IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電工産業電線株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-サイロ測温ケーブル 図1
  • 特開-サイロ測温ケーブル 図2
  • 特開-サイロ測温ケーブル 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101564
(43)【公開日】2024-07-29
(54)【発明の名称】サイロ測温ケーブル
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20240722BHJP
   G01K 7/22 20060101ALI20240722BHJP
   B65D 90/48 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G01K1/14 L
G01K7/22 J
B65D90/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005367
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2023005480
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年1月18日、古河電工産業電線株式会社が、全農サイロ株式会社に、前田祐輔、前田仁志、江口英二及び雨宮久弥が発明したサイロ測温ケーブルを卸した。 令和5年12月18日、古河電工産業電線株式会社が、全農サイロ株式会社に、前田祐輔、前田仁志、江口英二及び雨宮久弥が発明したサイロ測温ケーブルを卸した。
(71)【出願人】
【識別番号】591086843
【氏名又は名称】古河電工産業電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】前田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 仁志
(72)【発明者】
【氏名】江口 英二
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 久弥
【テーマコード(参考)】
2F056
3E170
【Fターム(参考)】
2F056CL03
2F056QF05
3E170AA16
3E170AB13
3E170CA01
3E170CB10
3E170CC04
3E170VA20
(57)【要約】
【課題】単純な構造で樹脂シースの破断を抑制できるサイロ測温ケーブルを提供する。
【解決手段】サイロ測温ケーブルは、ワイヤーロープと、前記ワイヤーロープの外周に沿って巻回されているセンシング部と、前記センシング部の外側に設けられ、前記ワイヤーロープおよび前記センシング部を覆う樹脂シースとを備え、前記樹脂シースはポリプロピレン樹脂から構成されること、および前記樹脂シースの抗張力は25.0MPa以上であることの少なくともいずれか1つの要件を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープと、
前記ワイヤーロープの外周に沿って巻回されているセンシング部と、
前記センシング部の外側に設けられ、前記ワイヤーロープおよび前記センシング部を覆う樹脂シースと
を備え、
前記樹脂シースは、ポリプロピレン樹脂から構成される、サイロ測温ケーブル。
【請求項2】
ワイヤーロープと、
前記ワイヤーロープの外周に沿って巻回されているセンシング部と、
前記センシング部の外側に設けられ、前記ワイヤーロープおよび前記センシング部を覆う樹脂シースと
を備え、
前記樹脂シースの抗張力は25.0MPa以上である、サイロ測温ケーブル。
【請求項3】
前記センシング部は、前記ワイヤーロープの外周に沿って巻回されている複数本の導線と、前記複数本の導線の各々に組み込まれている複数個の測温抵抗体と、を有する、請求項1または2に記載のサイロ測温ケーブル。
【請求項4】
前記樹脂シースの内面は、前記センシング部における前記導線よりも外側に出ている前記測温抵抗体に引っ掛かっている、請求項3に記載のサイロ測温ケーブル。
【請求項5】
前記樹脂シースは、ブロックポリプロピレン樹脂から構成される、請求項1または2に記載のサイロ測温ケーブル。
【請求項6】
前記樹脂シースの伸張力は700%以上である、請求項1または2に記載のサイロ測温ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サイロ測温ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サイロ内の温度を測定して監視し、所定の温度状態に維持することが求められている。サイロ内の温度を測定する手段として、例えばサイロ内の温度を測定するためのサイロ測温ケーブルが用いられている。サイロ測温ケーブルは、サイロの上部に設けられている吊下部に取り付けられてサイロ内で支持されることで、サイロ内の温度を測定することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数本の温度信号伝送導線を中心部に有し、複数本の導線に対してワイヤーロープを含む周囲の補強部を長手方向に摺動自在とした、温度信号伝達用導線ケーブルが記載されている。また、補強部は、ポリエチレン樹脂内に複数本のワイヤーロープを埋め込んで構成されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の導線ケーブルでは断線を抑制することは十分ではなく、さらには特許文献1の導線ケーブルは構造が複雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実全平01-089416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、単純な構造で樹脂シースの破断を抑制できるサイロ測温ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] ワイヤーロープと、前記ワイヤーロープの外周に沿って巻回されているセンシング部と、前記センシング部の外側に設けられ、前記ワイヤーロープおよび前記センシング部を覆う樹脂シースとを備え、前記樹脂シースは、ポリプロピレン樹脂から構成される、サイロ測温ケーブル。
[2] ワイヤーロープと、前記ワイヤーロープの外周に沿って巻回されているセンシング部と、前記センシング部の外側に設けられ、前記ワイヤーロープおよび前記センシング部を覆う樹脂シースとを備え、前記樹脂シースの抗張力は25.0MPa以上である、サイロ測温ケーブル。
[3] 前記センシング部は、前記ワイヤーロープの外周に沿って巻回されている複数本の導線と、前記複数本の導線の各々に組み込まれている複数個の測温抵抗体と、を有する、上記[1]または[2]に記載のサイロ測温ケーブル。
[4] 前記樹脂シースの内面は、前記センシング部における前記導線よりも外側に出ている前記測温抵抗体に引っ掛かっている、上記[3]に記載のサイロ測温ケーブル。
[5] 前記樹脂シースは、ブロックポリプロピレン樹脂から構成される、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のサイロ測温ケーブル。
[6] 前記樹脂シースの伸張力は700%以上である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のサイロ測温ケーブル。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、単純な構造で樹脂シースの破断を抑制できるサイロ測温ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のサイロ測温ケーブルの一例を示す概略図である。
図2図2は、図1のA領域の拡大図である。
図3図3は、実施形態のサイロ測温ケーブルがサイロに吊り下げられている状態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、サイロに吊り下げられている状態のサイロ測温ケーブルについて、サイロ内で樹脂シースの破断が生じている理由を解析した。解析結果の一例として、穀物サイロの上部から投入された穀物がサイロ測温ケーブルの樹脂シースに当たることによって、サイロに吊り下げられている状態のサイロ測温ケーブルの樹脂シースが摩耗したり、伸張したりし、場合によっては樹脂シースが破断することがわかった。このように樹脂シースが破断したサイロ測温ケーブルは、サイロ内の温度を正確に測温できないことがある。さらに、破断した樹脂シースは異物として穀物に混入することから、異物である樹脂シースを穀物から取り除く必要があり、余分なコストが発生する。
【0012】
樹脂シースの破断の問題から、樹脂シースの強度を向上させるためには、樹脂シースの厚さを増やす必要がある。しかしながら、樹脂シースの厚さを増やすと、サイロ測温ケーブルの重量が増加することから、サイロ測温ケーブルの引張強度を向上する必要がある。また、サイロ測温ケーブルが重くなることに起因する、サイロに吊り下げられている状態のサイロ測温ケーブルの癖取りが困難になる。
【0013】
そして、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、樹脂シースを構成する材料の選定や樹脂シースの機械的特性の制御を行うことによって、樹脂シースの厚さを増やさなくても、単純な構造で樹脂シースの破断を抑制できることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
【0014】
実施形態のサイロ測温ケーブルは、ワイヤーロープと、ワイヤーロープの外周に沿って巻回されているセンシング部と、センシング部の外側に設けられ、ワイヤーロープおよびセンシング部を覆う樹脂シースとを備え、樹脂シースはポリプロピレン樹脂から構成されること、および樹脂シースの抗張力は25.0MPa以上であることの少なくともいずれか1つの要件を満たす。
【0015】
図1は、実施形態のサイロ測温ケーブルの一例を示す概略図である。図2は、図1のA領域の拡大図である。ここでは、センシング部3の構成やセンシング部3と樹脂シース4との関係性がわかりやすいように、樹脂シース4を透過して図示している。
【0016】
図1に示すように、実施形態のサイロ測温ケーブル1は、ワイヤーロープ2とセンシング部3と樹脂シース4とを備える。サイロ測温ケーブル1は、サイロ内の温度を測温するケーブルである。
【0017】
サイロ測温ケーブル1を構成するワイヤーロープ2は、後述するようにサイロ50の内部で吊り下げられた状態で設置され、ワイヤーロープ2の外周に巻回されるセンシング部3を中心から支持する。ワイヤーロープ2は、複数の金属線材を撚り合わせてなる撚線である。また、ワイヤーロープ2の外周は不図示の押さえテープで被覆されてもよい。
【0018】
ワイヤーロープ2の基端(図中で上端)には、ワイヤーロープ2がループ状に折り返されてなるループ状のループ部21が設けられる。また、ループ部21の内側には、シンブルなどの保護金具22が取り付けられている。ループ状に折り返されたワイヤーロープ2の上端部は、ワイヤーロープ2と共に金属スリーブ23によって結束されている。
【0019】
サイロ測温ケーブル1を構成するセンシング部3は、サイロ内の所定の高さの温度をセンシングする部材である。センシング部3は、ワイヤーロープ2の外周に沿って巻回され、ワイヤーロープ2の軸方向に亘って設けられている。センシング部3は、例えばワイヤーロープ2に対して螺旋状に巻回されている。
【0020】
センシング部3は、複数本の導線31と複数個の測温抵抗体32とを有する。
【0021】
複数本の導線31は、ワイヤーロープ2の外周に沿って巻回されている。複数本の導線31は例えば互いに接触するように螺旋状に巻回されている。
【0022】
導線31は、例えば銅製の線材を撚り合わせてなる撚線である。また、導線31の外周は不図示の絶縁体で被覆されている。
【0023】
測温抵抗体32は、温度をセンシングするセンサ本体(不図示)を備える。また、測温抵抗体32は、測温抵抗体32のセンサ本体と導線31とを接続するための部材、例えば、センサ本体と導線31とを接続する接続用導線(不図示)や、接続用導線と導線31とを接合する接合部(不図示)を備える。測温抵抗体32の接合部としては、例えば半田からなるはんだ接合部が挙げられる。また、センサ本体などの構成部材を具備する測温抵抗体32は、テープ(不図示)で巻かれていてもよい。
【0024】
また、複数個の測温抵抗体32は、複数本の導線31の各々に組み込まれ、ワイヤーロープ2の軸方向に亘って異なる位置に設けられている。ここでは、センシング部3が5個の測温抵抗体32を有し、センシング部3はサイロ内の5か所の高さの温度を測定できる。また、図2に示すように、センシング部3において、導線31に連結している測温抵抗体32は、導線31よりも外側に出ている。
【0025】
サイロ測温ケーブル1を構成する樹脂シース4は、センシング部3がワイヤーロープ2に巻回されている部分において、センシング部3の外側に設けられ、ワイヤーロープ2およびセンシング部3を外側から覆う。筒状の樹脂シース4の内側には、ワイヤーロープ2の外周に沿って巻回されているセンシング部3が配置されている。
【0026】
樹脂シース4としては、樹脂シース4がポリプロピレン樹脂から構成されること、および樹脂シース4の抗張力が25.0MPa以上であることの少なくともいずれか1つの要件を満たす。
【0027】
樹脂シース4が上記いずれか1つの要件を満たすと、樹脂シース4の機械的強度が向上することから、ポリエチレンなどの従来から用いられている樹脂シースの厚さと同程度であっても、すなわち樹脂シース4の厚さを増やさなくても、上記で述べたサイロから投入された穀物がサイロ測温ケーブル1の樹脂シース4に当たることに起因する樹脂シース4の破断を抑制できる。
【0028】
このように、樹脂シースの厚さを増やさなくても、樹脂シースの破断を抑制できることから、サイロ測温ケーブル1を実質的に軽量化できる。さらには、サイロ測温ケーブル1の構造を複雑化せずに、樹脂シース4の材料や機械的特性の制御によって、樹脂シースの破断を抑制できる。その結果、サイロ測温ケーブル1を長寿命化できるため、数十メートルほどの高所での人的作業を伴う、サイロに対するサイロ測温ケーブル1の交換頻度を減らすことができる。また、ポリエチレンなどの従来から用いられている樹脂シースを備えるサイロ測温ケーブルと同様に、樹脂シース4を備えるサイロ測温ケーブル1はサイロ内の温度を測温できる。
【0029】
また、樹脂シース4がポリプロピレン樹脂から構成されていると、図2に示すように、樹脂シース4の内面は、導線31と導線31よりも外側に突き出ている測温抵抗体32とに追随し、センシング部3における導線31よりも外側に出ている測温抵抗体32に引っ掛かっている。そのため、仮に樹脂シース4が破断しても、サイロ測温ケーブル1からの樹脂シース4の落下を抑制できる。
【0030】
こうした観点から、樹脂シース4としては、樹脂シース4がポリプロピレン樹脂から構成されること、および樹脂シース4の抗張力が25.0MPa以上であることの両方の要件を満たすことが好ましい。また、樹脂シース4は、ブロックポリプロピレン樹脂から構成されることが好ましい。また、樹脂シース4の抗張力は、好ましくは35.0MPa以上、より好ましくは40.0MPa以上である。
【0031】
樹脂シース4の抗張力は、JIS C 3005:2014の4.16.4.1 引張強さに準拠し、ダンベル状試験片を用いて測定する。
【0032】
また、上記同様に樹脂シースの破断を抑制する観点から、樹脂シース4の伸張力は、好ましくは700%以上であり、より好ましくは750%以上である。
【0033】
樹脂シース4の伸張力は、JIS C 3005:2014の4.16.4.2 伸びに準拠し、ダンベル状試験片を用いて測定する。
【0034】
また、樹脂シース4には、酸化防止剤などの添加剤が含まれてもよい。
【0035】
図3は、実施形態のサイロ測温ケーブルがサイロに吊り下げられている状態の一例を示す概略図である。
【0036】
図3に示すように、サイロ50の上部に設けられる吊下部51にサイロ測温ケーブル1のループ部21を引っ掛けることで、サイロ測温ケーブル1をサイロ50に取り付けることができる。こうして、サイロ測温ケーブル1は、サイロ50内の上部から下部に亘って吊り下げられた状態を維持できる。サイロ測温ケーブル1に設けられている複数個の測温抵抗体32は、サイロ50内の異なる高さ位置で配置されている。
【0037】
サイロ50に貯蔵する貯蔵物60は、サイロ50の上部に設けられる投入口52からサイロ50の内部に投入され、サイロ50の下部に設けられる排出口53からサイロ50の外部に排出される。
【0038】
サイロ50の上部から吊り下げられた状態で設置されているサイロ測温ケーブル1は、サイロ50内の異なる高さ位置の温度を各々の測温抵抗体32でセンシングし、センシングで得られた信号を測定器54に送ることで、サイロ50内の異なる高さ位置の温度を測温する。
【0039】
このようなサイロ測温ケーブル1は、穀物サイロのような農業用サイロや石炭サイロなどの様々なサイロに用いることができる。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、樹脂シースを構成する材料の選定や樹脂シースの機械的特性の制御を行うことによって、単純な構造で樹脂シースの破断を抑制することができる。
【0041】
なお、センシング部3はワイヤーロープ2の外周に沿って巻回されていれば、上記構成に限定されるものではない。また、上記では、センシング部3は温度センシング部材として測温抵抗体32を有する例について説明したが、センシング部3はサイロ50内の温度を測定できれば特に限定されるものではなく、例えばセンシング部3は温度センシング部材として熱電対を有するものであってもよい。
【0042】
また、上記では、センシング部3が5個の測温抵抗体32を有する例を示している。ただし、測温抵抗体32の設置数としては、1以上であればサイロ50内の測温が可能であるが、複数であれば温度分布を測定することができるため好ましい。測温抵抗体32の設置数について、上記実施形態では最大で11個となるが、設置するサイロの高さや温度測定箇所の設定に伴い、より多くの箇所に測温抵抗体32を設置してもよい。
【0043】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 サイロ測温ケーブル
2 ワイヤーロープ
21 ループ部
22 保護金具
23 金属スリーブ
3 センシング部
31 導線
32 測温抵抗体
4 樹脂シース
50 サイロ
51 吊下部
52 投入口
53 排出口
54 測定器
60 貯蔵物
図1
図2
図3