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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101544
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】含フッ素エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20240722BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20240722BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240722BHJP
   C08K 5/3462 20060101ALI20240722BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20240722BHJP
   C08K 5/3447 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C08L27/18
C08F214/26
C09K3/10 M
H01L21/302 101Z
C08K5/3462
C08K5/23
C08K5/3447
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210714
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2023004831
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】村上 佑介
(72)【発明者】
【氏名】佐野 洋之
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
4J100
5F004
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AA16
4H017AC01
4H017AD03
4H017AE02
4H017AE04
4J002EN107
4J002EQ016
4J002ES017
4J002EU036
4J002EU096
4J002EU106
4J002FD096
4J002FD147
4J002GJ02
4J002GQ05
4J100AC26P
4J100AC41Q
4J100AC41R
4J100CA05
4J100DA47
4J100DA48
4J100DA49
4J100DA50
4J100DA51
4J100JA46
5F004BB26
5F004BD04
5F004CA04
5F004DA01
5F004DA26
(57)【要約】
【課題】 シアノ基を架橋性基とする含フッ素エラストマーを用いた組成物において、この加硫成形物が300℃以上といった高温条件下においてもすぐれた耐熱性を示す含フッ素エラストマーを提供する。
【解決手段】 (A)テトラフルオロエチレン60.0~80.0モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)19.8~39.8モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2~5.0モル%の共重合組成を有する含フッ素エラストマー100重量部当り、ペリレン系化合物、ナフタレンカルボアミド系化合物、ピリミジントリオン系化合物またはベンゾイミダゾロン系化合物である顔料0.4~4.0重量部およびビスアミドキシム化合物または2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.2~5.0重量部を配合した含フッ素エラストマー組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テトラフルオロエチレン60.0~80.0モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)19.8~39.8モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2~5.0モル%の共重合組成を有する含フッ素エラストマー100重量部当り、ペリレン系化合物、ナフタレンカルボアミド系化合物、ピリミジントリオン系化合物またはベンゾイミダゾロン系化合物である顔料0.4~4.0重量部およびビスアミドキシム化合物または2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.2~5.0重量部を配合した含フッ素エラストマー組成物。
【請求項2】
(A)テトラフルオロエチレン60.0~68.8モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)30.7~39.5モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.5~3.0モル%の共重合組成を有する含フッ素エラストマーが用いられた請求項1記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項3】
顔料が、イミド基を有するペリレン系化合物、フェニルアゾ基を有するナフタレンカルボアミド系化合物、ベンゾイミダゾール基を有するピリミジントリオン系化合物またはイソキノリン基を有するベンゾイミダゾロン系化合物である請求項1記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項4】
イミド基を有するペリレン系化合物が、
である請求項3記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項5】
フェニルアゾ基を有するナフタレンカルボアミド系化合物が
である請求項3記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項6】
ベンゾイミダゾール基を有するピリミジントリオン系化合物が、
である請求項3記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項7】
イソキノリン基を有するベンゾイミダゾロン系化合物が
である請求項3記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項8】
ビスアミドキシム化合物が、一般式
HON=C(NH2)(CF2)nC(NH2)=NOH
(ここで、nは1~10の整数である)で表される化合物である請求項1記載の含フッ素エラストマー組成物。
【請求項9】
請求項1、2または3記載の含フッ素エラストマー組成物の着色加硫成形物。
【請求項10】
圧縮永久歪が300℃、500時間で50%以下であり、ゴム硬度(Duro A)が75以下である請求項9記載の着色加硫成形物。
【請求項11】
シール材として用いられる請求項9または10記載の着色加硫成形物。
【請求項12】
プラズマ照射用途に用いられる請求項11記載の着色シール材。
【請求項13】
半導体製造装置用として用いられる請求項12記載の着色シール材。
【請求項14】
シリコンウェハーの表面処理加工室の面シールとして用いられる請求項13記載の着色シール材。
【請求項15】
ゲートバルブ用途に用いられる請求項13記載の着色シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エラストマー組成物に関する。さらに詳しくは、半導体製造装置用シール等のプラズマ照射用途の成形材料として好適に用いられる含フッ素エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用シールは、半導体の基板であるシリコンウェハー等の表面にエッチング加工あるいは薄膜を形成処理するための加工室等に用いられる面シールとして適用されるものであり、耐熱性、低ガス透過性、低発塵性(シールからの塵の発生が少ないこと)などが要求される。シリコンウェハーエッチング処理時などには、酸素あるいはCF4雰囲気下などでプラズマ照射されるため、酸素あるいはハロゲン等のガスが励起された状態となり、その結果半導体製造装置用シールは劣化し易く、またその表面が脆くなり、劣化物や脆化物が飛散して、シリコンウェハー上に付着するなどの不具合がみられる。
【0003】
ところで、半導体製造装置においては、300℃といった高温での使用要求に対して耐熱性にすぐれたシアノ基含有パーフルオロエラストマー等が使用されている。一方、耐プラズマ性向上のために、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、珪酸アルミニウム等の無機充填剤を添加することが行われており、これら無機充填剤の添加はプラズマ照射環境下での重量減少の抑制に効果が認められるものの、チタン、バリウム、アルミニウムといった元素自体の存在が半導体業界では嫌われていることもあり、無機充填剤の使用を最低限とする材料であることが好ましい。
【0004】
ここで、含フッ素エラストマーである、フッ化ビニリデン[VdF]/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体、VdF/HFP/テトラフルオロエチレン[TFE]3元共重合体等のフッ素化されたフルオロエラストマーや、TFE/パーフルオロメチルビニルエーテル[PMVE]共重合体等の過フッ素化されたパーフルオロエラストマーは、耐熱性、耐薬品性などの点で他のゴムと比べて優れた性能を有していることから、自動車をはじめ各種工業分野でOリング、ガスケット、パッキン等のシール材の成形材料として広く使用されている。
【0005】
なかでも、パーフルオロモノマーであるTFE、HFP、PMVE等の重合体であるパーフルオロエラストマーは、パーフルオロエラストマー以外の含フッ素エラストマーと比較して、より優れた耐熱性と耐薬品性とを有しており、半導体製造装置に用いられるOリングとして適している。ただし、単純にパーフルオロポリマーを架橋しただけでは、十分な耐熱性を確保できないことから、カーボンブラック等のラジカルを補足する充填剤がそこに配合されるが、一方で耐プラズマ性を考慮した場合、こういった充填剤は異物としてコンタミ源となることから、プラズマが直接当たらない部位しか適用できないなどの制限がある。
【0006】
かかる制限に対し本出願人は先に、半導体製造装置の高温使用環境において使用される、すぐれた耐熱性を示すシアノ基含有パーフルオロエラストマー(含フッ素エラストマー)およびその加硫剤として、(A)テトラフルオロエチレン72.8~74.0モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)26.8~24.0モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2~3.0モル%の共重合組成を有する含フッ素エラストマー100重量部当り、0.2~5重量部のビスアミドキシム化合物を加硫剤として配合せしめた含フッ素エラストマー組成物を提案している(特許文献1)。
【0007】
ここで開示されている発明では、TFE含量を72.8~74.0モル%と増加させることで耐プラズマ性を確保する一方で、ゴム硬度が大変硬くなり、組付け時に問題が発生する可能性が高いといった課題がある。一般に、組付けに望ましい硬さ(Duro A, PEAK)は75以下が目安とされている。
【0008】
また一般的に、Oリングの使用寿命は、対象温度300℃で500時間後に圧縮永久歪70%以下、好ましくは50%以下が目安とされているが、そこに開示されているのは300℃または315℃で、70時間の値(ショアーA硬さ)が示されているにすぎない。
【0009】
特許文献2には、(a)臭素および/またはヨウ素含有架橋点形成化合物の存在下で含フッ素オレフィンを共重合反応させて得られたパーオキサイド架橋可能なテトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体エラストマーまたはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン系共重合体エラストマー、(b)有機過酸化物架橋剤、(c)多官能性不飽和化合物共架橋剤および(d)トリアリルイソシアヌレート重合体を含有してなり、カーボンブラックおよび金属含有充填剤を含有しないフッ素ゴム組成物が開示されており、このフッ素ゴム組成物は良好な加硫物性を示す加硫物を与えるとされている。しかしながら、その実施例に示される加硫物の200℃、70時間における圧縮永久歪値あるいは250℃、70時間での空気老化試験の結果からみて、半導体用途などで要求される300℃における十分な耐熱性能を有しているとはいい難いものとなっている。
【0010】
一方、特許文献3には、含フッ素エラストマー100重量部に対して、イソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料およびアントラキノン系顔料の少なくとも一種0.5~20重量部を含有してなり、加硫製品の耐プラズマ性を向上させる含フッ素エラストマー組成物が開示されているが、圧縮永久歪率の測定が200℃、70時間で行われていることから、300℃以上はもちろん、250℃近傍においても十分な耐熱性能を有しているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009-161662号公報
【特許文献2】特開2005-344074号公報
【特許文献3】特許第4,720,501号公報
【特許文献4】特開2013-216771号公報
【特許文献5】特許第3,082,626号公報
【特許文献6】WO2008/041557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、シアノ基を架橋性基とする含フッ素エラストマーを用いた組成物において、この加硫成形物が300℃以上といった高温条件下においてもすぐれた耐熱性を示す含フッ素エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる本発明の目的は、(A)テトラフルオロエチレン60.0~80.0モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)19.8~39.8モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2~5.0モル%の共重合組成を有する含フッ素エラストマー100重量部当り、ペリレン系化合物、ナフタレンカルボアミド系化合物、ピリミジントリオン系化合物またはベンゾイミダゾロン系化合物である顔料0.4~4.0重量部およびビスアミドキシム化合物または2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.2~5.0重量部を配合した含フッ素エラストマー組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る含フッ素エラストマー組成物は、シアノ基を架橋性基とする含フッ素エラストマーにおいて、この加硫成形物がプラズマ照射条件下で使用され、300℃以上といった高温条件下においてもすぐれた耐熱性を示すといったすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
架橋性基としてシアノ基を有するパーフルオロエラストマーとしては、 (A)テトラフルオロエチレン60.0~80.0モル%、好ましくは60.0~68.8モル%、(B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)19.8~39.8モル%、好ましくは30.7~39.5モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2~5.0モル%、好ましくは0.5~3.0モル%の共重合組成を有するものが用いられる。かかるパーフルオロエラストマーは、300℃以上といった高温下における耐熱性にすぐれた加硫成形物を与える。ここで、低級アルコキシまたは低級アルキルとは、いずれも炭素数が1~5のものを指している。
【0016】
(A)成分のテトラフルオロエチレンの共重合割合がこれよりも低いと、耐熱性の面で劣り、ゴム硬度が低下するようになる。一方、これよりも高い共重合割合では、エラストマーというよりは樹脂的挙動を示すため、シール性能の低下、加工性の低下、ゴム硬度が高くなり組付け時に問題が発生するようになる。
【0017】
(B)成分のパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)の共重合割合がこれよりも低いと、相対的にテトラフルオロエチレンの共重合割合が増加することもあって、共重合体が樹脂に近い状態となり、シール性能の低下、加工性の低下、ゴム硬度が高くなり組付け時に問題が発生するようになる。一方、これよりも共重合割合が高いと、ゴム硬度が低下するようになる。
【0018】
(B)成分共単量体のパーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)としては、一般にはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が用いられる。また、パーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)としては、例えば次のようなものが用いられ、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCnF2n+1 (n:1~5)
CF2=CFO(CF2)3OCnF2n+1 (n:1~5)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mCnF2n+1 (n:1~5、m:1~3)
CF2=CFO(CF2)2OCnF2n+1 (n:1~5)
これらの中で、特にCnF2n+1基がCF3基であるものが好んで用いられる。
【0019】
また、架橋サイト単量体としての(C)成分共単量体パーフルオロ不飽和ニトリル化合物としては、次のようなものが用いられる。
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)CN (n:2~5)
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]nO(CF2)mCN (n:1~2、m:1~6)
CF2=CFO(CF2)nCN (n:1~8)
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]nOCF2CF(CF3)CN (n:1~2)
CF2=CFO(CF2)n(p-C6H4)CN (n:1~6)
【0020】
なお、(C)成分のパーフルオロ不飽和ニトリル化合物の共重合量は、架橋性基として必要な0.2~5.0モル%、好ましくは0.5~3.0モル%とされる。
【0021】
これら各単量体を用いての共重合反応は、一般にステンレス鋼製オートクレーブ中に水、パーフルオロオクタン酸アンモニウム等の含フッ素系乳化剤およびリン酸二水素カリウム等の緩衝剤を仕込んだ後、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)およびパーフルオロ不飽和ニトリル化合物を仕込み、約50~80℃に昇温させた後、過硫酸アンモニウム等のラジカル発生剤および亜硫酸ナトリウム等の還元剤より形成されるレドックス系開始剤を添加することにより行われる。反応圧力は、約0.75~0.85MPa程度に保たれることが好ましく、このため反応の進行と共に低下する反応容器内圧力を上げるため、これら3種の単量体混合物を追加分添しながら反応を行うことが好ましい。
【0022】
以上の成分を必須成分とするパーフルオロエラストマー3元共重合体中には、共重合反応を阻害せずかつ加硫物性を損なわない程度(約20モル%以下)の他のフッ素化オレフィンや各種ビニル化合物等を共重合させることもできる。他のフッ素化オレフィンとしては、例えばフッ化ビニリデン、モノフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン等が用いられ、またビニル化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、トリフルオロスチレン等が挙げられる。
【0023】
かかる3元共重合体よりなる含フッ素エラストマーは、(A)テトラフルオロエチレン60.0~80.0モル% (B)パーフルオロ(低級アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(低級アルコキシ低級アルキルビニルエーテル)19.8~39.8モル%および(C)パーフルオロ不飽和ニトリル化合物0.2~5.0モル%の共重合組成を有する。
【0024】
含フッ素エラストマー組成物は、含フッ素エラストマー100重量部当り、ペリレン系化合物、ナフタレンカルボアミド系化合物、ピリミジントリオン系化合物またはベンゾイミダゾロン系化合物である顔料0.4~4.0重量部、好ましくは0.8~3.5重量部、さらに好ましくは1.0~3.0重量部の割合で用いられる。顔料がこれより少ない割合で用いられると、300℃以上といった高温条件下における耐熱性が劣るようになる。一方、これより多い割合で用いられると、分散性に欠けるようになり、その結果目視できる凝集塊が生じ、ひいては破断起点となりうるようになってしまう。
【0025】
ペリレン系化合物としては、Pigment violet 29(3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド)、Pigment Red 123、Pigment Red 149、Pigment Red 178、Pigment Red 179、Pigment Red 190、Pigment Red 224、Pigment Orange 240、Pigment Black 31等が用いられ、好ましくはイミド基を有するペリレン系化合物、例えば下記化合物
等が用いられる。
【0026】
ナフタレンカルボアミド系化合物としては、Pigment Red 146、Pigment Red 166、Pigment Red 242、Pigment Yellow 13、Pigment Yellow 83等が用いられ、好ましくはフェニルアゾ基を有するナフタレンカルボアミド系化合物、例えば下記化合物
等が用いられる。
【0027】
ピリミジントリオン系化合物としては、Pigment Orange 64、Pigment Yellow 139等が用いられ、好ましくはベンゾイミダゾール基を有するピリミジントリオン系化合物、例えば下記化合物
等が用いられる。
【0028】
ベンゾイミダゾロン系化合物としては、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 180、Pigment Yellow 181、Pigment Yellow 192等が用いられ、好ましくはイソキノリン基を有するベンゾイミダゾロン系化合物、例えば下記化合物
等が用いられる。
【0029】
なお、特許文献4には、架橋性基としてシアノ基を有するパーフルオロエラストマー100重量部に、本発明においても加硫剤として用いられるビスアミドキシム化合物加硫剤0.2~5重量部および融点300℃ 以上の着色剤0.005~0.3重量部を配合してなるパーフルオロエラストマー組成物が開示され、着色剤としてキナクリドンが挙げられている。この特許文献に開示された発明では、キナクリドンの添加が着色を目的とするに止まっており、実施例では本発明で規定する添加量を下回る0.1重量部が用いられた態様が示されているに過ぎず、そこには耐熱性の改善を目的とする本願発明の技術的思想は開示されているものではない。また、この特許文献に開示された発明では、TFE 74.0モル%というようにTFE含量が多くなっているためゴム硬度が80以上と大変硬くなっており、組付け時に問題が発生する可能性が高いといった課題がある。前述のとおり、一般に組付けに望ましい硬さ(Duro A, PEAK)は75以下が目安とされている。
【0030】
含フッ素エラストマーには、特許文献5~6に記載される如き、一般式
HON=C(NH2)(CF2)nC(NH2)=NOH
n:1~10
で表されるビスアミドキシム化合物または2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが加硫剤として、含フッ素エラストマー100重量部当り0.2~5重量部、好ましくは0.5~2重量部の割合で添加して用いられる。
【0031】
以上の必須成分よりなる含フッ素エラストマー組成物の調製は、例えば2本ロール等を用いて約30~100℃で混練することにより行われ、それの架橋は、約100~250℃で約10~120分間加熱することによって行われる。二次加硫を行う場合には、約90~300℃で行われ、下記実施例に記載される如く、段階的な昇温でオーブン加硫が行われることが好ましい。
【実施例0032】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は効果を含めてこの実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
TFE/PMVE/パーフルオロ(3-オキサ-8-シアノ-1-オクテン)〔CPeVE;CF2=CFO(CF2)4CN〕=65.4/33.3/1.3モル%の共重合組成からなる共重合体 100重量部に対し、下記ペリレン系顔料(Pigment violet 29)である3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド
0.4重量部およびビスアミドキシム化合物〔HON=C(NH2)(CF2)4C(NH2)=NOH〕1.4重量部を加え、2本ロールミル上で30~100℃の温度で混練した。混練物を180℃で30分間プレス加硫(一次加硫)した後、次の条件下でのオーブン加硫(二次加硫)を窒素ガス雰囲気下で行った。
90℃で4時間放置
90℃から204℃迄6時間かけて昇温
204℃で18時間放置
204℃から298℃迄3時間かけて昇温
298℃で8時間放置
【0034】
得られた加硫成形物について、常態物性の測定、圧縮永久歪の測定、分散性の確認を行った。
常態物性:ASTM D2240に対応するJIS K6253-3(硬度)
ISO 37に対応するJIS K6251(引張試験)
硬度は75以下が好ましい
圧縮永久歪:ASTM Method B;P-24 Oリングについて、300℃で168時間、336時間ま
たは500時間の条件下で測定した
圧縮永久歪は、300℃、500時間で50%以下であることが好ましい
分散性:2本ロールミル上で混練後、混練物を2mmの厚みで分出しし、混練物1kg中
に黙視で確認される顔料凝集塊をカウントした
凝集塊は破断起点となり得るため、5個以下を○、6個以上を×と評価し
【0035】
実施例2
実施例1において、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド量が1重量部に変更されて用いられた。
【0036】
実施例3
実施例1において、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド量が3重量部に変更されて用いられた。
【0037】
比較例1
実施例1において、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド量が5重量部に変更されて用いられた。
【0038】
実施例4
実施例1において、ペリレン系顔料の代わりに、下記ナフタレンカルボアミド系顔料(Pigment Red 166)
が同量(0.4重量部)用いられた。
【0039】
実施例5
実施例4において、ナフタレンカルボアミド系顔料量が1重量部に変更されて用いられた。
【0040】
実施例6
実施例4において、ナフタレンカルボアミド系顔料量が3重量部に変更されて用いられた。
【0041】
比較例2
実施例4において、ナフタレンカルボアミド系顔料量が5重量部に変更されて用いられた。
【0042】
実施例7
実施例1において、ペリレン系顔料の代わりに、下記ピリミジントリオン系顔料(Pigment Orange 64)
が同量(0.4重量部)用いられた。
【0043】
実施例8
実施例7において、ピリミジントリオン系顔料量が1重量部に変更されて用いられた。
【0044】
実施例9
実施例7において、ピリミジントリオン系顔料量が3重量部に変更されて用いられた。
【0045】
比較例3
実施例7において、ピリミジントリオン系顔料量が5重量部に変更されて用いられた。
【0046】
実施例10
実施例1において、ペリレン系顔料の代わりに、下記ベンゾイミダゾロン系顔料(Pigment Yellow 192)
が同量(0.4重量部)用いられた。
【0047】
実施例11
実施例10において、ベンゾイミダゾロン系顔料量が1重量部に変更されて用いられた。
【0048】
実施例12
実施例10において、ベンゾイミダゾロン系顔料料量が3重量部に変更されて用いられた。
【0049】
比較例4
実施例10において、ベンゾイミダゾロン系顔料量が5重量部に変更されて用いられた。
【0050】
比較例5
実施例1において、ペリレン系顔料が用いられなかった。
【0051】
以上の実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明で用いられる含フッ素エラストマー組成物を加硫成形して得られたOリング等のシール材は、300℃以上といった高温条件下においても耐熱性に優れ、良好なシール性を保持し得る。
【0053】
そのため、プラズマ照射用途である半導体製造装置用のゲートバルブ用途のシール材等として有効に用いられる。また、シリコンウェハーの表面処理加工室の面シール、例えばチャンバーとチャンバーとの連結面あるいはチャンバーとゲート(扉)との接合面に適用され、真空を維持するためのOリングやパッキン等としても、有効に用いられる。