(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101651
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電気光学装置、および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G02F1/1337
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005672
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 幸大
【テーマコード(参考)】
2H290
【Fターム(参考)】
2H290AA33
2H290BA22
2H290BF04
2H290CA46
2H290CB22
(57)【要約】
【課題】表示品位の低下が抑制された電気光学装置、および電子機器を提供すること。
【解決手段】電気光学装置は、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層と、を備え、前記第1基板は、基板と、無機絶縁層と、互いに離間する第1画素電極および第2画素電極と、配向層とを有し、前記無機絶縁層と、前記第1画素電極および前記第2画素電極と、前記配向層とは、前記基板から前記電気光学層に向かってこの順に並び、前記配向層は、カバー層と、前記カバー層と前記電気光学層との間に設けられる配向膜とを有し、前記カバー層は、前記無機絶縁層のうち平面視で前記第1画素電極と前記第2画素電極との間の領域を埋める第1部分を有し、前記配向膜は、前記第1部分に接触し、前記第1部分と反対の面が平坦面である第2部分を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層と、を備え、
前記第1基板は、基板と、無機絶縁層と、互いに離間する第1画素電極および第2画素電極と、配向層とを有し、
前記無機絶縁層と、前記第1画素電極および前記第2画素電極と、前記配向層とは、前記基板から前記電気光学層に向かってこの順に並び、
前記配向層は、カバー層と、前記カバー層と前記電気光学層との間に設けられる配向膜とを有し、
前記カバー層は、前記無機絶縁層のうち平面視で前記第1画素電極と前記第2画素電極との間の領域を埋める第1部分を有し、
前記配向膜は、前記第1部分に接触し、前記第1部分と反対の面が平坦面である第2部分を有する、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記カバー層は、前記無機絶縁層と接触し、無機材料を含む第1カバー膜と、前記第1カバー膜と前記配向膜との間に配置され、無機材料を含む第2カバー膜と、を有し、
前記第1カバー膜は、前記第1基板の板面の法線に対して傾斜する第1構造物を有し、
前記第2カバー膜は、前記法線に対して傾斜する第2構造物を有し、
前記第1構造物の方位角と、前記第2構造物の方位角とは、互いに異なる、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1画素電極および前記第2画素電極を含み、互いに直交する第1方向および第2方向に沿って行列状に配置される複数の画素電極を備え、
前記第1構造物、および前記第2構造物の一方は、方位角が0°であり、
前記第1構造物、および前記第2構造物の他方は、方位角が90°である、
請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記配向膜は、無機材料を含み、前記法線に対して傾斜する第3構造物を有し、
前記第3構造物は、方位角が45°である、
請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記配向膜の厚さは、前記カバー層の厚さよりも厚い、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項6】
第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層と、を備え、
前記第1基板は、基板と、無機絶縁層と、互いに交差する第1方向および第2方向に沿った行列状に配置される複数の画素電極と、配向層とを有し、
前記無機絶縁層と、前記複数の画素電極と、前記配向層とは、前記基板から前記電気光学層に向かってこの順に並び、
前記配向層は、第1カバー膜と第2カバー膜と配向膜とをこの順に含み、
前記第1カバー膜は、前記第1基板の板面の法線に対して傾斜する第1構造物を有し、
前記第2カバー膜は、前記法線に対して傾斜する第2構造物を有し、
前記配向膜は、前記法線に対して傾斜する第3構造物を有し、
前記第1構造物、および前記第2構造物の一方は、方位角が0°であり、
前記第1構造物、および前記第2構造物の他方は、方位角が90°であり、
前記第3構造物は、方位角が45°である、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
前記第1構造物、前記第2構造物、および前記第3構造物のそれぞれは、柱状である。
請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1カバー膜および前記第2カバー膜は、前記無機絶縁層の前記第3構造物の成長への悪影響を排除する、
請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電気光学装置と、
前記電気光学装置の動作を制御する制御部と、を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の電子機器には、例えば、画素ごとに光学的特性を変更可能な液晶表示装置等の電気光学装置が用いられる。当該電気光学装置の例として、特許文献1に記載の液晶装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の液晶装置は、素子基板と、対向基板と、これら基板の間に配置され、液晶分子を含む液晶層とを備える。当該素子基板は、画素ごとに設けられた画素電極と、画素電極を覆う配向膜とを有する。配向膜は、例えば、無機材料を斜方蒸着して成膜された無機配向膜であり、液晶層に含まれる液晶分子にプレチルトを付与する。
【0004】
また、当該液晶装置は、垂直配向モードの液晶装置である。垂直配向モードの液晶装置では、画素サイズが小さくなると、隣り合う画素電極同士で横電界の影響により、液晶分子の配向不良が発生し易くなる。特許文献1に記載の液晶装置では、横電界による液晶分子の配向不良を抑制するよう、画素電極の配置を工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画素電極上に斜方蒸着により配向膜を形成する際、画素電極の段差の陰になり、隣り合う画素電極同士の間に蒸着ムラまたは蒸着されない領域が発生してしまう。画素電極間に蒸着ムラまたは蒸着されない領域があると、画素電極間において液晶分子の配向不良が生じるおそれがある。このため、特許文献1に記載のように画素電極の配置を工夫しても、画素電極間での配向不良が画素内の液晶分子の配向に影響を及ぼし、画素内において液晶分子の配向不良が生じるおそれがある。特に、製造時等において電気光学装置が吸湿すると、配向膜の配向規制力が低下してしまい、横電界による配向不良が生じた場合、電界印加時のみならず、電界印加後も当該配向不良が継続してしまう。この配向不良により、表示品位が低下してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置の一態様は、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層と、を備え、前記第1基板は、基板と、無機絶縁層と、互いに離間する第1画素電極および第2画素電極と、配向層とを有し、前記無機絶縁層と、前記第1画素電極および前記第2画素電極と、前記配向層とは、前記基板から前記電気光学層に向かってこの順に並び、前記配向層は、カバー層と、前記カバー層と前記電気光学層との間に設けられる配向膜とを有し、前記カバー層は、前記無機絶縁層のうち平面視で前記第1画素電極と前記第2画素電極との間の領域を埋める第1部分を有し、前記配向膜は、前記第1部分に接触し、前記第1部分と反対の面が平坦面である第2部分を有する。
【0008】
本発明の電気光学装置の一態様は、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層と、を備え、前記第1基板は、基板と、無機絶縁層と、互いに交差する第1方向および第2方向に沿った行列状に配置される複数の画素電極と、配向層とを有し、前記無機絶縁層と、前記複数の画素電極と、前記配向層とは、前記基板から前記電気光学層に向かってこの順に並び、前記配向層は、第1カバー膜と第2カバー膜と配向膜とをこの順に含み、前記第1カバー膜は、前記第1基板の板面の法線に対して傾斜する第1構造物を有し、前記第2カバー膜は、前記法線に対して傾斜する第2構造物を有し、前記配向膜は、前記法線に対して傾斜する第3構造物を有し、前記第1構造物、および前記第2構造物の一方は、方位角が0°であり、前記第1構造物、および前記第2構造物の他方は、方位角が90°であり、前記第3構造物は、方位角が45°である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電気光学装置の平面図である。
【
図2】
図1に示す電気光学装置のA-A線の断面図である。
【
図3】
図1の第1基板の電気的な構成を示す等価回路図である。
【
図4】
図2に示す無機絶縁層と複数の画素電極の一部を示す平面図である。
【
図7】
図2に示す第1配向層および第2配向層を説明するための図である。
【
図8】
図7に示す第1配向層の蒸着方向を説明するための図である。
【
図9】
図7の第1構造物、第2構造物、および第3構造物の各方位角を示す図である。
【
図10】第1構造物、第2構造物、および第3構造物の他の各方位角を示す図である。
【
図12】第1構造物、第2構造物、および第3構造物の他の各方位角を示す図である。
【
図14】第1構造物、第2構造物、および第3構造物の他の各方位角を示す図である。
【
図16】電子機器の一例であるパーソナルコンピューターを示す斜視図である。
【
図17】電子機器の一例であるスマートフォンを示す平面図である。
【
図18】電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示す部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
1.電気光学装置
1A.基本構成
図1は、実施形態に係る電気光学装置100の平面図である。
図2は、
図1に示す電気光学装置100のA-A線の断面図である。なお、
図1では、第2基板3の図示が省略される。また、以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜用いて説明する。また、X軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向とは反対の方向をX2方向と表記する。同様に、Y軸に沿う一方向をY1方向と表記し、Y1方向とは反対の方向をY2方向と表記する。Z軸に沿う一方向をZ1方向と表記し、Z1方向とは反対の方向をZ2方向と表記する。また、Y1方向は「第1方向」の例示である。X1方向は「第2方向」の例示である。また、X―Y平面に沿った方向が「水平方向」とし、Z1方向またはZ2方向が「垂直方向」とする。
【0012】
また、本明細書において、「要素α上の要素β」とは、要素βが要素αの上方に位置することを意味する。したがって、「要素α上の要素β」とは、要素βが要素αに直接的に接触している場合のみならず、要素αと要素βとが離間している場合も含む。また、要素αと要素βとの「電気的な接続」は、要素αと要素βとが直接的に接合されることで導通する構成のほか、要素αと要素βとが他の導電体を介して間接的に導通する構成も含まれる。
【0013】
図1および
図2に示す電気光学装置100は、アクティブマトリクス駆動方式の透過型の電気光学装置である。
図2に示すように、電気光学装置100は、第1基板2と、第2基板3と、枠状のシール部材4と、液晶層5とを有する。
図2に示すように、第1基板2、液晶層5および第2基板3は、この順にZ1方向に並ぶ。なお、これらの重なる方向であるZ1方向またはZ2方向から見ることを「平面視」とする。また、
図1に示す電気光学装置100の平面視での形状は四角形であるが、四角形以外の多角形または円形であってもよい。
【0014】
図2に示す第1基板2は、透光性を有する基板21と、透光性を有する無機絶縁層22と、透光性を有する複数の画素電極24と、透光性を有する第1配向層20とを有する。第1配向層20は、「配向層」の例示である。無機絶縁層22、複数の画素電極24および第1配向層20は、基板21から液晶層5に向かってこの順に並ぶ。なお、「透光性」とは、可視光に対する透過性を意味し、好ましくは可視光の透過率が50%以上であることをいう。また、
図2には、第1基板2の下面である板面2sの法線A1が図示される。
【0015】
基板21は、透光性および絶縁性を有する平板であり、例えばガラス基板または石英基板で構成される。無機絶縁層22は、透光性を有する複数の無機絶縁膜の積層体である。また、無機絶縁層22には、スイッチング素子、および各種配線等が設けられる。各画素電極24は、液晶層5に電界を印加するための電極である。各画素電極24は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)およびFTO(Fluorine-doped tin oxide)等の透明導電材料を含む。なお、図示はしないが、第1基板2は、複数の画素電極24を平面視で囲む複数のダミー画素電極を有する。また、第1配向層20は、透光性および絶縁性を有する。第1配向層20は、液晶層5が有する液晶分子50を配向させる。第1配向層20は、複数の画素電極24を覆う。第1配向層20は、例えば、酸化ケイ素等の無機材料を含み、斜方蒸着により形成される。
【0016】
第2基板3は、第1基板2に対向する。第2基板3は、透光性を有する基板31と、透光性を有する無機絶縁層32と、透光性を有する共通電極33と、透光性を有する第2配向層34とを有する。無機絶縁層32、共通電極33および第2配向層34は、基板31から液晶層5に向かってこの順に並ぶ。また、図示はしないが、第2基板3は、平面視で複数の画素電極24を囲む遮光性の見切りを有する。なお、「遮光性」とは、可視光に対する遮光性を意味し、好ましくは可視光の透過率が50%未満であることをいい、より好ましくは10%以下であることをいう。
【0017】
基板31は、透光性および絶縁性を有する平板であり、例えばガラス基板または石英基板で構成される。無機絶縁層32は、透光性および絶縁性を有しており、例えば酸化ケイ素等のケイ素を含む無機材料で形成される。共通電極33は、複数の画素電極24に対して液晶層5を介して配置される対向電極であり、複数の画素電極24とともに液晶層5に電界を印加するための電極である。共通電極33は、透光性および導電性を有する。共通電極33は、例えば、ITO、IZOおよびFTO等の透明導電材料を含む。第2配向層34は、透光性および絶縁性を有する。第2配向層34は、液晶層5が有する液晶分子を配向させる。第2配向層34の材料は、酸化ケイ素等である。第2配向層34は、例えば、酸化ケイ素等の無機材料を含み、斜方蒸着により形成される。
【0018】
シール部材4は、第1基板2と第2基板3との間に配置される。シール部材4は、例えばエポキシ樹脂等の各種硬化性樹脂を含む接着剤等を用いて形成される。シール部材4は、ガラス等の無機材料で構成されるギャップ材を含んでもよい。
【0019】
液晶層5は、第1基板2、第2基板3およびシール部材4によって囲まれる領域内に配置される。液晶層5は、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層である。液晶層5は、例えば、誘電異方性が負のネマチック液晶を含む。液晶層5が含む液晶分子50の配向は、液晶層5に印加される電圧に応じて変化する。
【0020】
図1に示すように、第1基板2には、複数の走査線駆動回路11と信号線駆動回路12と複数の外部端子13とが配置される。複数の外部端子13の一部は、走査線駆動回路11または信号線駆動回路12から引き回される図示省略された配線に接続される。また、複数の外部端子13は、定電位Vcomが印加させる端子を含む。当該端子は、図示省略された配線および導通材を介して、第2基板3の共通電極33に電極的に接続される。
【0021】
かかる電気光学装置100は、画像を表示する表示領域A10と、平面視で表示領域A10の外側に位置する周辺領域A20とを有する。表示領域A10には、行列状に配列される複数の画素Pが設けられる。複数の画素Pに対して複数の画素電極24が1対1で配置される。前述の共通電極33は、複数の画素Pで共通に設けられる。また、周辺領域A20は、平面視で表示領域A10を囲む。周辺領域A20には、走査線駆動回路11および信号線駆動回路12が配置される。
【0022】
本実施形態では、電気光学装置100は透過型である。具体的には、
図2に示すように、光LLが第2基板3に入射した後、第1基板2から出射される間に変調することにより、画像が表示される。なお、第1基板2に入射した光が第2基板3から出射される間に変調することにより、画像が表示されてもよい。
【0023】
かかる電気光学装置100は、電圧を印加していなときに透過率が低くなって黒表示となり、電圧を印加したときに透過率が上昇する、所謂ノーマリーブラック方式である。また、電気光学装置100の駆動方式は、所謂VA(Vertical Alignment)方式である。電気光学装置100は、負の誘電異方性をもった液晶分子50を、第1配向層20および第2配向層34を用いて電圧を印加しているときにほぼ垂直方向に配向させ、電圧を印加したときには水平方向に配向させる。
【0024】
また、電気光学装置100は、例えば、後述するパーソナルコンピューターおよびスマートフォン等のカラー表示を行う表示装置に適用される。当該表示装置に適用される場合、電気光学装置100に対してカラーフィルターが適宜用いられる。また、電気光学装置100は、例えば、後述する投射型のプロジェクターに適用される。この場合、電気光学装置100は、ライトバルブとして機能する。なお、この場合、電気光学装置100に対してカラーフィルターが省略される。
【0025】
1B.第1基板2の電気的な構成
図3は、
図1の第1基板2の電気的な構成を示す等価回路図である。
図3に示すように、第1基板2は、複数のトランジスター23とn本の走査線241とm本の信号線242とn本の定電位線243とを有する。nおよびmはそれぞれ2以上の整数である。n本の走査線241とm本の信号線242との各交差に対応してトランジスター23が配置される。各トランジスター23は、例えばスイッチング素子として機能するTFT(Thin Film Transistor)である。各トランジスター23は、ゲート、ソースおよびドレインを含む。
【0026】
n本の走査線241のそれぞれはX1方向に延在し、n本の走査線241はY1方向に等間隔で並ぶ。n本の走査線241のそれぞれは、対応する複数のトランジスター23のゲートに電気的に接続される。n本の走査線241は、
図1に示す走査線駆動回路11に電気的に接続される。1~n本の走査線241には、走査線駆動回路11から走査信号G1、G2、…、およびGnが線順次で供給される。
【0027】
図3に示すm本の信号線242のそれぞれはY1方向に延在し、m本の信号線242はX1方向に等間隔で並ぶ。m本の信号線242のそれぞれは、対応する複数のトランジスター23のソースに電気的に接続される。m本の信号線242は、
図1に示す信号線駆動回路12に電気的に接続される。1~m本の信号線242には、信号線駆動回路12から画像信号S1、S2、…、およびSmが並行に供給される。
【0028】
図3に示すn本の走査線241とm本の信号線242とは、互いに電気的に絶縁されており、平面視で格子状に配置される。隣り合う2つの走査線241と隣り合う2つの信号線242とで囲まれる領域が画素Pに対応する。画素Pごとにトランジスター23、画素電極24および蓄積容量29が設けられる。画素電極24は、トランジスター23に対して1対1で設けられる。各画素電極24は、対応するトランジスター23のドレインに電気的に接続される。
【0029】
n本の定電位線243のそれぞれはX1方向に延在し、n本の定電位線243はY1方向に等間隔で並ぶ。また、n本の定電位線243は、n本の走査線241およびm本の信号線242に対して電気的に絶縁されており、これらに対して間隔をもって配置される。各定電位線243には、定電位Vcomが印加される。n本の定電位線243のそれぞれは、対応する蓄積容量29が有する2つの電極のうちの一方に電気的に接続される。各蓄積容量29は、画素電極24の電位を保持するための保持容量である。蓄積容量29は、トランジスター23に対して1対1で設けられる。また、各蓄積容量29が有する2つの電極のうちの他方は、対応する画素電極24に電気的に接続される。したがって、蓄積容量29の一方の電極には定電位Vcomが印加され、他方の電極はトランジスター23のドレインに電気的に接続される。
【0030】
走査信号G1、G2、…、およびGnが順次アクティブとなり、n本の走査線241が順次選択されると、選択される走査線241に接続されるトランジスター23がオン状態となる。オン状態になると、m本の信号線242を介して表示すべき階調に応じた大きさの画像信号S1、S2、…、およびSmに対応する電流が、選択される走査線241に対応する画素電極24に供給される。これにより、画素電極24と
図2に共通電極33との間に形成される液晶容量に、表示すべき階調に応じた電圧が印加され、印加される電圧に応じて液晶分子50の配向が変化する。このような液晶分子50の配向の変化によって光LLの透過率が変化する。
【0031】
1C.表示領域A10
図4は、
図2に示す無機絶縁層22と複数の画素電極24の一部を示す平面図である。
図4に示すように、各画素電極24の平面形状は、四角形である。複数の画素電極24は、互いに離間し、平面視でX1方向およびY1方向に並ぶ行列状に配置される。複数の画素電極24のうち、例えば、任意の1つの画素電極24を第1画素電極24aとした場合、第1画素電極24aに隣接する任意の1つの画素電極24を第2画素電極24bとする。
図4の例では、
図4中の左下の画素電極24を第1画素電極24aとし、その右隣の画素電極24を第2画素電極24bとする。
【0032】
無機絶縁層22は、各画素電極24が設けられている画素領域A11と、複数の画素電極24が設けられていない非画素領域A12とを有する。画素領域A11は、光を透過する領域である。非画素領域A12には、図示しないが、トランジスター23および各種配線等が設けられており、非画素領域A12は、遮光性を有する。また、非画素領域A12は、平面視で複数の画素電極24の間に位置する領域であって、第1画素電極24aと第2画素電極24bとの間の領域を含む。
【0033】
図5は、
図4中のa-a線断面に相当する図である。
図6は、
図4中のb-b線断面に相当する図である。
図5および
図6に示す無機絶縁層22は、酸化ケイ素および酸窒化ケイ素等のケイ素を含む無機材料で形成される複数の無機絶縁膜を含む。なお、無機絶縁層22は、液晶分子50を配向させる配向規制力を有さない。また、無機絶縁層22上には、複数の画素電極24が配置される。各画素電極24は、平面視で四角形状であり、各辺に沿った段差249を有する。
【0034】
各画素電極24上には第1配向層20が配置される。
図2に示すように、第1配向層20は、複数に画素電極24と液晶層5との間に配置され、液晶層5に接触する。第1配向層20は、液晶分子50の配列状態を制御する。
図5および
図6に示すように、第1配向層20は、前述の複数の画素領域A11および非画素領域A12に設けられる。
【0035】
第1配向層20は、カバー層25と配向膜26とを含む。カバー層25は、複数の画素電極24と接触する。配向膜26は、カバー層25と液晶層5との間に配置され、これらに接触する。カバー層25および配向膜26は、例えば、酸化ケイ素等の無機材料を含み、斜方蒸着により形成される。また、カバー層25と配向膜26とは、例えば互いに異なる蒸着方向からの蒸着により形成される。
【0036】
カバー層25は、複数の画素電極24および無機絶縁層22を覆うカバーである。カバー層25は、配向膜26の下地層であり、無機絶縁層22の配向膜26への影響を排除するために設けられる。カバー層25が設けられることで、後述の配向膜26が有する第3構造物26sの成長に悪影響が及ぶことが抑制される。カバー層25は、液晶分子50を配向させる配向規制力を有することが好ましい。カバー層25は、非画素領域A12に設けられる第1部分250を有する。第1部分250は、非画素領域A12と同様、平面視で格子状をなし、隣り合う画素電極24間を埋める。第1部分250が設けられていることで、無機絶縁層22と液晶分子50との接触が回避される。このため、配向規制力を有さない無機絶縁層22が液晶分子50に接触することによる液晶分子50の配向不良の発生を抑制することができる。
【0037】
カバー層25は、第1カバー膜251と第2カバー膜252とを含む。第1カバー膜251は、複数の画素電極24に接触する。第2カバー膜252は、主に、第1カバー膜251と配向膜26との間に配置される。また、第1カバー膜251と第2カバー膜252のそれぞれは、複数の画素領域A11および非画素領域A12に設けられる。第1カバー膜251と第2カバー膜252のそれぞれは、後述の配向膜26の第3構造物26sの核となる島状構造を含んでもよい。当該島状構造は、薄膜形成時の初期段階に形成される。したがって、第1カバー膜251と第2カバー膜252のそれぞれは、部分的に厚さが薄い部分を含んでもよい。
【0038】
第1カバー膜251、および第2カバー膜252は、斜方蒸着により形成される。このため、各画素電極24の段差249の陰により、第1カバー膜251と第2カバー膜252のそれぞれは、非画素領域A12のうちの一部に設けられる。また、後で詳述するが、第1カバー膜251、および第2カバー膜252は、互いに異なる蒸着方向からの蒸着により形成される。このため、第1カバー膜251、および第2カバー膜252は、非画素領域A12のうち設けられていない領域が互いに異なる。非画素領域A12のうち第1カバー膜251が設けられていない領域に第2カバー膜252の一部が設けられる。よって、第2カバー膜252は、無機絶縁層22に直接的に接触する部分を有しており、第1部分250の上面250sは、段差259を有する。
【0039】
配向膜26は、第1配向層20のうち最も液晶層5に近い。配向膜26は、液晶分子50に直接的に接触し、液晶分子50の配向を制御する。配向膜26は、複数の画素領域A11および非画素領域A12に設けられる。配向膜26は、非画素領域A12に設けられる第2部分260を有する。第2部分260は、第1部分250に接触する。第2部分260は、第1部分250の全域を覆っておらず、よって、第1部分250の上面250sには、配向膜26が設けられていない領域A0が存在する。非画素領域A12における領域A0の比率は、50%以下である。
【0040】
また、第2部分260の上面260s、すなわち第2部分260の第1部分250とは反対の面は、平坦面である。平坦面とは、段差のない平面をいい、好ましくは表面粗さRaが、300Å未満のものをいう。ただし、上面260sは、配向規制力を発揮するための表面凹凸を有する。
【0041】
配向膜26は、斜方蒸着により形成される。このため、各画素電極24の段差249の陰により、配向膜26は、非画素領域A12のうち設けられていない領域A0が存在する。領域A0は、Y1方向に並ぶ2つの画素電極24のX1方向に沿った線分よりもY2方向と、X1方向に並ぶ2つの画素電極24のY1方向に沿った線分よりもX2方向と、に存在する。また、後で詳述するが、配向膜26は、第1カバー膜251および第2カバー膜252の各蒸着方向とは異なる蒸着方向からの蒸着により形成される。
【0042】
前述のように、電気光学装置1では、複数の画素電極24上に「配向層」としての第1配向層20が設けられる。そして、第1配向層20は、カバー層25と配向膜26とを備える。カバー層25は、非画素領域A12を埋める第1部分250を有する。
【0043】
かかる電気光学装置1によれば、非画素領域A12を埋めるカバー層25を備えることで、配向規制力が働かない無機絶縁層22をカバー層25で覆うことができる。配向規制力が働かない無機絶縁層22がカバー層25で覆われることで、複数の画素電極24同士の間の非画素領域A12における配向不良を抑制することができる。このため、当該配向不良に起因する画素領域A11での配向不良が生じるおそれを抑制することができる。また、製造時等において電気光学装置1が吸湿した状態であると、配向規制力が低下してしまい、電界印加時のみならず、電界印加後も当該配向不良が継続してしまうおそれがある。しかし、本実施形態では、配向規制力が働かない無機絶縁層22がカバー層25で覆われていることで、非画素領域A12における配向不良が抑制されているため、吸湿による配向不良の継続のおそれが抑制される。よって、表示品位の低下を抑制することができる。
【0044】
さらに、前述のように、配向膜26は、第1部分250と液晶層5との間に配置される第2部分260を有しており、第2部分260の上面260sは、連続した平坦面を有する。このため、配向膜26の上面260sは蒸着ムラによる凹凸または欠損を有さない。よって、蒸着ムラによる配向不良を抑制することができる。よって、表示品位の低下を抑制することができる。また、第2部分260は、第1部分250のうち第1カバー膜251と第2カバー膜252とが積層される部分上に配置される。このため、第2部分260は、第1部分250の上面250sうちの平坦な部分上に配置される。よって、第2部分
【0045】
また、配向膜26の平均厚さは、カバー層25の平均厚さよりも厚い。このため、配向膜26の平均厚さがカバー層25の平均厚さ以下である場合に比べ、液晶分子50が配向膜26の下地となるカバー層25の表面形状の影響を受け難い。よって、表示領域A10において、複数の液晶分子50の配向方向が揃い易い。
【0046】
液晶分子50の配向は、第1配向層20の最表面の形状により規制される。カバー層25と配向膜26とは、互いに蒸着方向が異なるため、互いに上面の表面形状が異なる。よって、カバー層25と配向膜26とでは、液晶分子50を配向させる方向が異なる。このため、配向膜26の平均厚さがカバー層25の平均厚さ以下である場合、液晶分子50がカバー層25の表面形状の影響を受け易い。これに対し、配向膜26の平均厚さをカバー層25の平均厚さよりも厚くすることで、液晶分子50がカバー層25の表面形状の影響を受け難くなる。
【0047】
配向膜26の平均厚さは、例えば、300Å以上500Å未満であることが好ましく、360Å以上400Å未満であることが好ましい。上記範囲であることで上記範囲外である場合に比べ、液晶分子50がカバー層25の表面形状の影響を受け難く、かつ、配向膜26の形成に過度な時間を要さない。
【0048】
カバー層25の平均厚さは、例えば、280Å以上400Å未満であることが好ましく、320Å以上360Å未満であることがより好ましい。上記下限値以上であることで、非画素領域A12を一様に埋め易く、よって、配向規制力を有さない無機絶縁層22の影響を特に効果的に抑制し易い。また、上記上限値未満であることで、過度な成膜時間を要さない。また、第1カバー膜251および第2カバー膜252の各平均厚さは、140Å以上200Å未満であることが好ましく、160Å以上180Å未満であることがより好ましい。各平均厚さが上記範囲内であることで、範囲外である場合に比べ、非画素領域A12を一様に埋め易く、上面250sの平坦性を高めることができる。
【0049】
また、第1カバー膜251、および第2カバー膜252の各材料は、特に限定されないが、無機材料であることが好ましく、具体的には例えば、SiN、AlO、SiOx、TiO2、MgO、Al2O3等が挙げられる。なお、SiOxのxは、2以上である。配向膜26の材料は、無機材料であることが好ましく、具体的には例えば、SiO2等である。無機材料を用いることで、斜方蒸着により第1配向層20を形成できるので、複数の画素電極24の画素ピッチが小さくなっても、第1配向層20が設けられていない領域が発生するおそれを抑制することができる。
【0050】
第1カバー膜251、第2カバー膜252および配向膜26の各材料は、SiO2であることが特に好ましい。SiO2であることで、第1配向層20の透光性を確保しつつ、所望の膜厚の第1配向層20を形成し易い。
【0051】
1-D.第1配向層20および第2配向層34
図7は、
図2に示す第1配向層20および第2配向層34を説明するための図である。
図7に示す第2配向層34は、例えば、無機材料を含み、斜方蒸着により形成される。第2配向層34は、複数の構造物34sを含む。構造物34sは、無機材料の柱状結晶体である。構造物34sは、斜方蒸着の蒸着方向に平行な線分に沿って柱状に成長する。
【0052】
第1配向層20は、複数の第1構造物251s、複数の第2構造物252s、および複数の第3構造物26sを含む。具体的には、第1カバー膜251は、複数の第1構造物251sを含む。第2カバー膜252は、複数の第2構造物252sを含む。配向膜26は、複数の第3構造物26sを含む。第1カバー膜251、第2カバー膜252、および配向膜26のそれぞれは、前述のように、例えば、無機材料を含み、斜方蒸着により形成される。複数の第1構造物251s、複数の第2構造物252s、および複数の第3構造物26sのそれぞれは、無機材料の柱状結晶体である。複数の第1構造物251s、複数の第2構造物252s、および複数の第3構造物26sのそれぞれは、斜方蒸着の蒸着方向に平行な線分に沿って柱状に成長する。ただし、複数の第1構造物251s、および複数の第2構造物252sは、前述の島状構造を含んでもよい。第1カバー膜251、および第2カバー膜252のそれぞれは、島状構造を含む程度の厚さであってもよい。また、各第3構造物26sは、柱状である。このため、液晶分子50を配向させる。
【0053】
第2配向層34、および配向膜26の各表面形状による配向規制力によって、液晶分子50の配向が制御される。液晶分子50は、棒状構造である。液晶分子50は、電圧が印加されていない状態において液晶分子50の長軸が法線A1に対してプレチルト角θで若干傾斜した状態でほぼ垂直配向する。プレチルト角θは、液晶分子50の長軸と法線A1とのなす角度である。プレチルト角θは、複数の構造物34s、および複数の第3構造物26sの各傾斜方向に依存する。プレチルト角θが所望の角度になるよう、複数の構造物34sおよび複数の第3構造物26sの法線A1に対する角度が設定される。
【0054】
1-E.第1配向層20
図8は、
図7に示す第1配向層20の蒸着方向を説明するための図である。第1カバー膜251、第2カバー膜252、および配向膜26は、互いに異なる蒸着方向から斜方蒸着により形成される。
図8に示すように、第1構造物251sを形成するための蒸着方向A01と画素電極24の表面とのなす角度θ01は、例えば、40°以上50°以下である。第2構造物252sを形成するための蒸着方向A02と画素電極24の表面とのなす角度θ02は、例えば、40°以上50°以下である。第3構造物26sを形成するための蒸着方向A03と画素電極24の表面とのなす角度θ03は、例えば、40°以上50°以下である。したがって、角度θ01、θ02およびθ03は、互いに等しい。なお、画素電極24の表面は、
図2に示す第1基板2の板面2sと平行である。
【0055】
図9は、
図7の第1構造物251s、第2構造物252s、および第3構造物26sの各方位角を示す図である。前述のように、第1カバー膜251、第2カバー膜252、および配向膜26は、互いに異なる蒸着方向から斜方蒸着により形成される。このため、
図9に示すように、第1構造物251s、第2構造物252s、および第3構造物26sは、互いに方位角が異なる。方位角とは、平面視におけるY1方向に沿った基準線Axに対する時計回りでの各構造物の角度をいう。なお、以下では、反時計回りの角度がマイナスで表される。
【0056】
第1構造物251s、および第2構造物252sの各方位角が互いに異なるため、第1カバー膜251、および第2カバー膜252は、非画素領域A12のうち設けられていない領域が互いに異なる。第1カバー膜251を斜方蒸着により形成すると、段差249の陰になり、非画素領域A12において第1カバー膜251が設けられない領域が形成される。しかし、第2カバー膜252を第1カバー膜251とは異なる方向から斜方蒸着で形成することにより、第1カバー膜251が設けられない領域を第2カバー膜252で埋めることができる。このため、無機絶縁層22の露出を回避することができるので、無機絶縁層22と液晶分子50との接触が回避される。それゆえ、配向規制力を有さない無機絶縁層22が液晶分子50に接触することによる液晶分子50の配向不良の発生を抑制することができる。
【0057】
本実施形態では、第1構造物251sの第1方位角θ1は、0°である。第2構造物252sの第2方位角θ2は、90°である。第3構造物26sの第3方位角θ3は、45°である。したがって、第3方位角方向に対する第1方位角方向の角度は、-45°である。第3方位角方向に対する第2方位角方向の角度は、45°である。また、方位角方向は、平面視での蒸着方向と等しい。このため、配向膜26の蒸着方向に対する第1カバー膜251の蒸着方向の角度は、-45°であり、配向膜26の蒸着方向に対する第2カバー膜252の蒸着方向の角度は、45°である。また、第1カバー膜251の蒸着方向は、信号線242に沿い、第2カバー膜252の蒸着方向は、走査線241に沿う。また別の言い方をすると、第1カバー膜251および第2カバー膜252の各蒸着方向は、複数の画素電極24の行方向または列方向に沿う。
【0058】
前述のように、各画素電極24の平面視形状は四角形であり、複数の画素電極24は、X1方向およびY1方向に沿って行列状に配置される。かかる複数の画素電極24の配置において、第1方位角θ1が0°であり、第2方位角θ2が90°であることで、第1カバー膜251と第2カバー膜252とが互いに設けられていない領域が平面視で重なり合うことを抑制することができる。よって、非画素領域A12において、第1カバー膜251が設けられていない領域に第2カバー膜252の一部を設けることができる。それゆえ、2つのカバー膜である第1カバー膜251および第2カバー膜252により非画素領域A12を埋めることができる。このため、カバー層25がカバー膜を3つ以上有していなくても、非画素領域A12を効率良く埋めることができる。よって、カバー層25の積層数が増えることによる透光性の低下を抑制することができる。それゆえ、表示品位の低下を効果的に抑制することができる。
【0059】
なお、第1構造物251sの第1方位角θ1が90°であり、第2構造物252sの第2方位角θ2が0°であってもよい。また、方位角が0°とは、前述の効果を損なわない範囲で製造誤差等を含むものであり、方位角が-2°以上2°以下も含まれる。同様に、方位角が90°とは、前述の効果を損なわない範囲で製造誤差等を含むものであり、方位角が88°以上92°以下も含まれる。
【0060】
また、前述のように、第3構造物26sの第3方位角θ3は、45°である。配向膜26は、液晶分子50の配向を制御する。前述のように電気光学装置1はVA方式であり、液晶分子50は、電圧が印加されていない状態において方位角45°でほぼ垂直方向になる。よって、VA方式では、液晶分子50のプレチルト角θの方位角は、45°である。プレチルト角θの方位角とは、平面視における基準線Axに対する液晶分子50の方位角である。
【0061】
第3構造物26sの第3方位角θ3が45°であるVA方式において、第1方位角θ1が0°であり、かつ第2方位角θ2が90°であることで、
図5および
図6に示すように、第1カバー膜251と第2カバー膜252とが積層される部分上に配向膜26を設けることができる。よって、配向膜26の上面260sの平坦性を最も高めることができる。なお、第1構造物251sの第1方位角θ1が90°であり、第2構造物252sの第1方位角θ1が0°である場合も同様の効果が得られる。
【0062】
図10は、第1構造物251s、第2構造物252s、および第3構造物26sの他の各方位角を示す図である。
図10に示す例では、第1構造物251sの第1方位角θ1は、22.5°である。第2構造物252sの第2方位角θ2は、67.5°である。第3構造物26sの第3方位角θ3は、45°である。したがって、第3方位角方向に対する第1方位角方向の角度は、-22.5°である。第3方位角方向に対する第2方位角方向の角度は、22.5°である。
【0063】
図11は、
図10に対応する第1配向層20の断面図である。
図11は、
図4のa-a線断面に対応している。
図11に示す例では、第1カバー膜251は、第1方位角θ1が22.5°である第1構造物251sを含む。第2カバー膜252は、第2方位角θ2が67.5°である第2構造物252sを含む。配向膜26は、第3方位角θ3が45°である第3構造物26sを含む。
図11に示す例では、非画素領域A12のうち第1配向層20が形成されていない領域A9が発生してしまう。このため、配向規制力を有さない無機絶縁層22と液晶分子50が接触し、配向不良が生じるおそれがある。
【0064】
図12は、第1構造物251s、第2構造物252s、および第3構造物26sの他の各方位角を示す図である。
図12に示す例では、第1構造物251sの第1方位角θ1は、-45°すなわち315°である。第2構造物252sの第2方位角θ2は、135°である。第3構造物26sの第3方位角θ3は、45°である。したがって、第3方位角方向に対する第1方位角方向の角度は、-90°である。第3方位角方向に対する第2方位角方向の角度は、90°である。
【0065】
図13は、
図12に対応する第1配向層20の断面図である。
図13は、
図4のa-a線断面に対応している。
図13に示す例では、第1カバー膜251は、第1方位角θ1が-45°である第1構造物251sを含む。第2カバー膜252は、第2方位角θ2が135°である第2構造物252sを含む。配向膜26は、第3方位角θ3が45°である第3構造物26sを含む。
図13に示す例では、非画素領域A12のうち第1配向層20が形成されていない領域A9が発生してしまう。このため、配向規制力を有さない無機絶縁層22と液晶分子50が接触し、配向不良が生じるおそれがある。さらに、
図13に示す例では、配向膜26を貫通する溝H9が形成されてしまう。このため、配向膜26の上面260sの平坦性が損なわれている。溝H9が存在することにより、配向不良が生じるおそれがある。
【0066】
図14は、第1構造物251s、第2構造物252s、および第3構造物26sの他の各方位角を示す図である。
図14に示す例では、第1構造物251sの第1方位角θ1は、-90すなわち270°である。第2構造物252sの第2方位角θ2は、180°である。第3構造物26sの第3方位角θ3は、45°である。したがって、第3方位角方向に対する第1方位角方向の角度は、-135°である。第3方位角方向に対する第2方位角方向の角度は、135°である。
【0067】
図15は、
図13に対応する第1配向層20の断面図である。
図15は、
図4のa-a線断面に対応している。
図15に示す例では、第1カバー膜251は、第1方位角θ1が-90°である第1構造物251sを含む。す第2カバー膜252は、第2方位角θ2が180°である第2構造物252sを含む。配向膜26は、第3方位角θ3が45°である第3構造物26sを含む。
図15に示す例では、配向膜26を貫通する溝H9が形成されてしまう。このため、配向膜26の上面260sの平坦性が損なわれている。溝H9が存在することにより、配向不良が生じるおそれがある。
【0068】
また、
図14に示す例では、第1カバー膜251を斜方蒸着により形成する際の蒸着方向は、X2方向に沿い、第2カバー膜252を斜方蒸着により形成する際の蒸着方向は、Y2方向に沿う。したがって、第1カバー膜251および第2カバー膜252をそれぞれ斜方蒸着により形成する際の蒸着方向は、複数の画素電極24の行方向または列方向に沿う。
図14に示す例では、カバー層25により非画素領域A12を埋めることができるが、配向膜26の上面260sの平坦性を確保することが難しい。
【0069】
なお、非画素領域A12を埋め、かつ上面260sが平坦面を有するためには、第1方位角θ1または第2方位角θ2のいずれか一方が90°であり、他方が0°であり、第3方位角θ3が45°であることが好ましい。ただし、複数の画素電極24の形状および配置によって当該角度は異なる。したがって、非画素領域A12を埋め、かつ上面260sが平坦面を有するよう、第1方位角θ1、第2方位角θ2および第3方位角θ3が設定される。また、カバー層25が3つ目のカバー膜を有す場合、非画素領域A12を埋め、かつ上面260sが平坦面を有するよう、第1方位角θ1、第2方位角θ2、3つ目のカバー膜の方位角、および第3方位角θ3が設定される。
【0070】
2.変形例
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0071】
前述の各実施形態では、アクティブマトリクス方式の電気光学装置100が例示されるが、これに限定されず、電気光学装置100の駆動方式は、例えば、パッシブマトリクス方式等でもよい。
【0072】
前述の実施形態では、第1配向層20が有する第1カバー膜251、第2カバー膜252および配向膜26が斜方蒸着により形成された。しかし、カバー層25が非画素領域A12を埋め、かつ、配向膜26の上面260sが平坦であれば、斜方蒸着以外の方法で第1配向層20が形成されてもよい。例えば、第1カバー膜251、または第2カバー膜252は、光配向処理が施された膜であってもよい。
【0073】
3.電子機器
電気光学装置100は、各種電子機器に用いることができる。
【0074】
図16は、電子機器の一例であるパーソナルコンピューター2000を示す斜視図である。パーソナルコンピューター2000は、各種の画像を表示する電気光学装置100と、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設置される本体部2010と、制御部2003と、を有する。制御部2003は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0075】
図17は、電子機器の一例であるスマートフォン3000を示す平面図である。スマートフォン3000は、操作ボタン3001と、各種の画像を表示する電気光学装置100と、制御部3002と、を有する。操作ボタン3001の操作に応じて電気光学装置100に表示される画面内容が変更される。制御部3002は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0076】
図18は、電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図である。投射型表示装置4000は、例えば、3板式のプロジェクターである。電気光学装置1rは、赤色の表示色に対応する電気光学装置100であり、電気光学装置1gは、緑の表示色に対応する電気光学装置100であり、電気光学装置1bは、青色の表示色に対応する電気光学装置100である。すなわち、投射型表示装置4000は、赤、緑および青の表示色に各々対応する3個の電気光学装置1r、1g、1bを有する。制御部4005は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0077】
照明光学系4001は、光源である照明装置4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置1rに供給し、緑色成分gを電気光学装置1gに供給し、青色成分bを電気光学装置1bに供給する。各電気光学装置1r、1g、1bは、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調するライトバルブ等の光変調器として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置1r、1g、1bからの出射光を合成して投射面4004に投射する。
【0078】
以上の電子機器は、前述の電気光学装置100と、制御部2003、3002または4005と、を備える。前述の電気光学装置100は表示品位の低下が抑制されている。このため、電気光学装置100を備えることで、パーソナルコンピューター2000、スマートフォン3000または投射型表示装置4000の表示品位を高めることができる。
【0079】
なお、本発明の電気光学装置が適用される電子機器としては、例示した機器に限定されず、例えば、PDA(Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、車載用の表示器、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、およびPOS(Point of sale)端末等が挙げられる。さらに、本発明が適用される電子機器としては、プリンター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤー、またはタッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【0080】
以上、好適な実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されない。また、本発明の各部の構成は、前述の実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換でき、また、任意の構成を付加できる。また、前述した説明では、本発明の電気光学装置の一例として液晶表示装置について説明したが、本発明の電気光学装置はこれに限定されない。例えば、本発明の電気光学装置は、イメージセンサー等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…電気光学装置、1b…電気光学装置、1g…電気光学装置、1r…電気光学装置、2…第1基板、2s…板面、3…第2基板、4…シール部材、5…液晶層、11…走査線駆動回路、12…信号線駆動回路、13…外部端子、20…第1配向層、21…基板、22…無機絶縁層、23…トランジスター、24…画素電極、24a…第1画素電極、24b…第2画素電極、25…カバー層、26…配向膜、26s…第3構造物、29…蓄積容量、31…基板、32…無機絶縁層、33…共通電極、34…第2配向層、34s…構造物、50…液晶分子、241…走査線、242…信号線、243…定電位線、249…段差、250…第1部分、250s…上面、251…第1カバー膜、251s…第1構造物、252…第2カバー膜、252s…第2構造物、259…段差、260…第2部分、260s…上面、2000…パーソナルコンピューター、2001…電源スイッチ、2002…キーボード、2003…制御部、2010…本体部、3000…スマートフォン、3001…操作ボタン、3002…制御部、4000…投射型表示装置、4001…照明光学系、4002…照明装置、4003…投射光学系、4004…投射面、4005…制御部、A0…領域、A01…蒸着方向、A02…蒸着方向、A03…蒸着方向、A1…法線、A10…表示領域、A11…画素領域、A12…非画素領域、A20…周辺領域、A9…領域、Ax…基準線、H9…溝、LL…光、P…画素、G1…走査信号、G2…走査信号、S1…画像信号、S2…画像信号、θ…プレチルト角、θ01…角度、θ02…角度、θ03…角度、θ1…第1方位角、θ2…第2方位角、θ3…第3方位角。