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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101536
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】巻線装置及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 59/36 20060101AFI20240722BHJP
   H01F 41/064 20160101ALI20240722BHJP
   H01F 41/094 20160101ALI20240722BHJP
【FI】
B65H59/36
H01F41/064
H01F41/094
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198452
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】202311078333.1
(32)【優先日】2023-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】63/439,345
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502330713
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS, INC.
【住所又は居所原語表記】No.252,ShanYing Rd.,Guishan Dist.,Taoyuan City 333,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紀博文
(72)【発明者】
【氏名】林光前
(72)【発明者】
【氏名】廖哲毅
(72)【発明者】
【氏名】彭博文
(72)【発明者】
【氏名】郭修銘
【テーマコード(参考)】
3F111
5E002
【Fターム(参考)】
3F111AB01
3F111CA15
3F111CA20
3F111DA03
3F111DB03
3F111DB16
3F111DC01
3F111DE01
5E002AA06
5E002AA11
(57)【要約】
【課題】巻線装置及び巻線方法を提供する。
【解決手段】巻線装置は、ワイヤ供給速度に従って回転して線材を供給するワイヤ供給プーリと、一端には線材が巻き付けられるテンションロッドと、テンションロッドの他端に配置され、テンションロッドを回転させる張力制御モータと、ワイヤ巻取端において線材の実際張力値を検出するロードセルと、を含み、張力制御モータは、線材の目標張力値と実際張力値との張力誤差に基づいて、線材の実際張力値を目標張力値に一致させるように、テンションロッドを時計回り又は反時計回りに回転制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材と組み合わせて用いられる巻線装置であって、
前記巻線装置のワイヤ供給端に配置され、ワイヤ供給速度に従って回転し、前記ワイヤ供給端から前記線材を供給するワイヤ供給プーリと、
一端には前記線材が巻き付けられ、前記線材を転向させるテンションロッドと、
前記テンションロッドの他端に配置され、前記テンションロッドを回転させる張力制御モータと、
前記巻線装置のワイヤ巻取端に配置され、前記ワイヤ巻取端における前記線材の実際張力値を検出するロードセルと、を含み、
前記張力制御モータは、前記線材の目標張力値と前記実際張力値との張力誤差に基づいて、前記線材の前記実際張力値を前記目標張力値に一致させるように、前記テンションロッドを時計回り又は反時計回りに回転制御する、巻線装置。
【請求項2】
前記テンションロッドの実際角度を検出する第1エンコーダと、
前記ワイヤ供給プーリと接続して回転させ、前記実際角度に基づいて前記ワイヤ供給速度を制御することで、回転後に前記テンションロッドの前記実際角度を前記テンションロッドの目標角度に一致する、又は前記実際角度と前記目標角度との角度誤差を閾値より小さいようにするワイヤ供給モータと、
をさらに含む請求項1に記載の巻線装置。
【請求項3】
前記第1エンコーダは、前記張力制御モータのモータ位置に基づいて、前記テンションロッドの前記実際角度を算出する、請求項2に記載の巻線装置。
【請求項4】
前記巻線装置の前記ワイヤ巻取端に配置され、前記ワイヤ巻取端における前記線材の実際ワイヤ巻取速度を検出する第2エンコーダをさらに含み、
前記ワイヤ供給モータは、前記実際ワイヤ巻取速度に基づいて前記ワイヤ供給速度を制御する、請求項2に記載の巻線装置。
【請求項5】
前記第2エンコーダは、前記巻線装置の前記ワイヤ巻取端に近接した定滑車に配置され、
前記定滑車には、前記線材が巻き付けられ、前記線材を転向させる、請求項4に記載の巻線装置。
【請求項6】
前記ロードセルに接続され、前記ロードセルから前記実際張力値を受信し、前記実際張力値と前記目標張力値との前記張力誤差を算出し、前記張力誤差に基づいて前記張力制御モータの入力パラメータとして出力制御指令信号を生成するPIコントローラをさらに含み、
前記張力制御モータは、前記入力パラメータに基づいて前記テンションロッドの回転を制御する、請求項2に記載の巻線装置。
【請求項7】
前記第1エンコーダに接続され、前記テンションロッドの前記実際角度と前記目標角度との前記角度誤差を算出し、前記角度誤差に基づいて第1出力を生成するPIコントローラと、
前記第2エンコーダと前記ワイヤ供給プーリとに接続され、前記ワイヤ巻取端における前記線材の前記実際ワイヤ巻取速度に基づいて第2出力を生成し、前記第1出力と前記第2出力を加算して、前記ワイヤ供給プーリへの入力として前記ワイヤ供給速度を生成するフィードフォワードコントローラと、
をさらに含む、請求項4に記載の巻線装置。
【請求項8】
請求項1に記載の巻線装置に適用される巻線方法であって、
前記ワイヤ供給プーリを前記ワイヤ供給速度に応じて回転させて、前記ワイヤ供給端に前記線材を供給するように制御するステップaと、
前記ロードセルにより前記ワイヤ巻取端における前記線材の前記実際張力値を検出するステップbと、
前記実際張力値と前記線材の前記目標張力値との前記張力誤差を算出するステップcと、
前記張力制御モータにより、前記張力誤差に基づいて、前記テンションロッドを時計回り又は反時計回りに回転させて、前記線材の前記実際張力値を前記目標張力値に一致させるように制御するステップdと、を含む、巻線方法。
【請求項9】
前記巻線装置は、前記ワイヤ供給プーリの回転を制御するためのワイヤ供給モータと、前記テンションロッドの実際角度を検出するための第1エンコーダとをさらに含み、
巻線方法は、前記ワイヤ供給モータにより、前記テンションロッドが回転後に前記実際角度を前記テンションロッドの目標角度に一致させる、又は前記実際角度と前記目標角度との角度誤差を閾値より小さくするように、前記実際角度に基づいて前記ワイヤ供給速度を制御するステップeをさらに含む、請求項8に記載の巻線方法。
【請求項10】
前記巻線装置は、前記ワイヤ巻取端に配置された第2エンコーダをさらに含み、
前記巻線方法は、
前記第2エンコーダにより、前記ワイヤ巻取端における前記線材の実際ワイヤ巻取速度を検出するステップfと、
前記ワイヤ供給モータにより、前記実際ワイヤ巻取速度に基づいて前記ワイヤ供給速度を制御するステップgと、をさらに含む、請求項9に記載の巻線方法。
【請求項11】
前記巻線装置は、前記ロードセルに接続されたPIコントローラをさらに含み、
前記ステップcは、前記PIコントローラにより、前記ロードセルから前記実際張力値を受信し、前記実際張力値と前記目標張力値との前記張力誤差を算出し、前記張力誤差に基づいて前記張力制御モータの入力パラメータとして出力制御指令信号を生成することを含み、
前記ステップdは、前記張力制御モータにより、前記入力パラメータに基づいて前記テンションロッドを制御して回転させることを含む、請求項10に記載の巻線方法。
【請求項12】
前記巻線装置は、前記第1エンコーダに接続されたPIコントローラと、前記第2エンコーダと前記ワイヤ供給プーリとに接続されたフィードフォワードコントローラとをさらに含み、
前記巻線方法は、
前記テンションロッドの前記実際角度を取得するステップhと、
前記PIコントローラにより、前記実際角度と前記目標角度との前記角度誤差を算出するステップiと、
前記角度誤差に基づいて第1出力を生成するステップjと、
前記ワイヤ巻取端における前記線材の前記実際ワイヤ巻取速度を取得するステップkと、
前記フィードフォワードコントローラにより、前記実際ワイヤ巻取速度に基づいて第2出力を生成するステップlと、
前記第1出力及び前記第2出力を加算して、前記ワイヤ供給プーリへの入力として前記ワイヤ供給速度を生成するステップmと、
前記線材の供給を停止する前に、ステップh~ステップmを継続的に実行するステップnと、をさらに含む、請求項10に記載の巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線装置及び巻線方法に関し、特にデュアルモータ張力を提供する巻線装置及び巻線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販の電子部品や電機製品には、駆動源やエネルギー変換用途として、非常に多くの巻線部品が使われている。巻線部品は、全自動又は半自動設備を利用してエナメル銅線を工作物に巻き付ける。巻き付けの過程では、銅線が安定して同じ張力で巻かれるようにテンショナが使用される。
【0003】
図1は、関連技術の張力制御構造を示す図である。図1に示すように、関連技術で使用される巻線装置の張力源は、バネ11によって発生するバネ力であることが多い。バネ11の長さが固定されている場合、巻線装置は安定した張力を提供することができる。このような巻線装置は、バネ11を用いてテンションロッド12を接続する。テンションロッド12の一端には線材2が巻き付けられ、他端には角度センサ13が配置されている。角度センサ13は、テンションロッド12の実際角度を検出するために用いられている。このような巻線装置は、テンションロッド12の実際角度に基づいて、ワイヤ供給プーリ14をトリガして線材を供給するために用いられるワイヤ供給速度を制御することにより、張力を制御することができる。
【0004】
図2A図2B及び図2Cを併せて参照する。図2A図2B及び図2Cは、それぞれ、供給速度が速すぎる場合、供給速度が適切な場合、及び供給速度が遅すぎる場合の関連技術の張力制御構造を示す概略図である。
【0005】
図2Aに示すように、テンションロッド12の実際角度が巻線装置の予め設定された目標角度(角度誤差はAである)より大きい場合、ワイヤ供給プーリ14は、テンションロッド12の実際角度を目標角度に戻すことができるように、より速いワイヤ供給速度V2を提供する。図2Bに示すように、テンションロッド12の実際角度が目標角度に等しいか又は近い場合、ワイヤ供給プーリ14は、ワイヤ供給速度V2を維持する。図2Cに示すように、テンションロッド12の実際角度が目標角度よりも小さい場合(角度誤差はAである)、ワイヤ供給プーリ14は、テンションロッド12の実際角度を目標角度に戻すことができるように、より遅いワイヤ供給速度V2を提供する。
【0006】
関連技術の巻線装置は、上記の原則を利用してワイヤ供給プーリ14のワイヤ供給速度を制御することにより、適切なワイヤ供給速度V2を動的に提供し、さらに線材の張力バランスを保つことができる。
【0007】
図2Cに示すように、関連技術の巻線装置の構造では、テンションロッド12の実際角度が目標角度よりも小さい(角度誤差Aが存在する)場合、巻線装置はワイヤ供給速度V2を下げる必要がある。このとき、ワイヤ巻取端における線材のワイヤ巻取速度V1は、ワイヤ供給端における線材のワイヤ供給速度V2よりも大きいので、巻線装置は、線材の輸送を利用してテンションロッド12を目標角度まで引き戻すことができる。言い換えれば、このような巻線装置は、テンションロッド12を受動的に制御することしかできず、テンションロッド12の最大移動速度は、線材のワイヤ巻取速度V1に等しい。ワイヤ巻取速度V1が遅いほど、テンションロッド12が目標角度まで引き戻されるのに要する時間が長くなる。また、線材の張力値はテンションロッド12の実際角度に直接関係するため、このような巻線装置は、線材の張力値を目標張力値に戻すのに長い時間を要する。そのため、このような巻線装置は、常に一定の張力値を維持する必要がある設備には非常に不向きである。
【0008】
さらに、テンションロッド12の角度誤差Aに応じてワイヤ供給プーリ14がワイヤ供給速度V2の制御を行った場合にも遅れが発生する。具体的には、巻線装置は、角度誤差Aが0でない場合にのみ、ワイヤ供給速度V2を増加又は減少させるためにワイヤ供給プーリ14の補正を開始する。つまり、この補正方式では、線材が急激に乱れた場合にリアルタイムに補正することができず、張力が不安定になる。
【0009】
図3は、関連技術のバネ張力の概略図である。図3に示すように、このような巻線装置の張力源はバネ11の引張量であるため、バネ11による引張力はテンションロッド12の角度によって異なる。図3において、引張力は、例えば、F1、F2~Fnであり、対応するバネ変形量は、X1、X2~Xnである。
【0010】
フックの法則(Hooke’s law)でわかるように、Fn=k×Xnである。ここで、kはバネ11の弾性係数であり、巻線装置が固定したバネ11を使用する場合、kの値は一定である。言い換えれば、バネ11が提供できる最大張力は固定であり、テンションロッド12の許容揺動範囲に等しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような巻線装置が必要とする目標張力値がバネ11で提供できる張力を超えた場合、ユーザはバネ11を交換しなければならない。このようにして、このような巻線装置が使用できるフィールドは、バネ11によって物理的に制限され、ユーザがバネ11を交換する必要がある潜在的なコストも増加する。
【0012】
本発明は、張力制御モータによってテンションロッドを回転制御することにより、アクティブな張力制御を実現できる巻線装置及び巻線方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る巻線装置は、線材と組み合わせて用いられ、
前記巻線装置のワイヤ供給端に配置され、ワイヤ供給速度に従って回転し、前記ワイヤ供給端から前記線材を供給するワイヤ供給プーリと、
一端には前記線材が巻き付けられ、前記線材を転向させるテンションロッドと、
前記テンションロッドの他端に配置され、前記テンションロッドを回転させる張力制御モータと、
前記巻線装置のワイヤ巻取端に配置され、前記ワイヤ巻取端における前記線材の実際張力値を検出するロードセルと、を含み、
前記張力制御モータは、前記線材の目標張力値と前記実際張力値との張力誤差に基づいて、前記線材の前記実際張力値を前記目標張力値に一致させるように、前記テンションロッドを時計回り又は反時計回りに回転制御する。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る巻線方法は、上記の巻線装置に適用され、
前記ワイヤ供給プーリを前記ワイヤ供給速度に応じて回転させて、前記ワイヤ供給端に前記線材を供給するように制御するステップaと、
前記ロードセルにより前記ワイヤ巻取端における前記線材の前記実際張力値を検出するステップbと、
前記実際張力値と前記線材の前記目標張力値との前記張力誤差を算出するステップcと、
前記張力制御モータにより、前記張力誤差に基づいて、前記テンションロッドを時計回り又は反時計回りに回転させて、前記線材の前記実際張力値を前記目標張力値に一致させるように制御するステップdと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、バネを用いてテンションロッドを引く従来の巻線装置と比べ、バネの代わりに張力制御モータを用いることで、より広い張力範囲を提供し、アクティブな張力制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】関連技術の張力制御構造を示す図である。
図2A】ワイヤ供給速度が速すぎる場合の関連技術の張力制御構造を示す概略図である。
図2B】ワイヤ供給速度が適切である場合の関連技術の張力制御構造を示す概略図である。
図2C】ワイヤ供給速度が遅すぎる場合の関連技術の張力制御構造を示す概略図である。
図3】関連技術のバネ張力の概略図である。
図4】本発明に係る巻線装置の第1実施形態を示す概略図である。
図5】本発明に係る巻線方法の第1実施形態のフローチャートである。
図6】本発明に係る巻線装置の第2実施形態を示す概略図である。
図7】本発明の第1の制御構造の具体的な実施形態を示す概略図である。
図8】本発明の第2の制御構造の具体的な実施形態を示す概略図である。
図9】本発明に係る巻線方法の第2実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0018】
アクティブな張力制御という目的を達成し、張力制御が即時的ではなく、最大張力がバネの物理的制限に影響されるという問題を解決するために、本発明は新規な巻線装置を提案し、以下に説明する。
【0019】
図4は、本発明に係る巻線装置の第1実施形態を示す概略図である。図4に示すように、本発明に係る巻線装置は、少なくともテンションロッド31と、張力制御モータ32と、ロードセル4と、ワイヤ供給プーリ5とを備え、線材6は、ワイヤ供給プーリ5、テンションロッド31、及びロードセル4に巻き付けられている。
【0020】
一実施形態において、線材6は、例えばエナメル銅線であってもよいが、これに限定されない。
【0021】
本発明に係る巻線装置は、張力源をバネから張力制御モータ32に変更することにより、アクティブな制御を実現し、最大張力が制限されるという欠点を克服する。
【0022】
図4に示すように、巻線装置は、ワイヤ供給端N1及びワイヤ巻取端N2を有する。線材6は、ワイヤ供給端N1から巻線装置内に供給され、内部部材(ワイヤ供給プーリ5、テンションロッド31、ロードセル4及び1つ又は複数の定滑車を含む)によって張力制御された後、ワイヤ巻取端N2から巻線装置の外部に出力されて、工作物(図示せず)に巻き付けて巻線部品が作られる。
【0023】
巻線装置のワイヤ供給端N1には、ワイヤ供給プーリ5が配置されている。ワイヤ供給プーリ5には線材6が巻き付けられ、ワイヤ供給プーリ5はワイヤ供給速度に応じて回転し、線材6をワイヤ供給端N1から巻線装置内に供給する。
【0024】
テンションロッド31は、ワイヤ供給プーリ5の後方に配置され、一端には線材6が巻き付けられ、線材6を転向させる。
【0025】
張力制御モータ32は、テンションロッド31の線材6から離れた他端に配置され、巻線装置のフィードバック情報に基づいてテンションロッド31を時計回り又は反時計回りに能動的に回転制御する。本発明は、従来の巻線装置の張力バネを張力制御モータ32に置き換えることにより、アクティブな張力制御を実現し、最大張力を向上させることができる。
【0026】
ロードセル4は、巻線装置のワイヤ巻取端N2に配置され、ワイヤ巻取端N2における線材6の実際張力値を検出するために用いられる。具体的には、線材6がロードセル4を通過すると、ワイヤ巻取端N2から巻線装置から離脱するので、ロードセル4が検出した実際張力値は、線材6が巻線装置外の工作物を巻き取る際の張力値と同じか又は極めて近い値となる。
【0027】
本発明において、巻線装置は、ロードセル4によって線材6の実際張力値を継続的に検出し、この実際張力値と線材6の目標張力値との張力誤差を算出する。そして、張力制御モータ32は、この張力誤差を継続的に取得し、張力誤差に基づいてテンションロッド31を時計回り又は反時計回りに回転制御する。本発明では、テンションロッド31の一端に線材6を巻き付けているので、テンションロッド31が張力制御モータ32を円の中心として時計回り又は反時計回りに回転させることで、線材6の実際張力値を制御することができる。これにより、巻線装置は、ワイヤ巻取端N2を介して出力される線材6の実際張力値を目標張力値に一致させるように、線材6の張力値を能動的に制御することができる。
【0028】
例えば、巻線装置は、線材6を出力して工作物を巻き取って巻線部品を製造し、この巻線部品は第1張力値を必要とする。この場合、巻線装置は、上述した技術的解決策を用いて、張力制御モータ32によってテンションロッド31の回転を能動的に制御し、線材6を第1張力値に維持させて、巻線部品のニーズを満たす。
【0029】
続いて、図4及び図5を併せて参照する。図5は、本発明に係る巻線方法の第1実施形態のフローチャートである。本発明は、図4に示す巻線装置に主に適用される巻線方法をさらに開示するが、これに限定されない。
【0030】
図5に示すように、まず、巻線装置は、ワイヤ供給プーリ5を所定のワイヤ供給速度に従って回転制御して、ワイヤ供給端N1に線材6を供給する(ステップS51)。線材6が巻線装置内に供給されると、巻線装置は、ワイヤ巻取端N2における線材6の実際張力値をロードセル4によって検出する(ステップS52)。
【0031】
実際張力値を取得した後、巻線装置は、線材6の実際張力値と目標張力値との張力誤差を算出し(ステップS53)、張力制御モータ32により張力誤差に応じてテンションロッド31を時計回り又は反時計回りに回転制御することで、線材6の実際張力値を目標張力値に一致させる(ステップS54)。
【0032】
本実施形態において、ワイヤ供給プーリ5は継続的に回転して線材6を供給し、ロードセル4は線材6の実際張力値を継続的に検出し、巻線装置は張力誤差を継続的に算出し、張力制御モータ32はテンションロッド31を継続的に回転させ(又はテンションロッド31を動かないようにして)、線材6の張力バランスを維持する。したがって、巻線装置は、ワイヤ供給工程が終了したか否かを継続的に判断し(ステップS55)、すなわち、線材6の供給を停止するか否かを継続的に判断する必要がある。そして、巻線装置は、ワイヤ供給工程が終了する前に、ステップS51~ステップS54を繰り返し実行することで、ワイヤ供給過程において、線材6を継続的に供給し、線材6に張力バランスを維持させる。
【0033】
図4に示すように、本発明に係る巻線装置は、ワイヤ供給プーリ5に接続され、ワイヤ供給プーリ5の回転を制御するワイヤ供給モータ51をさらに含む。本発明において、巻線装置は、所望のワイヤ供給速度を算出して取得するときに、対応する制御信号を生成してワイヤ供給モータ51に出力する。このようにして、ワイヤ供給モータ51により制御信号に基づいてワイヤ供給プーリ5を回転制御し、ワイヤ供給プーリ5がワイヤ供給速度に基づいて回転する。
【0034】
本発明において、巻線装置は、テンションロッド31の実際角度を検出するための第1エンコーダ33をさらに含む。
【0035】
一実施形態において、張力制御モータ32は、テンションロッド31を回転制御すると、モータ位置が変更し、第1エンコーダ33は、張力制御モータ32の現在位置に基づいて、テンションロッド31の実際角度を対応して算出することができる。
【0036】
本発明において、ワイヤ供給モータ51は、第1エンコーダ33からテンションロッド31の実際角度を継続的に取得し、実際角度に基づいてワイヤ供給プーリ5のワイヤ供給速度を制御することができる。このようにして、張力制御モータ32がテンションロッド31の回転を制御して張力バランスをとるが、テンションロッド31の実際角度が目標角度から外れた場合、巻線装置は、テンションロッド31が回転後に再び目標角度に戻るように、ワイヤ供給速度を制御することによって線材6を引張又は解放することができる。他の実施形態において、巻線装置は、テンションロッド31の回転後の実際角度と目標角度との角度誤差が許容閾値より小さいことを維持するように、ワイヤ供給速度を制御することによって線材6を引張又は解放することができる。
【0037】
図4に示すように、本発明に係る巻線装置は、巻線装置のワイヤ巻取端N2に配置された第2エンコーダ7をさらに含む。
【0038】
一実施形態において、第2エンコーダ7は、巻線装置のワイヤ巻取端N2に近接した複数の定滑車のうちの1つに配置される。本実施形態において、この定滑車は、線材6を巻付き、線材6を転向させる。線材6が移動して定滑車を回転させると、第2エンコーダ7は、定滑車の回転に基づいて、ワイヤ巻取端N2における線材6の実際ワイヤ巻取速度を検出することができる。前述したように、第2エンコーダ7はワイヤ巻取端N2に配置され、線材6はワイヤ巻取端N2から巻線装置に離脱して工作物を巻き取るので、第2エンコーダ7が検出する実際ワイヤ巻取速度は、工作物を巻き取る際の線材6のワイヤ巻取速度と同じか又は極めて近いものとなる。
【0039】
本発明において、ワイヤ供給モータ51は、第2エンコーダ7から線材6の実際ワイヤ巻取速度をリアルタイムに取得し、この実際ワイヤ巻取速度に基づいて、ワイヤ供給プーリ5のワイヤ巻取速度を制御する。本発明は、線材6の実際ワイヤ巻取速度をワイヤ供給モータ51の第2フィードバック源(第1フィードバック源はテンションロッド31の実際角度である)とすることにより、ワイヤ供給モータ51に安定の速度源を取得させ、ワイヤ速度の変化にも即座に対応することができる。このようにして、ワイヤ供給の安定性に対する外乱の影響を効果的に低減することができる。
【0040】
図6は、本発明に係る巻線装置の第2実施形態を示す概略図である。同図を参照すると、本発明に係る巻線装置は、1つ又は複数のコントローラをさらに備え、1つ又は複数のコントローラは、張力制御モータ32、第1エンコーダ33、ロードセル4、ワイヤ供給モータ51及び第2エンコーダ7の少なくとも1つに接続され、テンションロッド31及び/又はワイヤ供給プーリ5に対して制御を行う。
【0041】
図6の実施形態において、上記コントローラは、PIコントローラ(Proportional-Integral Controller)8と、フィードフォワードコントローラ(Feed-Forward Controller)9とを含む。一実施形態において、PIコントローラ8は、張力制御モータ32又は第1エンコーダ33によって実現され、フィードフォワードコントローラ9は、第2エンコーダ7によって実現される。他の実施形態において、PIコントローラ8及びフィードフォワードコントローラ9は、独立したコントローラによって実現され、巻線装置内の様々な部材に接続され得る。
【0042】
図7は、本発明の第1の制御構造の具体的な実施形態を示す概略図である。図7の実施形態において、PIコントローラ8は、ロードセル(L1)に接続され、ロードセル(L1)によって検出された線材6の実際張力値を受信する。また、PIコントローラ8(又は巻線装置における他の部材)は、線材6の実際張力値と目標張力値との張力誤差(Err)を算出し、張力誤差に基づいて出力制御指令信号(Out)を算出して張力制御モータ32の入力パラメータとする。このようにして、張力制御モータ32は、この入力パラメータに基づいてテンションロッド31が対応する回転を行うように制御することで、線材6の実際張力値を目標張力値に一致させるように、線材6の張力値を制御することができる。
【0043】
一実施形態において、巻線装置は、目標張力値から実際張力値を減算して絶対値をとって上記張力誤差(Err)を取得する。また、PIコントローラ8は、張力誤差及び比例関係に基づいて上記出力制御指令信号(Out)を算出するが、これに限定されない。
【0044】
続いて、図8及び図9を併せて参照する。図8は、本発明の第2の制御構造の具体的な実施形態を示す概略図である。図9は、本発明に係る巻線方法の第2実施形態のフローチャートである。
【0045】
図8の実施形態において、PIコントローラ8は、第1エンコーダ(E2)に接続され、第1エンコーダ(E2)によって検出されたテンションロッド31の実際角度を受信する。フィードフォワードコントローラ9は、第2エンコーダ7とワイヤ供給プーリ5とに接続され、第2エンコーダ7によって検出された実際ワイヤ巻取速度V1を受信し、ワイヤ供給プーリ5のワイヤ供給速度V2を制御する。
【0046】
具体的には、図9に示すように、巻線装置がワイヤ供給工程を行う際、まずPIコントローラ8により第1エンコーダ(E2)からテンションロッド31の実際角度を取得し(ステップS91)、実際角度と目標角度との角度誤差(Err)を算出する(ステップS92)。一実施形態において、巻線装置は、PIコントローラ8により、目標角度から実際角度を減算して絶対値をとることで度誤差(Err)を得る。別の実施形態において、巻線装置は、他のコントローラ(図示せず)によって、目標角度から実際角度を減算し絶対値をとることで、角度誤差(Err)を得る。
【0047】
次に、PIコントローラ8は、角度誤差(Err)に基づいて第1出力(Out1)を生成する(ステップS93)。具体的には、PIコントローラ8は、角度誤差(Err)及び比例関係に基づいて第1出力(Out1)を生成するが、これに限定されない。
【0048】
次に、巻線装置は、フィードフォワードコントローラ9により、第2エンコーダ7からワイヤ巻取端N2における線材6の実際ワイヤ巻取速度(V1)を取得し(ステップS94)、実際ワイヤ巻取速度(V1)に基づいて第2出力(Out2)を生成する(ステップS95)。具体的には、フィードフォワードコントローラ9は、実際ワイヤ巻取速度(V1)及び比例関係に基づいて第2出力(Out2)を生成するが、これに限定されない。
【0049】
次に、巻線装置は、フィードフォワードコントローラ9又は他のコントローラ(図示せず)により、第1出力(Out1)と第2出力(Out2)とを加算し、ワイヤ供給速度(V2)を生成してワイヤ供給プーリ5の入力とする(ステップS96)。このようにして、ワイヤ供給モータ51は、受信したワイヤ供給速度(V2)に応じて、ワイヤ供給プーリ5を回転制御することができる(ステップS97)。
【0050】
図4の実施形態と同様に、巻線装置のワイヤ供給工程において、テンションロッド31は継続的に回転制御され、ワイヤ供給プーリ5は継続的に回転制御されるので、巻線装置は、ワイヤ供給工程が終了したか否か継続的に判断し(ステップS98)、すなわち、線材6の供給を停止するか否かを継続的に判断する必要がある。そして、巻線装置は、ワイヤ供給工程が終了する前に、ステップS91~S97を繰り返し実行することで、PIコントローラ8及びフィードフォワードコントローラ9により、ワイヤ供給プーリ5が採用するワイヤ供給速度(V2)を継続的に制御し、ワイヤ供給過程において、線材6に張力バランスを維持させる。
【0051】
本発明は、巻線装置のフィードバック信号により、張力制御モータ32によってテンションロッド31を回転制御し、ワイヤ供給モータ51によってワイヤ供給プーリ5を回転制御することにより、アクティブな張力制御を実現することができる。また、本発明に係る巻線装置は、バネを使用しないので、最大張力範囲がバネによって物理的に制限されることはなく、バネの使用及び交換に要するコストを回避することができる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の全ての範囲は以下の特許請求の範囲に基づくものであり、本発明の明細書及び図面を適用する類似の変形例は、本発明の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0053】
11 バネ
12 テンションロッド
13 角度センサ
14 ワイヤ供給プーリ
2 線材
31 テンションロッド
32 張力制御モータ
33、E2 第1エンコーダ
4、L1 ロードセル
5 ワイヤ供給プーリ
51 ワイヤ供給モータ
6 線材
7 第2エンコーダ
8 PIコントローラ
9 フィードフォワードコントローラ
A 角度誤差
V1 ワイヤ巻取速度
V2 ワイヤ供給速度
N1 ワイヤ供給端
N2 ワイヤ巻取端
Err 誤差
Out 出力制御指令信号
Out1 第1出力
Out2 第2出力
X1、X2 バネ変形量
F1、F2 引張力
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9