IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 台達電子工業股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特開-巻線装置及び巻線方法 図1
  • 特開-巻線装置及び巻線方法 図2
  • 特開-巻線装置及び巻線方法 図3
  • 特開-巻線装置及び巻線方法 図4
  • 特開-巻線装置及び巻線方法 図5
  • 特開-巻線装置及び巻線方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101539
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】巻線装置及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 59/38 20060101AFI20240722BHJP
   H01F 41/064 20160101ALI20240722BHJP
   H01F 41/094 20160101ALI20240722BHJP
【FI】
B65H59/38 A
H01F41/064
H01F41/094
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204505
(22)【出願日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】202310060502.2
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】502330713
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS, INC.
【住所又は居所原語表記】No.252,ShanYing Rd.,Guishan Dist.,Taoyuan City 333,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】彭博文
(72)【発明者】
【氏名】廖哲毅
(72)【発明者】
【氏名】紀博文
(72)【発明者】
【氏名】蔡尚廷
(72)【発明者】
【氏名】簡宇祥
【テーマコード(参考)】
3F111
5E002
【Fターム(参考)】
3F111AA01
3F111AA05
3F111AB01
3F111CA16
3F111CA19
3F111CA20
3F111CB01
3F111DA03
3F111DA18
3F111DB03
3F111DB09
3F111DC03
3F111DC04
3F111DD02
3F111DE01
5E002AA06
5E002AA11
(57)【要約】
【課題】巻線装置及び巻線方法を提供する。
【解決手段】巻線装置は、ワイヤ供給プーリと、動滑車と、リニアエンコーダと、円形エンコーダと、コントローラとを含み、ワイヤ供給プーリは、ワイヤ供給速度に従って回転し、ワイヤ供給端に線材を提供し、動滑車は、線材の張力に応じて横方向に変位し、リニアエンコーダは、動滑車に接続され、動滑車の位置を検出し、円形エンコーダは、線材の巻取速度を感知し、コントローラは、動滑車の位置と目標位置との位置誤差を算出し、位置誤差に基づいて第1フィードバック速度を算出し、線材の巻取速度に基づいて第2フィードバック速度を算出し、第1フィードバック速度及び第2フィードバック速度に基づいてワイヤ供給プーリのワイヤ供給速度を制御するための入力ワイヤ供給速度を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ供給速度に従って回転し、ワイヤ供給端から線材を供給するワイヤ供給プーリと、
前記線材を転向させ、前記線材の張力に応じて位置を移動させる動滑車と、
前記動滑車に接続され、前記動滑車の位置を検出するリニアエンコーダと、
前記線材の巻取速度を感知する円形エンコーダと、
前記リニアエンコーダ及び前記円形エンコーダに接続されるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記動滑車の位置と目標位置との位置誤差を算出し、前記位置誤差に基づいて第1フィードバック速度を算出し、前記線材の巻取速度に基づいて第2フィードバック速度を算出し、前記第1フィードバック速度及び前記第2フィードバック速度に基づいて前記ワイヤ供給プーリの前記ワイヤ供給速度を制御するための入力ワイヤ供給速度を生成するように構成される巻線装置。
【請求項2】
前記ワイヤ供給プーリに接続されて前記ワイヤ供給プーリの回転を制御するモータと、
前記モータと前記コントローラとに接続され、前記入力ワイヤ供給速度に基づいて、前記モータを制御する駆動部と、をさらに含む、請求項1に記載の巻線装置。
【請求項3】
前記円形エンコーダが定滑車に配置され、前記定滑車が前記線材によって掛け回される、請求項2に記載の巻線装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記駆動部の一部であり、又は前記駆動部から独立したプログラマブルロジックコントローラである、請求項3に記載の巻線装置。
【請求項5】
前記コントローラは、PIコントローラとフィードフォワードコントローラとを含み、前記動滑車の位置及び前記目標位置に基づいて前記位置誤差を算出し、
前記PIコントローラは、前記位置誤差に基づいて前記第1フィードバック速度を生成し、
前記フィードフォワードコントローラは、前記線材の巻取速度及び滑車サイズに基づいて前記第2フィードバック速度を算出する、請求項3に記載の巻線装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記目標位置から前記動滑車の位置を減算して前記位置誤差を生成し、前記第1フィードバック速度と前記第2フィードバック速度を加算して前記入力ワイヤ供給速度を生成するように構成される、請求項5に記載の巻線装置。
【請求項7】
前記滑車サイズは、前記定滑車又は前記ワイヤ供給プーリのサイズである、請求項5に記載の巻線装置。
【請求項8】
前記フィードフォワードコントローラは、下記第1式に基づいて前記第2フィードバック速度を算出し、V2は前記第2フィードバック速度であり、V1は前記線材の巻取速度であり、Pは前記定滑車の1秒あたりの回転数であり、resは前記円形エンコーダの精度であり、r1は前記定滑車の半径である、請求項5に記載の巻線装置。
【請求項9】
前記動滑車は、テンションスプリング又は空気圧機構により前記目標位置に配置され、前記線材の張力の影響を受けて横方向に変位可能である、請求項5に記載の巻線装置。
【請求項10】
ワイヤ供給速度に従って回転して、線材を供給するワイヤ供給プーリと、
目標位置に配置され、前記線材を転向させ、前記線材の張力に応じて横方向に変位する動滑車と、
前記線材の巻取速度を感知する円形エンコーダと、
前記動滑車の位置と前記目標位置との位置誤差を算出し、前記位置誤差に基づいて第1フィードバック速度を算出するPIコントローラと、
前記線材の巻取速度に基づいて第2フィードバック速度を算出し、前記第1フィードバック速度及び前記第2フィードバック速度に基づいて前記ワイヤ供給プーリの前記ワイヤ供給速度を制御するための入力ワイヤ供給速度を生成するフィードフォワードコントローラと、を含む巻線装置。
【請求項11】
前記ワイヤ供給プーリに接続されて前記ワイヤ供給プーリの回転を制御するモータと、
前記モータと前記フィードフォワードコントローラとに接続され、前記入力ワイヤ供給速度に基づいて、前記モータを制御して前記ワイヤ供給プーリの前記ワイヤ供給速度を調整する駆動部と、をさらに含む、請求項10に記載の巻線装置。
【請求項12】
前記円形エンコーダが定滑車に配置され、前記定滑車が前記線材に巻き付けられ、前記線材によって掛け回される、請求項10に記載の巻線装置。
【請求項13】
前記フィードフォワードコントローラは、下記第1式に基づいて前記第2フィードバック速度を算出し、V2は前記第2フィードバック速度であり、V1は前記線材の巻取速度であり、Pは前記定滑車の1秒あたりの回転数であり、resは前記円形エンコーダの精度であり、r1は前記定滑車の半径である、請求項12に記載の巻線装置。
【請求項14】
請求項1に記載の巻線装置に適用される巻線方法であって、
前記動滑車の前記位置を監視することと、
前記動滑車の前記目標位置と前記位置の前記位置誤差を算出することと、
前記位置誤差に基づいて前記第1フィードバック速度を算出することと、
ワイヤ巻取端における前記線材の巻取速度を監視することと、
前記線材の巻取速度に基づいて前記第2フィードバック速度を算出することと、
前記第1フィードバック速度と前記第2フィードバック速度を合計して前記入力ワイヤ供給速度を生成することと、
モータによって前記ワイヤ供給プーリに接続される駆動部に前記入力ワイヤ供給速度を提供することであって、前記駆動部は、前記入力ワイヤ供給速度に基づいて前記モータを回転制御して前記ワイヤ供給プーリを駆動し、前記ワイヤ供給プーリをワイヤ供給端で前記ワイヤ供給速度に基づいて回転させて前記線材を提供することと、を含む、巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力制御に関し、特に巻線装置及びそれに用いる巻線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の電子部品では、駆動源として多くの巻線素子を用いることが一般的である。巻線素子にとって、銅線をワーク被加工物に巻き付ける巻線工程では、巻線装置を用いて銅線の張力を安定させることが重要である。
【0003】
図1及び図2を参照する。図1は、関連技術の巻線装置の第1実施形態を示す構成図である。図2は、関連技術の巻線装置の第2実施形態を示す構成図である。図1は、従関連技術でよく用いられる巻線装置1を示しており、この巻線装置1は、一般に生産ラインの巻線工程に用いられる。
【0004】
図1に示すように、巻線装置1は、ワイヤ供給プーリ11、テンションロッド12、及び角度センサ14の組み合わせを用いる。ここで、テンションロッド12は、テンションスプリング13によって特定位置に固定され、角度センサ14は、テンションロッド12の一端に配置されている。銅線10は、ワイヤ供給端から巻線装置1に入り、ワイヤ供給プーリ11及びテンションロッド12の他端に配置された定滑車を巻き付き、巻線装置1のワイヤ巻取端で出力される。
【0005】
図2に示すように、巻線装置1がワイヤ供給端のワイヤ供給速度V2を速くすると、ワイヤ供給速度V2がワイヤ巻取端のワイヤ巻取速度V1よりも大きくなるため、テンションロッド12は図2の右側に傾く。逆に、巻線装置1がワイヤ供給端のワイヤ供給速度V2を遅くすると、ワイヤ供給速度V2がワイヤ引き端のワイヤ巻取速度V1より小さくなるため、テンションロッド12は図2の左側に傾く。
【0006】
巻線装置1は、ワイヤ供給と同時に、角度センサ14によってテンションロッド12の傾斜角度を検出し、角度センサ14によってフィードバックされた傾斜角度に基づいて、ワイヤ供給プーリ11の回転速度(即ち、ワイヤ供給速度V2)を制御して張力バランスを保つ。
【0007】
図2に示すように、テンションスプリング13の装着位置及びテンションロッド12のロッド長さRに基づいて、張力を解析する角度センサ14の能力を低下させるモーメントアームの差が生じる。具体的には、巻線装置1では、より大きな張力範囲を提供するために、ロッド長さRがより長いテンションロッド12を用いて、より大きな揺動弧長Cを提供する。しかし、角度センサ14は、テンションロッド12のワイヤ巻取端から遠い端部に配置されているので、角度センサ14は揺動角度θが小さく、わずかな角度変化量しか持たない。このように、巻線装置1の高速ワイヤ供給状態では、角度センサ14が前後に揺動し、角度変化量に対する感度が悪い。
【0008】
上述したように、関連技術の巻線装置1は、角度センサ14の角度変化量が小さいため、ワイヤ供給速度を制御するときの即時性と安定性に影響を与え、さらには巻線時の張力安定性にも影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、テンションロッドと角度センサの組合せに代えて、動滑車とリニアエンコーダの組合せを用いることで、張力範囲をアークから直線に変更することにより、張力解析範囲を上向上させ、張力バランスの制御を安定化させる巻線装置及び巻線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、本発明に係る巻線装置は、ワイヤ供給速度に応じて回転し、ワイヤ供給端から線材を供給するワイヤ供給プーリと、前記線材を転向させ、前記線材の張力に応じて位置を移動させる動滑車と、前記動滑車に接続され、前記動滑車の位置(フィードバック位置)を検出するリニアエンコーダと、前記線材の巻取速度を感知する円形エンコーダと、前記リニアエンコーダ及び前記円形エンコーダに接続されるコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記動滑車の位置(フィードバック位置)と目標位置との位置誤差を算出し、前記位置誤差に基づいて第1フィードバック速度を算出し、前記線材の巻取速度に基づいて第2フィードバック速度を算出し、前記第1フィードバック速度及び前記第2フィードバック速度に基づいて前記ワイヤ供給プーリの前記ワイヤ供給速度を制御するための入力ワイヤ供給速度を生成するように構成される。
【0011】
一実施形態において、本発明に係る巻線装置は、主にワイヤ供給速度に応じて回転して、ワイヤ供給端から線材を供給するワイヤ供給プーリと、目標位置に配置され、前記線材を転向させ、前記線材の張力に応じて横方向に変位する動滑車と、前記線材の巻取速度を感知する円形エンコーダと、前記動滑車の位置(フィードバック位置)と前記目標位置との位置誤差を算出し、前記位置誤差に基づいて第1フィードバック速度を算出するPIコントローラと、前記線材の巻取速度に基づいて前記第2フィードバック速度を算出し、前記第1フィードバック速度及び前記第2フィードバック速度に基づいて前記ワイヤ供給プーリの前記ワイヤ供給速度を制御するための入力ワイヤ供給速度を生成するフィードフォワードコントローラと、を含む。
【0012】
一実施形態において、本発明に係る巻線方法は、前記巻線装置に適用され、前記動滑車の前記位置(フィードバック位置)を監視することと、前記動滑車の前記目標位置及び前記位置(フィードバック位置)の前記位置誤差を算出することと、前記位置誤差に基づいて前記第1フィードバック速度を算出することと、ワイヤ巻取端における前記線材の巻取速度を監視することと、前記線材の巻取速度に基づいて前記第2フィードバック速度を算出することと、前記第1フィードバック速度と前記第2フィードバック速度を合計して前記入力ワイヤ供給速度を生成することと、モータによって前記ワイヤ供給プーリに接続される駆動部に前記入力ワイヤ供給速度を提供することであって、前記駆動部は、前記入力ワイヤ供給速度に基づいて前記モータを回転制御して前記ワイヤ供給プーリを駆動し、前記ワイヤ供給プーリをワイヤ供給端で前記ワイヤ供給速度に基づいて回転させて前記線材を提供することと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、関連技術と比較して、線材の張力の影響を受けて生じる動滑車の位置ずれを監視し、線材の実際のワイヤ巻取速度を監視し、この位置ずれ及び実際のワイヤ巻取速度に基づいて線材のワイヤ供給速度を能動的に調整することにより、全体の張力応答速度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】関連技術の巻線装置の第1実施形態を示す構成図である。
図2】関連技術の巻線装置の第2実施形態を示す構成図である。
図3】本発明に係る巻線装置の一実施形態を示す構成図である。
図4】本発明に係る巻線装置の一実施形態を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態を示す概略制御図である。
図6】本発明に係る巻線方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
本発明に係る巻線装置は、主に線材(例えば銅線)の巻線工程に適用される。具体的には、本発明に係る巻線装置は、巻取部材に対する線材の巻取速度を制御し、線材に張力バランスを維持させることができる巻線システムの一部であってもよい。上記巻線工程において線材に張力バランスを維持させることで、完成品の品質を向上させることができる。
【0017】
図3は、本発明に係る巻線装置の一実施形態を示す構成図である。図3に示すように、本発明に係る巻線装置3は、主にワイヤ供給プーリ31と、動滑車32と、テンションスプリング33と、1つ又は複数の定滑車34と、リニアエンコーダ35と、円形エンコーダ36とを含む。
【0018】
ワイヤ供給プーリ31は、巻線装置3のワイヤ供給端6に配置される。線材30(例えば銅線)は、ワイヤ供給端6から巻線装置3に入り、ワイヤ供給プーリ31を通過する。ワイヤ供給プーリ31は、所定のワイヤ供給速度V2に従って能動的に回転して、線材30をワイヤ供給端6から巻線装置3の内部に供給する。
【0019】
動滑車32は、一部位にテンションスプリング33が接続されており、テンションスプリング33によって巻線装置3内の特定位置に配置されている。動滑車32は、線材30に巻き付けられ、線材30の張力に応じて位置を移動させる。本発明では、動滑車32は能動的に回転せず、線材30が移動する時に線材30線材を転向させる。
【0020】
通常の状態(力を受けていない、又は線材30の張力バランスが保たれている)では、動滑車32は、ユーザ又は巻線装置3によって設定された目標位置に留まる(回転しない、又は受動的に回転する)。つまり、線材30が力を受けていないとき、又は張力バランスが保たれているとき、動滑車32の現在位置は目標位置と同じになる。線材30が受ける張力が変化すると、動滑車32は線材30の張力に応じて横方向に変位する。このとき、動滑車32は目標位置から離れることになる。即ち、線材30の張力バランスが保たれていない場合、動滑車32の現在位置は目標位置と異なることになる。
【0021】
図3の実施形態において、動滑車32は、テンションスプリング33を介して移動可能に配置され、目標位置に保持されている。他の実施形態において、動滑車32は、図3に示すものに限定されず、他の空気圧機構(シリンダなど)を介して移動可能に配置され、目標位置に保持されてもよい。
【0022】
1つ又は複数の定滑車34は、それぞれ巻線装置3内の1つ又は複数の所定位置に配置される。これらの定滑車34は、それぞれ線材30の移動によって掛け回され、巻線装置3における線材30の巻取方向を調整するために用いることができる。動滑車32との違いは、線材30の張力バランスが保たれているか否かにかかわらず、定滑車34の位置が変化しないことである。
【0023】
リニアエンコーダ35は、動滑車32に接続され、動滑車32の位置(フィードバック位置)を連続的に取得する。具体的には、リニアエンコーダ35は、動滑車32を連続的に監視するための位置センサである。線材30がワイヤ巻取端7に向かって移動すると、動滑車32が線材30の張力に応じて横方向に変位する(例えば、図3の左側又は右側に向かって水平方向に移動する)ことがある。このとき、リニアエンコーダ35は、動滑車32の現在位置(即ち、フィードバック位置)を直ちに知ることができる。このようにして、リニアエンコーダ35は、得られたフィードバック位置により、動滑車32が目標位置から外れたか否かを知ることができる。本発明の技術的特徴は、動滑車32の現在位置(即ち、フィードバック位置)が目標位置と異なる場合(又はその差が許容値より大きい場合)、巻線装置3は、動滑車32が目標位置に復帰して維持され、さらに線材30の張力バランスがとれるように、ワイヤ供給プーリ31のワイヤ供給速度V2を自動的に調整することである。
【0024】
円形エンコーダ36は、巻線装置3上のワイヤ巻取端7に近い位置に配置され、線材30によって牽引されて、ワイヤ巻取端7における線材30のワイヤ巻取速度V1を感知することが可能である。一実施形態において、巻線装置3のワイヤ巻取端7における線材30のワイヤ巻取速度V1は、巻取部材(図示せず)に対する線材30のワイヤ巻取速度と同一又は類似であるが、これに限定されない。
【0025】
特に、本発明に係る巻線装置3は、少なくとも1つのコントローラ(例えば図4に示すコントローラ37)をさらに含む。コントローラは、リニアエンコーダ35及び円形エンコーダ36が読み取った値に基づいてワイヤ供給プーリ31を制御する。本発明に係る巻線装置3は、ワイヤ供給プーリ31のワイヤ供給速度V2を自動的かつ即時に制御することにより、ワイヤ供給速度V2とワイヤ巻取速度V1とを一致させ、動滑車32を目標位置に安定的に維持し、線材30の張力バランスを保つことという主な目的を達成することができる。
【0026】
図4は、本発明に係る巻線装置の一実施形態を示すブロック図である。図4は、図3に示す巻線装置3のブロック図を示している。図4に示すように、巻線装置3は、リニアエンコーダ35と円形エンコーダ36とに接続されるコントローラ37をさらに含む。このコントローラ37は、リニアエンコーダ35及び円形エンコーダ36によって読み取られた値を連続的に取得する。
【0027】
具体的には、コントローラ37は、リニアエンコーダ35から動滑車32の位置(フィードバック位置)を取得し、動滑車32の位置(フィードバック位置)と目標位置との位置誤差を算出し、位置誤差に基づいて第1フィードバック速度を算出する。本発明では、第1フィードバック速度に基づいてワイヤ供給プーリ31の回転を調整した後に、巻線装置3は、線材30の張力変化による動滑車32の位置誤差を補償することができる。
【0028】
また、コントローラ37は、円形エンコーダ36からワイヤ巻取端7における線材30のワイヤ巻取速度V1を取得し、ワイヤ巻取速度V1に基づいて第2フィードバック速度を算出する。本発明では、第2フィードバック速度に基づいてワイヤ供給プーリ31の回転を調整した後、巻線装置3は、線材30の張力乱れを事前に解消することができる。
【0029】
最後に、コントローラ37は、第1フィードバック速度及び第2フィードバック速度に基づいて入力ワイヤ供給速度を生成し、入力ワイヤ供給速度に基づいてワイヤ供給プーリ31を制御して、ワイヤ供給プーリ31のワイヤ供給速度V2を調整する。即ち、調整後のワイヤ供給速度V2には第1フィードバック速度及び第2フィードバック速度が共に考慮されるので、動滑車32の位置誤差が補償されて張力の乱れが解消されることができる。
【0030】
なお、図3の実施形態において、動滑車32及び定滑車34は、線材30によって牽引されて受動的に回転するだけであるが、ワイヤ供給プーリ31は、線材30を巻線装置3の内部に供給するために能動的に回転することができる。図4の実施形態において、巻線装置3は、ワイヤ供給プーリ31に接続されるモータ312と、モータ312及びコントローラ37に接続される駆動部311とをさらに備える。
【0031】
モータ312は、駆動部311の制御を受けて回転し、さらにワイヤ供給プーリ31を回転駆動する。駆動部311は、コントローラ37から制御コマンド、回転速度コマンド又はトルクコマンドを受信して、モータ312を対応制御する。
【0032】
本実施形態において、駆動部311は、コントローラ37によって算出された入力ワイヤ供給速度を受信し、入力ワイヤ供給速度に基づいてモータ312を回転制御させることができる。上述したように、コントローラ37は、第1フィードバック速度及び第2フィードバック速度に基づいて入力ワイヤ供給速度を生成するので、駆動部311が入力ワイヤ供給速度に基づいてモータ312を制御すると、ワイヤ供給プーリ31を所定のワイヤ供給速度V2で回転させることができる。
【0033】
一実施形態において、コントローラ37は、駆動部311の一部であってもよい。具体的には、巻線装置3の管理者は、駆動部311をプログラム化し、コントローラ37に対応するプログラムコードを駆動部311に記録してもよい。駆動部311がこのプログラムコードを実行すると、コントローラ37が実現できる。本実施形態において、コントローラ37はソフトウェアモジュールである。
【0034】
別の実施形態において、コントローラ37は、駆動部311から独立して存在してもよい。例えば、コントローラ37は、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)によって実現されてもよい。本実施形態において、プログラマブルロジックコントローラには、対応するプログラムコードが記録されており、上述したコントローラ37の全ての機能を実現することができる。本実施形態において、コントローラ37はハードウェアモジュールである。
【0035】
図3に示すように、本発明の一実施形態において、円形エンコーダ36は、巻線装置3のワイヤ巻取端7に近接した1つの定滑車34に取り付けることができる。本実施形態において、この定滑車34は、線材30によって掛け回され、円形エンコーダ36は、定滑車34の回転を監視し、定滑車34の回転速度を検出することができる。この定滑車34は、巻線装置3のワイヤ巻取端7に近接しているので、コントローラ37は直接、この定滑車34の回転速度を、ワイヤ巻取端7における線材30のワイヤ巻取速度V1とすることができる。
【0036】
本発明の技術的特徴は、コントローラ37が駆動部311及びモータ312によってワイヤ供給プーリ31を回転制御して、ワイヤ供給端6に近接した線材30のワイヤ供給速度V2がワイヤ巻取端7に近接した線材30のワイヤ巻取速度V1と同等又は極めて近くなるようにすることにより、線材30のテンションバランスを保つことである。
【0037】
図5は、本発明の一実施形態を示す概略制御図である。図5の実施形態において、コントローラ37は、PIコントローラ(PI Controller)371と、フィードフォワードコントローラ372とを含む。具体的には、本発明に係る巻線装置3において、PIコントローラ371は、コントローラ37と、動滑車32と、リニアエンコーダ35とを組み合わせることにより実現し、フィードフォワードコントローラ372は、コントローラ37と、円形エンコーダ36と、円形エンコーダ36が取り付けられた定滑車34とを組み合わることにより実現する。
【0038】
図5に示すように、本発明において、コントローラ37は、動滑車32の目標位置51を取得するとともに、リニアエンコーダ35によって動滑車32のフィードバック位置52を取得するように設定されることができる。これにより、コントローラ37は、フィードバック位置52及び目標位置51に基づいて動滑車32の位置誤差(Err)53を算出し、この位置誤差53をPIコントローラ371に入力することができる。一実施形態において、コントローラ37は、主に目標位置51からフィードバック位置52を減算して位置誤差53を生成するが、これに限定されない。
【0039】
一実施形態において、巻線装置3は、図5に示すものに限定されず、PIコントローラ371によって直接、動滑車32の目標位置51及びフィードバック位置52を取得し、位置誤差53を算出することができる。また、PIコントローラ371は、算出して得られた位置誤差53に基づいて、第1フィードバック速度54を生成できる。PIコントローラ371は、第1フィードバック速度54により、張力の影響を受けて動滑車32の位置誤差53を補償することができる。
【0040】
PIコントローラ371の内部ループ制御計算は、関連技術分野の常用技術であるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
本発明において、巻線装置3は、フィードフォワードコントローラ372によりワイヤ巻取端7における線材30のワイヤ巻取速度55(即ちV1)を監視し、ワイヤ巻取速度55に基づいて第2フィードバック速度56を算出する。フィードフォワードコントローラ372は、第2フィードバック速度56により、線材30の張力乱れを事前に解消することができる。
【0042】
最後に、コントローラ37は、第1フィードバック速度54及び第2フィードバック速度56に基づいて、ワイヤ供給プーリ31を制御するための入力ワイヤ供給速度57を生成する。一実施形態において、コントローラ37は、第1フィードバック速度54と第2フィードバック速度56を加算して入力ワイヤ供給速度57を生成するが、これに限定されない。他の実施形態において、巻線装置3は、フィードフォワードコントローラ372により、第2フィードバック速度56を算出した後、直接フィードフォワードコントローラ372により、第1フィードバック速度54及び第2フィードバック速度56に基づいて上記入力ワイヤ供給速度57を生成する。
【0043】
一実施形態において、フィードフォワードコントローラ372は、円形エンコーダ36からワイヤ巻取端7における線材30のワイヤ巻取速度55を取得し、直接にワイヤ巻取速度55を第2フィードバック速度56とし、コントローラ37に第2フィードバック速度56(及び第1フィードバック速度54)に基づいて上記入力ワイヤ供給速度57を生成させてワイヤ供給プーリ31を制御する。具体的には、フィードフォワードコントローラ372の目的は、ワイヤ供給プーリ31のワイヤ供給速度が線材30のワイヤ巻取速度55と同等又は極めて近くなるようにすることにより、張力バランスを取ることである。
【0044】
別の実施形態において、フィードフォワードコントローラ372は、円形エンコーダ36から上記ワイヤ巻取速度55を取得した後、ワイヤ巻取速度55及び比例関係(例えば滑車サイズ)に基づいて上記第2フィードバック速度56を算出する。この比例関係(滑車サイズ)は、円形エンコーダ36が取り付けられた定滑車34のサイズ、又はワイヤ供給プーリ31のサイズである、これらに限定されない。
【0045】
別の実施形態において、フィードフォワードコントローラ372は、以下の式に基づいて第2フィードバック速度56を算出してもよい。
【0046】
【数1】
【0047】
ここで、V2は第2フィードバック速度56であり、V1はワイヤ巻取速度55である。本実施形態において、フィードフォワードコントローラ372は、主に円形エンコーダ36によって得られたワイヤ巻取速度55をワイヤ供給プーリ31に送り込み、ワイヤ供給プーリ31のワイヤ供給速度がワイヤ巻取速度55と等しくなるようにするので、上記の式でV2=V1とする。
【0048】
また、Pは円形エンコーダ36が取り付けられた定滑車34の1秒あたりの回転数(pulse)であり、resは円形エンコーダ36の精度であり、r1は円形エンコーダ36が取り付けられた定滑車34の半径である。上記の式により、フィードフォワードコントローラ372は、ワイヤ巻取速度55を算出し、ワイヤ巻取速度55に基づいて第2フィードバック速度56を生成することができる。
【0049】
図6は、本発明に係る巻線方法の一実施形態を示すフローチャートである。図6は、本発明に係る巻線方法の具体的な実施手順を示しており、この巻線方法は、主に図3図4及び図5に示すような巻線装置3に適用される。
【0050】
まず、巻線装置3は、リニアエンコーダ35により、動滑車32のフィードバック位置を連続的に監視する(ステップS61)。次に、巻線装置3は、コントローラ37(又はPIコントローラ371)により、動滑車32の目標位置とフィードバック位置間の位置誤差を算出する(ステップS62)。最後に、巻線装置3は、PIコントローラ371により、位置誤差に基づいて第1フィードバック速度を算出する(ステップS63)。巻線装置3は、第1フィードバック速度により、ワイヤ供給プーリ31のワイヤ供給速度V2を調整した後、上記位置誤差を補償し、動滑車32を目標位置に復帰させることができる。
【0051】
また、巻線装置3は、円形エンコーダ36により、ワイヤ巻取端7における線材30のワイヤ巻取速度V1を監視し(ステップS64)、フィードフォワードコントローラ372により、ワイヤ巻取速度V1に基づいて第2フィードバック速度を算出する(ステップS65)。
【0052】
最後に、巻線装置3は、コントローラ37(又はフィードフォワードコントローラ372)により、第1フィードバック速度と第2フィードバック速度を合計して入力ワイヤ供給速度を生成し(ステップS66)、ワイヤ供給プーリ31を制御するための駆動部311に入力ワイヤ供給速度を提供する(ステップS67)。駆動部311は、入力ワイヤ供給速度に基づいて(モータ312により)ワイヤ供給プーリ31を制御すると、動滑車32の位置誤差を補償するとともに、線材30が受けた張力乱れを解消することができる。
【0053】
なお、本発明のコントローラ37は、主に第1フィードバック速度及び第2フィードバック速度に基づいて、ワイヤ供給プーリ31を制御するための入力ワイヤ供給速度を生成するものである。ここで、第1フィードバック速度と第2フィードバック速度が同時に連続的に生成する。言い換えれば、ステップS61~S63とステップS64~S65とは、実行上の順序関係がないため、図6に示すステップの順序を必要とせず、同時に実行することが可能である。
【0054】
ステップS67の後、巻線装置3は、コントローラ37により、張力制御が終了したか否かを判断し(ステップS68)、例えば、巻線装置3の電源がオフになっているか否か、線材30が使用済みであるか否か等を判断するが、これらに限定されない。ステップS68において、張力制御が終了していないと判定された場合、巻線装置3は、ステップS61~ステップS67を繰り返し実行して、ワイヤ供給プーリ31を連続制御することにより、巻線装置3において線材30が張力バランスを保つことができるようにする。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の全ての範囲は以下の特許請求の範囲に基づくものであり、本発明の明細書及び図面を適用する類似の変形例は、本発明の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0056】
1 巻線装置
10 銅線
11 ワイヤ供給プーリ
12 テンションロッド
13 テンションスプリング
14 角度センサ
V1 ワイヤ巻取速度
V2 ワイヤ供給速度
C 揺動弧長
R ロッド長さ
θ 揺動角
3 巻線装置
30 線材
31 ワイヤ供給プーリ
311 駆動部
312 モータ
32 動滑車
33 テンションスプリング
34 定滑車
35 リニアエンコーダ
36 円形エンコーダ
37 コントローラ
371 PIコントローラ
372 フィードフォワードコントローラ
51 目標位置
52 フィードバック位置
53 位置誤差
54 第1フィードバック速度
55 ワイヤ巻取速度
56 第2フィードバック速度
57 入力ワイヤ供給速度
6 ワイヤ供給端
7 ワイヤ巻取端
図1
図2
図3
図4
図5
図6