(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101546
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ジシアノメチリデン化合物、その製造法、電気光学用組成物、電気光学膜及び電気光学素子
(51)【国際特許分類】
C07D 333/24 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
C07D333/24 CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217540
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2023005424
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】山縣 拓也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐熱性の高い電気光学化合物として有用な化合物及びその製造方法、また、前記化合物を含む電気光学材料及び電気光学素子を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるジシアノメチリデン化合物である。
具体的には、例えば下記反応式の反応生成物が示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるジシアノメチリデン化合物:
【化1】
式(1)中、
Arは炭素数6~18の芳香族炭化水素基又は炭素数3~18のヘテロ芳香族基を表し、前記芳香族炭化水素基及び前記ヘテロ芳香族基は、各々独立に、重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基及び炭素数7~12のアラルキルオキシ基からなる群から選択される置換基で一つ以上置換されていてもよく、前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;
R
1は水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基及び前記アラルキルオキシ基は、メタクリル基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びブロモ基からなる群から選択される置換基で一つ以上置換されていてもよい;
R
2は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数3~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、ここで、2つのR
2はフェニル基内の隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;
R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、重水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロアルキル基、炭素数1~12のヒドロキシアルキル基、炭素数3~8のアシルオキシアルキル基、炭素数4~13のトリアルキルシリルオキシアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基又は炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表し、R
3及びR
4は結合する窒素原子と一体となって複素環を形成してもよく、前記R
2及びR
3又は前記R
2及びR
4は結合する炭素原子と一体となって、五~六員環を形成してもよい;
R
5は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のハロアルキル基を表す;
R
6は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す;
k及びmは、各々独立に、1~3の整数を表す;
nは、0~2の整数を表す;
qは、1~3の整数を表す;
rは、0~2の整数を表す:
【請求項2】
Arが、炭素数6~12の芳香族炭化水素基又は炭素数3~12のヘテロ芳香族基であり、前記芳香族炭化水素基及び前記ヘテロ芳香族基は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基及び炭素数1~6のアルコキシ基からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよく、前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって環を形成してもよい、請求項1に記載のジシアノメチリデン化合物。
【請求項3】
R1が、水素原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基又はヒドロキシ基であり;
R2が、同一又は相異なって、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基又はヒドロキシ基である、請求項1に記載のジシアノメチリデン化合物。
【請求項4】
R3及びR4が、各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロアルキル基又は炭素数1~12のヒドロキシアルキル基である、請求項1に記載のジシアノメチリデン化合物。
【請求項5】
R5が、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~4のハロアルキル基であり;
R6が、同一又は相異なっていてもよく、水素原子又はハロゲン原子である、請求項1に記載のジシアノメチリデン化合物。
【請求項6】
k及びmが、1であり;
nが、1であり;
qが、1であり;
rが、0である、請求項1に記載のジシアノメチリデン化合物。
【請求項7】
式(1)で示されるジシアノメチリデン化合物が下式(1-1)、(1-10)、(1-65)又は(1-73)で表される、請求項1に記載のジシアノメチリデン化合物。
【化2】
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のジシアノメチリデン化合物を含む、電気光学組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のジシアノメチリデン化合物と、前記化合物が分散されるホスト材料とを含有しており、前記ホスト材料は、前記ジシアノメチリデン化合物との間に共有結合を形成し得る反応性官能基を有する樹脂を含有し、前記化合物の少なくとも一部は、前記樹脂と結合している電気光学組成物。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載のジシアノメチリデン化合物によって形成される膜を有する電気光学素子。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載のジシアノメチリデン化合物によって形成される光導波路を有する電気光学素子。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載のジシアノメチリデン化合物を含む電気光学素子。
【請求項13】
請求項8に記載の電気光学組成物によって形成される膜を有する電気光学素子。
【請求項14】
請求項8に記載の電気光学組成物によって形成される光導波路を有する電気光学素子。
【請求項15】
請求項9に記載の電気光学組成物によって形成される膜を有する電気光学素子。
【請求項16】
請求項9に記載の電気光学組成物によって形成される光導波路を有する電気光学素子。
【請求項17】
一般式(2)で表されるアルキン化合物:
【化3】
式(2)中、
Arは炭素数6~18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~18のヘテロ芳香族基を表し、前記芳香族炭化水素基及び前記ヘテロ芳香族基は、各々独立に重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基及び炭素数7~12のアラルキルオキシ基からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよく、前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;
R
1は水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基及び前記アラルキルオキシ基は、メタクリル基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びブロモ基からなる群から選択される置換基で一つ以上置換されていてもよい;
R
2は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数3~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、ここで、2つのR
2はフェニル基内の隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;
R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、重水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロアルキル基、炭素数1~12のヒドロキシアルキル基、炭素数3~8のアシルオキシアルキル基、炭素数4~13のトリアルキルシリルオキシアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基又は炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表し、R
3及びR
4は結合する窒素原子と一体となって複素環を形成してもよく、前記R
2及びR
3又は前記R
2及びR
4は結合する炭素原子と一体となって、五~六員環を形成してもよい;
R
5は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のハロアルキル基を表す;
k及びmは、各々独立に、1~3の整数を表す;
qは、1~3の整数を表す;
rは、0~2の整数を表す:
と、一般式(3)で表されるシアノオレフィン化合物:
【化4】
式(3)中、
R
6は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す;
nは、0~2の整数を表す:
と、を反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化5】
(式中、Ar、R
1~R
6、k、m、n、q及びrは、前記と同じ意味を表す。)で示されるジシアノメチリデン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性の高い電気光学化合物として有用なジシアノメチリデン化合物及びその製造方法に関するものである。また、前記化合物を含む電気光学材料及び電気光学素子に関するものである
【背景技術】
【0002】
光変調器、光スイッチ、光インターコネクト、光電子回路、波長変換、電界センサー、THz(テラヘルツ)波発生及び検出、光フェーズドアレイ等の光制御素子(光学素子)に適用できる電気光学(以下、「EO」と省略する場合がある。)材料として、従来、無機強誘電体電気光学材料が使用されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、無機強誘電体電気光学材料は、高速性及び小型化・集積化の点において限界がある。そのため、次世代の超高速光通信を実現するために、高速動作が可能で、かつシリコンフォトニクスとハイブリッドが可能な材料が必要とされている。
【0003】
このような観点から、有機電気光学材料が注目されている。有機電気光学材料は、無機強誘電体電気光学材料に比べて大きな電気光学効果を示し、高速動作が可能であること、及びシリコンフォトニクスとのハイブリッドによって小型化・集積化が可能であることから、次世代の光通信を担う材料として期待されている。
【0004】
有機電気光学材料は、電気光学活性を有する化合物(以下に単に「電気光学化合物」という)を高分子材料等のホスト材料に分散又は結合させることによって得られる。
【0005】
電気光学化合物は、基本構造としてドナーとアクセプターとをπ共役ブリッジで連結した構造を有している。電気光学材料の電気光学係数を高めるためには、電子供与性の高いドナー及び電子吸引性の高いアクセプターを具え、長いπ共役ブリッジを有する電気光学化合物を選択するのが効果的なことが知られており、このような構造を有する電気光学化合物としては、種々の構造を有するものが報告されている(例えば、特許文献2~4、非特許文献1等)。
【0006】
また、電気光学材料によって光導波路が形成された電気光学素子を作製するに際しては、電気光学材料の2次のEO活性を生じさせるためにEO化合物に対して配向処理を施す場合がある。EO化合物の配向処理方法としては、一般に電界ポーリング法が用いられる。電界ポーリング法とは、EO材料に電界を印加し、EO化合物の双極子モーメントと印加電界とのクーロン力によって、EO化合物を印加電界方向に配向させる方法である。このような電界ポーリング法では、通常、ホスト材料のガラス転移温度付近の温度まで加熱し、EO化合物の分子運動を促進した状態で電界が印加される。したがって、優れたEO性能を発揮するEO素子を得るためには、EO化合物が優れたEO特性を有することに加え、EO化合物が配向処理における加熱によって変質しない耐熱性を有することが要求される。
【0007】
さらに、電子回路の高速性の要求から電子回路間を光回路で接続することによる信号伝達の速度を向上させる取り組みが行われており、EO材料を用いたEO素子を電気信号及び光信号の変換に用いることが検討されている。このとき、高速で動作する電子回路は高温となることから、非線形光学化合物の分子運動が盛んになり、配向が緩和してしまうおそれがある。そのため、ホスト材料としては、より高いガラス転移温度を有するものが要求され、それに伴いEO化合物もより高い温度での耐熱性(熱安定性)が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許7134378号公報
【特許文献2】特表2004-501159号公報
【特許文献3】特許5945905号公報
【特許文献4】特開2022-97407号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chem.Mater.2008年,120巻,6372-6377頁.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のEO化合物は耐熱性(熱安定性)が充分でなく、一定以上の高温条件で分解するため、素子化などの加工プロセス条件が限定されてしまうおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、耐熱性に優れる化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、このような化合物を用いた電気光学膜、及び電気光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、ドナー/π共役ブリッジ/アクセプター構造におけるアクセプター構造において、フェニルエチリデンマロノニトリル及び所定の構造を導入することで、耐熱性に優れるEO化合物を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち本発明は、
[1]
一般式(1)で表されるジシアノメチリデン化合物:
【0014】
【化1】
式(1)中、
Arは炭素数6~18の芳香族炭化水素基又は炭素数3~18のヘテロ芳香族基を表し、前記芳香族炭化水素基及び前記ヘテロ芳香族基は、各々独立に、重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基及び炭素数7~12のアラルキルオキシ基からなる群から選択される置換基で一つ以上置換されていてもよく、前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;
R
1は水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基及び前記アラルキルオキシ基は、メタクリル基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びブロモ基からなる群から選択される置換基で一つ以上置換されていてもよい;
R
2は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数3~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、ここで、2つのR
2はフェニル基内の隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;
R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、重水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロアルキル基、炭素数1~12のヒドロキシアルキル基、炭素数3~8のアシルオキシアルキル基、炭素数4~13のトリアルキルシリルオキシアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基又は炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表し、R
3及びR
4は結合する窒素原子と一体となって複素環を形成してもよく、前記R
2及びR
3又は前記R
2及びR
4は結合する炭素原子と一体となって、五~六員環を形成してもよい;
R
5は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のハロアルキル基を表す;
R
6は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す;
k及びmは、各々独立に、1~3の整数を表す;
nは、0~2の整数を表す;
qは、1~3の整数を表す;
rは、0~2の整数を表す:
[2]
Arが、炭素数6~12の芳香族炭化水素基又は炭素数3~12のヘテロ芳香族基であり、前記芳香族炭化水素基及び前記ヘテロ芳香族基は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基及び炭素数1~6のアルコキシ基からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよく、前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって環を形成してもよい、[1]に記載のジシアノメチリデン化合物。
[3]
R
1が、水素原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基又はヒドロキシ基であり;
R
2が、同一又は相異なって、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、シリルオキシ基又はヒドロキシ基である、[1]又は[2]に記載のジシアノメチリデン化合物。
[4]
R
3及びR
4が、各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロアルキル基又は炭素数1~12のヒドロキシアルキル基である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物。
[5]
R
5が、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~4のハロアルキル基であり;
R
6が、同一又は相異なっていてもよく、水素原子又はハロゲン原子である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物。
[6]
k及びmが、1であり;
nが、1であり;
qが、1であり;
rが、0である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物。
[7]
式(1)で示されるジシアノメチリデン化合物が下式(1-1)、(1-10)、(1-65)又は(1-73)で表される、[1]~[6]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物。
【0015】
【化2】
[8]
[1]~[7]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物を含む、電気光学組成物。
[9]
[1]~[7]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物と、前記ジシアノメチリデン化合物が分散されるホスト材料とを含有しており、前記ホスト材料は、前記ジシアノメチリデン化合物との間に共有結合を形成し得る反応性官能基を有する樹脂を含有し、前記化合物の少なくとも一部は、前記樹脂と結合している電気光学組成物。
[10]
[1]~[7]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物によって形成される膜を有する電気光学素子。
[11]
[1]~[7]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物によって形成される光導波路を有する電気光学素子。
[12]
[1]~[7]のいずれか1項に記載のジシアノメチリデン化合物を含む電気光学素子。
[13]
[8]に記載の電気光学組成物によって形成される膜を有する電気光学素子。
[14]
[8]に記載の電気光学組成物によって形成される光導波路を有する電気光学素子。
[15]
[9]に記載の電気光学組成物によって形成される膜を有する電気光学素子。
[16]
[9]に記載の電気光学組成物によって形成される光導波路を有する電気光学素子。
[17]
一般式(2)で表されるアルキン化合物:
【0016】
【化3】
式(2)中、
Arは炭素数6~18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~18のヘテロ芳香族基を表し、前記芳香族炭化水素基及び前記ヘテロ芳香族基は、各々独立に重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基及び炭素数7~12のアラルキルオキシ基からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよく、前記置換基は隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;
R
1は水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基及び前記アラルキルオキシ基は、メタクリル基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びブロモ基からなる群から選択される置換基で一つ以上置換されていてもよい;
R
2は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数3~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、ここで、2つのR
2はフェニル基内の隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;
R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、重水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロアルキル基、炭素数1~12のヒドロキシアルキル基、炭素数3~8のアシルオキシアルキル基、炭素数4~13のトリアルキルシリルオキシアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基又は炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表し、R
3及びR
4は結合する窒素原子と一体となって複素環を形成してもよく、前記R
2及びR
3又は前記R
2及びR
4は結合する炭素原子と一体となって、五~六員環を形成してもよい;
R
5は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のハロアルキル基を表す;
k及びmは、各々独立に、1~3の整数を表す;
qは、1~3の整数を表す;
rは、0~2の整数を表す:
と、一般式(3)で表されるシアノオレフィン化合物:
【0017】
【化4】
式(3)中、
R
6は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す;
nは、0~2の整数を表す:
と、を反応させることを特徴とする、一般式(1)
【0018】
【化5】
(式中、Ar、R
1~R
6、k、m、n、q及びrは、前記と同じ意味を表す。)で示されるジシアノメチリデン化合物の製造方法。
【0019】
本発明のジシアノメチリデン化合物(1)におけるAr、R1~R6、k、m、n、q及びrの定義について説明する。
【0020】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基としては、単環、連結、又は縮環のいずれでもよく、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の収率が良い点で、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0021】
Arで表される炭素数6から18のヘテロ芳香族基としては、単環、連結、又は縮環のいずれでもよく、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、ナジチリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナントリジニル基、ピロリル基、インドリル基、インドリジニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾカルボリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾジフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾジチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアザリル基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の性能が良い点で、フラニル基、ベンゾジフラニル基、チエニル基又はベンゾジチエニルが好ましく、フラニル基又はチエニル基がより好ましく、チエニル基がさらに好ましい。
【0022】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基及び炭素数6から18のヘテロ芳香族基は、炭素数1~8のアルキル基で置換されていてもよい。前記炭素数1から8のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、メチル基、シクロヘキシルメチル基、エチル基、2-シクロペンチルエチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、3-シクロプロピルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2-ブチル基、3-メチルブタン-2-イル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2-ペンチル基、2-メチルペンタン-2-イル基、4,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-ペンチル基、3-エチルペンタン-3-イル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-ヘキシル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、5,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、3-ヘキシル基、2,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、オクチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点でメチル基又はヘキシル基が好ましく、メチル基がより好ましい。前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい。前記五員環又は六員環は、シクロヘキシル環やベンゼン環などを例示することができる。
【0023】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基及び炭素数6から18のヘテロ芳香族基は、炭素数1~8のアルコキシ基で置換されていてもよい。前記炭素数1~8のアルコキシ基は、直鎖状または分岐状のアルコキシ基のいずれでもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソプロポキシ基、2-メチルプロピルオキシ基、2-ブチルオキシ基、tert-ブトキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、メトキシ基が好ましい。前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい。五員環又は六員環は、ジオキサン環などを例示することができる。
【0024】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基及び炭素数6から18のヘテロ芳香族基は、炭素数6~10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。前記炭素数6~10の芳香族炭化水素基は、単環、連結、又は縮環のいずれでもよく、フェニル基、ナフチル基などを例示することができる。
【0025】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基及び炭素数6から18のヘテロ芳香族基は、炭素数2~6のアルケニル基で置換されていてもよい。前記炭素数2~6のアルケニル基は、直鎖状または分岐状のアルケニル基のいずれでもよく、エテニル基、2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基などを例示することができる。
【0026】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基及び炭素数6から18のヘテロ芳香族基は、炭素数1~8のハロアルキル基で置換されていてもよい。前記炭素数1~8のハロアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状ハロアルキル基のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロシクロブチル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(ペルフルオロエチル)プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-(ペルフルオロエチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキシル基、5,5,6,6,6-ペンプタフルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、2-クロロエチル基、3-ブロモプロピル基などを例示することができる。
【0027】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基及び炭素数6から18のヘテロ芳香族基は、炭素数7~12のアラルキル基で置換されていてもよい。前記炭素数7~12のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基などを例示することができる。
【0028】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基及び炭素数6から18のヘテロ芳香族基は、炭素数6~10のアリールオキシ基で置換されていてもよい。前記炭素数6~10のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基などを例示することができる。
【0029】
Arで表される炭素数6から18の芳香族炭化水素基及び炭素数6から18のヘテロ芳香族基は、炭素数7~12のアラルキルオキシ基で置換されていてもよい。前記炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、α-メチルベンジルオキシ基、α,α-ジメチルベンジルオキシ基などを例示することができる。
【0030】
Arは、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、炭素数6~12の芳香族炭化水素基又は炭素数3~12のヘテロ芳香族基であり、前記芳香族炭化水素基及び前記ヘテロ芳香族基は、各々独立に、炭素数1~6のアルキル基及び炭素数1~6のアルコキシ基からなる群から選択される置換基で1つ以上置換されていてもよく、前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって環を形成してもよい、のが好ましく、チオフェン又はチエノチオフェンがより好ましく、チオフェンがさらに好ましい。
【0031】
R1で表される炭素数1~8のアルコキシ基としては、Arで例示した炭素数1~8のアルコキシ基と同様のものを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の性能が良い点で、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0032】
R1で表される炭素数6~12のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基などを例示することができる。
【0033】
R1で表される炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の性能が良い点で、ベンジルオキシ基が好ましい。
【0034】
R1で表される炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリプロピルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、トリブチルシリルオキシ基、tert-ブチルジメチルシリルオキシ基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、トリメチルシリルオキシ基又はtert-ブチルジメチルシリルオキシ基が好ましい。
【0035】
R1で表される炭素数2~6のアルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、4-ペンテニルオキシ基、5-ヘキセニルオキシ基などを例示することができる。
【0036】
R1で表される炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基としては、エテニルカルボニルオキシ基、1-プロペニルカルボニルオキシ基、2-プロペニルカルボニルオキシ基、1-メチル-1-エテニルカルボニルオキシ基、1-ブテニルカルボニルオキシ基、2-ブテニルカルボニルオキシ基、3-ブテニルカルボニルオキシ基、シクロブテニルカルボニルオキシ基などを例示することができる。
【0037】
R1で表される炭素数3~6のアルキニルオキシ基としては、プロパルギルオキシ基、1-ブチン-3-イルオキシ基、2-ブチニルオキシ基、3-ブチニルオキシ基、2-ペンチニルオキシ基、3-ペンチニルオキシ基、4-ペンチニルオキシ基、2-ヘキシニルオキシ基、3-ヘキシニルオキシ基、4-ヘキシニルオキシ基、5-ヘキシニルオキシ基などを例示することができる。
【0038】
R1は、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の性能が良い点で、水素原子、炭素数1~6のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基又はヒドロキシ基が好ましく、メトキシ基又はベンジルオキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0039】
R2で表される炭素数1~8のアルキル基としては、Arで例示した炭素数1~8のアルキル基と同様のものを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0040】
R2で表される炭素数1~8のアルコキシ基としては、Arで例示した炭素数1~8のアルコキシ基と同様のものを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の性能が良い点で、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0041】
R2で表される炭素数6~12のアリールオキシ基としては、R1で例示した炭素数6~12のアリールオキシ基と同様のものを例示することができる。
【0042】
R2で表される炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、R1で例示した炭素数7~12のアラルキルオキシ基と同様のものを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の性能が良い点で、ベンジルオキシ基が好ましい。
【0043】
R2で表される炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基としては、R1で例示した炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基と同様のものを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、トリメチルシリルオキシ基又はtert-ブチルジメチルシリルオキシ基が好ましい。
【0044】
R2で表される炭素数2~6のアルケニルオキシ基としては、R1で例示した炭素数2~6のアルケニルオキシ基と同様のものを例示することができる。
【0045】
R2で表される炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基としては、R1で例示した炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基と同様のものを例示することができる。
【0046】
R2で表される炭素数3~6のアルキニルオキシ基としては、R1で例示した炭素数3~6のアルキニルオキシ基と同様のものを例示することができる。
【0047】
2つのR2は隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよく、前記五員環又は六員環としては、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環などを例示することができ、得られる化合物(1)の収率が良い点でベンゼン環が好ましい。
【0048】
R2は、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、シリルオキシ基又はヒドロキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0049】
R3及びR4で表される炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、メチル基、シクロヘキシルメチル基、エチル基、2-シクロペンチルエチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、3-シクロプロピルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2-ブチル基、3-メチルブタン-2-イル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2-ペンチル基、2-メチルペンタン-2-イル基、4,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-ペンチル基、3-エチルペンタン-3-イル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-ヘキシル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、5,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、3-ヘキシル基、2,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、オクチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、シクロオクチル基又はビシクロ[2.2.2]オクチル基、ドデシル基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、メチル基、ブチル基、ヘキシル基又はオクチル基が好ましく、メチル基又はブチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0050】
R3及びR4で表される炭素数1~12のハロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状ハロアルキル基のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロシクロブチル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(ペルフルオロエチル)プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-(ペルフルオロエチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロヘキシル基、5,5,6,6,6-ペンプタフルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、2-クロロエチル基、3-ブロモプロピル基などを例示することができる。
【0051】
R3及びR4で表される炭素数1~12のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、6-ヒドロキシヘキシル基、8-ヒドロキシオクチル基、10-ヒドロキシデシル基、12-ヒドロキシドデシル基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の分散性が良い点で、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、4-ヒドロキシブチル基、6-ヒドロキシヘキシル基が好ましく、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキエチル基又は4-ヒドロキブチル基がより好ましく、2-ヒドロキシエチル基又は4-ヒドロキシブチル基がさらに好ましく、4-ヒドロキシブチル基が特に好ましい。
【0052】
R3及びR4で表される炭素数3~8のアシルオキシアルキル基としては、2-アセトキシエチル基、3-アセトキシ-n-プロピル基、4-アセトキシ-n-ブチル基、5-アセトキシ-n-ペンチル基、6-アセトキシ-n-ヘキシル基、2-プロピオニルオキシエチル基、3-プロピオニルキシ-n-プロピル基、4-プロピオニルキシ-n-ブチル基などを例示することができ、得られる化合物(1)の合成が容易な点で炭素数3~6のアシルオキシアルキル基が好ましい。
【0053】
R3及びR4で表される炭素数4~13のトリアルキルシリルオキシアルキル基としては、トリメチルシリルオキシメチル基、トリメチルシリルオキシメチル基、トリメチルシリルオキシエチル基、トリメチルシリルオキシプロピル基などを例示することができる。
【0054】
R3及びR4で表される炭素数1~12のアミノアルキル基としては、アミノメチル基、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基、(N,N-ジメチルアミノ)メチル基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル基、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)ブチル基、(N,N-ジエチルアミノ)メチル基、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル基、3-(N,N-ジエチルアミノ)プロピル基、4-(N,N-ジエチルアミノ)ブチル基などを例示することができる。
【0055】
R3及びR4で表される炭素数6~18の芳香族炭化水素基としては、Arで例示した炭素数6~18の芳香族炭化水素基と同様のものを例示することができ、得られる化合物(1)の合成が容易な点で、フェニル基が好ましい。
【0056】
R3及びR4は、結合する窒素原子と一体となって、複素環を形成してもよく、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環としては、カルバゾールなどを例示することができる。前記R2及びR3又は前記R2及びR4は結合する炭素原子と一体となって、五~六員環を形成してもよい;
R2及びR3又は前記R2及びR4は結合する炭素原子と一体となって、五~六員環を形成してもよく、ジュロリジンなどを例示することができる。
【0057】
R3及びR4は、得られる化合物(1)の合成が容易な点で、各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロアルキル基又は炭素数1~12のヒドロキシアルキル基が好ましく、メチル基、ブチル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0058】
R5で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の性能が良い点でフッ素原子が好ましい。
【0059】
R5で表される炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メチル基、シクロヘキシルメチル基、エチル基、2-シクロペンチルエチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点でメチル基が好ましい。
【0060】
R5で表される炭素数1~4のハロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状ハロアルキル基のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の性能が良い点でトリフルオロメチル基が好ましい。
【0061】
R5は、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のハロアルキル基が好ましく、水素原子又はフッ素原子がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0062】
R6で表されるハロゲン原子としては、R5で例示したハロゲン原子と同様のものを例示することができ、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、フッ素原子が好ましい。
【0063】
R6は、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、水素原子又はフッ素原子がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0064】
k及びmは、各々独立に、1~3の整数を表し、得られる化合物(1)の合成が容易な点で、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0065】
nは、0~2の整数を表し、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
【0066】
qは、1~3の整数を表し、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0067】
rは、0~2の整数を表し、得られるジシアノメチリデン化合物(1)の合成が容易な点で、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0068】
本発明の化合物(1)としては、特に限定するものではなく、以下の1-1~1-75に示す構造の化合物を具体的に例示することができる。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【化10】
なお本明細書中、Meはメチル基を表す。
【0074】
本発明のジシアノメチリデン化合物(1)としては、合成が容易な点で1-1~1-11、1-26~1-28、1-30、1-33、1-51、1-59~1-61、又は1-67~1-75で表される化合物が好ましく、1-1~1-6、1-10、1-26、1-30、1-59、1-60、1-61、1-65、1-67、又は1-70~1-73で表される化合物がより好ましく、1-1、1-10、1-65又は1-73で表される化合物がさらに好ましく、1-1、1-10又は1-73で表される化合物が特に好ましい。
【0075】
次に、本発明のジシアノメチリデン化合物(1)の製造法(以下、本発明の製造方法と称する。)について説明する。
【0076】
本発明のジシアノメチリデン化合物(1)は、次の反応式に示される工程1により製造することができる。
【0077】
【化11】
(式中、Arは炭素数6~18の芳香族炭化水素基又は炭素数3~18のヘテロ芳香族基を表し、前記芳香族炭化水素基及び前記ヘテロ芳香族基は、各々独立に、重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~8のハロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~10のアリールオキシ基及び炭素数7~12のアラルキルオキシ基からなる群から選択される置換基で一つ以上置換されていてもよく、前記置換基はAr分子内で隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;R
1は水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基及び前記アラルキルオキシ基は、メタクリル基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びブロモ基からなる群から選択される置換基で一つ以上置換されていてもよい;R
2は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数3~12のトリアルキルシリルオキシ基、炭素数3~6のアルケニルオキシ基、炭素数2~6のアルケニルカルボニルオキシ基、炭素数3~6のアルキニルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、ここで、2つのR
2はフェニル基内の隣接する2つの炭素原子と一体となって、五員環又は六員環を形成してもよい;R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、重水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のハロアルキル基、炭素数1~12のヒドロキシアルキル基、炭素数3~8のアシルオキシアルキル基、炭素数4~13のトリアルキルシリルオキシアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基又は炭素数6~18の芳香族炭化水素基を表し、R
3及びR
4は結合する窒素原子と一体となって複素環を形成してもよく、前記R
2及びR
3又は前記R
2及びR
4は結合する炭素原子と一体となって、五~六員環を形成してもよい;
R
5は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のハロアルキル基を表す;R
6は、同一又は相異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す;k及びmは、各々独立に、1~3の整数を表す;nは、0~2の整数を表す;qは、1~3の整数を表す;rは、0~2の整数を表す。)
工程1は、アルキン化合物(2)とシアノオレフィン化合物(3)とを反応させ、本発明のジシアノメチリデン化合物(1)を製造する工程である。
【0078】
工程1に用いるアルキン化合物(2)としては、例えば、以下の2-1から2-9に示す構造の化合物を具体的に示すことができる。
【0079】
【化12】
合成が容易な点で2-1~2-6で表される化合物が好ましく、2-1及び2-2で表される化合物がより好ましい。アルキン化合物(2)は、当業者の良く知る汎用的方法や、参考例に記載の方法を用いて製造することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0080】
工程1に用いるシアノオレフィン化合物(3)としては、例えば、以下の3-1から3-3に示す構造の化合物を具体的に示すことができる。
【0081】
【化13】
入手が容易な点で3-1及び3-2で表される化合物が好ましく、3-2で表される化合物がより好ましい。化合物(3)は、当業者の良く知る汎用的方法を用いて製造することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0082】
工程1で用いるアルキン化合物(2)とシアノオレフィン化合物(3)とのモル比に特に制限はなく、収率がよい点でアルキン化合物(2):シアノオレフィン化合物(3)のモル比が10:1から1:10の範囲にあることが好ましく、2:1から1:2の範囲にあることがより好ましく、1:1であることがさらに好ましい。
【0083】
工程1は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。このような溶媒としては、具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、アニソール、テトラリン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1-クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、オクタノール等のアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア、ジメチルスルホキシド(DMSO)を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。本発明の化合物(1)の反応収率がよい点でトルエン、キシレン、ジクロロエタン、又はジクロロメタンが好ましく、トルエンがより好ましい。
【0084】
工程1を実施する際の反応温度には特に制限はなく、通常は0から230℃から適宜選択された温度にて実施することができ、本発明のジシアノメチリデン化合物(1)の反応収率が良い点で60から110℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0085】
工程1を実施する際の反応時間には特に制限はなく、通常は1から72時間から適宜選択された時間にて実施することができ、本発明のジシアノメチリデン化合物(1)の反応収率が良い点で6から24時間から適宜選択された時間にて実施することが好ましい。
【0086】
本発明のジシアノメチリデン化合物(1)は、工程1の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華又は分取HPLC等で精製してもよい。
【0087】
次に、本発明のジシアノメチリデン化合物(1)を含む、電気光学用組成物、電気光学膜、電気光学素子(以下、それぞれ「本発明のEO用組成物、本発明のEO膜、本発明のEO素子」と称する。)について説明する。
【0088】
本実施形態のEO用組成物、EO膜、及びEO素子は、公知の方法(例えば、Oh et al.,IEEE Journal of Selected Topics inQuantum Electronics,Vol.7,No.5,pp.826-835,Sept./Oct.2001;Dalton et al.,Journalof Materials Chemistry,1999,9,pp.1905-1920;戒能俊邦、電子情報通信学会論文誌,C Vol.J84-C,No.9,pp.744-755,2001年9月;Ma et al.,Advanced Materials,Vol.14,No.19,2002,pp.1339-1365等に記載の方法)によって製造することができる。
【0089】
本実施形態のEO用組成物は、本発明のジシアノメチリデン化合物(1)をEO化合物として含む。本実施形態のEO用組成物は、ジシアノメチリデン化合物(1)を分散させることが可能なホスト材料をさらに含んでいてもよい。一般に、優れたEO特性を示すためには、EO化合物がホスト材料中に高濃度で均一に分散されていることが重要である。そのため、ホスト材料は、EO化合物と高い相溶性を示すことが好ましい。本実施形態のEO用組成物は、EO膜を形成するため、又は、EO素子を形成するために好適に用いることができる。すなわち、本実施形態のEO用組成物は、EO膜形成用組成物又はEO素子形成用組成物であり得る。
【0090】
本発明のEO用組成物に用いるホスト材料の例としては、例えば、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)等のポリ(メタ)アクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、ジシアノメチリデン化合物(1)との相溶性に優れており、EO素子として用いる場合においては、透明性及び成形性も優れる傾向にある。
【0091】
ジシアノメチリデン化合物(1)をホスト材料に分散させる方法としては、例えば、ジシアノメチリデン化合物(1)とホスト材料とを適切な混合比で有機溶媒中に溶解させる方法等が挙げられる。
【0092】
ホスト材料は、ジシアノメチリデン化合物(1)との間に共有結合を形成し得る反応性官能基を有する樹脂を含んでいてもよい。さらに、ジシアノメチリデン化合物(1)の少なくとも一部が、前記反応性官能基を有する樹脂と結合していることが好ましい。このようなホスト材料を含むことにより、ジシアノメチリデン化合物(1)を高密度でホスト材料中に分散させることが可能であり、高いEO特性を達成することができる。
【0093】
反応性官能基としては、例えば、ハロアルキル基、ハロゲン化アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。前記反応性官能基は、ジシアノメチリデン化合物(1)中の、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基等と反応して共有結合を形成することができる。
【0094】
本実施形態のEO膜は、上記EO用組成物を用いて形成することができる。EO膜は、例えば、EO用組成物の有機溶媒溶液を、スピンコートによって基板上に塗布する工程と、得られた塗膜を加熱乾燥させる工程とを含む方法によって得ることができる。
【0095】
EO膜の厚さは、例えば、0.01~100μmであってよい。
【0096】
本実施形態のEO素子は、上記EO膜を備える。上述のとおり、EO化合物は、高い超分極率を有しながらも耐熱性に優れることから、本実施形態のEO素子は、優れたEO特性と長期間の使用に耐え得る優れた耐久性を有するものとなる。
【0097】
本実施形態のEO素子の用途は、上記EO膜を有するものであれば、光変調器に限定されない。本実施形態のEO素子は、光変調器(超高速用途、光インターコネクト用途、光信号処理用途等)に加えて、例えば、光スイッチ、光メモリー、波長変換器、マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波等の電界センサー、筋電、脳波等の生体電位センサー、光空間変調器、光スキャナなどに用いることができ、さらには、電子回路との組み合わせによって電子回路間の光による信号伝達等にも用いることができる。
【発明の効果】
【0098】
本発明によれば、耐熱性に優れるジシアノメチリデン化合物が提供される。そのため、前記ジシアノメチリデン化合物をEO素子の製造に用いることによって、ポーリング時の高温プロセス、膜配向固定のための熱硬化プロセス、実装時の高温プロセス等に必要とされる耐熱性を向上させることができ、素子製造のプロセス自由度を高くすることができる。また、本発明によれば、このような化合物を用いた電気光学用組成物、電気光学膜、及び電気光学素子が提供される。
【実施例0099】
以下、実施例、参考例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
[1H-NMR測定]
1H-NMRの測定には、Bruker ASCEND 400(400MHz;BRUKER社製)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)又は重DMSOを測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
[TG/DTA測定]
5%重量減少温度及び分解温度の測定は株式会社リガク製 示差走査熱量計 Thermo plus EVO2 DSCvestaを用いた。窒素ガス気流下(0.5L/分)、10℃/分の速度で温度を上昇させて、測定を行った。
[DSC測定(ガラス転移温度、結晶化温度、融点)]
ガラス転移温度、結晶化温度、及び融点の測定は株式会社リガク製 試料観察型示差熱-熱重量同時測定装置 Thermo plus EVO2 TG-DTA8122/Cを用いて行った。DSC測定におけるリファレンスは酸化アルミニウム(Al2O3)を使用した。
【0100】
試料を30℃から10℃/分の速度で温度を上昇させ、ガラス転移温度、結晶化温度、及び融点を測定した。
[質量分析]
質量分析はBruker compact QTOFを使用して測定を行った。
【0101】
試薬類は市販品を用いた。
【0102】
実施例-1
【0103】
【化14】
アルゴン雰囲気下で3-メトキシ-N,N-ジメチル-4-[(1E)-2-[5-(2-フェニルエチニル)チオフェン-2-イル]エテニル]アニリン(216mg、0.6mmol)と7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(125mg、0.6mmol)をトルエン(32mL)に溶解させ、80℃で16時間撹拌した。NMR、TLCによる反応追跡で目的物の生成を確認後、反応を停止させ、溶媒留去を行った。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=98:2)で精製し、さらにメタノールで洗浄することで暗褐色の粉末結晶状の目的物を収率59%で得た(1-1a,200mg)。
1H-NMR(DMSO-d
6):δ7.82-7.38(m,12H)、7.16(d,J=9.4Hz,2H)、6.46(dd,J=8.8,1.7Hz,1H)、6.26(d,J=1.7Hz,1H)、3.91(s,3H)、3.09(s,6H)
HRMS(ESI,m/z,[M+Na]
+):Calcd.For C
35H
25N
5OSNa:586.1672,Found:586.1669
得られた化合物(1-1a、10.2mg)のTG/DTAを測定した結果、分解温度は258℃であった。
【0104】
また得られた化合物(1-1a,7.4mg)のガラス転移温度は182℃、分解温度は261℃であり、融点及び結晶化温度は検出されなかった。
【0105】
実施例-2
【0106】
【化15】
アルゴン雰囲気下で、3-メトキシ-N,N-ジメチル-4-[(1E)-2-[5-(2-フェニルエチニル)チオフェン-2-イル]エテニル]アニリン(0.101g,0.281mmol)とテトラシアノエチレン(0.038g,0.297mmol)をトルエン(16mL)に溶解させ、80℃で24時間反応させた。溶媒を減圧除去した後にシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム)による精製を行い、目的物(1-65,60mg)を収率43%で得た。
1H-NMR(CDCl
3):δ7.78-7.76(m,2H),7.68-7.63(m,2H),7.58-7.52(m,3H),7.40(d,J=8.8Hz、1H),7.18-7.12(m,2H),6.33(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),6.13(d,J=2.3Hz,1H),3.93(s,3H),3.07(s,6H).
実施例-3
【0107】
【化16】
7,7,8,8,-テトラシアノキノジメタン(302mg,1.48mmol)を反応容器に加え、アルゴン雰囲気下で、キシレン(77mL)に溶解させた(E)-N-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)-3-メトキシ-N-メチル-4-(2-(5-(フェニルエチニル)チオフェン-2-イル)ビニル)アニリン(746mg,1.48mmol)を滴下した。その後、150℃に設定し一晩攪拌させた。溶媒を留去した後、ブタノールによる再結晶を行い、目的物を収率67%で得た。
1H-NMR(CDCl3):δ7.77-7.72(m,3H),7.53-7.46(m,6H),7.38(d,J=8.8Hz,2H),7.12(d,J=15.7Hz,2H),7.07(d,J=4.4Hz,1H),6.34(dd,J=9.0,2.1Hz,1H),6.16(d,J=2.2Hz,1H),3.92(s,3H),3.81(t,J=6.0Hz,2H),3.55(t,J=5.8Hz,2H),3.09(s,3H),0.88(s,9H),0.03(s,6H).
HRMS(APCI)calcd for C42H41N5O2SSi[M]:707.2750,found:707.2821.
実施例-4
【0108】
【化17】
(E)-2-(2-(5-(4-((2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシスチリル)チオフェン-2-イル)-2-(4-(ジシアノメチレン)シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-1-フェニルエチリデン)マロノニトリル(1.17g,1.65mmol)を反応容器に加え、95%塩酸エタノール溶液(20mL)を滴下した。室温で一晩撹拌させた後、クロロホルムで抽出し、有機層を水で三回、飽和食塩水で一回洗浄した。硫酸マグネシウムを加え撹拌を行った。硫酸マグネシウムをろ別後、溶媒留去を行い得られた黒色固体をエタノールで洗浄し、収率75%で目的物を得た。
1H-NMR(CDCl
3):δ7.65(brd,J=8.7Hz,2H),7.62-7.58(m,2H),7.53-7.38(m,8H),7.12(d,J=16.0Hz,2H),7.07(d,J=4.4Hz,1H),6.40(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),6.25(d,J=2.4Hz,1H),3.92(s,3H),3.90-3.87(m,2H),3.59(t,J=5.6Hz,2H),3.10(s,3H).
HRMS(APCI)calcd for C
36H
27N
5O
2S[M]:593.1885,found:593.1977.
参考例―1
【0109】
【化18】
アルゴン雰囲気下でテトラヒドロフラン(20mL)中にフェニルリチウム(3.5mL、7mmol)を加え0℃にした後、[(5-ブロモチオフェン-2-イル)メチル]トリフェニルホスホニウムブロミド(2.3g、4.5mmol)を加え撹拌し、溶解させた。そこにアルゴン雰囲気下で4-(ジメチルアミノ)-2-メトキシベンズアルデヒド(800mg、4.5mmol)のテトラヒドロフラン(3mL)溶液を加え、0℃で1.5時間撹拌し、さらに室温に昇温し2時間撹拌を行った。NMR、TLCによる反応追跡で目的物の生成を確認後、反応を停止させ、氷冷した水を加えクロロホルムで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加え撹拌した。硫酸マグネシウムをろ別後、溶媒留去を行い、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン=2:1)による精製を行うことにより、粗収率64%でE/Z混合体(E/Z比=0.57:0.43)の目的物を得た。
1H-NMR(CDCl
3):δ7.35(d,J=8.6Hz,0.57H)、7.22(d,J=8.5Hz,0.43H)、7.07(d,J=16.2Hz,0.57H)、6.98(d,J=16.0Hz,0.57H)、6.89(d,J=3.8Hz,0.57H)、6.83(d,J=3.8Hz,0.43H)、6.72(d,J=3.8Hz,0.43H)、6.69(d,J=3.8Hz,0.57H)、6.53(d,J=11.9Hz,0.43H)、6.48(d,J=11.5Hz,0.43H)、6.30(dd,J=16.5Hz、2.4Hz,0.57H)、0.63(d,J=2.4Hz,0.43H)、6.25(d,J=2.3Hz,0.43H)、6.20(d,J=2.4Hz,0.57H)、3.88(s,1.71H)、3.82(s,1.29H)、3.01(s,2.58H)、3.00(s,3.42H).
参考例―2
【0110】
【化19】
アルゴン雰囲気下で、4-[2-(5-ブロモチオフェン-2-イル)ビニル]-3-メトキシ-N,N-ジメチルアニリン(762mg、2.3mmol)、フェニルプロピオル酸(396mg、2.7mmol)、炭酸セシウム(880mg、2.7mmol)、X-Phos(21mg、45μmol)、酢酸パラジウム(5mg、23μmol)をTHF(25mL)に溶解させ、80℃に昇温し終夜攪拌を行った。10時間後、NMR、TLCより原料がなくなったことを確認し、反応を停止した。反応溶液の有機層をクロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄を行い、硫酸ナトリウムを加え撹拌を行った。硫酸ナトリウムをろ別後、溶媒留去を行い、シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン=2:1)で精製し、収率62%で目的物を得た(506mg)。
1H-NMR(CDCl
3):δ7.51-7.49(m,2H)、7.38(d,J=8.8Hz,1H)、7.36-7.30(m,3H)、7.19(d,J=16.2Hz,1H)、7.13(d,J=3.8Hz,1H)、7.05(d,J=16.0Hz,1H)、6.86(d,J=3.8Hz,1H)、6.32(dd,J=8.7Hz、2.4Hz,1H)、6.20(d,J=2.4Hz,1H)、3.89(s,3H)、3.01(s,6H).
参考例―3
【0111】
【化20】
4-((2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシベンズアルデヒド(3.48g,10.8mmol)、((5-ブロモチオフェン-2-イル)メチル)トリフェニルホスホニウム(8.71g,15.1mmol)、水素化ナトリウム(1.55g,64.6mmol)を反応容器に加え、アルゴン雰囲気下にした後THF(37mL)を滴下し、室温で一晩攪拌させた。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。得られた有機層を水で三回、洗浄し硫酸マグネシウムを加え攪拌を行った。硫酸マグネシウムをろ別後、溶媒留去を行い、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=10:90)で精製を行い、目的物のE/Z体を得た。その後、リサイクルHPLCによる異性体単離を三回に分けて行い、収率38%で目的物を得た。
1H-NMR(CDCl
3):δ7.32(d,J=8.6Hz,1H),7.06(d,J=16.2Hz,1H),6,97(d,J=16.2Hz,1H),6.89(d,J=3.8Hz,1H),6.29(dd,J=8.6,2.4Hz,1H),6.18(d,J=2.3Hz,1H)3.86(s,3H),3.78(t,J=6.18,2H),3.49(t,J=6.18,2H),3.02(s,3H)0.88(s,9H),0.03(s,6H).
HRMS(APCI)calcd for C
22H
32NO
2SSi [M+H
+]:482.1180,found:482.1177.
参考例―4
【0112】
【化21】
3-フェニルプロピオール酸(218mg,1.50mmol)、炭酸セシウム(487mg,1.50mmol)、酢酸パラジウム(II)(2.8mg,0.012mmol)、XPhos(11.9mg,0.025mmol)を反応容器に加え、アルゴン雰囲気下にした後、THF(20mL)に溶解させた。その後、THF(10mL)に溶解させた(E)-4-(2-(5-ブロモチオフェン-2-イル)ビニル)-N-(2-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)エチル)-3-メトキシ-N-メチルアニリン(601mg,1.25mmol)を滴下した。80℃に設定し、一晩攪拌させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチルで有機層を抽出した。得られた有機層を水で三回、飽和食塩水で一回洗浄し硫酸マグネシウムを加え攪拌を行った。硫酸マグネシウムをろ別後、溶媒留去を行い、活性炭処理を行った。その後、リサイクルHPLCによる異性体単離を行い、収率59%で目的物を得た。
1H-NMR(CDCl
3):δ7.51-7.49(m,2H),7.37-7.31(m,4H),7.18(d,J=16.2Hz,1H),7.13(d,J=3.8Hz,1H),7.04(d,J=16.2Hz,1H),6.85(d,J=3.8Hz,1H),6.30(dd,J=8.7,2.4Hz,1H),6.19(d,J=2.3Hz,1H),3.88(s,3H),3.79(t,J=6.1Hz,2H),3.50(t,J=6.2Hz,2H),3.03(s,3H),0.89(s,9H),0.03(s,6H).
HRMS(APCI)calcd for C
30H
37NO
2SSi[M]:503.2314,found:503.2370.
比較例―1
化合物NEO-823の評価
【0113】
【化22】
NEO-823(東京化成工業株式会社製)を用いて、TG/DTAを測定した結果、分解温度は209℃であった。
【0114】
またNEO-823(8.7mg)のガラス転移温度は178℃、融点は196℃であり、分解温度は208℃であり、結晶化温度は測定されなかった。
【0115】
以上の結果より、本発明のジシアノメチリデン化合物(1)は、比較例-1で得られた従来公知の有機電気光学材料と比べて高いガラス転移温度及び分解温度を有することから、優れた耐熱性を有することがわかった。さらに、本発明のジシアノメチリデン化合物(1)はその骨格の特徴から結晶性が低く、結晶化温度が検出されないか若しくは高い結晶化温度を有することがわかった。従ってジシアノメチリデン化合物(1)は薄膜形成時に高いアモルファス性が期待でき、ジシアノメチリデン化合物(1)を用いたEO素子を作製した際に高い駆動安定性を発揮すると推測される。
本発明のジシアノメチリデン化合物(1)は、光変調器(超高速用途、光インターコネクト用途、光信号処理用途等)に加えて、例えば、光スイッチ、光メモリー、波長変換器、マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波等の電界センサー、筋電、脳波等の生体電位センサー、光空間変調器、光スキャナなどに用いることができ、さらには、電子回路との組み合わせによって電子回路間の光による信号伝達等にも用いることができる。