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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101581
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】荷役車両
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/18 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B66F9/18 J
B66F9/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005547
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】石田 大樹
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE23
3F333AE25
3F333BB15
3F333BB17
3F333FA20
3F333FA26
3F333FD14
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】円柱形状の荷を確実にクランプすることが可能な荷役車両の提供にある。
【解決手段】車体11と、走行駆動部と、操舵駆動部と、円柱形状の荷Wを把持可能な一対のクランプアーム38、39を有するロールクランプ装置36と、走行駆動部、操舵駆動部およびロールクランプ装置36を制御するコントローラ29と、を有する荷役車両である。荷Wおよび一対のクランプアーム38、39の先端部を検出可能とする物体検出器を有し、コントローラ29は、物体検出器の検出に基づいてクランプアーム38の当接位置と荷Wの軸心とを通る仮想線を取得し、クランプアーム39の先端部の中心軌跡と荷Wの外周縁との交点を推定し、交点が仮想線における当接位置と反対となる外周縁との交点である反対点に近づくように走行駆動部および操舵駆動部を制御し、車体11の位置を移動させる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪および操舵輪を備える車体と、
前記車体に搭載され、前記駆動輪を駆動する走行駆動部と、
前記操舵輪を操舵する操舵駆動部と、
前記車体の前部に備えられるマストと、
前記マストに対して昇降可能であって、円柱形状の荷を把持可能な一対のクランプアームを有するロールクランプ装置と、
前記走行駆動部、前記操舵駆動部および前記ロールクランプ装置を制御するコントローラと、を有する荷役車両において、
荷および前記一対のクランプアームの先端部を検出可能とする物体検出器を有し、
前記コントローラは、前記一対のクランプアームの一方のアームの先端部が荷の外周面に当接する際に、前記物体検出器の検出に基づいて、前記一方のアームの当接位置と荷の軸心とを通る仮想線を取得し、前記一対のクランプアームの他方のアームの先端部の中心軌跡と荷の外周縁との交点を推定し、前記交点が前記仮想線における前記当接位置と反対となる前記外周縁との交点である反対点に近づくように前記走行駆動部および前記操舵駆動部を制御し、前記車体の位置を移動させることを特徴とする荷役車両。
【請求項2】
前記物体検出器は、前記一対のクランプアームの先端部を撮像可能とするカメラであり、
前記カメラにより撮像されたカメラ画像を画像処理する画像処理部を有することを特徴とする請求項1記載の荷役車両。
【請求項3】
前記カメラは、前記マストの上部に設けられることを特徴とする請求項2記載の荷役車両。
【請求項4】
前記コントローラは、前記一方のアームが荷に当接したとき、前記物体検出器の検出に基づいて前記交点を推定することを特徴とする請求項1又は2記載の荷役車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円柱形状の荷をクランプすることが可能なロールクランプ装置を備える荷役車両に関する。
【背景技術】
【0002】
荷役車両の従来の技術として、例えば、特許文献1に開示されたロールクランプ装置が知られている。特許文献1に開示されたロールクランプ装置では、フォークリフトに装着される基盤の前面に、対向する一対のショートアームとスイングアームを有するクランプホルダがクランプ位置修正装置を介して配置されている。クランプ位置修正装置は、ショート側クランプパッドの取付軸を中心とする円弧状のガイド溝を有するガイドブラケットと、そのガイド溝に沿って移動するガイドロッドと、駆動源としての油圧シリンダと、から構成されている。このため、ショート側クランプパッドをロール紙に当接した状態でクランプホルダが回動されることで、スイング側クランプパッドのロール紙に対する当接位置が修正可能である。つまり、この種のロールクランプ装置によれば、一方のクランプアームをロール紙に当接後、車両操作を伴うことなく、他方のクランプアームのロール紙に対する当接位置を修正移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-229793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロール紙のような円柱形状の荷をロールクランプ装置によりクランプする場合、ロールクランプ装置を備える荷役車両のオペレータの技量によって作業効率の多寡が決まる。また、オペレータが操作を行わない無人運転では、荷に対して適切な位置にクランプアームを当接させる必要がある。しかしながら、特許文献1に開示されたロールクランプ装置は、クランプアームがロール紙の外周縁において適切な位置で当接されるか否かはオペレータが判断する必要がある。また、特許文献1に開示されたロールクランプ装置は、無人運転による円柱形状の荷をクランプすることは困難である。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、円柱形状の荷を確実にクランプすることが可能な荷役車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、駆動輪および操舵輪を備える車体と、前記車体に搭載され、前記駆動輪を駆動する走行駆動部と、前記操舵輪を操舵する操舵駆動部と、前記車体の前部に備えられるマストと、前記マストに対して昇降可能であって、円柱形状の荷を把持可能な一対のクランプアームを有するロールクランプ装置と、前記走行駆動部、前記操舵駆動部および前記ロールクランプ装置を制御するコントローラと、を有する荷役車両において、荷および前記一対のクランプアームの先端部を検出可能とする物体検出器を有し、前記コントローラは、前記一対のクランプアームの一方のアームの先端部が荷の外周面に当接する際に、前記物体検出器の検出に基づいて、前記一方のアームの当接位置と荷の軸心とを通る仮想線を取得し、前記一対のクランプアームの他方のアームの先端部の中心軌跡と荷の外周縁との交点を推定し、前記交点が前記仮想線における前記当接位置と反対となる前記外周縁との交点である反対点に近づくように前記走行駆動部および前記操舵駆動部を制御し、前記車体の位置を移動させることを特徴とする。
【0007】
本発明では、円柱形状の荷および一対のクランプアームの先端部を検出可能とする物体検出器を有する。コントローラは、一対のクランプアームの一方のアームの先端部が荷の外周面に当接する際に、物体検出器の検出に基づいて一方のアームの当接位置と荷の軸心とを通る仮想線を取得し、一対のクランプアームの他方のアームの先端部の中心軌跡と荷の外周縁との交点を推定する。そして、コントローラは、交点が仮想線における当接位置と反対となる外周縁との交点である反対点に近づくように走行駆動部および操舵駆動部を制御し、車体の位置を移動させる。このため、荷役車両は円柱形状の荷を確実にクランプすることが可能となる。
【0008】
また、上記の荷役車両において、前記物体検出器はカメラであり、前記カメラにより撮像されたカメラ画像を画像処理する画像処理部を有する構成としてもよい。
この場合、画像処理部によりカメラが撮像したカメラ画像を画像処理することで、コントローラは、円柱形状の荷の外周縁における他方のアームの先端の当接位置を推定することができる。
【0009】
また、上記の荷役車両において、前記カメラは、前記マストの上部に設けられる構成としてもよい。
この場合、カメラがマストの上部に設けられることで、一対のクランプアームが円柱形状の荷をクランプする際、カメラが荷の外周縁を撮像しやすくすることができる。このため、コントローラは、カメラ画像の画像処理により一方のアームが荷の外周面に当接することを検出することができる。
【0010】
また、上記の荷役車両において、前記コントローラは、前記一方のアームが荷に当接したとき、物体検出器の検出に基づいて前記交点を推定する構成としてもよい。
この場合、一方のアームが円柱形状の荷に当接したとき、コントローラが物体検出器の検出に基づいて他方のアームの先端部の中心軌跡と荷の外周縁との交点を推定する。このため、一方のアームが当接されたとき、コントローラは、他方のアームの先端部の当接位置を推定でき、他方のアームの先端部が荷のクランプに適切な位置か判別することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、円柱形状の荷を確実にクランプすることが可能な荷役車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るフォークリフトの斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るフォークリフトの平面図である。
図4】本発明の実施形態に係るフォークリフトの概略構成図である
図5】(a)クランプアームが不適切な位置にあるフォークリフトの平面図であり、(b)はクランプアームが適切な位置にあるフォークリフトの平面図である。
図6】クランプアームによる適切な荷のクランプを行うためのコントローラによる制御の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る荷役車両としてのフォークリフトについて図面を参照して説明する。本実施形態のフォークリフトは、荷としての円柱状のロール紙をクランプすることが可能なアタッチメントとしてのロールクランプ装置を備えたロールクランプリフトである。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、フォークリフトのオペレータが運転席の運転シートに着座し、フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。因みに、本実施形態のフォークリフトは、無人走行および有人走行が可能である。
【0014】
図1図2に示すように、フォークリフト10は、車体11の前部にマスト12を備えている。車体11の中央付近には運転席13が設けられている。車体11の前部には前輪としての駆動輪14が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪15が設けられている。車体11の後部にはカウンタウエイト16が備えられており、カウンタウエイト16は車両重量の調整と車体11における重量バランスを図るためのものである。運転席13には、運転シート17が備えられている。運転シート17の前方にはインストルメントパネル18が備えられている。インストルメントパネル18にはステアリングコラム19を介してステアリングホイール20が備えられている。図3に示すように、インストルメントパネル18には、リフトレバー21、ティルトレバー22、回転レバー23、クランプレバー24といった複数の荷役レバーが備えられている。運転席13の床面付近には、アクセルペダル25およびブレーキペダル26が備えられている。
【0015】
車体11には、走行駆動部としてのエンジン27が搭載されており、エンジン27の回転力が駆動力伝達機構(図示せず)を介して駆動輪14に伝達されることで、フォークリフト10が走行する。また、車体11には、操舵輪15を操舵する操舵駆動部28が搭載されている。車体11には各部を制御するコントローラ29が搭載されている。図4に示すように、コントローラ29は、エンジン27を制御するほか、操舵駆動部28を制御する。コントローラ29は、後述するロールクランプ装置36およびステレオカメラ50と接続されている。
【0016】
コントローラ29は、演算処理部としてのCPU(図示せず)と、RAMおよびROM等からなる記憶部(図示せず)と、を備えている。コントローラ29は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。コントローラ29は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。
【0017】
車体11には、運転席13の上部を覆うヘッドガード30が設けられている。車体11とマスト12との間には、作動油により作動するティルトシリンダ31が設置されている。マスト12はティルトシリンダ31の作動によりマスト12の下端部を支点として前後方向に傾動する。有人走行ではティルトシリンダ31は、オペレータのティルトレバー22の操作により作動される。
【0018】
マスト12は、アウタマスト32およびインナマスト33を有する(図1図3を参照)。左右一対のアウタマスト32には、アウタマスト32の内側にて昇降可能な左右一対のインナマスト33が備えられている。インナマスト33はアウタマスト32に設けたリフトシリンダ34の作動により昇降する。有人走行ではリフトシリンダ34は、オペレータのリフトレバー21の操作により昇降する。マスト12は、インナマスト33に沿って昇降するリフトブラケット35を備えており、リフトブラケット35には、ロールクランプ装置36が回転可能に備えられている。
【0019】
ロールクランプ装置36は、アームホルダ37と、クランプアーム38、39とを備えている。アームホルダ37は、水平方向の軸まわりに回転する回転部40と、車両後方側に設けられリフトブラケット35に取り付けるための取付部41とを備えている。アームホルダ37の回転部40には、一対のクランプアーム38、39が取り付けられている。このため、円柱形状の荷Wをクランプするクランプアーム38、39は水平方向の軸まわりの回転とマスト12の延在方向への昇降が可能である。円柱形状の荷Wは、例えば、ロール紙である。
【0020】
一対のクランプアーム38、39は、一方のクランプアームであるショートアーム38と、他方のクランプアームであるロングアーム39と、により構成されている。ショートアーム38とロングアーム39との各基端部が、取付軸43を介してアームホルダ37の回転部40に取り付けられている。クランプアーム38、39は、クランプシリンダ42によって、荷Wを把持する方向に開閉可能である。本実施形態では、ショートアーム38は回転部40に固定され、ロングアーム39はクランプシリンダ42によってアームホルダ37の取付軸43に対して回動可能に取り付けられている。一対のクランプアーム38、39は、ロングアーム39の回動によって荷Wをクランプすることができる。なお、本実施形態では、ショートアーム38はアームホルダ37に固定されたが、ショートアームにクランプシリンダを設けることで、ショートアームを回動可能としてもよい。
【0021】
ショートアーム38の先端部には、クランプパッド44がピン45を介して回動可能に備えられている。ロングアーム39の先端部には、クランプパッド46がピン45を介して回動可能に備えられている。クランプパッド44、46は、クランプアーム38、39が荷Wを把持する際に把持力を発生しやすいよう、クランプアーム38、39の先端部に設けられたピン45を中心に、荷Wから受ける荷重によって揺動可能に取り付けられている。また、クランプパッド44には揺動を規制するためのパッドストッパ48が取り付けられ、クランプパッド46には同様にパッドストッパ49が取り付けられている。荷Wと当接するクランプパッド44、46のクランプ面は、円柱形状の荷Wの外周面に沿うように湾曲面となっている。
【0022】
ところで、本実施形態のフォークリフト10は、円柱形状の荷Wをより適切にクランプするために、物体検出器としてのステレオカメラ50を備えている。ステレオカメラ50は、左右一対のカメラ51、52を有する。右カメラ51は、右のアウタマスト32の上部に設けられ、左カメラ52は左のアウタマスト32の上部に設けられている。右カメラ51および左カメラ52はクランプアーム38、39の先端部が撮影されるように前方やや下方へ向けて取り付けられている。右カメラ51および左カメラ52は単眼のカメラであり、右カメラ51および左カメラ52の組み合わせによりステレオカメラ50が構成されている。因みに、右カメラ51および左カメラ52をそれぞれ複眼のステレオカメラとしてもよい。
【0023】
ステレオカメラ50は、画像処理部としてのコントローラ29と接続されている(図4を参照)。コントローラ29によるカメラ画像の画像処理により、コントローラ29はクランプパッド44、46の中心の位置を認識するほか、荷Wの外周面の上端の輪郭を認識する。また、コントローラ29は、ロングアーム39の回動によるクランプパッド46のピン45の中心軌跡を認識する。
【0024】
図5(a)、図5(b)に示すように、本実施形態では、縦置きされた荷Wの平面視の中心を軸心Pとしている。ロングアーム39の回動によりクランプパッド46の中心が描く軌跡を中心軌跡Tとし、荷Wの外周縁と中心軌跡Tとの交差する点を交点Qとする。また、荷Wの外周縁におけるショートアーム38の当接位置と軸心Pとを通る仮想の線を仮想線Mとする。因みに、荷Wの外周縁におけるショートアーム38の当接位置は、具体的には、クランプパッドの44の中心(ピン45の軸心)である。さらに、仮想線Mにおけるショートアーム38の当接位置と反対となる外周縁における点を反対点Rとし、交点Qと反対点Rとの距離を距離Sとする。
【0025】
図5(a)に示すように、フォークリフト10が左右一対のクランプアーム38、39によって荷Wをクランプしようとするとき、ショートアーム38を先に荷Wに当接させるようにする。図5(b)に示すように、フォークリフト10がクランプアーム38、39によって荷Wをクランプするとき、クランプパッド44の中心と軸心Pを結ぶ仮想線Mの反対点Rと交点Qが一致することが最も望ましい。
【0026】
そこで、コントローラ29は、一対のクランプアーム38、39のショートアーム38の先端部が荷Wの外周面に当接する際に、ステレオカメラ50のカメラ画像の画像処理に基づいて交点Qを推定する。本実施形態では、コントローラ29は、ショートアーム38の先端部が荷Wの外周面に当接したタイミングで交点Qを推定する。そして、コントローラ29は、交点Qが反対点Rに近づくように、エンジン27および操舵駆動部28を制御し、車体11の位置を移動させる制御を行う。なお、コントローラ29は、画像処理においてショートアーム38の先端部が荷Wの外周縁に当接する直前のタイミングで交点Qを推定するようにしてもよい。
【0027】
図6は、クランプアーム38、39による適切な荷Wのクランプを行うためのコントローラ29による制御の手順を示すフロー図である。フォークリフト10が一対のクランプアーム38、39により荷Wをクランプするとき、コントローラ29は、フォークリフト10が荷Wに近づくように車体11を移動させる(ステップS01)。コントローラ29がエンジン27および操舵駆動部28に対して指令を出して制御することで実現する。フォークリフト10の運転中においてステレオカメラ50は常にクランプアーム38、39を撮像し、撮像されたカメラ画像はコントローラ29において画像処理される。なお、車体11の移動では、ショートアーム38が最初に荷Wに当接するようにフォークリフト10が荷Wに近づく。
【0028】
次に、コントローラ29は、ショートアーム38が荷Wに当接したか否かを判別する(ステップS02)。ショートアーム38が荷Wに当接したか否かはカメラ画像の画像処理により検出され、コントローラ29は画像処理による検出結果から判別する。ショートアーム38が荷Wに当接したと判別されたとき、コントローラ29は車体11の前進を停止させる(ステップS03)。次に、コントローラ29は、ショートアーム38のクランプパッド44の中心と軸心Pを通る仮想線Mを取得する(ステップS04)。なお、荷Wの外周縁は平面視で円であり、コントローラ29は、カメラ画像の画像処理に基づいて軸心Pを特定する。仮想線Mは、クランプパッド44の中心と、特定された軸心Pから画像処理により取得することが可能である。一方、ステップS02において、ショートアーム38が荷Wに当接されていないとき、コントローラ29は車体11の移動を継続する。
【0029】
コントローラ29は、ステップS04において仮想線Mを取得すると、ロングアーム39の中心軌跡Tと荷Wの外周縁との交点Qを推定する(ステップS05)。荷Wの外周縁は、カメラ画像の画像処理に基づいて検出される。コントローラ29は、ステップS05においてロングアーム39の中心軌跡Tと荷Wの外周縁との交点Qを推定すると、仮想線Mにおける反対点Rと交点Qとの距離Sが閾値以下であるか否かを判別する(ステップS06)。反対点Rと交点Qとの距離Sの閾値は、クランプアーム38、39が適切に荷Wをクランプ可能となるように設定されている。
【0030】
ステップS06において、仮想線Mの反対点Rと交点Qとの距離Sが閾値以下であると判別されると、コントローラ29は、車体11の姿勢変更を停止する(ステップS07)。反対点Rと交点Qとの距離Sが閾値以下であるとき、クランプアーム38、39が適切に荷Wをクランプできる状態である。したがって、車体11の姿勢変更を停止後又は車体11の姿勢変更が行われていない場合には、コントローラ29は、ロングアーム39の作動を開始する(ステップS08)。クランプアーム38、39が荷Wをクランプすることで荷Wのクランプが完了する(ステップS09)。
【0031】
ステップS06において、仮想線Mと荷Wの軸心Pとの距離Sが閾値以下でないと判別されると、コントローラ29は、車体11の移動を開始して車体11の姿勢を変更させる(ステップS10)。具体的には、車体11の姿勢の変更は、交点Qが反対点Rに近づくように、ショートアーム38の当接位置を旋回中心とする車体11の旋回である。車体11の姿勢が変更されると、ステップS05へ戻り、ロングアーム39の中心軌跡Tと荷Wの外周縁との交点Qを再び推定する。反対点Rと交点Qとの距離Sが閾値以下になるまで、すなわち、交点Qが反対点Rに近づくように、コントローラ29はステップS10からステップS05、S06を通るループを繰り返す。
【0032】
次に、本実施形態のフォークリフト10が円柱形状の荷Wをクランプする作業について説明する。フォークリフト10がクランプする対象の荷Wは縦置きされている。フォークリフト10が荷Wをクランプする場合、無人走行により荷Wへ向けて前進する。ステレオカメラ50は、クランプアーム38、39の先端部を撮像し、コントローラ29は撮像されたカメラ画像を画像処理する。
【0033】
例えば、図5(a)に示すように、ショートアーム38が荷Wの外周面に当接すると、コントローラ29は画像処理に基づいてショートアーム38が荷Wに当接したことを判別し、フォークリフト10の前進を停止する。ショートアーム38の荷Wの外周面への当接は、平面視における円形の荷Wの外周縁にショートアーム38のクランプパッド44が当接したことを画像処理により検出することで判別される。
【0034】
コントローラ29は、平面視におけるショートアーム38のクランプパッド44の中心(ピン45の軸心)と荷Wの軸心Pを通る仮想線Mを取得し、仮想線Mにおいてクランプパッド44の中心と反対の端点となる反対点Rを特定する。また、コントローラ29は、ショートアーム38が荷Wの外周面へ当接したとき、平面視におけるロングアーム39のクランプパッド46の中心軌跡Tと荷Wの外周縁との交点Qを推定する。コントローラ29は、交点Qと反対点Rとの距離Sが閾値以下であるか否かを判別する。
【0035】
図5(a)の状態では、交点Qと反対点Rとの距離Sが閾値を超えているので、コントローラ29は、交点Qが反対点Rに近づくようにエンジン27および操舵駆動部28を制御して車体11の移動を開始し、車体11の姿勢を変更する。具体的には、ショートアーム38を荷Wに当接させた状態で、クランプパッド44の中心を旋回中心として車体11を反時計回りに旋回させる。図5(b)に示すように、車体11の旋回時に荷Wが路面に対して移動することは許容される。
【0036】
コントローラ29は、旋回時において画像処理に基づいて交点Qと反対点Rとの距離Sが閾値以下になるまで判別を繰り返す。図5(b)に示す状態では、画像処理上において交点Qと反対点Rがほぼ一致するので交点Qと反対点Rとの距離Sが閾値以下であり、コントローラ29は車体11の姿勢変更を停止する。次に、コントローラ29はロングアーム39をクランプする方向へ回動させる。ロングアーム39の回動によりクランプパッド46が荷Wに当接し、一対のクランプアーム38、39が荷Wをクランプする。交点Qと反対点Rがほぼ一致するので、クランプアーム38、39は確実に荷Wをクランプする。
【0037】
クランプアーム38、39が荷Wをクランプした状態では、リフトブラケット35を上昇させることで、フォークリフト10は走行可能となる。また、リフトブラケット35に対してロールクランプ装置36を回転させることで、クランプアーム38、39の向きが変わり、荷Wを縦置きから横置きにすることが可能となる。
【0038】
本実施形態のフォークリフト10は以下の効果を奏する。
(1)円柱形状の荷Wおよび一対のクランプアーム38、39の先端部を検出可能とする物体検出器を有する。コントローラ29は、ショートアーム38の先端部が荷Wの外周面に当接する際に、物体検出器の検出に基づいてショートアーム38の当接位置と荷Wの軸心Pとを通る仮想線Mを取得し、ロングアーム39の先端部の中心軌跡Tと荷Wの外周縁との交点Qを推定する。そして、コントローラ29は、交点Qが仮想線Mにおける当接位置と反対となる外周縁との交点である反対点Rに近づくようにエンジン27および操舵駆動部28を制御し、車体11の姿勢を変更させる。このため、フォークリフト10は円柱形状の荷Wを確実にクランプすることが可能となる。その結果、ロールクランプ装置36による荷Wのクランプ時における荷Wのクランプアーム38、39からの脱落を防止することができる。また、交点Qと反対点Rとの距離Sが閾値以下となると車体11の移動を停止するので、荷Wのクランプのための車体11の姿勢を適切に変更するために、車体11の姿勢の変更をやり直す必要はなく荷役作業の効率が向上する。
【0039】
(2)物体検出器はステレオカメラ50であり、ステレオカメラ50により撮像されたカメラ画像の画像処理する画像処理部としてのコントローラ29を有する。このため、画像処理部によりステレオカメラ50が撮像したカメラ画像を画像処理することで、コントローラ29は、ステレオカメラ50の検出に基づいて円柱形状の荷Wの外周縁における一対のショートアーム38の当接位置を検出できる。また、ロングアーム39の先端部の中心軌跡Tと荷Wの外周縁との交点Qを推定することができる。
【0040】
(3)ステレオカメラ50は、マスト12の上部に設けられる。このため、ステレオカメラ50がマスト12の上部に設けられることで、一対のクランプアーム38、39が円柱形状の荷Wをクランプする際、ステレオカメラ50が荷Wの外周縁を撮像することができる。このため、コントローラ29は、カメラ画像の画像処理によりショートアーム38が荷Wの外周面に当接することを検出することができる。
【0041】
(4)コントローラ29は、ショートアーム38が円柱形状の荷Wに当接したとき、ステレオカメラ50の検出に基づいて荷Wの外周縁におけるロングアーム39の先端部の中心軌跡Tと荷Wの外周縁との交点Qを推定する。このため、ショートアーム38が円柱形状の荷Wに当接したとき、コントローラ29がステレオカメラ50のカメラ画像に基づいて荷Wの外周縁におけるロングアーム39の先端の当接位置を推定する。このため、ショートアーム38が当接されたとき、コントローラ29は、ロングアーム39の先端部の中心軌跡Tと荷Wの外周縁との交点Qを推定することでロングアーム39の先端部が荷Wのクランプに適切な位置か判別することができる。
【0042】
(5)ショートアーム38が荷Wに当接したときに荷Wの外周縁におけるロングアーム39の先端の当接位置が推定される。このため、ショートアーム38の先端部が荷Wの外周縁に当接する直前のタイミングで推定される場合と比較してロングアーム39の当接位置の推定の精度が高い。
【0043】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0044】
○ 上記の実施形態では、物体検出器としてのステレオカメラを例示して説明したが、これに限らない。物体検出器は、例えば、レーザー測距センサであってもよい。物体検出器がレーザー測距センサの場合、レーザー測距センサによるレーザー光の点群データの検出に基づいて一対のクランプアームの一方のアームの先端部の当接位置および他方のアームの先端部の中心軌跡と荷の外周縁との交点を推定することができる。なお、物体検出器をカメラとする場合、ステレオカメラに限らず、例えば、単眼カメラであってもよい。
○ 上記の実施形態では、マストに物体検出器を設けるようにしたが、この限りではない。物体検出器は、例えば、ヘッドガードに設けてもよく、この場合、ブラケットを介してヘッドガードに物体検出器を設けることで、荷およびクランプアームの先端部を適切に検出することができる。また、上記の実施形態では物体検出器をアウタマストに設ける例を説明したが、インナマストに物体検出器を設けてもよい。インナマストに物体検出器を設けることで、クランプアームが上昇された位置であっても一対のクランプアームの先端部を検出できる。
○ 上記の実施形態では、荷役車両として無人による走行および荷役を可能とするフォークリフトを例示したがこれに限らない。荷役車両は、オペレータの操作による有人運転のフォークリフトであってもよい。有人運転のフォークリフトの場合、ショートアームの荷の当接からオペレータによって車体の姿勢を変更すればよい。この場合、オペレータは、カメラ画像を参照して他方のアームの先端部の中心軌跡と荷の外周縁との交点が一方のアームの当接位置と荷の軸心とを通る仮想線の反対点に近づくように車体を変更する。そして、コントローラは、交点と仮想線における反対点との距離が閾値以下になったとき、ブザー音やランプ点灯によってオペレータへの報知を行う。これにより、一対のクランプアームは、オペレータの操作によって荷を最適な位置で確実にクランプすることができる。
○ 上記の実施形態では、画像処理部としてのコントローラを例示して説明したが、これに限らない。例えば、画像処理部をコントローラと別に設けておき、画像処理部がコントローラと接続されるようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、荷と一方のアームとの当接をカメラ画像の画像処理に基づいて検出したが、これに限らない。例えば、一方のアームの先端部にセンサを設けておき、センサが荷と一方のアームとの当接を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 フォークリフト
11 車体
12 マスト
13 運転席
14 駆動輪
15 操舵輪
27 エンジン(走行駆動部)
28 操舵駆動部
29 コントローラ(画像処理部)
32 アウタマスト
33 インナマスト
35 リフトブラケット
36 ロールクランプ装置
38 クランプアーム(ショートアーム)
39 クランプアーム(ロングアーム)
44 クランプパッド(ショートアーム)
45 ピン
46 クランプパッド(ロングアーム)
50 ステレオカメラ(物体検出器)
51 右カメラ
52 左カメラ
M 仮想線
P 中心軸
Q 交点
R 反対点
S 距離
T 中心軌跡
W 荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6