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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101588
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】媒体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H3/06 A
B65H3/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005562
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】大川 壮志
(72)【発明者】
【氏名】田村 大
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA01
3F343FB01
3F343FC03
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JA01
3F343KB04
3F343KB05
3F343LA03
3F343LC17
3F343LC20
3F343MB13
3F343MB14
3F343MB15
3F343MC08
(57)【要約】
【課題】第1媒体に続いて第2媒体を搬送する際の搬送性を向上する。
【解決手段】第1媒体M1と第2媒体M2とを含む複数の媒体Mを収容する収容部2と、ピックローラー10と、リタードローラー12と、セパレートローラー11と、搬送ローラー13と、ローラーを回転させる動力を生成する駆動源8と、ピックローラー10及びセパレートローラー11に動力を伝達する動力伝達機構100と、セパレートローラー11への動力への伝達中にピックローラー10への動力の伝達を中断する伝達中断機構101と、を備え、伝達中断機構101は、ピックローラー10が第1媒体M1の搬送方向Aの後端Mbを搬送した後に、ピックローラー10への動力の伝達を中断するよう構成されている媒体搬送装置1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1媒体と、前記第1媒体に続いて搬送される第2媒体とを含む複数の媒体を収容する収容部と、
前記収容部に収容された媒体を搬送方向の下流に搬送するピックローラーと、
前記搬送方向における前記ピックローラーの下流に設けられ、前記ピックローラーにより搬送された媒体を分離するリタードローラーと、
前記リタードローラーに接し、媒体を前記搬送方向の下流に搬送するセパレートローラーと、
前記搬送方向における前記セパレートローラーの下流に設けられ、媒体を前記搬送方向の下流に搬送する搬送ローラーと、
前記ピックローラー、前記セパレートローラー及び前記搬送ローラーを回転させる動力を生成する駆動源と、
前記ピックローラー及び前記セパレートローラーに前記動力を伝達する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構に設けられ、前記セパレートローラーへの前記動力の伝達中に前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断する伝達中断機構と、
を備え、
前記伝達中断機構は、前記ピックローラーが前記第1媒体の前記搬送方向の後端を搬送した後に、前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断するよう構成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記伝達中断機構は、前記セパレートローラーが前記第1媒体の前記後端を搬送するまで、前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断するよう構成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の媒体搬送装置において、
前記ピックローラーは当接部を有し、
前記伝達中断機構は、
前記ピックローラーの回転軸に設けられ、前記回転軸に対して媒体を搬送する際の回転方向である第1回転方向に回転可能であって、前記当接部に対して当接および離間が可能な被当接部を有する、回転部材を有し、
前記回転部材が前記第1回転方向に回転することで前記当接部に対して前記被当接部が離間した状態から当接した状態に変位する間、前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断するよう構成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の媒体搬送装置において、
前記駆動源を駆動することにより前記搬送ローラーで媒体を搬送する第1搬送速度は、前記駆動源を駆動することにより前記ピックローラーで媒体を搬送する第2搬送速度よりも速く、
前記駆動源を駆動することにより前記搬送ローラーと前記ピックローラーとの両方で媒体を搬送する際には、媒体は前記第1搬送速度で搬送されるとともに、媒体が前記第1搬送速度で搬送されることに伴って前記ピックローラーが媒体から力を受けることで、前記回転部材が前記当接部に対して前記被当接部が当接した状態から離間した状態に変位するよう構成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体搬送装置において、
媒体の搬送指示を受け付ける受付部を備え、
前記受付部が受け付けた前記搬送指示の実行終了後において、前記当接部に対して前記被当接部を当接した状態とすることで、前記ピックローラーを前記第1回転方向に回転可能な状態とするように構成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の媒体搬送装置であって、
前記受付部が受け付けた前記搬送指示の実行終了後において、搬送される最後の媒体の後端が前記ピックローラーによる搬送可能位置を通過した後に前記駆動源を駆動することにより前記ピックローラーの回転を継続するように構成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の媒体搬送装置であって、
前記ピックローラーと前記セパレートローラーとの間の搬送距離をL1とし、前記駆動源を駆動することによる前記搬送ローラーの周速をX1とし、前記駆動源を駆動することによる前記ピックローラーの周速をX2とし、X1とX2との減速比であるX1/X2をXとした場合に必要な前記伝達中断機構が生成する前記ピックローラーの中断距離L1/Xと、前記搬送ローラーによる搬送可能位置に到達した媒体の後端と前記ピックローラーとの間の搬送距離をL2とした場合の前記伝達中断機構が生成することが可能な前記ピックローラーの中断距離L2-L2/Xとは、式(1)を満たすことを特徴とする媒体搬送装置。
L1/X≦L2-L2/X・・・(1)
【請求項8】
請求項1または2に記載の媒体搬送装置において、
前記動力伝達機構は、前記ピックローラーの回転軸に設けられた第1歯車と、前記セパレートローラーの回転軸に設けられた第2歯車と、前記第1歯車及び前記第2歯車に係合するとともに前記駆動源からの駆動力が伝えられる第3歯車と、を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターに代表される記録装置など、従来から様々な構成の媒体搬送装置が使用されている。このうち、複数の媒体を連続して搬送することが可能な媒体搬送装置がある。例えば、特許文献1には、ピックアップローラーと、分離ローラーと、該分離ローラーと対をなすリタードローラーと、中間ローラーと、を備え、複数のシートを連続して搬送することが可能な画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-13717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の媒体を連続して搬送することが可能な媒体搬送装置においては、複数の媒体のうちの第1媒体に続いて第2媒体を搬送する際、媒体の搬送が適切になされない場合がある。例えば、特許文献1の画像形成装置のピックアップローラー、分離ローラー、リタードローラー、中間ローラーのような、ピックローラー、セパレートローラー、リタードローラー、搬送ローラーを備える媒体搬送装置においては、以下のようなことが生じ得る。第1媒体に続いて第2媒体を搬送する際、搬送方向における第1媒体の後端がセパレートローラーとリタードローラーとのニップ点を抜ける前に第2媒体がピックローラーにより搬送され、第2媒体の先端がリタードローラーに当接された状態で第2媒体が搬送方向の上流からピックローラーにより搬送されることで、第2媒体がセパレートローラーとリタードローラーとのニップ点近傍でジャムを発生させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明の媒体搬送装置は、第1媒体と、前記第1媒体に続いて搬送される第2媒体とを含む複数の媒体を収容する収容部と、前記収容部に収容された媒体を搬送方向の下流に搬送するピックローラーと、前記搬送方向における前記ピックローラーの下流に設けられ、前記ピックローラーにより搬送された媒体を分離するリタードローラーと、前記リタードローラーに接し、媒体を前記搬送方向の下流に搬送するセパレートローラーと、前記搬送方向における前記セパレートローラーの下流に設けられ、媒体を前記搬送方向の下流に搬送する搬送ローラーと、前記ピックローラー、前記セパレートローラー及び前記搬送ローラーを回転させる動力を生成する駆動源と、前記ピックローラー及び前記セパレートローラーに前記動力を伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構に設けられ、前記セパレートローラーへの前記動力の伝達中に前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断する伝達中断機構と、を備え、前記伝達中断機構は、前記ピックローラーが前記第1媒体の前記搬送方向の後端を搬送した後に、前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断するよう構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施例にかかるプリンターの内部構成を表す概略図。
図2図1のプリンターにおいてピックローラー、セパレートローラー及び中間ローラーを駆動して第1媒体を搬送している状態を表す概略図。
図3図2で表される状態の後であって、セパレートローラー及び中間ローラーを駆動して第1媒体を搬送しているとともにピックローラーへの動力の伝達を中断している状態を表す概略図。
図4】伝達中断機構を有さない動力伝達機構を備える参考例1のプリンターを表す図であって、図3で表される位置と同じ位置に第1媒体がある状態において、ピックローラー、セパレートローラー及び中間ローラーを駆動して第1媒体を搬送している状態を表す概略図。
図5図1のプリンターとは異なる動力伝達機構を備える参考例2のプリンターを表す図であって、図2で表される状態と同様の状態の後であって、中間ローラーを駆動して第1媒体を搬送しているとともにセパレートローラー及びピックローラーへの動力の伝達を中断している状態を表す概略図。
図6図3で表される状態に続いて、中間ローラーを駆動して第1媒体を搬送しているとともにピックローラーを駆動して第2媒体を搬送している状態を表す概略図。
図7図6で表される状態に続いて、中間ローラーを駆動して第1媒体を搬送しているとともにピックローラー及びセパレートローラーを駆動して第2媒体の搬送を開始した直後の状態を表す概略図。
図8図1のプリンターの動力伝達機構を表す斜視図。
図9図1のプリンターの動力伝達機構を表す側面図。
図10図8及び図9の動力伝達機構の伝達中断機構を表す斜視図であって、中断距離が最短であるときの状態を表している。
図11図8及び図9の動力伝達機構の伝達中断機構を表す斜視図であって、中断距離が最長であるときの状態を表している。
図12図10及び図11の伝達中断機構を表す斜視図であって、中断距離が最長であるときの状態から中断距離が最短であるときの状態になるまでの変位の一例を表している。
図13図10及び図11の伝達中断機構を表す斜視図であって、中断距離が最長であるときの状態から中断距離が最短であるときの状態になるまでの変位の図12とは別の一例を表している。
図14図10及び図11の伝達中断機構を表す斜視図であって、中断距離が最短であるときの状態から中断距離が最長であるときの状態になるまでの変位の一例を表している。
図15図1のプリンターにおいて使用可能な搬送方向における長さが最小の媒体を搬送している状態であって、該媒体の搬送方向の先端が中間ローラーの上流側のニップ点(搬送可能位置)にある状態を表す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
本発明の第1の態様に係る媒体搬送装置は、第1媒体と、前記第1媒体に続いて搬送される第2媒体とを含む複数の媒体を収容する収容部と、前記収容部に収容された媒体を搬送方向の下流に搬送するピックローラーと、前記搬送方向における前記ピックローラーの下流に設けられ、前記ピックローラーにより搬送された媒体を分離するリタードローラーと、前記リタードローラーに接し、媒体を前記搬送方向の下流に搬送するセパレートローラーと、前記搬送方向における前記セパレートローラーの下流に設けられ、媒体を前記搬送方向の下流に搬送する搬送ローラーと、前記ピックローラー、前記セパレートローラー及び前記搬送ローラーを回転させる動力を生成する駆動源と、前記ピックローラー及び前記セパレートローラーに前記動力を伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構に設けられ、前記セパレートローラーへの前記動力への伝達中に前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断する伝達中断機構と、を備え、前記伝達中断機構は、前記ピックローラーが前記第1媒体の前記搬送方向の後端を搬送した後に、前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断するよう構成されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、セパレートローラーへの動力への伝達中にピックローラーへの動力の伝達を中断する伝達中断機構を備え、伝達中断機構はピックローラーが第1媒体の搬送方向の後端を搬送した後にピックローラーへの動力の伝達を中断するよう構成されている。このため、ピックローラー、セパレートローラー、リタードローラー、搬送ローラーを備える媒体搬送装置においても、第1媒体に続いて第2媒体を搬送する際、搬送方向における第1媒体の後端がセパレートローラーとリタードローラーとのニップ点を抜ける前に第2媒体がピックローラーにより搬送されることを抑制でき、第2媒体がセパレートローラーとリタードローラーとのニップ点近傍でジャムを発生させることなどを効果的に抑制することができる。したがって、第1媒体に続いて第2媒体を搬送する際の搬送性を向上することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る媒体搬送装置は、第1の態様に従属する態様であって、前記伝達中断機構は、前記セパレートローラーが前記第1媒体の前記後端を搬送するまで、前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断するよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、伝達中断機構は、セパレートローラーが第1媒体の後端を搬送するまで、ピックローラーへの動力の伝達を中断するよう構成されている。先行する第1媒体が確実にセパレートローラーとリタードローラーとのニップ点を通過した後に後続する第2媒体をピックローラーで搬送することが可能になるので、第2媒体がセパレートローラーとリタードローラーとのニップ点近傍でジャムを発生させることを特に効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る媒体搬送装置は、第1または第2の態様に従属する態様であって、前記ピックローラーは当接部を有し、前記伝達中断機構は、前記ピックローラーの回転軸に設けられ、前記回転軸に対して媒体を搬送する際の回転方向である第1回転方向に回転可能であって、前記当接部に対して当接および離間が可能な被当接部を有する、回転部材を有し、前記回転部材が前記第1回転方向に回転することで前記当接部に対して前記被当接部が離間した状態から当接した状態に変位する間、前記ピックローラーへの前記動力の伝達を中断するよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、伝達中断機構は、回転部材が第1回転方向に回転することで当接部に対して被当接部が離間した状態から当接した状態に変位する間、ピックローラーへの動力の伝達を中断する。このような構成とすることで、伝達中断機構を簡単かつ小型に形成することができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る媒体搬送装置は、第3の態様に従属する態様であって、前記駆動源を駆動することにより前記搬送ローラーで媒体を搬送する第1搬送速度は、前記駆動源を駆動することにより前記ピックローラーで媒体を搬送する第2搬送速度よりも速く、前記駆動源を駆動することにより前記搬送ローラーと前記ピックローラーとの両方で媒体を搬送する際には、媒体は前記第1搬送速度で搬送されるとともに、媒体が前記第1搬送速度で搬送されることに伴って前記ピックローラーが媒体から力を受けることで、前記回転部材が前記当接部に対して前記被当接部が当接した状態から離間した状態に変位するよう構成されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、駆動源を駆動することにより搬送ローラーとピックローラーとの両方で媒体を搬送する際には、媒体は第1搬送速度で搬送されるとともに、媒体が第1搬送速度で搬送されることに伴ってピックローラーが媒体から力を受けることで、回転部材が当接部に対して被当接部が当接した状態から離間した状態に変位する。このため、伝達中断機構において、媒体を搬送する度に第1媒体に続いて第2媒体を搬送する際の第2媒体の搬送を待機する時間を効率的に生成することができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る媒体搬送装置は、第4の態様に従属する態様であって、媒体の搬送指示を受け付ける受付部を備え、前記受付部が受け付けた前記搬送指示の実行終了後において、前記当接部に対して前記被当接部を当接した状態とすることで、前記ピックローラーを前記第1回転方向に回転可能な状態とするように構成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、受付部が受け付けた搬送指示の実行終了後において、当接部に対して被当接部を当接した状態とすることで、ピックローラーを第1回転方向に回転可能な状態とする。このため、受付部が搬送指示を受け付ける度に、次回の搬送指示を受付部が受け付けた際にピックローラーにより搬送開始が遅れるということを抑制することができる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る媒体搬送装置は、第5の態様に従属する態様であって、前記受付部が受け付けた前記搬送指示の実行終了後において、搬送される最後の媒体の後端が前記ピックローラーによる搬送可能位置を通過した後に前記駆動源を駆動することにより前記ピックローラーの回転を継続するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、受付部が受け付けた搬送指示の実行終了後において、搬送される最後の媒体の後端がピックローラーによる搬送可能位置を通過した後に駆動源を駆動することによりピックローラーの回転を継続する。このため、簡単な構成及び簡単な制御で、受付部が搬送指示を受け付ける度に、次回の搬送指示を受付部が受け付けた際にピックローラーにより搬送開始が遅れるということを抑制することができる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る媒体搬送装置は、第1から第6のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記ピックローラーと前記セパレートローラーとの間の搬送距離をL1とし、前記駆動源を駆動することによる前記搬送ローラーの周速をX1とし、前記駆動源を駆動することによる前記ピックローラーの周速をX2とし、X1とX2との減速比であるX1/X2をXとした場合に必要な前記伝達中断機構が生成する前記ピックローラーの中断距離L1/Xと、前記搬送ローラーによる搬送可能位置に到達した媒体の後端と前記ピックローラーとの間の搬送距離をL2とした場合の前記伝達中断機構が生成することが可能な前記ピックローラーの中断距離L2-L2/Xとは、式(1)を満たすことを特徴とする。
【0020】
L1/X≦L2-L2/X・・・(1)
【0021】
本態様によれば、伝達中断機構が生成することが可能なピックローラーの中断距離は、式(1)を満たす。このような式を満たす構成とすることで、先行する第1媒体が確実にセパレートローラーとリタードローラーとのニップ点を通過した後に後続する第2媒体をピックローラーで搬送することを正確に実行可能になるので、第2媒体がセパレートローラーとリタードローラーとのニップ点近傍でジャムを発生させることを特に効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明の第8の態様に係る媒体搬送装置は、第1から第7のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記動力伝達機構は、前記ピックローラーの回転軸に設けられた第1歯車と、前記セパレートローラーの回転軸に設けられた第2歯車と、前記第1歯車及び前記第2歯車に係合するとともに前記駆動源からの駆動力が伝えられる第3歯車と、を有することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、動力伝達機構は、ピックローラーの回転軸に設けられた第1歯車と、セパレートローラーの回転軸に設けられた第2歯車と、第1歯車及び第2歯車に係合するとともに駆動源からの駆動力が伝えられる第3歯車と、を有する。このような構成とすることで、簡単な構成で、駆動源の動力を、ピックローラーとセパレートローラーとに伝達することができる。
【0024】
以下、本発明を具体的に説明する。最初に、本発明の媒体搬送装置であって記録装置でもあるインクジェットプリンター1の概要について図1から図7を参照して説明する。以下においてインクジェットプリンター1は、プリンター1と略称する。なお、以下では、媒体Mが送られていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。
【0025】
図1などで表されるように、プリンター1は、媒体Mを収容する収容部2を備えている。収容部2には、複数の媒体Mを積載することが可能である。なお、本実施例のプリンター1は、収容部2の下部にも媒体Mを収容することが可能な媒体収容部を増設可能であるが、そのような構成に限定されない。
【0026】
プリンター1は、収容部2に収容された媒体Mを搬送方向Aに送り出すピックローラー10が設けられている。媒体Mの搬送経路におけるピックローラー10の下流には、セパレートローラー11が設けられている。媒体Mは、ピックローラー10によりセパレートローラー11に向けて搬送方向Aに搬送され、その後、ピックローラー10とセパレートローラー11とにより搬送方向Aに搬送される。
【0027】
ここで、図1などで表されるように、セパレートローラー11と対向する位置には、リタードローラー12が設けられている。上記のように、本実施例のプリンター1は収容部2に複数の媒体Mを積載することが可能であるが、収容部2に積載された最上部の媒体Mである第1媒体M1を搬送する際、第1媒体M1に続いて搬送される第2媒体M2が重送されないよう、リタードローラー12に第2媒体M2の先端Maが当接される。セパレートローラー11とリタードローラー12とのニップ点N1に至った第1媒体M1はピックローラー10とセパレートローラー11とにより搬送方向Aに搬送されるが、第2媒体M2は先端Maがリタードローラー12に当接されることにより搬送されずに停止した状態となり第1媒体M1に対して分離される。
【0028】
なお、ピックローラー10及びセパレートローラー11は、媒体Mを搬送する際、第1回転方向C1に回転する。そして、ピックローラー10を駆動することによる媒体Mの搬送速度は、セパレートローラー11を駆動することによる媒体Mの搬送速度と同じである。なお、ピックローラー10及びセパレートローラー11は、CPUや記憶部などを有する制御部7に電気的に接続されたモーター8と複数の歯車などを介して接続され、モーター8の駆動力により駆動する。
【0029】
また、図1などで表されるように、プリンター1は、媒体Mの搬送経路に、中間ローラー13と、中間ローラー13と対向する位置に設けられる2つの従動ローラー14と、を有している。中間ローラー13も、ピックローラー10及びセパレートローラー11と同様、モーター8と複数の歯車などを介して接続されている。ピックローラー10とセパレートローラー11とにより搬送方向Aに搬送された媒体Mは、中間ローラー13と従動ローラー14のうちの第1従動ローラー14Aとのニップ点N2に先端Maが至る。ここで、媒体Mは、先端Maが該ニップ点N2に至った後には、中間ローラー13と第1従動ローラー14Aとにより搬送方向Aに搬送される。すなわち、ニップ点N2は、中間ローラー13による搬送可能位置に対応する。さらに、中間ローラー13と第1従動ローラー14Aとにより搬送方向Aに搬送された媒体Mは、中間ローラー13と従動ローラー14のうちの第2従動ローラー14Bとのニップ点N3に先端Maが至る。先端Maが該ニップ点N3に至った後には、中間ローラー13と2つの従動ローラー14とにより搬送方向Aに搬送される。
【0030】
なお、中間ローラー13は、媒体Mを搬送する際、第1回転方向C1に回転する。一方、第1従動ローラー14A及び第2従動ローラー14Bはともに、媒体Mを搬送する際、第2回転方向C2に回転する。そして、中間ローラー13を駆動することによる媒体Mの搬送速度は、ピックローラー10及びセパレートローラー11を駆動することによる媒体Mの搬送速度よりも速い。ここで、搬送される媒体Mがピックローラー10及びセパレートローラー11の両方と対向するとともに中間ローラー13と従動ローラー14とのニップ点にあるとき、搬送される媒体Mがセパレートローラー11と対向するとともに中間ローラー13と従動ローラー14とのニップ点にあるとき、においては、中間ローラー13を駆動することによる搬送速度で媒体Mは搬送される。すなわち、これらのときにおいては、ピックローラー10及びセパレートローラー11では、中間ローラー13を駆動することによる搬送速度で媒体Mが搬送されることで該媒体Mにより引っ張られつつ第1回転方向C1に回転することとなり、モーター8の駆動力で回転するよりも速く回転することとなる。
【0031】
また、図1などで表されるように、プリンター1は、媒体Mをユーザーが手差しによって挿入可能な挿入部3が設けられている。挿入部3に挿入された媒体Mは、中間ローラー13と第2従動ローラー14Bとのニップ点N3において搬送方向Aに搬送される。詳細には、図1で表されるように、収容部2に収容された媒体Mはニップ点N3まで搬送方向Aのうちの搬送方向A1に搬送され、挿入部3に挿入された媒体Mはニップ点N3まで搬送方向Aのうちの搬送方向A2に搬送される。
【0032】
ニップ点N3に先端Maが至った媒体Mは、中間ローラー13により、ニップ点N3よりも搬送方向Aの下流に設けられるヘッドユニット5に設けられたラインヘッド6と対向する位置に向けて搬送される。ヘッドユニット5の搬送方向Aの上流及び下流には、搬送ローラー対9が設けられている。搬送ローラー対9は、モーター8によって駆動される駆動ローラーと、この駆動ローラーに接して従動回転する従動ローラーとで構成される。
【0033】
搬送ローラー対9から送り力を受ける媒体Mは、記録部の一例であるラインヘッド6と対向する記録位置に送られる。ラインヘッド6はヘッドユニット5を構成する。ラインヘッド6は、媒体Mの画像形成面に液体の一例であるインクを吐出して記録を実行する。ラインヘッド6は、インクを吐出するノズルが幅方向Bの全域をカバーする様に構成されたインク吐出ヘッドであり、幅方向Bへの移動を伴わないで媒体Mの幅方向Bの全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。但し、インク吐出ヘッドはこのような構成に限定されず、キャリッジに搭載されて幅方向Bに移動しながらインクを吐出するタイプであってもよい。また、記録部として、例えば熱転写方式の記録部など、インク吐出ヘッド以外の構成のものを使用することも可能である。
【0034】
ラインヘッド6により記録がなされた媒体Mは、搬送ローラー対9により搬送され、排出トレイ4に排出される。なお、媒体Mを収容する収容部2、媒体Mを挿入する挿入部3、排出された媒体Mを積載可能な排出トレイ4、の構成に特に限定は無い。収容部2及び排出トレイ4は、複数の媒体Mを積載可能であればよい。
【0035】
上記のように、本実施例のプリンター1は、第1媒体M1と、第1媒体M1に続いて搬送される第2媒体M2と、を含む複数の媒体を収容する収容部2を備えている。また、収容部2に収容された媒体Mを搬送方向Aの下流に搬送するピックローラー10と、搬送方向Aにおけるピックローラー10の下流に設けられピックローラー10により搬送された媒体Mを分離するリタードローラー12と、リタードローラー12に接し媒体Mを搬送方向Aの下流に搬送するセパレートローラー11と、搬送方向Aにおけるセパレートローラー11の下流に設けられ媒体Mを搬送方向Aの下流に搬送する搬送ローラーとしての中間ローラー13と、を備えている。また、ピックローラー10、セパレートローラー11及び中間ローラー13を回転させる動力を生成する駆動源であるモーター8を備えている。そして、本実施例のプリンター1は、さらに、ピックローラー10及びセパレートローラー11にモーター8からの動力を伝達する動力伝達機構100と、動力伝達機構100に設けられセパレートローラー11への動力への伝達中にピックローラー10への動力の伝達を中断する伝達中断機構101と、を備えている。そこで、以下に、動力伝達機構100及び伝達中断機構101の詳細について説明する。
【0036】
最初に、図2から図7を主に参照して、動力伝達機構100及び伝達中断機構101がプリンター1においてどのように機能するかについて説明する。図2は、プリンター1においてピックローラー10、セパレートローラー11及び中間ローラー13を駆動して1枚目の媒体Mである第1媒体M1を搬送している状態を表しており、第1媒体M1がピックローラー10と対向する位置にあるとともに、ニップ点N1からニップ点N3のいずれの位置にもある状態を表している。図2の状態では、モーター8を駆動することでピックローラー10、セパレートローラー11及び中間ローラー13を第1回転方向C1に回転させている。ただし、上記のように、中間ローラー13を駆動することによる媒体Mの搬送速度は、ピックローラー10及びセパレートローラー11を駆動することによる媒体Mの搬送速度よりも速いので、ピックローラー10及びセパレートローラー11では、中間ローラー13を駆動することによる搬送速度で媒体Mが搬送されることで該媒体Mにより引っ張られて第1回転方向C1に回転している。
【0037】
図3は、図2で表される状態に続いてさらに第1媒体M1を搬送方向Aに搬送している状態を表しており、第1媒体M1の後端Mbがニップ点N1を抜けた瞬間の状態を表している。ここで、図3で表される状態の後は、動力伝達機構100及び伝達中断機構101の働きにより、セパレートローラー11及び中間ローラー13のみを駆動して第1媒体M1を搬送し、ピックローラー10への動力の伝達を中断する。詳細には、伝達中断機構101は、少なくとも第1媒体M1の後端Mbがピックローラー10を抜けた後さらに第1媒体M1の後端Mbがニップ点N1を抜けるまでの間、ピックローラー10への動力の伝達を中断する。なお、各媒体Mの先端Maや後端Mbについては、不図示のセンサーなどで搬送経路における位置を把握することができる。
【0038】
ここで、図3で表される状態の後においても、引き続き、ピックローラー10、セパレートローラー11及び中間ローラー13を駆動し続けると、媒体Mの搬送経路におけるピックローラー10とセパレートローラー11との間の領域R1においてジャムが発生する虞がある。図4は、伝達中断機構101を動力伝達機構100に有さない参考例1のプリンター200を用いて図2で表される状態に続いてさらに第1媒体M1を搬送方向Aに搬送している状態を表している。図2で表される状態においては、2枚目の媒体Mである第2媒体M2の先端Maはリタードローラー12に当接しているので、第2媒体M2に搬送方向Aへの搬送力がかかると領域R1において先端Ma近傍に折れ曲がりなどが発生する虞がある。参考例1のプリンター200は、伝達中断機構101を動力伝達機構100に有さないので、図2で表される状態の後であって第1媒体M1の後端Mbがピックローラー10を抜けた後においてもピックローラー10が第1回転方向C1に回転するので、第1媒体M1の後端Mbがピックローラー10を抜けた後にピックローラー10から第2媒体M2に搬送方向Aへの搬送力がかかる。このため、図4では、領域R1において先端Ma近傍に折れ曲がりが発生してジャムが発生している。
【0039】
一方、図5は、伝達中断機構101を動力伝達機構100に有さない参考例2のプリンター201を用いて、ジャムを発生させないようにして、図2で表される状態の後であって第1媒体M1の後端Mbがピックローラー10を抜けた後に続いてさらに第1媒体M1を搬送方向Aに搬送している状態を表している。さらに詳細には、図5は、第1媒体M1の後端Mbがニップ点N3を抜けた瞬間の状態を表しているとともに、第2媒体M2の搬送開始直前を表している。参考例2のプリンター201は、中間ローラー13と、ピックローラー10及びセパレートローラー11と、を個別に駆動可能な動力伝達機構100を有している。図5で表されるように、第1媒体M1の後端Mbがニップ点N3を抜けた後に第2媒体M2の搬送を開始する構成とすればジャムの発生を抑制できるが、このような構成とすると、第1媒体M1の後端Mbと第2媒体M2の先端Maとの搬送経路における距離が長くなり、このことで、連続して複数の媒体Mを搬送する際の、全体での搬送にかかる時間が増大してしまう。
【0040】
そこで、本実施例のプリンター1においては、図6で表されるように、図3で表される状態に続いて、第1媒体M1の後端Mbがニップ点N1を抜けた後、中間ローラー13を駆動して第1媒体M1を搬送するとともにピックローラー10を駆動して第2媒体M2を搬送することを開始する。図3で表される状態においてはピックローラー10の駆動は中断されているのでジャムの発生は抑制される。そして、動力伝達機構100は、図6で表されるように、第1媒体M1の後端Mbがニップ点N1を抜けてから、ピックローラー10への動力の伝達を再開する。
【0041】
図7は、図6で表される状態に続いて、中間ローラー13を駆動して第1媒体M1を搬送しているとともにピックローラー10及びセパレートローラー11を駆動して第2媒体M2を搬送している状態を表している。上記のように、中間ローラー13を駆動することによる媒体Mの搬送速度(第1搬送速度)は、ピックローラー10及びセパレートローラー11を駆動することによる媒体Mの搬送速度(第2搬送速度)よりも速い。このため、第2媒体M2の先端Maがニップ点N1に至るまでは、第1媒体M1の搬送速度は第2媒体M2の搬送速度よりも速い。したがって、第2媒体M2の先端Maがニップ点N2に至るまでは、第1媒体M1の後端Mbと第2媒体M2の先端Maとの距離Laは広がる。ただし、本実施例のプリンター1は、ニップ点N1からニップ点N2までの距離を、図6及び図7で表されるような状態で第1媒体M1と第2媒体M2とが搬送されることにともなって広がる距離Laが最適な距離となるように調整されている。このため、連続して複数の媒体Mを搬送する際の、全体での搬送にかかる時間が増大してしまうことも抑制される。
【0042】
上記のように、本実施例のプリンター1は、セパレートローラー11への動力への伝達中にピックローラー10への動力の伝達を中断する伝達中断機構101を備え、伝達中断機構101はピックローラー10が第1媒体M1の搬送方向Aの後端Mbを搬送した後にピックローラー10への動力の伝達を中断するよう構成されている。このため、本実施例のプリンター1は、ピックローラー10、セパレートローラー11、リタードローラー12、搬送ローラーとしての中間ローラー13を備える媒体搬送装置であるが、このような構成の媒体搬送装置であっても、第1媒体M1に続いて第2媒体M2を搬送する際の搬送性を向上することができる。これは、第1媒体M1に続いて第2媒体M2を搬送する際、搬送方向Aにおける第1媒体M1の後端Mbがセパレートローラー11とリタードローラー12とのニップ点N1を抜ける前に第2媒体M2がピックローラー10により搬送されることを抑制でき、第2媒体M2がセパレートローラー11とリタードローラー12とのニップ点N1近傍でジャムを発生させることなどを効果的に抑制することができるためである。
【0043】
また、本実施例のプリンター1は、ピックローラー10、セパレートローラー11及び中間ローラー13を回転させる動力を生成する駆動源としてのモーター8と、ピックローラー10及びセパレートローラー11に動力を伝達する動力伝達機構100と、を備える構成としている。このような構成とすることで、例えば、モーター8の回転方向を切り替えることなく、複数の媒体Mを分離でき、搬送方向Aにおける第1媒体M1と第2媒体M2との間隔である距離Laを狭くすることができる。距離Laを狭くすることで、短時間に多くの媒体Mを連続して搬送することができるので、複数の媒体Mを搬送する際の搬送効率を向上することもできる。
【0044】
また、上記のように、本実施例のプリンター1の伝達中断機構101は、第1媒体M1の後端Mbがニップ点N1を超えるまで、すなわち、セパレートローラー11が第1媒体M1の後端Mbを搬送するまで、ピックローラー10へのモーター8からの動力の伝達を中断するよう構成されている。別の表現をすると、セパレートローラー11で1枚目の第1媒体M1を搬送し終えてから、ピックローラー10で2枚目の第2媒体M2を搬送することが可能に構成されている。このような構成とすることで、先行する第1媒体M1が確実にニップ点N1を通過した後に後続する第2媒体M2をピックローラー10で搬送することが可能になるので、第2媒体M2がニップ点N1近傍でジャムを発生させることを特に効果的に抑制することができる。
【0045】
ここで、図8から図14を参照して、動力伝達機構100及び伝達中断機構101の具体的な構成について説明する。図8及び図9で表されるように、本実施例のプリンター1の動力伝達機構100は、歯車111と、歯車111と係合する歯車121及び歯車131を有している。図9で表されるように、歯車111は回転軸110に設けられ、歯車121は回転軸120に設けられ、歯車131は回転軸130に設けられる。回転軸110、回転軸120及び回転軸130はいずれも幅方向Bに延設されるように基部140に取り付けられ、回転軸120はピックローラー10の回転軸を兼ねるとともに回転軸130はセパレートローラー11の回転軸を兼ねる。歯車111は不図示の歯車を介してモーター8からの駆動力を受けて少なくとも第2回転方向C2に回転することが可能な構成となっている。
【0046】
上記のように、本実施例のプリンター1の動力伝達機構100は、ピックローラー10の回転軸120に設けられた第1歯車としての歯車121と、セパレートローラー11の回転軸130に設けられた第2歯車としての歯車131と、に係合する第3歯車としての歯車111と、を有する。ここで、歯車111は、駆動源であるモーター8からの駆動力が伝えられる歯車である。このような構成とすることで、簡単な構成で、モーター8の動力を、ピックローラー10とセパレートローラー11とに伝達することができる。
【0047】
また、図8及び図9で表されるように、伝達中断機構101は、動力伝達機構100に設けられている。図10及び図11で表されるように、動力伝達機構100は、回転軸120に対して回転可能な歯車121と、回転軸120に対して回転可能な第1回転部材122と、回転軸120に対して回転可能な第2回転部材123と、ピックローラー10が設けられ回転軸120と一体的に構成される第3回転部材124と、を有している。
【0048】
歯車121は、幅方向Bにおけるピックローラー10側に歯部121aを有している。また、第1回転部材122は、歯部121aに対して、歯車121が相対的に第1回転方向C1に回転する場合に噛み合い、歯車121が相対的に第2回転方向C2に回転する場合は噛み合わずに空回りする歯部122aを有している。また、第1回転部材122は、幅方向Bにおけるピックローラー10側に突出する突出部122bを有している。突出部122bは、第1回転方向C1における先頭側に壁部122cを有し、第2回転方向C2における先頭側に壁部122dを有している。なお、相対的に第2回転方向C2に回転する場合には、共に第1回転方向C1に回転するもののその速度差により相対的に第2回転方向C2に回転することに想到する場合を含む。
【0049】
第2回転部材123は、幅方向Bにおける歯車121側に突出する突出部123aを有している。突出部123aは、第1回転部材122が第2回転部材123に対して相対的に第1回転方向C1に回転する場合に突出部122bの壁部122cと当接する壁部123cを有し、第1回転部材122が第2回転部材123に対して相対的に第2回転方向C2に回転する場合に突出部122bの壁部122dと当接する壁部123dを有している。また、第2回転部材123は、幅方向Bにおけるピックローラー10側に突出する突出部123bを有している。突出部123bは、第1回転方向C1における先頭側に壁部123eを有し、第2回転方向C2における先頭側に壁部123fを有している。
【0050】
第3回転部材124は、幅方向Bにおける歯車121側に突出する突出部124aを有している。突出部124aは、第2回転部材123が第3回転部材124に対して相対的に第1回転方向C1に回転する場合に突出部123bの壁部123eと当接する壁部124bを有し、第2回転部材123が第3回転部材124に対して相対的に第2回転方向C2に回転する場合に突出部123bの壁部123fと当接する壁部124cを有している。
【0051】
ここで、図11では、歯部121aと歯部122aとの間に隙間G1が形成され、壁部122cと壁部123cとの間に隙間G2が形成され、壁部123eと壁部124bとの間に隙間G3が形成されている。一方、図10では、隙間G1、隙間G2及び隙間G3は形成されていない。すなわち、隙間G1は歯部121aと歯部122aとの間の間隔が最大の場合に最大となり、隙間G2は壁部122dと壁部123dとが当接している状態で最大となり、隙間G3は壁部123fと壁部124cとが当接している状態で最大となる。逆に、隙間G1は歯部121aと歯部122aとの間の間隔がゼロの場合に最小(ゼロ)となり、隙間G2は壁部122cと壁部123cとが当接している状態で最小(ゼロ)となり、隙間G3は壁部123eと壁部124bとが当接している状態で最小(ゼロ)となる。
【0052】
隙間G1、隙間G2及び隙間G3のいずれか1つでも生じていれば、歯車121を第1回転方向C1に回転させても、第1回転部材122、第2回転部材123及び第3回転部材124の少なくともいずれかが空転し、ピックローラー10は回転しない。このため、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が長いと伝達中断機構101が生成する中断距離は長くなり、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が短いと伝達中断機構101が生成する中断距離は短くなる。中断距離は、ピックローラー10の回転を中断した状態で媒体Mを搬送可能な距離に対応する。以下に、例えば第1媒体M1の後端Mbがピックローラー10を抜けてからニップ点N1を抜けるまでの間などピックローラー10の回転を中断する際に対応する、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が最大の状態から最小の状態となるまでの伝達中断機構101の動きの一例について図12及び図13を参照して説明する。なお、図12は、回転軸120(第3回転部材124)と、歯車121、第1回転部材122及び第2回転部材123と、に摩擦力が発生しない場合を表している。そして、図13は、回転軸120(第3回転部材124)と、歯車121、第1回転部材122及び第2回転部材123と、に摩擦力が発生する場合を表している。
【0053】
図12の上段左側の状態は図11に対応し、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が最大の状態を表している。この状態から、モーター8の駆動に伴って歯車121が回転すると、図12の上段中央の状態に移行し、隙間G1が詰まる。その後、図12の上段右側の状態に移行し、隙間G2が徐々に詰まっていく状態となる。その後、図12の下段左側の状態になると隙間G2が詰まる。そして、さらに図12の下段中央の状態と移行し、隙間G3が徐々に詰まってくる。そして、最後は、図10に対応する図12の下段右側の状態と移行し、隙間G3も詰まった状態となる。なお、モーター8の駆動に伴って歯車121が回転すると、隙間G1、隙間G2及び隙間G3の詰まり方の順序は、隙間G1が最初に詰まり、その後隙間G2が詰まり、最後に隙間G3が詰まる。
【0054】
ここで、図13の上段左側の状態は図11に対応し、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が最大の状態を表している。この状態から、モーター8の駆動に伴って歯車121が回転すると、図13の上段中央の状態に移行し、隙間G3が詰まっていく。その後、図13の上段左側の状態に移行し、隙間G3が詰まった状態となる。その後、図13の下段左側の状態、図13の下段中央の状態と移行し、隙間G2が徐々に詰まってくる。そして、最後は、図10に対応する図13の下段右側の状態と移行し、隙間G2が詰まった状態となるとともに隙間G1もそれに引き続いて詰まった状態となる。
【0055】
上記のように、本実施例のプリンター1の伝達中断機構101は、回転軸120に第2回転部材123を有している。また、ピックローラー10は、当接部としての壁部124bを有している。そして、第2回転部材123は、被当接部としての壁部123eを有している。ここで、第2回転部材123の壁部123eは、モーター8からの動力の伝達によって回転軸120に対して媒体Mを搬送する際の回転方向である第1回転方向C1に回転することで壁部124bと当接する。一方、壁部123eは、ピックローラー10が媒体Mに引っ張られることなどによりモーター8からの動力の伝達によって第1回転方向C1の回転よりも速い回転速度で第1回転方向C1に回転する、すなわち、相対的に第2回転方向C2に力を受けることで壁部124bに対して離間する。そして、伝達中断機構101は、第2回転部材123が第1回転方向C1に回転することで壁部124bに対して壁部123eが図11で表されるような離間した状態から図10で表されるような当接した状態に変位する間、ピックローラー10へのモーター8からの動力の伝達を中断するよう構成されている。本実施例のプリンター1は、このような構成となっていることで、伝達中断機構101を簡単かつ小型に形成することができている。
【0056】
また、上記のように、本実施例のプリンター1においては、モーター8を駆動することにより中間ローラー13で媒体Mを搬送する際の搬送速度である第1搬送速度は、モーター8を駆動することによりピックローラー10で媒体Mを搬送する際の搬送速度である第2搬送速度よりも速い。そして、本実施例のプリンター1においては、モーター8を駆動することにより中間ローラー13とピックローラー10との両方で媒体Mを搬送する際には、媒体Mは第1搬送速度で搬送されるとともに、媒体Mが前記第1搬送速度で搬送されることに伴ってピックローラー10が媒体Mから相対的に第2回転方向C2に力を受けることで、第2回転部材123が壁部124bに対して壁部123eが当接した状態から離間した状態に変位するよう構成されている。このため、本実施例のプリンター1は、伝達中断機構101において、媒体Mを搬送する度に第1媒体M1に続いて第2媒体M2を搬送する際の第2媒体M2の搬送を待機する時間を効率的に生成することができる。
【0057】
別の表現をすると、本実施例のプリンター1においては、第1媒体M1がピックローラー10と対向する位置とニップ点N1とニップ点N2とのいずれにもある状態で搬送されている際に、第2回転部材123が壁部124bに対して壁部123eが当接した状態から離間した状態に変位するよう構成されている。さらに別の表現をすると、本実施例のプリンター1においては、第1媒体M1がピックローラー10と対向する位置とニップ点N1とニップ点N2とのいずれにもある状態で搬送されている際に、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が最小の状態から最大の状態となる。そこで、以下に、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が最小の状態から最大の状態となるまでの伝達中断機構101の動きの一例について図14を参照して説明する。
【0058】
図14の上段左側の状態は図10に対応し、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が最小(ゼロ)の状態を表している。この状態から、第1媒体M1がピックローラー10と対向する位置とニップ点N1とニップ点N2とのいずれにもある状態で搬送されると、第1媒体M1に引っ張られてピックローラー10がモーター8の駆動力による回転量よりも多くの回転量で第1回転方向C1に回転し始め、図14の上段中央の状態に移行し、隙間G3ができ始める。そして、その状態のまま第1媒体M1の搬送がさらに進むと、図14の上段右側の状態に移行し、隙間G3が広くなり、さらには壁部124bに対して壁部123eが当接した状態となり隙間G3が最大となる。その後、図14の下段左側の状態に移行し、第2回転部材123が第1回転方向C1に回転し始めることで、隙間G2ができ始める。その後、図14の下段中央の状態と移行し、壁部123dに対して壁部122dが当接した状態となり隙間G2が最大となる。そして、最後は、図11に対応する図14の下段右側の状態と移行し、第1回転部材122が第2回転部材123に押されることで歯車121に対して第1回転方向C1に回転することで、歯部121aと歯部122aとの間の隙間G1が形成される。なお、隙間G1、隙間G2及び隙間G3の形成順序は、図14とは異なる順序となる場合もある。
【0059】
なお、図14で表される伝達中断機構101の動きを実行すると、その最後は図11に対応する図14の下段右側の状態で表されるように、1回あたりの記録動作の実行命令の終了後に対応する最後の媒体Mの搬送後には、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が最大となった状態となり得る。しかしながら、このような状態では、次回の記録動作の実行命令に伴う最初の媒体Mの搬送動作の開始が、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が最大となることに対応する中断時間の長さ分だけ遅れることとなる。そこで、本実施例のプリンター1は、最後の媒体Mの搬送後に、モーター8を駆動して隙間G1と隙間G2と隙間G3とを詰めることが可能になっている。
【0060】
別の観点から説明すると、本実施例のプリンター1は、図1で表されるように、ユーザーからの記録動作の実行命令、すなわち、媒体Mの搬送指示を受け付ける受付部20を備え、受付部20が受け付けた搬送指示の実行終了後において、壁部124bに対して壁部123eを当接した状態とすることなど隙間G1と隙間G2と隙間G3との和を最小にすることで、次回の搬送指示に伴ってピックローラー10をすぐに第1回転方向C1に回転可能な状態とするように構成されている。このため、本実施例のプリンター1は、受付部20が搬送指示を受け付ける度に、次回の搬送指示を受付部20が受け付けた際にピックローラー10により搬送開始が遅れるということを抑制することができる。
【0061】
さらに詳細には、本実施例のプリンター1は、受付部20が受け付けた搬送指示の実行終了後において、搬送される最後の媒体Mの後端Meがピックローラー10による搬送可能位置を通過した後にモーター8を駆動することにより第1回転方向C1にピックローラー10の回転を継続するように構成されている。このような構成とすることで、簡単な構成及び簡単な制御で、受付部20が搬送指示を受け付ける度に、次回の搬送指示を受付部20が受け付けた際にピックローラー10により搬送開始が遅れるということを抑制することができる。
【0062】
次に、隙間G1と隙間G2と隙間G3との和が形成する中断距離、すなわち、伝達中断機構101が生成する中断距離の好ましい長さについて図15を参照して説明する。図15は、本実施例のプリンター1において使用可能な搬送方向Aにおける長さが最小の媒体Mを搬送している状態であって、中間ローラー13による搬送可能位置に対応し媒体Mの搬送方向Aの先端Maが中間ローラー13のニップ点N2にある状態を表している。ここで、図15で表されるように、ピックローラー10とセパレートローラー11との間の搬送距離をL1とし、中間ローラー13による搬送可能位置に到達した媒体Mの後端Mbとピックローラー10との間の搬送距離をL2とする。また、モーター8を駆動することによる中間ローラー13の周速(中間ローラー13により媒体Mを搬送する際の搬送速度)をX1とし、モーター8を駆動することによるピックローラー10の周速(ピックローラー10により媒体Mを搬送する際の搬送速度)をX2とする。そして、X1とX2との減速比であるX1/X2をXとする。このように定義した場合、伝達中断機構101が生成するジャムを抑制するために必要なピックローラー10の中断距離L1/Xと、中間ローラー13による搬送可能位置に到達した媒体Mの後端Meとピックローラー10との間の搬送距離をL2とした場合の伝達中断機構101が生成することが可能なピックローラー10の中断距離L2-L2/Xとは、下記の式(1)を満たすことが好ましい。
【0063】
L1/X≦L2-L2/X・・・(1)
【0064】
このような式を満たす構成とすることで、先行する第1媒体M1が確実にセパレートローラー11とリタードローラー12とのニップ点N1を通過した後に後続する第2媒体M2をピックローラー10で搬送することを正確に実行可能になる。したがって、このような式を満たす構成とすることで、第2媒体M2がニップ点N1の近傍でジャムを発生させることを特に効果的に抑制することができる。
【0065】
例えば、本実施例においては、搬送距離L1を25mmとし、使用可能な搬送方向Aにおける長さが最小の媒体MをL版の用紙とし、媒体MとしてL版の用紙を使用した場合の搬送距離L2を35mmとする。また、中間ローラー13の周速X1を500mm/秒とし、ピックローラー10の周速X2を250mm/秒とする。すると、中間ローラー13の周速X1とピックローラー10の周速X2との減速比Xは500/250、すなわち、2となる。この場合、伝達中断機構101が生成するジャムを抑制するために必要なピックローラー10の中断距離L1/Xは25/2mm、すなわち、12.5mmとなる。一方、本実施例においてプリンター1が生成する実際の中断距離L2-L2/Xは、35-35/2mm、すなわち、17.5mmとなる。したがって、本実施例においては、上記の式(1)を満たしており、伝達中断機構101が生成するジャムを抑制するために必要なピックローラー10の中断距離よりも、実際に伝達中断機構101が生成することが可能なピックローラー10の中断距離のほうが長くなっている。
【0066】
本発明は上記において説明した各実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。例えば、第2回転部材123に相当する部材を複数回転軸120に設けてもよい。第2回転部材123に相当する部材を複数回転軸120に設けることで伝達中断機構101が生成する中断距離を長くとることが可能になる。また、例えば、プリンターに限定されず、スキャナーや、様々な装置同士の間に設けられる中間ユニットや、フィニッシャーなどにおける搬送装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…インクジェットプリンター(媒体搬送装置)、2…収容部、3…挿入部、4…排出トレイ、5…ヘッドユニット、6…ラインヘッド、7…制御部、8…モーター(駆動源)、9…搬送ローラー対、10…ピックローラー、11…セパレートローラー、12…リタードローラー、13…中間ローラー(搬送ローラー)、14…従動ローラー、14A…第1従動ローラー、14B…第2従動ローラー、20…受付部、100…動力伝達機構、101…伝達中断機構、110…回転軸、111…歯車、120…回転軸、121…歯車、121a…歯部、122…第1回転部材、122a…歯部、122b…突出部、122c…壁部、122d…壁部、123…第2回転部材、123a…突出部、123b…突出部、123c…壁部、123d…壁部、123e…壁部(被当接部)、123f…壁部、124…第3回転部材、124a…突出部、124b…壁部(当接部)、124c…壁部、130…回転軸、131…歯車、140…基部、L1…搬送距離、L2…搬送距離、La…距離、M…媒体、M1…第1媒体、M2…第2媒体、Ma…先端、Mb…後端、N1…ニップ点、N2…ニップ点、N3…ニップ点、R1…領域
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