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特開2024-101538疵種類判定装置、疵種類判定方法、及び鋼材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101538
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】疵種類判定装置、疵種類判定方法、及び鋼材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/91 20060101AFI20240722BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240722BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240722BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20240722BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20240722BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G01N21/91 B
G01N21/892 B
G06T7/00 350C
G06T7/60 200Z
G06V10/82
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204490
(22)【出願日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2023004821
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 健太
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB02
2G051BA05
2G051CA04
2G051DA06
2G051EB05
2G051EC01
5L096BA03
5L096DA02
5L096FA17
5L096HA09
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】磁粉探傷装置を用いた検査方法を採用した場合に、鋼材における疵の有無のみならず、疵の種類についても自動的に判定することができる疵種類判定装置、疵種類判定方法、及び鋼材の製造方法を提供する。
【解決手段】磁粉探傷装置1に備えられている撮像装置15によって撮影された鋼材Sの疵を示す疵画像を取得する情報取得部21と、情報取得部21によって取得された疵画像を推論データとし、予め用意される学習済みの判定モデルに当てはめることで、疵画像が示す疵の種類を判定する判定部24と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁粉探傷装置に備えられている撮像装置によって撮影された鋼材の疵を示す疵画像を取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって取得された前記疵画像を推論データとし、予め用意される学習済みの判定モデルに当てはめることで、前記疵画像が示す疵の種類を判定する判定部と、
を備える疵種類判定装置。
【請求項2】
前記判定部が前記疵画像の疵の種類を判定する前に、前記磁粉探傷装置から取得した前記疵画像に対して、前記疵画像に映る前記疵を明確にする前処理を行う画像処理部を備えることを特徴とする請求項1に記載の疵種類判定装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記疵画像に対して、コントラスト、或いは、明るさのいずれか一方、または、その両方を調整する画像処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の疵種類判定装置。
【請求項4】
磁粉探傷装置に備えられている撮像装置によって撮影された鋼材の疵を示す疵画像を取得するステップと、
前記情報取得部によって取得された前記疵画像を推論データとし、予め用意される学習済みの判定モデルに当てはめることで、前記疵画像が示す疵の種類を判定するステップと、
を備えることを特徴とする疵種類判定方法。
【請求項5】
前記疵画像が示す疵の種類を判定するステップの後に、
前記判定モデルにより得られる結果を用いて、異なる判定モデルで再判定するステップを備えることを特徴とする請求項4に記載の疵種類判定方法。
【請求項6】
前記疵の種類を判定するステップの前に、
前記疵画像に対して、前記疵画像に映る前記疵を明確にする前処理を行うステップを備えていることを特徴とする請求項4に記載の疵種類判定方法。
【請求項7】
前記疵の種類を判定するステップの前に、
前記疵画像に対して、前記疵画像に映る前記疵を明確にする前処理を行うステップを備えていることを特徴とする請求項5に記載の疵種類判定方法。
【請求項8】
前記前処理を行うステップでは、前記疵画像に対して、コントラスト、或いは、明るさのいずれか一方、または、その両方を調整する画像処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の疵種類判定方法。
【請求項9】
前記前処理を行うステップでは、前記疵画像に対して、コントラスト、或いは、明るさのいずれか一方、または、その両方を調整する画像処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の疵種類判定方法。
【請求項10】
請求項4ないし請求項9のいずれかに記載の疵種類判定方法を備える、鋼材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、疵種類判定装置、疵種類判定方法、及び鋼材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、棒鋼や線材等の製造に用いられるビレット等の鋼材については、その製造の後、鋼材の表面に形成された疵の有無を把握し、疵がある場合には、疵を取る処理が行われる。ここで疵の有無を把握するための1つの方法として、磁粉探傷装置を用いた検査方法がある。
【0003】
鋼材等は強磁性材料であることから、その表面に存在する割れ等の様々な疵に対して磁粉を付着させることで疵を目立たせることができる。すなわち、被検査物の表面に磁粉を含有する磁粉溶液を塗布するとともに、被検査物に磁場を印加する等して被検査物を磁化する。磁化された被検査物の表面に割れ等の疵がある場合には、この疵から磁束が漏洩するため、この漏洩磁束に磁粉が引き付けられて磁粉による指示模様が形成される。そして、この指示模様を目視、或いは、自動で観測し、疵の有無を判定する。
【0004】
磁粉探傷装置を用いた疵を検出する方法として、例えば、以下に示す特許文献1で開示されている発明を挙げることができる。特許文献1に記載されている発明では、例えば、被検体である鋼材が連続するラックを備えるラックシャフトである場合において、当該ラックシャフトについて磁粉探傷による指示模様を撮像する。
【0005】
そして、二値化した画像から得られる磁粉群の形状情報および輝度の統計処理により得られる輝度情報を人工知能で処理する。このような処理を行うことにより、ラックによって付くエッジと傷とを区別して把握することで疵だけを検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-043095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、傷の有無については把握することができるが、傷の種類までは把握することができない。また、そもそも上述したようにエッジと傷との区別が付けば足りるため、傷の種類を細かく区別して把握する必要はない。
【0008】
また、磁粉探傷装置を用いて得られる磁粉の指示模様を目視で確認する方法では、大量の被検査物の確認することが困難である。さらには、検査者が複数の場合、判定基準が曖昧なこととも相まって、検査者ごとに指示模様から把握される疵の種類がまちまちとなりかねない。そのため、同じ疵を判定した場合であっても異なる判定結果が得られる可能性があり、安定した一定の評価を行うことが困難である。そしてこのように人手を介して取得された疵に関する情報をデータ化することも別途多大な労力を要する。
【0009】
本発明は、上述したような点に着目してなされたもので、磁粉探傷装置を用いた検査方法を採用した場合に、鋼材における疵の有無のみならず、疵の種類についても自動的に判定することができる疵種類判定装置、疵種類判定方法、及び鋼材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態における疵種類判定装置は、磁粉探傷装置に備えられている撮像装置によって撮影された鋼材の疵を示す疵画像を取得する情報取得部と、情報取得部によって取得された疵画像を推論データとし、予め用意される学習済みの判定モデルに当てはめることで、疵画像が示す疵の種類を判定する判定部と、を備える。
【0011】
本発明の実施の形態における疵種類判定装置は、さらに、判定部が疵画像の疵の種類を判定する前に、磁粉探傷装置から取得した疵画像に対して、疵画像に映る前記疵を明確にする前処理を行う画像処理部を備える。
【0012】
本発明の実施の形態における疵種類判定装置の画像処理部は、前記疵画像に対して、コントラスト、或いは、明るさのいずれか一方、または、その両方を調整する画像処理を行う。
【0013】
本発明の実施の形態における疵種類判定方法は、磁粉探傷装置に備えられている撮像装置によって撮影された鋼材の疵を示す疵画像を取得するステップと、情報取得部によって取得された疵画像を推論データとし、予め用意される学習済みの判定モデルに当てはめることで、疵画像が示す疵の種類を判定するステップと、を備える。
【0014】
本発明の実施の形態における疵種類判定方法は、疵画像が示す疵の種類を判定するステップの後に、判定モデルにより得られる結果を用いて、異なる判定モデルで再判定するステップを備える。
【0015】
本発明の実施の形態における疵種類判定方法は、疵の種類を判定するステップの前に、疵画像に対して、疵画像に映る疵を明確にする前処理を行うステップを備えている。
【0016】
本発明の実施の形態における疵種類判定方法において、前処理を行うステップでは、疵画像に対して、コントラスト、或いは、明るさのいずれか一方、または、その両方を調整する画像処理を行う。
【0017】
本発明の実施の形態における鋼材の製造方法は、磁粉探傷装置に備えられている撮像装置によって撮影された鋼材の疵を示す疵画像を取得するステップと、情報取得部によって取得された疵画像を推論データとし、予め用意される学習済みの判定モデルに当てはめることで、疵画像が示す疵の種類を判定するステップと、を備える疵判定方法を備える。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明の実施の形態における疵種類判定装置、疵種類判定方法、及び鋼材の製造方法であれば、磁粉探傷装置を用いた検査方法を採用した場合に、鋼材における疵の有無のみならず、疵の種類についても自動的に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における疵種類判定装置を含む鋼材に付いた疵の種類を判定する判定システムの全体を示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態における疵種類判定装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態において疵種類判定装置が鋼材についた疵の種類を判定する推論の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態における疵種類判定装置2を含む鋼材Sに付いた疵の種類を判定する判定システムAの全体を示す説明図である。
【0021】
図1に示す判定システムAは、鋼材Sの疵を検査するために用いられる磁粉探傷装置1と、当該磁粉探傷装置1での検査により得られた検査結果に基づいて鋼材Sの疵の種類を判定する疵種類判定装置2とからなる。
【0022】
磁粉探傷装置1は、一般的な磁粉探傷検査を行うために用いられる装置である。磁粉探傷検査は、検査対象(ここでは鋼材S)を磁化し、磁化された鋼材Sに磁粉を適用して検査を行う。
【0023】
図1は、磁粉探傷装置1を上部から見た状態を模式的に示したものである。図1に示す磁粉探傷装置1では、上述した検査の流れのうち、磁化から疵の撮影までの工程を行うように示されている。従って、磁粉探傷装置1としては、図1に示す各部の他、上述した検査の工程において必要なその他の装置が配置されていても良い。
【0024】
本発明の実施の形態における磁粉探傷検査では、鋼材Sが、図1に示す矢印のように左側から右側へと磁粉探傷装置1を通過することで磁化から撮影までの工程が行われる。磁粉探傷装置1は、鋼材Sを磁化する装置として磁化装置11と磁化コイル12とが設けられている。
【0025】
磁化装置11は、鋼材Sの下側から鋼材Sを磁化することができるように配置され、図1に示す磁粉探傷装置1では、1つの磁化装置11と2つの磁化装置11からなる1組の磁化装置11とに分かれて、合計3つの磁化装置11が配置されている。
【0026】
また、鋼材Sの進行方向に向かって最初の磁化装置11と1組の磁化装置11との間には、リング状の磁化装置12が配置されている。鋼材Sは、当該磁化装置12のリングの中を貫通するように通過することで、全周に渡って磁化される。
【0027】
なお、本発明の実施の形態における磁粉探傷装置1では、図1に示すような位置に磁化装置11及び磁化装置12を配置しているが、磁化装置の数や配置位置については任意に選択することができる。また、鋼材Sの材質や形状等に合わせて適切な磁化装置を選択、配置することができる。
【0028】
最初の磁化装置11のすぐ下流には、磁粉液散布装置13が配置されている。磁粉液散布装置13は、鋼材Sの表面に磁粉を含む液を散布するものである。なお、鋼材Sの表面に磁粉を適用する方法については、どのような方法を採用しても良い。
【0029】
また、1組の磁化装置11の上部には、適用された磁粉に光を照射するための照明装置14が配置されている。これは磁粉による疵の状態を顕現させるために行われる。例えば、磁粉散布装置13から散布された磁粉が蛍光磁粉の場合は、ブラックライトが照明装置14として使用される。
【0030】
照明装置14の下流には、照明装置14によって明らかになった疵を撮影する撮像装置15が配置されている。撮像装置15は、鋼材Sの表面に存在する疵の画像(以下、適宜「疵画像」と表す)を取得する、例えばカメラである。撮像装置15によって撮影された疵画像のデータは、例えば、撮像装置15に接続されている疵種類判定装置2に送信される。
【0031】
なお、本発明の実施の形態において使用する撮像装置15は、モノクロ画像やカラー画像を取得することができるように構成されている。従って、後述する疵種類判定装置2に送信されるのは、疵画像のモノクロ画像、或いは、カラー画像の画像データである。そしてモノクロ画像、カラー画像のいずれを用いるかについては任意に選択することが可能とされている。さらには図示していないが、より鮮明に画像を撮影するための、例えばストロボといった、補助的な機器が組み合わせられていても良い
【0032】
制御装置16は、磁粉探傷装置1の各部の制御を行う。また、当該制御装置16には、例えば、入力部や表示部が接続されていても良い。また、工場内等に構築されたネットワークに接続され、例えば、後述する疵種類判定装置2等との間で情報のやり取りを行うことができるようにされていても良い。
【0033】
疵種類判定装置2は、撮像装置15によって取得された疵画像のデータを、疵の種類を判定するための判定モデルに入力して鋼材Sについた疵の種類の判別を行う装置である。疵種類判定装置2として、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、或いは、タブレットといった、様々な情報端末を採用することができる。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態における疵種類判定装置2の内部構成を示すブロック図である。なお、図2に示す疵種類判定装置2では、以下に説明する鋼材Sについた疵の種類を判別する際に使用される機能についてのみ示しており、その他の様々な機能については図示を省略している。
【0035】
従って、疵種類判定装置2は、図2においては図示されていない、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェイスがバスを介して接続される様々な構成を備えていても良い。
【0036】
また当該入出力インターフェイスには、例えば、鋼材Sの疵の種類を判別するために使用される判定モデルを生成する学習部や、疵種類判定装置2に情報を入力する際に用いる入力部や、或いは、他の装置との通信を制御する通信制御部が接続されていても良い。
【0037】
このように本発明の実施の形態における疵種類判定装置2には、鋼材Sの疵の種類を判定する際に用いられる学習済みモデル(判定モデル)を生成する学習部は設けられていない。そのため疵種類判定装置2で用いる判定モデルは、別の生成装置において生成され、後述する記憶部23に事前に格納されていることを前提としている。但しこのような構成ではなく、疵種類判定装置2が判定モデルの生成装置であっても良い。
【0038】
このように判定モデルについては、いずれの装置において生成されても良いが、生成の具体例について説明すると以下の通りである。すなわち、判定モデルを生成に当たって、生成装置では、磁粉探傷装置1によって取得された疵画像のデータを入力データとして用いる。なお判定モデルの生成に当たって、入力データとして用いる疵画像については、事前に、例えば、疵を明確にするための画像処理が行われていても良い。
【0039】
一方、教師データは、判別する鋼材Sの疵の種類を示すデータである。この教師データとする鋼材Sの疵の種類を示すデータとしては、例えば、ヘゲ、ササクレ、ワレ、亀甲ワレ、線状疵、といった疵の種類が撮影された画像データを挙げることができる。ここでは5種類の疵について挙げたが、いずれの疵の種類を学習の対象とするかは任意に設定することができる。
【0040】
なお、判定モデルの精度を高めるために、例えばその評価項目として、検出漏れの少なさ(再現率)、誤検出の少なさ(適合率)や疵を検出した領域と正解の領域との重なり具合(オーバーラップ率)等を設定することができる。
【0041】
なお教師データについては、疵種類判定装置2に判定モデルを生成する学習部が設けられている場合には、例えば、後述する記憶部23に事前に格納されている教師データを使用することとしても良い。或いは、判定モデルの生成が疵種類判定装置2以外の生成装置で行われる場合も含めて、別途ネットワーク上に存在するデータベース等から取得することとしても良い。
【0042】
また、判定モデルの生成に当たっては、機械学習のアルゴリズムが利用される。機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、ニューラルネットワーク、決定木学習、ランダムフォレスト、サポートベクター回帰等を採用することができる。
【0043】
また、複数の判定モデルを組み合わせて、一旦1つの判定モデルで得られた結果を用いて、さらに異なる判定モデルで再判定を行っても良い。例えば、ニューラルネットワークモデルにより出力される疵の座標や検出領域形状などの情報を用いて、決定木モデルにより再判定を行うことができる。
【0044】
制御装置2は、情報取得部21と、画像処理部22と、記憶部23と、判定部24と、判定結果報知部25と、を備えている。情報取得部21は、磁粉探傷装置1を用いた検査によって取得された鋼材Sの疵画像のデータを撮像装置15から取得する。
【0045】
なお、情報取得部21が直接撮像装置15から疵画像のデータを取得するのではなく、図示しない通信制御部を介して情報取得部21が通信ネットワークに接続されているデータベース等にアクセスすることで取得することとしても良い。
【0046】
また、情報取得部21が撮像装置15から疵画像のデータを取得するタイミングについては、磁粉探傷装置1による検査中に撮像装置15が疵画像を撮影する度に、リアルタイムに取得しても良い。または、上述したデータベース等が接続され、当該データベース等に撮像装置15によって取得された疵画像のデータが格納されている場合には、任意のタイミングで取得することとしても良く、そのタイミングは自由に設定することができる。
【0047】
さらに、疵種類判定装置2における鋼材Sの疵の種類の判定のタイミングは、情報取得部21が磁粉探傷装置1による検査中に、撮像装置15から疵画像のデータを取得する度に、同様にリアルタイムに判定を行っても良い。または、例えば、検査対象となる鋼材Sの全ての検査が終了した後に、鋼材Sごとに行っても、或いは、あるロットごとにまとめて行っても良く、情報取得部21が疵画像のデータを取得するタイミングと合わせても異ならせても良い。
【0048】
画像処理部22は、情報取得部21が取得した疵画像のデータに対して、画像処理を実行する。具体的には、例えば、取得された疵画像に対してコントラスト、或いは、明るさのいずれか一方、または、その両方を調整する。画像処理部22がこのような処理を実行することによって、疵画像が明確になり、判定モデルを利用した疵の種類を判定する際に、疵の種類が判定しやすくなる。なお、画像処理部22が実行する画像処理の条件については、自動的に設定される。
【0049】
記憶部23は、例えば、半導体や磁気ディスクで構成されており、上述した生成された判定モデルや鋼材Sについた疵の種類を判定するために用いられるプログラム等が格納されている。
【0050】
なお図2に示すように、本発明の実施の形態における疵種類判定装置2においては、その内部に記憶部23を設けた形態を前提に説明をしているが、記憶部23を疵種類判定装置2の内部に設けず、例えば、ネットワークに接続される外部のデータベースがその機能を果たすようにされていても良く、その構成の仕方は自由に選択することができる。
【0051】
判定部24は、判定モデルを用いて鋼材Sについた疵の種類を判別する。すなわち、撮像装置15から取得した疵画像のデータを推論データとして、記憶部23に格納されている判定モデルを用いて推論を実行する。なお、推論データとして用いる疵画像は、画像処理部22において画像処理が行われたものである。また、判定部24が判定処理を実行する際に用いるアルゴリズムについては、どのようなアルゴリズムを使用しても良い。
【0052】
そして、判定部24において推論が実行されると、鋼材Sについた疵の種類について鋼材Sごとに判定がなされる。また、鋼材Sについた疵の種類の判定については、鋼材Sの全ての面に対して実行される。また、鋼材Sの面と面との境界に存在する角部に対して実行されても良い。
【0053】
判定結果については、判定結果報知部25に送信されるとともに、記憶部23に格納される。判定結果報知部25では、判定部24によって判定された結果を、例えば、疵種類判定装置2が備える表示部等を介してユーザに報知する。
【0054】
例えば、表示部に検査対象となった複数の鋼材Sを表示させ、ユーザがこの表示の中から判定結果(疵の種類)を確認したい鋼材Sを選択することによって、選択された鋼材Sについて行われた判定結果である疵の種類を表示させることができる。
【0055】
すなわち、例えば、選択された鋼材Sと、当該鋼材Sにおいて発見された疵の位置とその種類とを示すことができる。疵の種類としては、上述した、例えば、「ヘゲ」、「ササクレ」、「ワレ」、「亀甲ワレ」、「線状疵」の5種類の疵を表示させることができる。
【0056】
なお、複数の疵を表示部に表示させる場合には、例えば、それぞれの疵について同一のマークであるものの線種を変更させて区別する、色を変える、マークの形状を変化させる等、様々な表現の仕方が考えられ、どのように表示させるかは任意である。
【0057】
鋼材Sにおいて発見された疵の位置とその種類とを表示させるためには、鋼材Sの全体が表示されていると良い。すなわち例えば、鋼材Sの全体が示されるとともに、鋼材Sの長さを示す目盛り(例えば、単位は「m(メートル)」)が表示されていても良い。
【0058】
このように表示される目盛りは、例えば検査がされた鋼材Sの最長の長さに合わせて目盛りを表示させることができる。また、ユーザによって選択された判定結果を示す鋼材Sの長さによって目盛りの表示態様やピッチを変更しても良い。
【0059】
そして検査対象となった鋼材Sの全体は、例えば、面や角といった検査が行われた領域ごとに表示され、例えば、鋼材Sの長手方向における検査領域を示す、棒状のグラフで表示される。
【0060】
そしてこれら棒状のグラフの上に上述した5種類の疵を示すマークが示される。このように検査対象である鋼材Sの領域を示すグラフに重複させて疵の種類を示すマークを表示させることによって、鋼材Sにおいて発見された疵の位置、及び、種類を示すことができる。そしてさらに、それぞれの疵の種類が示す疵が実際にはどのような形状を有しているのかが併せて示されていても良い。
【0061】
なお、これまで説明した内容は、あくまでも例示であって、どのような情報を表示させるか、或いは、どのようはレイアウトをもって表示させるか、等については、任意に設定することが可能である。
【0062】
また、上述したような表示態様をもってユーザに報知する他に、例えば、判定された疵の種類だけではなく、その判定の確信度についても表示させても良い。また、判定された疵の種類をリストにして表示させることもできる。
【0063】
[動作]
次に、疵種類判定装置2において判定モデルを用いて鋼材Sについた疵の種類を判定する流れについて、図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態において疵種類判定装置2が鋼材Sについた疵の種類を判定する推論の流れを示すフローチャートである。
【0064】
まず鋼材Sに対して、例えば、図1に示す磁粉探傷装置1を用いた磁粉探傷検査が行われる(ST1)。そして当該検査が終了したか否かを判定し(ST2)、検査が終了していなければ、そのまま検査が終了するまで疵種類判定装置2は待機する(ST2のNO)。
【0065】
そして例えば、磁粉探傷装置1による検査が終了して(ST2のYES)、情報取得部21が疵画像のデータを取得することができるようになると、情報取得部21は疵種類の判定の対象となる推論データ(疵画像のデータ)を取得する(ST3)。
【0066】
なお、ここでは、情報取得部21が疵画像のデータを取得するタイミングとして磁粉探傷装置1による検査が終了したか否かをみたが、例えば、情報取得部21が検査の終了に関係なく撮像装置15から疵画像のデータを取得することが可能となったか否かを判定のタイミングとしても良い。
【0067】
情報取得部21によって取得された疵画像のデータ(推論データ)に対しては、例えば、画像処理部22において画像処理が実行される(ST4)。なお、画像処理部22において画像処理がなされた疵画像のデータについては、記憶部23に格納されても良い。
【0068】
画像処理部22によって画像処理が行われたデータは、判定部24に送られる。推論データとしての疵画像のデータを取得した判定部24は、別途、記憶部23に事前に格納されている学習済みの判定モデルを取得し、当該判定モデルに推論データを当てはめる(ST5)。
【0069】
すなわち判定部24は、画像処理後の疵画像のデータを推論データとし、記憶部23にアクセスして取得した学習済みの判定モデルを用いて、鋼材Sに付いている疵の種類を判定する処理を行う(ST6)。なお、判定部24が疵の種類の判定を行うことは、当然に鋼材Sに疵が存在することを意味する。
【0070】
判定部24において鋼材Sについた疵の種類について判定された結果については、記憶部23に格納される(ST7)。判定結果を記憶部23に格納しておくことで、例えば、製造工程に当該情報をフィードバックさせることも可能となる。
【0071】
そして、判定結果については、判定部24から判定結果報知部25へと送信されて、例えば、ユーザへと報知される(ST8)。ユーザへの報知の方法は、音声等、ユーザの五感に訴える方法であればどのような方法も採用することができるが、例えば、図3に示す画面例のような画像を表示することで報知する。
【0072】
以上説明したように、学習済みの判定モデルを利用することで、磁粉探傷装置を用いた検査方法を採用した場合に、鋼材における疵の有無のみならず、疵の種類についても自動的に判定することができる疵種類判定装置、疵種類判定方法、及び鋼材の製造方法を提供することができる。
【0073】
そして疵種類判定装置によって判定された疵のデータを基に、製造工程において鋼材に疵を発生させない、或いは、疵が発生したとしても許容できる範囲内に納めることが可能となる。また、製造工程において過剰品質につながるような処理が行われているのであれば、そのような処理を省略することによって、品質とコストとのバランスのとれた鋼材の製造を行うことができるようになる。従って、鋼材の疵の種類を自動的に判定し製造工程にフィードバックさせることで、製造工程を最適化することにつながる。
【0074】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、本発明の一例を示したものである。実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、上記実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【0075】
例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよく、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0076】
例えば、これまでの説明では、疵画像のデータについては、撮像装置15から疵種類判定装置2が直接取得することを前提にしていた。但し、撮像装置15によって取得された疵画像のデータは、撮像装置15から制御装置16に送信されることとし、疵種類判定装置2は制御装置16から疵画像のデータを取得しても良い。また、一旦、上述したネットワークに接続される、図1には図示しないデータベース等に保存されたものを、疵種類判定装置2が予め設定されたタイミングで取得するようにしても良い。
【0077】
また、これまでの説明では、判定部24が鋼材Sの疵の種類を判定する前に画像処理部22による画像処理が実行されることを前提にしていた。但し当該画像処理は必ずしも実行されずとも足りる。すなわち、例えば、判定モデルによる判定が高精度に疵画像のデータから鋼材Sについた疵の種類を判定することができるのであれば、推論の前に画像処理を実行することは不要である。従って、本発明に実施の形態における疵種類判定装置2では画像処理部22を設けているが設けずとも足りる。
【0078】
さらに画像処理部22による画像処理は、上述したようにコントラスト、或いは、明るさのいずれか一方、または、その両方を調整するが、例えばコントラストの調整に用いられる条件(数値)は自動的にある値に設定されている。そのため、画像処理部22による画像処理ではどの疵画像のデータに対しても基本的に同じ条件で画像処理を行うが、例えば、個々の疵画像のデータごとに条件を変更して画像処理を実行することも可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 磁粉探傷装置
11 磁化装置
12 磁化コイル
13 磁粉液散布装置
14 照明装置
15 撮像装置
16 制御装置
2 疵種類判定装置
21 情報取得部
22 画像処理部
23 記憶部
24 判定部
25 判定結果報知部
A 判定システム
S 鋼材

図1
図2
図3