(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101577
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】診療システム及び診療ブース
(51)【国際特許分類】
A61G 10/00 20060101AFI20240723BHJP
G16H 10/40 20180101ALI20240723BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61G10/00 Z
G16H10/40
A61G12/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005531
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】523020464
【氏名又は名称】医療法人社団栄香福祉会
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】石黒 香
【テーマコード(参考)】
4C341
5L099
【Fターム(参考)】
4C341KK10
4C341LL30
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】 受付、診察及び会計の全過程を疑似症患者等から非接触にすることで、医師・医療事務・看護師等の医療従事者全てが非接触で業務を遂行できる診療システム及び診療ブースを提供する。
【解決手段】 診療システム1は屋内P1に設置されて内部に医師30が居る診察室10と、屋外P2又は屋外に隣接する場所に設置されて内部にスタッフ32が居る診療ブース20を備える。診察室内の第1端末40と診療ブース内の第2端末41とは電気通信回線42で接続される。医師は第1端末を介して疑似症患者等50に対してオンライン診察を行い、スタッフは物品受渡口21を介して検査キット43を疑似症患者等に提供し、疑似症患者等は第2端末から提供される音声等による指示にしたがって自ら検査キット43を操作して検体を採取し、物品受渡口を介してスタッフに提供する。医師・医療従事者等の感染リスクを大幅に低減できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に設置されて内部に医師が居る診察室と、屋外又は屋外に隣接する場所に設置されて内部にスタッフが居る診療ブースとを備えており、
前記診察室内の音声映像入出力装置(第1端末)と前記診療ブース内の音声映像入出力装置(第2端末)とは電気通信回線により接続されており、
前記診療ブースは、前記第2端末と物品受渡口を少なくとも備えており、
前記医師は前記第1端末を介して前記第2端末及び前記物品受渡口付近に居る疑似症患者等に対してオンライン診察を行い、
前記スタッフは前記物品受渡口を介して検体採取前の検査キットを前記疑似症患者等に提供し、
前記疑似症患者等は前記第2端末から提供される音声及び映像による指示にしたがって自ら検査キットを操作して検体を採取し、検体採取後の前記検査キットを前記物品受渡口を介して前記スタッフに提供することを特徴とする診療システム。
【請求項2】
前記物品受渡口が、前記スタッフが検体採取前の前記検査キットを前記疑似症患者等に提供する際に使用する第1受渡口と、前記疑似症患者等が検体採取後の前記検査キットを前記スタッフに提供する際に使用する第2受渡口を備えることを特徴とする請求項1に記載の診療システム。
【請求項3】
屋外又は屋外に隣接する場所に設置されて内部にスタッフが居る箱体であり、
音声映像入出力装置(第2端末)と物品受渡口を少なくとも備えており、
屋内に設置されて内部に医師が居る診察室が備える音声映像入出力装置(第1端末)と前記第2端末とは電気通信回線により接続されており、
前記医師は前記第1端末を介して前記第2端末及び前記物品受渡口付近に居る疑似症患者等に対してオンライン診察を行い、
前記スタッフは前記物品受渡口を介して検体採取前の検査キットを前記疑似症患者等に提供し、
前記疑似症患者等は前記第2端末から提供される音声及び映像による指示にしたがって自ら検査キットを操作して検体を採取し、検体採取後の前記検査キットを前記物品受渡口を介して前記スタッフに提供することを特徴とする診療ブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受付、診察及び会計の全過程を疑似症患者等から非接触にすることで、医師・医療事務・看護師等の医療従事者全てが非接触で業務を遂行できる診療システム及び診療ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス(COVID-19)、新型インフルエンザ、SARS等の感染症が発生した場合、感染拡大を防止するためには患者や感染が疑われる者(疑似症患者や濃厚接触者)(以下、「疑似症患者等」という。)を隔離して健常者や医療従事者との接触の機会を低減する必要がある。
従来、疑似症患者等の唾液・粘膜等の検体を検査キットで採取し、所定の判定方法で感染の有無を確認しているが、医療従事者が検査キットを用いて検体を採取する際や、疑似症患者等自身が操作して検体を採取した検査キットを医療従事者に渡す際に医療従事者が感染してしまうおそれがある。また、医師が交付した処方箋を医療従事者が疑似症患者等に渡す際や診察料等の金銭の授受を行う際にも同様に医療従事者が感染してしまうおそれがある。
つまり、医療従事者は受付(患者情報確認)、診察(検体摂取・状態把握・説明)及び会計(金銭・処方箋・薬・領収書の授受)の全過程において疑似症患者等から感染するリスクがある。
【0003】
例えば特許文献1には、陽圧状態に維持したブース本体内に医療従事者を収容し、ブース本体の壁面に作業筒部(ゴム手袋)を取り付けておき、医療従事者が作業筒部に腕を通した状態で検査キットを用いて疑似症患者等の検体を採取する技術が開示されている。
特許文献2にはいわゆる遠隔診療に関して、患者が計測機器及び薬剤の保管庫を備えた医療ブース内で遠隔地に居る医師から医療診断を受け、医師が処方箋を交付すると保管庫から適切な薬剤を受け取ることができる医療補助システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-29475号公報
【特許文献2】特開2015-215769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では医療従事者が疑似症患者等に対して患者情報を確認したり、処方箋を交付したり、金銭の授受を行ったりする際に感染してしまうおそれがあるという問題を解消できない。
特許文献2の技術は遠隔診療に関するものであり、患者等自らが操作して検体を採取した検査キットを医療機関側が容易に入手することができないという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題を考慮して、受付、診察及び会計の全過程を疑似症患者等から非接触にすることで、医師・医療事務・看護師等の医療従事者全てが非接触で業務を遂行できる診療システム及び診療ブースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の診療システムは、屋内に設置されて内部に医師が居る診察室と、屋外又は屋外に隣接する場所に設置されて内部にスタッフが居る診療ブースとを備えており、前記診察室内の音声映像入出力装置(第1端末)と前記診療ブース内の音声映像入出力装置(第2端末)とは電気通信回線により接続されており、前記診療ブースは、前記第2端末と物品受渡口を少なくとも備えており、前記医師は前記第1端末を介して前記第2端末及び前記物品受渡口付近に居る疑似症患者等に対してオンライン診察を行い、前記スタッフは前記物品受渡口を介して検体採取前の検査キットを前記疑似症患者等に提供し、前記疑似症患者等は前記第2端末から提供される音声及び映像による指示にしたがって自ら検査キットを操作して検体を採取し、検体採取後の前記検査キットを前記物品受渡口を介して前記スタッフに提供することを特徴とする。
また、前記物品受渡口が、前記スタッフが検体採取前の前記検査キットを前記疑似症患者等に提供する際に使用する第1受渡口と、前記疑似症患者等が検体採取後の前記検査キットを前記スタッフに提供する際に使用する第2受渡口を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の診療ブースは、屋外又は屋外に隣接する場所に設置されて内部にスタッフが居る箱体であり、音声映像入出力装置(第2端末)と物品受渡口を少なくとも備えており、屋内に設置されて内部に医師が居る診察室が備える音声映像入出力装置(第1端末)と前記第2端末とは電気通信回線により接続されており、前記医師は前記第1端末を介して前記第2端末及び前記物品受渡口付近に居る疑似症患者等に対してオンライン診察を行い、前記スタッフは前記物品受渡口を介して検体採取前の検査キットを前記疑似症患者等に提供し、前記疑似症患者等は前記第2端末から提供される音声及び映像による指示にしたがって自ら検査キットを操作して検体を採取し、検体採取後の前記検査キットを前記物品受渡口を介して前記スタッフに提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、疑似症患者等は車に乗ったまま屋外又は屋外に隣接する場所に設置した診療ブースで第2端末を介して医師の診察を受けることができる。また、疑似症患者等は車に乗ったまま第2端末を介して検査キットの使用方法を聞き、物品受取口から検査キットを受け取り、自ら検体を採取し、検体採取後の検査キットを物品受取口からスタッフに提供する。このように、医師は疑似症患者等をオンラインで非接触で診察し、スタッフら医療従事者は疑似症患者等から非接触で検査キットを受け取り、更に疑似症患者等に対して処方箋を非接触で交付する。受付(患者情報確認)、診察(検体摂取・状態把握・説明)及び会計(金銭・処方箋・薬・領収書の授受)の全過程を疑似症患者等から非接触にすることで、医師・医療事務・看護師等の医療従事者全てが非接触で業務を遂行できるので、医療従事者の感染のリスクを大幅に低減することができる。
更に、本発明では以下の効果も得られる。
・従来の診察方法では必要であったマスク、防護服、手袋、フェイスシールド、キャップ等の医療資源が不要になる。
・受付から会計までの診療時間を短縮して受け入れ患者数を増大させることができる。
・医療従事者が防護服等を着脱する時間を削減して診療効率の向上及び着脱時の感染リスクを削減できる。
・従来、屋外で疑似症患者等の唾液・粘膜等の検体を検査キットで採取していたところ、屋外での作業が不要になるため医療従事者の身体的負担を削減できる。
物品受渡口を第1受渡口と第2受渡口に分けて、検体採取後の検査キットをスタッフに提供する際に第2受渡口だけを使用し、検査キット等の患者からの受け取り物は密封された状態で殺菌・除菌してその後スタッフが受け取ることにすれば医療従事者の感染のリスクを更に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の診療システム及び診療ブースの実施の形態について説明する。
図1(a)に示すように、診療システム1は診察室10と診療ブース20を備える。
診察室10は屋内P1に設置されており、その内部に医師30を含む医療従事者31が居る。一般的な病院やクリニックが備える診察室をそのまま使用すればよい。
【0012】
診療ブース20は屋外P2に設置されており、その内部にスタッフ32が居る。スタッフ32としては例えば医療事務を行う者が挙げられるが、看護士等の医療従事者でもよい。診療ブース20は例えば病院やクリニックの駐車場、屋外P2の空きスペースに設置すればよい。
図1(b)に示すように診療ブース20を屋内P1であって屋外P2に隣接する場所に設置してもよい。
診察室10内には音声映像入出力装置(以下、「第1端末40」という。)が設置されており、診療ブース20にも音声映像入出力装置(以下、「第2端末41」という。)が設置されている。第1端末40と第2端末41とは電気通信回線42により接続されている。電気通信回線42は有線でも無線でもよく、インターネット回線を使用してもよい。第1端末40及び第2端末41は相互に音声及び映像のやり取りが可能な装置であればよい。第1端末40及び第2端末41として例えばパソコンにカメラ、マイク及びスピーカーを接続したものを使用してもよく、或いはモニター、カメラ、マイク及びスピーカーを各々別体に配置したものやいわゆるタブレット端末を使用してもよい。
【0013】
診療ブース20は箱状の構造物であり、第2端末41と物品受渡口21を備える。診療ブース20は必ずしも地面に固定させる必要はなく、例えば地面に置いた束石の上に診療ブース20を載せるだけでもよい。
物品受渡口21は上部に開口を備える箱状であり、スタッフ32の操作により内部から外部へ移動自在な構造になっている。なお、物品受渡口21として診療ブース20の側面に設けた開口を開閉自在な扉で塞いだ構造にしてもよい。物品受渡口21と第2端末41は診療ブース20の側面の近接した位置に設置されている。
本実施の形態では物品受渡口21が第1受渡口21aと第2受渡口21bを備える。
第1受渡口21aはスタッフ32が検体採取前の検査キット43を疑似症患者等50に提供する際に使用するものであり、第2受渡口21bは疑似症患者等50が検体採取後の検査キット43をスタッフ32に提供する際に使用するものである。第1受渡口21a及び第2受渡口21bを殺菌・消毒するためのアルコールスプレー等の殺菌・消毒手段を備えるのが好ましい。第1受渡口21aとしては例えば上部開口を備える引き出し式にして、当該上部開口を蓋で閉めることで密閉状態を維持できる構造にすればよい。
【0014】
次に、本発明の診療システム1による診療の流れについて説明する。
まず、疑似症患者等50が車51で診療ブース20を訪れる。この際に、車51に乗ったままの疑似症患者等50は物品受渡口21に手が届く程度まで診療ブース20の近くに車51を停める。疑似症患者等50は病院やクリニックに対して事前に診療予約を入れておくのが好ましい。また、疑似症患者等50が車51に乗らずに徒歩で診療ブース20まで訪れてもよい。
疑似症患者等50が第2端末41を介して病院やクリニックに対して来訪した旨を伝える、又は医師30・スタッフ32が第1端末40を介して疑似症患者等50が来訪したことに気付いた時点で診察が開始される。具体的には、患者情報の確認(保険証医療受給者証等・住所・問診記入)及びカルテ作成後に診察に入る。
【0015】
疑似症患者等50は第2端末41を介して症状等を医師30に伝え、医師30は第1端末40を介して疑似症患者等50をオンライン診察する。
診察により疑似症患者等50の検体を採取する必要があると医師30が判断した場合、第2端末41を介して疑似症患者等50に対して音声及び映像で検査キット43の使用方法を説明する。
そして、
図2に示すように診療ブース20内のスタッフ32は検査キット43を上部開口から第1受渡口21aに入れて、当該上部開口を蓋で閉めることで密閉状態にした状態で第1受渡口21aを外部へ移動させる。疑似症患者等50は蓋を開いて上部開口から検査キット43を受け取る。第1受渡口21aを外部に移動させる際に蓋が自動的に開く仕組みにしてもよい。
【0016】
疑似症患者等50は説明を受けた使用方法に従って検査キット43を操作して自己の検体を採取する。検体採取後、
図3に示すように第2受渡口21bに検査キット43を入れると、
図4に示すようにスタッフ32は第2受渡口21bを診療ブース20の内部まで移動させる。診療ブース20の内部には上部開口を備える除菌ボックス22が設置されており、上部開口は蓋で開閉自在になっている。スタッフ32は除菌ボックス22の蓋を閉じた密閉状態で検査キット43を殺菌・除菌手段により消毒し、蓋を開いて上部開口から検査キット43を回収する。この間、疑似症患者等50は第2端末41を介して医師30やスタッフ32と会話することができる。
回収した検査キット43は専門機関に送られて当該専門機関で感染の有無を判定したり、或いは可能であれば病院やクリニックで感染の有無を判定する。
スタッフ32は疑似症患者等50に対して物品受渡口21を介して診察料等の金銭の授受や処方箋の交付を行う。
【0017】
図5に示すように診療ブース20に検体採取部60とラボスペース61を併設してもよい。
診療ブース20の壁のうち、検体採取部60が設置されている側の壁60aは透明になっており、作業用手袋62が取り付けられている。スタッフ32等は診療ブース20内に居り、作業用手袋62に両腕を通して検体採取部60内の疑似症患者等50から検体を採取する。スタッフ32等は採取した検体を隣りのラボスペース61に移動させ、作業用手袋63に両腕を通した状態で感染の有無を判定する。疑似症患者等50を検体採取部60内に隔離した状態になるのでスタッフ32等は疑似症患者等50に直接触れることなく検体を採取して感染の有無を判定できる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、受付、診察及び会計の全過程を疑似症患者等から非接触にすることで、医師・医療事務・看護師等の医療従事者全てが非接触で業務を遂行できる診療システム及び診療ブースであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0019】
P1 屋内
P2 屋外
1 診療システム
10 診察室
20 診療ブース
21 物品受渡口
21a 第1受渡口
21b 第2受渡口
22 除菌ボックス
30 医師
31 医療従事者
32 スタッフ
40 第1端末
41 第2端末
42 電気通信回線
43 検査キット
50 疑似症患者等
51 車
60 検体採取部
60a 壁
61 ラボスペース
62 作業用手袋
63 作業用手袋