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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101619
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
F16K31/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005623
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大岩 俊之
(72)【発明者】
【氏名】植田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 博之
(72)【発明者】
【氏名】耿 金群
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA07
3H062AA13
3H062BB04
3H062CC01
3H062DD03
3H062EE07
3H062FF05
3H062HH03
3H062HH07
(57)【要約】
【課題】高い精度で制御可能なバルブ装置を提供する。
【解決手段】バルブ装置100は、モータと、モータからの動力を減速する減速機構と、減速機構から動力が伝達される弁体2と、弁体2を収容するハウジング4と、を備え、弁体2は突起221を有し、ハウジング4は、突起221が接触可能なストッパ40を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータからの動力を減速する減速機構と、
前記減速機構から動力が伝達される弁体と、
前記弁体を収容するハウジングと、を備え、
前記弁体は突起を有し、
前記ハウジングは、前記突起が接触可能なストッパを有するバルブ装置。
【請求項2】
前記ストッパは、前記弁体の姿勢が可動範囲の端に設定された場合に前記突起と接触する請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記ストッパは、前記弁体の姿勢が可動範囲外に設定された場合に前記突起と接触する請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記モータの動作を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記弁体の指令変位量と前記弁体が実際に変位した実変位量との差に基づいて、前記指令変位量を補正する補正量を取得し、
前記実変位量は、複数の前記ストッパのうちの第1ストッパに前記突起が接触する第1姿勢から、複数の前記ストッパのうちの第2ストッパに前記突起が接触する第2姿勢に前記弁体が変位したときの前記弁体の実際の変位量である請求項2又は3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記弁体は、軸心を中心として回動するロータである請求項1又は2に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記ロータは、前記軸心に沿って延在する軸部と、当該軸部から前記軸心に直交する径方向に延在する平面と、を有し、
前記突起は、前記平面から前記軸心に沿って立設し、
前記ハウジングは、前記軸部が挿通される開口が形成された蓋部を有し、
前記ストッパは、前記ロータの周方向において前記突起と対向するように前記蓋部から前記平面に向けて突出している請求項5に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記ストッパは、前記開口から前記径方向の外側に延在している請求項6に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンを冷却する流体の制御に用いられるバルブとしてロータリ式バルブが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示のロータリ式バルブは、ロータと、ロータを収容するケーシングと、ケーシングを覆う蓋と、ロータを回転駆動する回転駆動装置(アクチュエータ)とを有する。アクチュエータは、モータと、モータの回転を減速する減速機構とを備える。減速機構は、ロータに接続される出力軸が同軸上に固定される出力歯車を有する。出力歯車には、蓋に設けられた角度ストッパが突き当てられる溝(突き当て部)が形成されている。製造時等に行われるイニシャライズ処理では、ロータを一方向に回転させることにより、出力歯車に形成された溝の一方の端部に角度ストッパを突き当てて全閉位置に対応するロータの最小角度位置が取得され、ロータを他方向に回転させることにより、溝の他方の端部に角度ストッパを突き当てて全開位置に対応するロータの最大角度位置が取得される。実際の制御では、ロータは、最小角度位置から最大角度位置の範囲内で回転角度が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-249810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のバルブでは、アクチュエータに設けられた角度ストッパを突き当て部に突き当てることにより実際の制御で使用する最大角度位置と最小角度位置と取得している。しかしながら、ロータの回転軸と出力軸との間にもバックラッシュ等が介在する。このため、ロータが実際に変位する実変位量と制御部等によって決定される指令変位量との間に差が生じる虞があり、バルブ制御の精度には改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い精度で制御可能なバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバルブ装置の特徴は、モータと、前記モータからの動力を減速する減速機構と、前記減速機構から動力が伝達される弁体と、前記弁体を収容するハウジングと、を備え、前記弁体は突起を有し、前記ハウジングは、前記突起が接触可能なストッパを有する点にある。
【0007】
本構成によれば、ハウジングが有するストッパと、弁体が有する突起とが接触する姿勢を基準として、例えばモータを駆動させる指令変位量を補正するための補正量を取得することが可能となる。つまり、ハウジングにおける弁体の実際(流体を制御する際の実際の環境により近い環境)の実変位量に基づいて指令変位量を補正する補正量を取得することができる。すなわち、補正量は、モータから弁体までに発生する誤差が考慮されている。したがって、高い精度によってバルブ装置を制御することができる。
【0008】
他の特徴として、前記ストッパは、前記弁体の姿勢が可動範囲の端に設定された場合に前記突起と接触してもよい。
【0009】
本構成によれば、例えば、上記した補正量は、弁体が流体を制御する際に実際に動く範囲に応じた値となり、補正量の精度が向上する。また、これとともに補正量を取得するための弁体の変位量が小さくなり、補正量の取得に要する時間を短縮することができる。
【0010】
他の特徴として、前記ストッパは、前記弁体の姿勢が可動範囲外に設定された場合に前記突起と接触してもよい。
【0011】
本構成によれば、突起とストッパとの接触回数を低減することが可能となり、突起及びストッパの摩耗を低減することができる。
【0012】
他の特徴として、前記モータの動作を制御する制御部を更に備え、前記制御部は、前記弁体の指令変位量と前記弁体が実際に変位した実変位量との差に基づいて、前記指令変位量を補正する補正量を取得し、前記実変位量は、複数の前記ストッパのうちの第1ストッパに前記突起が接触する第1姿勢から、複数の前記ストッパのうちの第2ストッパに前記突起が接触する第2姿勢に前記弁体が変位したときの前記弁体の実際の変位量であってもよい。
【0013】
本構成によれば、制御部は、ハウジングに設けられた第1ストッパと第2ストッパとに突起を実際に接触させることにより取得した実変位値と、指令変位量との差に基づいて、補正量を取得することができる。つまり、補正量の取得が容易であり、高精度でバルブ装置の制御が可能になる。
【0014】
他の特徴として、前記弁体は、軸心を中心として回動するロータであってもよい。
【0015】
本構成のように弁体が軸心を中心として回動するロータであれば、流体の制御に高い精度が要求されるため、上記構成が有効に機能する。
【0016】
他の特徴として、前記ロータは、前記軸心に沿って延在する軸部と、当該軸部から前記軸心に直交する径方向に延在する平面と、を有し、前記突起は、前記平面から前記軸心に沿って立設し、前記ハウジングは、前記軸部が挿通される開口が形成された蓋部を有し、前記ストッパは、前記ロータの周方向において前記突起と対向するように前記蓋部から前記平面に向けて突出してもよい。
【0017】
本構成によれば、ロータの回動によって突起とストッパとが接触する。また、径方向に延在する平面から立設させることにより突起を設け、蓋部から突出させることによりストッパを設けることができるため、それらの加工が容易である。また、ハウジングが蓋部とは別途有するハウジング本体にロータを収容し、ハウジング本体に蓋部を組み付けるだけでバルブ装置が完成するため、ロータと蓋部との組み付けも容易である。
【0018】
他の特徴として、前記ストッパは、前記開口から前記径方向の外側に延在してもよい。
【0019】
本構成によれば、ストッパを径方向の外側に延在させることで強度を確保しながら突起に対する接触面積を大きく確保することができるため、突起とストッパとがより確実に接触することができる。これにより、より高い精度で補正量を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るバルブ装置の構成を示す図である。
図2】実施形態に係るバルブ装置の構成を示す図である。
図3】実施形態に係るロータの第2ポジションを示す図である。
図4】実施形態に係るロータの第3ポジションを示す図である。
図5】実施形態に係るロータの第4ポジションを示す図である。
図6】実施形態に係るロータの構成を示す斜視図である。
図7】実施形態に係るロータの構成を示す平面図である。
図8】実施形態に係る蓋部の構成を示す平面図である。
図9】実施形態に係る第1ストッパの近傍を示す図である。
図10】実施形態に係る第2ストッパの近傍を示す図である。
図11】実施形態に係る突起とストッパ部との位置関係を模式的に示す図である。
図12】実施形態に係るアクチュエータの構成を示す図である。
図13】実施形態に係るバルブ装置の構成を示すブロック図である。
図14】実施形態に係るロータの回動角度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るバルブ装置の一例としてロータリバルブについて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0022】
〔基本構成〕
図1は、ロータリバルブ100の構成(縦断面)を示す図である。本実施形態において、ロータリバルブ100は、五方弁であって、例えば、自動車等の車両に搭載されるバッテリ、モータ等の冷却対象機器へ流れる流体の制御に用いられる。流体は、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却流体である。
【0023】
図1に示すように、ロータリバルブ100は、ハウジング本体1と、ハウジング本体1の内部空間に収容されるロータ2(弁体の一例)と、ハウジング本体1とロータ2との間に配置されるシール材3と、ハウジング本体1に固定される蓋部4と、ロータ2を駆動するアクチュエータ5と、アクチュエータ5の動作を制御するバルブ制御装置10(制御部の一例)とを備える。なお、ハウジング本体1と蓋部4とはハウジングを構成する。
【0024】
ロータ2は、アクチュエータ5の動作がバルブ制御装置10によって制御されることにより、軸心Xを中心として回動する。以下、軸心Xに沿う方向を「軸心方向DX」といい、軸心方向DXと直交する方向を「径方向DR」といい、ロータ2の周方向を「周方向DC」という。
【0025】
〔ハウジング本体〕
図2図5は、ロータリバルブ100の構成(横断面)を示す図である。図2図5に示すように、ハウジング本体1の壁部11には、周方向DCに沿って複数のポート12が形成されている。本実施形態では、4つのポート12が壁部11の周方向DCに沿って形成されており、4つのポート12は、径方向DRに沿って壁部11を貫通する。以下、4つのポート12をそれぞれ「第1ポート121」、「第2ポート122」、「第3ポート123」及び「第4ポート124」という。
【0026】
また、壁部11の蓋部4と対向する部分(底壁)には、第1ポート121、第2ポート122、第3ポート123及び第4ポート124とは異なる第5ポート125が形成されている。第1ポート121、第2ポート122、第3ポート123、第4ポート124及び第5ポート125の各々は、異なる外部流路に接続される。
【0027】
〔ロータ〕
図1図6及び図7に示すように、ロータ2は、軸心方向DXに沿って延在する軸部20、及び軸部20と一体回動可能なバルブ部21を有する。ロータ2は、樹脂を材料とし、軸部20とバルブ部21とが一体に形成されている。なお、図7は、蓋部4側から軸心方向DXに沿ってロータ2を見た図である。
【0028】
軸部20は、アクチュエータ5からの動力が入力される入力端部20aを含む。図6に示すように、入力端部20aには、周方向DCに沿って等間隔に配置された複数の断面三角状隆起が形成されている。
【0029】
バルブ部21は、軸部20から径方向DRに延在する天板部22と、天板部22から軸心方向DXに沿って入力端部20aから離れるように延在する本体部23とを含む。
【0030】
本体部23の内部には、流体が流通する2つの流路L1、L2が形成されている(図1参照)。以下、2つの流路をそれぞれ「第1バルブ流路L1」及び「第2バルブ流路L2」という。
【0031】
図2図5に示すように、ロータ2が所定姿勢の場合において、第1バルブ流路L1及び第2バルブ流路L2には流体が流れる。
【0032】
本実施形態では、図2に示すように、ロータ2の姿勢が第1ポジションP1に設定された場合、第2ポート122に供給される流体が、第1バルブ流路L1を通過して、第1ポート121へと流れるとともに、第5ポート125に供給される流体が第2バルブ流路L2を通過して第4ポート124へと流れる。
【0033】
図3に示すように、ロータ2の姿勢が第2ポジションP2に設定された場合、第3ポート123に供給される流体が第1バルブ流路L1を通過して、第1ポート121へ供給されるとともに、第5ポート125に供給される流体が第2バルブ流路L2を通過して第4ポート124へと流れる。
【0034】
図4に示すように、ロータ2の姿勢が第3ポジションP3に設定された場合、第2ポート122に供給される流体が、第1バルブ流路L1を通過して、第4ポート124へと流れるともに、第5ポート125に供給される流体が第2バルブ流路L2を通過して第1ポート121へと流れる。
【0035】
図5に示すように、ロータ2の姿勢が第4ポジションP4に設定された場合、第3ポート123に供給される流体が、第1バルブ流路L1を通過して、第4ポート124へと流れるとともに、第5ポート125に供給される流体が、第2バルブ流路L2を通過して第1ポート121へと流れる。
【0036】
なお、第2ポジションP2は第1ポジションP1から、第3ポジションP3は第2ポジションP2から、第4ポジションP4は第3ポジションP3から、ロータ2が軸心Xを中心として、所定の角度だけ第1方向(図2図5中の時計まわり)へロータ2が回動した姿勢を示す。
【0037】
上記のように、本実施形態では、ロータ2は、流体の流れを制御する際、第1ポジションP1、第2ポジションP2、第3ポジションP3及び第4ポジションP4のいずれかに姿勢を変化させる。すなわち、ロータ2は、第1ポジションP1と第4ポジションP4との間を可動範囲とする。つまり、流体の流れを制御する際のロータ2の最大回動角度(可動範囲の一方の端に相当する第1ポジションP1から他方の端に相当する第4ポジションP4に姿勢を変化させる際の回動角度)は、第1ポジションP1と第4ポジションP4とが軸心Xを中心としてなす角度である。以下、第1ポジションP1と第4ポジションP4とが軸心Xを中心としてなす角度(可動範囲)を第1角度θ1とする(図7参照)。
【0038】
図6及び図7に示すように、天板部22は、軸心方向DXに沿って見たとき円形状である。天板部22は、ハウジング本体1に固定された蓋部4(図1参照)と対向する天板側対向面22sと、天板側対向面22sから軸心方向DXに沿って入力端部20a側へ向けて立設する突起221とを有する(図6参照)。なお、天板側対向面22sは、軸部20から径方向DRに延在する。
【0039】
突起221は、軸心方向DXに沿って見たとき矩形状である。突起221は、径方向DR及び軸心方向DXに沿う平面である第1突起面221aと、周方向DCにおいて第1突起面221aと対向する第2突起面221bとを含む。以下、第1突起面221aと第2突起面221bとが軸心Xを中心としてなす角度を第2角度θ2とする(図7参照)。なお、本実施形態において、第1突起面221aは、ロータ2を加工、検査等する際の基準面として設定されている。
【0040】
〔蓋部〕
図1に示すように、蓋部4は、平板状であり、ハウジング本体1に固定される。蓋部4の中央部には、蓋部4を軸心方向DXに貫通する貫通穴4h(開口の一例)が形成されている。貫通穴4hには、ロータ2の軸部20が挿通される。
【0041】
図8図10に示すように、蓋部4は、ロータ2を収容するハウジング本体1に固定された状態においてロータ2と対向する蓋側対向面4s(平面の一例)と、蓋側対向面4sに設けられるストッパ部40とを有する。なお、図8は、蓋部4をロータ2側から軸心方向DXに沿って見た図であり、図9は、第1ストッパ41の近傍を拡大して示す図であり、図10は、第2ストッパ42の近傍を拡大して示す図である。なお、蓋側対向面4sには、蓋部4の剛性を確保するために複数のリブ(不図示)が設けられてもよい。
【0042】
ストッパ部40は、貫通穴4hから径方向DRの外側へ延在する(連続して設けられる)第1ストッパ41と第2ストッパ42とを含む。図9及び図10に示すように、第1ストッパ41と第2ストッパ42とは、蓋部4の蓋側対向面4sから軸心方向DXに沿って立設する。詳しくは、第1ストッパ41及び第2ストッパ42は、蓋部4が、ロータ2を収容するハウジング本体1に固定された状態において、突起221と周方向DCにおいて対向するように、蓋側対向面4sからロータ2の天板側対向面22sに向けて突出している。
【0043】
図8に示すように、第1ストッパ41は、径方向DR及び軸心方向DXに沿う平面である第1ストッパ面41sを含む。本実施形態において、第1ストッパ面41sは、蓋部4を加工、検査等する際の基準面として設定されている。
【0044】
第2ストッパ42は、第1ストッパ面41sと周方向DCにおいて対向する第2ストッパ面42sを含む。以下、第2ストッパ面42sと第1ストッパ面41sとが軸心Xを中心としてなす角度を第3角度θ3とする。
【0045】
図11は、ロータ2の突起221と蓋部4のストッパ部40との位置関係を模式的に示す図である。図11に示すように、ロータ2を収容するハウジング本体1に蓋部4が固定された状態において、第1ストッパ面41sは、ロータ2の第1突起面221aと周方向DCにおいて対向し、第1突起面221aと接触可能である。本実施形態では、ロータ2の姿勢が可動範囲の一方の端に相当する第1ポジションP1(第1姿勢の一例)に設定された場合において、第1ストッパ面41sはロータ2の第1突起面221aと接触する。
【0046】
また、ロータ2を収容するハウジング本体1に蓋部4が固定された状態において、第2ストッパ面42sは、ロータ2の第2突起面221bと周方向DCにおいて対向し、第2突起面221bと接触可能である。本実施形態では、ロータ2の姿勢が可動範囲の他方の端に相当する第4ポジションP4(第2姿勢の一例)に設定された場合において、第2ストッパ面42sはロータ2の第2突起面221bと接触する。
【0047】
つまり、第3角度θ3は、図6を参照して説明した第1角度θ1(ロータ2の可動範囲)に第2角度θ2(突起221の第1突起面221aと第2突起面221bとがなす角度)を加算した角度に設定されている。なお、本実施形態では、第1ストッパ面41sは、軸心方向DXに沿って見たとき、ロータ2の可動範囲の端よりも外側に設けられる。詳しくは、第1ストッパ面41sは、ロータ2の可動範囲の端から第1突起面221aと第2突起面221bとなす角度(第2角度θ2)だけ離れた位置に設けられる(図6及び図7参照)。
【0048】
〔アクチュエータ〕
図12は、アクチュエータ5の構成を示す図である。図12に示すように、アクチュエータ5は、モータ51と減速機構52とを有する。モータ51は、電力が供給されて、ロータ2を回動させるための動力を生成する。減速機構52は、モータ51からの動力を所定の減速比で減速してロータ2に伝達する。
【0049】
減速機構52は、モータ51の出力軸51aと噛み合う第1ギア521と、第1ギア521と噛み合う第2ギア522と、第2ギア522と噛み合う第3ギア523とを含む。第3ギア523は、ロータ2の入力端部20aと嵌合する出力軸523aを含み、モータ51からの動力は、第1ギア521、第2ギア522及び第3ギア523を介して、第3ギア523の出力軸523aに伝達される。
【0050】
上記のように、出力軸523aには、ロータ2の入力端部20aが嵌合するため、出力軸523aに伝達された動力は、ロータ2の入力端部20aに伝達される。これにより、ロータ2が軸心Xを中心として回動する。なお、第3ギア523の出力軸523aとロータ2の入力端部20aとの間、及び、モータ51~第3ギア523(つまり、減速機構52)には、バックラッシュ等が設けられており、動力がズレて(遅れて又は進んで)伝達される場合がある。以下、減速機構52のバックラッシュ等により発生する動力伝達のズレを「第1伝達動力差」といい、第3ギア523の出力軸523aとロータ2の入力端部20aとの間のバックラッシュ等により発生する動力伝達のズレを「第2伝達動力差」という。
【0051】
〔バルブ制御装置〕
図13は、バルブ制御装置10の構成を示すブロック図である。図13に示すように、バルブ制御装置10は、モータ駆動部101、モータ制御部102及び記憶部103を有する。記憶部103は、例えば、不揮発性の半導体メモリで構成される。
【0052】
モータ駆動部101は、モータ51の駆動回路であって、モータ制御部102からの指令信号に応じてモータ51に電力を供給する。これにより、モータ51が駆動する。なお、モータ51は、フィードバック制御される。
【0053】
モータ制御部102は、例えば、ロータ2の現在の姿勢とモータ制御部102の上位システム(不図示)からの指令とに基づいて、指令された姿勢にロータ2を変化させるためのロータ2の回動角度(以下、「指令回動角度」(指令変位量の一例)という)を決定する。モータ制御部102は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成されている。
【0054】
図12を参照して説明したように、モータ51とロータ2との間には、バックラッシュ等が介在するため、モータ制御部102が決定した指令回動角度(バックラッシュが介在しないと仮定した場合のロータ2の回動角度、つまり、理論上の回動角度)とロータ2の実回動角度(実変位量の一例)とに差が生じる場合がある。
【0055】
このため、モータ制御部102は、指令回動角度を補正する補正量を取得するための補正量取得処理を実行する。補正量取得処理は、流体の流れを制御する処理(以下、「流体制御処理」という)の実行中以外に実行される。補正量取得処理は、例えば、ロータリバルブ100が搭載される車両の始動時、車両の停止時、ロータ2の位置喪失時(ロータ2の現在の姿勢をバルブ制御装置10が判定できなくなった時)等に実行される。補正量取得処理では、モータ制御部102は、ロータ2を実際に回動させ、ロータ2を実際に回動させときの指令回動角度に対する実回動角度の差に基づいて、指令回動角度を補正する補正量を取得する。
【0056】
詳しくは、図11に示すように、モータ制御部102は、ロータ2の姿勢を、第1突起面221aが第1ストッパ面41sに接触する第1ポジションP1に設定した後、第1ポジションP1から、第2突起面221bが第2ストッパ面42sに接触する第4ポジションP4に変化させる。これにより、モータ制御部102は、第1ポジションP1から第4ポジションP4に姿勢が変化したときのロータ2の実回動角度を取得する。なお、モータ制御部102は、例えば、モータ51の負荷変動に基づいて、ロータ2の姿勢が第4ポジションP4に変化(第2突起面221bが第2ストッパ面42sに接触)したか否かを判定する。
【0057】
つまり、モータ制御部102は、第1突起面221aが第1ストッパ面41sに接触する第1ポジションP1から第2突起面221bが第2ストッパ面42sに接触する第4ポジションP4に姿勢を変化させる際にロータ2が実際に回動した角度(本実施形態では、第1角度θ1)を実回動角度として取得する。
【0058】
また、モータ制御部102は、第1ポジションP1から第4ポジションP4にロータ2の姿勢を変化させた際のモータ駆動部101に対して出力した指令信号に対応する指令回動角度を取得する。
【0059】
本実施形態では、実回動角度は、指令回動角度に対して小さく、指令回動角度は、実回動角度よりも大きい回動角度が必要とされる。
【0060】
図11に示す例では、ロータ2を第1ポジションP1から第4ポジションP4に実際に回動させるための指令回動角度は、第1ポジションP1から第5ポジションP5へ変化させるするために必要な回動角度(以下、第4角度θ4とする)に相当する。つまり、図11に示す例において、モータ制御部102は、指令回動角度として第4角度θ4を取得する。指令回動角度は、例えば、モータ51が備えるセンサからの検知結果(例えば、モータ51の回転数に関する情報)に基づいて取得される。
【0061】
モータ制御部102は、指令回動角度及び実回動角度を取得すると、それらの差に基づいて、指令回動角度を補正する補正量を取得する。図11に示す例では、モータ制御部102は、第4角度θ4から第1角度θ1を減算した値を補正量αとして取得して補正量取得処理を終了する。なお、補正量αを示す情報は、モータ制御部102によって記憶部103に記憶される。
【0062】
流体制御処理の実行中、モータ制御部102は、上位システムからの指令に応じた指令回動角度(例えば、第1ポジションP1から第2ポジションP2へ変化させるための理論上の回動角度)を決定後、ロータ2に対する制御が設定条件に該当する場合、記憶部103に記憶された補正量αで補正した補正後の指令回動角度(以下、「補正後指令回動角度」という)を決定し、補正後指令回動角度に応じた指令信号を出力する。モータ駆動部101は、モータ制御部102が出力した指令信号に応じてモータ51を駆動する。
【0063】
設定条件は、モータ制御部102が決定した指令回動角度とロータ2の実回動角度とに差が生じるロータ2の制御の条件であって、設計者等によって予め設定される。本実施形態では、設定条件として、第1ポジションP1におけるロータ2を基準としたとき、第1方向へロータ2を回動させる場合は指令回動角度を補正量αで補正し、第2方向(第1方向とは反対方向)へ回動させる場合は指令回動角度に対する補正を行わないという条件が設定されている。なお、補正量は、指令回動角度が異なっていても同じ値とすることが好ましいが、指令回動角度に応じて異なった値としてもよい。また、例えば年1回のメンテナンス時に補正量を修正する等のプログラムを組み込んでいてもよい。
【0064】
以下、図14を参照して、ロータ2の実際の回動角度と補正後の指令回動角度との関係について説明する。図14は、ロータ2の回動角度(実際の回動角度と補正後の指令回動角度と)の時間変化を示すグラフであり、縦軸はロータ2の回動角度ω、横軸は時間tを示す。実線Vrは、ロータ2の実際の回動角度の時間変化を示し、破線Mrは、補正後の指令回動角度の時間変化を示す。なお、図14に示すβは、第1伝達動力差、すなわち、減速機構52のバックラッシュ等に起因する指令回動角度(理論上の回動角度)に対する実回動角度の差を示し、γは、第2伝達動力差、すなわち、第3ギア523の出力軸523aとロータ2の入力端部20aとの間のバックラッシュ等に起因する指令回動角度(理論上の回動角度)に対する実回動角度の差を示す。また、αは、第1伝達動力差βと第2伝達動力差γとを補正するため、予め取得された補正量を示す。補正量αは、第1伝達動力差βと第2伝達動力差γとに起因する回動角度の和に相当する。
【0065】
回動角度ω1は、ロータ2を実際に回動させる目標の回動角度を示し、回動角度ω2は、モータ制御部102からモータ駆動部101に対して出力された指令信号に対応する回動角度(補正後指令回動角度)を示す。図14に示すように、モータ制御部102は、回動角度ω1に対して補正量αで補正した回動角度ω2に対応する指令信号を出力することにより、ロータ2の実回動角度を目標の回動角度とすることができる。
【0066】
〔実施形態の作用効果〕
以上説明したように、本実施形態によれば、バルブ制御装置10は、蓋部4が有するストッパ部40とロータ2が有する突起221とが接触する姿勢を基準として、モータ51を駆動させる指令回動角度を補正する補正量を取得することが可能となる。つまり、ロータ2の実際(流体を制御する際の実際の環境により近い環境)の回動角度(実回動角度)に基づいて指令回動角度を補正する補正量を取得することができる。すなわち、補正量は、モータ51からロータ2までに発生する誤差が考慮されている。したがって、高い精度によってバルブ装置を制御することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ストッパ部40は、ロータ2の姿勢が可動範囲の端に設定された際に突起221と接触するため、補正量は、ロータ2が流体を制御する際に実際に動く範囲に応じた値となり、補正量の精度が向上する。また、これとともに、補正量を取得するためのロータ2の回動角度が小さくなり、補正量の取得に要する時間を短縮することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、バルブ制御装置10は、蓋部4に設けられた第1ストッパ41と第2ストッパ42とに突起221を実際に接触させることにより取得した実回動角度と指令回動角度との差に基づいて、補正量を取得することが可能になる。つまり、補正量の取得が容易であり、高精度でバルブ装置の制御が可能になる。
【0069】
また、本実施形態によれば、ストッパ部40は、ロータ2の周方向DCにおいて突起221と対向するように蓋部4の蓋側対向面4sから天板側対向面22sに向けて突出する。このため、ロータ2の回動によって突起221とストッパ部40とが接触する。また、径方向DRに延在する天板側対向面22sから立設させることにより突起221を設け、蓋部4から突出させることによりストッパ部40を設けることができるため、それらの加工が容易である。また、ロータ2及び蓋部4をハウジング本体1に組み付けるだけでロータリバルブ100が完成するため、ロータ2と蓋部4との組み付けも容易である。
【0070】
また、本実施形態によれば、ストッパ部40は、貫通穴4hから径方向DRの外側に延在する。このため、ストッパ部40は、強度を確保しながら突起221に対する接触面積を大きく確保することができる。この結果、突起221とストッパ部40とがより確実に接触することができる。これにより、より高い精度で補正量を取得することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、第1突起面221a及び第1ストッパ面41sが加工等の基準面として設定されている。このため、加工による誤差といったノイズをより低減することができる。したがって、補正量の精度が向上し、高い精度でロータリバルブ100を制御することができる。
【0072】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成してもよい(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0073】
(1)本実施形態では、突起221が1つでありストッパ部40が2つのストッパ(第1ストッパ41と第2ストッパ42と)である構成を例に説明したが、突起221が2つであり、ストッパ部40が1つのストッパであってもよい。
【0074】
(2)本実施形態では、バルブ装置の一例としてロータリバルブ100を例に説明したが、バルブ装置は、ロータリバルブ100に限定されず、例えば、流体が流れる流路を開閉する開閉弁であってもよい。
【0075】
(3)本実施形態では、五方弁のロータリバルブ100を例に説明したが、ロータリバルブ100は、三方弁、四方弁等であってもよい。ハウジング本体1(壁部11)に形成されるポート12の数は、ロータリバルブ100が制御する流体の方向の数に応じて適宜変更される。
【0076】
(4)また、図2図5を参照して説明した流体が流通する方向は、本実施形態で説明した場合に限定されず、逆方向であってもよい。
【0077】
(5)本実施形態では、突起221が天板側対向面22sに設けられる場合を説明したが、突起221が設けられる位置は、天板側対向面22sに限定されず、例えば、ロータ2の天板部22とは反対側の端に設けられてもよい。この場合、突起221は、天板部22から離れる方向へ向けて突出し、ストッパ部40はハウジング本体1の内部における蓋部4と対向する面(底面)に設けられてもよい。
【0078】
(6)本実施形態において、ロータ2の姿勢が可動範囲の一方の端に相当する第1ポジションP1に設定された場合において、第1ストッパ面41sがロータ2の第1突起面221aと接触するように第1ストッパ41が設けられ、ロータ2の姿勢が可動範囲の他方の端に相当する第4ポジションP4に設定された場合において、第2ストッパ面42sがロータ2の第2突起面221bと接触するように第2ストッパ42が設けられる構成を例に説明した。しかし、第1ストッパ41及び第2ストッパ42の少なくとも一方は、ロータ2の姿勢が可動範囲外に設定された場合に突起221と接触するように設けられてもよい。これにより、突起221と第1ストッパ41及び第2ストッパ42の少なくとも一方との接触回数を低減することができ、突起221と、第1ストッパ41及び第2ストッパ42の少なくとも一方との摩耗を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、バルブ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0080】
2 :ロータ(弁体)
4 :蓋部(ハウジング)
4h :貫通穴(開口)
4s :蓋側対向面(平面)
10 :バルブ制御装置(制御部)
20 :軸部
40 :ストッパ部
41 :第1ストッパ
42 :第2ストッパ
51 :モータ
52 :減速機構
100 :ロータリバルブ(バルブ装置)
221 :突起
DC :周方向
DR :径方向
X :軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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