(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101573
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ウェアラブルオープンスピーカ及び音出力方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20240723BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G10K11/178
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005517
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】西尾 達也
【テーマコード(参考)】
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D220AA02
(57)【要約】
【課題】周囲への意味ある音漏れを抑制可能なウェアラブルスピーカ及び音出力方法を提供する。
【解決手段】ウェアラブルオープンスピーカは、複数のスピーカと、前記複数のスピーカのうち少なくとも1つのスピーカから、ユーザが聞こうとする音である目的音を出力させ、前記複数のスピーカのうち前記少なくとも1つのスピーカとは異なる少なくとも1つの他のスピーカから、出力されることにより周囲に前記目的音を聞き取りにくくする音であるマスキング音を出力させる、制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスピーカと、
前記複数のスピーカのうち少なくとも1つのスピーカから、ユーザが聞こうとする音である目的音を出力させ、前記複数のスピーカのうち前記少なくとも1つのスピーカとは異なる少なくとも1つの他のスピーカから、出力されることにより周囲に前記目的音を聞き取りにくくする音であるマスキング音を出力させる、制御部と、
を備える、ウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項2】
前記目的音は、前記ウェアラブルオープンスピーカと情報通信可能に接続された外部装置から取得された音データに基づいて出力される、請求項1に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項3】
前記制御部は、複数種類のマスキング音のうち、前記ユーザが選択したマスキング音を、前記少なくとも1つの他のスピーカから出力させる、請求項1に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項4】
前記制御部は、前記ユーザによる所定の操作入力に基づいて、前記複数のスピーカのうち、前記目的音を出力させる前記少なくとも1つのスピーカと、前記マスキング音を出力させる前記少なくとも1つの他のスピーカとを決定する、請求項1に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項5】
前記複数のスピーカは、前記ユーザによる前記ウェアラブルオープンスピーカの装着状態において、前記ユーザが位置する内側方向と、前記内側方向とは反対の外側方向とで、それぞれ向きを調整可能である、請求項1に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数のスピーカのうち、前記装着状態において、前記内側方向に向けられたスピーカを、前記目的音を出力させる前記少なくとも1つのスピーカと決定し、前記外側方向に向けられたスピーカを、前記マスキング音を出力させる前記少なくとも1つの他のスピーカと決定する、請求項5に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項7】
周囲の音を取得する音入力部をさらに備え、
前記制御部は、前記音入力部が取得した前記周囲の音の音量に基づいて、前記少なくとも1つの他のスピーカから出力される前記マスキング音の音量を調整する、請求項1に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項8】
前記制御部は、前記周囲の音の音量が小さいほど、前記マスキング音の音量を大きくし、前記周囲の音の音量が大きいほど、前記マスキング音の音量を小さくする、請求項7に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項9】
周囲の音を取得する音入力部をさらに備え、
前記制御部は、前記少なくとも1つの他のスピーカから出力され前記音入力部で取得された前記マスキング音をキャンセルする処理を実行する、
請求項1に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項10】
前記複数のスピーカのうち、前記目的音を出力させるスピーカは、前記ユーザによる前記ウェアラブルオープンスピーカの装着状態において、前記ユーザが位置する内側方向に向けられ、前記マスキング音を出力させるスピーカは、前記内側方向とは反対の外側方向に向けられて配置される、請求項1に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項11】
前記複数のスピーカのうち、前記マスキング音を出力させるスピーカは、前記目的音を出力させるスピーカよりも、前記ユーザによる前記ウェアラブルオープンスピーカの装着状態において、前記ユーザの耳から遠い位置に配置される、請求項1に記載のウェアラブルオープンスピーカ。
【請求項12】
複数のスピーカを備えるウェアラブルオープンスピーカが実行する音出力方法であって、
前記複数のスピーカのうち少なくとも1つのスピーカから、ユーザが聞こうとする音である目的音を出力させ、
前記複数のスピーカのうち前記少なくとも1つのスピーカとは異なる少なくとも1つの他のスピーカから、出力されることにより周囲に前記目的音を聞き取りにくくする音であるマスキング音を出力させる、
音出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェアラブルオープンスピーカ及び音出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスキング音を再生する装置が知られている。例えば、特許文献1には、マイクで検出した会話者の音声の周波数スペクトルに合わせた別の音をマスキング音としてスピーカーから放射する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ユーザがスピーカを使用する場面は多様化しており、例えばユーザが身体に装着して使用するウェアラブルスピーカが使用される場合がある。ウェアラブルスピーカの一例として、ユーザが首に掛けて使用する、いわゆるネックスピーカがある。ネックスピーカは、オープンスピーカと呼ばれる開放型のスピーカであるため、スピーカから再生された音が外部に漏れる。そのため、情報セキュリティ上の懸念がある。例えば、電話やウェブ会議のように機密性を有する情報が含まれる場面でウェアラブルオープンスピーカが使用されると、情報が外部に漏れる可能性がある。
【0005】
本開示は、上述の問題に鑑みてなされたものである。本開示の目的は、周囲への意味ある音漏れを抑制可能なウェアラブルスピーカ及び音出力方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態のウェアラブルオープンスピーカは、複数のスピーカと、前記複数のスピーカのうち少なくとも1つのスピーカから、ユーザが聞こうとする音である目的音を出力させ、前記複数のスピーカのうち前記少なくとも1つのスピーカとは異なる少なくとも1つの他のスピーカから、出力されることにより周囲に前記目的音を聞き取りにくくする音であるマスキング音を出力させる、制御部と、を備える。
【0007】
本開示の一形態の音出力方法は、複数のスピーカを備えるウェアラブルオープンスピーカが実行する音出力方法であって、前記複数のスピーカのうち少なくとも1つのスピーカから、ユーザが聞こうとする音である目的音を出力させ、前記複数のスピーカのうち前記少なくとも1つのスピーカとは異なる少なくとも1つの他のスピーカから、出力されることにより周囲に前記目的音を聞き取りにくくする音であるマスキング音を出力させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るウェアラブルオープンスピーカの外観斜視図である。
【
図2】
図1のウェアラブルオープンスピーカの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】マスキング音の音データの取得方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】変形例に係るウェアラブルオープンスピーカの外観斜視図である。
【
図5】変形例に係るウェアラブルオープンスピーカの外観斜視図である。
【
図6】変形例に係るウェアラブルオープンスピーカの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面において、同一又は同等の構成要素には同一の符号を付し、同一又は同等の構成要素に関する説明が重複する場合は適宜省略する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るウェアラブルオープンスピーカ1の外観斜視図である。ウェアラブルオープンスピーカ1は、ユーザが装着した状態で使用するスピーカである。ウェアラブルオープンスピーカ1は、例えばユーザが首に装着する、いわゆるネックスピーカ又は首掛けスピーカと呼ばれるスピーカである。ウェアラブルオープンスピーカ1は、開放型のスピーカである。
図1に示すように、ウェアラブルオープンスピーカ1は、筐体2と、音出力部3と、音入力部4と、操作部5と、を備える。
【0011】
筐体2は、ウェアラブルオープンスピーカ1の外形を形成する筐体である。筐体2は、ユーザが装着可能な形状に形成されている。例えば、筐体2は、ユーザの首に掛けることができるように全体が湾曲した形状を有する。音出力部3、音入力部4及び操作部5は、筐体2に設けられる。
【0012】
音出力部3は、音を出力するデバイスである。音出力部3は、音を出力する複数のスピーカにより構成される。すなわち、ウェアラブルオープンスピーカ1は、複数のスピーカを備える。本実施形態では、ウェアラブルオープンスピーカ1は、音出力部3として、第1スピーカ3a及び第2スピーカ3bという、2つのスピーカを備える。
【0013】
本実施形態において、第1スピーカ3aは、ユーザがウェアラブルオープンスピーカ1を装着した状態(以下、単に「装着状態」ともいう)において、ユーザの右側に位置するように、筐体2に配置される。具体的には、第1スピーカ3aは、装着状態において、ユーザの右耳の近傍に位置するように、筐体2に配置される。第1スピーカ3aは、装着状態において、音の出力方向がユーザの右耳の方向となるように、筐体2に配置されていてよい。
【0014】
本実施形態において、第2スピーカ3bは、装着状態において、ユーザの左側に位置するように、筐体2に配置される。具体的には、第2スピーカ3bは、装着状態において、ユーザの左耳の近傍に位置するように、筐体2に配置される。第2スピーカ3bは、装着状態において、音の出力方向がユーザの左耳の方向となるように、筐体2に配置されていてよい。
【0015】
なお、音出力部3は、必ずしも2つのスピーカにより構成されていなくてもよい。音出力部3は、複数のスピーカにより構成されていればよい。従って、ウェアラブルオープンスピーカ1は、3つ以上のスピーカを備えていてもよい。
【0016】
音入力部4は、周囲の音を取得する。音入力部4は、装着状態において、例えばユーザが発した声を取得しやすい位置に配置される。具体的には、音入力部4は、装着状態において、ユーザの口の近傍に位置するように、筐体2に配置される。音入力部4は、例えばマイクにより構成されている。
【0017】
操作部5は、ユーザからの操作入力を受け付ける。操作部5は、例えば複数の操作ボタンにより構成される。複数の操作ボタンは、それぞれ特定の機能に対応しており、各操作ボタンへの操作入力に応じて、ウェアラブルオープンスピーカ1は、当該操作ボタンに対応する特定の機能を実行する。特定の機能は、例えば、電源のオンオフ、音量の上下などである。ただし、特定の機能は、ここで例示したものに限られず、ウェアラブルオープンスピーカ1において実行可能な機能を含んでよい。
【0018】
図2は、
図1のウェアラブルオープンスピーカ1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、ウェアラブルオープンスピーカ1は、機能部として、音出力部3と、音入力部4と、操作部5と、制御部6と、記憶部7と、通信部8と、を備える。音出力部3、音入力部4及び操作部5の構成及び機能については、上述の通りである。
【0019】
制御部6は、ウェアラブルオープンスピーカ1の各機能部をはじめとして、ウェアラブルオープンスピーカ1の全体を制御及び管理する。制御部6は、例えば記憶部7に格納された制御プログラムを動作させるなどして、各種制御を行う。制御部6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)などの制御デバイスにより構成することができる。制御部6は、複数のスピーカから所定の音を出力させる。制御部6が実行する音の出力処理の詳細については、後述する。
【0020】
記憶部7は、プログラム及びデータを記憶可能な記憶媒体である。記憶部7は、例えば半導体メモリ又は磁気メモリなどで構成することができる。具体的には、記憶部7は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)により構成することができる。記憶部7は、例えば制御部6を動作させるためのプログラムなどを記憶する。具体的には、記憶部7は、例えば音の出力処理を制御部6に実行させるためのプログラムを、記憶する。記憶部7は、音出力部3から出力される音のデータ(音データ)を記憶していてもよい。
【0021】
通信部8は、外部装置との情報通信を実行する。例えば、通信部8は、例えばネットワークを介して、外部装置としてのスマートフォン又はコンピュータ等の端末装置と情報通信を実行する。あるいは、通信部8は、例えばケーブルなどの通信路を介して、外部装置と情報通信を実行してもよい。通信部8は、情報通信の方式に応じて、適宜のインタフェースを含んで構成されている。
【0022】
ウェアラブルオープンスピーカ1は、例えば外部装置としての端末装置と接続された状態で使用される。ウェアラブルオープンスピーカ1は、例えば通信部8により、Bluetooth(登録商標)などの方式を用いて、端末装置と情報通信可能に接続される。ウェアラブルオープンスピーカ1は、外部装置と接続された状態において、例えば外部装置で再生される音を、音出力部3から出力する。具体的には、例えばユーザが外部装置において、音又は映像のコンテンツを再生した場合、ウェアラブルオープンスピーカ1は、当該コンテンツに係る音データを通信部8から受信し、音データに基づいて、音出力部3から音を出力する。あるいは、例えば、ユーザが外部装置を用いて、オンラインでウェブ会議を行っている場合、ウェアラブルオープンスピーカ1は、当該ウェブ会議における音データを通信部8から受信し、音データに基づいて、音出力部3から音を出力する。このようにして、ユーザは、ウェアラブルオープンスピーカ1から出力された音を聞くことができる。
【0023】
なお、コンテンツに係る音やウェブ会議に係る音のように、ユーザが聞こうとする目的の音を、本明細書では「目的音」ともいう。従って、ユーザは、ウェアラブルオープンスピーカ1を外部装置と接続することにより、目的音をウェアラブルオープンスピーカ1から出力させることができる。目的音は、例えばウェアラブルオープンスピーカ1と情報通信可能に接続された外部装置において再生される。
【0024】
ウェアラブルオープンスピーカ1の制御部6が実行する音の出力処理について、さらに説明する。本実施形態において、制御部6は、ウェアラブルオープンスピーカ1が備える複数のスピーカのうち少なくとも1つのスピーカから目的音を出力させ、当該少なくとも1つのスピーカとは異なる少なくとも1つの他のスピーカからマスキング音を出力させる。なお、マスキング音は、音漏れを抑制するための音である。具体的には、マスキング音は、出力されることにより周囲に目的音を聞き取りにくくする音である。つまり、マスキング音は、目的音の音漏れを抑制するための音である。このように、制御部6は、ウェアラブルオープンスピーカ1が備える複数のスピーカを用いて、目的音とマスキング音とを同時に出力することができる。
【0025】
例えば、本実施形態では、音出力部3は、第1スピーカ3a及び第2スピーカ3bを備える。そのため、ウェアラブルオープンスピーカ1は、第1スピーカ3aからマスキング音を出力し、第2スピーカ3bから目的音を出力する。あるいは、ウェアラブルオープンスピーカ1は、第1スピーカ3aから目的音を出力し、第2スピーカ3bからマスキング音を出力する。
【0026】
音出力部3が3つのスピーカを備える場合には、例えば、1つ又は2つのスピーカからマスキング音を出力し、他のスピーカから目的音を出力する。つまり、ウェアラブルオープンスピーカ1は、少なくとも1つのスピーカからマスキング音を出力し、少なくとも1つのスピーカから目的音を出力すればよい。音出力部3が4つ以上のスピーカを備える場合についても、同様である。
【0027】
ウェアラブルオープンスピーカ1は、例えばユーザによる操作入力により、マスキング音を出力させる操作が行われた場合に、目的音とマスキング音とを同時に出力する。ユーザは、例えば、ウェブ会議を行う場合など、ウェアラブルオープンスピーカ1から出力される音を周囲に聞かれたくない場合に、ウェアラブルオープンスピーカ1からマスキング音を出力させるための操作入力を、操作部5に対して行う。ウェアラブルオープンスピーカ1は、当該操作入力に基づき、少なくとも1つのスピーカから目的音を出力させるとともに、少なくとも1つの他のスピーカからマスキング音を出力させる。
【0028】
あるいは、ウェアラブルオープンスピーカ1は、例えば、少なくともマスキング音を出力する第1モード及びマスキング音を出力しない第2モードという2つのモードを選択的に切り替え可能に構成されており、第1モードで動作する場合に、目的音とマスキング音とを同時に出力する。ユーザは、例えば、ウェブ会議を行う場合など、ウェアラブルオープンスピーカ1から出力される音を周囲に聞かれたくない場合に、ウェアラブルオープンスピーカ1の操作部5に対して操作入力を行うことにより、ウェアラブルオープンスピーカ1を第1モードに設定する。この場合、ウェアラブルオープンスピーカ1は、少なくとも1つのスピーカから目的音を出力し、少なくとも1つの他のスピーカからマスキング音を出力する。ユーザは、例えば音楽を聴く場合など、ウェアラブルオープンスピーカ1から出力される音を周囲に聞かれてもよい場合に、ウェアラブルオープンスピーカ1の操作部5に対して操作入力を行うことにより、ウェアラブルオープンスピーカ1を第2モードに設定する。この場合、ウェアラブルオープンスピーカ1は、マスキング音を出力せず、全てのスピーカから目的音を出力する。
【0029】
ウェアラブルオープンスピーカ1が出力するマスキング音は、公知のマスキング音とすることができる。マスキング音は、例えばオフィスの環境音である。オフィスの環境音には、例えばキーボードのタイピングや空調の音などが含まれる。マスキング音は、例えば自然の環境音であってもよい。自然の環境音には、例えば、鳥のさえずりの音、川のせせらぎの音、森の中で葉がこすれる音などが含まれる。ただし、マスキング音は、ここで例示したものに限られず、他の任意の環境音が含まれてよい。
【0030】
ウェアラブルオープンスピーカ1は、マスキング音の音データを多様な方法で取得することができる。例えば、マスキング音の音データは、予め記憶部7に記憶されていてよい。この場合、ウェアラブルオープンスピーカ1は、記憶部7に記憶されたマスキング音の音データに基づいて、マスキング音を音出力部3から出力する。あるいは、ウェアラブルオープンスピーカ1は、外部装置から、マスキング音の音データを取得してもよい。例えば、ウェアラブルオープンスピーカ1は、外部装置から、マスキング音の音データをダウンロードすることにより取得することができる。この場合、ウェアラブルオープンスピーカ1は、ダウンロードした音データを、例えば記憶部7に記憶することができる。
【0031】
図3は、ウェアラブルオープンスピーカ1によるマスキング音の音データの取得方法の一例を示すフローチャートである。
図3に示す取得方法は、例えば、ウェアラブルオープンスピーカ1が、外部装置とBluetoothにより接続されている場合に実行される。
図3に示す取得方法では、ウェアラブルオープンスピーカ1は、マスキング音の音データを受信可能なマスキング音受信モードである場合に、ウェアラブルオープンスピーカ1と接続された外部装置からマスキング音の音データを取得する。
【0032】
ウェアラブルオープンスピーカ1の制御部6は、ウェアラブルオープンスピーカ1がマスキング音受信モードであるか否かを判定する(ステップS11)。ウェアラブルオープンスピーカ1は、例えばユーザが操作部5に対して所定の操作入力を行った場合に、マスキング音受信モードに移行する。ウェアラブルオープンスピーカ1は、マスキング音受信モードにおいて、ステップS12からステップS16を含む、マスキング音の音データ取得処理を実行する。
【0033】
制御部6は、ウェアラブルオープンスピーカ1がマスキング音受信モードでないと判定した場合(ステップS11のNo)、音データ取得処理を実行することなく、このフローを終了する。この場合、制御部6は、このフローを再度冒頭から実行してもよい。
【0034】
制御部6は、ウェアラブルオープンスピーカ1がマスキング音受信モードであると判定した場合(ステップS11のYes)、外部装置からマスキング音の音データの信号を受信できているか否かを判定する(ステップS12)。外部装置は、例えばユーザによる所定の操作入力に基づいて、外部装置でマスキング音を再生させることにより、当該マスキング音の音データの信号を送信する。あるいは、外部装置は、例えばマスキング音受信モードであるウェアラブルオープンスピーカ1からの、マスキング音の音データを要求する要求信号に基づいて、外部装置でマスキング音を再生させることにより、当該マスキング音の音データの信号を送信してもよい。制御部6は、このようにして外部装置から送信されたマスキング音の音データの信号を受信できているか否かを判定する。
【0035】
制御部6は、マスキング音の音データの信号を受信できていないと判定した場合(ステップS12のNo)、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。所定時間は、例えば予め定められ、記憶部7に記憶されている。所定時間は、音データの信号を受信できない状態が継続した場合に自動的にマスキング音受信モードを終了させるための判定基準となる時間である。所定時間は、例えば数秒から数分などの範囲で適宜定められてよい。制御部6は、例えば、ウェアラブルオープンスピーカ1がマスキング音受信モードに移行したときから、所定時間が経過したか否かを判定する。あるいは、制御部6は、例えば、制御部6が信号を受信できていないと判定してから、信号を受信できていないと判定している状態が継続している時間が、所定時間が経過したか否かを判定してもよい。
【0036】
制御部6は、所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS16のNo)、ステップS12に移行する。
【0037】
一方、制御部6は、所定時間が経過したと判定した場合(ステップS16のYes)、ウェアラブルオープンスピーカ1のマスキング音受信モードを終了する(ステップS15)。そして、制御部6は、このフローを終了する。この場合、制御部6は、このフローを再度冒頭から実行してもよい。
【0038】
ステップS12において、制御部6は、マスキング音の音データの信号を受信できていると判定した場合(ステップS12のYes)、受信した音データの信号を、マスキング音として録音する(ステップS13)。このとき、制御部6は、外部装置内で再生されているマスキング音を、音出力部3から出力しなくてよい。つまり、制御部6は、マスキング音を音として外部に出力することなく、マスキング音の音データを録音すればよい。なお、制御部6は、マスキング音を音出力部3から出力してもよい。制御部6は、マスキング音の音データを記憶部7に記憶させることにより、マスキング音を録音する。
【0039】
そして、制御部6は、マスキング音受信モードを終了するか否かを判定する(ステップS14)。制御部6は、例えば予め定められた所定の条件が満たされた場合に、マスキング音受信モードを終了すると判定する。例えば、制御部6は、ユーザによる所定の操作入力に基づいて、外部装置におけるマスキング音の再生が停止された場合に、マスキング音受信モードを終了すると判定する。この場合、制御部6は、例えば外部装置からのマスキング音の音データの信号の供給が停止されたときに、外部装置におけるマスキング音の再生が停止されたと判定し、マスキング音受信モードを終了すると判定することができる。あるいは、制御部6は、例えばユーザによる操作部5に対する所定の操作入力に基づき、マスキング音受信モードを終了すると判定する。例えば、制御部6は、例えばユーザが操作部5に対してマスキング音受信モードを終了させるための操作入力を実行した場合に、マスキング音受信モードを終了すると判定する。あるいは、制御部6は、例えば、マスキング音の音データを所定時間分録音した場合に、マスキング音受信モードを終了すると判定する。所定時間は、例えば予め設定されていてもよく、あるいはユーザにより適宜設定されてもよい。所定時間は、例えば数秒から数十分の範囲で定めることができる。あるいは、制御部6は、マスキング音の音データを記憶する記憶領域の記憶容量が一杯になった場合に、マスキング音受信モードを終了すると判定する。制御部6は、ここで示した例以外の他の条件に基づいて、マスキング音受信モードを終了すると判定してもよい。
【0040】
制御部6は、マスキング音受信モードを終了しないと判定した場合(ステップS14のNo)、ステップS12に移行する。
【0041】
一方、制御部6は、マスキング音受信モードを終了すると判定した場合(ステップS14のYes)、ウェアラブルオープンスピーカ1のマスキング音受信モードを終了する(ステップS15)。そして、制御部6は、このフローを終了する。この場合、制御部6は、このフローを再度冒頭から実行してもよい。
【0042】
このようにして、ウェアラブルオープンスピーカ1は、マスキング音受信モードにおいて、マスキング音を録音することができる。例えば、Bluetoothで外部装置と接続した場合、ウェアラブルオープンスピーカ1は、モノラル信号しか受信できない。つまり、ウェアラブルオープンスピーカ1は、マスキング音と目的音との音データを同時に受信できない。しかしながら、
図3を参照して説明した方法で、事前にマスキング音を録音することにより、リアルタイムで受信する目的音と、録音したマスキング音とを、同時に出力することができる。もし、例えば有線や他の接続方式により、ウェアラブルオープンスピーカ1が複数の音データを区別して同時に受信可能である場合には、ウェアラブルオープンスピーカ1は、事前にマスキング音を録音することなく、リアルタイムで目的音とマスキング音との音データを同時に受信し、同時に出力してよい。
【0043】
マスキング音を録音した後、ウェアラブルオープンスピーカ1は、少なくとも1つのスピーカから目的音を出力し、少なくとも1つの他のスピーカからマスキング音を出力することができる。
【0044】
具体的には、マスキング音を録音した後、ユーザは、ウェアラブルオープンスピーカ1を外部装置と接続した状態で、外部装置に目的音を再生させる。目的音は、例えばコンテンツの音であってもよいし、例えばウェブ会議や電話などで再生される音であってもよい。このとき、ユーザは、ウェアラブルオープンスピーカ1からマスキング音を出力させるための所定の操作入力を行っているとする。この場合、制御部6は、例えば第1スピーカ3aからマスキング音を出力し、第2スピーカ3bから目的音を出力する。このとき、制御部6は、録音により記憶部7に記憶されたマスキング音の音データに基づいて、第1スピーカ3aからマスキング音を出力し、外部装置で再生され当該外部装置から受信した目的音の音データに基づいて、第2スピーカ3bから目的音を出力する。つまり、マスキング音の出力時には、ウェアラブルオープンスピーカ1は、目的音の音データのみを外部装置から受信しており、マスキング音については、記憶部7に記憶された音データを用いて出力する。
【0045】
なお、記憶部7に記憶されたマスキング音の音データの長さが、出力される目的音の長さよりも短い場合、制御部6は、記憶部7に記憶されたマスキング音の音データを繰り返して再生してよい。例えば、記憶部7に記憶されたマスキング音の音データの長さが5分の長さのデータであり、目的音としてのコンテンツの音が1時間の長さである場合、制御部6は、目的音を出力している間、記憶部7に記憶されたマスキング音の音データを繰り返して出力してよい。これにより、ウェアラブルオープンスピーカ1は、目的音が出力されている間、継続してマスキング音を同時に出力することができる。
【0046】
制御部6は、記憶部7に記憶されたマスキング音の音データを、消去せずに記憶したままの状態としてもよく、例えば所定時間経過などの所定の条件を満たした場合に、記憶部7から消去してもよい。消去せずに記憶したままの状態とする場合には、再度マスキング音の音データを記憶部7に記憶させる処理を実行する必要がなくなる。消去した場合には、消去後にマスキング音を再生させる場合、以前とは異なるマスキング音を記憶部7に記憶させ、再生させることができる。
【0047】
このように、本実施形態に係るウェアラブルオープンスピーカ1は、複数のスピーカのうち少なくとも1つのスピーカから目的音を出力させ、少なくとも1つの他のスピーカからマスキング音を出力させる。これにより、ユーザがウェアラブルオープンスピーカ1を使用している場合であっても、マスキング音により、周囲の人には、目的音が聞き取りにくくなる。そのため、ウェアラブルオープンスピーカ1は、周囲への意味ある音漏れを抑制可能である。ここで、意味ある音漏れとは、意味を持つ音の音漏れであり、例えば発言又は会話の内容などが第三者に理解されることをいう。このようにして、身体的な負担が少ないウェアラブルスピーカを用いて、周囲への意味ある音漏れを抑制可能である。
【0048】
ウェアラブルオープンスピーカ1は、例えば右耳用と左耳用のように、複数のスピーカを備える場合が多い。そのため、本実施形態に係るウェアラブルオープンスピーカ1は、マスキング音を出力させるためのスピーカを別途設けることなく、既存の複数のスピーカを用いて、周囲への意味ある音漏れを抑制可能である。
【0049】
なお、ウェアラブルオープンスピーカ1を装着するユーザにも、目的音とマスキング音が聞こえる。しかしながら、ユーザには、異なる方向から目的音とマスキング音とが聞こえる。例えば本実施形態に係るウェアラブルオープンスピーカ1を用いた場合、ユーザには、左右の一方側から目的音が聞こえ、他方側からマスキング音が聞こえる。この場合、ユーザは、左右の耳で音を聞き分けることができるため、目的音を聞き取ることができる。そのため、ユーザにとっては、マスキング音が出力されていても、意味ある音を聞き取ることができる。
【0050】
本実施形態において、ウェアラブルオープンスピーカ1の制御部6は、複数種類のマスキング音のうち、ユーザが選択したマスキング音を音出力部3から出力してもよい。例えば、ウェアラブルオープンスピーカ1は、複数種類のマスキング音の音データを、記憶部7に記憶している。ユーザは、記憶部7に記憶された複数種類のマスキング音のうち、いずれかを選択して音出力部3から出力させることができる。例えば、記憶部7に、第1マスキング音、第2マスキング音及び第3マスキング音という3種類の異なるマスキング音の音データが記憶されているとする。この場合、ユーザは、マスキング音を出力させる際に、いずれのマスキング音を出力させるかを選択する操作入力を、操作部5に対して行う。制御部6は、当該操作入力により指定されたマスキング音を、音出力部3から出力させる。これにより、ユーザは、ウェアラブルオープンスピーカ1が接続される外部装置によらず、周囲の状況や場所などに応じて出力させるマスキング音を選択することができる。そのため、周囲の状況や場所などに、より相応しいマスキング音を出力させることができる。
【0051】
本実施形態において、制御部6は、ユーザによる所定の操作入力に基づいて、複数のスピーカのうち、目的音を出力させるスピーカと、マスキング音を出力させるスピーカとを決定してよい。つまり、ウェアラブルオープンスピーカ1は、音出力部3が備える複数のスピーカのうち、マスキング音を出力させるスピーカと、目的音を出力させるスピーカとを、ユーザが選択可能に構成されていてもよい。例えば、ウェアラブルオープンスピーカ1は、マスキング音と目的音とを出力させるスピーカを選択するための操作入力を、操作部5から受け付ける。つまり、ユーザは、操作部5に対して所定の操作入力を行うことにより、音出力部3が備える複数のスピーカのうち、マスキング音を出力させるスピーカと、目的音を出力させるスピーカとを選択する。制御部6は、ユーザの選択に基づき、所定のスピーカからマスキング音を出力し、他の所定のスピーカから目的音を出力する。
【0052】
上記実施形態の場合を例に、具体的に説明する。上記実施形態では、音出力部3は、第1スピーカ3a及び第2スピーカ3bという2つのスピーカを備えている。この場合、一方のスピーカからマスキング音が出力され、他方のスピーカから目的音が出力される。ユーザは、マスキング音をどちらのスピーカから出力させるかを選択する。あるいは、ユーザは、目的音をどちらのスピーカから出力させるかを選択してもよい。ユーザが、例えばマスキング音を第1スピーカ3aから出力させることを選択し、マスキング音を第1スピーカ3aから出力させるための操作入力を行ったとする。上記実施形態では、音出力部3が備えるスピーカは2個であるため、マスキング音を第1スピーカ3aから出力させることが決定されると、目的音は第2スピーカ3bから出力されることが自動的に決定される。そして、制御部6は、ユーザの操作入力に基づき、マスキング音を第1スピーカ3aから出力させ、目的音を第2スピーカ3bから出力させる。仮に、ユーザが、マスキング音を第2スピーカ3bから出力させることを選択し、そのような操作入力を行った場合は、制御部6は、マスキング音を第2スピーカ3bから出力させ、目的音を第1スピーカ3aから出力させる。
【0053】
音出力部3が3つ以上のスピーカを備える場合も、マスキング音を出力させるスピーカと、目的音を出力させるスピーカとを、ユーザが選択してよい。このように、マスキング音を出力させるスピーカと、目的音を出力させるスピーカとを、ユーザが選択可能に構成されていることにより、ウェアラブルオープンスピーカ1のユーザの選択に応じて、マスキング音と目的音とを出力させるスピーカを適宜変更することができる。これにより、周囲の状況やユーザの好みに応じて、希望するスピーカからマスキング音及び目的音を出力させることができる。
【0054】
本実施形態において、音出力部3を構成する複数のスピーカは、それぞれ向きを調整可能に構成されていてよい。例えば、複数のスピーカは、スピーカが取り付けられた筐体2との相対的な向きが変更可能な態様で、それぞれ筐体2に取り付けられている。具体的には、複数のスピーカは、内側方向と外側方向とに向きを変更可能な態様で、それぞれ筐体2に取り付けられている。ここで、内側方向は、装着状態において、ウェアラブルオープンスピーカ1を装着するユーザが位置する方向であり、外側方向は、その反対方向である。本実施形態のように、ウェアラブルオープンスピーカ1が、ユーザが首に装着するネックスピーカである場合、内側方向は、装着状態においてユーザの首が位置する方向である。つまり、スピーカを内側方向に向けた場合、スピーカから出力される音は、ユーザの方向に向かって出力され、スピーカを外側方向に向けた場合、スピーカから出力される音は、ユーザから遠ざかる方向に向かって出力される。複数のスピーカは、例えばユーザが指で向きを変更可能に、それぞれ筐体2に取り付けられている。
【0055】
ユーザは、ウェアラブルオープンスピーカ1からマスキング音と目的音とを出力させるにあたり、複数のスピーカの向きを、それぞれ指で調整する。例えば、ユーザは、マスキング音が出力されるスピーカの向きを、外側方向に向け、目的音が出力されるスピーカの向きを、内側方向に向ける。上記実施形態の例では、例えば、マスキング音が第1スピーカ3aから出力され、目的音が第2スピーカ3bから出力される場合、ユーザは、第1スピーカ3aを外側方向に向け、第2スピーカ3bを内側方向に向ける。この状態で、ユーザは、ウェアラブルオープンスピーカ1からマスキング音と目的音とを出力させる。すると、マスキング音が、外側方向に向けられた第1スピーカ3aから出力されるので、ユーザが聞くことを目的としていないマスキング音は、ユーザの周囲に向かって出力される。一方、目的音が、内側方向に向けられた第2スピーカ3bから出力されるので、ユーザが聞くことを目的としている目的音は、ユーザに向かって出力される。そのため、ユーザは、目的音をより聞き取りやすくなる。
【0056】
上述のように複数のスピーカの向きがそれぞれ調整可能に構成されている状態において、制御部6は、複数のスピーカの向きに応じて、マスキング音を出力させるスピーカと、目的音を出力させるスピーカとを、決定してよい。例えば、筐体2には、音出力部3を構成する複数のスピーカのそれぞれの向きを検出可能な機構が取り付けられている。具体的には、例えばスピーカの筐体2への取り付け位置の側面に、筐体2の外部からは視認できないスイッチが取り付けられている。当該スイッチは、スピーカが第1方向(例えば外側方向)に向いている場合には、オンの状態(つまり押された状態)となり、スピーカが第2方向(例えば内側方向)を向いている場合には、オフの状態(つまり押されていない状態)となるように、配置されている。これにより、スイッチのオン状態又はオフ状態に基づいて、スピーカの向きを検出することができる。あるいは、例えば、スピーカは無段階で向きを変えることができるように、筐体2に取り付けられており、スイッチによってスピーカがどの角度にあるかを検出するように構成されていてもよい。
【0057】
制御部6は、当該機構により、複数のスピーカのそれぞれの向きの情報を取得する。制御部6は、スピーカの向きの情報に基づいて、各スピーカについて、マスキング音及び目的音のいずれを出力させるかを決定する。例えば、制御部6は、外側方向に向けられたスピーカを、マスキング音を出力させるスピーカと決定する。また、制御部6は、内側方向に向けられたスピーカを、目的音を出力させるスピーカと決定する。上記実施形態の例では、例えば、ユーザが、第1スピーカ3aを外側方向に向け、第2スピーカ3bを内側方向に向けているとする。制御部6は、第1スピーカ3aと第2スピーカ3bとの向きの情報を取得する。そして、制御部6は、外側方向に向いている第1スピーカ3aを、マスキング音を出力させるスピーカと決定する。また、制御部6は、内側方向に向いている第2スピーカ3bを、目的音を出力させるスピーカと決定する。そして、制御部は、決定に従い、第1スピーカ3aからマスキング音を出力させ、第2スピーカ3bから目的音を出力させる。この場合、ユーザは、スピーカの向きを変更することにより、マスキング音を出力させるスピーカと、目的音を出力させるスピーカとを決定することができる。そのため、より簡便にマスキング音を出力させるスピーカと、目的音を出力させるスピーカとを決定することができる。
【0058】
上記実施形態では、ウェアラブルオープンスピーカ1の音出力部3が2つのスピーカを備える場合について説明したが、音出力部3が備えるスピーカの数は、必ずしも2つでなくてもよく、3つ以上であってもよい。例えば、音出力部3が3つのスピーカを備える場合、ウェアラブルオープンスピーカ1は、
図1に示す第1スピーカ3a及び第2スピーカ3bに加え、第3スピーカを備える。第1スピーカ3a及び第2スピーカ3bは、例えば
図1に示す位置に配置され、第3スピーカは、例えば筐体2において第1スピーカ3aと第2スピーカ3bとの中間の位置に配置される。つまり、第3スピーカは、装着状態において、ユーザの首の裏側の位置に配置される。この場合、制御部6は、例えば、第1スピーカ3a及び第2スピーカ3bから目的音を出力させ、第3スピーカからマスキング音を出力させることができる。これにより、目的音を出力させるスピーカが複数設けられるため、目的音の音量が確保されることとなり、ユーザが目的音を聞き取りやすくなるとともに、第3スピーカにより、マスキング音が出力されるため、意味ある音漏れを抑制することができる。
【0059】
本実施形態において、制御部6は、周囲の音の音量に基づいて、音出力部3から出力するマスキング音の音量を調整してもよい。例えば、ウェアラブルオープンスピーカ1の音入力部4は、ウェアラブルオープンスピーカ1の周囲の音を取得する。音入力部4が取得した音は、データに変換されて制御部6に提供される。制御部6は、取得した周囲の音のデータに基づいて、音出力部3から出力するマスキング音の音量を調整する。このとき、制御部6は、例えば、周囲の音の音量が小さいほど、音出力部3から出力するマスキング音の音量を大きくする。反対に、制御部6は、例えば、周囲の音の音量が大きいほど、音出力部3から出力するマスキング音の音量を小さくする。例えば、制御部6は、周囲の音の音量が、所定の閾値未満である場合、第1の音量でマスキング音を出力し、周囲の音の音量が、所定の閾値以上である場合、第1の音量よりも小さい第2の音量でマスキング音を出力する。この場合の、閾値、第1の音量及び第2の音量については、例えば予め定められ、記憶部7に記憶されている。また、閾値は、必ずしも1つでなくてもよく、複数設けられていてよい。閾値が複数設けられる場合、音量も閾値の数に合わせて、複数段階設定されてよい。
【0060】
周囲の音の音量が小さいほど、音出力部3から出力される目的音が周囲に漏れる可能性が高くなるため、制御部6は、これを防ぐためにマスキング音の音量を大きくする。これにより、周囲の音の音量が小さい場合に、意味ある音漏れを抑制することができる。一方、周囲の音の音量が大きいほど、周囲の音により、ウェアラブルオープンスピーカ1の音出力部3から出力される目的音が周囲に聞き取られる可能性が低くなる。つまり、音出力部3から出力される目的音が周囲に漏れる可能性が低くなるため、マスキング音の音量を小さくしても意味ある音漏れの可能性が低い。そのため、制御部6は、マスキング音の音量を小さくしてよい。
【0061】
本実施形態において、制御部6は、音出力部3から出力され、音入力部4で取得されたマスキング音については、当該マスキング音をキャンセルする処理を実行することができる。例えば、ユーザがウェブ会議又は電話などにおいて、ウェアラブルオープンスピーカ1を使用しているとする。この場合、制御部6は、音入力部4で取得された、ユーザの発言などの音を、音データとして外部装置に送信する。このとき、音出力部3からマスキング音が出力されていると、音入力部4では、当該マスキング音も取得される。しかしながら、マスキング音についても音データとして外部装置に送信した場合、外部装置を用いて会議や会話をしている相手側の装置において、マスキング音が出力され、相手側はユーザの発言が聞き取りづらくなる。
【0062】
そこで、制御部6は、音出力部3から出力され、音入力部4で取得されたマスキング音については、当該マスキング音をキャンセルする処理を実行する。制御部6は、例えば公知のエコーキャンセル技術と同様の原理を用いて、マスキング音をキャンセルする処理を実行することができる。具体的には、制御部6は、音出力部3からマスキング音を出力している場合、音入力部4で取得された音の音データに対して、マスキング音の反転波形、つまり逆位相の波形を合成する。そして、反転波形を合成した後の音データを、外部装置に送信する。これにより、マスキング音をキャンセルすることができる。マスキング音をキャンセルすることで、相手側に、マスキング音が出力されなくなるため、ユーザの発言を聞き取りやすくなる。
【0063】
本実施形態において、制御部6は、音入力部4によりユーザの声を取得している場合にも、マスキング音を音出力部3から出力させてよい。これにより、ユーザの声がマスキング音によってマスキングされ、周囲に聞き取られにくくなる。なお、音入力部4が取得している音がユーザの声であるか否かは、音出力部4により取得される音の音圧により判定することができる。例えば、制御部6は、音出力部4により取得される音の音圧が、所定の音圧以上である場合、ユーザの声であると判定する。制御部6は、音入力部4によりユーザの声を取得している場合に音出力部3から出力させるマスキング音の音量を、音出力部3から目的音を出力している場合に音出力部3から出力させるマスキング音の音量よりも大きくしてもよい。
【0064】
本実施形態において、制御部6は、音入力部4により取得した音を、マスキング音として音出力部3から出力してもよい。つまり、制御部6は、周囲の環境音をそのままマスキング音として利用することができる。
【0065】
音出力部3が備える複数のスピーカは、それぞれ役割が予め定められていてもよい。例えば、音出力部3が備える第1スピーカ3aと第2スピーカ3bとのうち、第1スピーカ3aは、マスキング音を出力するスピーカとして機能し、第2スピーカ3bは、目的音を出力するスピーカとして機能するように、構成されていてよい。この場合、マスキング音を出力するスピーカは、外側方向に向いた状態で筐体2に取り付けられ、目的音を出力するスピーカは、内側方向に向いた状態で筐体2に取り付けられてよい。例えば
図4に示すように、マスキング音を出力する第1スピーカ3aが、外側方向に向いた状態で筐体2に取り付けられ、目的音を出力する第2スピーカ3bが、内側方向に向いた状態で筐体2に取り付けられていてよい。このように、マスキング音を出力するスピーカが外側方向に向けられていることにより、マスキング音がユーザの周囲に向かって出力される一方、目的音がユーザに向かって出力されるため、ユーザは、目的音をより聞き取りやすくなるとともに、意味ある音漏れを抑制しやすくなる。
【0066】
音出力部3が備える複数のスピーカのうち、マスキング音を出力するスピーカは、装着状態において、ユーザの背中側又は前側に位置するように、筐体2に取り付けられていてよい。仮に、マスキング音を出力するスピーカが、装着状態においてユーザの耳の近傍に位置する場合には、ユーザの顔により、目的音を出力するスピーカが配置される側の周囲にマスキング音が届き難い場合がある。例えば、
図1に示す例において、第1スピーカ3aが、マスキング音を出力するスピーカであるとした場合、第1スピーカ3aから見て第2スピーカ3b側には、ユーザの顔が位置することになる。これにより、第1スピーカ3aから出力された音は、第2スピーカ3b側に届きにくくなる場合がある。これに対し、マスキング音を出力するスピーカが、ユーザの背中側又は前側に位置するように配置されることにより、この問題を解決しやすくなる。
【0067】
音出力部3が備える複数のスピーカのうち、マスキング音を出力するスピーカは、目的音を出力するスピーカよりも、装着状態において、ユーザの耳から遠い位置に配置されていることが好ましい。これにより、目的音を出力するスピーカが、ユーザの耳により近い位置に配置されるため、ユーザは目的音を聞きやすくなる。また、マスキング音はユーザに聞かせる必要がないため、マスキング音を出力するスピーカがより遠い位置に配置されたとしても、目的音を聞くユーザの障害にはならない。
【0068】
例えば、音出力部3が備える複数のスピーカは、筐体2において、互いに背中合わせの位置関係となるように配置されていてよい。具体的には、第1スピーカ3aと第2スピーカ3bとは、
図5に示すように、筐体2の近接する位置において、一方(
図5では第1スピーカ3a)が外側方向を向き、他方(
図5では第2スピーカ3b)が内側方向を向くように、配置されていてよい。この配置において、第1スピーカ3aからマスキング音を出力し、第2スピーカ3bから目的音を出力することにより、マスキング音を、目的音の音源により近い位置で出力するさせることができる。つまり、マスキング音を出力する第1スピーカ3aを、目的音を出力する第2スピーカ3bよりも、装着状態において、ユーザの耳から遠い位置に配置することができる。そのため、目的音の意味ある音漏れを抑制しやすくなる。なお、複数のスピーカは、
図5に示すように背中合わせに配置されていなくてもよく、互いに近接する位置に配置されていれば、上記効果を奏することができる。
【0069】
あるいは、例えば、音出力部3が備える複数のスピーカは、筐体2において、左右非対称の位置に配置されていてよい。具体的には、複数のスピーカは、筐体2に沿った方向の位置を、左右でずらすことにより、左右非対称の位置に配置することができる。一例として、
図6に示すように、第1スピーカ3aを、装着状態におけるユーザの右側において、筐体2の端部に配置してよい。これにより、第1スピーカ3aと第2スピーカ3bとが、左右非対称の位置に配置される。この配置において、第1スピーカ3aからマスキング音を出力し、第2スピーカ3bから目的音を出力することにより、マスキング音を、目的音の音源により近い位置で出力するさせることができる。つまり、マスキング音を出力する第1スピーカ3aを、目的音を出力する第2スピーカ3bよりも、装着状態において、ユーザの耳から遠い位置に配置することができる。そのため、目的音の意味ある音漏れを抑制しやすくなる。
【0070】
なお、この場合、第1スピーカ3aは、必ずしも筐体2の端部に配置されていなくてもよく、第2スピーカ3bとは左右非対称となる位置に配置されていればよい。左右非対称であれば、ユーザの左右の耳と複数のスピーカとの距離を、それぞれ異ならせることができるためである。
【0071】
また、上述したように複数のスピーカを背中合わせに配置する場合において、複数のスピーカの筐体2に沿った方向の位置を、さらにずらしてもよい。これにより、マスキング音を出力するスピーカと、目的音を出力するスピーカとの距離を、さらに広げることができる。
【0072】
本実施形態では、ウェアラブルオープンスピーカ1が、マスキング音と目的音との双方を出力する場合の例について説明した。しかしながら、ウェアラブルオープンスピーカ1は、必ずしもマスキング音と目的音とを同時に出力しなくてもよい。例えば、ウェアラブルオープンスピーカ1は、音出力部3が備える全てのスピーカから、マスキング音のみを出力してもよい。例えば、ユーザは、対面で打合せなどを行う場合に、ウェアラブルオープンスピーカ1を装着し、音出力部3が備える全てのスピーカから、マスキング音のみを出力させてもよい。これにより、ウェアラブルオープンスピーカ1からマスキング音が出力されるので、ユーザが打合せで話している内容が、周囲に聞き取られにくくなり、情報漏洩を防ぎやすくなる。つまり、本実施形態に係るウェアラブルオープンスピーカ1は、持ち運び可能な遮音スピーカとして用いることができる。なお、この場合には、ウェアラブルオープンスピーカ1は、必ずしも外部装置と接続されていなくてもよい。
【0073】
上記実施形態では、ウェアラブルオープンスピーカ1は、外部装置と接続された状態において、外部装置で再生される音を目的音として出力する場合について説明した。しかしながら、ウェアラブルオープンスピーカ1は、必ずしも外部装置で再生される音を目的音として出力しなくてもよい。例えば、ウェアラブルオープンスピーカ1は、記憶部7にコンテンツを記憶しており、当該記憶部7に記憶されたコンテンツの音を目的音として出力してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、ウェアラブルオープンスピーカ1がネックスピーカである場合について説明した。しかしながら、ウェアラブルオープンスピーカ1は、必ずしもネックスピーカに限られず、ユーザが身体に装着して使用する、開放型のスピーカであれば、上記実施形態で説明した構成を適用し得る。
【0075】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の機能部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 ウェアラブルオープンスピーカ
2 筐体
3 音出力部
3a 第1スピーカ
3b 第2スピーカ
4 音入力部
5 操作部
6 制御部
7 記憶部
8 通信部