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  • 特開-動力伝達機構及び液体吐出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101654
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】動力伝達機構及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/06 20060101AFI20240723BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20240723BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20240723BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F16H1/06
B65H3/06 350C
B65H3/52 330B
B65H5/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005675
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松村 周平
(72)【発明者】
【氏名】宮川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大川 壮志
【テーマコード(参考)】
3F049
3F343
3J009
【Fターム(参考)】
3F049AA03
3F049EA00
3F049LA01
3F049LB01
3F343FA01
3F343FB04
3F343GA01
3F343GB01
3F343JA01
3J009EA11
3J009EA21
3J009EA43
3J009FA18
(57)【要約】
【課題】複数の動力伝達歯車を含む輪列歯車機構における最下流の歯車を含めた各歯車の歯飛びを抑制する。
【解決手段】動作部10、11及び13と、駆動源8と、軸線方向から見て回転中心101c、102c、103c及び104cが千鳥状に配置される複数の動力伝達歯車101、102、103及び104を含む輪列歯車機構110と、を備え、輪列歯車機構110は、動力伝達方向において最下流の第1歯車104と、第1歯車104と係合する第2歯車103と、動力を伝達する機能を有さないダミー歯車90と、を有し、ダミー歯車90は、第1歯車104と係合するとともに、第1歯車104及び第2歯車103に対して軸線方向から見て回転中心90c、103c及び104cが千鳥状に配置されている動力伝達機構100。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作部と、
前記動作部を動作させるための動力を生成する駆動源と、
軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置される複数の動力伝達歯車を含み、複数の前記動力伝達歯車を回転することによって前記動力を伝達する輪列歯車機構と、
を備え、
前記輪列歯車機構は、前記駆動源から前記動作部へ前記動力が伝わる方向である動力伝達方向において最下流の前記動力伝達歯車としての第1歯車と、前記第1歯車と係合し前記第1歯車に前記動力を伝える前記動力伝達歯車としての第2歯車と、前記動力を伝達する機能を有さないダミー歯車と、を有し、
前記ダミー歯車は、前記第1歯車と係合するとともに、前記第1歯車及び前記第2歯車に対して軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置されていることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達機構において、
前記動作部は、媒体を搬送する搬送部であることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動力伝達機構において、
前記ダミー歯車の径は、前記第1歯車の径よりも小さいことを特徴とする動力伝達機構。
【請求項4】
請求項1または2に記載の動力伝達機構において、
前記ダミー歯車の径は、前記第1歯車の径よりも大きいことを特徴とする動力伝達機構。
【請求項5】
請求項1または2に記載の動力伝達機構において、
前記ダミー歯車の回転軸は、前記第1歯車の回転中心に向かう第1方向の軸幅である第1軸幅が前記第1方向と直交する第2方向の軸幅である第2軸幅よりも広くなるように構成されていることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項6】
請求項1または2に記載の動力伝達機構と、
媒体に液体を吐出する液体吐出部と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達機構及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターに代表される液体吐出装置など、従来から様々な装置に動力伝達機構が使用されている。このうち、複数の動力伝達歯車を含む輪列歯車機構を備える動力伝達機構がある。例えば、特許文献1には、輪列する歯車によって構成される動力伝達機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-127395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の動力伝達歯車を含む輪列歯車機構を備える動力伝達機構においては、輪列する歯車同士の係合部分において、一方の歯車の歯に対して他方の歯車の歯の噛み合いがずれることで生じる歯飛びをする場合があった。このような歯飛びは、輪列する歯車を軸線方向から見て直線状に並べて配置すると生じやすい。歯車の回転に伴い歯車に力がかかることで歯車が位置ずれをする場合があるためである。ここで、特許文献1には、輪列する歯車を軸線方向から見て直線状ではなく曲線状に配置する構成が開示されており、歯車の回転方向によっては、輪列する歯車同士に挟まれる歯車の位置ずれの虞を減らし、歯飛びを生じにくくすることが可能である。しかしながら、動力伝達方向において最下流の歯車においては、いずれにせよ歯車が位置ずれをする場合があり、歯飛びが生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明の動力伝達機構は、動作部と、前記動作部を動作させるための動力を生成する駆動源と、軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置される複数の動力伝達歯車を含み、複数の前記動力伝達歯車を回転することによって前記動力を伝達する輪列歯車機構と、を備え、前記輪列歯車機構は、前記駆動源から前記動作部へ前記動力が伝わる方向である動力伝達方向において最下流の前記動力伝達歯車としての第1歯車と、前記第1歯車と係合し前記第1歯車に前記動力を伝える前記動力伝達歯車としての第2歯車と、前記動力を伝達する機能を有さないダミー歯車と、を有し、前記ダミー歯車は、前記第1歯車と係合するとともに、前記第1歯車及び前記第2歯車に対して軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施例にかかるプリンターの内部構成を表す概略図。
図2図1のプリンターの輪列歯車機構を表す概略図。
図3】軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置されていない複数の動力伝達歯車を含む参考例のプリンターの輪列歯車機構を表す概略図。
図4】ダミー歯車は有さないが軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置される複数の動力伝達歯車を含む図3とは異なる参考例のプリンターの輪列歯車機構を表す概略図。
図5図2の輪列歯車機構のダミー歯車の回転軸周辺を表す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
本発明の第1の態様に係る動力伝達機構は、動作部と、前記動作部を動作させるための動力を生成する駆動源と、軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置される複数の動力伝達歯車を含み、複数の前記動力伝達歯車を回転することによって前記動力を伝達する輪列歯車機構と、を備え、前記輪列歯車機構は、前記駆動源から前記動作部へ前記動力が伝わる方向である動力伝達方向において最下流の前記動力伝達歯車としての第1歯車と、前記第1歯車と係合し前記第1歯車に前記動力を伝える前記動力伝達歯車としての第2歯車と、前記動力を伝達する機能を有さないダミー歯車と、を有し、前記ダミー歯車は、前記第1歯車と係合するとともに、前記第1歯車及び前記第2歯車に対して軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、動力を伝達する機能を有さないダミー歯車を有し、ダミー歯車は、第1歯車と係合するとともに、第1歯車及び第2歯車に対して軸線方向から見て回転中心が千鳥状に配置されている。すなわち、動力伝達歯車の回転に伴い動力伝達方向において最下流の第1歯車に力がかかっても第1歯車の位置ずれを抑制することが可能なダミー歯車を備えている。したがって、複数の動力伝達歯車を含む輪列歯車機構における最下流の動力伝達歯車を含めた各動力伝達歯車の歯飛びを抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る動力伝達機構は、第1の態様に従属する態様であって、前記動作部は、媒体を搬送する搬送部であることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、動作部は媒体を搬送する搬送部である。このため、搬送部における媒体の搬送精度を向上することができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る動力伝達機構は、第1または第2の態様に従属する態様であって、前記ダミー歯車の径は、前記第1歯車の径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、ダミー歯車の径は第1歯車の径よりも小さい。このため、ダミー歯車を小さくできることで動力伝達機構を小型化することができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る動力伝達機構は、第1または第2の態様に従属する態様であって、前記ダミー歯車の径は、前記第1歯車の径よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、ダミー歯車の径は第1歯車の径よりも大きい。大きなダミー歯車を駆動することでダミー歯車の回転速度を遅くすることができるので、動力伝達機構を静音化することができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る動力伝達機構は、第1から第4のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記ダミー歯車の回転軸は、前記第1歯車の回転中心に向かう第1方向の軸幅である第1軸幅が前記第1方向と直交する第2方向の軸幅である第2軸幅よりも広くなるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、ダミー歯車の回転軸は、第1歯車の回転中心に向かう第1方向の軸幅である第1軸幅が第1方向と直交する第2方向の軸幅である第2軸幅よりも広くなるように構成されている。このため、ダミー歯車は特に効果的に第1歯車の位置ずれを抑制することができ、特に効果的に第1歯車の歯飛びを抑制することができる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る液体吐出装置は、第1から第5のいずれか1つの態様の動力伝達機構と、媒体に液体を吐出する液体吐出部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、動力伝達機構に加えて、媒体に液体を吐出する液体吐出部を備える。このため、媒体に液体を吐出する液体吐出部を備える液体吐出装置において、動作部における動作精度を向上することができる。
【0019】
以下、本発明を具体的に説明する。最初に、本発明の動力伝達機構100を備える液体吐出装置であるインクジェットプリンター1の概要について説明する。以下においてインクジェットプリンター1は、プリンター1と略称する。なお、以下では、媒体が送られていく方向や駆動源で生成された動力が伝わっていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。
【0020】
図1で表されるように、プリンター1は、媒体を収容する収容部2を備えている。収容部2には、複数の媒体を積載することが可能である。なお、本実施例のプリンター1は、収容部2の下部にも媒体を収容することが可能な媒体収容部を増設可能であるが、そのような構成に限定されない。
【0021】
プリンター1は、収容部2に収容された媒体を搬送方向Aに送り出すピックローラー10が設けられている。媒体の搬送経路におけるピックローラー10の下流には、セパレートローラー11が設けられている。媒体は、ピックローラー10によりセパレートローラー11に向けて搬送方向Aに搬送され、その後、ピックローラー10とセパレートローラー11とにより搬送方向Aに搬送される。
【0022】
ここで、図1などで表されるように、セパレートローラー11と対向する位置には、リタードローラー12が設けられている。上記のように、本実施例のプリンター1は収容部2に複数の媒体を積載することが可能であるが、収容部2に積載された最上部の媒体である第1媒体を搬送する際、第1媒体に続いて搬送される第2媒体が重送されないよう、リタードローラー12に第2媒体の先端が当接される。セパレートローラー11とリタードローラー12とのニップ点N1に至った第1媒体はピックローラー10とセパレートローラー11とにより搬送方向Aに搬送されるが、第2媒体はその先端がリタードローラー12に当接されることにより搬送されずに停止した状態となり第1媒体に対して分離される。
【0023】
なお、ピックローラー10及びセパレートローラー11は、媒体を搬送する際、第1回転方向C1に回転する。なお、ピックローラー10及びセパレートローラー11は、CPUや記憶部などを有する制御部7に電気的に接続されたモーター8と複数の歯車などを介して接続され、モーター8の駆動力により駆動する。動作部であるピックローラー10及びセパレートローラー11、並びに、駆動源であるモーター8は、後述する動力伝達機構100を構成する構成部材のうちの1つである。なお、本実施例のプリンター1は、図1で表されるように、ユーザーからの記録動作の実行命令、すなわち、媒体Mの搬送指示を受け付ける受付部20を備えている。
【0024】
また、図1などで表されるように、プリンター1は、媒体の搬送経路に、中間ローラー13と、中間ローラー13と対向する位置に設けられる2つの従動ローラー14と、を有している。中間ローラー13も、ピックローラー10及びセパレートローラー11と同様に動作部であって、モーター8と複数の歯車などを介して接続されている。ピックローラー10とセパレートローラー11とにより搬送方向Aに搬送された媒体は、中間ローラー13と従動ローラー14のうちの第1従動ローラー14Aとのニップ点N2にその先端が至る。
【0025】
ここで、媒体は、その先端が該ニップ点N2に至った後には、中間ローラー13と第1従動ローラー14Aとにより搬送方向Aに搬送される。さらに、中間ローラー13と第1従動ローラー14Aとにより搬送方向Aに搬送された媒体は、中間ローラー13と従動ローラー14のうちの第2従動ローラー14Bとのニップ点N3にその先端が至る。該先端が該ニップ点N3に至った後には、中間ローラー13と2つの従動ローラー14とにより搬送方向Aに搬送される。なお、中間ローラー13は、媒体を搬送する際、第1回転方向C1に回転する。一方、第1従動ローラー14A及び第2従動ローラー14Bはともに、媒体を搬送する際、第2回転方向C2に回転する。
【0026】
また、図1などで表されるように、プリンター1は、媒体をユーザーが手差しによって挿入可能な挿入部3が設けられている。挿入部3に挿入された媒体は、中間ローラー13と第2従動ローラー14Bとのニップ点N3において搬送方向Aに搬送される。詳細には、図1で表されるように、収容部2に収容された媒体はニップ点N3まで搬送方向Aのうちの搬送方向A1に搬送され、挿入部3に挿入された媒体はニップ点N3まで搬送方向Aのうちの搬送方向A2に搬送される。
【0027】
ニップ点N3に先端が至った媒体は、中間ローラー13により、ニップ点N3よりも搬送方向Aの下流に設けられるヘッドユニット5に設けられたラインヘッド6と対向する位置に向けて搬送される。ヘッドユニット5の搬送方向Aの上流及び下流には、搬送ローラー対9が設けられている。搬送ローラー対9は、モーター8によって駆動される駆動ローラーと、この駆動ローラーに接して従動回転する従動ローラーとで構成される。すなわち、搬送ローラー対9の駆動ローラーも、動力伝達機構100を構成する構成部材のうちの1つとしての動作部とみなすことが可能である。
【0028】
ラインヘッド6は、インクを収容するインクカートリッジ21に対してチューブ22を介して接続されている。すなわち、ラインヘッド6は、インクカートリッジ21からチューブ22を介して送られたインクを媒体に向けて吐出することが可能な構成の液体吐出部、別の表現をすると、記録部となっている。
【0029】
搬送ローラー対9から送り力を受ける媒体は、ラインヘッド6と対向する記録位置に送られる。ラインヘッド6はヘッドユニット5を構成する。ラインヘッド6は、媒体の画像形成面に液体の一例であるインクを吐出して記録を実行する。ラインヘッド6は、インクを吐出するノズルが幅方向Bの全域をカバーする様に構成されたインク吐出ヘッドであり、幅方向Bへの移動を伴わないで媒体の幅方向Bの全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。但し、インク吐出ヘッドはこれに限られず、キャリッジに搭載されて幅方向Bに移動しながらインクを吐出するタイプであってもよい。また、記録部として、例えば熱転写方式の記録部など、インク吐出ヘッド以外の構成のものを使用することも可能である。
【0030】
ラインヘッド6により記録がなされた媒体は、搬送ローラー対9により搬送され、排出トレイ4に排出される。媒体を収容する収容部2、媒体を挿入する挿入部3、排出された媒体を積載可能な排出トレイ4、の構成に特に限定は無い。収容部2及び排出トレイ4は、複数の媒体を積載可能であればよい。
【0031】
上記のように、本実施例のプリンター1は、詳細は後述する動力伝達機構100と、媒体に液体であるインクを吐出する液体吐出部であるラインヘッド6と、を備えている。そして、このような構成であるため、媒体に液体を吐出する液体吐出部を備えるプリンター1において、動作部における動作精度を向上することができるようになっている。そこで、以下に、本実施例のプリンター1の要部である動力伝達機構100について図2から図5を参照して詳細に説明する。
【0032】
上記のように、動力伝達機構100としての本実施例の動力伝達機構100Aは、動作部としてのピックローラー10、セパレートローラー11及び中間ローラー13などと、これらの動作部を動作させるための動力を生成する駆動源としてのモーター8と、を備えている。さらに、図2で表されるように、軸線方向に対応する幅方向Bから見て回転中心101c、102c、103c及び104cが千鳥状に配置される複数の動力伝達歯車101、102、103及び104を含み、複数の動力伝達歯車101、102、103及び104を回転することによってモーター8が生成する動力を伝達する輪列歯車機構110を備えている。千鳥状に配置されるとは、回転中心101c、102c、103c及び104cが一直線上に並ばず、交互に互い違いに配置されることである。なお、本明細書では、動作部及び駆動源を含めて動力伝達機構100としているが、動力伝達機構100を動作部及び駆動源を含めない構成としてもよい。
【0033】
ここで、歯車81は、モーター8の回転軸に取り付けられる歯車である。モーター8を駆動してモーター8の回転軸及び歯車81を第1回転方向C1に回転させることで、歯車81と係合する動力伝達歯車101は第2回転方向C2に回転する。そして、動力伝達歯車101が第2回転方向C2に回転することで動力伝達歯車101と係合する動力伝達歯車102は第1回転方向C1に回転する。そして、動力伝達歯車102が第1回転方向C1に回転することで動力伝達歯車102と係合する動力伝達歯車103は第2回転方向C2に回転する。そして、動力伝達歯車103が第2回転方向C2に回転することで動力伝達歯車103と係合する動力伝達歯車104は第1回転方向C1に回転する。ここで、動力伝達歯車104は本実施例の動力伝達機構100Aの輪列歯車機構110の最下流の動力伝達歯車であり、動力伝達歯車104を介してピックローラー10、セパレートローラー11及び中間ローラー13などにモーター8からの動力が伝達される。
【0034】
別の表現をすると、本実施例の動力伝達機構100Aの輪列歯車機構110は、駆動源であるモーター8から動作部へ動力が伝わる方向である動力伝達方向において最下流の動力伝達歯車としての第1歯車である動力伝達歯車104と、動力伝達歯車104と係合し動力伝達歯車104にモーター8が生成した動力を伝える動力伝達歯車としての第2歯車である動力伝達歯車103と、を有している。さらに、図2で表されるように、本実施例の動力伝達機構100Aの輪列歯車機構110は、モーター8が生成した動力を伝達する機能を有さないダミー歯車90を有している。そして、ダミー歯車90は、動力伝達歯車104と係合するとともに、動力伝達歯車104及び動力伝達歯車103に対して幅方向Bから見て回転中心90cが千鳥状に配置されている。
【0035】
すなわち、本実施例の動力伝達機構100Aにおいては、動力伝達歯車101、102、103及び104の回転に伴い動力伝達方向において最下流の動力伝達歯車104に力がかかっても動力伝達歯車104の位置ずれを抑制することが可能なダミー歯車90を備えている。したがって、本実施例の動力伝達機構100Aは、複数の動力伝達歯車を含む輪列歯車機構110における動力伝達方向において最下流の歯車である動力伝達歯車104を含めた各動力伝達歯車101、102、103及び104の歯飛びを抑制することができる。なお、本実施例においては、4つの動力伝達歯車101、102、103及び104としているが、輪列歯車機構110を構成する動力伝達歯車の数に特に限定はない。
【0036】
ここで、本実施例の動力伝達機構100Aにおいては、動作部は、ピックローラー10、セパレートローラー11及び中間ローラー13などであり、媒体を搬送する搬送部である。このため、本実施例の動力伝達機構100Aにおいては、搬送部における媒体の搬送精度を向上することができる。ただし、動作部は搬送部に限定されない。動作部は、媒体の搬送とは別の動作をする構成部材であってもよい。
【0037】
以下に、本実施例の動力伝達機構100Aが動力伝達方向において最下流の歯車である動力伝達歯車104の歯飛びを抑制することができる理由について、ともに参考例のプリンターに使用される図3の動力伝達機構100B及び図4の動力伝達機構100Cと比較しながら説明する。最初に、図3の動力伝達機構100Bにおいて動力伝達歯車の歯飛びが発生する理由を説明する。なお、図3及び図4においては、図2の構成部材と同じ構成部材は同じ符号で表されている。
【0038】
図3で表されるように、動力伝達機構100Bは、幅方向Bから見て回転中心101c、102c、103c及び104cが一直線状に配置される複数の動力伝達歯車101、102、103及び104を含んでいる。このような配置で複数の動力伝達歯車が設けられていると、歯車81を第1回転方向C1に回転させることで動力伝達歯車101は第2回転方向C2に回転するが、その際、動力伝達歯車101は歯車81から図中の下向きに対応する方向Faの力を受ける。このため、動力伝達歯車101は方向Faと同じ方向F1に位置ずれしやすくなる。動力伝達歯車101が位置ずれを起こすと、歯車81と動力伝達歯車101との間、並びに、動力伝達歯車101と動力伝達歯車102との間で歯飛びが発生しやすくなる。更に、動力伝達歯車101が動力伝達歯車102を回転させる際に、動力伝達歯車102からの反力を方向Faと同じ方向に受けるため、一層歯飛びが発生しやすくなる。
【0039】
また、動力伝達歯車101が第2回転方向C2に回転することで動力伝達歯車102は第1回転方向C1に回転するが、その際、動力伝達歯車102は動力伝達歯車101から図中の上向きに対応する方向Fbの力を受け、動力伝達歯車102は方向Fbと同じ方向F2に位置ずれしやすくなる。同様に、動力伝達歯車103は動力伝達歯車102から図中の下向きに対応する方向Fcの力を受けて方向Fcと同じ方向F3に位置ずれしやすくなり、動力伝達歯車104は動力伝達歯車103から図中の上向きに対応する方向Fdの力を受けて方向Fdと同じ方向F4に位置ずれしやすくなる。更に、動力伝達歯車102と動力伝達歯車103は、動力伝達歯車101同様に、回転させる歯車からの反力を受けるため、一層位置ずれしやすくなる。ここで、動力伝達機構100Bは、歯車81及び動力伝達歯車101、102、103及び104が一直線状に配置されるので、一の歯車がそれと隣接する歯車に対して位置ずれを抑制する構成、別の表現をすると、隣接する歯車が一の歯車にかかる力を受ける配置となる構成とはなっていない。すなわち、動力伝達機構100Bは、歯飛びを抑制する構成とはなっていない。
【0040】
次に、図4の動力伝達機構100Cにおいて動力伝達歯車の歯飛びが発生する理由を説明する。図4で表されるように、動力伝達機構100Cは、幅方向Bから見て回転中心101c、102c、103c及び104cが千鳥状に配置される複数の動力伝達歯車101、102、103及び104を含んでいる。このような配置で複数の動力伝達歯車が設けられていると、歯車81を第1回転方向C1に回転させることで動力伝達歯車101は第2回転方向C2に回転するが、その際、動力伝達歯車101は歯車81から図中の方向Faの力を受ける。ただし、動力伝達歯車101に対する方向Fa側には動力伝達歯車102が配置されている。このため、動力伝達歯車101に対して方向Faにかかる力は動力伝達歯車102に受けられ、動力伝達歯車101には図中の下向きに対応する方向F1に力が働き、方向F1に位置ずれしやすくなることが想定されるが、実際は、歯車81と動力伝達歯車102との隙間は動力伝達歯車101の外径よりも小さいので、動力伝達歯車101は位置ずれしにくい。
【0041】
また、動力伝達歯車101が第2回転方向C2に回転することで動力伝達歯車102は第1回転方向C1に回転するが、その際、動力伝達歯車102は動力伝達歯車101から方向Fbの力を受ける。ただし、動力伝達歯車102に対する方向Fb側には動力伝達歯車103が配置されている。このため、動力伝達歯車102に対して方向Fbにかかる力は動力伝達歯車103に受けられ、動力伝達歯車102には図中の上向きに対応する方向F2に力が働き、方向F2に位置ずれしやすくなることが想定されるが、実際は、動力伝達歯車101と動力伝達歯車103との隙間は動力伝達歯車102の外径よりも小さいので、動力伝達歯車102は位置ずれしにくい。
【0042】
同様に、動力伝達歯車102が第1回転方向C1に回転することで動力伝達歯車103は第2回転方向C2に回転するが、その際、動力伝達歯車103は動力伝達歯車102から方向Fcの力を受ける。ただし、動力伝達歯車103に対する方向Fc側には動力伝達歯車104が配置されている。このため、動力伝達歯車103に対して方向Fcにかかる力は動力伝達歯車104に受けられ、動力伝達歯車103には図中の下向きに対応する方向F1に力が働き、方向F3に位置ずれしやすくなることが想定されるが、実際は、動力伝達歯車102と動力伝達歯車104との隙間は動力伝達歯車103の外径よりも小さいので、動力伝達歯車103は位置ずれしにくい。
【0043】
また、動力伝達歯車103が第2回転方向C2に回転することで動力伝達歯車104は第1回転方向C1に回転するが、その際、動力伝達歯車104は動力伝達歯車103から方向Fdの力を受ける。ただし、動力伝達歯車104に対する方向Fd側には特に構成部材が配置されていない。したがって、動力伝達歯車104には方向Fdと同じ向きに対応する方向F4に力が働き、方向F4に位置ずれしやすくなる。このように、図4の動力伝達機構100Cにおいては、動力伝達歯車101、102及び103においては位置ずれしにくく歯飛びが生じにくいものの、動力伝達歯車104においては位置ずれしやすく歯飛びが生じやすい。
【0044】
そこで、図2で表されるように、本実施例の動力伝達機構100Aでは、図4で表される動力伝達機構100Cに対し、動力伝達歯車104よりも動力伝達方向において下流にダミー歯車90を有している。すなわち、動力伝達歯車103の第2回転方向C2への回転に伴って動力伝達歯車104は第1回転方向C1に回転し、動力伝達歯車104は動力伝達歯車103から方向Fdの力を受けるが、動力伝達歯車104に対する方向Fd側にダミー歯車90が配置されていることとなる。このため、本実施例の動力伝達機構100Aでは、動力伝達歯車104に対して方向Fdにかかる力はダミー歯車90に受けられ、動力伝達歯車104には図中の上向きに対応する方向F4に力が働き、方向F4に位置ずれしやすくなることが想定されるが、実際は、動力伝達歯車103とダミー歯車90との隙間は動力伝達歯車104の外径よりも小さいので、動力伝達歯車104は位置ずれしにくい。したがって、本実施例の動力伝達機構100Aでは、動力伝達歯車101、102及び103において位置ずれしにくく歯飛びが生じにくいことに加え、動力伝達歯車104においても位置ずれしにくく歯飛びが生じにくい。
【0045】
ここで、図2で表されるように、本実施例の動力伝達機構100Aでは、ダミー歯車90の径(外径)は、これと隣接する第1歯車である動力伝達歯車104の径(外径)よりも小さい。このような構成とすることで、ダミー歯車90を小さくすることができ、動力伝達機構100を小型化することができる。
【0046】
ただし、このような構成に限定されない。動力伝達機構100におけるダミー歯車90の径は、これと隣接する第1歯車の径よりも大きくてもよい。大きなダミー歯車90を駆動することでダミー歯車90の回転速度を遅くすることができるので、ダミー歯車90の径をこれと隣接する第1歯車の径よりも大きくすることで、動力伝達機構100を静音化することができる。
【0047】
ここで、図5で表されるように、本実施例の動力伝達機構100Aにおいては、ダミー歯車90の回転軸91は、ダミー歯車90の回転に追随して回転するのではなく固定されており、第1歯車である動力伝達歯車104の回転中心104cに向かう第1方向D1の軸幅である第1軸幅L1が、第1方向D1と直交する第2方向D2の軸幅である第2軸幅L2よりも広くなるように構成されている。なお、回転軸91は図2における回転中心90cに対応し、第1方向D1は図2における方向Fdに対応する。このような構成とすることで、回転軸91は動力伝達歯車104から加わる力を効果的に受け止めることができ、ダミー歯車90は特に効果的に動力伝達歯車104の位置ずれを抑制することができる。したがって、特に効果的に動力伝達歯車104の歯飛びを抑制することができる。
【0048】
本発明は上記において説明した各実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。例えば、動作部をインクカートリッジ21からラインヘッド6にインクを送るチューブポンプなどの送液機構とし、その動力伝達機構に本発明の動力伝達機構を適用してもよい。また、排出トレイ4を排出された媒体の積載枚数などに応じて上下方向に移動可能な構成とするとともに動作部をその移動機構とし、その動力伝達機構に本発明の動力伝達機構を適用してもよい。また、例えば、プリンターに限定されず、スキャナーや、様々な装置同士の間に設けられる中間ユニットや、フィニッシャーなどにおける搬送装置などに適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…インクジェットプリンター、2…収容部、3…挿入部、4…排出トレイ、5…ヘッドユニット、6…ラインヘッド(液体吐出部)、7…制御部、8…モーター(駆動源)、9…搬送ローラー対、10…ピックローラー(動作部)、11…セパレートローラー(動作部)、12…リタードローラー、13…中間ローラー(動作部)、14…従動ローラー、14A…第1従動ローラー、14B…第2従動ローラー、20…受付部、21…インクカートリッジ、22…チューブ、81…歯車、90…ダミー歯車、90c…回転中心、91…回転軸、100…動力伝達機構、100A…動力伝達機構、100B…動力伝達機構、100C…動力伝達機構、101…動力伝達歯車、101c…回転中心、102…動力伝達歯車、102c…回転中心、103…動力伝達歯車(第2歯車)、103c…回転中心、104…動力伝達歯車(第1歯車)、104c…回転中心、110…輪列歯車機構、D1…第1方向、D2…第2方向、L1…第1軸幅、L2…第2軸幅
図1
図2
図3
図4
図5