(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101650
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ダイオード回路及び回路装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20240723BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20240723BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L29/91 K
H01L27/04 H
H01L27/06 311B
H01L29/91 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005671
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】池田 益英
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
【Fターム(参考)】
5F038AV04
5F038AV06
5F038BH02
5F038BH07
5F038BH09
5F038BH13
5F048AB10
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA01
5F048BB04
5F048BH05
5F048CC01
5F048CC06
5F048CC09
(57)【要約】
【課題】チップ面積の増大を抑えつつ被保護素子を保護できる十分な電流能力を有するダイオード回路の提供。
【解決手段】ダイオード回路1は、第1不純物領域83と第1ウェル301と第1プラグ領域302と第2導電型の埋め込み層304と第2プラグ領域33と第2不純物領域93と第3不純物領域94と、を含む。第1不純物領域83は、アノードラインL1及びカソードラインL2の一方である第1ラインに電気的に接続される第1導電型の不純物領域である。第3不純物領域94は、第1不純物領域83の第2方向DR2且つ第1導電型の第1ウェル301の第3方向DR3であって第1不純物領域83と第2不純物領域93の間の領域に設けられ、第2ラインに電気的に接続され、第2導電型である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードライン及びカソードラインの一方である第1ラインに電気的に接続される第1導電型の第1不純物領域と、
半導体基板に直交する方向を第1方向としたとき、前記第1不純物領域の前記第1方向に設けられる前記第1導電型の第1ウェルと、
前記第1ウェルの前記第1方向に設けられる第2導電型の第1プラグ領域と、
前記第1プラグ領域の前記第1方向に設けられる前記第2導電型の埋め込み層と、
前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向の反対方向を第3方向としたとき、前記第1プラグ領域の前記第2方向であって前記埋め込み層の前記第3方向に設けられる前記第2導電型の第2プラグ領域と、
前記第2プラグ領域の前記第3方向に設けられ、前記アノードライン及び前記カソードラインの他方である第2ラインに電気的に接続される前記第2導電型の第2不純物領域と、
前記第1不純物領域の前記第2方向かつ前記第1ウェルの前記第3方向であって前記第1不純物領域と前記第2不純物領域の間の領域に設けられ、前記第2ラインに電気的に接続される前記第2導電型の第3不純物領域と、
を含むことを特徴とするダイオード回路。
【請求項2】
請求項1に記載のダイオード回路おいて、
前記第1不純物領域の前記第2方向であって前記第1不純物領域と前記第2不純物領域の間の領域に設けられ、前記第1ラインに電気的に接続される前記第2導電型の第4不純物領域と、
前記第3不純物領域と前記第4不純物領域の間に設けられ、前記第1ラインに電気的に接続されるゲート層と、
を含むことを特徴とするダイオード回路。
【請求項3】
請求項1に記載のダイオード回路おいて、
前記第1不純物領域の前記第2方向であって前記第1不純物領域と前記第2不純物領域の間の領域に設けられ、
前記第1ラインに電気的に接続される前記第2導電型の第4不純物領域を含むことを特徴とするダイオード回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダイオード回路おいて、
前記半導体基板に直交する前記第1方向での平面視において、
前記第2不純物領域に囲まれる領域に、前記第1不純物領域及び前記第3不純物領域が設けられることを特徴とするダイオード回路。
【請求項5】
アノードライン及びカソードラインの一方である第1ラインに電気的に接続される第1導電型の第1不純物領域と、
半導体基板に直交する方向を第1方向としたとき、前記第1不純物領域の前記第1方向に設けられる前記第1導電型の第1ウェルと、
前記第1ウェルの前記第1方向に設けられる第2導電型の第1プラグ領域と、
前記第1プラグ領域の前記第1方向に設けられる前記第2導電型の埋め込み層と、
前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向の反対方向を第3方向としたとき、前記第1プラグ領域の前記第2方向であって前記埋め込み層の前記第3方向に設けられる前記第2導電型の第2プラグ領域と、
前記第2プラグ領域の前記第3方向に設けられ、前記アノードライン及び前記カソードラインの他方である第2ラインに電気的に接続される前記第2導電型の第2不純物領域と、
前記第1不純物領域の前記第2方向かつ前記第2プラグ領域の前記第3方向に設けられ、前記第1ラインに電気的に接続される前記第1導電型の第3不純物領域と、
を含むことを特徴とするダイオード回路。
【請求項6】
請求項5に記載のダイオード回路おいて、
前記第1不純物領域の前記第2方向に設けられ、前記第2ラインに電気的に接続される前記第1導電型の第4不純物領域と、
前記第3不純物領域と前記第4不純物領域の間に設けられ、前記第2ラインに電気的に接続されるゲート層と、
を含むことを特徴とするダイオード回路。
【請求項7】
請求項5に記載のダイオード回路おいて、
前記第1不純物領域の前記第2方向に設けられ、前記第2ラインに電気的に接続される前記第1導電型の第4不純物領域を含むことを特徴とするダイオード回路。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載のダイオード回路おいて、
前記半導体基板に直交する前記第1方向での平面視において、前記第2不純物領域に囲まれる領域に、前記第1不純物領域及び前記第3不純物領域が設けられることを特徴とするダイオード回路。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダイオード回路おいて、
前記第1ラインと前記第2ラインの間の電圧に基づく電圧が印加される回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオード回路及び回路装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バーチカル型のツェナーダイオードとラテラル型のツェナーダイオードを用いた保護素子が開示されている。当該保護素子では、ラテラル型のツェナーダイオードの降伏電圧がバーチカル型のツェナーダイオードの降伏電圧よりも高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された保護素子よれば、ラテラル型のツェナーダイオードの降伏電圧はバーチカル型のツェナーダイオードの降伏電圧よりも高くなり、バーチカル型ツェナーダイオードの降伏電流のみでは十分な電流能力を確保できなくなる。このため、被保護素子に電位差が生じ、被保護素子がダメージを受ける恐れがある。このような事態を防ぐためにバーチカル型ツェナーダイオードのオン抵抗を下げることも考えられるが、オン抵抗を下げた場合、素子のサイズを大きくする必要があり、チップ面積の増大により、コストの増加に繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、アノードライン及びカソードラインの一方である第1ラインに電気的に接続される第1導電型の第1不純物領域と、半導体基板に直交する方向を第1方向としたとき、前記第1不純物領域の前記第1方向に設けられる前記第1導電型の第1ウェルと、前記第1ウェルの前記第1方向に設けられる第2導電型の第1プラグ領域と、前記第1プラグ領域の前記第1方向に設けられる前記第2導電型の埋め込み層と、前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向の反対方向を第3方向としたとき、前記第1プラグ領域の前記第2方向であって前記埋め込み層の前記第3方向に設けられる前記第2導電型の第2プラグ領域と、前記第2プラグ領域の前記第3方向に設けられ、前記アノードライン及び前記カソードラインの他方である第2ラインに電気的に接続される前記第2導電型の第2不純物領域と、前記第1不純物領域の前記第2方向且つ前記第1ウェルの前記第3方向であって前記第1不純物領域と前記第2不純物領域の間の領域に、前記第1ウェルの一部と接するように設けられ、前記第2ラインに電気的に接続される前記第2導電型の第3不純物領域と、を含むダイオード回路に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、アノードライン及びカソードラインの一方である第1ラインに電気的に接続される第1導電型の第1不純物領域と、半導体基板に直交する方向を第1方向としたとき、前記第1不純物領域の前記第1方向に設けられる第1導電型の第1ウェルと、前記第1ウェルの前記第1方向に設けられる第2導電型の第1プラグ領域と、前記第1プラグ領域の前記第1方向に設けられる前記第2導電型の埋め込み層と、前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向の反対方向を第3方向としたとき、前記第1プラグ領域の前記第2方向であって前記埋め込み層の前記第3方向に設けられる前記第2導電型の第2プラグ領域と、前記第2プラグ領域の前記第3方向に設けられ、前記アノードライン及び前記カソードラインの他方である第2ラインに電気的に接続される前記第2導電型の第2不純物領域と、前記第1不純物領域の前記第2方向に設けられ、前記第1ラインに電気的に接続される前記第1導電型の第3不純物領域と、を含むダイオード回路に関係する。
【0007】
また本開示の他の態様は、上記に記載のダイオード回路において、前記第1ラインと前記第2ラインの間の電圧に基づく電圧が印加される回路と、を含む回路装置に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の第1構成例の断面視での概略図。
【
図2】本実施形態の第1構成例の平面視での概略図。
【
図4】本実施形態の回路装置にサージ電流が流れた際の電流経路を示す図。
【
図5】本実施形態のダイオード回路の電流電圧特性を示す図。
【
図6】従来技術を適用した場合のダイオード回路の断面視での概略図。
【
図7】従来技術を適用した場合のダイオード回路の平面視での概略図。
【
図8】従来技術を適用した場合のダイオード回路における電流電圧特性を示す図。
【
図9】本実施形態の第2構成例の断面視での概略図。
【
図10】本実施形態の第2構成例の平面視での概略図。
【
図11】第2構成例を適用した場合のダイオード回路の電流電圧特性を示す図。
【
図12】第2構成例においてドレインをシリサイドブロック化した場合の概略図。
【
図13】本実施形態の第3構成例の断面視での概略図。
【
図14】本実施形態の第3構成例の平面視での概略図。
【
図15】本実施形態の第4構成例の断面視での概略図。
【
図16】本実施形態の第4構成例の平面視での概略図。
【
図17】本実施形態の第5構成例の断面視での概略図。
【
図18】本実施形態の第5構成例の平面視での概略図。
【
図19】本実施形態の第6構成例の断面視での概略図。
【
図20】本実施形態の第6構成例の平面視での概略図。
【
図22】本実施形態の回路装置におけるサージ電流の放電経路を示す図。
【
図23】本実施形態のダイオード回路の他の構成例の断面視での概略図。
【
図24】本実施形態のダイオード回路の他の構成例の平面視での概略図。
【
図25】本実施形態のダイオード回路の他の構成例の断面視での概略図。
【
図26】本実施形態のダイオード回路の他の構成例の平面視での概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.ダイオード回路
図1に本実施形態のダイオード回路1の基板構成を示す。
図1は、基板2と基板2上に形成された素子を含むダイオード回路1の断面視における第1構成例である。基板2は、例えばSi基板であり、例えば不純物としてPがドープされたSi基板を用いることができる。基板2のことを半導体基板ともいう。また
図1に示すように、基板2を含む平面に対して下方を第1方向DR1とする。下方とは、基板2の厚み方向において表面から裏面への方向のことである。第1方向DR1の反対方向、即ち基板2を含む平面に対して上方を第3方向とする。即ち第1方向DR1、第3方向DR3は、半導体基板に直交する方向になっている。そして基板2を含む平面に沿う1方向を第2方向DR2とする。第2方向DR2は、後述の
図2に示すように、例えば第1不純物領域83と第2不純物領域93が交互に並んで配置される方向に沿う方向を向いている。そして基板2を含む平面に沿う方向であって、第2方向DR2と直交する方向を第4方向DR4とする。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のダイオード回路1は、第1不純物領域83と第1ウェル301と第1プラグ領域302と埋め込み層304と第2プラグ領域33と第2不純物領域93と第3不純物領域94と、を含む。またダイオード回路1は、アノードラインL1とカソードラインL2とを含む。
【0012】
アノードラインL1は、ダイオード回路1のアノード端子T1に接続される。カソードラインL2は、ダイオード回路1のカソード端子T2に接続される。アノード端子T1及びカソード端子T2は、例えばダイオード回路1を含む集積回路装置の端子であるが、これに限らず、集積回路装置の内部ノードであってもよい。アノードラインL1及びカソードラインL2は、集積回路装置の金属配線及びビアなどである。本実施形態においてダイオード回路1はツェナーダイオードとして用いられる。即ち、カソード端子T2の電位がアノード端子T1の電位より高い状態、つまり逆バイアスの状態で、ダイオード回路1が保護対象に接続される。以下、カソード端子T2の電位がアノード端子T1の電位より高ものとする。
【0013】
第1不純物領域83は、P型の不純物がドープされた不純物領域である。第1不純物領域83は、第1ウェル301の第3方向DR3側、即ち第1ウェル301上に設けられる。第1不純物領域83は、後述する第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2のアノード電極に対応しており、コンタクトANを介してアノードラインL1に接続される。
【0014】
第1ウェル301は、
図1に示すように第1不純物領域83の第1方向DR1に設けられたP型の領域である。P型は第1導電型であり、N型が第2導電型である。第1ウェル301は、第1方向DR1側で、後述する第1プラグ領域302や深いウェル303と接している。第1ウェル301は第1不純物領域83と同様に例えばP型であるが、その不純物濃度は第1不純物領域83の濃度よりも低くなっている。このように第1ウェル301は、半導体基板に直交する方向を第1方向DR1としたとき、第1不純物領域の第1方向DR1に設けられる。
【0015】
第1プラグ領域302は、
図1に示すように、断面視において、第1ウェル301の第1方向DR1側に第1ウェル301と接するように設けられている。但し、第1プラグ領域302と第1ウェル301の間に更に層が設けられることを妨げない。第1プラグ領域302は第2導電型、即ちN型である。このため、第1ウェル301と第1プラグ領域302はP型の領域とN型の領域が接しており、PNダイオードになっている。第1ウェル301と第1プラグ領域302を含むダイオードを第1ダイオードD1という。
図1に示すように、第1プラグ領域302は、第2方向DR2に方向に沿う方向で、N型である深いウェル303と接している。第1プラグ領域302の不純物濃度は後述する同じ第2導電型の第2不純物領域93の不純物濃度よりも低いが、深いウェル303の不純物濃度よりも高い濃度になっている。
【0016】
埋め込み層304は、
図1に示すように第1プラグ領域302の第1方向DR1に設けられたN型の領域である。埋め込み層304は、
図1に示すように、前述した第1ダイオードD1のカソード側である第1プラグ領域302を、第2プラグ領域33を介して、第2不純物領域93に接続する。
【0017】
第2プラグ領域33は、
図1に示すように、第1プラグ領域302の第2方向DR2であって埋め込み層304の第3方向DR3に設けられたN型の領域である。そして、第2プラグ領域33は、第3方向DR3側で第2不純物領域93と接している。なお、第2プラグ領域33は、
図1に示すように、第1プラグ領域302から見て第2方向DR2の反対方向側にも設けることができる。
【0018】
第2不純物領域93は、第2プラグ領域33の第3方向DR3に設けられたN型の領域である。第2不純物領域93は、第1ダイオードD1のカソード電極に対応しており、コンタクトCS1を介してカソードラインL2に接続される。
【0019】
第3不純物領域94は、
図1に示すように、第1不純物領域83の第2方向DR2に設けられている。そして、P型の第1ウェル301の第3方向DR3であって、第1不純物領域83と第2不純物領域93の間の領域に設けられている。ここで、第3不純物領域94は、第1ウェル301と第1方向DR1において少なくとも、第1ウェル301の一部と接するように設けられている。また第3不純物領域94は、第1不純物領域83から見て、第2方向DR2の反対方向側に設けることができる。第3不純物領域94は、第2ダイオードD2のカソード電極に対応しており、コンタクトCS2を介してカソードラインL2に接続される。第3不純物領域の導電型は、N型である。
【0020】
第3不純物領域94は、第3不純物領域94の第1方向DR1側に設けられるP型の第1ウェル301と接するように設けられている。第3不純物領域94はN型であるため、第3不純物領域94と第1ウェル301の接合部は、PNダイオードになっている。第3不純物領域94と第1ウェル301を含むダイオードを第2ダイオードD2という。この第2ダイオードD2は、第1ダイオードD1に対して並列に接続されている。
【0021】
ここで、前述した第1ダイオードD1は、PN接合部が第1不純物領域83の直下に設けられており、第1方向DR1からの平面視で、PN接合部と第1不純物領域83が重なって見える。このような上下方向において設けられたダイオードをバーチカル型のダイオードという。一方、第2ダイオードD2では、PN接合部は、第1方向DR1からの平面視で、第1不純物領域83と重ならない位置に設けられている。このようなダイオードをラテラル型のダイオードという。
【0022】
図2は本実施形態のダイオード回路1の平面視における概略図である。即ち、
図2は
図1に示すダイオード回路1を第3方向DR3側から見たときの概略図になっている。
【0023】
第1ウェル301は、
図2の破線で示すように平面視においては、第1不純物領域83と第3不純物領域94を含む形状になっている。即ち、破線は、平面視における第1ウェル301の外形を示しており、その外形の内側に第1不純物領域83と第3不純物領域94が配置されている。第1ウェル301、第1不純物領域83及び第3不純物領域94の各々は、例えば矩形である。
【0024】
第2不純物領域93は、平面視において、第1ウェル301、第1不純物領域83、及び第3不純物領域94を囲む形状で設けられる。同様に第2プラグ領域33は、平面視において、第1ウェル301、第1不純物領域83、及び第3不純物領域94を囲む形状で設けられる。第2プラグ領域33は、平面視においては、第2不純物領域93を含む形状になっている。即ち、第2プラグ領域33の外形は、第2不純物領域93の外形より外側であり、第2プラグ領域33の内形は、第2不純物領域93の内形より内側である。これらの領域の内形及び外形は、例えば矩形である。
【0025】
第5不純物領域103は、
図2に示すように、平面視において第2不純物領域93を囲むように設けられたP型の領域である。第5不純物領域103は、
図1に示すように断面視において、後述する同じP型の第3ウェル60の第3方向DR3側に設けられている。第5不純物領域103は、基板2の電位を設定するための不純物領域であり、例えばグランド等に電気的に接続される。
【0026】
第3ウェル60は、
図1に示すように第5不純物領域103の第1方向DR1側に設けられているP型の領域である。第3ウェル60は、
図2に示すように平面視において、第5不純物領域103とその一部が重なるように設けられている。第3ウェル60は、第1方向DR1側では、後述のエピタキシャル層305と接している。
【0027】
エピタキシャル層305は、
図1に示すように断面視において第2プラグ領域33と第3ウェル60と後述する埋め込み層306の間のスペースに設けられている。エピタキシャル層305は、基板2の上に成長させたP型の単結晶Siである。
【0028】
埋め込み層306は、断面視においてエピタキシャル層305の第1方向DR1側に設けられたP型の領域である。埋め込み層306は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)で成膜したP型不純物のドープされたアモルファスSiを活性化アニールすることで設けることができる。
【0029】
図3は、ダイオード回路1を保護回路として用いた回路装置10の一例である。
図3に示す回路装置10は、カレントミラー回路403、内部回路407、静電気保護回路406、電源400を含む。
【0030】
カレントミラー回路403は、P型のトランジスターTA1、TA2と、前述したダイオード回路1を含む。トランジスターTA1、TA2は例えばDMOS(Double Diffused Metal Oxide Semiconductor)のトランジスターである。
図3に示す回路のノードN1には電源電圧が供給され、ノードN2にはグランド電圧が供給される。電源電圧は、例えば電源400により60Vに設定されている。カレントミラー回路403及び内部回路407はノードN1とノードN2の間に直列に接続されており、カレントミラー回路403が内部回路407にバイアス電流を供給するようになっている。静電気保護回路406は、カレントミラー回路403及び内部回路407に対して並列に設けられている。
【0031】
カレントミラー回路403において、ダイオード回路1のカソード端子はトランジスターTA1、TA2のソースに接続されている。そして、ダイオード回路1のアノード端子T1は、トランジスターTA1のゲート及びドレインとトランジスターTA2のゲートに接続されている。サージ電圧が印加されていない通常動作においては、ダイオード回路1の降伏電圧によってトランジスターTA1、TA2のゲート-ソース間電圧が一定に保たれる。例えば、降伏電圧は6V程度である。このゲート-ソース間電圧によってカレントミラー回路403が内部回路407に一定のバイアス電流を供給する。
【0032】
図4は、
図3に示す回路装置10において、VDD端子に静電気等のサージ電圧が印加された場合に、どのような経路でサージ電流が流れるかについて説明した図である。VDD端子にサージ電圧が印加された場合、まずノードN1から、静電気保護回路406を介して、ノードN2へサージ電流が流れ、内部回路407やカレントミラー回路403にサージ電圧が印加されないようになる。このとき、サージ電流の大部分は静電気保護回路406を介してグランドに流れるが、サージ電流の一部は、カレントミラー回路403内にダイオード回路1を介して流れる。このとき、ダイオード回路1の電流能力不足によりトランジスターTA1、TA2に通常動作における電圧よりも大きな電圧が印加され、これらのトランジスターがゲート破壊に至る可能性がある。
【0033】
図5に本実施形態のダイオード回路1の電流電圧特性を示す図である。具体的には、ダイオード回路1のアノード端子T1、カソード端子T2の間に逆バイアスの電圧が印加された場合の電流電圧特性を示している。そして、太線は第1ダイオードD1の電流電圧特性であり、一点鎖線は第2ダイオードD2の電流電圧特性である。二点鎖線は、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2を足した電流電圧特性、即ちダイオード回路1の電流電圧特性である。また電圧が6Vでの線は、ダイオード回路1の降伏電圧を示しており、
図3の回路装置10の通常動作におけるトランジスターTA1、TA2のゲート-ソース間電圧の最大電圧に相当する。電圧が22.5Vでの破線はトランジスターTA1、TA2のゲート破壊電圧を示す。
【0034】
図5において、太線で示す第1ダイオードD1の電流は5V付近までほぼ流れないが、逆バイアス電圧が6V付近になり、第1ダイオードD1が降伏を起こすと、第1降伏電流が流れ始める。そして、トランジスターTA1、TA2の破壊電圧である22.5Vを超えた25V付近から、さらに増加する。一点鎖線で示す第2ダイオードD2の電流は、7.5V付近までほぼ流れないが、逆バイアス電圧が7.5V付近を超えて第2ダイオードD2が降伏を起こすと、第2降伏電流が流れ始める。そして第2降伏電圧は、破線で示すトランジスターTA1、TA2のゲート破壊電圧である22.5Vを超えるまで増加していく。このため、二点鎖線で示すダイオード回路1の電流は、逆バイアスの電圧が6Vを超える電圧付近から第1降伏電流が流れ、逆バイアスの電圧が7.5Vを超える電圧付近からは第2降伏電流の分さらに増加する。
【0035】
このようにダイオード回路1において、平面視において第1不純物領域83と第2不純物領域93の間に第3不純物領域94が設けられているため、第2ダイオードは、第1ウェル301よりも不純物濃度の高い第3不純物領域94と第1ウェル301のPN接合によって形成される。このため、第2ダイオードの降伏電圧を低くすることができ、第1ダイオードが降伏電圧に達し、第1降伏電流が流れた後、第2ダイオードの降伏が発生するまで、第1ダイオードの第1降伏電流のみの少ない電流で被保護素子を保護する事態を防止できる。従って、第1ダイオードと第2ダイオードの両方の降伏電流を使って、被保護素子を保護することができるようになる。
【0036】
また本実施形態によれば、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2のアノードとして第1不純物領域83を共有した構造により、面積増加を抑えつつ第2ダイオードD2を設けることができる。従って、第2ダイオードD2の降伏電圧が高いことにより被保護素子を保護するための電流能力が不足する問題を回避しつつ、チップ面積の増大を少なくすることができる。
【0037】
図6は、本実施形態を用いない場合のダイオード構成の一例である。
図6に示すダイオード回路300では、第1不純物領域83と第2不純物領域93との間に第3不純物領域94が設けられていない。即ち、
図6に示すダイオード回路300は、第1ウェル301と第1プラグ領域302を含むバーチカル型のダイオードは、
図1等で説明したバーチカル型の第1ダイオードD1と同様な構成になっているが、ラテラル型のダイオードは、
図1等で説明したラテラル型の第2ダイオードD2とは構成が異なっている。具体的には、
図6に示す特許文献1に開示されるダイオード回路300を適用した場合の例では、ラテラル型のダイオードは、P型の第1ウェル301とN型の第2ウェル303のPN接合を含む構成になっている。
【0038】
図7は、
図6に示す第1ダイオードD1の平面視における概略図である。
図1に示すダイオード回路1の平面図と基本的には同様になっているが、第3不純物領域83が設けられていない点が異なっている。
【0039】
図6に示す構成を採用した場合、第1不純物領域83の第1方向DR1に設けられるバーチカル型の第1ダイオードの第1降伏電流と、第2不純物領域93を用いたラテラル型の第2ダイオードの第2降伏電流によって、被保護素子は静電気などのサージ電圧から保護される。ここで、第1ダイオードD1は、不純物濃度の高い第1不純物領域83と第1ウェル301のPN接合により形成され、降伏電圧を低くすることが容易になる。一方で、第2不純物領域93を用いた第2ダイオードD2は、第1不純物領域83等の不純物領域よりも不純物濃度の低い第1ウェル301と第2ウェル303のPN接合により形成されるため、第2ダイオードD2の降伏電圧は高い電圧になる。従って、第1ダイオードD1の降伏が発生した後、第2ダイオードD2の降伏が発生するまでは、第1ダイオードD1の第1降伏電流のみよって被保護素子を保護しなければならず、十分な第1降伏電流が確保できない場合には、被保護素子をサージ電圧から保護することが難しくなる。
【0040】
図8は、
図6に示す構成を採用した場合のダイオード回路300の電流電圧特性を示す図である。
図8において、電圧が6Vでの線は被保護素子の動作最大電圧にあたる電圧を示しており、電圧が22.5Vでの破線は被保護素子のゲート破壊電圧を示す。
図6に示す構成においても第1ダイオードの降伏電圧は6V付近であり、逆バイアスの電圧が6V付近を超えると、第1ダイオードの降伏電流が流れ始める。しかし、前述したように、第2ダイオードD2の降伏電流は高い電圧になるため、
図6に示すように、逆バイアスの電圧が25V付近を超えるまで第2ダイオードD2の降伏は起こらない。このため、逆バイアスの電圧が、第1ダイオードD1が降伏を起こす6Vから、第2ダイオードD2の降伏が降伏を起こす25V付近までは、ダイオード回路300の電流能力は第1ダイオードD1の降伏電流のみによって賄われる。
【0041】
またチップ面積の観点では、
図6に示す構成を採用した場合、第3不純物領域94を設けないで、第2ダイオードD2を設けることができるため、チップ面積を増大させることなくラテラル型の第2ダイオードD2を設けることができる。しかし、上述したように第1ダイオードD1によって、十分な降伏電流が確保できない場合には被保護素子をサージ電圧から保護することできない。第1ダイオードD1のオン抵抗を下げて電流能力を上げるためには、
図7に示す第1不純物領域83の高さ307を大きくする必要があり、大幅にオン抵抗を下げようとするとダイオード回路300のレイアウト面積が非常に大きくなる。
【0042】
この点、本実施形態によれば、第1ウェル301と第1プラグ領域302の間のPN接合により第1ダイオードD1が構成される。第1ダイオードD1のアノードは第1不純物領域83であり、カソードは、第2導電型の埋め込み層304と第2導電型の第2プラグ領域33とを介して第1プラグ領域302に接続された、第2導電型の第2不純物領域93である。また、第1ウェル301と第3不純物領域94の間のPN接合により、第2ダイオードD2が構成される。第2ダイオードD2のアノードは第1不純物領域83であり、カソードは、第3不純物領域94である。これにより、第1ダイオードD1と並列に第2ダイオードD2が構成される。そして、逆バイアスがそして、第1降伏電圧より高くなると、第1ダイオードD1に降伏電流が流れ、逆バイアスが第2降伏電圧より高くなると、第2ダイオードD2に降伏電流が流れる。第1ダイオードD1に並列に第2ダイオードD2を設けたことで、サージ等による大電荷が入力されたとき、第2ダイオードD2が降伏することで電荷を逃がすことができる。これにより、第1ダイオードD1のみの場合に比べてダイオード回路1のオン抵抗が下がり、クランプ電圧を下げることが可能になる。
【0043】
具体的には、ダイオード回路1は、第1ウェル301の第1方向DR1であって第1ウェル301と第2導電型の埋め込み層304との間に設けられる第2導電型の第2ウェル303を含む。通常、不純物領域の不純物濃度はウェルの不純物濃度より高いので、第3不純物領域94の濃度は第2ウェル303の濃度よりも高い。これにより、第1ウェル301と第3不純物領域94の間の降伏電圧は、第1ウェル301と第2不純物領域93の間の降伏電圧よりも低くなる。即ち、本願の第2ダイオードの降伏電圧を、
図6に示した本実施形態を用いない例におけるラテラル型ダイオードの降伏電圧よりも低くできる。これにより、サージ等による大電荷が入力されたとき、第2ダイオードが降伏することで電荷を逃がすことができ、
図6の例に比べてクランプ電圧を下げることが可能になる。
【0044】
また本実施形態では、ダイオード回路1は、第1導電型の第1不純物領域83と、第1不純物領域83の第1方向DR1に設けられる第1導電型の第1ウェル301と、第1ウェル301の第1方向DR1に設けられる第2導電型の第1プラグ領域302と、第1不純物領域83の第2方向DR2かつ第1導電型の第1ウェル301の第3方向DR3に設けられる第2導電型の第3不純物領域94と、を含む。
【0045】
第1ダイオードでは、アノードである第1不純物領域83の第1方向DR1に、カソードに接続される第1プラグ領域302が設けられ、第2ダイオードD2では、アノードである第1不純物領域83の第2方向DR2に、カソードである第3不純物領域94が設けられる。
【0046】
このように第1方向DR1の構造と第2方向DR2の構造を組み合わせたことで、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2のアノードとして第1不純物領域83を共有できる。従って、第1不純物領域83が共有され、チップ面積の増大を抑えて第2ダイオードD2を設けることができる。
【0047】
また本実施形態では、半導体基板に直交する第1方向DR1での平面視において、第2不純物領域93に囲まれる領域に、第1不純物領域83及び第3不純物領域94が設けられる。
【0048】
このようにすれば、平面視において第2不純物領域93の中に、第1不純物領域83と第3不純物領域94を並べて設けることができる。従って、第2ダイオードD2をチップ面積の増大を抑えながら設けることができる。例えば、第1不純物領域83の短辺方向に第1不純物領域83と第3不純物領域94を並べて設けることができる。これにより、
図6に示した例において第1不純物領域83の長辺方向の高さ307を大きくする場合に比べて、面積の増大を抑えながらダイオード回路1のオン抵抗を下げることが可能になる。
【0049】
2.詳細な構成例
図9は、本実施形態の第2構成例の断面視での概略図である。第2構成例は、
図1、
図2に示す構成とラテラル型の第2ダイオードD2の構成が異なっている。具体的には、第2構成例では、第1不純物領域83の第2方向DR2側において、第1不純物領域83と第2不純物領域93の間に、第3不純物領域94及び第4不純物領域95が設けられている。
【0050】
第3不純物領域94は、第4不純物領域95の第2方向DR2側に設けられる。そして、第3不純物領域94と第4不純物領域95の間にはゲート層Gが設けられている。第2構成例では、ソースである第4不純物領域95、ドレインである第3不純物領域94及びゲート層GがNMOSトランジスターを構成する。当該NMOSトランジスターは、ゲート、ソース、サブストレートがグランドに設定されたGGNMOS(Grounded Gate NMOS)になっている。第2構成例では、GGNMOSのドレインが第2ダイオードD2のカソードになっている。
図10は、第2構成例の平面視における概略図である。第2構成例では、
図9で説明したGGNMOSは、第1不純物領域83の第2方向DR2側とその反対方向側に設けられている。
【0051】
GGnMOSのドレインである第3不純物領域94は、コンタクトDを介してカソードラインL2に接続されている。ゲートは、アノードラインL1に接続され、GGNMOSのソースである第4不純物領域95は、コンタクトSを介してアノードラインL1に接続されている。GGNMOSのサブストレートは、新たに設けることなくダイオード回路1のアノード側である第1ウェル301を兼用している。そして、第2ダイオードD2の降伏電圧は、N型である第3不純物領域94とP型である第1ウェル301との接合耐圧で決まり、例えば7~11Vになる。
【0052】
図11は第2構成例を適用した場合の、ダイオード回路1の電流電圧特性を示す図である。
図5で説明したのと同様に、太線は第1ダイオードD1の電流電圧特性であり、一点鎖線は第2ダイオードD2の電流電圧特性である。第2ダイオードD2の電流電圧特性は、具体的には前述したGGNMOSの特性である。そして、二点鎖線は第2構成例を適用した場合のダイオード回路1の電流電圧特性である。また電圧が6Vでの線はトランジスターTA1、TA2の動作最大電圧にあたる電圧を示し、電圧が22.5Vでの破線はトランジスターTA1、TA2のゲート破壊電圧を示す。
【0053】
図11において、太線で示す第1ダイオードD1の電流は、5V付近までほぼ流れないが、逆バイアス電圧が6V付近になり、第1ダイオードD1が降伏を起こすと、第1降伏電流が流れ始める。そして、トランジスターTA1、TA2の破壊電圧である22.5Vを超えた25V付近から、さらに増加する。第2ダイオードD2は、
図11の一点鎖線で示すように、GGNMOSのドレインにかかる電界がある値を超えるとアバランシェ降伏を起こす。そして、寄生的なnpn型バイポーラトランジスターの動作が開始し、ドレイン、ソース間の電圧が下がり、大電流を通電するスナップバック動作が開始する。バイポーラトランジスターは、ダイオードと比較し大電流を流すことができるため、例えば、GGNMOSのチャネル幅が40umの場合、400mA以上流すことができる。
図1、
図2で説明した構成例の第2ダイオードD2では、電流が60mAを超えると電圧が22.5Vに達するのに対し、第2構成例を採用した場合の第2ダイオードD2、即ちGGNMOSでは、6倍以上のESDサージ電流が流れたとしても被保護素子である破壊電圧の22.5Vに対して7~8Vの電圧でクランプできる。このように第2構成例では、第1ダイオードD1にGGNMOSを含む第2ダイオードD2を、アノードと兼用させて追加することにより、面積を増大させることなく、通常動作時は被保護素子を通常動作時の最大電圧以下で動作させ、かつ、サージ電圧の印加時には被保護素子にゲート破壊電圧が印加されるリスクを低減する効果がある。
【0054】
即ち本実施形態のダイオード回路1は、第4不純物領域95とゲート層Gを含む。第4不純物領域95は、第1不純物領域83の第2方向DR2であって第1不純物領域83と第2不純物領域93の間の領域に設けられ、アノードラインL1に電気的に接続される第2導電型の領域である。ゲート層Gは、第3不純物領域94と第4不純物領域95の間に設けられ、アノードラインL1に電気的に接続される。
【0055】
このようにすれば、第3不純物領域94、第4不純物領域95、ゲート層Gを、例えばソース、ドレイン、ゲートとするNMOSトランジスターを第1不純物領域83と第2不純物領域93の間に設けることができる。これにより、NMOSトランジスターのドレインと第1ウェル301のPN接合を第2ダイオードD2として用いることができる。また第2ダイオードD2が降伏した後にNMOSトランジスターの寄生バイポーラトランジスターがスナップバックすることで大電流を流すため、第1構成例に比べて更にダイオード回路1のオン抵抗を下げることが可能になる。
【0056】
図12は第2構成例において、GGNMOSのドレインをシリサイドブロック化した例の断面視における概略図である。第2構成例は、
図12に示すように、GGNMOSのドレイン領域をシリサイドブロック構造にしてもよい。このようにGGNMOSのドレインの第1方向DR1側に成膜されたシリサイド層1102について、ドレイン領域のシリサイド層を除去することによって、PN接合で降伏が起こる際の実効接合断面積を確保でき、スナップバック動作前の接合破壊のリスクを低減することができる。
【0057】
図13は、本実施形態の第3構成例の断面視における概略図である。第3構成例は、第2構成例の構成に対して、第1不純物領域83から見て第2方向DR2側にnpnバイポーラトランジスターを設けた例である。即ち、第3不純物領域94、第4不純物領域95が、それぞれnpnバイポーラトランジスターのコレクター、エミッターに対応する。コレクターである第3不純物領域94は、コンタクトCを介してカソードラインL2に接続され、エミッターである第4不純物領域95はコンタクトEを介してアノードラインL1に接続される。npnバイポーラトランジスター1203のベースは、P型の第1ウェル301であり、P型の第1不純物領域83に接続されている。第1不純物領域83は、新たに設けることなく第1ダイオードD1のアノードと兼用されている。
図14は、第3構成例の平面視における概略図である。第3構成例の平面視における形状は、第2構成例と比較してゲート層Gが設けられていない点が異なっている。
【0058】
第1ウェル301内に設けたnpnバイポーラトランジスター1203の降伏電圧は、第4不純物領域95と第1ウェル301のPN接合部で決まり、例えば7~11Vの電圧の特性を得ることができる。そして第3構成例を採用した場合、
図11で説明したのと同様の電流電圧特性が得られる。npnバイポーラトランジスター1203は、コレクターにかかる電圧がある電圧を超えるとアバランシェ降伏を起こし、npnバイポーラトランジスター1203の動作を開始し、コレクターとエミッターの間の電圧が下がり、大電流を通電するようになり、スナップバック動作を開始する。
【0059】
このように、降伏電圧が4.5V~5.5Vであるバーチカル型の第1ダイオードD1のアノードである第1不純物領域83を兼用して、降伏電圧が7~10Vであるnpnバイポーラトランジスター1203を設けることができる。これにより、チップ面積を増大させることなく、通常動作時には被保護素子であるトランジスターTA1、TA2のゲート、ソース間の電圧を例えば6V程度の動作最大電圧以下で動作させ、かつサージ電圧が印加されたときには、ゲート破壊電圧を超えるリスクを低減する効果がある。
【0060】
また、
図12で説明したのと同様に、第3構成例においてnpnバイポーラトランジスター1203のコレクター領域をシリサイドブロック構造にしてもよい。コレクター領域のシリサイド層を除去することによってブレークダウン実効接合断面積を確保し、スナップバック動作前の接合破壊のリスクを低減できる。
【0061】
即ち本実施形態では、第1不純物領域83の第2方向DR2であって第1不純物領域83と第2不純物領域93の間の領域に設けられ、第1ラインに電気的に接続される第2導電型の第4不純物領域95を含む。
【0062】
このようにすれば、第1導電型の第1ウェル301の第3方向DR3側に第2導電型の第4不純物領域95を設けることができる。これにより、第1ウェル301、第3不純物領域94及び第4不純物領域95によりnpnバイポーラトランジスター1203を構成できる。そして、npnバイポーラトランジスター1203のコレクターにはカソードラインL2が、ベースにはアノードラインL1が接続されるため、コレクター、ベース間に降伏電圧以上の電圧が印加されると、PN接合の降伏が起こり、npnバイポーラトランジスター1203の動作が開始する。従って、ラテラル型の第2ダイオードD2として、npnバイポーラトランジスター1203の動作を用いて大きな電流を流すことができる。
【0063】
図15は、本実施形態の第4構成例の断面視における概略図を示す。第1~第3構成例では第1ダイオードD1と第2ダイオードD2がアノードを共有しているが、本構成例では第1ダイオードD1と第2ダイオードD2がカソードを共有する。第4構成例においては、第2プラグ領域33内にP型である第3不純物領域94を設けることで、ラテラル型の第2ダイオードD2が設けられている。第2ダイオードD2のコンタクトAN2は、第1ダイオードD1のコンタクトANと、アノードラインL1により接続されている。そして第2ダイオードD2のカソード側のコンタクトは新たに設けることなく、第1ダイオードD1のカソードである第2不純物領域93を兼用して設けられている。第2不純物領域93は、第3不純物領域94の第2方向DR2側に設けられてもよいし、第2方向DR2の反対方向側に設けられてもよいし、それら両方側に設けられてもよい。
図16は、第4構成例の平面視における概略図である。
図16に示すように、第2不純物領域93は、第1不純物領域83と第3不純物領域94を囲むようにして設けられている。このようにして第2ダイオードD2は、第3不純物領域94とその周りを取り囲む第2不純物領域93との間に形成されている。第2プラグ領域33内に形成した第2ダイオードD2の降伏電圧は、P型の第3不純物領域94とN型の第2プラグ領域33とのPN接合部で特性が決まり、例えば7~11Vの降伏電圧の特性になる。
【0064】
第4構成例によって、第2ダイオードD2を設けても、
図1、
図2で説明した第1構成例の電流電圧特性と同様の特性が得られる。また
図1等で説明した第1構成例では、ラテラル方向のPN接合面が2つであるのに対し、第4構成例では、ラテラル方向のPN接合面が4つ設けられる。さらに第4構成例における拡散層幅1305は、
図1等で説明した第1構成例における拡散層幅よりも長いため、第4構成例によれば、ダイオード回路1の電流能力は
図1等で説明した第1構成例における電流能力の2倍以上になる。
【0065】
このように第4構成例によれば、降伏電圧が例えば4.5V~5.5Vを有するバーチカル型の第1ダイオードD1のカソードと兼用して、例えば7~10Vの降伏電圧を有するラテラル型の第2ダイオードD2を追加することができる。このため、チップ面積を増大させることなく、通常動作時は被保護素子であるトランジスターTA1、TA2のゲート、ソース間を動作最大電圧6V以下で動作させ、静電気印加時にはゲート破壊電圧22.5Vを超えるリスクを低減する効果がある。
【0066】
本実施形態のダイオード回路1は、第1不純物領域83と第1ウェル301と第1プラグ領域302と埋め込み層304と第2プラグ領域33と第2不純物領域93と第3不純物領域94を含む。第1不純物領域83は、アノードラインL1に電気的に接続され、P型である。第1ウェル301は、半導体基板に直交する方向を第1方向DR1としたとき、第1不純物領域83の第1方向DR1に設けられ、P型である。第1プラグ領域302は、第1ウェル301の第1方向DR1に設けられ、N型である。埋め込み層304は、第1プラグ領域302の第1方向DR1に設けられ、N型である。第2プラグ領域33は、第1方向DR1に直交する方向を第2方向DR2とし、第1方向DR1の反対方向を第3方向DR3としたとき、第1プラグ領域302の第2方向DR2であって埋め込み層304の第3方向DR3に設けられ、N型である。第2不純物領域93は、第2プラグ領域33の第3方向DR3に設けられ、カソードラインL2に電気的に接続され、N型である。第3不純物領域94は、第1不純物領域83の第2方向DR2かつ第2プラグ領域33の第3方向DR3に設けられ、アノードラインL1に電気的に接続され、P型である。
【0067】
本実施形態によれば、P型の第1ウェル301とN型の第1プラグ領域302の間のPN接合により第1ダイオードD1が構成される。第1ダイオードD1のアノードは第1不純物領域83であり、カソードは、N型の埋め込み層304とN型の第2プラグ領域33とを介して第1プラグ領域302に接続された、N型の第2不純物領域93である。また、P型の第1ウェル301とN型の第3不純物領域94の間のPN接合により、第2ダイオードD2が構成される。第2ダイオードD2のアノードはP型の第3不純物領域94であり、カソードは、N型の第2不純物領域93である。これにより、第1ダイオードD1と並列に第2ダイオードD2が構成される。そして、第1ダイオードD1に並列に第2ダイオードD2を設けたことで、静電荷等の大電荷が流れたとき、第2ダイオードD2が降伏することで電荷を逃がすことができる。これにより、第1ダイオードD1のみの場合に比べてダイオード回路1のオン抵抗が下がり、クランプ電圧を下げることが可能になる。
【0068】
具体的には、第2ダイオードD2のアノードと第2ダイオードD2のカソードは、第3不純物領域94と第2プラグ領域33のPN接合で接合しており、通常、ウェルに比べて不純物濃度が高い領域同士のPN接合になる。このためPN接合の降伏電圧を低くすることが容易になり、
図6等で説明した構成例に比べてクランプ電圧を下げることが可能になる。従って、第4構成例によれば、第1ダイオードD1の降伏電流と第2ダイオードD2の降伏電流の双方を用いることが可能になり、クランプ電圧を下げることが可能になる。
【0069】
また本実施形態によれば、第1方向DR1の構造と第2方向DR2の構造を組み合わせたことで、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2のカソードとして第2不純物領域93を共有できる。従って、第2不純物領域93が共有されることで、面積増加を抑えて第2ダイオードD2を設けることができる。
【0070】
図17は、本実施形態の第5構成例の断面視における概略図である。第5構成例は、
図1、
図2で説明した第1構成例と異なり、第2プラグ領域33内にP型の第3不純物領域94、第4不純物領域95が設けられ、ラテラル型のpnpバイポーラトランジスター1404が設けられている。pnpバイポーラトランジスター1404のコレクターは第3不純物領域94であり、アノードラインL1により第1ダイオードD1の第1不純物領域83と接続され、エミッターは第4不純物領域95であり、カソードラインL2により第2ダイオードD2の第2不純物領域93と接続されている。pnpバイポーラトランジスター1404のベースは新たに設けず、第2ダイオードD2のカソードであるN型の第2不純物領域93と兼用されている。
【0071】
図18は、本実施形態の第6構成例の平面視における概略図である。
図18に示すように、第5構成例では、第4構成例と同様に平面視において、第1不純物領域83、第3不純物領域94が、第2不純物領域93に囲まれるように設けられている。
【0072】
第2プラグ領域33内に形成したpnpバイポーラトランジスター1404の降伏電圧は、P型の第3不純物領域94と第2プラグ領域33とのPN接合部で特性が決まり、例えば7~11Vの電圧の降伏電圧になる。pnpバイポーラトランジスター1404は、コレクターにかかる電圧がある値を超えると、ベース、コレクター間のPN接合でアバランシェ降伏が起こり、pnpバイポーラトランジスター1404の動作が開始される。そして、pnpバイポーラトランジスター1404のコレクター、エミッター間の電圧が下がることで大電流が流れ、スナップバック動作が開始する。以上により、降伏電圧が4.5V~5.5Vであるバーチカル型の第1ダイオードD1のカソードと兼用して、降伏電圧が7~10Vのpnpバイポーラトランジスター1404を追加することができる。これにより、チップ面積を増大させることなく、通常動作時は、被保護素子であるトランジスターTA1、TA2のゲート、ソース間を動作最大電圧6V以下にして、静電気印加時にはゲート破壊電圧の22.5Vを超えるリスクを低減させることができる。
【0073】
また本実施形態では、第1不純物領域83の第2方向DR2に設けられ、カソードラインL2に電気的に接続されるP型の第4不純物領域95を含む。
【0074】
このようにすれば、平面視において第2プラグ領域33の領域内に第3不純物領域94と第4不純物領域95を設けることができる。そして、pnpバイポーラトランジスターのベースをN型の第2プラグ領域33とし、エミッターをP型の第4不純物領域95とし、コレクターをP型の第3不純物領域94として、pnpバイポーラトランジスター1404を構成することができる。そして、pnpバイポーラトランジスター1404のベース、コレクター間のPN接合を第2ダイオードD2として、バイポーラトランジスターの動作を用いた電流により被保護素子を保護できるようになる。また第2不純物領域93を、第1ダイオードD1のカソードと、pnpバイポーラトランジスター1404のベースに兼用させることができ、チップ面積の増大を防ぐこともできる。
【0075】
図19は、本実施形態の第6構成例の断面視における概略図である。第6構成例は、
図17、
図18で説明した第5構成例において第2プラグ領域33に設けられたpnpバイポーラトランジスター1404に代えて、PMOSトランジスター1503を配置した構成例である。
図19に示すように、第3不純物領域94がドレインであり、第4不純物領域95がソースであり、第3不純物領域94と第4不純物領域95の間にゲート層Gが設けられる。PMOSトランジスター1503のドレインは、第1ダイオードD1のアノードとカソードラインL2により接続されており、ソース、ゲートは、第1ダイオードD1のカソードである第2不純物領域93と、カソードラインL2により接続されている。
【0076】
図20は、第6構成例の平面視における概略図である。第6構成例の平面視における形状は、
図18に示す第5構成例と基本的に同じになっているが、2つの第3不純物領域94の間にPMOSトランジスター1503のゲート層が設けられている点が異なっている。PMOSトランジスター1503のサブストレートは、新たに設けず、第1ダイオードD1のカソードであるN型の第2不純物領域93が兼用されている。
【0077】
第6構成例においては第2プラグ領域33内に形成したPMOSトランジスター1503の降伏電圧は、ドレインにあたるP型の第3不純物領域94と第2プラグ領域33のPN接合で特性が決まり、その降伏電圧は例えば7~11Vになる。PMOSトランジスター1503は、ドレインにかかる電圧がある値を超えると、ドレインにあたるP型の第3不純物領域94とサブストレートにあたる第2プラグ領域33の間のPN接合で、アバランシェ降伏が起こり、スナップバック動作が開始される。以上により、降伏電圧が例えば4.5V~5.5Vのバーチカル型の第1ダイオードD1のカソードを兼用することで、チップ面積を増大させることなく、降伏電圧が例えば7~10VのPMOSトランジスター1503を設けることができる。これにより、通常動作時は、被保護素子であるトランジスターTA1、TA2を動作最大電圧の例えば6V以下で動作させつつ、静電気印加時には、ゲート破壊電圧の例えば22.5Vを超える電圧がかかるリスクを低減する効果が得られる。
【0078】
また本実施形態では、第1不純物領域83の第2方向DR2に設けられ、カソードラインL2に電気的に接続されるP型の第4不純物領域95と、第3不純物領域94と第4不純物領域95の間に設けられ、カソードラインL2に電気的に接続されるゲート層Gと、を含む。
【0079】
このようにすれば、平面視において第2プラグ領域33の領域内に、ゲート層Gをゲートとし、第2不純物領域93と第2プラグ領域33をサブストレートとし、第3不純物領域94をドレインとし、第4不純物領域95をソースとするPMOSトランジスター1503を設けることができる。
【0080】
そして、PMOSトランジスター1503において、ドレインにあたるP型の第3不純物領域94とサブストレートにあたる第2プラグ領域33の間のPN接合を第2ダイオードD2として、第2ダイオードD2でのアバランシェ降伏による大電流を用いて被保護素子を保護できる。また第2プラグ領域33を、第1ダイオードD1のカソードと、PMOSトランジスター1503のサブストレートに兼用させることができ、チップ面積の増大を防ぐこともできる。
【0081】
また本実施形態では、半導体基板に直交する第1方向DR1での平面視において、第2不純物領域93に囲まれる領域に、第1不純物領域83及び第3不純物領域94が設けられる。
【0082】
このようにすれば、平面視において第2不純物領域93の中に、第1不純物領域83と第3不純物領域94を並べて設けることができる。従って、第2ダイオードD2をチップ面積の増大を抑えながら設けることができる。
【0083】
上記では
図3に示すように、P型のトランジスターTA1、TA2を含む回路で、ダイオード回路1の第1ダイオードD1、第2ダイオードD2のアノードをトランジスターTA1等のゲートに接続し、カソードをトランジスターTA1等のソースに接続した場合について説明したが、トランジスターTA1等がN型の場合でも同様の効果が得られる。即ち、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2のアノードをN型のトランジスターTA1等のドレインに接続し、カソードをN型のトランジスターTA1等のゲートに接続した場合においても、ゲート破壊のリスクを低減する効果が得られる。
【0084】
図21は本実施形態の回路装置10の回路構成例を示す。上記では、
図3に示すようにダイオード回路1をトランジスターTA1、TA2のゲート、ソース間に接続した場合について説明してきたが、ダイオード回路1をトランジスターTA1、TA2を駆動する5V制御回路1616と並列に設けることもできる。
【0085】
図21に示すように定電圧回路1610は、基準電圧回路1612とソースフォロア回路1614を含む。5V制御回路1616は、P型のトランジスターTB1とN型のトランジスターTB2を含む。そして、通常動作において5V制御回路1616は、動作最大電圧の例えば6V以下で動作されるため、N型のトランジスターTC1のゲート、ソース間の電圧も6V以下で、オン、オフ制御される。
【0086】
まず、通常動作時における動作について具体的に説明する。基準電圧回路1612において、抵抗素子1603を例えば60kΩに設定すると、基準電圧回路1612には1mA未満の電流が流れ、ツェナーダイオードとして用いられるダイオード回路1の第1ダイオードD1、第2ダイオードD2には、逆バイアスの電圧がかかり、第1ダイオードD1の降伏電圧により約5Vの電圧を発生させることができる。またN型のトランジスターTA1の閾値電圧をVth、ゲート、ドレイン間の電圧をVgs、ドレイン、ソース間の電圧をVdsとすると、トランジスターTA1のゲートとドレインを接続しているためVgs-Vth<Vdsの関係が成り立つ場合には、トランジスターTA1は飽和領域で動作する。よって、ドレインに流れる電流はMOSの設計方程式より式(1)で表される。
【数1】
【0087】
式(1)をVgs1について解くと、Vgs1は式(2)のように表される。
【数2】
【0088】
よって、基準電圧回路1612により生成される基準電圧VREFは、式(3)のように表される。
【数3】
【0089】
式(3)より、基準電圧はおよそダイオード回路1の降伏電圧Vzと、トランジスターTA1の敷値電圧Vthの和より少し高い電位になる。
【0090】
ソースフォロア回路1614については、N型のトランジスターTA2の閾値電圧をVth、ゲート、ドレイン間の電圧をVgs、ドレイン、ソース間の電圧をVdsとすると、ドレインの電位が十分高いため、Vgs-Vth<Vdsの関係が成り立ち、トランジスターTA2も飽和領域で動作する。よって、ドレインに流れる電流Id1はMOSトランジスターの設計方程式より式(4)により表される。
【数4】
【0091】
式(4)をVgs2について解くと、式(5)のようになる。
【数5】
【0092】
式(5)より、トランジスターTA2のソースは、ゲート電位に対して式(5)の電圧Vgs2だけ低い電位を出力する。従って、定電圧回路1610の出力電圧VREGは、VREG=VREF-Vgs2となる。この式に式(3)、式(5)を代入すると、出力電圧VREGは式(6)のように表される。
【数6】
【0093】
式(6)よりトランジスターTA1、TA2の電流利得βを最適化すれば、出力電圧VREGは、式(7)のようにすることができる。
【数7】
【0094】
即ちダイオード回路1の降伏電圧Vzを電源電圧VDDの大きさ関わらず、約5Vの一定の電圧を出力することができる。このように、通常動作において、5V制御回路1616を動作最大電圧の例えば6V以下で動作させることができ、トランジスターTC1のゲート、ソース間の電圧も6V以下で、オン、オフ制御することができる。
【0095】
次に静電気等のサージ電圧が印加された場合について説明する。
図22は、本実施形態の回路装置10においてサージ電圧が印加されたときの放電経路を示す図である。回路装置1にサージ電圧が加わった場合、サージ電流は、例えば通常時に電源電圧VDDの印加されているカソード端子T2から静電気保護回路1608へ流れ、静電気保護回路1608からアノード端子T1への経路でグランドに放電される。しかし、サージ電圧が印加されたときは、定電圧回路1610は正常に動作しないため、通常動作時に流れる電流よりも大きい電流1701、1702が流れる。定電圧回路1610に用いられるツェナーダイオードの電流能力が低い場合、定電圧回路1610の出力電圧VREGが5V制御回路1616の耐圧以上になって5V制御回路1616が破壊される可能性がある。
【0096】
そこで本実施形態の回路装置10に、上述したダイオード回路1を適用することにより、面積を増大させることなく、第1ダイオードD1に加えて第2ダイオードD2を設けることができる。そして回路装置10の通常動作時は、5V制御回路と、トランジスターTA1、TA2のゲート、ソースの間の動作最大電圧を例えば6V以下で動作させつつ、静電気印加時は、5V制御回路1616や、トランジスターTA1、TA2のゲート破壊のリスクを低減させることができる。
【0097】
図3、
図4、
図21及び
図22で説明した本実施形態の回路装置10は、第1ラインと第2ラインの間の電圧に基づく電圧が印加される回路を含む。
【0098】
このようにすれば、上述したダイオード回路1の効果を有する回路装置10を実現できる。
【0099】
図23~
図26は、
図1、
図2で説明した第1構成例の他の構成例を示す。第1構成例においては、平面視において第1不純物領域83の第2方向DR2側とその反対側に第3不純物領域94が設けられ、ラテラル型の第2ダイオードD2が2つ設けられた構成であったが、
図23に示す構成例では、第1不純物領域83の第2方向DR2と反対方向側にのみ第3不純物領域94が設けられている。このため
図23に示す構成例では、第2ダイオードD2が1つ設けられた構成になっている。このようにしても、第1構成例の効果と同じ効果が得られる。なお、第3不純物領域94は第1不純物領域83の第2方向DR2側に設けてもよいし、第2方向DR2と反対方向側に設けてもよい。
【0100】
図25、
図26は、
図1等で説明した第1構成例において、第2ダイオードD2を3つ以上設けた場合の例である。
図25は断面視における概略図、
図25は平面視での概略図である。
図26の平面図に示すように、第1不純物領域83が中央に例えば略正方形の形状で設けられており、コンタクトANは、
図25に示すように複数設けられている。そして、第1不純物領域83の4辺と対向するように第3不純物領域94が設けられている。第3不純物領域94は、第1不純物領域83の4辺すべてに対向するように設けなくてもよく、第1不純物領域83のずれか3辺に対して対向するように設けてもよい。このようにしても、第1構成例の効果と同じ効果が得られる。
【0101】
以下において、第1導電型、第2導電型、第1ライン及び第2ラインという用語を用いる。以上の実施形態においては、第1導電型がP型であり、第2導電型がN型であり、第1ラインがアノードラインであり、第2ラインがカソードラインである場合を例に説明した。但し、第1導電型がN型であり、第2導電型がP型であり、第1ラインがカソードラインであり、第2ラインがアノードラインであってもよい。
【0102】
以上に説明したように本実施形態のダイオード回路は、第1不純物領域と第1ウェルと第1プラグ領域と埋め込み層と第2プラグ領域と第2不純物領域と第3不純物領域と、を含む。第1不純物領域は、アノードライン及びカソードラインの一方である第1ラインに電気的に接続される第1導電型の不純物領域である。第1ウェルは、半導体基板に直交する方向を第1方向としたとき、第1不純物領域の第1方向に設けられ、第1導電型である。第1プラグ領域は、第1ウェルの第1方向に設けられ、第2導電型である。埋め込み層は、第1プラグ領域の第1方向に設けられ、第2導電型である。第2プラグ領域は、第1方向に直交する方向を第2方向とし、第1方向の反対方向を第3方向としたとき、第1プラグ領域の第2方向であって埋め込み層の第3方向に設けられ、第2導電型である。第2プラグ領域は、第1方向に直交する方向を第2方向とし、第1方向の反対方向を第3方向としたとき、第1プラグ領域の第2方向であって埋め込み層の第3方向に設けられ、第2導電型である。第2不純物領域は、第2プラグ領域の第3方向に設けられ、アノードライン及びカソードラインの他方である第2ラインに電気的に接続され、第2導電型である。第3不純物領域は、第1不純物領域の第2方向且つ第1ウェルの第3方向であって第1不純物領域と第2不純物領域の間の領域に、第1ウェルの一部と接するように設けられ、第2ラインに電気的に接続され、第2導電型である。
【0103】
本実施形態によれば、第1ウェルと第1プラグ領域により第1ダイオードが構成され、第1ウェルと第3不純物領域により第2ダイオードが構成され、第1ダイオードと第2ダイオードが並列に設けられる。第1ダイオードに並列に第2ダイオードを設けたことで、サージ等による大電荷が入力されたとき、第2ダイオードが降伏することで電荷を逃がすことができる。これにより、第1ダイオードのみの場合に比べてダイオード回路のオン抵抗が下がり、クランプ電圧を下げることが可能になる。また、第1ダイオードと第2ダイオードが、第1ラインに電気的に接続される第1不純物領域を共有するので、面積増加を抑えつつ第2ダイオードを設けることが可能になる。
【0104】
また本実施形態のダイオード回路は、第4不純物領域とゲート層を含む。第4不純物領域は、第1不純物領域の第2方向であって第1不純物領域と第2不純物領域の間の領域に設けられ、第1ラインに電気的に接続される第2導電型の領域である。ゲート層は、第3不純物領域と第4不純物領域の間に設けられ、第1ラインに電気的に接続される。
【0105】
このようにすれば、第3不純物領域、第4不純物領域、ゲート層を、例えばソース、ドレイン、ゲートとするNMOSトランジスターを第1不純物領域と第2不純物領域の間に設けることができる。これにより、NMOSトランジスターのドレインと第1ウェルのPN接合を第2ダイオードとして、用いることができる。
【0106】
また本実施形態では、第1不純物領域の第2方向であって第1不純物領域と第2不純物領域の間の領域に設けられ、第1ラインに電気的に接続される第2導電型の第4不純物領域を含む。
【0107】
このようにすれば、第1導電型の第1ウェルの第3方向側に第2導電型の第4不純物領域を設けることができる。これにより、第1ウェルと第4不純物領域を含むnpnバイポーラトランジスターを構成できる。そして、npnバイポーラトランジスターのコレクターにはカソードラインが、ベースにはアノードラインが接続されるため、コレクター、ベース間に降伏電圧以上の電圧が印加されると、PN接合の降伏が起こり、npnバイポーラトランジスターの動作が開始する。従って、ラテラル型の第2ダイオードとして、npnバイポーラトランジスターの動作を用いて大きな電流を流すことができる。
【0108】
また本実施形態では、第3不純物領域は、第1ウェルの第3方向に設けられる。
【0109】
このようにすれば、第1導電型の第1ウェルの第3方向側に第2導電型の第3不純物領域を設けることができる。このため、平面視において、第1不純物領域から見て第1方向側に設けられるバーチカル型の第1ダイオードに対して、第1不純物領域の第2方向側にラテラル型の第2ダイオードを設けることができる。
【0110】
また本実施形態では、半導体基板に直交する第1方向での平面視において、第2不純物領域に囲まれる領域に、第1不純物領域及び第3不純物領域が設けられる。
【0111】
このようにすれば、平面視において第2不純物領域の中に、第1不純物領域と第3不純物領域を並べて設けることができる。従って、第2ダイオードをチップ面積の増大を抑えながら設けることができる。
【0112】
本実施形態のダイオード回路は、第1不純物領域と第1ウェルと第1プラグ領域と埋め込み層と第2プラグ領域と第2不純物領域と第3不純物領域を含む。第1不純物領域は、アノードライン及びカソードラインの一方である第1ラインに電気的に接続され、第1導電型である。第1ウェルは、半導体基板に直交する方向を第1方向としたとき、第1不純物領域の第1方向に設けられ、第1導電型である。第1プラグ領域は、第1ウェルの第1方向に設けられ、第2導電型である。埋め込み層は、第1プラグ領域の第1方向に設けられ、第2導電型である。第2プラグ領域は、第1方向に直交する方向を第2方向とし、第1方向の反対方向を第3方向としたとき、第1プラグ領域の第2方向であって埋め込み層の第3方向に設けられ、第2導電型である。第2不純物領域は、第2プラグ領域の第3方向に設けられ、アノードライン及びカソードラインの他方である第2ラインに電気的に接続され、第2導電型である。第3不純物領域は、第1不純物領域の第2方向に設けられ、第1ラインに電気的に接続され、第1導電型である。
【0113】
本実施形態によれば、第1ダイオードに並列に第2ダイオードを設けたことで、静電荷等の大電荷が流れたとき、第2ダイオードが降伏を起こすことで電荷を逃がすことができる。これにより、第1ダイオードのみの場合に比べてダイオード回路のオン抵抗が下がり、クランプ電圧を下げることが可能になる。
【0114】
また本実施形態では、第1不純物領域の第2方向に設けられ、第2ラインに電気的に接続される第1導電型の第4不純物領域と、第3不純物領域と第4不純物領域の間に設けられ、第2ラインに電気的に接続されるゲート層と、を含む。
【0115】
このようにすれば、平面視において第2プラグ領域の領域内に、ゲート層をゲートとし、第2不純物領域と第2プラグ領域をサブストレートとし、第3不純物領域をドレインとし、第4不純物領域をソースとするPMOSトランジスターを設けることができる。そして、PMOSトランジスターにおいて、ドレインにあたるP型の第3不純物領域とサブストレートにあたる第2プラグ領域の間のPN接合を第2ダイオードD2として、第2ダイオードでのアバランシェ降伏による大電流を用いて被保護素子を保護できる。また第2プラグ領域を、第1ダイオードのカソードと、PMOSトランジスターのサブストレートに兼用させることができ、チップ面積の増大を防ぐこともできる。
【0116】
また本実施形態では、第1不純物領域の第2方向に設けられ、第2ラインに電気的に接続される第1導電型の第4不純物領域を含む。
【0117】
このようにすれば、平面視において第2プラグ領域の領域内に第3不純物領域と第4不純物領域を設けることができる。そして、pnpバイポーラトランジスターのベースを第2プラグ領域とし、エミッターを第4不純物領域とし、コレクターを第3不純物領域として、pnpバイポーラトランジスターを構成することができる。そして、pnpバイポーラトランジスターのベース、コレクター間のPN接合を第2ダイオードとして、バイポーラトランジスターの動作を用いた電流により被保護素子を保護できるようになる。また第2不純物領域を、第1ダイオードのカソードと、pnpバイポーラトランジスターのベースに兼用させることができ、チップ面積の増大を防ぐこともできる。
【0118】
また本実施形態では、第3不純物領域は、第2プラグ領域の第3方向に設けられる。
【0119】
このようにすれば、第2導電型の第2プラグ領域の第3方向側に第1導電型の第3不純物領域を設けることができる。このため、平面視において、第1不純物領域から見て第1方向側に設けられるバーチカル型の第1ダイオードに対して、第1不純物領域の第2方向側にラテラル型の第2ダイオードを設けることができる。
【0120】
また本実施形態では、半導体基板に直交する第1方向での平面視において、第2不純物領域に囲まれる領域に、第1不純物領域及び第3不純物領域が設けられる。
【0121】
このようにすれば、平面視において第2不純物領域の中に、第1不純物領域と第3不純物領域を並べて設けることができる。従って、第2ダイオードをチップ面積の増大を抑えながら設けることができる。
【0122】
また本実施形態の回路装置は、第1ラインと第2ラインの間の電圧に基づく電圧が印加される回路を含む。
【0123】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。またダイオード回路、回路装置の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0124】
1…ダイオード回路、2…基板、4…拡散層幅、10…回路装置、33…第2プラグ領域、60…第3ウェル、83…第1不純物領域、93…第2不純物領域、94…第3不純物領域、95…第4不純物領域、103…第5不純物領域、300…ダイオード回路、301…第1ウェル、302…第1プラグ領域、303…第2ウェル、304…埋め込み層、305…エピタキシャル層、306…埋め込み層、307…高さ、400…電源、403…カレントミラー回路、406…静電気保護回路、407…内部回路、1102…シリサイド層、1203…npnバイポーラトランジスター、1305…拡散層幅、1404…pnpバイポーラトランジスター、1503…PMOSトランジスター、1603…抵抗素子、1608…静電気保護回路、1610…定電圧回路、1612…基準電圧回路、1614…ソースフォロア回路、1616…5V制御回路、1701…電流、1702…電流、AN…コンタクト、AN2…コンタクト、C、CS1、CS2、D…コンタクト、D1…第1ダイオード、D2…第2ダイオード、DR1…第1方向、DR2…第2方向、DR3…第3方向、DR4…第4方向、E…コンタクト、G…ゲート層、Id1…電流、L1…アノードライン、L2…カソードライン、N1、N2…ノード、S…コンタクト、T1…アノード端子、T2…カソード端子、TA1、TA2、TB1、TB2、TC1…トランジスター、VDD…電源電圧、VREF…基準電圧、VREG…出力電圧、Vgs2…電圧、Vth…敷値電圧、Vz…降伏電圧、β…電流利得