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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101587
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】燃料供給装置及び燃料供給方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20240723BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C5/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005560
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大石 怜未
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BA04
3E172BB13
3E172BD03
3E172BD05
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA35
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】充填プロトコルを遵守しつつ、大容量の燃料タンクを複数個搭載している車輌に対して迅速に水素ガスを充填することが出来る燃料供給装置の提供。
【解決手段】本発明の燃料供給装置(100)は、複数の供給系統(101、102)と、供給系統の各々に設けられた複数の制御装置(10、20)を備え、数の供給系統の各々の供給配管(31、41)には制御装置に接続された供給部材(流量調節弁、流量計、その他)が介装されており、複数の供給制御装置の各々は、一方側の供給系統(101)及び/又は他方側の供給系統(102)で通信充填が成立しているか否かを判断する機能と、前記一方側の供給系統で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統で通信充填が成立している場合には、当該他方側の供給系統における車輌側データ(例えばタンク内の温度及び圧力)を用いて供給する機能を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の供給系統と、供給系統の各々に設けられた複数の制御装置と、表示装置を備え、
前記複数の供給系統の各々では供給配管が後方施設に連通しており、供給配管には供給部材が介装されており、供給部材は供給制御装置に接続されており、供給配管には供給ホースが接続され、供給ホースの先端には供給ノズルが設けられている燃料供給装置において、
複数の供給制御装置の各々は、
一方側の供給系統及び/又は他方側の供給系統で通信充填が成立しているか否かを判断する機能と、
前記一方側の供給系統で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統で通信充填が成立している場合には、当該他方側の供給系統における車輌側データを用いて供給する機能を有することを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記供給制御装置は、何れかの供給系統に異常を生じた場合に報知する機能を有している請求項1の燃料供給装置。
【請求項3】
前記供給制御装置は、前記一方側の供給系統で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統で通信充填が成立している場合に、
前記他方側の供給系統に接続している車輌側の容器の温度データが所定値を超えた場合、
燃料供給圧力が、前記他方側の供給系統に接続している車輌側の容器の温度データから算出される前記車輌側の容器への供給可能圧力を超えた場合、
前記他方側の供給系統において、車輌側から受信した供給可否信号として供給停止信号を受信した場合、
の何れかの場合には、供給を停止する機能を有する請求項1、2の何れかの燃料供給装置。
【請求項4】
複数の供給系統と、供給系統の各々に設けられた複数の制御装置と、表示装置を備え、
前記複数の供給系統の各々では供給配管が後方施設に連通しており、供給配管には供給部材が介装されており、供給部材は供給制御装置に接続されており、供給配管には供給ホースが接続され、供給ホースの先端には供給ノズルが設けられている燃料供給装置を用いる燃料供給方法において、
一方側の供給系統及び/又は他方側の供給系統で通信充填が成立しているか否かを判断する工程と、
前記一方側の供給系統で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統で通信充填が成立している場合には、当該他方側の供給系統における車輌側データを用いて供給する工程を有することを特徴とする燃料供給方法。
【請求項5】
何れかの供給系統に異常を生じた場合に報知する異常報知工程を有する請求項1の燃料供給方法。
【請求項6】
前記一方側の供給系統で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統で通信充填が成立している場合に、
前記他方側の供給系統に接続している車輌側の容器の温度データが所定値を超えた場合、
燃料供給圧力が、前記他方側の供給系統に接続している車輌側の容器の温度データから算出される前記車輌側の容器への供給可能圧力を超えた場合、
前記他方側の供給系統において、車輌側から受信した供給可否信号として供給停止信号を受信した場合、
の何れかの場合には、供給を停止する工程を有する請求項1、2の何れかの燃料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池自動車の燃料タンクに燃料である水素ガスを充填する燃料供給装置及び燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題に対する意識の高まりに関連して、水素ガスを燃料とした車輌(燃料電池自動車)が普及している。
出願人は、その様な車輌に対して、車輌側のタンク内の温度、圧力の情報を取得して充填作業を行い(通信充填)、通信充填が成立しない場合には安全性の高い状態で維持しつつ水素を充填する非通信充填を行う水素充填装置を先に提案している(特許文献1参照)。
【0003】
燃料電池自動車は、乗用車のみならず、物流に用いられる大型トラックやバスについても開発されている。ここで、大型トラックやバスでは、長距離を走行することを考慮して、大容量の燃料タンクを複数個搭載している。
大容量の燃料タンクを複数個搭載している大型トラックに水素を供給する場合、単一の充填ノズルを用いて充填すると、燃料供給装置内の充填配管の径寸法、後方設備の水素量、圧縮機の能力によって、充填時間が非常に長くなってしまう場合が存在する。一方で、大型トラックやバスに水素ガスを充填する場合においても、充填プロトコルの遵守が必要である。
出願人は、燃料タンクを複数個搭載する車輌への水素充填を効率的に行うため、複数の充填系統を備え、複数の充填系統の各々の充填ノズルが複数の燃料タンクに連通する複数のレセプタクルに接続することが出来て、複数の燃料タンク同士が連通している場合と連通していない場合で制御モードを切り替えることが出来る水素充填装置を提案している(特許文献2参照)。
【0004】
ここで、複数の供給系統において、何らかの理由により、何れかの供給系統或いは全部の供給系統で通信充填が成立しなくなる場合が存在する。
しかし、特許文献1の従来技術では、複数の充填系統の各々の充填ノズルを複数の燃料タンクを有する車輌の複数のレセプタクルに接続して水素充填(燃料供給)する場合については開示していない。
また、特許文献2に係る従来技術では、車輌のタイプ(複数の燃料タンク同士が連通している場合と連通していない場合)により制御モードを切り替えることが出来るが、複数の供給系統の各々において通信充填が成立しているか否かにより制御モードを切り替えることは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6737350号公報
【特許文献2】特開2021-196051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、充填プロトコルを遵守しつつ、複数の供給系統の各々で通信充填が成立しているか否かに対応した制御を行うことが出来て、且つ、大容量の燃料タンクを複数個搭載している車輌(例えば、大型トラック、バス)に対して迅速に水素ガスを供給(充填)することが出来る燃料供給装置及び燃料供給方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料供給装置(100:水素充填装置)は、
複数の供給系統(101、102:充填系統)と、供給系統(101、102)の各々に設けられた複数の制御装置(10、20)と、表示装置(30、40)を備え、
前記複数の供給系統(101、102)の各々では供給配管(31、41:充填配管)が後方施設(50、60)に連通しており、供給配管(31、41)には供給部材(充填部材:例えば流量調節弁2、12、遮断弁4、14、流量計3、13、温度計5、15、圧力計6、16)が介装されており、供給部材は供給制御装置(10、20:充填制御装置)に接続されており、供給配管(31、41)には供給ホース(7、17)が接続され、供給ホース(7、17:充填ホース)の先端には供給ノズル(8、18:充填ノズル)が設けられている燃料供給装置(100)において、
複数の供給制御装置(10、20)の各々は、
一方側の供給系統(101)及び/又は他方側の供給系統(102)で通信充填が成立しているか否かを判断する機能と、
前記一方側の供給系統(101)で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統(102)で通信充填が成立している場合には、当該他方側の供給系統(102)における車輌側データ(例えばタンク内の温度及び圧力)を用いて供給(充填)する機能を有することを特徴としている。
【0008】
本発明において、前記供給制御装置(10、20)は、何れかの供給系統に異常を生じた場合に報知する機能を有しているのが好ましい。
ここで、前記異常の報知する機能は、例えば、前記一方の側で通信充填が成立しない場合に、前記他方側の車輌側データを用いて前記一方側の供給を行っている旨の情報を前記表示装置(30、40)に表示する機能を含むのが好ましい。
【0009】
また、前記供給制御装置(10、20)は、前記一方側の供給系統(101)で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統(102)で通信充填が成立している場合に、
前記他方側の供給系統(102)に接続している車輌側の容器(タンク)の温度データが所定値(例えば85℃)を超えた場合、
燃料供給圧力(水素充填圧力)が、前記他方側の供給系統(102)に接続している車輌側の容器(タンク)の温度データから算出される前記車輌側の容器への供給可能圧力(充填可能圧力)を超えた場合、
前記他方側の供給系統(102)において、車輌側から受信した供給可否信号(充填可否信号)として供給停止信号(充填停止信号)を受信した場合、
の何れかの場合には、(前記一方の供給系統101及び前記他方の供給系統102における)供給を停止する機能を有するのが好ましい。
【0010】
本発明の燃料供給方法は、
複数の供給系統(101、102)と、供給系統(101、102)の各々に設けられた複数の制御装置(10、20)と、表示装置(30、40)を備え、
前記複数の供給系統(101、102)の各々では供給配管(31、41)が後方施設(50、60)に連通しており、供給配管(31、41)には供給部材(例えば流量調節弁2、12、遮断弁4、14、流量計3、13、温度計5、15、圧力計6、16)が介装されており、供給部材は供給制御装置(10、20)に接続されており、供給配管(31、41)には供給ホース(7、17)が接続され、供給ホース(7、17)の先端には供給ノズル(8、18)が設けられている燃料供給装置(100)を用いる燃料供給方法において、
一方側の供給系統(101)及び/又は他方側の供給系統(102)で通信充填が成立しているか否かを判断する工程と、
前記一方側の供給系統(101)で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統(102)で通信充填が成立している場合には、当該他方側の供給系統(102)における車輌側データ(例えばタンク内の温度及び圧力)を用いて供給する工程を有することを特徴としている。
【0011】
本発明において、何れかの供給系統に異常を生じた場合に報知する異常報知工程を有するのが好ましい。
ここで、前記異常報知工程は、例えば、前記一方の側で通信充填が成立しない場合に、前記他方側の車輌側データを用いて前記一方側の供給を行っている旨の情報を前記表示装置(30、40)に表示する工程を含むのが好ましい。
【0012】
また本発明において、前記一方側の供給系統(101)で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統で通信充填(102)が成立している場合に、
前記他方側の供給系統(102)に接続している車輌側の容器(タンク)の温度データが所定値(例えば85℃)を超えた場合、
燃料供給圧力が、前記他方側の供給系統(102)に接続している車輌側の容器(タンク)の温度データから算出される前記車輌側の容器への供給可能圧力を超えた場合、
前記他方側の供給系統(102)において、車輌側から受信した供給可否信号として供給停止信号を受信した場合、
の何れかの場合には、(前記一方の供給系統101及び前記他方の供給系統102における)供給を停止する工程を有するのが好ましい。
【0013】
本発明において、供給される燃料は、水素や水素以外の気体燃料、CNG、LPG、気体水素等の液体燃料を含む。
【発明の効果】
【0014】
大容量の燃料タンク(70)を複数個搭載している車輌(大型トラック、バス)では、燃料供給用(水素充填用)のレセプタクル(71)を複数個(例えば2個)設けており、上述の構成を具備する本発明によれば、複数(例えば2系統)の供給(充填)系統(101、102)における供給ノズル(8、18)を大型トラックやバスの複数のレセプタクル(71)に各々装着して供給することにより、複数のレセプタクル(71)に対して個別に単一の供給ノズルを装着して水素供給する場合に比較して、遥かに短時間で水素を供給することが可能である。
【0015】
ここで、発明者の実験、研究の結果から、大容量の燃料タンク(70)を複数個搭載している車輌(大型トラック、バス)のレセプタクル(71)に、複数(例えば2系統)の供給系統(101、102)を有する本発明の燃料供給装置(100)の供給ノズル(8、18)を接続すれば、燃料供給装置(100)における複数の供給系統(水素充填系統101、102)の各々に対して、車輌側からは同一の信号が送られるという前提の下に、制御を行うことが出来ることが分かった。
本発明によれば、複数の供給系統(101、102)の各々に送信された各種パラメーター(温度、圧力))が同一でない場合や、安全性に影響がある場合には供給を停止する様に構成することが出来る。そのため、本発明では、上述の前提に基づいて燃料供給(例えば水素充填)が行われる。
本発明によれば、一方側の供給系統(101)及び/又は他方側の供給系統(102)で通信充填が成立しているか否かを判断して、
前記一方側の供給系統(101)で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統(102)で通信充填が成立している場合には、当該他方側の供給系統(102)における車輌側データ(例えばタンク内の温度及び圧力)を用いて供給するので、前記一方側及び前記他方側の双方の供給系統(101、102)で通信充填を行うことが出来る。
そして、前記一方側及び前記他方側の双方の供給系統(101、102)で通信充填を行うため、前記一方側及び前記他方側の双方の供給系統(101、102)において、非通信充填の場合に比較して、車輌の燃料タンクを高圧で供給することが出来る。そのため、特に、複数の燃料タンク(70)と複数のレセプタクル(71)を有する車輌に対する供給効率が向上する。
【0016】
本発明において、前記一方側の供給系統(101)で通信充填が成立しておらず、前記他方側の供給系統(102)で通信充填が成立している場合に、
前記他方側の供給系統(102)に接続している車輌側の容器(タンク)の温度データが所定値(例えば85℃)を超えた場合、
燃料供給圧力が、前記他方側の供給系統(102)に接続している車輌側の容器(タンク)の温度データから算出される前記車輌側の容器への供給可能圧力を超えた場合、
前記他方側の供給系統(102)において、車輌側から受信した供給可否信号として供給停止信号を受信した場合、
の何れかの場合には、(前記一方の供給系統101及び前記他方の供給系統102における)供給を停止する様に構成すれば、
何れかの供給系統で通信充填が成立しないにもかかわらず、前記一方側及び前記他方側の双方の供給系統(101、102)において非通信充填の場合に比較して高圧の燃料供給を行ったとしても、安全性を担保することが出来る。
【0017】
また本発明において、何れかの供給系統に異常を生じた場合に報知する様に構成すれば、燃料供給における安全性を向上することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】燃料タンクを複数個搭載している車輌であって、燃料タンクと水素充填用レセプタクルを連通する複数の経路が車輌内で連通している車輌の燃料タンクと水素充填用レセプタクルの配置を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る燃料供給装置(水素充填装置)のブロック図である。
図3】第1の水素充填系統側の制御を示すフローチャートである。
図4】第2の水素充填系統側の制御を示すフローチャートである。
図5】表示装置を示す説明図である。
図6】第1の水素充填系統側の表示装置における通信充填に関する表示の説明図である。
図7】第2の水素充填系統側の表示装置における通信充填に関する表示の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図示の実施形態では、供給するべき燃料は水素の場合について示されている。
最初に図1を参照して、大容量の燃料タンクを複数個搭載している車輌(例えば、大型トラック、バス)における水素充填系統について説明する。
図1において燃料系統を単純化して示す大型車輌は、燃料タンク70を複数個(図1では4個:70-1~70-4)搭載しており、複数(図1では2口)の水素充填用レセプタクル71-1、71-2を備えている。水素充填用レセプタクル71-1と連通する経路76と、水素充填用レセプタクル71-2と連通する経路78は、経路80を介して車輌内で連通している。従って、経路80を介して4個の燃料タンク70-1~70-4も車輌内で連通している。符号72-1、72-2は、通信充填で用いられる車輌データ(タンク内の温度データ及び圧力データ)の送信部である。
【0020】
次に図2を参照して、燃料タンク70を複数個搭載し、2口の水素充填用レセプタクル71-1、71-2(図1)を備えている車輌の水素充填を好適に行うための水素充填装置を説明する。
図2において、図示の実施形態に係る水素充填装置100は2つの水素充填系統101、102(第1の水素充填系統、第2の水素充填系統)を有しており、水素充填系統101、102の各々は、充填制御装置、表示装置、充填配管、充填部材(流量調整弁、流量計等)、充填ノズル、その他を有している。
第1の水素充填系統101は、充填制御装置10、表示装置30、充填配管31を有している。充填配管31は、上流側(図2では左側)が後方施設50(水素ガス供給源)に連通しており、他方(図2では右側)の端部は充填ホース7を介して充填ノズル8に接続されている。充填配管31には、充填部材として流量調整弁2、遮断弁4、流量計3(質量流量計)、温度計5、圧力計6が介装されている。
流量調整弁2、遮断弁4、流量計3、温度計5、圧力計6は、それぞれ信号伝達ラインSL2、SL4、SL3、SL5、SL6を経由して充填制御装置10に接続されている。また、充填ノズル8に設けられた車輌データ受光部9と充填制御装置10は、信号伝達ラインSL9により接続されている。さらに表示装置30は、信号伝達ラインSL10により充填制御装置10に接続されている。
【0021】
図2において、第1の水素充填系統101の後方施設50(水素ガス供給源)に貯蔵される水素ガスは、充填配管31により、流量調整弁2、遮断弁4、流量計3を経由して充填ホース7を流過し、充填ノズル8を介して図示しない車輌の燃料タンク70(図1)に充填される。
第1の水素充填系統101の制御部として機能する充填制御装置10は、信号伝達ラインSL3を介して流量計3(質量流量計)、温度計5、圧力計6の計測結果を取得し、信号伝達ラインSL2を介して流量調整弁2に流量制御信号を送信する。また、充填制御装置10は、充填を終了或いは中止する際に、流量調整弁2、遮断弁4に対して、各々信号伝達ラインSL2、SL4を介して制御信号を送信して、流量調整弁2を制御し且つ遮断弁4を閉鎖する。圧力計6の計測結果は、非通信充填の際に充填される水素ガスの充填圧力である。温度計5の計測結果及び圧力計6の計測結果は通信充填時と非通信充填時の双方で用いられる。
【0022】
充填ノズル8に設けられた車輌データ受光部9は、車輌側タンク70(図1)のデータ(タンク内圧力、温度、充填量、その他)を、信号伝達ラインSL9を介して充填制御装置10に送信する。
充填制御装置10は、第1の水素充填系統101の流量調整弁2、遮断弁4、流量計3、温度計5、圧力計6と情報或いは制御信号を授受し、車輌側タンク70のデータ(タンク内圧力、温度、充填量、その他)を取得して、適正な温度範囲及び/又は圧力範囲で水素ガスを車輌側タンク70に供給し、以って充填プロトコルを遵守した水素充填(通信充填)を実行する機能を有している。また、充填制御装置10は、車輌側タンク70のデータ(タンク内圧力、温度、充填量、その他)が取得できず、通信充填が行えない場合に、車輌側タンク70のデータを使用しない非通信充填を実行する機能を有している。そして、充填制御装置10は、車輌側タンク70内のデータを取得したか否かにより、通信充填の成立、不成立を判断することが出来る。
【0023】
図2において、第2の水素充填系統102は、充填制御装置20、表示装置40、充填配管41を有しており、充填配管41は、上流側(図2では左側)が後方施設60(水素ガス供給源)に連通しており、他方(図2の右側)の端部は充填ホース17を介して充填ノズル18に接続されている。充填配管41には、充填部材として流量調整弁12、遮断弁14、流量計13(質量流量計)、温度計15、圧力計16が介装されている。
流量調整弁12、遮断弁14、流量計13、温度計15、圧力計16は、それぞれ信号伝達ラインSL12、SL14、SL13、SL15、SL16により充填制御装置20に接続されている。また、充填ノズル18に設けられた車輌データ受光部19と充填制御装置10は信号伝達ラインSL19で接続されている。さらに表示装置40は、信号伝達ラインSL11により充填制御装置20に接続されている。
【0024】
図2において、第2の水素充填系統102の後方施設60(水素ガス供給源)に貯蔵される水素ガスは、充填配管41により、流量調整弁12、遮断弁14、流量計13を経由して充填ホース17内を流れ、充填ノズル18を介して図示しない車輌の燃料タンク70(図1)に充填される。
第2の水素充填系統102の充填制御装置20と、流量調整弁12、遮断弁14、流量計13(質量流量計)、温度計15、圧力計16との情報、制御信号の授受、(車輌データ受光部19からの車輌側タンク70の情報(計測データ或いは制御信号)の授受については、第1の水素充填系統101と同様であるため、重複説明は回避する。
第2の水素充填系統102の充填制御装置20においても、充填プロトコルを遵守した水素充填(通信充填)を実行する機能を有している。また、車輌側タンク70のデータ(タンク内圧力、温度、充填量、その他)が取得できず、通信充填が行えない場合には、車輌側タンク70のデータを使用しない非通信充填を実行する機能を有している。そして、充填制御装置20は、車輌側タンク70からの温度データや圧力データが取得できるか否かにより、通信充填とするか非通信充填とするかを判断する機能を有している。
【0025】
図2において、係る水素充填装置100にはセレクトスイッチ34が設けられ、セレクトスイッチ34は、単一の充填ノズルのみで充填する(充填ノズル8、18の何れか一方のみで充填する)充填モードと、2つの充填ノズルで充填する(充填ノズル8、18の両方で充填する)充填モードの何れかを選択する機能を有している。セレクトスイッチ34により選択された充填モードは、信号伝達ラインSL21を介して第1の水素充填系統101の充填制御装置10に送信され、信号伝達ラインSL22を介して第2の水素充填系統102の充填制御装置20に送信される。
図2において、第1の水素充填系統101の充填制御装置10と第2の水素充填系統102の充填制御装置20は、中継機35を介して接続される。第1の水素充填系統101の充填制御装置10と中継機35は信号伝達ラインSL23を介して接続され、第2の水素充填系統102の充填制御装置20と中継機35は信号伝達ラインSL24を介して接続される。
【0026】
図示の実施形態では、例えば第1の水素充填系統101で通信充填が成立せず、第2の水素充填系統102で通信充填が成立している場合、第1の水素充填系統101の水素充填制御装置10は、第2の水素充填系統102側の水素充填制御装置20が(通信充填の際に)車輌側タンク70から伝達された情報を用いて水素充填を行う。
一方、第2の水素充填系統102で通信充填が成立せず、第1の水素充填系統101で通信充填が成立している場合、第2の水素充填系統102側の水素充填制御装置20は、第1の水素充填系統101側が通信充填より車輌側タンク70から伝達された温度や圧力の情報を用いて充填を行う。
【0027】
図2では明示されていないが、充填ノズル8の第1の水素充填系統101と、充填ノズル18の第2の水素充填系統102の各々に対して、車輌側(タンク70)からは同一の信号が送られるという前提で、制御が行われる。
なお、第1の水素充填系統101に送信された各種パラメーター(温度、圧力)と、第2の水素充填系統102に送信された各種パラメーター(温度、圧力)が、所定値以上異なっている場合には、後述の様に、充填が停止される。そのため、上述した前提で充填制御を行っても、不都合はない。
【0028】
図2において、図示の実施形態に係る水素充填装置100は、例えば第1の水素充填系統101で通信充填が成立しなくなっても、第2の水素充填系統102で通信充填が成立していれば、第2の水素充填系統102の車輌側からの情報を第1の水素充填系統101で用いることが出来る。そのため、第1の水素充填系統101においても、引き続き通信充填を行うことが出来るので、より高圧の領域まで水素充填することが出来る。
そして、第1の水素充填系統101の通信充填が成立していなくても、(具体的制御は後述するが)、通信充填を非通信充填に切り替え、或いは水素充填を停止することにより、安全性を担保している。
【0029】
図2を参照して第1の水素充填系統101側の水素充填制御装置10と、第2の水素充填系統102側の水素充填制御装置20による制御について、第1の態様~第4の態様に係る制御を説明する。
第1の態様に係る制御では、例えば第1の水素充填系統101の通信充填は成立せず、第2の水素充填系統102のみ通信充填が成立している場合、第1の水素充填系統101は、第2の水素充填系統102が受信した車輌側の情報を取得し、それを用いて通信充填を行う。
すなわち、第1の水素充填系統101と第2の水素充填系統102の同時充填時に、第1の水素充填系統101側の車輌データ(温度、圧力等)が正常に取得できなくなった場合に、第2の水素充填系統102側で受信した車輌データ(温度、圧力等)が有効であれば、第1の水素充填系統101側の水素充填制御装置10は、中継機35を介して前記車輌データ(温度、圧力等)を使用して、通信充填を継続させる。
この場合、第1及び第2の双方の水素充填系統101、102で通信充填を行うことが出来るので、第1及び第2の水素充填系統101、102の双方において、非通信充填の場合に比較して、車輌の燃料タンクを高圧の領域まで充填することが出来る。そのため、特に、複数の燃料タンク70(図1)と複数のレセプタクル71(図1)を有する車輌に対する充填効率が向上する。
第1の態様に係る制御において、第1の水素充填系統101が通信充填に第2の水素充填系統102側の車輌データを使用している旨を、表示装置30に表示(報知)する。表示装置30、40の表示内容については、図5図7を参照して後述する。
ここで、「同時充填時」とは、第1の水素充填系統101側の充填ノズル8と第2の水素充填系統102側の充填ノズル18が、それぞれの車輌側のレセプタクルに接続されて通信充填が行われている場合を言う。また、「車輌データが有効」とは、500mSec.間で有効なデータが受信できていることを意味している(SAEJ2799規格)。
【0030】
第1の水素充填系統101が、第2の水素充填系統102で受信した車輌側の情報を取得して、その情報を用いて(第1の水素充填系統101が)通信充填を行う場合、第1の水素充填系統101は車輌からの信号或いは情報を受信していないため、第1の水素充填系統101と連通したタンクの状況は分からないが、上述した様に、第1の水素充填系統101が取得したであろう情報或いは信号は、第2の水素充填系統102が取得した情報或いは信号と同一であると仮定されている。すなわち、上述した様に、第1の水素充填系統101と第2の水素充填系統102の各々に対して、車輌側からは同一の信号が送られるという前提で、制御が行われる。
水素充填を停止するべきか否かの判断は、第2の水素充填系統102が連通している車輌側の信号に基づき行われる。そして、第2の水素充填系統102側の車輌データが、水素充填を停止するべき条件となった場合には、第1及び第2の水素充填系統101、102における水素充填を速やかに終了し、水素充填以前の段階の様な「充填中以外」の状態であれば充填動作には移行しない。
図示の実施形態に係る水素充填装置100で水素充填する車輌は、燃料タンク70-1、70-2と70-3、70-4が相互に接続(連通)するタイプであっても、相互に独立に充填する(相互に連通していない)タイプであっても、図示の実施形態に係る制御には影響しない。換言すれば、車輌の燃料タンク70-1~70-4の内部構造(例えば、燃料タンク70の配管系:図1の経路80)については、図示の実施形態では考慮しない。
【0031】
第1の態様の制御は、第1の水素充填系統101の通信充填は成立せず、第2の水素充填系統102のみ通信充填が成立している場合であるが、第2の態様に係る制御は、第2の水素充填系統102の通信充填は成立せず、第1の水素充填系統101のみ通信充填が成立している場合である。第2の態様に係る制御では、第2の水素充填系統102が、第1の水素充填系統101で受信した車輌側の情報を取得し、中継機35を介して第1の水素充填系統101側の車輌データ(温度、圧力等)を取得して、通信充填を継続させる。
そして、第2の水素充填系統102が、第1の水素充填系統101側の車輌データを使用して通信充填を行っている旨が、表示装置40に表示される。
第1の水素充填系統101側の車輌データが、水素充填を停止するべき状態を示した場合は、第1及び第2の水素充填系統101、102における水素充填を速やかに終了する。
第2の態様に係る制御は、第1の態様に係る制御の真逆であり、重複説明は省略する。
【0032】
第3の態様に係る制御は、第1の水素充填系統101と第2の水素充填系統102の同時充填時(双方で通信充填が成立している場合)において、第1の水素充填系統101側で受信した車輌データ(タンク圧力、タンク温度)と、第2の水素充填系統102側で受信した車輌データ(タンク圧力、タンク温度)が同一ではない場合の制御である。第1の水素充填系統101の車輌データと第2の水素充填系統102の車輌データが、しきい値以上の差異がある場合は、水素充填制御装置10、及び/又は、水素充填制御装置20は、車輌データに異常が発生したと判断し、水素充填系統101、102における通信充填を停止する。
その後、水素充填系統101、102は、非通信充填を行う。
非通信充填では、通信充填に比較して、車輌側のタンクの圧力が低圧の範囲における充填しかできない。そのため、通信充填の場合に比較して、車輌側の安全が担保される。
第1及び第2の水素充填系統101、102で受信した車輌データの間でしきい値以上の差異が発生した旨と、通信充填から非通信充填に切り替えた旨は、表示装置30、40により表示される。
【0033】
図2において、第1及び第2の水素充填系統101、102の双方で受信した車輌データ(圧力、温度)が同一ではなく、しきい値以上の差異が発生する場合として、以下の様な場合が存在する。
例えば、第1の水素充填系統101の充填ノズル8と第2の水素充填系統102の充填ノズル18を別々の車輌に接続して充填しているにも拘わらず、充填ノズル8、18が「単一の車輌に対する2つの充填ノズルによる充填である」として操作されている場合には、第3の態様に係る制御に該当する。その場合には、通信充填を停止する。
上述した様に、上述した「前提」(充填ノズル8の第1の水素充填系統101と、充填ノズル18の第2の水素充填系統102の各々に対して、車輌側(タンク70)からは同一の信号が送られるという前提)は、第1及び第2の水素充填系統101、102の充填ノズルが、単一の車輌の2つのレセブタクルにそれぞれ接続されている場合である。異なる車輌の2つのレセブタクルに第1及び第2の水素充填系統101、102の充填ノズル8、18がそれぞれ接続されている場合には、当該「前提」は当然に成り立たない。
【0034】
図2において、第4の態様に係る制御は、第1の水素充填系統101側(の水素充填制御装置10)と第2の水素充填系統102側(の水素充填制御装置20)が取得する車輌データが共に不良となった場合、すなわち第1及び第2の水素充填系統101、102側の双方で通信充填が成立しない場合である。この場合、第1及び第2の水素充填系統101、102側の双方で非通信充填を行う。
双方で非通信充填を行うことで、通信充填が行われるよりも低圧の範囲の充填圧力で水素が充填され、車輌側の安全を担保出来る様な充填制御が行われる。
第1及び第2の水素充填系統101、102が共に充填に車輌データを使用していない旨は、表示装置30、40でそれぞれ表示される。
【0035】
充填を行ってはいけない条件は、例えば、「SAE J2601」規格に規定されており、図示の実施形態においても当該規定に準拠して充填制御が行われる。充填を行ってはいけない場合(条件)は以下の通りである。
一方側の水素充填系統(第1の水素充填系統101或いは第2の水素充填系統102)で通信充填が成立しておらず、他方側の水素充填系統(第2の水素充填系統102或いは第1の水素充填系統101)で通信充填が成立している場合であって、
通信充填を行うため他方側の水素充填系統に接続している車輌側の容器(タンク)の温度データが所定値(例えば85℃)を超えた場合。
燃料充填圧力が、他方側の水素充填系統に接続している車輌側の容器(タンク)の温度データから算出される車輌側の容器への充填可能圧力を超えた場合。
他方側の水素充填系統において、車輌側から充填停止信号を受信した場合。
これらの何れかの場合には、充填を停止する。そして、発生した異常の内容と充填停止が、表示装置30、40に表示される。
上述した場合に水素充填が停止されるので、何れか一方の充填系統で通信充填が成立していないにもかかわらず、図示の実施形態に係る制御では、第1及び第2の双方の水素充填系統101、102において非通信充填の場合に比較して高圧の通信充填を行う場合の圧力まで水素を充填しても、安全性を担保することが出来る。
【0036】
次に、図3を参照して、第1の水素充填系統101における制御について説明する。
図3は第1の水素充填系統101側の制御のみを示している。第2の水素充填系統102側の制御については、図4を参照して後述する。
図3において、ステップS1では、第1の水素充填系統101側の車輌データ(温度、圧力のデータ)が水素充填制御装置10により正常に取得出来るか否か(すなわち、通信充填が成立しているか否か)を判断する。
ステップS1において、第1の水素充填系統101側の車輌データが正常に取得出来る場合(ステップS1が「YeS」)はステップS2に進み、第1の水素充填系統101側の車輌データが正常に取得出来ない場合(ステップS1が「No」)はステップS3に進む。
ステップS2では、第1の水素充填系統101側の車輌データ(温度、圧力等)により、第1の水素充填系統101で通信充填を行う。そしてステップS6に進む。
【0037】
ステップS3では、第1の水素充填系統101の水素充填制御装置10は、第2の水素充填系統102側の車輌データを、中継機35、信号伝達ライン24、23(図2)を介して正常に取得出来るか否かを判断する。
ステップS3の判断の結果、第2の水素充填系統102側の車輌データが正常に取得出来る場合(ステップS3が「YeS」)はステップS4に進み、第2の水素充填系統102側の車輌データが正常に取得出来ない場合(ステップS3が「No」)はステップS5に進む。
ステップS4では、第1の水素充填系統101の水素充填制御装置10は、第2の水素充填系統102側の車輌データを使用して通信充填を行う(前記第1の態様)。この場合、第1の水素充填系統101は、第2の水素充填系統102側の車輌データを使用して通信充填を行っている旨が、表示装置30で表示される。
ステップS5では、第1の水素充填系統101の水素充填制御装置10は第1及び第2の水素充填系統101、102の何れの車輌データも正常に取得出来ないので、(第1の水素充填系統101は)水素充填系統101、102の何れの車輌データを使用せずに、非通信制御を行う(前記第4の態様)。
【0038】
ステップS6では、第1の水素充填系統101の水素充填制御装置10が、中継機35、信号伝達ライン24、23(図2)を介して、第2の水素充填系統102側の車輌データ(温度、圧力等)を正常に取得出来るか否かを判断する。
ステップS6の判断の結果、第2の水素充填系統102側の車輌データが正常に取得出来る場合(ステップS6が「YeS」)はステップS7に進み、第2の水素充填系統102側の車輌データが正常に取得出来ない場合(ステップS6が「No」)はステップS8に進む。
第2の水素充填系統102側の車輌データが正常に取得出来る場合(ステップS6が「YeS」)は、第1及び第2の水素充填系統101、102は、それぞれにおいて取得した車輌データを使用して通信充填を行う。
第2の水素充填系統102側の車輌データが正常に取得出来ない場合(ステップS6が「No」)は、第1の水素充填系統101は第1の水素充填系統101の車輌データを使用して通信充填を行う。
ステップS7では、第1の水素充填系統101は第1及び第2の水素充填系統101、102のそれぞれにおける車輌データを共に正常に取得して、第1及び第2の水素充填系統101、102のそれぞれにおける車輌データを比較する(前記第3の態様)。
すなわちステップS7では、第1及び第2の水素充填系統101、102のそれぞれにおける車輌データを比較して、両者の差異がしきい値未満の場合は第1及び第2の水素充填系統101、102における通信充填を継続する。一方、第1及び第2の水素充填系統101、102のそれぞれにおける車輌データにしきい値以上の差異ある場合には、水素充填系統101、102における通信充填を停止して、通信充填に比較して低圧で水素を充填する非通信充填に切り替えて、水素充填をいわゆる「安全」サイドで行う。そしてステップS8に進む。
【0039】
ステップS1~S7により、ステップS8における第1の水素充填系統101側の水素充填制御は、以下の(1)~(4)となる。
(1) 第1の水素充填系統101側の車輌データを使用した通信充填を実施。同時に第2の水素充填系統102側もその車輌データを使用した通信充填を実施。
(2) 第1の水素充填系統101側の車輌データを使用した通信充填を実施。第2の水素充填系統102では、第2の水素充填系統102側の車輌データを使用した通信充填は不成立。
(3) 第2の水素充填系統102側の車輌データを使用した通信充填を実施。
(4) 第1及び第2の水素充填系統101、102側の車輌データを使用した通信充填は共に不成立で、非通信充填を実施。
ステップS8では、水素充填を行っているか否かを判断する。
ステップS8において、充填中である場合(ステップS8が「YeS」)はステップS9に進み、充填中ではない場合(ステップS8が「No」)はステップS13に進む。
【0040】
ステップS9(充填中の場合)には、充填終了であるか否かが判断される。充填終了と判断されるのは、所定の充填量が完了して正常終了する場合と、何らかのエラーがある場合である。何らかのエラーがある場合としては、例えば、規格SAE J2601に規定された前記「充填を行ってはいけない条件」に該当する場合がある。すなわち、車輌側のタンクの温度データが所定値(例えば85℃)を超えた場合、燃料充填圧力が温度データから算出される車輌側のタンクへの充填可能圧力を超えた場合、車輌側から充填停止信号を受信した場合である。
ステップS9に続くステップS10では、充填終了の条件を満たしたか(充填終了の条件に合致したか)否かを判断する。充填終了の条件としては、例えば、所定の充填量の水素が充填された場合(水素充填が正常にが完了した場合)と、規格SAE J2601に規定されたエラーに該当する場合がある。
ステップS10の判断の結果、充填終了の条件を満たす場合(ステップS10が「YeS」)はステップS11に進み、充填を停止する。所定の水素を充填した場合は正常終了となり、エラーが生じた場合は強制終了となる。充填終了の条件を満たさない場合(ステップS10が「No」)はステップS12に進み、ステップS1に戻って充填を継続する。
【0041】
ステップS13(ステップS8において充填中ではないと判断された場合:ステップS8が「No」)は、第1の水素充填系統101による水素充填は可能か否かが判断される。その際に、ステップS8において、充填前の準備段階であるために「充填中ではない」と判断されたのか、或いは、上述したエラーにより充填が停止したために「充填中ではない」と判断され、当該エラーに対する処理が必要であるかが判断される。そしてステップS14に進む。
ステップS14では、充填可能か否かを判断する。ステップS14において、充填可能である場合(ステップS14が「YeS」)はステップS15に進み、充填可能ではない場合(ステップS14が「No」)はステップS16に進む。
ステップS15は第1の水素充填系統101により水素充填が可能であり、次の充填に備えることが出来る。
ステップS16は第1の水素充填系統101による水素充填は不可能であり、必要な処理が実行される。
【0042】
次に図4を参照して、第2の水素充填系統102における制御について説明する。ここで、図4で示す第2の水素充填系統102における制御は、図3で示す第1の水素充填系統101の制御を、第1の水素充填系統101と第2の水素充填系統102を入れ替えた内容である。
図4において、第2の水素充填系統102におけるステップS28~ステップS36の制御は、図3に示す第1の水素充填系統101におけるステップS8~ステップS16の制御と同様である。
【0043】
図5を参照して、第1の水素充填系統側の表示装置30(図2)及び第2の水素充填系統102側の表示装置40(図2)について説明する。ここで、図5で示す表示装置30は、図2において、水素充填制御装置10と信号伝達ラインSL10で接続され、表示装置40は、水素充填制御装置20と信号伝達ラインSL11で接続される。図2では第1の水素充填系統101側に「状態表示器」、「合算表示器」と表示されており、第2の水素充填系統102側に「状態表示器」と表示されているが、当該表示に係る機器及びその機能については、図5図7を参照して説明する通りである。
図5において、表示装置30は第1の水素充填系統101に関するデータを表示する機能を有している。表示装置30は、供給配管31(図2)に介装された流量計3の計測値である充填量(質量流量:kg)を符号A1で示す箇所に表示し、第1及び第2の水素充填系統101、102の合計充填量(質量流量:kg)を符号A2で示す箇所に表示し、圧力計6の計測値(MPa)を符号A3で示す箇所に表示し、温度計5の計測値(℃)を符号A4で示す箇所に表示し、充填態様(充填の状態:通信充填であるか或いは非通信充填であるか)を符号A5で示す箇所に表示する機能を有している。符号A5で表す表示については、図6を参照して後述する。
また、図5における表示装置40は、第2の水素充填系統102に関するデータを表示する機能を有している。表示装置40は、供給配管41(図2)に介装された流量計13の計測値である充填量(質量流量:kg)を符号B1で示す箇所に表示し、圧力計16の計測値(MPa)を符号B3で示す箇所に表示し、温度計15の計測値(℃)を符号B4で示す箇所に表示し、充填態様(充填の状態:通信充填であるか或いは非通信充填であるか)を符号B5で示す箇所に表示する機能を有している。符号B5で表す表示については、図7を参照して後述する。なお、符号B2で示す箇所における「FUEL」の表示は「充填中」であることを示している。
【0044】
図5において符号A5、B5で示す充填態様を表す表示について、図6図7を参照して説明する。
図6は、符号A5で示す表示であり、図6(A)~(C)で示す様に、「L4」の左側のバー(-)の上下位置が異なっている。
図6(A)ではバー(-)が下段にある。係る表示は、第1の水素充填系統101側の車輌のデータ(温度、圧力等)が有効に受信できており、当該データを使用して第1の水素充填系統101は通信充填を行っていることを表示している。
図6(B)ではバー(-)が上段にある。係る表示は、第1の水素充填系統101側では車輌のデータが受信できておらず、第1の水素充填系統101は第2の水素充填系統102側の車輌のデータを用いて通信充填を行っている(第1の態様)ことを表示している。
図6(C)ではバー(-)が表示されていない。図6(C)の場合、第1及び第2の水素充填系統101、102は共にそれぞれの車輌のデータ(温度、圧力等)が受信できておらず、第1及び第2の水素充填系統101、102は共に非通信充填を行っている(第4の制御)ことを意味している。
【0045】
図7は、符号B5で示す表示であり、図7(A)~(C)において「L4」の左側のバー(-)の上下位置が異なっている。
図7(A)ではバー(-)が下段にあり、第2の水素充填系統102側の車輌のデータ(温度、圧力等)が有効に受信できており、当該データを使用して第2の水素充填系統102は通信充填を行っていることを表示している。
図7(B)ではバー(-)が上段にあり、第2の水素充填系統102側の車輌のデータが受信できておらず、第2の水素充填系統102は第1の水素充填系統101側の車輌のデータを用いて通信充填を行っている(第2の態様)ことを表示している。
図7(C)ではバー(-)が表示されておらず、第1及び第2の水素充填系統101、102は共にそれぞれの車輌のデータが受信できておらず、第1及び第2の水素充填系統101、102は共に非通信充填を行っている(第4の制御)ことを意味している。
【0046】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では水素充填について説明されているが、本発明は水素以外の気体燃料の供給に適用することが出来る。また本発明は、CNG、LPG、気体水素等の液体燃料の供給にも適用することが出来る。
【符号の説明】
【0047】
2、12・・・流量調節弁
3、13・・・流量計
4、14・・・遮断弁
5、15・・・温度計
6、16・・・圧力計
7、17・・・充填ホース(供給ホース)
8、18・・・充填ノズル(供給ノズル)
10、20・・・制御装置
30、40・・・表示装置
31、41・・・充填配管(供給配管)
50、60・・・後方施設
100・・・水素充填装置(燃料供給装置)
101・・・第1の水素充填系統(一方側の水素充填系統:統燃料供給系統)
102・・・第2の水素充填系統(他方側の水素充填系統:統燃料供給系統)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7