(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101586
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】自走式噴霧器
(51)【国際特許分類】
B05B 12/12 20060101AFI20240723BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B05B12/12
B05B17/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005558
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】中本 義範
【テーマコード(参考)】
4D074
4F035
【Fターム(参考)】
4D074AA05
4D074BB02
4D074CC04
4D074CC55
4D074CC56
4F035AA02
4F035BB02
4F035BB07
4F035BB13
4F035BB15
4F035BB32
(57)【要約】
【課題】薬液の床面への噴霧量に係るパラメータを検出できる自走式噴霧器を提供すること。
【解決手段】床面に向けて光を出力し、前記床面の反射光を受光する光電センサと、前記光電センサの検出結果を薬液の噴霧に係る制御に利用するプロセッサと、を備えることを特徴とする自走式噴霧器。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に向けて光を出力し、前記床面の反射光を受光する光電センサと、
前記光電センサの検出結果を薬液の噴霧に係る制御に利用するプロセッサと、を備えることを特徴とする自走式噴霧器。
【請求項2】
請求項1に記載の自走式噴霧器において、
薬液を霧状にする生成部を収容する筐体と、
前記筐体よりも側方に伸び、前記生成部から送られる薬液を下向きに噴射する複数の横誘導配管と、
湿度を検出し、検出した湿度が前記プロセッサによる薬液の噴霧に係る制御に利用される湿度センサと、
前記筐体から側方に向けて伸縮し、前記湿度センサを前記筐体の側方に位置づけるアームと、を備えることを特徴とする自走式噴霧器。
【請求項3】
請求項2に記載の自走式噴霧器において、
前記筐体から上方に伸びる上誘導配管を備え、
2つの前記横誘導配管が、前記上誘導配管から第1方向の両側に分岐するように前記上誘導配管に繋がり、
前記アームは、2つあり、一方の前記アームは、前記筐体における前記第1方向の一方側から前記第1方向の一方側に向けて伸縮し、他方の前記アームは、前記筐体における前記第1方向の他方側から前記第1方向の他方側に向けて伸縮することを特徴とする自走式噴霧器。
【請求項4】
請求項3に記載の自走式噴霧器において、
前記アームは、前記湿度センサの検出部を前記横誘導配管の薬液の噴霧口の下方に位置づけることを特徴とする自走式噴霧器。
【請求項5】
請求項1に記載の自走式噴霧器において、
湿度センサを備え、
前記プロセッサは、前記光電センサおよび前記湿度センサの検出結果に基づいて、床面における薬液の噴霧の処理済み領域を判断し、前記処理済み領域での噴霧を避けることを特徴とする自走式噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液を噴霧する自走式噴霧器が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の自走式噴霧器は、筐体内部に吸い込んだ空気が含む汚染物質の量を、埃センサ等の清浄度センサにより検出し、検出した汚染物質の量を用いて周囲の空気の清浄度を評価し、この評価に基づいて噴霧に係る制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自走式噴霧器において、薬液の床面への噴霧量に係るパラメータを検出できれば、該検出結果を利用して薬液が十分に噴霧された床面の領域を判断でき、該領域を避ける噴霧および走行が可能となる。しかしながら、特許文献1に記載の検出方法では、薬液の床面への噴霧量に係るパラメータを検出できない。
【0005】
本発明は、薬液の床面への噴霧量に係るパラメータを検出できる自走式噴霧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば以下の通りである。以下では、図の符号を参照のために用いている。
(1)床面に向けて光を出力し、前記床面の反射光を受光する光電センサ(41)と、
前記光電センサ(41)の検出結果を薬液の噴霧に係る制御に利用するプロセッサ(51)と、を備えることを特徴とする自走式噴霧器(1)。
(2)(1)に記載の自走式噴霧器(1)において、
薬液を霧状にする生成部(23)を収容する筐体(21)と、
前記筐体(21)よりも側方に伸び、前記生成部(23)から送られる薬液を下向きに噴射する複数の横誘導配管(3)と、
湿度を検出し、検出した湿度が前記プロセッサ(51)による薬液の噴霧に係る制御に利用される湿度センサ(42A,42B)と、
前記筐体(21)から側方に向けて伸縮し、前記湿度センサ(42)を前記筐体(21)の側方に位置づけるアーム(43A,43B)と、を備えることを特徴とする自走式噴霧器(1)。
(3)(2)に記載の自走式噴霧器(1)において、
前記筐体(21)から上方に伸びる上誘導配管(231)を備え、
2つの前記横誘導配管(3)が、前記上誘導配管(231)から第1方向(
図1、
図2の左右方向)の両側に分岐するように前記上誘導配管(231)に繋がり、
前記アーム(43A,43B)は、2つあり、一方の前記アーム(43A)は、前記筐体(21)における前記第1方向の一方側から前記第1方向の一方側に向けて伸縮し、他方の前記アーム(43B)は、前記筐体(21)における前記第1方向の他方側から前記第1方向の他方側に向けて伸縮することを特徴とする自走式噴霧器(1)。
(4)(3)に記載の自走式噴霧器(1)において、
前記アーム(43A,43B)は、前記湿度センサ(42A,42B)の検出部を前記横誘導配管(3)の薬液の噴霧口(31)の下方に位置づけることを特徴とする自走式噴霧器(1)。
(5)(1)に記載の自走式噴霧器(1)において、
湿度センサ(42A,42B)を備え、
前記プロセッサ(51)は、前記光電センサ(41)および前記湿度センサ(42A,42B)の検出結果に基づいて、床面における薬液の噴霧の処理済み領域を判断し、前記処理済み領域での噴霧を避けることを特徴とする自走式噴霧器(1)。
【0007】
本発明では、光電センサを備えることにより、薬液の床面への噴霧量に係るパラメータを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】横誘導配管を示す自走式噴霧器の平面図である。
【
図3】光電センサの設置位置の変形例を示す図である。
【
図6】プロセッサによる噴霧処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して実施形態を説明する。
図1は、自走式噴霧器1の構成を示す図である。
自走式噴霧器1は、自走しながら周囲の空間および床面へ向けて薬液を噴霧する。自走式噴霧器1の筐体21は、タンク22および生成部23を収容し、下部に移動機構24が設けられる。筐体21は、適宜の形状でよく、本実施形態では外観が6面体状である。筐体21は、例えば樹脂製である。移動機構24は、自走式噴霧器1が床面を走行するための適宜の機構であってよく、本実施形態では、複数の車輪を駆動させ、また、車輪の向きを制御することで進行方向を変更できる。筐体21には、タンク22へ薬液を入れるための不図示の注口がある。
【0010】
タンク22は、筐体21の内側に形成され、薬液を溜める。タンク22は、筐体21と別体で、筐体21内に出し入れできてもよい。薬液は、適宜の物を使用でき、例えば、ウイルスや細菌の不活化を目定とするものや、消臭を目的とするものを使用できる。本実施形態では、薬液として、次亜塩素酸水を使用するものとするが、過酸化水素水や消毒用のアルコールを使用してもよい。次亜塩素酸水は、電気分解により生成された電解水であってもよいし、次亜塩素酸ナトリウムを水に溶解させてpHを調整した次亜塩素酸溶解水であってもよい。
【0011】
生成部23は、タンク22から薬液が供給され、薬液を霧状にする。生成部23は、適宜の構成を取り得、例えば超音波方式で薬液を霧状化する。一例として、超音波方式の生成部23は、上誘導配管231、振動子232、ファン233を備える。上誘導配管231は、タンク22内外の配管が一体となったものとするが、タンク22内の部分を発生管とし、タンク22外の部分を上誘導配管として別体となっていてもよく、この場合、上誘導配管は、筐体21の上面に差し込むことで、筐体21に組み付けられてもよい。
【0012】
上誘導配管231は、タンク22内の底面から上面に亘って伸び、さらに筐体21から上方に伸びる。上誘導配管231には、タンク22から適宜の量の薬液が供給される。振動子232は、上誘導配管231の底に設けられ、電圧の印加により振動する。振動子232は、自身の上方にある薬液に超音波を照射し、上誘導配管231内の薬液を水面にて霧状化する。ファン233は、上誘導配管231内に送風する。上誘導配管231内に発生した霧状の薬液は、ファン233による風に乗って上誘導配管231内を上方に進み、横誘導配管3に送られる。なお、生成部23は、気化方式で薬液を霧状化してもよく、タンク22から薬液が供給されるフィルタにファンによって送風し、薬液を霧状化してもよい。生成部23は、スチーム方式で薬液を霧状化してもよく、タンク22から薬液が供給されるヒータにて薬液を加熱し、薬液を霧状化してもよい。
【0013】
横誘導配管3は、複数設けられ、それぞれ筐体21よりも側方に伸び、生成部23から送られる薬液を噴霧口31から下向きに噴射する。横誘導配管3は、例えば、上方へ傾斜してもよい。横誘導配管3の軸の水平面に対する傾きθは例えば15度である。横誘導配管3の軸の傾きθを45度よりも小さくすることで、自走式噴霧器1の高さを抑制しながら、足元側へ広範囲に薬液を噴霧できる。本実施形態では、横誘導配管3が上方へ傾斜するので、横誘導配管3の内壁面に付着する薬液の液滴を該内壁面に沿って下方へ流すことができ、噴霧口31からの液滴の落下を抑制できる。
【0014】
噴霧口31は、横誘導配管3の先端部に設けられてもよい。本実施形態では、横誘導配管3は、2つ設けられ、上誘導配管231から
図1の左右方向の両側に分岐するように上誘導配管231に繋がる(
図2も参照)。2つの横誘導配管3は、上方から見た場合に一直線に配置されてなくてもよく、各横誘導配管3の軸が交差するように配置されてもよい。横誘導配管3は、3本以上あってもよい。上誘導配管231および横誘導配管3の断面形状は円形又は楕円形であるものとする。横誘導配管3の傾きθ、長さ、上誘導配管231および横誘導配管3の断面形状は適宜の態様を取り得る。
【0015】
自走式噴霧器1は、光電センサ41を備える。光電センサ41は、発光素子により床面に向けて赤外線等の光を出力し、受光素子により床面の反射光を受光する。発光素子は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。受光素子は、例えばPD(Photo Diode)である。光電センサ41は、本実施形態では、筐体21において
図1の左右両側面に設置される。光電センサ41の設置位置は適宜でよい。光電センサ41は、
図3に参照されるように、横誘導配管3に設置されてもよく、横誘導配管3の下側、かつ横誘導配管3の先端側において噴霧口31よりも基端側に設置されてもよい。
【0016】
例えば水を噴霧した場合は、水は光を吸収する性質を有するので、床面の反射光の強度を検出し、床面において反射光の強度が低い領域を、薬液の付着が十分な領域として判断できる。ここで、水は、波長が700nmよりも長い赤外線領域の光を良好に吸収し、特に波長が1450nm、1940nm、2900nmの光を良好に吸収する。従って、薬液が付着する領域の検出能を高める観点から、光電センサ41において出力する光の中心波長は700nmよりも長いことが好ましく、中心波長が1450nmまたは1940nmまたは2900nmのいずれかであることがさらに好ましい。
【0017】
図1に戻り、自走式噴霧器1は、マップ用センサ44を備える。マップ用センサ44は、周囲の床領域の位置座標を作成するためのセンサであり、カメラや超音波センサでもよく、本実施形態では、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサであるものとする。マップ用センサ44は、自走式噴霧器1の周囲をレーザ光で走査し、反射光を受光する。プロセッサ51は、レーザ光の出力および受光までの時間であるレーザ光の飛行時間に基づき、周囲の床領域の位置座標および障害物の位置座標を取得する。プロセッサ51は、走行中継続して、または移動前後にマップ用センサ44で周囲を測定することで、周囲の床面および障害物のマップを補完および拡張する。プロセッサ51は、マップ用センサ44で作成する直近のマップと以前のマップとを比較することで、マップ中の自機の位置を把握できる。マップ用センサ44は、筐体21における適宜の位置に設置できる。
【0018】
自走式噴霧器1は、さらに、湿度センサ42A,42Bおよびアーム43A,43Bを備える。湿度センサ42A,42Bは、本実施形態では、2つ設けられ、湿度を検出する。
図1の左側のものを湿度センサ42Aとし、右側のものを湿度センサ42Bとする。湿度センサ42A,42Bにより検出された湿度は、プロセッサ51によって、薬液の噴霧に係る制御に利用される。
【0019】
アーム43A,43Bは、筐体21から側方に向けて伸縮し、湿度センサ42A,42Bを筐体21の側方に位置づける。アーム43A,43Bは、適宜の機構を取り得る。アーム43A,43Bは、例えば、モータによりボールねじを回転させ、ボールねじ上のスライダを筐体21の側方へ向かって進退させてもよく、このスライダに湿度センサ42A,42Bが設けられてもよい。アーム43A,43Bは、湿度センサ42A,42Bに対応した数があればよく、本実施形態では、2つある。
図1の左側のアーム43Aは、
図1の左側に向けて伸縮し、
図1の右側のアーム43Bは、
図1の右側に向けて伸縮する。アーム43A,43Bは、例えば、縮んでいる状態では、湿度センサ42A,42Bを、筐体21に収容させてもよいし、筐体21の外側において筐体21に近い位置に位置づけてもよい。
【0020】
図4は、アーム43A,43Bを伸ばした状態を示す図である。
アーム43A,43Bは、湿度センサ42A,42Bによる湿度の検出に先立ち、伸びて、湿度センサ42A,42Bの検出部を横誘導配管3の薬液の噴霧口31の下方に位置づける。湿度センサ42A,42Bの検出部は、例えば、噴霧口31の直下に位置づけられる(
図2も参照)。なお、アーム43A,43Bは、伸びた際に、湿度センサ42A,42Bを、平面視で噴霧口31や横誘導配管3に対してずれた位置に位置づけてもよい。
【0021】
図5は、自走式噴霧器1の機能ブロック図である。
自走式噴霧器1は、プロセッサ51を備える。プロセッサ51は、メモリ52からプログラムや各種のデータを読み込み、自走式噴霧器1の動作を制御する。プロセッサ51は、光電センサ41および湿度センサ42A,42Bの検出結果を薬液の噴霧に係る制御に利用する。該制御に関しては後述する。プロセッサ51は、また、生成部23を制御する。プロセッサ51は、マップ用センサ44を用いて自走式噴霧器1の周囲の床面のマップを作成するとともに、自機の位置を把握する。マップには、障害物の位置が記憶されていてもよい。プロセッサ51は、マップを、ダウンロード等により予め保持してもよい。
【0022】
移動機構24は、モータドライバ241を介してプロセッサ51の制御下にあり、蓄電ユニット53を駆動源として駆動モータ242を駆動し、車輪を駆動したり、車輪の向きを変更したりする。蓄電ユニット53は、接続端子部54を介して充電器9の接続端子部92と接続し、充電される。充電器9は、電力制御部91により蓄電ユニット53への給電を制御する。
【0023】
図6は、プロセッサ51による噴霧処理のフローチャートである。以下では、噴霧処理に関し、周囲の床面および空間への噴霧が十分と判断するまで静止した状態で噴霧した後、噴霧を停止し、他領域へ移動する例を説明する。なお、自走式噴霧器1が静止した状態とは、自走式噴霧器1が走行しないでその場にとどまっている状態を指す。噴霧処理は、プロセッサ51が、光電センサ41および湿度センサ42A,42Bの検出結果に基づいて、薬液を十分に噴霧した床面の領域である処理済み領域を判断し、処理済み領域での噴霧を避けるように自走式噴霧器1を制御する処理であれば、適宜の態様を取り得る。処理済み領域は、自機の周囲の狭い範囲の床領域であり、その大きさは、設定により予め定められていてもよい。例えば、後述する所定領域が上記の処理済み領域に相当する。
【0024】
プロセッサ51は、自走式噴霧器1の電源がONされると(ステップ1)、電源がONされた際に自走式噴霧器1が位置する所定の大きさの所定領域で、走行しない静止した状態で生成部23を駆動して噴霧を開始する(ステップ2)。プロセッサ51は、マップ用センサ44により、周囲のマップを作成する。プロセッサ51は、マップ用センサ44にて継続して、または移動前後で周囲を測定し、マップを補完拡張するとともにマップ中の自機の位置を取得する。
【0025】
静止した状態で一定時間の噴霧がなされた後、プロセッサ51により噴霧を一時停止する(ステップ3)。
【0026】
プロセッサ51は、光電センサ41にて周囲の床面の反射光を検出し(ステップ4)、床面の反射光の強度に基づいて、床面への噴霧量が十分であるか否かを判断する(ステップ5)。以下、光電センサ41にて検出する自走式噴霧器1の周囲の床面の領域を所定領域と称する。所定領域は、マップ用センサ44にて測定する周囲の床面の領域よりも小さい。所定領域は、予め一定の大きさに設定されていてもよい。噴霧量が十分か否かの判断に際して、プロセッサ51が、所定領域における反射光の強度をどのように利用するかは適宜である。例えば、予め閾値がメモリ52に記憶されており、プロセッサ51は、所定領域の反射光の強度が閾値以下である場合に所定領域における床面への噴霧量は十分と判断してもよい。例えば、自走式噴霧器1が存在する室内の床面の各領域に対応する閾値がメモリ52に記憶されており、プロセッサ51は、記憶された閾値を参照し、所定領域に対応する閾値を使用してもよい。プロセッサ51は、所定領域の反射光の強度が閾値より大きく、所定領域での床面への噴霧量が不十分と判断する場合(ステップ5:NO)、再度、所定領域にて噴霧を行う(ステップ2)。このようにして、プロセッサ51は、床面への噴霧量が十分と判断するまで、所定領域にて静止した状態で間欠的に噴霧する(ステップ2~ステップ5:NO)。
【0027】
プロセッサ51は、上記反射光の強度に基づいて所定領域での床面への噴霧量が十分と判断する場合(ステップ5:YES)、噴霧を再開し(ステップ6)、アーム43A,43Bを伸ばして湿度センサ42A,42Bを、筐体21の側方へ位置付ける。本実施形態では横誘導配管3の薬液の噴霧口31の直下に位置づける(ステップ7)。
プロセッサ51は、湿度センサ42A,42Bにより湿度を検出し(ステップ8)、検出結果に基づいて所定領域における空間への噴霧量が十分であるか否かを判断する(ステップ9)。プロセッサ51は、例えば検出した湿度が閾値未満である場合、所定領域における空間への噴霧量が不十分と判断し(ステップ9:NO)、噴霧を継続し、再度、噴霧領域の湿度を検出する(ステップ8)。このようにして、プロセッサ51は、空間への噴霧量も十分となるまで所定領域で静止した状態で噴霧を継続する(ステップ8~ステップ9:NO)。
【0028】
プロセッサ51は、例えば検出した湿度が閾値以上である場合、所定領域における空間への噴霧量は十分と判断し(ステップ9:YES)、噴霧を停止する(ステップ10)。プロセッサ51は、アーム43A,43Bを縮めて湿度センサ42A,42Bをホーム位置(筐体21の側面側の位置)に戻す(ステップ11)。プロセッサ51は、所定領域の外側の領域へ移動した後に停止し(ステップ12)、再び上記のステップ2~ステップ12の処理を行い、移動先の所定領域において床面および空間に薬液を十分に噴霧する。
【0029】
このようにしてプロセッサ51は、ステップ2~ステップ12を繰り返し、噴霧する領域を少しずつずらしながら広域の床面および空間へ薬液を十分に噴霧する。この際、プロセッサ51は、床面および空間への噴霧量が十分だと判断した所定領域である処理済み領域を避けるように自走式噴霧器1を移動させていく。
【0030】
なお、湿度センサ42A,42Bを利用せず、光電センサ41のみを利用してもよく、この場合、ステップ6~ステップ11の処理を省略できる。
【0031】
水等の液体は、光を吸収する性質を有するので、薬液の噴霧量が十分な床面は、噴霧が不十分な床面に比べ、反射光の強度が低下する。本実施形態では、上記のように、光電センサ41を備えることにより、薬液の床面への噴霧量に係るパラメータとして床面の反射光の強度を得ることができる。従って、プロセッサ51は、光電センサ41の該検出結果に基づいて、床面における薬液の噴霧の処理済み領域を判断し、処理済み領域での噴霧を避けるように自走式噴霧器1に噴霧および走行させることができる。さらに、プロセッサ51は、光電センサ41に加えて湿度センサ42A,42Bの検出結果に基づいて、床面における薬液の噴霧の処理済み領域を判断することで、処理済み領域の判断精度を高めることができる。上記制御は、その一例である。これにより、本実施形態は、効率的に薬液を噴霧できる。
【0032】
なお、プロセッサ51は、周囲のマップを作成しつつある一定の距離を走行し、走行ルート上の床面の領域およびその周囲の床面の領域(光電センサ41による測定領域)を含む走行噴霧領域に亘って床面および空間への噴霧量が十分か否かを判断してもよい。この際、プロセッサ51は、光電センサ41による床面の測定および湿度センサ42A,42Bによる湿度の測定を走行中に継続して行ってもよい。プロセッサ51は、走行噴霧領域に亘って噴霧量が十分と判断できるまで自走式噴霧器1に走行ルートを往復させてもよい。そして、プロセッサ51は、走行噴霧領域に亘って噴霧量が十分と判断すると、自走式噴霧器1に走行噴霧領域の外側を走行させ、新たな走行噴霧領域に亘って噴霧量が十分となるまで自走式噴霧器1に新たな走行ルートを往復させてもよい。プロセッサ51は、上述した各噴霧処理を行う前に、室内に亘ってまたは周囲を自走式噴霧器1に走行させ、光電センサ41により各領域の床面の反射光の強度を取得してもよい。そして、プロセッサ51は、噴霧処理において、このようにして事前に取得した床面の各領域の反射光の強度、および噴霧処理中に得た床面の各領域での反射光の強度を利用して、床面の各領域への噴霧が十分であるか否かを判断してもよい。
【0033】
本発明は、その特徴から逸脱することなく、実施形態で実施できる。実施形態、変形例、効果は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。実施形態および変形例の特徴、構造は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0034】
1…自走式噴霧器、3…横誘導配管、21…筐体、23…生成部、31…噴霧口、41…光電センサ、42A,42B…湿度センサ、43A,43B…アーム、51…プロセッサ、231…上誘導配管。