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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001016
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】半径方向変化を有する粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 12/08 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
C08F12/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023146747
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2020517993の分割
【原出願日】2018-09-25
(31)【優先権主張番号】62/565,423
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ラフリン、ケニス
(72)【発明者】
【氏名】シュルズ、アルフレッド、ケー.
(72)【発明者】
【氏名】レフェナー、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】レッドワイン、オスカー
(72)【発明者】
【氏名】サミラー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】サヴォ、アンドリュー、エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好なポリマービーズを提供すること。
【解決手段】半径Rを有するポリマービーズであって、ポリマーが、ポリマーの重量を基準として、0.3重量%~20重量%の1種以上の多官能性ビニルモノマーの重合単位と、ポリマーの重量を基準として、80重量%~99.7重量%の1種以上の一官能性ビニルモノマーの重合単位とを含み、(a)ここで、多官能性ビニルモノマーの重合単位が0.9~1.1の動径分布係数MRを有し、(b)ここで、マルチビニルモノマーの重合単位中のビニル基のいくつかが未反応であり、未反応のビニル基が2.5以上の動径分布係数VRを有するポリマービーズ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径Rを有するポリマービーズであって、前記ポリマーが、前記ポリマーの重量を基準として、0.3重量%~20重量%の1種以上の多官能性ビニルモノマーの重合単位と、前記ポリマーの重量を基準として、80重量%~99.7重量%の1種以上の一官能性ビニルモノマーの重合単位とを含み、
(a)ここで、多官能性ビニルモノマーの前記重合単位が0.9~1.1の動径分布係数MRを有し、ここで、MR=CMSHELL/CMCORE(式中、CMSHELLは、0.8*R~Rのビーズの中心からの距離に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の平均濃度であり、及び式中、CMCOREは、0~0.5*Rのビーズの前記中心からの距離に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の平均濃度である)であり、並びに
(b)ここで、マルチビニルモノマーの前記重合単位中のビニル基のいくつかが未反応であり、前記未反応ビニル基が2.5以上の動径分布係数VRを有し、ここで、VRが前記ビーズに関して行われるラマン分光法測定によって決定され、ここで、
VR=V1SHELL/V1CORE
(式中、V1SHELLは、0.8*R~Rの前記ビーズの中心からの距離で行われる測定についての比V1の平均であり、式中、V1COREは、0~0.5*Rの前記ビーズの中心からの距離で行われる測定についての比V1の平均である)であり、
ここで、V1=PCC/PAR(式中、PCCは、炭素-炭素二重結合の伸縮によるラマン分光ピークの高さであり、PARは、1000cm-1での芳香環の伸縮によるラマン分光基準ピークの高さである)である
ポリマービーズ。
【請求項2】
前記ポリマービーズが、ゲル型樹脂を含む、請求項1に記載のポリマービーズ。
【請求項3】
前記一官能性ビニルモノマーが、1種以上のスチレン系モノマーを含む、請求項1に記載のポリマービーズ。
【請求項4】
前記多官能性ビニルモノマーが、1種以上のスチレン系モノマーを含む、請求項1に記載のポリマービーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ビーズの形態でのポリマーイオン交換樹脂は、例えば、キレート樹脂として又はアニオン交換体として若しくはカチオン交換体としてなどの、多くの用途に使用されている。これらの用途の多くで、樹脂は、ビーズの本質的な破壊を引き起こし得る応力を受ける。これらの応力は、例えば圧潰又はビーズ間若しくはビーズとそれらの容器との間の衝突による、機械的なものであり得るし;或いはビーズが電解質濃度の突然の及び/又は繰り返し変化を受ける場合などの、浸透圧的なものであり得る。カラムにおけるイオン交換ビーズの破壊は、以下の問題:カラムの効率の実質的な喪失;カラムを通しての圧力降下の上昇;及び生成物流の汚染の1つ以上を引き起こす。これらの問題のどれも、破壊樹脂を取り替えるのに大きいコストをもたらすであろう。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂は、ゲル型かマクロ多孔性型のどちらかである。いくつかの場合には、ゲル型(ミクロ多孔性)樹脂は、不十分な浸透圧特性を有する。結果として、マクロ多孔性型樹脂が、一般に、良好な浸透圧特性が不可欠である場合には用いられる。しかしながら、マクロ多孔性樹脂は、多くの場合、不十分な機械的特性を有し、多くの場合、ゲル型樹脂よりも実質的に低いイオン交換容量を有する。下記:良好な浸透圧特性、良好な機
械的特性、及び高いイオン交換容量の1つ以上を有するゲル型イオン交換樹脂を提供することが望ましいであろう。
【0003】
ゲル型樹脂を製造する1つのアプローチが欧州特許第0 101 943号明細書に記載されており、それは、ラジカルを含有するポリマーマトリックスが、コア/シェルビーズを製造するためにモノマーフィードと接触させられる方法を記載している。これは、ラジカル含有ポリマーが製造されなければならず、次に、ラジカル含有ポリマーを有する容器中へモノマーが供給されなければならない複雑なプロセスである。更に、欧州特許第0 101 943号明細書に記載されているこのプロセスは、シェル中の多官能性ビニルモノマーの重合単位の濃度が、コア中の多官能性ビニルモノマーの重合単位の濃度よりも低い場合に最も有利である。別個のモノマー供給工程を必要としないプロセスで高強度ゲル型樹脂を提供することが望ましいであろう。多官能性ビニルモノマーの重合単位の濃度が、樹脂の全体にわたって同じもの又はほぼ同じものである高強度ゲル型樹脂を提供することもまた望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下は本発明のステートメントである。
【0005】
本発明の第1態様は、
(a)7以下のpHでの水性媒体中のモノマー小滴の懸濁液を提供する工程であって、
モノマー小滴が、1種以上の一官能性ビニルモノマー、1種以上の多官能性ビニルモノマー、及び1種以上の開始剤を含み、
水性媒体が、水性媒体の重量を基準として、0.005重量%~0.5重量%の量で亜硝酸塩の1種以上の誘導体を含む工程と、
(b)モノマーの重合を開始する工程と
を含み、
ここで、全ての一官能性モノマーの60重量%以上がポリマーに変換されてしまうまでpH上昇物質が開始工程(b)の後に全く添加されない
ポリマービーズの製造方法である。
【0006】
本発明の第2態様は、半径Rを有するポリマービーズであって、ポリマーが、ポリマーの重量を基準として、0.3重量%~20重量%の1種以上の多官能性ビニルモノマーの重合単位と、ポリマーの重量を基準として、80重量%~99.7重量%の1種以上の一官能性ビニルモノマーの重合単位とを含み、
(a)ここで、多官能性ビニルモノマーの重合単位が0.9~1.1の動径分布係数MRを有し、ここで、MR=CMSHELL/CMCORE(式中、CMSHELLは、0.8*R~Rのビーズの中心からの距離に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の平均濃度であり、及び式中、CMCOREは、0~0.5*Rのビーズの中心からの距離に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の平均濃度である)であり、
並びに
(b)ここで、マルチビニルモノマーの重合単位中のビニル基のいくつかが未反応であり、未反応ビニル基が2.5以上の動径分布係数VRを有し、ここで、VRがビーズに関して行われるラマン(Raman)分光法測定によって決定され、ここで、
VR=V1SHELL/V1CORE
(式中、V1SHELLは、0.8*R~Rのビーズの中心からの距離で行われる測定についての比V1の平均であり、式中、V1COREは、0~0.5*Rのビーズの中心からの距離で行われる測定についての比V1の平均である)であり、ここで、V1=PCC/PAR(式中、PCCは、炭素-炭素二重結合の伸縮によるラマン分光ピークの高さであり、PARは、1000cm-1での芳香環の伸縮によるラマン分光基準ピークの高
さである)である、
ポリマービーズである。
【0007】
以下は、図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ポリマービーズの横断面図を示す。
図2】膨張ポリマービーズの横断面に関するラマンスペクトロスコピーを測定するための装置の鉛直断面図を示す。
図3】比較例1Bによるポリマー粒子のラマン分光分析を示す。
図4】実施例4Aによるポリマー粒子のラマン分光分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0010】
本明細書で用いられる場合、以下の用語は、文脈がそうではないと明らかに示していない限り、指定された定義を有する。
【0011】
「ポリマー」は、本明細書で用いられる場合、より小さい化学繰り返し単位の反応生成物から構成される比較的大きい分子である。ポリマーは、線状、分岐状、星形、ループ状、超分岐状、架橋、又はそれらの組み合わせである構造を有し得るし;ポリマーは、単一タイプの繰り返し単位を有し得るし(「ホモポリマー」)、又はそれらは、2つ以上のタイプの繰り返し単位を有し得る(「コポリマー」)。コポリマーは、ランダムに、順序良く、ブロックで、他の配列で、又はそれらの任意の混合若しくは組み合わせで配列された、様々なタイプの繰り返し単位を有し得る。
【0012】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、「モノマー」として本明細書では知られる。そのようにして形成された繰り返し単位は、モノマーの「重合単位」として本明細書では知られる。
【0013】
ビニルモノマーは、構造:
【化1】
[式中、R、R、R、及びRのそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基などの)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換若しくは非置換有機基、又はそれらの任意の組み合わせである]を有する。ビニルモノマーは、フリーラジカル重合してポリマーを形成することができる。いくつかのビニルモノマーは、R、R、R、及びRの1つ以上へ組み込まれた1つ以上の重合性炭素-炭素二重結合を有し;そのようなビニルモノマーは、多官能性ビニルモノマーとして本明細書では知られる。厳密に1つの重合性炭素-炭素二重結合を持つビニルモノマーは、一官能性ビニルモノマーとして本明細書では知られる。
【0014】
スチレン系モノマーは、R及びRのそれぞれが水素であり、Rが水素又はアルキルであり、-Rが構造
【化2】
(式中、R、R、R、R、及びRのそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基又はビニル基などの)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換若しくは非置換有機基、又はそれらの任意の組み合わせである)
を有するビニルモノマーである。
【0015】
アクリルモノマーは、R及びRのそれぞれが水素であり;Rが水素かメチルかのどちらかであり;-Rが、次の構造:
【化3】
(式中、R11、R12、及びR14のそれぞれは、独立して、水素、C~C14アルキル基、又は置換C~C14アルキル基である)
の1つを有する、ビニルモノマーである。
【0016】
1種以上のポリマーを形成するためのモノマー間の反応は、重合プロセスと本明細書では言われる。重合プロセスが行われている容器中の未反応モノマーの量が、未反応モノマーの質量と、重合プロセスにおいて製造されたポリマーの質量との合計を基準として、5質量%以下である場合に、重合プロセスは、完了していると本明細書では言われる。
【0017】
本明細書で用いられる場合、阻害剤は、フリーラジカルと相互作用してフリーラジカル重合を受けない部分(本明細書では「デッドエンド」部分)を生み出す分子である。阻害剤は、フリーラジカルと相互作用して直接デッドエンド部分を形成し得るか、又は阻害剤は、1つ以上の中間体を先ず形成し得、この中間体がラジカルと相互作用してデッドエンド部分を形成し得る。阻害剤が中間体を先ず形成する場合には、中間体の形成は、阻害剤とフリーラジカルとの間の反応によって起こり得る。
【0018】
本明細書で用いられる場合、開始剤は、周囲条件では安定であるが、フリーラジカルを有する1つ以上のフラグメントを特定の条件下で生成することができ、及びそのフラグメントがモノマーと相互作用してフリーラジカル重合プロセスを開始することができる分子である。フリーラジカルを有するフラグメントの生成をもたらす条件としては、例えば、高温、酸化-還元反応への関与、紫外線及び/若しくは電離放射線への暴露、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
ポロゲンは、本発明の実施に使用されるモノマー又はモノマーの混合物に可溶である化合物である。すなわち、25℃で、100グラム以上のポロゲンが、本発明の実施に使用される100グラムのモノマー又はモノマーの混合物に溶解するであろう。ポリマーは、大量のポロゲンを吸収しない。すなわち、25℃で、本発明の実施において形成された
ポリマーは、ポリマーの100グラム当たり5グラム以下のポロゲンを吸収する。
【0020】
マクロ多孔性ポリマービーズは、20nm以上の平均細孔径の多孔質構造を有する。細孔径は、窒素ガスを使用するブルナウアー-エメット-テラー(BET)法を用いて測定される。マクロ多孔性ポリマービーズは、普通は、モノマー小滴中へポロゲンを組み入れることによって製造される。ポロゲンはモノマーに可溶であるが、ポリマーはポロゲンを溶解させず、その結果ポリマーが形成するときに、ポロゲンの相分離ドメインが存続する。重合後に、ポロゲンは、蒸発によって又は溶媒で洗浄することによって除去される。ポリマービーズの多孔質構造は、ポロゲンがその相分離ドメインから除去されるときに残る空きスペースである。
【0021】
ゲル型ポリマービーズは、ポロゲンの使用なしで製造される。ゲル型ポリマービーズ中の細孔は、ポリマービーズのもつれた、架橋したポリマー鎖中の原子間の自由体積である。ゲル型ポリマービーズ中の細孔は、20nmよりも小さい。いくつかの場合に、ゲル型樹脂中の細孔は、余りにも小さくてBET法を用いて検出されない。
【0022】
本明細書で用いられる場合、イオン交換は、溶液中のイオンが固体樹脂(イオン交換樹脂)に結合し、それらのイオンが、イオン交換樹脂によって放出される同じタイプの電荷のイオンと交換されるプロセスである。樹脂上に位置する官能基は、交換されつつあるイオンと反対の電荷を有し、それらの官能基は、イオン交換基として本発明では知られる。
【0023】
化合物の5グラム以上が25℃での100mlの水中で安定した溶液を形成する場合に、化合物は水溶性であると本明細書では言われる。いくつかの水溶性ポリマーの場合に、水は、ポリマーを溶解させるために25℃よりも上に加熱される必要があり得るが、25℃に冷却した後、溶液は、25℃で保持される場合に安定である。
【0024】
本明細書で用いられる場合、塩基化合物は、プロトンを受け入れてその化合物の共役酸を形成する能力を有する化合物であり、その化合物の共役酸は、9以上のpKaを有する。本明細書で用いられる場合、酸化合物は、プロトンを放出する能力を有する化合物であり、この化合物は、5以下のpKaを有する。緩衝剤は、(i)プロトンを受け入れてその化合物の共役酸を形成する能力を有する化合物であって、その化合物の共役酸が9未満のpKaを有する化合物か、(ii)プロトンを放出する能力を有する化合物であって、その化合物が5超のpKaを有する化合物かのどちらかである。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「周囲条件」は、およそ25℃の温度及び1気圧の圧力を意味する。
【0026】
懸濁液は、液体媒体の至る所に分布した1つの物質の粒子を有する組成物である。分布した粒子は、液体又は固体であり得るし;分布した液体粒子は、小滴と呼ばれる。媒体が、媒体の重量を基準として、90重量%以上の水を含有する場合、媒体は「水性」である。懸濁液は、安定であり得るし又は安定であり得ない。すなわち、分布した粒子は、容器の底部に沈降する又は容器の最上部に浮遊する傾向を有しても有さなくてもよく、粒子を媒体中に分布して保つために機械撹拌が必要とされ得るし又は必要とされ得ない。
【0027】
ポリマービーズは、粒子の重量を基準として、90重量%以上の有機ポリマーを含有する粒子である。ポリマービーズは球形又はほぼ球形である。ポリマービーズは、その半径で特徴付けられる。ビーズが球形でない場合、ビーズの半径は、ビーズと同じ体積を有する架空球である、「基準球」の半径であると本明細書では見なされる。粒子が球形であるかないかは、ギリシャ文字Ψで表される、「球形度」によって評価される。球形度は、
ビーズの3つの主軸、a(最長)、b(中間)、及びc(最短)に基づく、次式によって定義される:
【数1】
【0028】
本明細書で用いられる場合、重合プロセスは、モノマー及び任意選択的に他の化合物が容器中へ入れられ、次に重合反応が開始され、重合の開始後にいかなる更なるモノマーの添加もなしに、重合は完結まで進行する「単一段階」重合プロセスである。単一段階重合プロセスは、シードプロセスではない。
【0029】
本明細書で用いられる場合、懸濁重合プロセスは、モノマー小滴が小滴の重量を基準として80重量%以上のモノマーを含有する;モノマー小滴が重合を受けていない;及びモノマー小滴が小滴の重量を基準として1重量%以上の量でポリマーを含有する状態(S1)をプロセスが含む場合には、「シード」プロセスである。シードプロセスにおいて、状態(S1)後に、モノマー小滴中のモノマーの重合が開始される。典型的なシードプロセスにおいて、ポリマー粒子の懸濁液が提供され、次にモノマーが懸濁液に添加され、モノマーがポリマー粒子中へ吸収され、次にモノマーの重合が開始される。
【0030】
比は、次の通り本明細書では記載される。例えば、比が3:1以上であると言われる場合、その比は、3:1又は5:1又は100:1であり得るが、2:1であり得ない。この考え方の一般的なステートメントは、次の通りである:本明細書で比がX:1以上であると言われる場合、比がY:1であることを意味し、ここで、YはX以上である。同様に、例えば、比が15:1以下であると言われる場合、その比は、15:1又は10:1又は0.1:1であり得るが、20:1であり得ない。一般的に言えば:本明細書で比がW:1以下であると言われる場合、比がZ:1であることを意味し、ここで、ZはW以下である。
【0031】
本発明は、いかなる特定の理論にも制約されないが、本発明の方法は、ビーズの体積の全体にわたって多官能性ビニルモノマーの重合単位の比較的一定の濃度を有するポリマービーズを生成すると熟慮される。多官能性ビニルモノマーの分子は、重合性官能基の1つ以上が重合反応に関与する場合に重合単位になる。多官能性ビニルモノマーの重合単位が1つ以上の未反応官能基を保持している場合がある。本発明において、多官能性ビニルモノマーの重合単位はビーズの至る所で均等に分布しているが、そのような重合単位に結合した未反応官能基は、コア部分においてよりもビーズのシェル部分においてより多く見られると熟慮される。多官能性ビニルモノマーの官能基のより多くがシェルにおいて反応してより多くの架橋点を生み出すので、ポリマービーズ中の架橋点の密度は、シェルにおいてよりもコアにおいて高いと考えられる。したがって、多官能性ビニルモノマーの重合単位の分布がコア及びシェルにおいておよそ同じものであるにしても、架橋のより低い密度はシェルにあると考えられる。
【0032】
本発明の方法は、ビニルモノマー及び開始剤を含有するモノマー小滴を含む。モノマー小滴は、任意選択的に更に、ポロゲンを含有する。
【0033】
モノマーの量プラスポロゲンの量の合計を、モノマー小滴の重量を基準とする重量百分率として特徴付けることが有用である。好ましくは、その合計は、95%以上;より好ましくは97%以上;より好ましくは99%以上である。
【0034】
好ましくは、ポロゲンは、不在であるか、存在する場合、比較的少量で存在するかのどちらかである。ポロゲンがモノマー小滴中に存在する場合、好ましくは、ポロゲンの量は、モノマー小滴の重量を基準として、10重量%以下;より好ましくは3重量%以下;より好ましくは1重量%以下;より好ましくは0.3重量%以下の量に制限される。より好ましくは、ポロゲンは、モノマー小滴中に全く存在しない。
【0035】
好ましくは、モノマー小滴中のモノマーの量は、小滴の重量を基準として、95重量%以上;より好ましくは97重量%以上;より好ましくは99重量%以上である。
【0036】
好ましいビニルモノマーは、スチレン系モノマー、アクリルモノマー、及びそれらの混合物である。好ましくは、使用されるモノマーは全て、スチレン系モノマー、アクリルモノマー、及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、使用されるモノマーは全て、スチレン系モノマーから選択される。ビニルモノマーは、1種以上の一官能性ビニルモノマーを含む。好ましい一官能性ビニルモノマーは、アクリル及びスチレン系の一官能性モノマーであり;一官能性スチレン系モノマーがより好ましく;スチレンがより好ましい。ビニルモノマーはまた、1種以上の多官能性ビニルモノマーを含む。好ましい多官能性ビニルモノマーは、多官能性スチレン系モノマーであり;ジビニルベンゼンがより好ましい。本明細書で用いられる場合、用語「ジビニルベンゼン」又は「DVB」は、多分他の化学物質が1%以下の総量で、およそ63重量%の純化学DVB及びおよそ37重量%のエチルビニルベンゼンを含有する混合物を言う。好ましくは、塩化ビニルの量は、全てのモノマー全てのモノマーの総重量を基準として、0~0.1重量%、より好ましくは0~0.01重量%;より好ましくは0重量%である。
【0037】
好ましくは、スチレン系モノマーの量は、全てのモノマーの重量を基準として、50重量%以上;より好ましくは75重量%以上;より好ましくは88重量%以上;より好ましくは94重量%以上;より好ましくは97重量%以上;より好ましくは100重量%である。
【0038】
好ましくは、一官能性ビニルモノマーの量は、全てのモノマーの重量を基準として80重量%以上、より好ましくは85重量%以上である。好ましくは、一官能性ビニルモノマーの量は、全てのモノマーの重量を基準として、99.7重量%以下;より好ましくは99重量%以下;より好ましくは98重量%以下;より好ましくは96重量%以下、より好ましくは94重量%以下、より好ましくは92重量%以下である。
【0039】
好ましくは、多官能性ビニルモノマーの量は、全てのモノマーの重量を基準として、0.3重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、より好ましくは4重量%以上、より好ましくは6重量%以上、より好ましくは8重量%以上である。好ましくは、多官能性ビニルモノマーの量は、全てのモノマーの重量を基準として、20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0040】
好ましくは、モノマー小滴は、重合の開始前にポリマーをほとんど又は全く含有しない。ポリマーの量は、モノマー小滴の重量を基準として、好ましくは1重量%以下;より好ましくは0.3重量%以下;より好ましくは0.1重量%以下;より好ましくはゼロである。
【0041】
本発明の方法は、水性媒体中のモノマー小滴の懸濁液を含む。好ましくは、モノマーの総量は、懸濁液の総重量を基準として、5重量%以上;より好ましくは10重量%以上;より好ましくは15重量%以上である。好ましくは、モノマーの総量は、懸濁液の総重量を基準として、55重量%以下;より好ましくは35重量%以下;より好ましくは30
重量%以下である。
【0042】
水性媒体は、1種以上の溶解した亜硝酸塩、その亜硝酸塩の誘導体、又はそれらの組み合わせを含有する。亜硝酸塩は、式M(NO(式中、Mは、アンモニウム又はアルカリ金属カチオン若しくはアルカリ土類カチオンであり、vは、Mがアンモニウム又はアルカリ金属カチオンである場合は1であり、vは、Mがアルカリ土類カチオンである場合は2である)を有する。亜硝酸塩が水に溶解している場合、亜硝酸イオンは、化学反応を受けて、例えば、亜硝酸及び/又は式Nの化合物などの誘導体を形成し得ると考えられる。これらの誘導体の量は、溶解した塩の重量プラス水性媒体中に存在する量の誘導体を生成するために溶解させなければならない塩の量によって特徴付けられる。亜硝酸塩及びその誘導体の好ましい量は、水性媒体の重量を基準として、0.005重量%以上;より好ましくは0.008重量%以上;より好ましくは0.011重量%以上;より好ましくは0.014重量%以上である。亜硝酸塩及びその誘導体の好ましい量は、水性媒体の重量を基準として、0.5重量%以下;より好ましくは0.4重量%以下;より好ましくは0.3重量%以下;より好ましくは0.2重量%以下である。
【0043】
好ましい亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウムである。好ましくは、亜硝酸塩の誘導体は、亜硝酸ナトリウムの誘導体である。
【0044】
モノマー小滴は、好ましくは、1種以上の開始剤を含有する。好ましい開始剤は、25℃での水の100mLへの1グラム以下;より好ましくは0.5グラム以下;より好ましくは0.2グラム以下;より好ましくは0.1グラム以下の溶解度を有する。過酸化物及びヒドロペルオキシド開始剤が好ましく;過酸化物開始剤がより好ましく;ベンゾイルペルオキシド及びその誘導体がより好ましく;ベンゾイルペルオキシドがより好ましい。好ましくは、開始剤対全体モノマーの重量比は、0.001:1以上;より好ましくは0.002:1以上である。好ましくは、開始剤対全体モノマーの重量比は、0.02:1以下;より好ましくは0.01:1以下;より好ましくは0.007:1以下である。
【0045】
懸濁液は、好ましくは、1種以上の水溶性ポリマーを含有する。好ましい水溶性ポリマーは、水溶性ポリビニルアルコールポリマー、セルロースの水溶性誘導体、及びそれらの混合物である。セルロースの水溶性誘導体の中で、カルボキシメチルセルロースが好ましい。ポリビニルアルコールポリマーの中で、80%~90%の加水分解度のものが好ましい。好ましくは、懸濁液は、1種以上の水溶性ポリビニルアルコールポリマーと1種以上のセルロースの水溶性誘導体とを含有する。
【0046】
1種以上の水溶性ポリマーが使用される場合、好ましくは、水溶性ポリマーの総量は、水の重量を基準として、0.02重量%以上;より好ましくは0.05重量%以上;より好ましくは0.1重量%以上である。1種以上の水溶性ポリマーが使用される場合、好ましくは、水溶性ポリマーの総量は、水の重量を基準として、1重量%以下;より好ましくは0.5重量%以下である。
【0047】
ゼラチンが懸濁液中に存在しても存在しなくてもよい。ゼラチンが存在する場合、その量は、水の重量を基準として、2重量%以下;又は1重量%以下;又は0.5重量%以下である。好ましい実施形態は、ゼラチンをほとんど又は全く有さない。好ましくは、ゼラチンの量は、ゼラチンの量が、水の重量を基準として、0~0.01重量%;より好ましくは0~0.001重量%であるほど十分に低い。より好ましくは、ゼラチンの量はゼロである。
【0048】
モノマーの重合を開始する工程(b)の前に、水性媒体のpHは7以下である。モノマーの重合を開始する工程(b)の前に、水性媒体のpHは、好ましくは3以上;より好
ましくは4以上、より好ましくは5以上;より好ましくは5.5以上である。
【0049】
本発明はいかなる特定の理論又はメカニズムにも制約されないが、本発明の作用に関して下記が熟慮される。水溶性亜硝酸塩が懸濁液に添加される場合、水溶性亜硝酸塩のいくらか又は全てが水性媒体中の水に溶解すること、及び7以下のpHで、水素イオンの存在が溶解した亜硝酸イオンと亜硝酸との間で平衡を生み出すことが考えられる。亜硝酸は更なる化学反応を受けて一酸化窒素又は式NxOy(式中、xは1又は2であり、yは1~5であり、xが2である場合、yは、1、3、4、又は5である)の他の化合物の1種以上を形成すると思われる。一般に、pHが低ければ低いほど、NOを含めて、式NxOyの化合物の生成はより多くなると予期される。生成する可能性が最も高いNxOy化合物は、もしかしたら1種以上の他のNxOy化合物と組み合わせて、一酸化窒素(NO)であると考えられる。水溶性亜硝酸塩が懸濁液に添加される場合に形成される式NxOyの化合物は、水溶性亜硝酸塩の誘導体であると本明細書では考えられる。NOはラジカル種であるので、NOは、モノマーラジカルと又は成長中のポリマー鎖上のラジカルと反応することによって阻害剤として機能し、こうして重合反応を停止させるであろうと熟慮される。他のNxOy化合物もまた阻害剤として機能し得ると熟慮される。
【0050】
溶解した亜硝酸イオンの存在及び水性媒体における酸性条件は、pHが7よりも下に保たれる限り、新鮮な阻害剤分子が重合プロセスの全体にわたって絶えず形成されつつある系を生み出すと熟慮される。本発明によって得られるものに似た便益は、阻害剤(例えば、カテコールなどの)を水性媒体に徐々に添加することによってもまた得ることができるだろうと熟慮される。そのような手順はまた、新鮮な阻害剤分子が絶えず導入される系を生み出したであろう。どんな阻害剤が使用されるとしても、水性媒体を通しての輸送を可能にするために阻害剤は水に部分的に又は完全に溶けるべきであり、且つ、阻害剤をモノマー小滴中へ拡散させ、そこでそれがラジカルと反応し、重合を停止させるためにモノマー小滴中に部分的に又は完全に溶けるべきであると熟慮される。
【0051】
重合の開始前の懸濁液のpHは、水性媒体への1種以上の酸の添加によって任意選択的に確立され得る。酸が添加される場合、好ましい酸は、3以上;より好ましくは4以上の第1pKaを有する。酸が使用される場合、任意のタイプの酸が使用され得;有機酸が好ましい。好ましくは、酸は水性媒体に全く添加されない;すなわち、上にリストアップされた成分が、酸の添加なしで7以下である懸濁液のpHを確立することが好ましい。好ましくは、緩衝剤は、水性媒体中に全く存在しない。
【0052】
重合を開始する工程の性質は、使用される開始剤の性質に部分的に依存する。例えば、熱開始剤が使用される場合、開始条件は、開始剤分子のかなりの部分が分解してフリーラジカルを形成するために十分に高い25℃よりも上の温度を確立することを含む。もう一つ例を挙げると、光開始剤が使用される場合、開始条件は、開始剤分子のかなりの部分が分解してフリーラジカルを形成するために十分に短い波長及び十分に高い強度の放射線に開始剤を暴露することを含む。もう一つ例を挙げると、開始剤がレドックス開始剤である場合、開始条件は、かなりの数のフリーラジカルが生成するように十分に高い濃度の酸化剤及び還元剤の両方の存在を含む。好ましくは、熱開始剤が使用される。好ましくは、開始条件は、65℃以上;より好ましくは75℃以上の温度を含む。すなわち、好ましくは、懸濁液は、40℃よりも下の温度で提供され、存在する開始剤は、その温度で有意の数のフリーラジカルを生成しない。次に、好ましくは、工程(b)は、開始条件まで温度を上げることを含む。
【0053】
工程(b)後に、重合が起こっている間ずっと、いかなる瞬間にも、懸濁液を含有する容器中のフリーラジカル重合の程度は、次の通り特徴付けられ得る。
重合度=100*PM/TM
(式中、PMは、フリーラジカル重合プロセスによって形成されるポリマーの質量であり、TMは、容器に添加されたモノマーの総質量である)。
【0054】
いくつかの実施形態において、塩基又は適切な緩衝剤が、重合中に懸濁液に添加されてもよい。適切な緩衝剤は、懸濁液のpHを上げるであろう緩衝剤である。塩基又は適切な緩衝剤を添加する一動機は、懸濁液のpHの上昇が亜硝酸塩の誘導体のいくらかを反応させて亜硝酸塩を再形成し得ると考えられることである。誘導体のいくらか、とりわけN化合物の1種以上は重合を阻害すると考えられ、pHの上昇はいくらかの阻害剤を懸濁液から除去すると考えられ、それは、重合がより迅速に完了することを可能にすると考えられる。本発明の実施において、塩基又は適切な緩衝剤が添加される場合、それは、重合の第1初期化から反応進行度が60%以上;好ましくは70%以上;好ましくは80%以上にある時点までのいかなる時間にも添加されない。いくつかの実施形態において、塩基又は適切な緩衝剤は重合中に懸濁液に全く添加されない。
【0055】
塩基が添加される場合、有機塩基化合物及び無機塩基化合物が好ましい。無機塩基化合物がより好ましく;アルカリ水酸化物及び水酸化アンモニウムがより好ましく;アルカリ水酸化物がより好ましい。好ましくは、塩基化合物が懸濁液に添加される場合、添加は、先ず塩基化合物の水溶液を形成し、次にその溶液を懸濁液に添加することによって行われる。好ましい水溶液は、溶液の重量を基準として、1重量%以上;より好ましくは2重量%以上;より好ましくは5重量%以上の塩基化合物の濃度を有する。好ましい水溶液は、溶液の重量を基準として、50重量%以下;より好ましくは25重量%以下;より好ましくは15重量%以下;より好ましくは10重量%以下の塩基化合物の濃度を有する。
【0056】
適切な緩衝剤が添加される場合、好ましくは、緩衝剤は、プロトンを受け取ってその化合物の共役酸を形成する能力を有する化合物であり、その化合物の共役酸は、9未満であるpKaを有する。好ましくは、その化合物の共役酸は、6以上;より好ましくは7以上;より好ましくは7.5以上であるpKaを有する。いくつかの好適な緩衝剤としては、例えば、TES(2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸);HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸);DIPSO(3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸);TAPSO(2-ヒドロキシ-3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸);トリエタノールアミン;N-エチルモルホリン;POPSO(2-ヒドロキシ-3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸”;HEPPSとしても知られるEPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-プロパンスルホン酸、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(3-プロパンスルホン酸));HEPPSO(CAS番号865856-46-8);TRIS(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール);トリシン;グリシルグリシン;ビセン(bicene);TAPS(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸、[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸);モルホリン;N-メチルジエタノールアミン;AMPO(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール);ジエタノールアミンが挙げられる。
【0057】
懸濁液は、ホウ酸を含有してもしなくてもよい。ホウ酸が存在する場合、その量は、水の重量を基準として、2重量%以下、又は1重量%以下、又は0.5重量%以下である
。好ましくは、懸濁液は、ホウ酸をほとんど又は全く含有しない。好ましくは、懸濁液中のホウ酸の量は、水の重量を基準として、0~0.01重量%;より好ましくは0重量%である。
【0058】
重合プロセスの開始前に、小滴が懸濁液中に存在し、小滴は、ビニルモノマー及び開始剤を含有する。好ましくは、小滴は、水性媒体の全体にわたって分布しており、好ましくは、水性媒体の組成物は、連続液体媒体の重量を基準として、90重量%以上;より好ましくは95重量%以上;より好ましくは97重量%以上の量で水を含有する。水に溶解した化合物は、連続液体媒体の一部であると考えられる。好ましくは、小滴の体積平均粒径は50μm~1,500μmである。
【0059】
モノマー小滴の懸濁液は、開始剤にモノマーの重合を開始させる条件にさらされる。好ましくは、開始剤は熱開始剤であり、重合の開始は、40℃よりも上であり、且つ、重合を開始するのに十分なラジカルを十分に開始剤に生成させるのに十分に高い温度に懸濁液が加熱されるときに始まる。
【0060】
好ましくは、重合は単一段階重合である。すなわち、好ましくは、モノマーは、重合の開始後に懸濁液に全く添加されないか、任意のモノマーが添加される場合、添加されるモノマーの量は、重合の開始時に懸濁液中に存在する全モノマーの重量を基準として、1重量%以下;より好ましくは0.1重量%以下であるかのどちらかである。より好ましくは、モノマーは、重合の開始後に懸濁液に全く添加されない。
【0061】
好ましくは、本発明のプロセスは、シードプロセスではない。
【0062】
本発明はまた、ポリマービーズを含む。ポリマービーズは、好ましくは、本発明の方法によって製造される。好ましくは、ポリマービーズはポリマーを含有する。ポリマービーズは、25℃で固体である、且つ、ポリマー粒子の重量を基準として、90重量%以上;より好ましくは95重量%以上の量でポリマーを含有する粒子である。
【0063】
好ましくは、ポリマービーズは、50μm以上;より好ましくは100μm以上;より好ましくは200μm以上;より好ましくは400μm以上の体積平均粒径を有する。好ましくは、ポリマービーズは、1,500μm以下;より好ましくは1,000μm以下の体積平均粒径を有する。
【0064】
ポリマー粒子中の好ましいポリマーは、上に記載された好ましいビニルモノマーのフリーラジカル重合によって形成されたポリマーである。好ましくは、ポリマーは、ポリマーの重量を基準として、5重量%以上;より好ましくは25重量%以上;より好ましくは50重量%以上;より好ましくは75重量%以上;より好ましくは85重量%以上;より好ましくは95重量%以上の量でスチレン系モノマーの重合単位を含有する。ポリマーの重合単位として好ましいタイプのモノマーは、重合プロセスに使用するために好ましいとして上に記載されたものと同じものである。
【0065】
好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準として、0.3重量%以上;より好ましくは0.5重量%以上;より好ましくは1重量%以上;より好ましくは2重量%以上;より好ましくは3重量%以上;より好ましくは4重量%以上の量で多官能性ビニルモノマーの重合単位を有する。好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準として、20重量%以下;より好ましくは15重量%以下の量で多官能性ビニルモノマーの重合単位を有する。
【0066】
好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準として、99.7重量%以下;より好ましくは99.5重量%以下;より好ましくは99重量%以下;より好ましくは98重量%
以下;より好ましくは97重量%以下;より好ましくは96重量%以下の量で一官能性ビニルモノマーの重合単位を有する。好ましいポリマーは、ポリマーの重量を基準として、80重量%以上;より好ましくは85重量%以上の量で一官能性ビニルモノマーの重合単位を有する。
【0067】
多官能性ビニルモノマーの単一分子上のビニル基の2つ以上が重合反応に関与する場合に、その分子がポリマー鎖間の架橋点を形成すると熟慮される。ポリマービーズ中の多官能性ビニルモノマーの重合単位を考える場合、そのような重合単位のいくつかで、しかし全てではなく、ビニル基の2つ以上が重合反応に関与し、架橋点を形成しているであろう。十分な架橋点は、ポリマービーズ中のポリマーが架橋ポリマーであることを作り出すであろうと予期される。同時に、多官能性ビニルモノマーのいくつかの重合単位は、未反応である1つ以上のビニル基(すなわち、重合反応に関与しなかった、及び依然として無傷であるビニル基)を有するであろうとまた熟慮される。
【0068】
ポリマービーズ中のポリマーは、ビーズの中心領域とビーズの外側シェルとの間で多官能性ビニルモノマーの重合単位の比較的均一な分布を有する。この分布は、次の通り評価され得る。ビーズの半径はRと定義される。シェルは、0.8*R~Rのビーズの中心からの距離に位置するビーズの領域と定義される。コアは、0~0.5*Rのビーズの中心からの距離に位置するビーズの領域と定義される。シェル1、コア3、及び中間領域2の識別は、図1に例示される。
【0069】
シェル中に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の濃度は、CMSHELLと表示され、コア中に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の濃度は、CMCOREと表示される。MRと表示される、動径分布係数は、CMCOREで割られたCMSHELLの商と定義される:
MR=CMSHELL/CMCORE
【0070】
CMCORE及びCMSHELLは、任意の好都合な単位、例えば1立方センチメートル当たりのミリモルで特徴付けられ得る。実際には、商MRが重要な量であるので、同じ単位が両CMSHELL及びCMCOREについて用いられる限り、CMSHELL及びCMCOREについて用いられる単位は重要ではない。
【0071】
商MRは、0.9以上;好ましくは0.95以上である。商MRは、1.1以下;より好ましくは1.05以下である。
【0072】
多官能性ビニルモノマーの重合単位は、ポリマービーズの全体にわたって比較的均等に分布している。しかしながら、多官能性ビニルモノマーのいくつかの重合単位においては、ビニル基の全てがビーズの形成中に重合反応に関与し、そして一方、多官能性ビニルモノマーの他の重合単位においては、少なくとも1つのビニル基は未反応のままであるのに少なくとも1つのビニル基はビーズの形成中に重合反応に関与した。未反応ビニル基の空間分布が、本発明の特徴である。
【0073】
未反応ビニル基の分布は、次の通り特徴付けられる。ビーズのコア及びシェルは、上に記載されたように定義される。代表的なビーズが、ビーズの中心を含む横断面を明らかにするために切開される。ラマン分光法が、ビーズの微小領域に関して行われる。PCCは、炭素-炭素二重結合の伸縮による1635cm-1でのラマンピークの高さである。PARは、芳香環の伸縮による1000cm-1でのラマン基準ピークの高さである。商V1=PCC/PARは、ポリマー内の二重結合の行き渡り(prevalence)を特徴付ける。量V1SHELLは、シェルにおけるV1の平均であり、量V1COREは、コアにおけるV1の平均である。未反応炭素-炭素二重結合について、動径分布係数は
、VR=V1SHELL/V1COREである。ラマン分光法を行う場合に、ビーズは、溶媒中で任意選択的に膨潤させられ;溶媒は、任意選択的に完全に重水素化されている。
【0074】
上記のラマン分光法の正確さは、ポリマービーズからいかなる残存未重合一官能性モノマーをも除去し、例えばアセトンで洗浄することによって残存スチレンを除去し、アセトンを除去するためにビーズを乾燥させることによって最適化され得ると考えられる。この洗浄工程は、溶媒中で膨潤させられていないビーズに関してラマン分光法を行うことが意図される場合にとりわけ有用である。
【0075】
VRは、2.5以上、好ましくは2.7以上;より好ましくは2.9以上である。好ましくは、VRは、10以下;より好ましくは5以下である。
【0076】
ポリマービーズは、好ましくは、0.8以上;より好ましくは0.85以上;より好ましくは0.9以上;より好ましくは0.95以上の平均球形度を有する。
【0077】
ビーズのコア領域と、ビーズのシェル領域との間の差を評価する別の方法は、次の通りである。コア、シェル、及び量PARは、上記の通り定義される。サンプルは、完全重水素化トルエンで膨潤させられる。シェル領域はコア領域よりも低い架橋濃度を有すると考えられ、それ故シェル領域は膨潤プロセスにおいてより多くの溶媒を吸収すると予期される。量PCDは、トルエンにおける炭素-重水素結合の伸縮による2122cm-1でのラマンピークの高さである。商V2=PCD/PCHは、ポリマーと比べて重水素化トルエンの行き渡りを表す。
【0078】
商V2は、次の通り体積当たりの質量商(MPVQ)に変換することができる。重水素化トルエン中の既知濃度の線状ポリスチレンの基準溶液が製造される。この標準溶液について、重水素化トルエンの体積当たりの質量(MPVTOLREF)及びポリスチレンの体積当たりの質量(MPVPSREF)は両方とも既知であり、商はMPVQREF=MPVTOLREF/MPVPSREFである。また、標準溶液についての商が測定され、V2REFと表示される。次に、任意の特定の実験サンプルについて、商V2は、次の通りMPVQに変換することができる:
MPVQ=V2*MPVQREF/V2REF
【0079】
重水素化トルエンで膨潤したビーズにおいて、シェルにおけるMPVQの平均値はMPVQSHELLであり、コアにおけるMPVQの平均値はMPVQCOREである。次に、溶媒についての動径分布係数はRDFS=MPVQSHELL/MPVQCOREである。好ましくは、RDFSは2.5以上である。好ましくは、RDFSは10以下である。
【0080】
ビーズの不均等性を示す別の方法は、核磁気共鳴(NMR)分光法を用いる。NMR結果の解析は、以下の予備観察をベースとする。クロロホルム(CHCl)が純粋な状態で研究される場合、特徴的な化学シストがNMRスペクトルにおいて観察される。クロロホルムがトルエンとのブレンドで研究される場合、より大きい変化がブレンド中のトルエンのより高い割合で観察される状態で、クロロホルムの化学シフトの変化が観察される。スチレン系モノマーの重合単位でできたポリマー粒子中へクロロホルムが吸収される場合、クロロホルムの化学シフトは、クロロホルムとトルエンとのブレンドの場合に観察されたのと同じようにシフトすることが観察される。ポリマー中へ吸収されたクロロホルムの化学シフトと、純クロロホルムの化学シフトとの間の差(「DIFF1」)が観察され、その差DIFF1が大きければ大きいはど、クロロホルム分子を取り囲んでいる接近領域においてスチレン系モノマーの重合単位の割合がより大きいと結論される。
【0081】
スチレン系モノマーの重合単位を含む非官能化コポリマーの不均等性は、次の通りNMRを用いて研究され得る。ポリマービーズは、クロロホルムで膨潤させられる。いくつかのサンプルにおいて、各ピークがその独自の化学シフト及びそれ故その独自のDIFF1の値を有する状態で、2つの異なるピークがクロロホルムについて観察される。各ピークはビーズ内の異なる領域を表すと考えられる。より大きいDIFF1を有するピークは、比較的より大きい割合のスチレン系モノマーの重合単位によって取り囲まれたクロロホルム分子を表すと考えられ、比較的より少ないクロロホルムが粒子のその領域へ吸収されていることを示し、順繰りにその領域がより高い密度の架橋点を有することを示す。同様に、より小さいDIFF1を有するピークは、比較的より低い密度の架橋点の領域に位置するクロロホルム分子を表すと考えられる。
【0082】
ポリマービーズの不均等性はまた、顕微鏡法によっても観察され得る。例えば、光学顕微鏡法及び偏光顕微鏡法はそれぞれ、粒子の中心からの距離とともに変わる不均等性を示す。
【0083】
本発明のフリーラジカル重合において製造されたポリマーの好ましい使用は、イオン交換樹脂を製造するための変換プロセスに使用されることである。イオン交換樹脂は、次のカテゴリーに分類される。弱塩基性アニオン交換樹脂は、第一級、第二級、又は第三級であるペンダントアミノ基を有する。強塩基性アニオン交換樹脂は、ペンダント第四級アミノ基を有する。弱酸性カチオン交換樹脂は、ペンダントカルボン酸基を有する。強酸性カチオン交換樹脂は、ペンダントスルホン酸基を有する。
【0084】
典型的には、架橋ポリスチレンビーズなどのポリマービーズからの弱塩基性アニオン交換樹脂の調製において、ビーズは、有利には、ハロアルキル化、好ましくはハロメチル化、最も好ましくはクロロメチル化され、イオン活性交換基は、その後、ハロアルキル化コポリマーに結合させられる。典型的には、ハロアルキル化反応は、架橋付加コポリマーをハロアルキル化剤、好ましくはブロモメチルメチルエーテル、クロロメチルメチルエーテル又はホルムアルデヒドと塩酸との混合物、最も好ましくはクロロメチルメチルエーテルで膨潤させる工程と、次に、塩化亜鉛、塩化鉄、又は塩化アルミニウムなどのフリーデル-クラフツ(Friedel-Crafts)触媒の存在下でコポリマーをハロアルキル化剤と反応させる工程とからなる。典型的には、弱塩基性アニオン交換樹脂は、ハロアルキル化コポリマーを、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンと接触させることによって調製される。典型的には、強塩基性アニオン交換樹脂は、ハロアルキル化コポリマーを第三級アミンと接触させることによって調製される。
【0085】
典型的には、架橋ポリスチレンビーズなどのポリマービーズからの強酸性カチオン交換樹脂の調製において、ビーズは有利にはスルホン化される。一般に、ビーズが好適な膨潤剤を使用して膨潤させられ、膨潤したビーズが硫酸若しくはクロロスルホン酸若しくは三酸化硫黄又はそれらの混合物と反応させられる。
【0086】
ポリマービーズの不均質性は、好ましくは、スルホン化後に依然として存在する。これは、ビーズが水で膨潤させられることを除いて上に記載されたようなNMRによって観察することができる。CHClで膨潤させられた非官能化ポリマービーズの場合におけるように、本発明の官能化ビーズ中へ吸収される水の分子は、架橋点の異なる密度のビーズ内に2つの異なる環境があることを立証する、2つのピークを示す。
【0087】
好ましくは、ポリマービーズがスルホン化される場合、スルホン化プロセス後に、ポリマービーズは、ビーズの中心領域とビーズの外側シェルとの間に硫黄の比較的均一な分布を有する。この分布は、次の通り評価され得る。シェルに位置する硫黄の濃度はCSSHELLと表示され、コアに位置する硫黄の濃度はCSCOREと表示される。RDFS
と表示される硫黄についての動径分布係数は、CSCOREで割られたCSSHELLの商と定義される:
RDFS=CSSHELL/CSCORE
【0088】
CSCORE及びCSSHELLは、任意の好都合な単位、例えばポリマーの1グラム当たりの硫黄のミリモルで特徴付けられ得る。実際には、商RDFSが重要な量であるので、同じ単位がCSSHELL及びCSCOREの両方について用いられる限り、CSSHELL及びCSCOREについて用いられる単位は重要ではない。更に、CSSHELLに比例する測定(例えば、分光学的ピーク高さなどの)(PHSSHELLと表示される)を行うことができた。すなわち、PHSSHELL=k*CSSSHELLであり、kの値は、既知でなくてもよい。同じ測定方法がまた、CSCOREに比例する;すなわち、PHSCORE=k*CSSHELLである結果(PHSCOREと表示される)を生み出すことができたと熟慮される。比例定数kが両方の測定について同じものである限り、たとえkが未知であっても、RDFS=PHSSHELL/PHSCOREであるからRDFSを測定することができる。
【0089】
商RDFSは、好ましくは、0.8以上;好ましくは0.9以上、より好ましくは0.95以上である。商RDFSは、好ましくは、1.2以下;より好ましくは1.1以下;より好ましくは1.05以下である。
【0090】
本発明のポリマービーズは様々な目的に有用であろうと熟慮される。官能化ポリマービーズは、イオン交換樹脂が有用である多くの目的にとって有用であろう。改善された物理的安定性-高い圧潰強度及び浸透圧応力に応じた低度の破壊-を有するイオン交換樹脂が、ほぼ全てのイオン交換樹脂エンドユーザーによって評価されるであろう。そのような樹脂は、例えば、水処理、クロマトグラフィ、及び触媒作用などの、様々なエンドユース用途に有用であろう。例えば、原子力産業においては、全ての供給業者が満たさなければならない、水処理のために使用されるイオン交換樹脂についての圧潰強度に関する規格が存在し、最高の可能な圧潰強度を有する樹脂を供給することができるものに競争上の優位性がある。
【0091】
例えば、一般に水処理において、使用-再生サイクル(そこで、ビーズは、異なるイオン形態/水含有量のためにサイズを変える)でのビーズ破壊度は低下するであろう。ビーズ破壊の減少は、ビーズと混ざった微粒子の量を低減するであろう。これは、エンドユーザーのために樹脂寿命並びにまた効率及び圧力降下を改善するであろう。
【0092】
イオン交換樹脂のための実質的にいかなる使用においても、機械的応力への耐性(高い圧潰強度)は、工業規模カラムにおけるビーズの塊から、又はポンプ、空気搬送系等によって加えられる機械的応力から生じ得るビーズ破壊を最小限にするであろう。
【0093】
本発明に従って製造される官能化ポリマービーズは、好ましくは、カチオン交換樹脂である。
【0094】
例えば、使用-再生サイクル(そこで、ビーズは、異なるイオン形態/水含有量のためにサイズを変える)でのビーズ破壊度は低下するであろう。ビーズ破壊の減少は、ビーズと混ざった微粒子の量を低減するであろう。これは、樹脂寿命を改善し、樹脂操作の効率を高め、及び官能化ポリマービーズのカラムを通して液体を移動させるために必要とされる圧力降下を低減するであろう。
【0095】
以下は、本発明の実施例である。
【実施例0096】
ラマン分光法は、次の通り行った。ラマン顕微鏡は、砂時計形体積からの信号を検出する。焦点でのビーズ直径は、およそ1マイクロメートルであり、被写界深度からの垂直解像度は、およそ5~10マイクロメートルである。およそ20マイクロメートルの深度までサンプル中を下方へレーザーの焦点を合わせた。高度の膨潤及び良好なスペクトル分解能を与える良好な溶媒である、重水素化トルエン中でビーズを膨潤させた。RenishawTMRS-1000機器を用いて、HeNeレーザー(25mW、633nm)、600g/mm回折格子、1064-エレメントTE冷却CCD検出器、及び100×ULWD(超長作動距離)対物鏡を使って、スペクトルを測定した。異なる位置でのスペクトルを、ビーズを保持する圧縮セルを移動させることによりビーズ直径をまたぐことによって手動により測定した。
【0097】
ビーズを、測定の間に完全に膨潤させて溶媒と平衡させた。ビーズを先ず、室温(およそ23℃)で2、3日間バイアル中で大過剰のトルエン-D8(30mgコポリマー及び200mgトルエン-D8)と平衡させ、次に溶媒から取り出し、かみそりの刃で半分にカットした。平坦な表面を、圧縮セル(Spectra-TechTM)のダイヤモンド窓上に裏返して置き、KalrezTMOリングで密封した。KalrezTMOリングは、トルエン溶媒中で最小限に膨潤した。半球形ビーズが溶媒中に浸るように2、3滴のトルエン-D8を半球形ビーズの周りに添加した。次に、ダイヤモンド圧縮セルの最上部を取り付け、ビーズの丸い表面にそれがちょうど触れるまで締め付けた。カットによって露出したビーズの表面上へレーザーの焦点を合わせることができるように、圧縮セルをラマン分析のためにひっくり返した。ULWD対物鏡の6mmの作動距離は、ダイヤモンド圧縮セルのステンレス鋼板とコポリマーサンプルとの間の距離のためにこの実験にとってちょうど十分なものであった。
【0098】
セルの略図を図2に示す。セルは、軸4の周りに円対称性を有する、円形物体である。ステンレス鋼構造物の上半分5及びステンレス鋼構造物の下半分6は、一緒にOリング7を固定する。ステンレス鋼構造物の上半分2及びステンレス鋼構造物の下半分3は、機械的装置(示されていない)によって一緒に保持される。ダイヤモンド窓8は、ステンレス鋼構造物5及び6における所定の位置に保持される。重水素化(D8)トルエン9は、Oリング7、ステンレス鋼構造物5及び6、並びにダイヤモンド窓8によって囲まれた空間を部分的に満たす。サンプル10は、半分にカットされているビーズである。サンプル10は、ダイヤモンド窓8の間の所定の位置に保持される。レーザービーム11の焦点は、サンプル10上へ合わされる。
【0099】
核磁気共鳴(NMR)分析は、P.J.O’Connorら,「1H NMR Characterization of Swelling in Cross-Linked Polymer Systems」,Macromolecules Volume 29,Number 24,Pages 7872-7884,1996によって;及びKenji Ogino and Risa.ya Sato,「NMR Analysis of Interaction Between Styrene-Divinylbenzene Gel Beads and Small Molecules」,Journal of Polymer Science,Vol.33,50 189-195,1995によって記載されているように行った。
【0100】
圧潰強度は、次の通り測定した。官能化ポリマービーズを、4日間50℃で100%湿度での空気と接触させた。次に、ビーズを脱イオン水で覆い、室温(およそ23℃)で1時間以上貯蔵した。単一ビーズを、室温で圧縮試験器の1つのプレート上に置き、ビーズを1滴の水で覆った。粒子が破砕するまでプレートを6.0mm/分でくっつけ、ピーク力を書き留める。この手順を少なくとも30ビーズについて繰り返し、平均ピーク力を
「圧潰強度」として報告する。試験装置は、中位-遅いモーター(2.5~63.5mm/分)を有する、ChatillonTM力試験器モデルTCD 200であった。力ゲージは、モデルDFGS10であった。
【0101】
浸透圧安定性(OS)は、次の通り測定した。官能化ポリマービーズを、室温(およそ23℃)で30分間水中のNaClの10重量%溶液との接触によって順化させた。NaCl溶液をデカンテーションし、湿った樹脂を網目スクリーンに通して500μm~710μmの直径を有する樹脂のサンプルを製造した。次に、4mlの樹脂を、内径10mm及び少なくとも60mmの長さの、垂直の真っ直ぐな壁のガラスカラムに入れた。カラムへ入れられたときに、全ての流体を1ml/秒でポンプ送液した。単一サイクルは、次の通りであった:流体が56秒間重力によりカラムから排出し;カラム中の樹脂を60秒間(カラムを満たすための4秒、溶液#1がカラムを通過する32秒、カラムを満たすための4秒、及び溶液#1がカラム中に静止した20秒の保持時間)溶液#1と接触させ;流体を16秒間でカラムから排出させ、カラムを10秒間水で逆洗し;静止水を8秒間カラム中に保持し;流体が56秒間重力によりカラムから排出し;カラム中の樹脂を60秒間(カラムを満たすための4秒、溶液#2がカラムを通過する32秒、カラムを満たすための4秒、及び溶液#2がカラム中に静止した20秒の保持時間)溶液#2と接触させ;流体を16秒間でカラムから排出させ、カラムを10秒間水で逆洗し;静止水を8秒間カラム中に保持した。試験を50サイクルについて繰り返した。溶液#1は、水中の15重量%HSOであった。溶液#2は、水中の15重量%NaOHであった。異なる溶液への暴露のサイクルは、いくつかの粒子を破壊させる。暴露のサイクル後に、ビーズを、500μn未満の直径の物体を通す篩(「500篩」)上に置く。500篩を通過した材料を、150μm未満の直径の物体を通す篩(「150篩」)上に置く。500篩上に保持された材料は、無傷ビーズと考えられ;この材料を105℃で16時間以上乾燥させ、次にデシケーター中でおよそ23℃に冷却し、次に秤量し;この重量をW無傷として報告する。150篩上に保持された材料は、ビーズの断片と考えられ;この材料を105℃で16時間以上乾燥させ、次にデシケーター中でおよそ23℃に冷却し、次に秤量し;この重量をW断片として報告する。浸透圧安定性は、
OS(%)=100×W断片/(W無傷+W断片
である。より低いOS値がより望ましい。
【0102】
スルホン化ポリマービーズ中の硫黄の分布は、エネルギー分散型X線分光法搭載走査型電子顕微鏡法(SEM-EDS)を用いて、次の通り測定した。走査型電子顕微鏡法(SEM)画像を、15keVで可変圧力モードでの日立3400 VP-SEMで集めた。EDXスペクトルを、SDD検出器を装備したThermo Noran System 6 EDSで集めた。Sの半径方向濃度は、次の通り測定した。IERの横断面を外科用メスで壊すことによって調製し;X線スペクトルマップを少なくとも4つのビーズからの横断面について集め;硫黄からの特徴的なX線についての正味カウント(バックグラウンドを差し引いた)信号を、X線スペクトルマップからビーズの中心を通ったスペクトル線の形について抽出し;正味カウントを半径方向距離の関数としてプロットした。
【0103】
以下の実施例に使用される原材料は、次の通りであった
ゼラチン=動物系ゼラチン、等電点およそ8.5、SOBEL NV(Rousselot)によって供給される商用グレード
PADMAC=ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)の水中の溶液(20重量%)、NALCOによって供給される商用グレード
CMMC=The Dow Chemical Companyによって製造される、カルボキシメチルセルロース
PVOH=Sekisui Specialty Chemicals製の、SELVOLTM 523ポリビニルアルコール
Tris=Fisher Scientificによって供給される、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、水中20重量%溶液
DVB=ジビニルベンゼン(純度 63重量%)
BPO=Arkemaによって供給される、ベンゾイルペルオキシド(純度 75重量%)
VPBA=Beijing Pure Chemicalによって供給される、4-ビニルフェニルボロン酸
pbw=重量部
苛性=NaOH、水中25重量%
【0104】
ポリマービーズは、およそ90重量%スチレンとおよそ10重量%DVBとから製造した。ポリマービーズを製造するために4つの異なるレシピを用いた。モノマー小滴の懸濁液の調製中に、いくつかの個々の成分又は部分混合物を、必要ならば、良好な混合を達成するために一時的に加熱したが、モノマー小滴の懸濁液は、およそ25℃で提供した。米国特許第4,444,960号明細書及び米国特許第4,623,706号明細書に記載されているように、ジェッティングによってモノマー小滴を水性媒体中で導入した。全てのレシピにおいて、小滴成分対水相成分の重量比は0.61:1であった。
【0105】
レシピを次の通りまとめる。「Comp.」は、比較を意味する。「塩基の添加」は、塩基を添加した時点でのポリマーへのモノマーの転化率(およそ)である。
【0106】
【表1】
【0107】
比較例1A及び1Bは、7以下のpHで重合を開始しなかった。比較例2A及び2Bは、pHを上げた塩基の2回の添加を有し、これらの添加の1つは、43%及び40%のモノマー転化率(すなわち、60%の前)で行った。ポリマービーズの製造方法の詳細は、次の通りであった:
【0108】
比較例1A及び1B(ゼラチン/PADMAC、高pH)
小滴組成は、次の通りであった:(小滴成分の総重量を基準とする重量%):
【0109】
【表2】
【0110】
水性媒体組成は、次の通りであった(水性媒体の総重量を基準とする重量%):
【0111】
【表3】
【0112】
水性懸濁重合を、次の通りモノマー小滴の懸濁液に関して行った。懸濁液を72℃に加熱し、反応進行度を監視した。ポリマーへの転化率が80~85%範囲になるとすぐに、懸濁液を92℃に加熱した。pHは10.2で始まり、9.5で終わった。1時間後に、懸濁液を周囲温度に冷却し、ビーズを脱水し、水で洗浄し、周囲温度で乾燥させた。
【0113】
スルホン化は、次の通り行った。100pbwのポリマービーズ、449pbwの水中の96重量%硫酸の溶液、5.2重量部の脱イオン水、及び35pbwのEDCを周囲温度で反応器に一つずつ添加し、135分間にわたって130℃に加熱した。系を210分間130℃に保持し、次に100℃に冷却した。100℃ですぐに、酸を除去し、及び水を導入するために、水和プロセスを開始した。水和は、50%酸カット、25%酸カット、及び次に水を使用して、段階的に行った。水和流体は周囲温度で添加されるので、バッチ温度は、水和の間に100℃から周囲温度までドリフトする。水和の後、水膨張ポリマービーズを周囲温度水、次に98℃水、次に周囲温度水で再び洗浄した。過剰の水を濾過し、水膨潤ポリマービーズを単離した。
【0114】
二重反復試験サンプルを製造し、1A及び1Bと表示した。
【0115】
比較例2A(CMMCのみ;43%及び84%でのNaOH添加):
小滴組成は次の通りであった:(小滴成分の総重量を基準とする重量%:
【0116】
【表4】
【0117】
水性媒体組成は、次の通りであった(水性媒体の総重量を基準とする重量%):
【0118】
【表5】
【0119】
水性懸濁重合を次の通り行った。懸濁液を83℃に90分間加熱し、次に10分間にわたって80℃に冷却し、反応進行度を監視した。反応進行度が40~45%範囲にあるとき、及び反応進行度(転化率)が80~85%範囲にあるときに苛性を添加した。ポリマーへの転化率が80~85%範囲になるとすぐに、反応系を92℃に加熱した。1時間後に、系を周囲温度に冷却し、ビーズを脱水し、水で洗浄し、周囲温度で乾燥させた。ポリマービーズを、比較例1Aと同じ手順を用いてスルホン化した。
【0120】
比較例2B(CMMC/PVOH/VPBA;42%及び85%転化率でのNaOH添加)。
モノマー小滴組成は、次の通りであった:(小滴成分の総重量を基準とする重量%):
【0121】
【表6】
【0122】
水性媒体組成は、次の通りであった(水性媒体の総重量を基準とする重量%):
【0123】
【表7】
【0124】
水性懸濁重合を次の通り行った。懸濁液を83℃に90分間加熱し、次に10分間にわたって80℃に冷却し、反応進行度を監視した。反応進行度が40~45%範囲にあるとき、及び反応進行度(転化率)が80~85%範囲にあるときに苛性を添加した。反応進行度が80~85%範囲になるとすぐに、反応系を97℃に加熱した。1時間後に、系を周囲温度に冷却し、ビーズを脱水し、水で洗浄し、周囲温度で乾燥させた。ポリマービーズを、比較例1Aと同じ手順を用いてスルホン化した。
【0125】
実施例3A及び3B(PVOH/VPBA;82%転化率でのTris添加)。
モノマー小滴組成は、比較例2Bでと同じものであった。水性媒体組成は、次の通りであった(水性組成物の総重量を基準とする重量%):
【0126】
【表8】
【0127】
水性懸濁重合を次の通り行った。懸濁液を83℃に90分間加熱し、次に10分間にわたって80℃に冷却し、反応進行度を監視した。反応進行度(転化率)が80~85%範囲になったときにTrisを添加した。反応進行度が80~85%範囲になるとすぐに、反応系を97℃に加熱した。1時間後に、系を周囲温度に冷却し、ビーズを脱水し、水で洗浄し、周囲温度で乾燥させた。ポリマービーズを、比較例1Aと同じ手順を用いてスルホン化した。二重反復試験サンプルを製造し、3A及び3Bと表示した。
【0128】
実施例4A(PVOH/VPBA;pH調整なし)。
モノマー小滴組成及び水性媒体組成は、実施例3Aでと同じものであった。水性懸濁重合を次の通り行った。懸濁液を83℃に90分間加熱し、10分間にわたって80℃に冷却し、反応進行度を監視した。反応進行度が80~85%範囲になるとすぐに、反応系を92℃に加熱した。1時間後に、系を周囲温度に冷却し、ビーズを脱水し、水で洗浄し、周囲温度で乾燥させた。ポリマービーズを、比較例1Aと同じ手順を用いてスルホン化した。
【0129】
実施例4B(PVOH/VPBA;pH調整なし)。
モノマー小滴組成は次の通りであった:(小滴成分の総重量を基準とする重量%):
【0130】
【表9】
【0131】
水性媒体の組成、重合手順、及びスルホン化手順は、実施例4Aでと同じものであった。
【0132】
ポリマービーズのラマン分光法の結果:C=C二重結合伸縮。
【0133】
サンプルを調製し、上に記載されたようなビーズの直径に沿った様々なポイントでラマンスペクトルを得た。PCCは、炭素-炭素二重結合の伸縮による1635cm-1でのラマンピークの高さであった。PARは、芳香環の伸縮による1000cm-1でのラマン基準ピークの高さであった。商V1=PCC/PARは、ポリマー内での二重結合の行き渡りを特徴付ける。図3は、比較例1BについてのV1対位置のプロットを示す。図4は、実施例4BについてのV1対位置のプロットを示す。
【0134】
図4は、実施例4Aがビーズの中央と比較してビーズの端で比較的高いV1の値を有することを示す。これは、実施例4Aがビーズの中央と比較してビーズの外周近くで未反応二重結合の比較的高い割合を有することを意味する。
【0135】
図3及び4に言及する際に、「ビーズの中心からの距離」は、ビーズの中心からの方向にかかわらず、絶対値であると本明細書では考えられる。したがって、マイナス0.9の横軸上の値を有するポイントは、0.9*Rの中心からの距離、プラス0.9の横軸上の値でのポイントと同じものを有すると考えられる。
【0136】
ビーズの中心近くのピーク高さと比べてビーズの外周近くの相対的ピーク高さは、次の通り評価した。V1の値を0.8*R~Rのビーズの中心からの半径方向距離でのポイントについて平均し、この平均をV1SHELLと表示した。同様に、V1の値を0~0.5*Rのビーズの中心からの半径方向距離でのポイントについて平均し、この平均をV1COREと表示した。次に、未反応ビニル基についての動径分布係数である、商を計算する:
VR=V1SHELL/V1CORE
図3のような曲線はVRの比較的低い値を有するであろうし、そして一方、図4のような曲線はVRの比較的高い値を有するであろうと熟慮される。
【0137】
ラマン結果を用いると、同様な評価は、RDFS、膨潤溶媒についての動径分布係数をもたらすためのCD伸縮対CH伸縮の比を用いて行うことができる。
【0138】
圧潰強度及び浸透圧安定性を評価するために、ポリマービーズを、上に記載された通り官能化した(すなわち、スルホン酸基を結合させた)。
【0139】
試験の結果は次の通りであった:
【0140】
【表10】
【0141】
実施例ポリマー3A、3B、4A、及び4Bは、全て、本発明の方法によって製造され、全てが3.5超のVRを有し、そして一方、比較ポリマーは2.1未満のVRを有した。実施例ポリマーはまた全て2.6超のRDFSを有し、そして一方、比較ポリマーは2.3未満のRDFSを有した。実施例ポリマーは、比較ポリマーと比べて優れた性能特性(すなわち、圧潰強度及び浸透圧安定性)を示した。
【0142】
スルホン化ポリマービーズのSEM-EDS試験の結果。試験されるビーズは、比較例2A及び2Bの並びに実施例4Aのコポリマーから製造されたスルホン化樹脂であった。全てのサンプルにおいて、SEM-EDS試験は、中心を通ってのビーズの横断面における硫黄の存在を示す画像をもたらす。これらの画像の目視検査は、硫黄が粒子の横断面の全体にわたって均等に分布していることを示した。また、横断面の直径ラインに沿った位置の関数としての硫黄含有量のグラフを生み出すために、画像はデジタル解析され得る。そのようなグラフは、硫黄含有量が直径ラインに沿って一定であることを示す。これらの結果は、硫黄の分布がビーズの全体にわたって一様であることを示す。したがって、本発明のビーズのいかなる改善された特性も、ビーズ中のスルホン酸基の分布におけるいかなる不均等性にもよらない。
【0143】
非官能化ポリマービーズに関するNMR分析の結果は次の通りであった。溶媒はCHClであった。比較の均一ビーズが試験された場合、ビーズ中へ膨らんだ溶媒に対応する、1つのピークがおよそ6.7ppmに観察され、遊離溶媒に対応する、第2ピークがおよそ7.2ppmに観察された。本発明のサンプルが試験された場合、7.2ppmでの遊離溶媒ピークが比較サンプルにおけるように観察されたが、本発明のサンプルにおいては、ビーズ中へ膨らんだ溶媒に対応するピークは、2つのピーク、6.7ppmよりも高いものと、6.7ppmよりも低いものとに分かれた。6.7ppmよりも上及び下の2つのピークは、吸収された溶媒が2つの異なる環境中に存在することを実証していると考えられる。1つの環境は比較的高度に架橋したコアであり、他の環境は比較的軽度に架橋したシェルであると考えられる。
【0144】
スルホン化ポリマービーズのNMR分析の結果は、次の通りであった。溶媒は水であった。均一である、比較サンプルにおいて、遊離水ピークがおよそ4.7ppmに観察され、ビーズへ吸収された水によるおよそ6.4ppmでのピークが観察された。本発明のポリマービーズが試験された場合、4.7ppmでの同じ遊離水ピークが観察されたが、6.4ppmでの単一ピークは、対のピーク、6.4ppmよりも低いものと、6.4ppmよりも高いものとによって取って代わられた。6.4ppmよりも上及び下の2つのピークは、吸収された溶媒が2つの異なる環境にあることを実証していると考えられる。1つの環境は比較的高度に架橋したコアであり、他の環境は比較的軽度に架橋したシェルであると考えられる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0144
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0144】
スルホン化ポリマービーズのNMR分析の結果は、次の通りであった。溶媒は水であった。均一である、比較サンプルにおいて、遊離水ピークがおよそ4.7ppmに観察され、ビーズへ吸収された水によるおよそ6.4ppmでのピークが観察された。本発明のポリマービーズが試験された場合、4.7ppmでの同じ遊離水ピークが観察されたが、6.4ppmでの単一ピークは、対のピーク、6.4ppmよりも低いものと、6.4ppmよりも高いものとによって取って代わられた。6.4ppmよりも上及び下の2つのピークは、吸収された溶媒が2つの異なる環境にあることを実証していると考えられる。1つの環境は比較的高度に架橋したコアであり、他の環境は比較的軽度に架橋したシェルであると考えられる。
(態様)
(態様1)
半径Rを有するポリマービーズであって、前記ポリマーが、前記ポリマーの重量を基準として、0.3重量%~20重量%の1種以上の多官能性ビニルモノマーの重合単位と、前記ポリマーの重量を基準として、80重量%~99.7重量%の1種以上の一官能性ビニルモノマーの重合単位とを含み、
(a)ここで、多官能性ビニルモノマーの前記重合単位が0.9~1.1の動径分布係数MRを有し、ここで、MR=CMSHELL/CMCORE(式中、CMSHELLは、0.8*R~Rのビーズの中心からの距離に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の平均濃度であり、及び式中、CMCOREは、0~0.5*Rのビーズの前記中心からの距離に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の平均濃度である)であり、並びに
(b)ここで、マルチビニルモノマーの前記重合単位中のビニル基のいくつかが未反応であり、前記未反応ビニル基が2.5以上の動径分布係数VRを有し、ここで、VRが前記ビーズに関して行われるラマン分光法測定によって決定され、ここで、
VR=V1SHELL/V1CORE
(式中、V1SHELLは、0.8*R~Rの前記ビーズの中心からの距離で行われる測定についての比V1の平均であり、式中、V1COREは、0~0.5*Rの前記ビーズの中心からの距離で行われる測定についての比V1の平均である)であり、
ここで、V1=PCC/PAR(式中、PCCは、炭素-炭素二重結合の伸縮によるラマン分光ピークの高さであり、PARは、1000cm -1 での芳香環の伸縮によるラマン分光基準ピークの高さである)である
ポリマービーズ。
(態様2)
前記ポリマービーズが、ゲル型樹脂を含む、態様1に記載のポリマービーズ。
(態様3)
前記一官能性ビニルモノマーが、1種以上のスチレン系モノマーを含む、態様1に記載のポリマービーズ。
(態様4)
前記多官能性ビニルモノマーが、1種以上のスチレン系モノマーを含む、態様1に記載のポリマービーズ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径Rを有するポリマービーズであって、前記ポリマーが、前記ポリマーの重量を基準として、0.3重量%~20重量%の1種以上の多官能性ビニルモノマーの重合単位と、前記ポリマーの重量を基準として、80重量%~99.7重量%の1種以上の一官能性ビニルモノマーの重合単位とを含み、
(a)ここで、多官能性ビニルモノマーの前記重合単位が0.9~1.1の動径分布係数MRを有し、ここで、MR=CMSHELL/CMCORE(式中、CMSHELLは、0.8*R~Rのビーズの中心からの距離に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の平均濃度であり、及び式中、CMCOREは、0~0.5*Rのビーズの前記中心からの距離に位置する多官能性ビニルモノマーの重合単位の平均濃度である)であり、並びに
(b)ここで、マルチビニルモノマーの前記重合単位中のビニル基のいくつかが未反応であり、前記未反応ビニル基が2.5以上の動径分布係数VRを有し、ここで、VRが前記ビーズに関して行われるラマン分光法測定によって決定され、ここで、
VR=V1SHELL/V1CORE
(式中、V1SHELLは、0.8*R~Rの前記ビーズの中心からの距離で行われる測定についての比V1の平均であり、式中、V1COREは、0~0.5*Rの前記ビーズの中心からの距離で行われる測定についての比V1の平均である)であり、
ここで、V1=PCC/PAR(式中、PCCは、炭素-炭素二重結合の伸縮によるラマン分光ピークの高さであり、PARは、1000cm-1での芳香環の伸縮によるラマン分光基準ピークの高さである)である
ポリマービーズ。
【外国語明細書】