とリング像RINbの検出位置との関係に基づき、測定光束にケラレが生じていない場合のリング幅の中心位置CRaに相当する眼屈折力が取得される。例えば、図18のように、測定光束の外側半分が瞳孔縁によってケラレている場合、そのリング像RINbのリング幅を内側に2倍とすることで、その中心位置CRaが求められ、この中心位置CRaに対する眼屈折力が取得される。あるいは、測定光束のケラレ状態とリング像の位置に対する眼屈折力の対応関係が予め定められた関数又はテーブルが記憶手段(例えば、メモリ55)に記憶されており、これに基づいて眼屈折力が取得されてもよい。なお、眼屈折力分布は、測定光軸が通る中心位置L0を基準にした経線方向毎に求められる。
【0172】
このような処理により、リング像の集光点が撮像素子126上に位置せず、リング像がぼける場合であっても、測定光束のケラレ状態の情報があることで、より適切な眼屈折力が得られる。
【符号の説明】
【0173】
10 眼科測定装置
16 モニタ
17 操作部
50 制御部
100 測定光学系
110 投光光学系
120 受光光学系
125 リングレンズ
125S マイクロレンズアレイ
126 撮像素子
130 マスク
131、132、135、136、137、138 マスク部材
130A マスク駆動部
140 目印形成マスク
140A マスク駆動部
143、144、145 マスク部材
160 駆動ユニット
161 駆動部
200 観察光学系
201 撮像素子
600 アライメント指標投影光学系

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