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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101635
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】絶縁電線
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/04 20060101AFI20240723BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01B7/04
H01B7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005647
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】白井 瑞木
(72)【発明者】
【氏名】南雲 哲也
【テーマコード(参考)】
5G309
5G311
【Fターム(参考)】
5G309LA13
5G311AA04
5G311AB06
5G311AD03
(57)【要約】
【課題】絶縁性の確保と柔軟性の向上とを図ることができる絶縁電線を提供する。
【解決手段】絶縁電線1は、撚線により構成された導体部10と、導体部10の外周に設けられた絶縁部20とを備え、絶縁部20は、撚られた状態で一体化された同一素材よりなる複数本の樹脂紐21で構成され、各樹脂紐21と隣接する樹脂紐21とは断面視して紐径よりも小さい特定の密着幅で接合され、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、導体部10の外径をxとした場合に20x以上とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚線により構成された導体部と、前記導体部の外周に設けられた絶縁部とを備えた絶縁電線であって、
前記絶縁部は、撚られた状態で一体化された同一素材よりなる複数本の樹脂紐で構成され、各樹脂紐と隣接する樹脂紐とは断面視して紐径よりも小さい特定の密着幅で接合されている
ことを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
前記絶縁部は、前記複数本の樹脂紐が溶着により一体化され、
前記複数本の樹脂紐は、中心側となる内層と前記内層を覆う最外層とを有し、前記内層が前記最外層よりも柔軟性が高く、前記最外層が前記内層よりも融点が低い樹脂によって構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項3】
前記絶縁部は、前記複数本の樹脂紐が、前記複数本の樹脂紐以上の絶縁抵抗を有する接着剤又は粘着剤により一体化されている
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項4】
前記絶縁部は、前記複数本の樹脂紐が、前記複数本の樹脂紐以下のヤング率となる接着剤又は粘着剤により一体化されている
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項5】
前記導体部の外径をxとしした場合、前記複数本の樹脂紐の撚りピッチは20x以上とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両の電動化に伴い、電線の高電圧化及び大電流化が進んでいる。大電流化により電線は大径化しており、電線の柔軟性低下が問題となる。このような問題に対して、素線を撚り合わせてなる撚線によって電線の導体部を構成したものが提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
また、絶縁部を複数本の繊維によって構成した技術が提案されている(特許文献3参照)。この技術では、複数本の繊維の一部を融点が低い繊維とし、加熱により当該繊維が溶融して、その後の冷却によって固化することで、絶縁部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-7107号公報
【特許文献2】特開2018-145457号公報
【特許文献3】特開2018-125988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1,2に記載の絶縁電線は、導体部が撚線によって構成されていることから、導体部を1本の単線によって構成される場合と比較すると柔軟性の向上を図ることができる。しかし、導体部を撚線によって構成するだけでは、柔軟性の向上について充分とはいえなかった。
【0006】
そこで、特許文献3に記載の技術のように絶縁部を繊維によって構成することが考えられる。しかし、特許文献3に記載のものは、複数本の繊維のうち一部について融点が低い繊維としている。このため、融点が低い繊維に近い箇所において繊維同士の接合が強くなるが、融点が低い繊維に遠い箇所では繊維同士の接合が弱くなり易い。よって、電線全体で見ると繊維同士の接合度合いが疎らとなってしまい、屈曲時や外力が加わった場合には接合の弱い箇所で繊維間に隙間が生じてしまい、絶縁性に問題が生じ得る。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、絶縁性の確保と柔軟性の向上とを図ることができる絶縁電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る絶縁電線は、撚線により構成された導体部と、前記導体部の外周に設けられた絶縁部とを備えた絶縁電線であって、前記絶縁部は、撚られた状態で一体化された同一素材よりなる複数本の樹脂紐で構成され、各樹脂紐と隣接する樹脂紐とは断面視して紐径よりも小さい特定の密着幅で接合されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟性の向上を図ることができる絶縁電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る絶縁電線を示す斜視図である。
図2図1に示した構成の端面図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4】各種絶縁材料の厚さと破壊電圧との関係を示すグラフである。
図5】絶縁部を厚肉とした絶縁電線の例を示す図表であって、比較的紐径が大きい樹脂紐を用いた厚肉仕様の絶縁電線の例を示している。
図6】絶縁部を薄肉とした絶縁電線の例を示す図表であって、比較的紐径が小さい樹脂紐を用いた薄肉仕様の絶縁電線の例を示している。
図7】樹脂紐の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る絶縁電線1を示す斜視図であり、図2は、図1に示した構成の端面図である。図1に示すように、本実施形態に係る絶縁電線1は、導体部10と、絶縁部20とを備えて構成されている。
【0013】
導体部10は、導電性の素線11を撚って形成された撚線により構成されている。本実施形態において撚線は19本の素線11によって構成されている。なお、素線11の本数は適宜変更可能である。
【0014】
絶縁部20は、導体部10の外周に設けられたものである。絶縁部20は、絶縁性の材料で形成された複数本の樹脂紐21によって構成されている。複数本の樹脂紐21は、導体部10の外周において撚られた状態で互いに一体化されることで絶縁層を形成している。複数本の樹脂紐21は、溶着、又は、接着剤若しくは粘着剤によって一体化されている。なお、一体化が接着剤や粘着剤により行われる場合、接着剤や粘着剤は、絶縁抵抗が樹脂紐21以上のものが用いられることが好ましい。さらに、接着剤や粘着剤は、樹脂紐21以下のヤング率のものが用いられることが好ましい。
【0015】
また、複数本の樹脂紐21は、同一素材によって構成されている。すなわち、複数本の樹脂紐21のうち一部の樹脂紐21が他の樹脂紐21と異なる素材であることがない構成となっている。
【0016】
図2に示すように、絶縁部20は、導体部10との間に何ら介在物を有することなく、導体部10の外周側に直接設けられている。なお、図2において絶縁部20は、導体部10上に1層構造で設けられているが、これに限らず、2層以上に設けられていてもよい。
【0017】
図3は、図2の一部拡大図である。図3に示すように、各樹脂紐21は、断面視して隣接する樹脂紐21と所定の密着幅Wで接合されている。この密着幅Wは、樹脂紐21の紐径(直径)Dよりも小さい。
【0018】
このように、複数本の樹脂紐21によって構成される絶縁部20は、隣り合う樹脂紐21同士が密着幅Wで接合される。よって、各樹脂紐21は密着幅Wの部分以外では接合されておらず、絶縁電線1の曲げ時には非接合部分を利用して柔軟に曲がることとなる。
【0019】
さらに、上記したように複数本の樹脂紐21は同一素材で構成されている。このため、隣り合う樹脂紐21同士の接合度合いが均一になり易い。これにより、接合が強い箇所と弱い箇所とが混在し難く、接合が強過ぎて柔軟性が損なわれたり、接合が弱過ぎて屈曲時等に特定の樹脂紐21間に隙間が発生したりする可能性が低減される。
【0020】
加えて、密着幅Wは、所定値(例えば5kV)以上の破壊電圧を確保できるように設定されている。図4は、各種絶縁材料の厚さと破壊電圧との関係を示すグラフである。図4に示すように、絶縁体が塩化ビニル又はシリコンゴムで構成されている場合、破壊電圧を5kV以上とするためには絶縁体の厚さは0.2mm以上とする必要がある。よって、本実施形態に係る絶縁部20(複数本の樹脂紐21)が塩化ビニル又はシリコンゴムで構成されている場合において5kVの破壊電圧を確保するためには、密着幅Wは0.2mm以上とされる。同様に絶縁体が架橋ポリエチレン又はポリプロピレンで構成されている場合、破壊電圧を5kV以上とするためには絶縁体の厚さは0.125mm以上とする必要がある。よって、本実施形態に係る絶縁部20(複数本の樹脂紐21)が架橋ポリエチレン又はポリプロピレンで構成されている場合において5kVの破壊電圧を確保するためには、密着幅Wは0.125mm以上とされる。
【0021】
図5は、絶縁部20を厚肉とした絶縁電線1の例を示す図表であって、比較的紐径Dが大きい樹脂紐21を用いた厚肉仕様の絶縁電線1の例を示している。
【0022】
図5に示すように、まず導体部10のサイズ(断面積)が10mmであって外径xが4.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.00mm以上1.20mm以下であって、本数が15本以上18本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、20x以上20(x+2D)以下とされる。撚りピッチを20x以上とすることで、撚りピッチがきつくなり過ぎず柔軟性を確保し易くなるからである。また、撚りピッチを20(x+2D)以下とすることで、撚りピッチが緩くなり過ぎず溶着や接着時等において樹脂紐21同士の接合が不充分になってしまう事態を防止し易くなるためである。具体的に、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、90mm(=20×4.50)以上138mm(=20×(4.50+2×1.20))以下とされる。
【0023】
また、導体部10のサイズ(断面積)が12mmであって外径xが5.40mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.00mm以上1.20mm以下であって、本数が21本とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、108mm(=20×5.40)以上156mm(=20×(5.40+2×1.20))以下とされる。
【0024】
また、導体部10のサイズ(断面積)が16mmであって外径xが5.80mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.00mm以上1.20mm以下であって、本数が22本とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、116mm(=20×5.80)以上164mm(=20×(5.80+2×1.20))以下とされる。
【0025】
また、導体部10のサイズ(断面積)が20mmであって外径xが6.90mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.10mm以上1.32mm以下であって、本数が23本とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、138mm(=20×6.90)以上191mm(≒20×(6.90+2×1.32))以下とされる。
【0026】
また、導体部10のサイズ(断面積)が25mmであって外径xが7.20mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.30mm以上1.56mm以下であって、本数が21本とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、144mm(=20×7.20)以上206mm(≒20×(7.20+2×1.56))以下とされる。
【0027】
また、導体部10のサイズ(断面積)が30mmであって外径xが8.30mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.30mm以上1.56mm以下であって、本数が23本以上24本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、166mm(=20×8.30)以上228mm(≒20×(8.30+2×1.56))以下とされる。
【0028】
また、導体部10のサイズ(断面積)が35mmであって外径xが8.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.30mm以上1.56mm以下であって、本数が24本とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、170mm(=20×8.50)以上232mm(≒20×(8.50+2×1.56))以下とされる。
【0029】
また、導体部10のサイズ(断面積)が40mmであって外径xが9.60mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.40mm以上1.68mm以下であって、本数が25本とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、192mm(=20×9.60)以上259mm(≒20×(9.60+2×1.68))以下とされる。
【0030】
また、導体部10のサイズ(断面積)が50mmであって外径xが10.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.50mm以上1.80mm以下であって、本数が25本以上26本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、210mm(=20×10.50)以上282mm(=20×(10.50+2×1.80))以下とされる。
【0031】
また、導体部10のサイズ(断面積)が60mmであって外径xが11.60mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.50mm以上1.80mm以下であって、本数が27本以上28本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、232mm(=20×11.60)以上304mm(=20×(11.60+2×1.80))以下とされる。
【0032】
また、導体部10のサイズ(断面積)が70mmであって外径xが12.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.50mm以上1.80mm以下であって、本数が29本以上30本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、250mm(=20×12.50)以上322mm(=20×(12.50+2×1.80))以下とされる。
【0033】
また、導体部10のサイズ(断面積)が95mmであって外径xが14.80mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.60mm以上1.92mm以下であって、本数が31本以上33本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、296mm(=20×14.80)以上373mm(≒20×(14.80+2×1.92))以下とされる。
【0034】
また、導体部10のサイズ(断面積)が120mmであって外径xが16.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが1.60mm以上1.92mm以下であって、本数が34本以上36本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、330mm(=20×16.50)以上407mm(≒20×(16.50+2×1.92))以下とされる。
【0035】
図6は、絶縁部20を薄肉とした絶縁電線1の例を示す図表であって、比較的紐径Dが小さい樹脂紐21を用いた薄肉仕様の絶縁電線1の例を示している。
【0036】
図6に示すように、まず導体部10のサイズ(断面積)が10mmであって外径xが4.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.75mm以上0.90mm以下であって、本数が19本以上22本以下とされる。この場合においても複数本の樹脂紐21の撚りピッチは20x以上20(x+2D)以下とされる。すなわち、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、90mm(=20×4.50)以上126mm(=20×(4.50+2×0.90))以下とされる。
【0037】
また、導体部10のサイズ(断面積)が12mmであって外径xが5.40mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.55mm以上0.66mm以下であって、本数が32本以上34本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、108mm(=20×5.40)以上134mm(≒20×(5.40+2×0.66))以下とされる。
【0038】
また、導体部10のサイズ(断面積)が16mmであって外径xが5.80mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.70mm以上0.84mm以下であって、本数が28本以上30本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、116mm(=20×5.80)以上150mm(≒20×(5.80+2×0.84))以下とされる。
【0039】
また、導体部10のサイズ(断面積)が20mmであって外径xが6.90mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.45mm以上0.54mm以下であって、本数が47本以上52本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、138mm(=20×6.90)以上160mm(≒20×(6.90+2×0.54))以下とされる。
【0040】
また、導体部10のサイズ(断面積)が25mmであって外径xが7.20mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.75mm以上0.90mm以下であって、本数が32本以上34本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、144mm(=20×7.20)以上180mm(=20×(7.20+2×0.90))以下とされる。
【0041】
また、導体部10のサイズ(断面積)が30mmであって外径xが8.30mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.65mm以上0.78mm以下であって、本数が40本以上44本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、166mm(=20×8.30)以上197mm(≒20×(8.30+2×0.78))以下とされる。
【0042】
また、導体部10のサイズ(断面積)が35mmであって外径xが8.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.95mm以上1.14mm以下であって、本数が30本以上32本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、170mm(=20×8.50)以上216mm(≒20×(8.50+2×1.14))以下とされる。
【0043】
また、導体部10のサイズ(断面積)が40mmであって外径xが9.60mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.75mm以上0.90mm以下であって、本数が40本以上44本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、192mm(=20×9.60)以上228mm(=20×(9.60+2×0.90))以下とされる。
【0044】
また、導体部10のサイズ(断面積)が50mmであって外径xが10.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.85mm以上1.02mm以下であって、本数が39本以上42本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、210mm(=20×10.50)以上251mm(≒20×(10.50+2×1.02))以下とされる。
【0045】
また、導体部10のサイズ(断面積)が60mmであって外径xが11.60mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.85mm以上1.02mm以下であって、本数が43本以上47本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、232mm(=20×11.60)以上273mm(≒20×(11.60+2×1.02))以下とされる。
【0046】
また、導体部10のサイズ(断面積)が70mmであって外径xが12.50mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.95mm以上1.14mm以下であって、本数が41本以上45本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、250mm(=20×12.50)以上296mm(≒20×(12.50+2×1.14))以下とされる。
【0047】
また、導体部10のサイズ(断面積)が95mmであって外径xが14.80mmであるとき、樹脂紐21は、紐径Dが0.95mm以上1.14mm以下であって、本数が48本以上53本以下とされる。この場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは、296mm(=20×14.80)以上342mm(≒20×(14.80+2×1.14))以下とされる。
【0048】
なお、複数本の樹脂紐21の撚り方向は、導体部10の素線11の撚り方向に対して、同じ方向でも異なる方向でもよいが、絶縁電線1の柔軟性を考慮すると導体部10の素線11の撚り方向と同じであることが好ましい。
【0049】
次に、本実施形態に係る絶縁電線1の製造方法を説明する。まず、本実施形態に係る絶縁電線1を製造するにあたっては、複数本の素線11が撚られる。これにより、導体部10が形成される。次に、複数本の樹脂紐21が導体部10上に撚られる。このとき、例えば複数本の樹脂紐21は素線11の撚り方向と同一方向に撚られる。
【0050】
その後、樹脂紐21同士の接合が行われる。この工程において、例えば複数本の樹脂紐21は、融点以上に加熱される。または、接着剤や粘着剤が複数本の樹脂紐21の間に介在させられる。接着剤については、先端が細くされた注入器を用いて、各樹脂紐21間に注入塗布される。以上により、複数本の樹脂紐21が互いに一体化させられ、絶縁電線1が製造される。なお、ここで用いられる接着剤や粘着剤は、樹脂紐21以上の絶縁抵抗のもの、且つ樹脂紐21以下のヤング率のものが好ましい。
【0051】
このようにして、本実施形態に係る絶縁電線1によれば、絶縁部20は撚られた状態で一体化された複数本の樹脂紐21で構成され、各樹脂紐21と隣接する樹脂紐21とは断面視して紐径Dよりも小さい特定の密着幅Wで一体化している。このため、隣り合う樹脂紐21同士は特定の密着幅Wで接合されているものの、密着幅Wの部分以外では接合されておらず、曲げ時には非接合部分を利用して柔軟に曲がることとなる。加えて、複数本の樹脂紐21は同一素材によって形成されていることから、隣り合う樹脂紐21同士の接合度合いが均一になり易い。これにより、接合が強い箇所と弱い箇所とが混在し難く、接合が強過ぎて柔軟性が損なわれたり、接合が弱過ぎて屈曲時等に特定の樹脂紐21間に隙間が発生したりする可能性が低減される。従って、絶縁性の確保と柔軟性の向上とを図ることができる。
【0052】
また、複数本の樹脂紐21が接着剤又は粘着剤で一体化される場合、接着剤又は粘着剤は樹脂紐21以上の絶縁抵抗を有するものが採用されている。このため、例えば絶縁電線1を屈曲させた場合に隣り合う樹脂紐21同士が仮に離間してしまったとしても、離間領域に接着剤や粘着剤が存在するときには絶縁性を確保することができる。従って、より一層絶縁性を確保し易くすることができる。
【0053】
また、複数本の樹脂紐21が接着剤又は粘着剤で一体化される場合、接着剤又は粘着剤は樹脂紐21以下のヤング率のものが採用されている。このため、接着剤等によって柔軟性が損なわれ難くすることができる。
【0054】
また、導体部10の外径をxとした場合、複数本の樹脂紐21の撚りピッチは20x以上とされている。このため、撚りピッチがきつ過ぎて柔軟性が損なわれてしまう事態を抑制することができる。
【0055】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能であれば公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0056】
図7は、樹脂紐の変形例を示す断面図である。図7に示すように、樹脂紐22は、樹脂紐22の中心側となる内層22aと、内層22aを覆う外層(最外層)22bとを有する2層構造とされていてもよい。ここで、内層22aは外層22bよりも柔軟性が高い樹脂とされている。また、外層22bは、内層22aよりも融点が低い樹脂によって構成されている。このような樹脂紐22を用い複数本の樹脂紐22を一体化させる場合に溶着を行うことで、絶縁部20は、隣り合う樹脂紐22同士の外層22bによって樹脂紐22が良好に一体化し易く、しかも内層22aによって柔軟性の向上が図られる。従って、柔軟性の向上を図ると共に溶着による絶縁部20の良好な一体化を図ることができる。
【0057】
なお、図7に示す例において樹脂紐22は二層構造であるが、三層以上の構造であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :絶縁電線
10 :導体部
11 :素線
20 :絶縁部
21,22 :樹脂紐
22a :内層
22b :外層(最外層)
D :紐径
W :密着幅
x :外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7