(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101576
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005524
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】加戸 稔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB43
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE58
5H730FD26
5H730FF06
(57)【要約】
【課題】同期整流トランジスタのターンオフ直前のボディダイオードによる整流期間を短くして損失を低減することができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】トランスの二次側コイルの電流を導通/遮断する同期整流素子と該同期整流素子をオン/オフ駆動する同期制御回路とを備えた同期整流型スイッチング電源装置において、同期制御回路に、同期整流素子をターンオンするタイミングを検出する検出回路と、同期整流素子をターンオフするタイミングを検出する検出回路と、前記オンタイミング検出回路の出力信号および前記オフタイミング検出回路の出力信号に基づいて前記同期整流素子のオン/オフ制御信号を生成するオン/オフ制御回路とを設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側に入力電圧を受けるトランスと、該トランスの二次側コイルの電流を導通/遮断する同期整流素子と、該同期整流素子をオン/オフ駆動する同期制御回路と、を備えた同期整流型スイッチング電源装置において、
前記同期制御回路は、
前記同期整流素子の端子電圧に基づいて当該同期整流素子をターンオンするタイミングを検出するオンタイミング検出回路と、
前記同期整流素子の端子電圧と所定のしきい値電圧とを比較して当該同期整流素子をターンオフするタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記オンタイミング検出回路の出力信号および前記オフタイミング検出回路の出力信号に基づいて前記同期整流素子のオン/オフ制御信号を生成するオン/オフ制御回路と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記同期制御回路は、さらに、
前記同期整流素子のターンオフタイミングよりも前に前記同期整流素子のゲート端子の電荷を引き抜いて電圧を低下させるディスチャージ回路と、
前記オフタイミング検出回路が前記同期整流素子のターンオフタイミングを検出するために用いるターンオフしきい値電圧を、前記同期整流素子の端子電圧の変化に基づいて、前記同期整流素子のターンオフタイミングが前記同期整流素子に流れる電流がゼロになるポイントに近づくように補正する電圧調整回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記ディスチャージ回路は、ディスチャージ開始後、前記同期整流素子の制御電圧が当該同期整流素子のオフ状態となる電位に降下する前にディスチャージを停止して、前記同期整流素子をディスチャージ開始前の低オン抵抗の状態から高オン抵抗の状態へ移行させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記電圧調整回路は、前記同期整流素子のターンオン後、当該同期整流素子のオン抵抗の増加またはドレイン電流の増加によるドレイン電圧波形の変化に基づいて、前記ターンオフしきい値電圧を設定するように構成されている事を特徴とする請求項2または3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記同期制御回路は、前記同期整流素子の端子電圧が低下したこと検出する電圧低下検出回路と、
前記電圧低下検出回路の検出結果に応じて前記ターンオフしきい値電圧を調整する電圧調整回路と、を備えていることを特徴とする請求項2または3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記電圧調整回路は、前記電圧低下検出回路が前記同期整流素子の端子電圧が低下したことを判定した場合に、前記電圧調整回路により、オフタイミングが遅くなるように前記ターンオフしきい値電圧を調整するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記電圧調整回路は、前記電圧低下検出回路が前記同期整流素子の端子電圧が低下しないことを判定した場合に、前記電圧調整回路により、オフタイミングが早くなるように前記ターンオフしきい値電圧を調整するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記同期制御回路は、
前記同期整流素子の端子電圧が所定の電位以下に下がっている状態を検出する第1検出回路と、
前記ディスチャージ回路がディスチャージ動作を開始した後に前記同期整流素子の端子電圧が低下したことを検出する第2検出回路と、を備え、
前記電圧調整回路は、
前記第2検出回路の出力信号を、前記第1検出回路の出力信号の変化に応じて取り込む第1ラッチ回路と、
前記オンタイミング検出回路の出力信号の変化に応じて所定のパルス幅を有するパルス信号を生成するパルス生成回路と、
前記第1ラッチ回路の出力信号と前記パルス生成回路により生成された前記パルス信号との論理積をとる第1論理回路と、
前記第1ラッチ回路の反転出力信号と前記パルス生成回路により生成された前記パルス信号との論理積をとる第2論理回路と、
を備え、前記第1論理回路の出力信号に基づいて前記ターンオフしきい値電圧を所定量だけ高い方へ変化させ、前記第2論理回路の出力信号に基づいて前記ターンオフしきい値電圧を所定量だけ低い方へ変化させるように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記同期制御回路は、前記電圧調整回路が前記ターンオフしきい値電圧を所定量だけ高い方へ変化させるのを禁止する判定回路を備え、
前記判定回路は、前記同期整流素子がターンオフされてから前記端子電圧が上昇するまでの時間が予め設定された所定時間以下の場合には、前記電圧調整回路が前記ターンオフしきい値電圧を高い方へ変化させるのを禁止するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記判定回路は、前記オフタイミング検出回路の出力信号の変化に応じて前記所定時間の計時を開始するタイマ回路と、前記第1検出回路の出力信号の変化に応じて前記タイマ回路の出力信号の状態を取り込む第2ラッチ回路と、を備え、
前記第2ラッチ回路の出力信号が前記第1論理回路に入力されるように構成されていることを特徴とする請求項9に記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
前記しきい値電圧を設定する電圧調整回路を備え、
前記電圧調整回路は、前記同期整流素子のターンオン後、当該同期整流素子のオン抵抗の増加またはドレイン電流の増加によるドレイン電圧波形の変化に基づいて、前記オフタイミング検出回路が前記同期整流素子のターンオフタイミングを検出するために用いるターンオフしきい値電圧を設定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換用のトランスを備えたスイッチング制御方式の直流電源装置に関し、例えばトランスの二次側に同期整流回路を備えた絶縁型DC-DCコンバータに利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源装置の1つとして、トランスの一次側コイルに間欠的に電流を流すためのスイッチング素子としてのMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)および該素子をオン/オフ制御する制御回路(IC)を備えたスイッチング電源装置(絶縁型DC-DCコンバータ)がある。この種のスイッチング電源装置には、一次側コイルに電流を流すことで二次側コイルに誘起された電流を整流素子により整流し、コンデンサで平滑して出力するものがある。しかるに、二次側回路の整流素子としてダイオードを用いた絶縁型DC-DCコンバータにおいては、整流用のダイオードにおける損失が大きく効率を低下させる原因となる。
【0003】
そこで、二次側回路の整流用ダイオードの代わりに同期整流用のスイッチング素子(MOSトランジスタ)を設けるとともに、二次側制御回路によって同期整流素子の端子電圧(ソース-ドレイン間電圧)を検出し、一次側回路のスイッチング素子のオフタイミングに同期して二次側同期整流素子をターンオン制御することによって、整流素子における損失を減らし高効率化を図るようにした技術がある。
なお、同期整流方式のスイッチング電源装置において、二次側同期整流素子のオフタイミングを調整することで、低損失化を図るようにした発明として、例えば特許文献1に記載されているものがある。二次側同期整流素子は、電流がゼロになった時点でオフされるのが理想的なタイミングである。
【0004】
上記特許文献1に記載されている発明は、同期整流用のスイッチング素子のボディダイオードに順方向電流が流れる第1タイミングを検出する第1タイミング検出回路と、同期整流用スイッチング素子のオン/オフ制御信号の変化タイミングを検出する第2タイミング検出回路と、ボディダイオードがオフした瞬間に発生する逆起電圧で第3タイミングを検出する第3タイミング検出回路と、を備え、第1タイミングで同期整流用スイッチング素子をオンさせ、第3タイミングよりも前に同期整流用スイッチング素子をオフさせるとともに、このスイッチング素子のオフタイミングを第3タイミングに近づけるように同期整流用スイッチング素子のオン/オフ制御信号を生成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4862432号公報
【特許文献2】米国特許第1078479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている同期整流方式のスイッチング電源装置においては、同期整流用のMOSトランジスタのゲート容量が大きい場合、
図7に示すように、ドレイン端子VDの電圧がターンオフしきい値電圧VTH_OFFに達したことを検知したターンオフ検知時に、ゲート端子VGの電圧を立下げるべくゲート容量の電荷を引き抜くディスチャージ電流のピークが高くなる。そのため、高周波ノイズが発生する原因となるという問題点がある(問題点1)。
【0007】
また、同期整流用のMOSトランジスタのオン抵抗を低く抑えるため充分に高いゲート電圧が印加されるように、制御回路が設定されている場合、
図8に実線で示すように、ゲート端子VGの電圧が低い場合(一点鎖線)に比べて同期整流トランジスタのドレイン電流Idが低下してもドレイン端子VDの電圧がなかなか上昇しないため、ターンオフタイミングを精度よく検出することができない。
また、オン抵抗が小さく設定されている条件下でしきい値電圧Vth_OFFがプラス側にばらついた場合、オフタイミングの検出が遅れて、
図9に破線で示すように、ドレイン電流Idが逆流してドレイン端子VDの電圧にサージSが発生してしまう。そのため、同期整流トランジスタを早めにターンオフしてボディダイオードによる整流期間を設ける必要がある。しかし、ターンオフのタイミングが早過ぎると、ボディダイオードに電流が流れる時間が長くなり損失が増加してしまうという問題点がある(問題点2)。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記2つの問題点を解決する方法について検討した。そして、2つの解決方法を考えついた。1つ目の解決方法は、同期整流トランジスタのターンオフしきい値電圧VTH_OFFを調整する機能(補正回路)を同期整流制御回路に設けるというもの、2つ目の解決方法は、同期整流トランジスタのターンオフ時のゲート電圧を直前に低くするというものである。なお、上記2つ目の解決方法に関連して、従来、ターンオフ時のゲート電圧を低くする制御を行うようにしたICが提供されている。また、ゲート電圧波形が類似しているスイッチング電源装置に関する発明が特許文献2に記載されている。
【0009】
しかし、上記1つ目の解決方法にあっては、ドレイン端子VDの電圧の波形の傾きが緩やかな条件においては、ターンオフしきい値電圧VTH_OFFの調整時の補正精度の影響を受け易くなり、精度の高い補正回路を採用すると補正回路の規模が増大する。また、低い補正精度に合わせてターンオフを早くすると、ボディダイオード整流期間が長くなって損失が増加するという問題点があることが分かった(問題点3)。
【0010】
一方、ターンオフ時のゲート電圧を低くする2つ目の解決方法は、ターンオフ時のディスチャージ電流のピークを低下させ、高周波ノイズを抑制することができるという利点がある。また、ドレイン電圧波形の傾きは同期整流トランジスタのオン抵抗によって異なることから、2つ目の解決方法は、ターンオフ直前にゲート電圧を低くしてオン抵抗を増加させることで、ドレイン電圧波形の上昇傾きを大きくして、ターンオフ直前のボディダイオードによる整流期間を短くすることができるという利点がある。
【0011】
しかし、上記2つ目の解決方法にあっては、ターンオフしきい値及びディスチャージ開始電圧はICの製造バラツキによってバラツキが生じるため、ディスチャージが開始する前にターンオフ動作へ移行しないようにするには、
図10に示すように、ターンオフしきい値電圧VTH_OFFとディスチャージ開始電圧VTH_DSとの間に誤動作防止用のマージンを含んだ電位差ΔVを設ける必要がある。また、ディスチャージ開始電圧が低いと、
図11に一点鎖線で示すように、ディスチャージ開始ポイントTdsが早まりゲート端子VGの電圧が早い段階で低下してオン抵抗が増加するので、導通損失が増加するおそれがあるという問題点があることが分かった(問題点4)。
【0012】
この発明は上記のような問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、同期整流トランジスタのターンオフ時の電流ピークを低下させ、高周波ノイズを抑制することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
この発明の他の目的は、同期整流トランジスタのターンオフ直前のボディダイオードによる整流期間を短くして損失を低減することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
この発明のさらに他の目的は、同期整流トランジスタのターンオフしきい値を最適な電圧値に調整することで、ディスチャージ開始電圧レベルを高く設定することができ、それによって導通損失の増加を抑えることができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、
一次側に入力電圧を受けるトランスと、該トランスの二次側コイルの電流を導通/遮断する同期整流素子と、該同期整流素子をオン/オフ駆動する同期制御回路と、を備えた同期整流型スイッチング電源装置において、
前記同期制御回路は、
前記同期整流素子の端子電圧に基づいて当該同期整流素子をターンオンするタイミングを検出するオンタイミング検出回路と、
前記同期整流素子の端子電圧と所定のしきい値電圧とを比較して当該同期整流素子をターンオフするタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記オンタイミング検出回路の出力信号および前記オフタイミング検出回路の出力信号に基づいて前記同期整流素子のオン/オフ制御信号を生成するオン/オフ制御回路と、
を備えるようにしたものである。
また、前記同期制御回路は、さらに、前記同期整流素子のターンオフタイミングよりも前に前記同期整流素子のゲート端子の電荷を引き抜いて電圧を低下させるディスチャージ回路と、
前記オフタイミング検出回路が前記同期整流素子のターンオフタイミングを検出するために用いるターンオフしきい値電圧を、前記同期整流素子の端子電圧の変化に基づいて、前記同期整流素子のターンオフタイミングが前記同期整流素子に流れる電流がゼロになるポイントに近づくように補正する電圧調整回路と、を備えるようにする。
【0014】
上記のような構成を有するスイッチング電源装置によれば、同期整流素子(同期整流トランジスタ)がターンオフする前にゲート端子の電荷を引き抜くディスチャージ回路を備えるため、同期整流トランジスタのターンオフ時の電流ピークを低下させ、高周波ノイズを抑制することができる。
また、電圧調整回路が、同期整流素子(同期整流トランジスタ)のターンオフタイミングを、同期整流トランジスタに流れる電流がゼロになるポイントに近づけるように、同期整流トランジスタのターンオフしきい値電圧を補正するため、同期整流トランジスタのターンオフ直前のボディダイオードによる整流期間を短くして損失を低減することができる。さらに、同期整流トランジスタのターンオフしきい値を最適な電圧値に調整することで、ディスチャージ開始電圧レベルを高く設定することができ、それによって導通損失の増加を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に従うと、同期整流トランジスタのターンオフ時の電流ピークを低下させ、高周波ノイズを抑制することができる。また、同期整流トランジスタのターンオフ直前のボディダイオードによる整流期間を短くして損失を低減することができる。さらに、同期整流トランジスタのターンオフしきい値を最適な電圧値に調整することで、ディスチャージ開始電圧レベルを高く設定することができ、それによって導通損失の増加を抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用した同期整流型のDCコンバータの一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1のDCコンバータの同期整流制御回路(IC)を構成する電圧調整回路の構成例を示す回路構成図である。
【
図3】
図1のDCコンバータの同期整流制御回路(IC)を構成する保護判定回路の構成例を示す回路構成図である。
【
図4】
図1のDCコンバータの同期整流トランジスタのドレイン電圧および同期整流制御回路内の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図4におけるT0期間を拡大して示す波形図である。
【
図6】保護判定回路による保護機能が働く場合における同期整流制御回路内の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図7】一般的な同期整流方式のDCコンバータにおける同期整流トランジスタのターンオフ時のドレイン電圧とゲート電圧とディスチャージ電流の変化の様子を示す波形図である。
【
図8】一般的な同期整流方式のDCコンバータにおける同期整流トランジスタのゲート電圧が高い場合と低い場合のドレイン電圧とゲート電圧とディスチャージ電流の変化の様子を示す波形図である。
【
図9】同期整流トランジスタのゲート電圧が高い場合と低い場合にそれぞれターンオフしきい値がばらついた際のドレイン電圧の変化の様子を示す波形図である。
【
図10】ターンオフの直前に同期整流トランジスタのゲート端子をディスチャージする方式のDCコンバータにおけるターンオフ前後のドレイン電圧とゲート電圧の変化の様子を示す波形図である。
【
図11】ターンオフの直前に同期整流トランジスタのゲート端子のディスチャージを開始するための開始しきい値電圧を高くした場合と低くした場合におけるターンオフ前後のドレイン電圧とゲート電圧の変化の様子を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明を適用した同期整流方式のDCコンバータの一実施形態を示す。
本実施形態のDCコンバータは、特に限定されるものではないが、一次側コイルに直流電圧が入力されるトランスTRを備える。このトランスTRの二次側コイルLsの一方の端子は、Nチャネル形MOSトランジスタからなる同期整流素子(同期整流トランジスタ)Q1を介して接地点に接続されている。
また、二次側コイルLsの他方の端子は出力端子OUTに接続され、OUTと接地点との間には平滑用コンデンサCoが接続されている。従って、同期整流トランジスタQ1のソース端子は、接地点に接続されることとなる。
【0018】
なお、トランスTRの一次側コイルと直列にスイッチング素子が接続され、このスイッチング素子が一次側の制御回路によって間欠的にオン、オフされて、トランスTRにエネルギーが蓄積される。そして、二次側コイルLsに誘起された電流が同期整流トランジスタQ1により整流され、平滑用コンデンサCoによって平滑されて出力端子OUTよりVout電圧が出力される。AC-DCコンバータの場合、トランスTRの一次側コイルに入力される直流電圧は、交流(AC)がダイオードブリッジで整流され平滑用コンデンサによって平滑された電圧とされる。
【0019】
さらに、この実施形態のDCコンバータには、上記同期整流トランジスタQ1のドレイン電圧Vdが入力される外部端子VDおよび上記同期整流トランジスタQ1のゲート制御電圧VGSを出力する外部端子VGを備える同期整流制御回路10が設けられている。また、図示しないが、同期整流制御回路10には、回路動作の基準となる基準電位が印加されるグランド端子が設けられている。従って、同期整流制御回路10は、同期整流トランジスタQ1のドレイン・ソース間電圧を監視することができる。なお、本実施形態における同期整流制御回路10は、1個の半導体チップ上に半導体集積回路(IC)として、または1つのパッケージ内に実装された半導体装置として構成されている。
また、同期整流制御回路10は、電源端子を備え、この電源端子には出力端子OUTより出力される電圧Voutが印加され、出力電圧Voutをシリーズレギュレータ等により降圧した電圧REGを電源電圧として内部回路が動作するように構成されている。
【0020】
また、同期整流制御回路10には、外部端子VDに入力される上記同期整流トランジスタQ1のドレイン電圧Vdに基づいて、同期整流トランジスタQ1をオンするタイミングを検出するオン検出回路11と、同期整流トランジスタQ1をオフするタイミングを検出するオフ検出回路12が設けられている。オン検出回路11は、ドレイン電圧Vdとしきい値電圧Vth_ONとを比較して、オフ検出回路12はドレイン電圧Vdとしきい値電圧Vth_OFFとを比較して、それぞれタイミングの検出を行う。
また、同期整流制御回路10には、同期整流トランジスタQ1のドレイン電圧Vdとしきい値電圧Vth1,Vth2,Vth3とを比較して大小を検出するドレイン電圧検出回路13A,13B,13Cと、同期整流トランジスタQ1のドレイン電圧Vdを監視して、Q1のゲート端子のディスチャージ開始タイミングを検出して、Q1のゲート端子(外部端子VG)のディスチャージを実行するディスチャージ回路14が設けられている。
【0021】
さらに、同期整流制御回路10は、上記オン検出回路11の出力信号ON_SIGとオフ検出回路12の出力信号OFF_SIGに基づいて、同期整流トランジスタQ1のオン/オフ制御信号ON/OFFを生成するオン/オフ制御回路15と、生成されたオン/オフ制御信号ON/OFFに基づいて外部端子VGを駆動してゲート制御電圧VGSを出力するゲートドライバ16を備えている。
具体的には、ドレイン電圧Vdがしきい値電圧Vth_ONよりも低くなると、ゲート制御電圧VGSがハイレベルに変化されて同期整流トランジスタQ1がオンされ、ドレイン電圧Vdがしきい値電圧Vth_OFFよりも高くなると、ゲート制御電圧VGSがロウレベルに変化されて同期整流トランジスタQ1がオフされる。
【0022】
上記オン検出回路11とオフ検出回路12およびドレイン電圧検出回路13A,13B,13Cは、コンパレータ(電圧比較回路)などにより構成することができる。ディスチャージ回路14は、コンパレータ(電圧比較回路)と、外部端子VGとトランジスタQ1のソース側と同一の回路動作の基準となる基準電位が印加されるグランド端子GNDとの間に接続されたディスチャージ用のスイッチ素子とより構成することができる。
ディスチャージ回路14は、同期整流トランジスタQ1のドレイン電圧Vdがディスチャージ開始電圧Vth4に達したと、判定するとディスチャージを実行する。
上記ターンオフしきい値電圧Vth_OFFは、同期整流トランジスタQ1のゲート端子の電荷がディスチャージされた後にQ1がオフされるようにするため、ディスチャージ開始電圧Vth4よりも高い値に補正される。そのため、ディスチャージ開始した後にドレイン電圧Vdがターンオフしきい値電圧Vth_OFFに達したと、上記オフ検出回路12が判定すると、オン/オフ制御回路15の出力信号ON/OFFが変化してゲートドライバ16によりゲート端子VGがロウレベルに駆動されて、同期整流トランジスタQ1がオフされる。具体的には、ドレイン電流Idsが0Aに近づくことで、ドレイン電圧Vdが、MOSトランジスタのドレイン電圧の式(Vd=Ids×(Ron+R)+L×dIds/dt)に従って変化し、ターンオフしきい値電圧Vth_OFFを超えることで同期整流用トランジスタQ1がオフされる。なお、ドレイン電圧の式中のRonは同期整流用トランジスタQ1オン抵抗、Rは配線パターンの寄生抵抗、Lは配線パターンの寄生インダクタンスである。
【0023】
また、本実施形態におけるディスチャージ回路14は、同期整流トランジスタQ1のゲート電圧が、MOSトランジスタのゲートしきい値電圧相当まで低下すると、トランジスタのオン抵抗が変化してドレイン電圧Vd波形に影響が現れるので、その変化を検出するとディスチャージを停止する。そして、その後、ドレイン電圧Vdがターンオフしきい値電圧Vth_OFFに達するとゲート端子VGがロウレベルに駆動されて同期整流トランジスタQ1がオフされる。これにより、同期整流トランジスタQ1のゲート電圧は、ターンオフの直前に段階的に変化することとなる(
図5参照)。ドレイン電流Id波形に合わせてドレイン電圧Vdが上昇することでターンオフしきい値電圧Vth_OFFに到達することとなる。なお、上記のような同期整流トランジスタQ1のゲート電圧の段階的変化は、例えばディスチャージ回路14に、タイマあるいはコンパレータを設けることで実現することができる。ゲート電圧の段階的変化は2段階に限定されず、しきい値電圧に到達するたびに補正することも可能であり、段階も別けることも可能である。
【0024】
ドレイン電圧検出回路13Aで用いられる上記しきい値電圧Vth1は、同期整流トランジスタQ1のドレイン電圧Vdに基づいて二次側導通期間の判定に使用するためのもので、一次側導通期間が終了してドレイン電圧VdがVth1以下に立ち下がるとハイレベルの信号VDLを出力する。また、ドレイン電圧Vdがさらに低下して、オン検出回路11の出力信号ON_SIGが変化し、オン/オフ制御回路15が、ターンオン条件(Vd<Vth_ON)が成立したと判定すると、同期整流トランジスタQ1のゲート電圧VGSがハイレベルに変化される。なお、ドレイン電圧検出回路13Aの出力信号VDLは、後述の保護判定回路17と電圧調整回路18へ供給される。
【0025】
ドレイン電圧検出回路13Bで用いられる上記しきい値電圧Vth2は、同期整流トランジスタQ1のオン抵抗の増加やドレイン電流Idの増加によりドレイン電圧Vdの波形が低下する状況を検出するためのもので、そのような状況をドレイン電圧検出回路13Bがしきい値電圧Vth2を用いて検出するとハイレベルの信号VD_fallを出力する。
ドレイン電圧検出回路13Cで用いられる上記しきい値電圧Vth3は、二次側導通期間が終了してドレイン電圧Vdが上昇したことを検出するためのものである。しきい値電圧Vth3はVth1よりも高い値に設定されており、ドレイン電圧検出回路13CがVd>Vth3の状態を検出するとVDP信号を出力する。この信号VDPは、ドレイン電圧検出回路13Bへ供給され、ドレイン電圧検出回路13Bは信号VDPがハイレベル(またはロウレベル)であることを条件に、
図4の実施例回路では、VD_fall信号は、しきい値電圧Vth2よりもドレイン電圧Vdが低下するとハイレベルに、VDP信号が検出されるとロウレベルに切替わる。
【0026】
さらに、本実施形態における同期整流制御回路10は、上記オフ検出回路12の出力信号OFF_SIGとドレイン電圧検出回路13Aの出力信号VDLに基づいて、保護動作をするか否かを判定し判定信号JDG_SGを生成する保護判定回路17と、オフ検出回路12で使用されるターンオフしきい値電圧Vth_OFFの調整を行う電圧調整回路18を備えている。電圧調整回路18は、ドレイン電圧検出回路13Aの出力信号VDLと、ドレイン電圧検出回路13Bの出力信号VD_fallと、保護判定回路17からの判定信号JDG_SGと、オン検出回路11の出力信号ON_SIGとに基づいて、Vth_OFFの調整を行う。
【0027】
具体的には、電圧調整回路18は、ドレイン電圧検出回路13Bからの信号VD_fallに基づいて、同期整流トランジスタQ1のオン抵抗の増加やドレイン電流Idの増加によりドレイン電圧Vdの波形が低下する状況が発生したと判定した場合に、ターンオフしきい値(Vth_OFF)を高くなる方向へ補正する。一方、そのような状況が発生していないと判定した場合、電圧調整回路18はターンオフしきい値(Vth_OFF)を低くなる方へ補正する機能を有する。つまり、Vth_OFFを、同期整流素子のターンオフタイミングが同期整流トランジスタに流れる電流がゼロになるポイントに近づくように補正する
かかる機能を設けたことにより、前述した、ターンオフを早くするとボディダイオード整流期間が長くなって損失が増加するという前述の問題点3やゲート電圧VGSが早い段階で低下してオン抵抗が増加して導通損失が増加するという問題点4を解決することができる。
【0028】
保護判定回路17は、予め設定された保護動作範囲(後述のT1)では、電圧調整回路18がターンオフしきい値(Vth_OFF)を高くする補正を実行するのを禁止する機能を有する。かかる機能を設けている理由は、深い電流連続モード等において、同期整流トランジスタQ1のオン抵抗の増加やドレイン電流Idの増加によりドレイン電圧Vdの波形が下り傾斜する状況が検出しにくい状況に対応するためである。保護動作範囲の判定により、ターンオフしきい値(Vth_OFF)の補正後の安定点を、ドレイン電流Idが逆流する手前に設定することができる。
【0029】
図2には
図1の同期整流制御回路10を構成する電圧調整回路18の具体的な回路構成例が、
図3には
図1の同期整流制御回路10を構成する保護判定回路17の具体的な回路構成例がそれぞれ示されている。
図2に示すように、電圧調整回路18は、ラッチ対象の信号が入力されるD端子を有するフリップフロップFF1と、上記オン検出回路11の出力信号ON_SIGの立ち上がりに応じてワンショットパルス信号PSを生成し出力するワンショットパルス生成回路OPGを備えている。上記フリップフロップFF1のクロック端子CLKには、上記ドレイン電圧検出回路13Aの出力信号VDLが入力されており、該信号VDLの立ち上がりに同期して、そのときD端子に入力されている信号VD_ fallを取り込んで保持する。
【0030】
また、電圧調整回路18は、上記フリップフロップFF1の出力Qと保護判定回路17からの判定信号JDG_SGとワンショットパルス生成回路OPGからのパルス信号PSを入力とするANDゲートG1と、上記フリップフロップFF1の反転出力/Qとワンショットパルス生成回路OPGからのパルス信号PSを入力とするANDゲートG2を備えている。
さらに、電圧調整回路18は、上記ANDゲートG1の出力信号によってオン/オフ制御されるスイッチ素子S1と、該スイッチ素子S1と内部電源電圧REGが印加される端子との間に接続された定電流源CC1と、上記ANDゲートG2の出力信号によってオン/オフ制御されるスイッチ素子S2と、該スイッチ素子S2と接地点との間に接続された定電流源CC2と、を備えている。そして、上記スイッチ素子S1とスイッチ素子S2とが直列に接続され、その接続ノードと接地点との間にコンデンサC1が接続されている。従って、スイッチ素子S1はコンデンサC1を充電するスイッチとして機能し、スイッチ素子S2はコンデンサC1を放電するスイッチとして機能する。なお、定電流源CC1、CC2は、カレントミラー回路からなる定電流源で構成することができる。
【0031】
一方、保護判定回路17は、
図3に示すように、上記オフ検出回路12の出力信号OFF_SIGの立ち上がりによって起動され予め設定された所定時間(T1)を計時するタイマ回路TMと、該タイマ回路TMのタイムアップ信号が入力されるD端子を有するフリップフロップFF2とを備えている。該フリップフロップFF2のクロック端子CLKには、上記ドレイン電圧検出回路13Aの出力信号VDLが入力されており、信号VDLの立ち上がりに同期して、そのときD端子に入力されているタイマ回路TMのタイムアップ信号を取り込んで保持する。そして、このフリップフロップFF2の出力信号Qが、判定信号JDG_SIGとして上記電圧調整回路18へ出力されるように構成されている。
なお、保護判定回路17は
図3の構成に限定されるものでなく、例えば後段の電圧生成回路(定電流源CC1,CC2、スイッチ素子S1,S2、コンデンサC1)の部分を、アップダウンカウンタとDA変換回路で構成することも可能である。
【0032】
保護判定回路17が上記のように構成されていることにより、オフ検出回路12がターンオフタイミングを検出して出力信号OFF_SIGが立ち上がるとタイマ回路TMが計時を開始し、所定の固定時間(T1)を計時する前にドレイン電圧検出回路13Aの出力信号VDLがロウレベルに変化すると、保護判定回路17はロウレベルの信号JDG_SIGを電圧調整回路18へ出力するため、電圧調整回路18による補正は禁止される。
【0033】
一方、タイマ回路TMが所定時間(T1)を計時した後にドレイン電圧検出回路13Aの出力信号VDLがロウレベルに変化すると、保護判定回路17はハイレベルの信号JDG_SIGを電圧調整回路18へ出力するため、電圧調整回路18によるターンオフしきい値(Vth_OFF)を高くする補正が禁止されない。つまり、同期整流素子がターンオフされてからドレイン電圧が上昇するまでの時間が予め設定された所定時間以下の場合には電圧調整回路18がターンオフしきい値(Vth_OFF)を高くする方向へ変化させるのが禁止されることとなる。なお、信号JDG_SIGは電圧調整回路18のANDゲートG2には入力されていないため、信号JDG_SIGのいかんにかかわらず、電圧調整回路18によるVth_OFFを低い方へ調整する補正は禁止されない。
【0034】
図4には、
図1のDCコンバータにおける同期整流トランジスタQ1のドレイン電圧Vdおよび同期整流制御回路10内の信号の変化(タイミングチャート)が示されている。
以下、
図4~
図6の波形図を参照しながら、
図1の同期整流制御回路10の動作について説明する。なお、
図4は同期整流制御回路10の5周期分の動作波形を示したもの、
図5は
図4におけるT0期間(Q1がターンオフする前後の期間)を拡大して示したものである。
【0035】
図5において、実線は同期整流トランジスタQ1が低オン抵抗のままターンオフしきい値(Vth_OFF)を補正した場合のドレイン電圧Vdとゲート電圧VGSと同期整流トランジスタQ1のドレイン電流Idの変化を示す。また、一点鎖線は同期整流トランジスタQ1が高オン抵抗の状態でVth_OFFを補正した場合のドレイン電圧Vdとゲート電圧VGSとQ1のドレイン電流Idの変化を示す。さらに、破線はVth_OFFの補正後の波形を表わしている。
【0036】
図5に示されているように、Q1が低オン抵抗の場合、ターンオフしきい値Vth_OFFの補正前においては、ドレイン電圧Vdが補正前のVth_OFFに達するとゲート電圧VGSがロウレベルに立ち下がり、同期整流トランジスタQ1がオフされる(t3)。また、Q1が低オン抵抗の場合、Vth_OFFの補正後においては、ドレイン電圧Vdが補正後のVth_OFF1に達すると、ゲート電圧VGSがロウレベルに立ち下がり同期整流トランジスタQ1がオフされる(t3’)。ここで、t3’はt3よりも、ドレイン電流Idが0に近いタイミングである。これにより、Q1が低オン抵抗の場合でも、Vth_OFFを補正することで、製造工程でVth_OFFがばらついたとしても、ボディダイオード整流期間が長くなって損失が増加するのを防止することができる。
【0037】
一方、Q1が高オン抵抗の場合、先ず低オン抵抗でドレイン電圧Vdがディスチャージ開始電圧Vth4に達したタイミングt1でゲート電圧VGSが下がり始め、それによってオン抵抗が増加するのに応じてドレイン電圧Vdが減少する。これをドレイン検出回路13Bが検出して出力信号VD_fallが変化することで、ゲート電圧VGSが低い状態に保持される(t2)。その後、ドレイン電圧Vdが上昇し、ターンオフしきい値Vth_OFFの補正前においては、ドレイン電圧Vdが補正前のVth_OFFに達すると、ゲート電圧VGSがロウレベルに立ち下がり同期整流トランジスタQ1がオフされる(t4)。
【0038】
また、ターンオフしきい値Vth_OFFの補正後においては、ドレイン電圧Vdが補正後のVth_OFF1に達するとゲート電圧VGSがロウレベルに立ち下がり同期整流トランジスタQ1がオフされる(t4’)。これにより、Q1が高オン抵抗の場合、Vth_OFFを補正することで、低オン抵抗の場合よりもさらにQ1のオフのタイミングを、ドレイン電流Idのゼロのポイントに近付けることができる。
従来のターンオフしきい値電圧及びディスチャージ開始電圧は製造バラツキや動作条件によってバラツキが生じるため、
図10に示すように、ターンオフしきい値電圧VTH_OFFとディスチャージ開始電圧VTH_DSとの間に誤動作防止用のマージンを含んだ電位差ΔVを設ける必要があるが、ディスチャージが開始する前にターンオフ動作へ移行しないようにするには、上記構成により、ディスチャージ開始電圧Vth4を比較的高い値に設定することが可能となり、それによってターンオフの直前にオン抵抗が高くなる期間を短くすることができる。その結果、Q1における導通損失を減少させることができるという利点がある。
【0039】
また、
図5において、T2はQ1が低オン抵抗の場合における電圧調整回路18によるターンオフしきい値Vth_OFFの補正が可能な範囲、T3はQ1が高オン抵抗の場合における電圧調整回路18によるVth_OFFの補正が可能な範囲である。
図5より、T3はT2よりも狭いつまりT3<T2であることが分かる。これにより、VTH_OFFの調整時の補正精度の影響を小さくすることができ、ターンオフ直前の同期整流トランジスタQ1のボディダイオードによる整流期間を、低オン抵抗の場合よりも短くして損失を小さくすることができる。なお、T3<T2となるのは、ドレイン電圧Vdの波形の上昇傾きが高オン抵抗の場合の方が急であることに起因する。
【0040】
次に、電圧調整回路18がターンオフしきい値Vth_OFFを高くする補正を実行するのを、保護判定回路17により禁止する機能とその利点について、
図5および
図6を用いて説明する。なお、
図5において、T1は保護判定回路17による保護動作が行われる範囲を示している。
本実施形態においては、電圧調整回路18がターンオフしきい値Vth_OFFを高くする補正を実行するのを禁止する機能があるため、
図6に示すように、ターンオフが保護動作範囲T1に差し掛かる破線Aで囲まれているような状況の下では、ドレイン電圧検出回路13Aの出力信号VDLの立ち上がりに同期して、ワンショットパルス生成回路OPGからパルス信号PSが出力されても、Vth_OFFを高くする補正は行われず、直前のレベルを維持することとなる。
【0041】
上記のようなVth_OFFを高くする補正を禁止する機能がない場合、電圧調整回路18がVth_OFFを高くする補正を実行することで、補正後の電圧Vth_OFF2が0Vよりも高くなり、ドレイン電流Idが負になるつまり同期整流トランジスタQ1に逆流が発生するおそれがある。そして、逆流が発生すると、
図5に破線Sで示すように、ドレイン電圧Vdにサージ電圧が発生してしまう。一方、上述したように、電圧調整回路18がVth_OFFを高くする補正を実行するのを禁止する機能があると、電圧調整回路18による補正後の電圧がVth_OFF2のように高くなるのを回避することができ、ドレイン電圧Vdにサージ電圧が発生するのを防止することができる。
【0042】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態の同期整流制御回路においては、コンパレータなどからなるドレイン電圧検出回路13Bが設けられていると説明したが、この検出回路13Bは、オン抵抗の増加や電流値の増加を検出できればよいため、ドレイン電圧Vdの波形の下り傾斜を検知して判定基準として用いるように構成しても良い。また、コンパレータ以外の回路として、必要な信号だけを取り出すロジック回路を設けても良い。
また、上記実施形態の同期整流制御回路においては、ターンオフしきい値(Vth_OFF)の補正のタイミングをオン検出回路11の出力信号ON_SIGに同期して行うようにしているが、他の信号(例えばVDL、VD_fall)に同期して行うようにしても良い。また、安定性を目的に補正のタイミング信号を、複数回観測してから補正を実行するなど別の条件の成立で生成して使用するようにしても良い。
【0043】
さらに、本発明を適用する同期整流回路は、上記実施形態のような二次側のコイルが1つである半波同期整流回路に限定されるものではなく、本発明は異なる電源方式の同期整流回路にも適用可能である。例えば、コンバータや二次側のコイルが2つである両波同期整流回路にも適用することができる。さらに、フライバック型に限定されず、フォワード型や共振型のスイッチング電源装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…同期整流制御回路、11…オン検出回路(オンタイミング検出回路)、12…オフ検出回路(オフタイミング検出回路)、13A…第1ドレイン検出回路(第1検出回路)、13B…第2ドレイン検出回路(第2検出回路)、13C…第3ドレイン検出回路、14…ディスチャージ回路、15…オン/オフ制御回路、16…ゲートドライバ、17…保護判定回路、18…電圧調整回路、Ls…二次側コイル、Q1…同期整流素子(同期整流用MOSトランジスタ、同期整流トランジスタ)、FF1…Dフリップフロップ(第1ラッチ回路)、FF2…Dフリップフロップ(第2ラッチ回路)、OPG…ワンショットパルス生成回路、G1…ANDゲート(第1論理回路)、G2…ANDゲート(第2論理回路)