(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101531
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191785
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2023005253
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 嵩史
(72)【発明者】
【氏名】家原 恵太
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB11
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA27
2H149EA03
2H149EA04
2H149FA05Z
2H149FA26Y
2H149FA51Y
2H149FA58Y
2H149FD05
(57)【要約】
【課題】高い複屈折を有する液晶配向固化層を含み、かつ、高温環境下における位相差変化が抑制された光学積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学積層体は、円偏光機能または楕円偏光機能を有する液晶配向固化層を含み、該液晶配向固化層に含まれる液晶化合物の量を100重量部としたとき、該液晶配向固化層に含まれる重合開始剤の量X(重量部)および架橋剤の量Y(重量部)が下記式(1)または(2)を満足する:
5≦X≦20 かつ 0<Y≦20 ・・・(1)
5<X≦20 かつ 0≦Y≦20 ・・・(2)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円偏光機能または楕円偏光機能を有する液晶配向固化層を含む光学積層体であって、
該液晶配向固化層に含まれる液晶化合物の量を100重量部としたとき、該液晶配向固化層に含まれる重合開始剤の量X(重量部)および架橋剤の量Y(重量部)が下記式(1)または(2)を満足する、光学積層体:
5≦X≦20 かつ 0<Y≦20 ・・・(1)
5<X≦20 かつ 0≦Y≦20 ・・・(2)。
【請求項2】
前記重合開始剤の量X(重量部)および前記架橋剤の量Y(重量部)が下記式(3)を満足する、請求項1に記載の光学積層体:
X+Y≦35 ・・・(3)。
【請求項3】
前記重合開始剤の量X(重量部)および前記架橋剤の量Y(重量部)が下記式(4)を満足する、請求項2に記載の光学積層体:
X+Y≦25 ・・・(4)。
【請求項4】
偏光板をさらに含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記液晶配向固化層の偏光板と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記液晶配向固化層が、第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層とを有し、
該第1の液晶配向固化層のRe(550)が200nm~300nmであり、その遅相軸と前記偏光板の偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°であり、
該第2の液晶配向固化層のRe(550)が100nm~200nmであり、その遅相軸と該偏光板の偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°である、
請求項4に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記液晶配向固化層の偏光板と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する、請求項6に記載の光学積層体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の光学積層体を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、多くの場合、位相差フィルムを含む光学積層体(例えば、偏光板と位相差フィルムとを一体化した反射防止フィルム)が用いられている。近年、画像表示装置の薄型化への要望が強くなるに伴って、光学積層体についても薄型化の要望が強まっている。光学積層体の薄型化を目的として、厚みに対する寄与の大きい位相差層(位相差フィルム)の薄型化が進んでいる。薄型の位相差フィルムの代表例としては、液晶化合物を用いた位相差フィルムが挙げられる。液晶化合物は樹脂に比べて複屈折(Δn)が格段に大きいので、所望の面内位相差を得るための厚みを樹脂フィルムの延伸フィルムに比べて格段に小さくすることができる。一方で、液晶化合物を用いた位相差フィルムは、高温環境下における位相差変化が大きい。その結果、このような位相差フィルムを反射防止フィルムに用いると、高温環境下で反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、高い複屈折を有する液晶配向固化層を含み、かつ、高温環境下における位相差変化が抑制された光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による光学積層体は、円偏光機能または楕円偏光機能を有する液晶配向固化層を含み、該液晶配向固化層に含まれる液晶化合物の量を100重量部としたとき、該液晶配向固化層に含まれる重合開始剤の量X(重量部)および架橋剤の量Y(重量部)が下記式(1)または(2)を満足する:
5≦X≦20 かつ 0<Y≦20 ・・・(1)
5<X≦20 かつ 0≦Y≦20 ・・・(2)。
[2]上記[1]において、上記重合開始剤の量X(重量部)および上記架橋剤の量Y(重量部)は下記式(3)を満足する:
X+Y≦35 ・・・(3)。
[3]上記[1]または[2]において、上記重合開始剤の量X(重量部)および上記架橋剤の量Y(重量部)は下記式(4)を満足する:
X+Y≦25 ・・・(4)。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記光学積層体は偏光板をさらに含む。
[5]上記[4]において、上記光学積層体は、上記液晶配向固化層の偏光板と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する。
[6]上記[4]において、上記液晶配向固化層は、第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層とを有し;該第1の液晶配向固化層のRe(550)が200nm~300nmであり、その遅相軸と前記偏光板の偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°であり;該第2の液晶配向固化層のRe(550)が100nm~200nmであり、その遅相軸と該偏光板の偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°である。
[7]上記[6]において、上記光学積層体は、上記液晶配向固化層の偏光板と反対側に、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す別の位相差層をさらに有する。
[8]本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。当該画像表示装置は、上記[1]から[7]のいずれかの光学積層体を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、高い複屈折を有する液晶配向固化層を含み、かつ、高温環境下における位相差変化が抑制された光学積層体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.光学積層体
本発明の実施形態による光学積層体は、円偏光機能または楕円偏光機能を有する液晶配向固化層を含む。光学積層体は、例えば、任意の適切な基材上に液晶配向固化層が形成された積層体であってもよく、液晶配向固化層と他の光学機能フィルム(例えば、偏光板)との積層体であってもよい。液晶配向固化層と積層される他の光学機能フィルムの種類、数、組み合わせ、積層順序等は、目的に応じて適切に設定され得る。基材上に液晶配向固化層が形成された積層体は、そのまま他の光学機能フィルムと積層されてもよく、液晶配向固化層を他の光学機能フィルムに転写して積層してもよい。液晶配向固化層は、単独で円偏光機能または楕円偏光機能を有していてもよく(例えば、コレステリック液晶層)、偏光子と組み合わされて円偏光機能または楕円偏光機能を奏してもよい。基材は、好ましくは配向規制力を有する。配向規制力は、代表的には、ラビング配向、延伸基材配向、光配向によって付与することができる。好ましくは、延伸基材配向または光配向である。なお、本明細書において「液晶配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。「液晶配向固化層」は、液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。液晶配向固化層の1つの実施形態においては、棒状の液晶化合物が液晶配向固化層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。
【0011】
本発明の実施形態においては、液晶配向固化層に含まれる液晶化合物の量を100重量部としたとき、当該液晶配向固化層に含まれる重合開始剤の量X(重量部)および架橋剤の量Y(重量部)が下記式(1)または(2)を満足する。このような構成であれば、高い複屈折を有し、かつ、優れた加熱耐久性を有する液晶配向固化層を得ることができる。その結果、液晶配向固化層(結果として、光学積層体)の薄型化が可能であり、かつ、高温環境下における位相差変化が抑制された光学積層体を実現することができる。
5≦X≦20 かつ 0<Y≦20 ・・・(1)
5<X≦20 かつ 0≦Y≦20 ・・・(2)
式(1)または式(2)のいずれの場合であっても、重合開始剤の量Xおよび架橋剤の量Yは、互いに関連しながら変化し得る。重合開始剤の量Xおよび架橋剤の量Yは、好ましくは下記式(3)を満足し、より好ましくは下記式(4)を満足する。このような構成であれば、液晶配向固化層のΔnをさらに高い値で維持しつつ、優れた加熱耐久性を実現することができる。その結果、所望の面内位相差を得るための液晶配向固化層の厚みを小さくすることができ、光学積層体(最終的には、光学積層体が適用される画像表示装置)の薄型化に寄与することができる。
X+Y≦35 ・・・(3)
X+Y≦25 ・・・(4)
「X+Y」は、より好ましくは20重量部以下であり、さらに好ましくは18重量部以下であり、特に好ましくは15重量部以下であり、とりわけ好ましくは13重量部以下である。「X+Y」の下限は、例えば5.5重量部であり得、また例えば7.5重量部であり得る。「X+Y」がこのような範囲であれば、高いΔnと優れた加熱耐久性とのバランスに優れた液晶配向固化層を実現することができる。重合開始剤の量Xは、架橋剤の量Yに応じて変化し得る。重合開始剤の量Xは、例えば6重量部~18重量部であってもよく、また例えば7重量部~15重量部であってもよく、また例えば8重量部~13重量部であってもよい。同様に、架橋剤の量Yは、重合開始剤の量Xに応じて変化し得る。架橋剤の量Yは、例えば2.5重量部~20重量部であってもよく、また例えば4重量部~15重量部であってもよく、また例えば5重量部~13重量部であってもよい。
【0012】
以下、光学積層体の代表例として、偏光板をさらに含む光学積層体(位相差層付偏光板)を説明する。まず、光学積層体(位相差層付偏光板)の概要を説明し、次いで、代表的な構成要素(偏光板、液晶配向固化層および別の位相差層)を具体的に説明する。
【0013】
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図であり;
図2は、本発明の別の実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100および102は、それぞれ、偏光板10と液晶配向固化層(位相差層)20とを図面の上側からこの順に有する。図面の上側が視認側となり、図面の下側が画像表示パネル側となる。偏光板10は、偏光子11と、偏光子11の一方の側に設けられた保護層(視認側保護層)12と、偏光子11のもう一方の側に設けられた保護層(内側保護層)13と、を有する。保護層12または13のいずれかは省略されてもよい。例えば、偏光板は、偏光子と視認側保護層とを有する、いわゆる片保護偏光板であってもよい。
【0014】
液晶配向固化層20は、上記のとおり、円偏光機能または楕円偏光機能を有する。このような構成であれば、優れた反射防止特性を有する光学積層体を得ることができる。液晶配向固化層20は、
図1に示すような単一層であってもよく、
図2に示すように第1の液晶配向固化層21と第2の液晶配向固化層22との積層構造を有していてもよい。
【0015】
1つの実施形態においては、光学積層体は、液晶配向固化層20の偏光板10と反対側に別の位相差層(図示せず)をさらに有していてもよい。別の位相差層は、代表的には、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートである。このような別の位相差層を設けることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。
【0016】
実用的には、光学積層体は、画像表示パネル側の最外層として粘着剤層(図示せず)を有し、画像表示パネルに貼り付け可能とされている。この場合、粘着剤層の表面には、光学積層体が使用に供されるまで、はく離ライナーが仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、光学積層体のロール形成が可能となる。
【0017】
以下、光学積層体の代表的な構成要素(偏光板、液晶配向固化層および別の位相差層)について具体的に説明する。
【0018】
B.偏光板
B-1.偏光子
偏光子11としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成されている。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体系部分ケン化物が挙げられる。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0019】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0020】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0021】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0022】
偏光子の厚みは、例えば12μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm~8μmであり、さらに好ましくは3μm~7μmである。このような薄い偏光子と液晶配向固化層とを組み合わせることにより、光学積層体の顕著な薄型化が可能となる。また、偏光子の厚みが上記のような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0023】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは41.0%~46.0%であり、より好ましくは42.0%~45.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。本発明の実施形態によれば、単体透過率が上記のような範囲であっても、偏光度をこのような範囲に維持することができる。
【0024】
B-2.保護層
保護層12および13は、任意の適切な樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムを構成する材料としては、代表的には、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂の代表例としては、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報に記載されている。これらの公報は、本明細書に参考として援用されている。異形加工の容易性等の観点から、セルロース系樹脂が好ましく、TACがより好ましい。透湿度が低く、耐久性に優れた偏光板が得られるという観点からは、シクロオレフィン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0025】
光学積層体は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理が挙げられる。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学積層体は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0026】
保護層13は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0027】
保護層12および13の厚みは、それぞれ、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは12μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。なお、保護層12に表面処理が施されている場合、保護層12の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0028】
C.液晶配向固化層
液晶配向固化層20は、上記のとおり円偏光機能または楕円偏光機能を有する。さらに、上記のとおり、液晶配向固化層20は、
図1に示すような単一層であってもよく、
図2に示すように第1の液晶配向固化層21と第2の液晶配向固化層22との積層構造を有していてもよい。液晶配向固化層を位相差層として用いることにより、樹脂フィルムの延伸フィルムに比べて格段に薄い厚みで所望の面内位相差を実現することができる。その結果、光学積層体の顕著な薄型化を図ることができる。
【0029】
液晶配向固化層の複屈折Δnは、好ましくは0.06以上であり、より好ましくは0.08以上であり、さらに好ましくは0.09以上であり、特に好ましくは0.10以上である。Δnの上限は、例えば0.13であり得、また例えば0.12であり得る。Δnがこのような範囲であれば、非常に薄い厚みで所望の面内位相差を実現することができる。その結果、液晶配向固化層および光学積層体をさらに薄くすることが可能となり、最終的に画像表示装置の顕著な薄型化に貢献し得る。本発明の実施形態によれば、このような高いΔnを有し、かつ、優れた加熱耐久性を有する液晶配向固化層を実現することができる。
【0030】
液晶配向固化層に用いられる液晶化合物としては、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。ここで、重合により形成されたポリマーは非液晶性である。したがって、形成された液晶配向固化層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、液晶配向固化層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0031】
液晶配向固化層は、1つの実施形態においては、重合可能な液晶化合物(重合性液晶化合物)を含む組成物を用いて形成され得る。本明細書において組成物に含まれる重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物をいう。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、好ましくは光重合性基である。ここで、光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。
【0032】
液晶化合物の液晶性の発現機構は、サーモトロピックであってもよく、リオトロピックであってもよい。また、液晶相の構成としてはネマチック液晶であってもよく、スメクチック液晶であってもよい。製造の容易さという観点から、液晶性はサーモトロピックのネマチック液晶が好ましい。
【0033】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
【0034】
以下、単一層および積層構造のそれぞれについて説明する。
【0035】
C-1.単一層
本実施形態においては、液晶配向固化層20は、いわゆるλ/4板として機能し得る。この場合、液晶配向固化層20のRe(550)は好ましくは100nm~200nmである。さらに、液晶配向固化層20の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°であり、特に好ましくは約45°である。
【0036】
液晶配向固化層のRe(550)は、より好ましくは110nm~180nmであり、さらに好ましくは120nm~160nmであり、特に好ましくは130nm~150nmである。
【0037】
液晶配向固化層は、上記のように面内位相差を有するので、nx>nyの関係を有する。液晶配向固化層は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率特性を示す。液晶配向固化層の屈折率特性は、代表的にはnx>ny≧nzの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の実施形態による効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。液晶配向固化層のNz係数は、好ましくは0.9~2.0であり、より好ましくは0.9~1.5であり、さらに好ましくは0.9~1.2である。このような関係を満たすことにより、光学積層体を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0038】
液晶配向固化層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、例えば1.0μm~5.0μmであり得、また例えば1.0μm~3.0μmであり得る。このように、液晶配向固化層を位相差層として用いることにより、樹脂フィルムの延伸フィルムに比べて格段に薄い厚みで所望の面内位相差を実現することができる。
【0039】
C-2.積層構造
液晶配向固化層が偏光板側から第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層との積層構造を有する場合、第1の液晶配向固化層は、代表的にはλ/2板として機能し得、第2の液晶配向固化層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、第1の液晶配向固化層のRe(550)は好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは250nm~280nmであり;第2の液晶配向固化層のRe(550)は、単一層に関してC-1項で説明したとおりである。第1の液晶配向固化層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。具体的には、その厚みは例えば2.0μm~4.0μmであり得る。第2の液晶配向固化層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。具体的には、その厚みは例えば1.0μm~2.5μmであり得る。本実施形態においては、第1の液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは14°~16°であり;第2の液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは74°~76°である。なお、第1の液晶配向固化層および第2の液晶配向固化層の配置順序は逆であってもよく、第1の液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度および第2の液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は逆であってもよい。第1の液晶配向固化層および第2の液晶配向固化層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0040】
本実施形態の液晶配向固化層は、例えば、任意の適切な液晶モノマーを含む組成物を用いて形成される。液晶モノマーとしては、例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
【0041】
C-3.重合開始剤および架橋剤
液晶配向固化層は、代表的には上記のとおり液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーを用いて形成されるので、液晶配向固化層には重合開始剤が含まれる。また、液晶化合物の配向状態を固定するために架橋剤が用いられ得るので、液晶配向固化層には架橋剤が含まれ得る。重合開始剤の量Xおよび架橋剤の量Yは、上記式(1)または(2)を満足し、好ましくは上記式(3)を満足し、より好ましくは上記式(4)を満足する。
【0042】
重合開始剤は、光重合開始剤であってもよく、熱重合開始剤であってもよい。好ましくは、光重合開始剤である。光重合開始剤は熱的な開裂がなく光照射のみによりラジカルを発生させることができるという利点を有する。重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤が挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。重合開始剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
架橋剤としては、例えば、アクリル系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。アクリル系架橋剤としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートのような2官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのような多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。架橋剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
D.別の位相差層
別の位相差層は、上記のとおり、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。別の位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。この場合、別の位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、別の位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0045】
別の位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。別の位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、別の位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0046】
E.画像表示装置
上記A項~D項に記載の光学積層体は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、その視認側に上記A項~D項に記載の光学積層体を備える。
【実施例0047】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における測定方法および評価方法は以下のとおりである。
【0048】
(1)複屈折Δn
実施例および比較例で得られた光学積層体の液晶配向固化層を、粘着剤(厚み23μm)を介して無アルカリガラス板(45mm×50mm×0.7mm)に貼り合わせ、次いで、基材を剥離した。このようにして、液晶配向固化層/粘着剤層/ガラス板の構成を有する試験サンプルを得た。試験サンプルの液晶配向固化層の厚みを干渉膜厚計(大塚電子社製、「MCPD9800」)で測定した。さらに、試験サンプルのRe(550)を、AXOMETRICS社製の「AXO-Scan」を用いて測定した。得られたRe(550)を液晶配向固化層の厚みで除してΔnを算出した。
【0049】
(2)位相差変化
上記(1)と同様にして得られた試験サンプルを85℃のオーブンに500時間放置し、下記式から位相差変化率を求めた。下記式において、Re(550)0は加熱前の面内位相差であり、Re(550)500は加熱後の面内位相差である。
位相差変化率(%)=[{Re(550)500-Re(550)0}/Re(550)0]×100
なお、位相差変化率が-3.5%以上である(絶対値が小さい)場合は「良好」、-3.5%より小さい(絶対値が大きい)場合は「不良」と評価する。当該変化率の近傍で、反射防止性能の優劣が顕著となり得る。
【0050】
[実施例1:液晶配向固化層/基材の構成を有する光学積層体の作製]
1.液晶配向固化層形成用塗工液の調製
ネマチック液晶相を示す光重合性液晶化合物(BASF社製「Paliocolor LC242」、下記化学式)をシクロペンタノンに溶解して、固形分濃度20重量%の溶液を調製した。この溶液に、レベリング剤(DIC社製、「メガファックF―563」)、光重合開始剤(IGM Resins社製、「Omnirad907」)および架橋剤(新中村化学工業社製、「A―DCP」)を添加して、液晶配向固化層形成用塗工液を調製した。レベリング剤および光重合開始剤、架橋剤の添加量は、光重合性液晶化合物100重量部に対して、それぞれ、0.6重量部、7.5重量部および2.5重量部とした。
【化1】
【0051】
2.光学積層体の作製
基材として延伸ノルボルネン系フィルム(厚み:23μm、Re(550):140nm)を準備した。この基材上に、上記の液晶配向固化層形成用塗工液をスピンコーターにより塗布し、100℃で3分間加熱して液晶化合物を配向させた。室温に冷却した後、窒素雰囲気下で、積算光量600mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化を行い、液晶化合物の配向状態を固定した。このようにして、基材/液晶配向固化層(Re(550):120nm)の構成を有する光学積層体を作製した。液晶配向固化層の厚みは1.5μmであり、液晶配向固化層はnx>ny=nzの屈折率分布を示した。また、液晶配向固化層は、Re(450)>Re(550)の関係を示した。得られた光学積層体を上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例2~10および比較例1~3:液晶配向固化層/基材の構成を有する光学積層体の作製]
液晶化合物100重量部に対する光重合開始剤の量X(重量部)および架橋剤の量Y(重量部)を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、基材/液晶配向固化層(Re(550):120nm)の構成を有する光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。なお、表1において「-」は位相差層が形成されず測定が不可能であったことを意味する。
【0053】
【0054】
[実施例11:位相差層付偏光板の作製]
1.偏光板の作製
1-1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する偏光板を得た。偏光子の単体透過率Tsは43.3%であった。
【0055】
1-2.偏光板の作製
得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、紫外線硬化型接着剤を介して、HC-TACフィルムを貼り合わせた。なお、HC-TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)にHC層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。次いで、樹脂基材を剥離してHC層/TACフィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0056】
2.別の位相差層の作製
下記化学式(IV)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、nz>nx=nyの屈折率特性を示す別の位相差層(厚み3μm)を基材上に形成した。
【化2】
【0057】
3.位相差層付偏光板の作製
上記で得られた偏光板の偏光子表面に、接着剤を介して実施例1の光学積層体の液晶配向固化層を貼り合わせ、次いで、基材を剥離した。すなわち、偏光板の偏光子表面に液晶配向固化層を転写した。さらに、液晶配向固化層表面に、接着剤を介して上記で得られた別の位相差層を転写した。このようにして、光学積層体(位相差層付偏光板)を得た。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供したところ、位相差変化が小さいことが確認された。
【0058】
[比較例4:位相差層付偏光板の作製]
比較例1の光学積層体(実質的には、液晶配向固化層)を用いたこと以外は実施例11と同様にして、位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を実施例1と同様の評価に供したところ、位相差変化が許容範囲を超えて大きいことが確認された。
【0059】
上記の実施例および比較例から明らかなように、本発明の実施例によれば、高いΔnを有し、かつ、優れた加熱耐久性を有する液晶配向固化層(結果として、光学積層体)が得られることがわかる。