(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010164
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル、光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/38 20060101AFI20240116BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G02B6/38
G02B6/44 301A
G02B6/44 341
G02B6/44 381
G02B6/44 386
G02B6/44 336
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188426
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2020056656の分割
【原出願日】2020-03-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】303040585
【氏名又は名称】株式会社オーシーシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日 信博
(72)【発明者】
【氏名】須藤 康
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光ファイバコネクタ同士を容易に接続することのできる光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】本発明に係る光ファイバ心線が軸線方向に挿通された金属管を備える金属管被覆光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ心線が挿通、固定されたフェルールと、軸線方向における一端部が前記金属管に対して軸線方向に移動可能な状態で前記金属管の外縁に装着され、他端部が前記フェルールと固定されたフェルール保持部と、を有するコネクタ部を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線が軸線方向に挿通された金属管を備える光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバ心線が挿通、固定されたフェルールと、軸線方向における一端部が前記金属管に対して軸線方向に移動可能な状態で前記金属管の外縁に装着され、他端部が前記フェルールと固定されたフェルール保持部と、を有するコネクタ部を備えた
光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記金属管の内部に前記光ファイバ心線が挿通された保護チューブが挿入され、
前記保護チューブの一端部は、前記金属管から突出している
請求項1に記載の光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記保護チューブの他端部の開口面は、軸線方向に対して傾斜する形状とされる
請求項2に記載の光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル。
【請求項4】
光ファイバ心線が軸線方向に挿通された金属管を備える光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ心線を挿通、固定するフェルールと、前記金属管を挿通するための軸線方向に延びる挿通孔を有するフェルール保持部と、を有するコネクタ部を備える光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記フェルール保持部の軸線方向における一端部を前記金属管に対して軸線方向に移動可能な状態で前記金属管の外縁に装着する工程と、
前記フェルール保持部の軸線方向における他端部を前記フェルールと固定する工程と、を含む
光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコネクタを取り付けた光ファイバケーブルの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルに取り付ける光ファイバコネクタの構造としては光ファイバ心線の周囲に抗張力体(ケブラー等の抗張力繊維)を巻き回し、その外周部に外被(ポリウレタン、ポリエチレン、PVC(Polyvinyl Chloride)等)を形成した光ファイバコードや光ファイバケーブルの先端に光ファイバコネクタを取り付けた構造が知られている。
【0003】
光ファイバコネクタは、光ファイバ心線を挿通して固定したフェルールと、フェルールを収容するプラグフレームと、フェルールの先端をプラグフレームの突き出し孔から軸方向前方側に付勢保持するスプリングを収容してプラグフレームに係合固定するストップリングと、ストップリングの後端部に嵌合し、光ファイバコードや光ファイバケーブルを保護するブーツとを備えている。光ファイバコードや光ファイバケーブルの抗張力体はカシメリングを介してストップリングの後端部に圧着固定され、外被は別のリングを介してカシメリングの後端部に圧着固定される。
【0004】
一方、光ファイバ心線を挿通した金属管被覆光ファイバケーブルが知られているが、金属管被覆光ファイバケーブルは高張力繊維の抗張力体を持たないため上記の構造の光ファイバコネクタを取り付けることができなかった。
【0005】
このため、当該金属管被覆光ファイバケーブルに光ファイバコネクタを取り付ける手段として、金属管の一部分を扁平に加工してストップリングの貫通部の両端に金属管の扁平部を設けて固定する手段(特許文献1)や、テーパー面を有するリテーナリングとストッパを介してストップリングに金属管を固定する手段(特許文献2)や、ストップリングの端部を金属管の上からかしめて金属管とストップリングを固定する手段(特許文献3)が知られている。
【0006】
光ファイバコネクタ同士はアダプタを介して接続される。光ファイバコードや光ファイバケーブルは光ファイバコネクタに内蔵されたスプリングにより双方のフェルールが突き合わされることで物理的に接続(Physical Contact)される。
【0007】
ここでフェルールの突き合わせ面での反射による戻り光の影響を低減するためにフェルールの端面に傾斜を付けて研磨する斜め研磨(APC(Angled Physical Contact)研磨)が行われている。斜め研磨したフェルール同士を突き合わせるためにはフェルール先端の向きを合わせた上で接続を行う必要がある。
【0008】
フェルールのフランジには、例えば軸線の回転方向に溝が切ってあり、プラグフレームの内壁面に形成された突起部と係合する。このとき斜め研磨したフェルールを取り付ける際にはフェルールの向きを定めた上でプラグフレームに取り付ける必要があるが、当該取り付け作業の途中でフェルールが軸線方向に対して回転してしまい間違った向きでプラグフレームに取り付けられてしまうおそれがあった。
【0009】
このようなプラグフレームに対してフェルールを位置決めする手段としては、フェルールのフランジ形状を上下に対して非対称にしてプラグフレームに組み込む際に上下の向きを容易に合わせる手段(特許文献4)や、フェルールと光ファイバ心線と光ケーブルを熱収縮チューブで一体化して軸線方向に対する回転方向の位置関係を固定する手段(特許文献5)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5-127046号公報
【特許文献2】特開平5-40212号公報
【特許文献3】特開平5-11144号公報
【特許文献4】特開2011-118348号公報
【特許文献5】特開2017-106985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、フェルールのフランジ形状を上下に対して非対称にし、プラグフレームもフランジに対応する形状とした場合、規格化された光ファイバコネクタを使用することが出来ず特注品を用意する必要があるため価格が高くなり入手が困難になるおそれがある。
【0012】
またフェルールと光ファイバ心線と光ファイバケーブルを熱収縮チューブで一体化した場合は規格品を用いることが出来るが、フェルール同士を付き合わせた場合にスプリングによる戻りしろ(スプリングバックする余裕)がないため突き合わせの密着度合いが阻害され、接続損失が大きくなるおそれがある。
【0013】
このような理由から、金属管被覆光ファイバケーブルに光ファイバコネクタを取り付ける際に、光ファイバコネクタ同士をアダプタを介して容易に接続する手段が望まれている。
【0014】
そこで本発明は、フェルールの位置決めを行うことで、光ファイバコネクタ同士を容易に接続することのできる光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る光ファイバ心線が軸線方向に挿通された、金属管を備える光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルは、前記光ファイバ心線が挿通、固定されたフェルールと、軸線方向における一端部が前記金属管に対して軸線方向に移動可能な状態に前記金属管の外縁に装着され、他端部が前記フェルールと固定されたフェルール保持部と、を有するコネクタ部を備えるものである。
これにより、2つの金属管被覆光ファイバケーブル同士を接続するにあたり互いのフェルールを突き合わせる際に、各フェルールのスプリングバックが阻害されない。
【0016】
上記した光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルにおいては、前記金属管と前記フェルール保持部の重なり部分の全部又は一部における軸線に対して垂直方向の断面の形状は、それぞれ前記金属管に対する前記フェルール保持部の軸線方向に対する回転を抑止する形状とされていることが考えられる。
これにより、フェルール保持部に固定されたフェルールが軸線方向に対して回転しない。
【0017】
上記した光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルにおいては、前記金属管の内部に前記光ファイバ心線が挿通された光ファイバ保護チューブが挿入され、前記光ファイバ保護チューブの一端部は、前記金属管から突出していることが考えられる。
これにより、光ファイバ心線が金属管から突出した光ファイバ保護チューブに挿通され、光ファイバ保護チューブの縁に光ファイバ心線が接触しても損傷することがない。
【0018】
上記した光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルにおいては、前記光ファイバ保護チューブの他端部の開口面は、軸線方向に対して傾斜する形状とされることが考えられる。
これにより、光ファイバ保護チューブの光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの断面への接触面積が小さくなり、光ファイバ心線を挿通しながら前記金属管に前記光ファイバ保護チューブを挿入することが容易になる。
【0019】
本発明に係る光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造方法は、光ファイバ心線が軸線方向に挿通された金属管を備える金属管被覆光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバ心線を挿通、固定するフェルールと、前記金属管を挿通するための軸線方向に延びる挿通孔を有するフェルール保持部と、を有するコネクタ部を備える光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造方法であって、前記フェルール保持部の軸線方向における一端部を前記金属管に対して軸線方向に移動可能な状態に前記金属管の外縁に装着する工程と、前記フェルール保持部の軸線方向における他端部を前記フェルールと固定する工程と、を含むものである。
当該製造方法によって製造された光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルも、上記した本発明に係る光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルと同様の作用が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル同士を容易に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの先端部の斜視図である
【
図2】実施の形態における金属管被覆光ファイバケーブルの断面図である。
【
図3】実施の形態における光ファイバコネクタの分解斜視図である。
【
図4】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル同士の接続についての説明図である。
【
図5】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程を示す説明図である。
【
図6】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程を示す説明図である。
【
図7】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程を示す説明図である。
【
図8】実施の形態におけるフェルール保持部装着後のカシメ前後の断面図である。
【
図9】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程を示す説明図である。
【
図10】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程を示す説明図である。
【
図11】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程を示す説明図である。
【
図12】実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態を次の順序で説明する。
<1.光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの構成>
<2.光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの接続方法>
<3.光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程>
<4.まとめ及び変形例>
【0023】
なお、説明にあたり参照する図面に記載された各構成は、本発明に係る要部の構成のみ抽出したものであり、図面は模式的なものに過ぎず、各構造の厚みと平面寸法の関係、比率等は一例に過ぎない。また図面に記載された構成は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば設計などに応じて種々な変更が可能である。
また、以下で一度説明した構成は、それ以降同一の符号を付して説明を省略することがある。さらに、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0024】
<1.光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの構成>
実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100の構成について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100の先端部の斜視図である。
図1に示すように、光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100は、金属管被覆光ファイバケーブル1と光ファイバコネクタ2を有しており、金属管被覆光ファイバケーブル1の先端部に光ファイバコネクタ2が接続されている。
【0025】
なお、以降の説明においては、光ファイバコネクタ2が接続される金属管被覆光ファイバケーブル1の先端方向を前方として前後方向を表記するものとする。
【0026】
金属管被覆光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線を挿通した金属管被覆光ファイバケーブルであり、なかには金属管の周囲に外装線を巻き回した外装付き金属管被覆光ファイバケーブルも用いられている。
本実施の形態では一例として、金属管被覆光ファイバケーブル1が外装付き金属管被覆光ファイバケーブルである例について説明する。
【0027】
図2は、本実施の形態における金属管被覆光ファイバケーブル1の断面図(
図1のX-X断面図)である。
図2に示すように、金属管被覆光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線3、金属管4、外装線5、押え巻きテープ6、及び外被7を有している。
【0028】
金属管被覆光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線3を挿通した金属管4(例えばステンレス鋼、ニッケル合金、銅、チタン、アルミニウム等)の周囲に複数の外装線5(例えば鉄線、鋼線等)が巻き回され、外装線5の上に押さえ巻きテープ6を配し、押さえ巻きテープ6の上に外被7(例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、塩化ビニル樹脂等)が形成されている。金属管4の内部には流動性の樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂や炭化水素系ポリマーの合成油等)が充填されている。
【0029】
次に光ファイバコネクタ2について、SC(Square-shaped Connector)コネクタの例について説明する。なお、本実施の形態では一例としてSCコネクタについて説明するが、光ファイバコネクタ2は、例えばMU(Miniature Universal Coupling)コネクタ、LC(Local Connector)コネクタ等、各種コネクタについて適用することができる。
【0030】
図3は、本実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100における光ファイバコネクタ2の分解斜視図である。
図3に示すように、光ファイバコネクタ2は、フェルール8、フェルール保持部9、ストップリング10、スプリング11、プラグフレーム12、カシメリング13、リング14、保護チューブ15、ブーツ16、及びつまみ(ハウジング)17を有している。
【0031】
フェルール8は、心線挿通部8a、挿入部8b、及びフランジ部8cを有している。
心線挿通部8aには、金属管被覆光ファイバケーブル1の光ファイバ心線3を挿通するための軸線方向に延びる挿通孔8dが形成されている。
挿入部8bには、軸線方向に延びる挿入孔8eが形成されている。挿入部8bは心線挿通部8aの後側に設けられており、挿入孔8eは挿通孔8dと連通している。また挿通孔8dの径は、挿入孔8eの径よりも小さくされている。
フランジ部8cは、心線挿通部8aの外周面に環状に設けられている。
【0032】
フェルール保持部9は、加圧等により変型可能とされ、小筒状部9aと大筒状部9bを有している。小筒状部9aは略筒状に形成され、軸線方向に延びる挿通孔9cを有している。また大筒状部9bも略筒状に形成され軸線方向に延びる挿通孔9dを有している。
大筒状部9bは小筒状部9aの後側に設けられており、挿通孔9cと挿通孔9dは連通している。大筒状部9bの挿通孔9dの径は小筒状部9aの挿通孔9cの径よりも大きくされている。
小筒状部9aの前端部9eは、フェルール8の挿入孔8eに挿入され固定される。また挿通孔9cには金属管被覆光ファイバケーブル1の光ファイバ心線3が挿通され、挿通孔9dには金属管4が挿通されることになる。なお、フェルール保持部9は金属材料であることが好ましい。
【0033】
ストップリング10は、収容部10aと挿入部10bを有している。収容部10aは、略筒状に形成され軸線方向に延びる挿通孔10cを有している。また挿入部10bも略筒状に形成され軸線方向に延びる挿通孔10dを有している。
挿入部10bは収容部10aの後側に設けられており、挿通孔10cと挿通孔10dは連通している。収容部10aの挿通孔10cの径は挿入部10bの挿通孔10dの径よりも大きくされている。収容部10aの挿通孔10cにはスプリング11が収容されており、スプリング11はフェルール8のフランジ部8cの後端に当接することでフェルール8を前側に付勢する。
【0034】
プラグフレーム12は、軸線方向に延びる挿通孔12aを有しており、挿通孔12aに後側からストップリング10の収容部10aが挿入されることで、ストップリング10にプラグフレーム12が装着される。
このとき挿通孔12aにフェルール8が挿通され、フェルール8のフランジ部8cの前端が挿通孔12aに設けられた図示しない支持部に当接することで、フェルール8の前方向への移動が規制される。
ストップリング10にプラグフレーム12が装着されると、フェルール8はスプリング11により前方に付勢され、プラグフレーム12の開口部12bからフェルール8の先端部8fが突出した状態となる。
【0035】
カシメリング13は、小径部13aと大径部13bを有している。小径部13aは略筒状に形成され、軸線方向に延びる挿通孔13cを有している。また大径部13bも略筒状に形成され軸線方向に延びる挿通孔13dを有している。大径部13bの径は小径部13aの径よりも大きくされている。
小径部13aは大径部13bの後側に設けられており、挿通孔13cと挿通孔13dは連通している。挿通孔13cと挿通孔13dには、金属管被覆光ファイバケーブル1の金属管4が挿通される。
大径部13bの挿通孔13dにストップリング10の挿入部10bが挿入される。
【0036】
カシメリング13の小径部13aの外周縁には金属管被覆光ファイバケーブル1の外装線5が配置され、環状に形成されたリング14が外装線5を小径部13aに対して押さえつけるように装着される。
【0037】
保護チューブ15は、軸線方向に延びる略筒状に形成されている。保護チューブ15の後端の開口面15aは、軸線方向に対して傾斜する形状とされている。保護チューブ15の開口面15aの端部から金属管被覆光ファイバケーブル1の金属管4に挿入され、保護チューブ15の挿通孔15bに光ファイバ心線3が挿通される。
保護チューブ15は、樹脂等で剛直形状を保った材料が好ましく、例えばPEEK(Poly Ether Ether Ketone)樹脂等により形成される。保護チューブ15は、剛直形状を有するので内部の光ファイバ心線3を保護するとともに、光ファイバ心線3よりも硬度が低いので端部に接触しても光ファイバ心線3が損傷するおそれがない。
【0038】
ブーツ16は軸線方向に延びる挿通孔16aを有している。挿通孔16aの後端部には金属管被覆光ファイバケーブル1が挿入され、前端部にはカシメリング13の大径部13bが挿入される。
【0039】
つまみ(ハウジング)17は軸線方向に延びる挿通孔17aを有しており、挿通孔17aの後側からプラグフレーム12が挿入され、つまみ(ハウジング)17はプラグフレーム12に対してブーツ16の先端部を覆うように装着される。
【0040】
<2.光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの接続方法>
実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100の接続方法について
図4を参照して説明する。
図4Aに示すように、光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100、100は互いにアダプタ200を介して接続される。
【0041】
光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100、100は互いにアダプタ200に挿入され、それぞれの光ファイバコネクタ2に内蔵された図示しないスプリング11によりスプリングバックが確保された状態で、双方のフェルール8が
図4Bに示すように突き合わされることで物理的に接続(Physical Contact)される。これによりフェルール8のそれぞれに設けられた挿通孔8aにそれぞれ挿通された光ファイバ心線3を接続することができる。
このとき、双方のフェルール8の各前端面8gは、例えば軸線の直交方向に対して平行となるように研磨(PC(Physical Contact)研磨)が行われる。
【0042】
また別のフェルール8の接続手法として、例えば
図4Cに示すように、フェルール8の突き合わせ面での反射による戻り光の影響を低減するために、フェルール8の各前端面8gに傾斜を付けて研磨する斜め研磨(APC(Angled Physical Contact)研磨)が行われることがある。前端面8gは、例えば軸線の直交方向に対して8度傾斜するように研磨され、研磨面8hを形成する。
このような研磨面8hを形成したフェルール8同士を突き合わせるときには、フェルール8の研磨面8hの向きを固定した上で接続を行うことで、フェルール8同士の接続が容易となる。そこで本実施の形態では、つまみ(ハウジング)17に対してフェルール8が位置決めされるような光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100及びその製造方法について説明する。
【0043】
<3.光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブルの製造工程>
本発明の実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100の製造工程について、
図5から
図12を参照して説明する。
図5から
図7、及び
図9から
図12は、
図1に示す光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100の光ファイバコネクタ2の側方2aを正面から見た図を示しており、説明の便宜上、フェルール8、フェルール保持部9、ストップリング10、カシメリング13、リング14、及び後述するテープ21については、軸線の直交方向からの軸線方向における断面として示している。
【0044】
図5Aに示すように、金属管被覆光ファイバケーブル1の外被7を剥ぎ取り、金属管4の周囲に設けられた複数の外装線5を覆うようにリング14が外嵌めされる。各外装線5は、リング14の前端縁14aで後方に折り返す。
【0045】
その後、各外装線5が折り返されたことで剥き出しとなった金属管4に光ファイバコネクタ2の部品であるカシメリング13、ストップリング10、スプリング11を順に外嵌めする。
【0046】
カシメリング13の挿通孔13dにストップリング10の挿入部10bを挿入し、カシメリング13に対してストップリング10を挿入する。またストップリング10の挿通孔10cにスプリング11を収容する。
【0047】
続いて
図5Bに示すように、折り返した各外装線5を外被4の周囲にビニルテープ20を巻き付けることで仮留めする。そして金属管4の前方側を切断して光ファイバ心線3を露出させる。
【0048】
そして
図6Aに示すように、保護チューブ15の挿通孔15bに光ファイバ心線3を挿通し、金属管4に保護チューブ15を挿入する。保護チューブ15は開口面15aの端部から金属管4に挿入し、前端部15cが金属管14から前方に突出する位置に配置する。
【0049】
続いて
図6Bに示すように、保護チューブ15が挿入された金属管4の前方部分4aをかしめて金属管4に対して保護チューブ15を固定する。これにより、前端部15cが金属管14から前方に突出した状態で保護チューブ15が金属管4に対して固定され、光ファイバ心線3が金属管4の縁に接触して損傷することが防止される。
【0050】
次に
図7Aに示すように、光ファイバ心線3をフェルール保持部9の挿通孔9cに挿通したうえで、金属管4の前方部分4aをフェルール保持部9の挿通孔9dに挿入する。
【0051】
図8Aは、前方部分4aを挿通孔9dに挿入した状態の断面図(
図7AのY-Y断面図)である。
図8Aに示すように、フェルール保持部9の中空部の先端側壁部9eと金属管4の前方部分4aには隙間が設けられている。
【0052】
続いて
図7Bに示すように、金属管4の前方部分4aとフェルール保持部9の大筒状部9bの重なり部分9fをかしめ、金属管4の前方部分4aとフェルール保持部9の大筒状部9bの重なり部分9fの全部または一部が軸線の垂直方向において非円形の形状で略同一の形状に成形する。
【0053】
図8Bは、かしめた後の前方部分4aと大筒状部9bの重なり部分9fの断面図(
図7BのZ-Z断面図)である。
図8Bに示すように、ここでは大筒状部9bの上からかしめ加工を行い、例えば大筒状部9bと前方部分4aを略同一の四角形状に成形している。これにより金属管4に対するフェルール保持部9の軸線方向に対する回転が抑止される。かしめ加工はフェルール保持部9をかしめてフェルール保持部材9と金属管4を同時にかしめて変形させてもよいし、フェルール保持部材9と金属管4を個別にかしめて変形させてもよい。
【0054】
なお、ここでの大筒状部9bと前方部分4aの成形方法はかしめ加工によらず、各種加工方法を用いてもよく、成形する形状も四角形だけでなく、三角形や六角形等の多角形、楕円形等、フェルール保持部9に対する金属管4の軸線方向に対する回転を抑止する形状であればよい。
【0055】
また大筒状部9bと前方部分4aの成形時において保護チューブ15は金属管4と密着して固定されるのでほとんど変型しない。これにより、挿通された光ファイバ心線3が保護チューブ15により保護される。
【0056】
かしめた後においてもフェルール保持部9の中空部の先端側壁部9eと金属管4の前方部分4aには隙間が設けられている。このように金属管4とフェルール保持部9は、互いを固定しない程度の変形に留めているため、フェルール保持部9は金属管4に対する回転が抑止された状態においても、金属管4に対して軸線方向の移動が可能となっている。
また、金属管4の端部(保護チューブ15の端部)と、フェルール保持部9の大筒状部9bの内筒部の底面との間には空間が確保されている。当該空間により、スプリング11がスプリングバックできる余裕しろが確保される。
【0057】
金属管4とフェルール保持部9をかしめた後、
図7Bに示すように、フェルール保持部材9が金属管4に対して移動しないように、テープ21によりフェルール保持部9の後端部と金属管4を仮留めする。
【0058】
続いて
図9Aに示すように、フェルール8の挿通孔8dに光ファイバ心線3を挿通して接着剤等で固定し、挿入孔8eに小筒状部9aの前端部9eを挿入して接着剤等で固定する。そしてフェルール8の前端面8gから突出した余分な光ファイバ心線3aを切断する。
【0059】
そして
図9Bに示すように、フェルール8の前端面8gに傾斜を付けて研磨面8hとなるようなAPC研磨を施す。
【0060】
上述の製造工程において、金属管4とフェルール保持部9がかしめられることで、フェルール保持部9の金属管4に対する回転が抑止されている。そのため、フェルール保持部9とフェルール8を固定することにより、フェルール8も金属管4に対する回転が抑止される。これに伴い、フェルール8の研磨面8hの、金属管4の軸線回りに対する向きが定められることになる。
【0061】
一体化された後、
図10Aに示すように、フェルール保持部9を金属管4に仮留めしていたテープ21を取り除く。
【0062】
その後、ストップリング10をフェルール8の先端部に移動し、プラグフレーム12と係合固定する。ストップリング10にプラグフレーム12が装着されると、フェルール8はスプリング11により前方に付勢され、プラグフレーム12の開口部12bからフェルール8の先端部8fが突出した状態となる。
また上述の製造工程により、フェルール8は金属管4に対して回転が抑止されている状態となるため、プラグフレーム12の軸線回りに対するフェルール8の研磨面8hの向きも定められることになる。
【0063】
これにより、
図4に示すように光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100同士を接続するにあたりフェルール8の先端面8hを突き合わせたときに、フェルール8の後方へのスプリングバックが確保されることになる。
【0064】
続いて
図10Bに示すように、カシメリング13をかしめてストップリング10と一体化して固定する。カシメリング13の小径部13aの外周に接着剤を塗布する。そして複数の外装線5を仮留めしていたビニルテープ20を除去して、各外装線5を前方に伸ばして小径部13aの外周に配置する。
【0065】
そして
図11Aに示すように、リング14を小径部13aまで移動させ、リング14を小径部13aに対してかしめることで、リング14、外装線5、カシメリング13を一体化して固定する。
【0066】
その後、
図11Bに示すように、固定された外装線5の外周に保護テープ22を巻き付け、金属管被覆光ファイバケーブル1の外被7の外径と同径となるように成型する。外被7の前端部7a、テープ巻きした外装線5、リング14、及びカシメリング13の小径部13aを覆うように外嵌めしておいた熱収縮チューブを収縮させることでブーツ16を成形する。なお、金属管被覆光ファイバケーブル1の外径が合う場合には規格品の光ファイバコネクタ用ブーツを用いることも可能である。
【0067】
最後に、
図12に示すように、プラグフレーム12につまみ(ハウジング)17を取り付ける。
以上の製造工程により、本実施の形態における光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100が製造される。
【0068】
<4.まとめ及び変形例>
以上の実施の形態の光ファイバ心線3が軸線方向に挿通された金属管4を備える光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100において、光ファイバ心線3が挿通、固定されたフェルール8と、軸線方向における一端部(大筒状部9b側)が金属管4に対して軸線方向に移動可能な状態に金属管4の外縁に装着され、他端部(小筒状部9a側)がフェルール8と固定されたフェルール保持部9と、を有するコネクタ部(光ファイバコネクタ2)を備える(
図7参照)。
これにより、
図4のように2つの光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100を接続するにあたり互いのフェルール8を突き合わせる際に、各フェルール8のスプリングバックが阻害されない。
従って、フェルール8を突き合わせる際の衝撃を緩和することができ、フェルール8の損傷を避けつつ光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100同士を容易に接続することができる。
【0069】
本実施の形態の光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100では、金属管4とフェルール保持部9の重なり部分9fの全部又は一部における軸線に対して垂直方向の断面の形状は、それぞれ金属管4に対するフェルール保持部9の軸線方向に対する回転を抑止する形状とされている(
図7、
図8参照)。
これにより、フェルール保持部9に固定されたフェルール8も軸線方向に対して回転しない。
従って、フェルール8の方向を定めて斜め研磨を行った後でフェルール8の向きを回転させずにプラグフレーム12に取り付けることができるので、フェルール8の研磨面8hの向きを間違えずに光ファイバコネクタ2を組み立てることが出来る。
【0070】
本実施の形態の光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100では、金属管4の内部に光ファイバ心線3が挿通された保護チューブ15が挿入され、保護チューブ15の一端部(前端部15c)は、金属管4から突出している(
図6参照)。
これにより、光ファイバ心線3が金属管4から突出した保護チューブ15に挿通され、金属管4の縁に光ファイバ心線3が接触しない。
従って、光ファイバ心線3が保護チューブ15により保護され、光ファイバ心線3が金属管4の縁に接触して傷付くことを防止することができる。
【0071】
本実施の形態の光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100では、保護チューブ15の他端部の開口面15aは、軸線方向に対して傾斜する形状とされる(
図3、
図6参照)。
これにより、保護チューブ15の金属管4の断面への接触面積が小さくなる。
保護チューブ15の開口面15aが斜めに形成されているので金属管4に保護チューブ15を容易に挿入することができ、光ファイバ心線3を挿通しながら金属管4に保護チューブ15を挿入することが容易になる。従って、光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100の製造における作業の効率化を図ることができる。
【0072】
また実施の形態として上述した光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100の製造方法は、フェルール保持部9の軸線方向における一端部(大筒状部9b側)を金属管4に対して軸線方向に移動可能な状態に金属管4の外縁に装着する工程と、フェルール保持部9の軸線方向における他端部(小筒状部9a側)をフェルール8と固定する工程(
図8B、
図9参照)と、を含む。
このような製造方法により製造された光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100によっても、上記した本実施の形態に係る光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、外装線5を有する金属管被覆光ファイバケーブルを例示したので外装線5をかしめてカシメリング13に固定することとしたが、外装線5を有しない金属管被覆光ファイバケーブルを用いる場合は、従来技術で用いられている各種手段(金属管の一部分を扁平に加工してストップリングの貫通部の両端に金属管の扁平部を設けて固定する手段やテーパー面を有するリテーナリングとストッパを介してストップリングに金属管を固定する手段やストップリングの端部を金属管の上からかしめて金属管とストップリングを固定する等)を用いてもよい。
【0074】
また本実施の形態では、光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル100の製造工程において、剥ぎ取った外被7を切断する例について説明したが、外被7は切断しないこととしてもよい。この場合、剥ぎ取った外被7は、環状部材等を介してリング14の後端部に圧着固定することとしてもよい。
【0075】
最後に、本開示に記載された効果はあくまでも例示であり限定されるものではなく、他の効果を奏するものであってもよいし、本開示に記載された効果の一部を奏するものであってもよい。
また本開示に記載された実施の形態はあくまでも例示であり、本発明が上述の実施の形態に限定されることはない。従って、上述した実施の形態以外であっても本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能なことはもちろんである。また実施の形態で説明されている構成の組み合わせの全てが課題の解決に必須であるとは限らない。
【符号の説明】
【0076】
1 金属管被覆光ケーブル
2 光ファイバコネクタ
3 光ファイバ心線
4 金属管
5 外装線
7 外被
8 フェルール
9 フェルール保持部
10 ストップリング
11 スプリング
12 プラグフレーム
13 カシメリング
14 リング
15 保護チューブ
15a 開口面
15c 前端部
16 ブーツ
17 つまみ(ハウジング)
100 光コネクタ付き金属管被覆光ファイバケーブル